説明

心不全または心不全の危険性を中和、予防および/または決定する手段および方法

本発明は、該対象から得られた体液サンプルにおける少なくとも1個の遺伝子マーカーのレベルを決定する工程を含む、対象における心不全を診断および/または予知するための方法であって、該少なくとも1個の遺伝子マーカーがmiRNAである方法に関する。本発明は、さらに、該対象内で少なくとも1個のmiRNAの発現、量および/または活性を減少させるか、または該対象内で少なくとも1個のmiRNAとそのmRNA標的の相互作用を減少させるか、または該対象内で少なくとも1個のmiRNAのmRNA標的の発現、量および/または活性を増加させる工程を含む、対象における心不全を処置または予防するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、生物学および医薬の分野に関する。より特に、本発明は、心不全の診断および治療における使用のためのmiRNAに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
MicroRNA(miRNA)は、植物および動物のゲノムにおいてコードされたRNA小分子である。それらは、多数のmiRNAをコードするポリシストロン性転写産物および個々のmiRNA遺伝子においてタンパク質をコードする遺伝子のイントロン内に存在する。約21−23ヌクレオチド長を有するこれらの高度に保存されているRNAは、通常、特定のmRNAの3’−非翻訳領域(3’−UTR)に結合することにより、遺伝子発現を調節する。数百のmiRNA遺伝子が高等真核生物において存在すると予測されており、miRNAにより提供される可能な調節回路は莫大であるため、それぞれのmiRNAは、多数の遺伝子を調節すると考えられる。いくつかの研究グループは、miRNAが早期発生、細胞増殖および細胞死、アポトーシスおよび脂肪代謝、および細胞分化の多種多様なプロセッシングの重要なレギュレーターとして作用するという証拠を提供している。高等真核生物において、遺伝子発現の調節におけるmiRNAの役割は転写因子の役割と同じくらい重要であるという推測がある。今日までに、540を越えるヒトmiRNAが確認されている;しかしながら、コンピューターモデルは数千であり得ると示唆されている。最大30%のヒト遺伝子がmiRNAにより調節されると考えられている。
【0003】
miRNAをコードする遺伝子は、RNAポリメラーゼIIによりDNAから転写されるが、タンパク質に翻訳されない。一般的に数キロベースの長さを有する一次転写産物は、プリ−miRNAと呼ばれる。プリ−miRNAは、細胞核において、プレ−miRNAとして知られるより短い70−100ヌクレオチドのステムループ構造にプロセッシングされる。このプロセッシングは、動物においてRNaseIIIエンドヌクレアーゼDroshaにより行われる。次に、プレ−miRNAは細胞質に輸送され、そこで第2のRNaseIIIエンドヌクレアーゼDICERにより21−23ヌクレオチド長を有する二本鎖miRNAにプロセッシングされる。次に、miRNA二本鎖の一本鎖は、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)に組み込まれる。RISCの一部として、標的遺伝子の遺伝子発現は、翻訳を阻害することにより、および/またはmRNAを開裂することにより中和される。成熟miRNAは、1つ以上のmRNA分子と部分的に相補的である。miRNAおよびmRNAが同じ細胞において発現されると、それらは配列特異的様式においてハイブリダイズし、それによりmRNAのタンパク質への翻訳を防止し、したがって重要なことに特定のタンパク質レベルを調節することができる。
【0004】
可能な臨床プレイヤー(player)としてのmiRNAの興味および信頼レベルは、種々のmiRNAベースのバイオテクノロジー会社が最近開始したという事実により証明することができる。
【0005】
いくつかのmiRNAは、癌および心臓疾患と関連している。発現分析試験は、正常組織と比較して腫瘍において不安定なmiRNA発現を示す。MicroRNAは、乳房、肺および大腸癌において脱調節されており、Burkittおよび他のヒトB細胞リンパ腫において上方調節されている。結果として、ヒトmiRNAは、とりわけ将来の癌診断のための、バイオマーカーとして高度に有用である可能性があり、疾患介入のための魅力のある標的として迅速に現れる。癌とのそれらの関連に加えて、microRNAは、筋細胞増殖、心室壁の整合性、収縮性、遺伝子発現、および心調律の維持を含む心機能および機能障害の異なった局面のコントロールにおいて重要な役割を果たす。miRNAの誤発現は、多数の形態の心臓疾患に必要および十分であることが示されている。
【0006】
最近、miRNAは、また、血液において存在すると述べられた。いくつかのmiRNAは、血清、血漿、血小板、赤血球ならびに有核血球において比較的高レベルで検出することができる。miRNAの異常発現プロフィールは、鎌状細胞貧血を有する対象の血液または前立腺癌において述べられている。
【0007】
遺伝因子が心不全を発症する素因と関連することは確実であるが、このような遺伝因子の同定は、障害の複雑性を考慮すると困難である。
【0008】
心不全を含む急性冠症候群を診断するための方法は、とりわけWO/2002/083913、WO2002/089657およびWO2006/120152に記載されている。これら全ての方法は、例えば、血液または尿における急性冠症候群に対するマーカーとして脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)のレベルを使用する。しかしながら、このポリペプチドは心筋細胞の過度の伸展に応答して心室により分泌され、したがって心臓状態を反映する生理学的マーカーである。心不全を発症する対象の遺伝的素因をさらに正確に反映する遺伝子マーカーの必要性がある。このようなマーカーは、また、さらに早期に診断を可能にする。
【0009】
したがって、心不全の発症を予測する遺伝子マーカーの有用性は、非常に望ましいことである。現在、このようなマーカーは存在しない。
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
今回、miRNA血液プロフィールが心臓疾患において変化することを見出した。あらゆる理論にとらわれずに、心筋細胞をふくむ細胞が、エキソソームを介して血液にこれらのmiRNAを分泌し、排出パターンが疾患において変化すると考えられる。
【0011】
したがって、本発明者らは、血液におけるmiRNAプロフィールが心不全における診断またはバイオマーカーアプローチのための新規ツールとして使用することができることを見出した。
【0012】
本発明の目的は、心不全(の危険性)を処置、予防または決定するための手段および方法を提供することである。
【0013】
したがって、本発明は、第1の局面において、対象における心不全を処置または予防するための方法であって:
−該対象内で少なくとも1個のmiRNAの発現、量および/または活性を減少させるか;または
−該対象内で少なくとも1個のmiRNAとそのmRNA標的の相互作用を減少させるか;または
−該対象内で少なくとも1個のmiRNAのmRNA標的の発現、量および/または活性を増加させる、
工程を含み、該少なくとも1個のmiRNAがmiR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR−652、miR−675、miR−129−5p、miR18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、miR−302dおよびsolexa−3927−221からなる群から選択される方法を提供する。
【0014】
別の局面において、本発明は、対象における心不全を処置または予防するための方法であって:
−該対象内で少なくとも1個のmiRNAの発現、量および/または活性を増加させるか;または
−該対象内で少なくとも1個のmiRNAとそのmRNA標的の相互作用を増加させるか;または
−該対象内で少なくとも1個のmiRNAのmRNA標的の発現、量および/または活性を減少させる、
工程を含み、該少なくとも1個のmiRNAがmiR−191、miR−30e、miR−744、miR−142−3pおよびsolexa−2952−306からなる群から選択される方法を提供する。
【0015】
上記局面の好ましい態様において、該miRNAの発現、量および/または活性または相互作用を増加させる該工程は、機能性miRNA、前駆体microRNA(プレ−miRNA)、またはmicroRNA一次転写産物(プリ−miRNA)として該miRNAを該対象に投与することを含む。
【0016】
別の局面において、本発明は、医薬としての使用のための、好ましくは心不全の処置または予防における使用のための、miR−191、miR−30e、miR−744、miR−142−3pおよびsolexa−2952−306、またはそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物からなる群から選択されるmiRNAを提供する。
【0017】
さらに別の局面において、本発明は、医薬としての使用のための、好ましくは心不全の処置または予防における使用のための、miR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR−652、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、miR−302dおよびsolexa−3927−221、ならびにそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物からなる群から選択される少なくとも1個のmiRNAに特異的に結合することができ、それによりそれらの活性および/または機能を阻害する化合物、好ましくは核酸を提供する。本明細書における「機能」なる用語は、特に、標的mRNAの翻訳を阻害する該miRNAの能力を示す。したがって、核酸は、好ましくは、miRNAとそのmRNA標的間の配列特異的手段においてハイブリダイゼーションを阻害することができる。本明細書において定義されている核酸の文脈における「特異的に結合する」なる用語は、特に、ストリンジェント条件下で該miRNAにハイブリダイズすることができる核酸を示す。好ましい態様において、該核酸は、図3において提供されるmiRNAの配列の相補体である配列を有する。
【0018】
別の局面において、本発明は、医薬としての使用のための、好ましくは心不全の処置または予防における使用のための、該核酸または(プレまたはプリ)miRNAを発現することができる、miR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR−652、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、miR−302dおよびsolexa−3927−221、ならびにそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物からなる群から選択される少なくとも1個のmiRNA、または、miR−191、miR−30e、miR−744、miR−142−3pおよびsolexa−2952−306、ならびにそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)およびmicroRNA一次転写産物からなる群から選択されるmiRNAに特異的に結合することができ、それによりそれらの活性および/または機能を阻害する核酸をコードする核酸配列を含むベクターを提供する。
【0019】
さらに別の局面において、本発明は、医薬としての使用のための、好ましくは心不全の処置または予防における使用のための、上記本発明のベクターを含む細胞を提供する。
【0020】
さらに別の局面において、本発明は、対象における心不全を処置または予防するための医薬組成物であって、
−上記本発明の遺伝子またはその発現産物、上記本発明の(プレ−もしくはプリ−)miRNA、上記本発明のベクター、または上記本発明の細胞、および
−薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤
を含む医薬組成物を提供する。
【0021】
さらにさらなる局面において、本発明は、心不全に罹患しているか、または心不全を発症する危険性があると対象を診断するための方法であって、
a)該対象から得られたサンプルにおける遺伝子マーカーのレベルを決定する工程、ここで、該遺伝子マーカーがmiR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR 18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR−652、miR−675、miR−191、miR−302d、miR−30e、miR−744、miR−142−3p、solexa−2952−306、およびsolexa−3927−221、ならびにそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物からなる群から選択されるmiRNAである;
b)工程a)において決定された遺伝子マーカーのレベルに基づいて、対象が心不全に罹患しているか、または心不全を発症する危険性があるか否かを診断する工程
を含む方法を提供する。
【0022】
さらなる態様において、本発明は、心不全に罹患しているか、または心不全を発症する危険性があると対象を診断するための方法であって、a)該対象から得られたサンプルにおける少なくとも1個の遺伝子マーカーのレベルを決定する工程、ここで、該少なくとも1個の遺伝子マーカーがmiR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR−652、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、miR−191、miR−302d、miR−30e、miR−744、miR−142−3p、solexa−2952−306、およびsolexa−3927−221、ならびにそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物からなる群から選択されるmiRNAである;b)工程a)において決定された該少なくとも1個の遺伝子マーカーのレベルに基づいて、対象が心不全に罹患しているか、または心不全を発症する危険性があるか否かを診断する工程を含む方法を提供する。好ましい態様において、該少なくとも1個の遺伝子マーカーは、miR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR−652、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、miR−191、miR−302d、miR−30e、miR−744、miR−142−3p、solexa−2952−306、およびsolexa−3927−221、ならびにそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物からなる群から選択されるmiRNAから選択される少なくとも2個のmiRNA、より好ましくは少なくとも3個のmiRNAを含む。さらに好ましい態様において、少なくとも2個のmiRNAは、miR−423−5pおよびmiR−191*、miR−423−5pおよびmiR−15b、miR−423−5pおよびmiR−1228*、miR−423−5pおよびmiR−181a、miR−423−5pおよびmiR−18a*、miR−423−5pおよびmiR−107、miR−423−5pおよびmiR−299−3p、miR−423−5pおよびmiR−342−3p、miR−423−5pおよびmiR−652、miR−423−5pおよびmiR−675、miR−423−5pおよびmiR−129−5p、miR−423−5pおよびmiR−18b*、miR−423−5pおよびmiR−1254、miR−423−5pおよびmiR−622、miR−423−5pおよびHS_202.1、miR−423−5pおよびmiR−191、miR−423−5pおよびmiR−302d、miR−423−5pおよびmiR−30e、miR−423−5pおよびmiR−744、miR−423−5pおよびmiR−142−3p、miR−423−5pおよびsolexa−2952−306、またはmiR−423−5pおよびsolexa−3927−221からなる群から選択される。
【0023】
さらにさらなる局面において、本発明は、心不全に罹患しているか、または心不全を発症する危険性があると対象を診断するための方法であって、
a)該対象から得られたサンプルにおける遺伝子マーカーのレベルを決定する工程、ここで、該遺伝子マーカーがmiR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR 18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR−652、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、miR−191、miR−302d、miR−30e、miR−744、miR−142−3p、solexa−2952−306、およびsolexa−3927−221、ならびにそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物からなる群から選択されるmiRNAである;
b)工程a)において決定された遺伝子マーカーのレベルに基づいて、対象が心不全に罹患しているか、または心不全を発症する危険性があるか否かを診断する工程を含む方法を提供する。
【0024】
該方法の好ましい態様において、該工程b)は、
−miR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR−652、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、miR−302dおよび/またはsolexa−3927−221、またはそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物の発現、量および/または活性が、心不全に罹患していないか、または心不全を発症する危険性がないコントロール対象と比較して上方調節されている;および/または
−miR−191、miR−30e、miR−744、miR−142−3pおよび/またはsolexa−2952−306、またはそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物の発現、量および/または活性が、心不全に罹患していないか、または心不全を発症する危険性がないコントロール対象と比較して下方調節されている
とき、該対象が心不全に罹患しているか、または心不全を発症する危険性があると考慮される。
【0025】
本発明は、さらに、本発明の少なくとも1個の遺伝子マーカーのレベルに基づいて、対象が心不全に罹患しているか、または心不全を発症する危険性があるか否かを診断し;該対象が心不全に罹患しているか、または心不全を発症する危険性があるとき、該対象を処置することを含む対象における心不全を処置または予防するための方法を提供する。
【0026】
別の局面において、本発明は、心不全に罹患しているか、または心不全を発症する危険性があると対象を診断するためのパーツのキットであって:
−miR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR 1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR 652、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、miR−191、miR−302d、miR−30e、miR−744、miR−142−3p、solexa−2952−306、およびsolexa−3927−221、ならびにそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物からなる群から選択される少なくとも1個のmiRNAに特異的に結合することができる少なくとも1個の化合物;および
−本発明の方法にしたがって、心不全に罹患しているか、または心不全を発症する危険性があると対象を診断するための該化合物の使用のための指示書
を含むキットを提供する。
【0027】
別の局面において、本発明は、候補化合物がヒト対象における心不全を処置または予防することができるか否かを決定するための方法であって:
−該候補化合物とヒト組織細胞、好ましくは心臓組織細胞を接触させ、
−該候補化合物が該組織細胞におけるmiR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR−652、miR−191、miR−302d、miR−30e、miR−744、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、miR−142−3p、solexa−2952−306、およびsolexa−3927−221のいずれかの発現、量および/または活性を調節することができるか否かを決定することを含む方法を提供する。好ましくは、該化合物は、もはや心不全(の危険性)と関連しない方向に、すべてのmiRNAの発現に影響する。
【0028】
候補化合物がヒト対象における心不全を処置または予防することができるか否かを決定するための好ましい方法において、該方法は:
−該候補化合物と組織細胞、好ましくはヒト組織細胞、より好ましくは心臓組織細胞を接触させ、
−該候補化合物が該組織細胞におけるmiR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR 652、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、miR−302d solexa−3927−221の発現、量および/または活性を減少させるか、および/またはmiR−191、miR−30e、miR−744、miR−142−3p、またはsolexa−2952−306の発現を増加させることができるか否かを決定することを含む。
【0029】
すべての局面および態様において、また本発明の一部は、健常コントロールの血漿と比較したときHF患者の血漿において特異的に発現されることが見出された、miRNA miR−654−3p、miR−346、miR−1301、miR−24−2およびHS_239である。
【0030】
候補治療化合物のスクリーニングに適当である本発明の局面は、また、本明細書において示されている心不全(の危険性の増加)と関連する特定のmiRNA発現パターンを示すモデル系、例えば、動物モデルにおいて実施され得る。したがって、本発明のさらなる局面は、本明細書において示されている心不全(の危険性の増加)と関連するmiRNA発現プロフィールを示す(ヒトを含む動物)モデル系である。このようなモデル系は、該モデル系(の細胞)を候補化合物に暴露または投与し、該候補化合物が、もはや心不全(の危険性の増加)と関連しない該miRNA発現プロフィールにおける変化を誘導することができるか否か、特に該モデル系(の細胞)におけるmiR−191、miR−30e、miR−744、miR−142−3pまたはsolexa−2952−306の発現、量および/または活性を増加させることができるか否か、および/または該モデル系(の細胞)におけるmiR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR 652、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、miR−302dまたはsolexa−3927−221の発現、量および/または活性を低下させることができるか否かを決定する工程を含む、候補治療剤に関してスクリーニングするための方法において使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、心不全(HF)患者の血漿において豊富なmiRNAを示す。血漿サンプル。1)健常者1;2)健常者2;4)HF患者1;5)HF患者2;6)HF患者3。
【図2】図2は、心不全患者の血漿において下方調節されているmiRNAを示す。血漿サンプル:1)健常者1;2)健常者2;4)HF患者1;5)HF患者2;6)HF患者3。
【図3】図3は、本明細書に記載されているmiRNAの配列(5’−3’)を示す。
【図4】図4は、miRNAあたり24個の測定を示すDNAチップアレイ上で測定された本明細書に記載されているmiRNAの発現を示す。最初の12個は患者サンプルからの測定であり、次の12個(番号13−24)はコントロールである。FC=倍数変化;p=p値;およびp調節されたは複数の試験に対して補正されたp値である。結果はQPCRにより確認された。
【図5】図5は、HF患者およびコントロール対象の血漿中の16個の候補miRNAの発現プロフィールを示す。それぞれのパネルの左の2個の棒は、12個の健常コントロールおよび12個のHF患者においてmiRNAアレイにより測定されたmiRNAレベルを示す。右の2個の棒は、別々の対象においてリアルタイムPCRにより今回確認された同じmiRNAのレベルを示す(30個のHF症例および39個の健常コントロール)。データは平均±SEMとして示される。健常コントロールと比較して*P<0.05。
【図6】図6は、miRNAの診断精度を示す。A、D、およびGは、健常コントロール、非HF症例、およびHF症例におけるmiRNAレベルを示す。データは平均±SEMとして示される。健常コントロールと比較して*P<0.05;$:非HF症例と比較してP<0.05。B、E、およびHは、HFを非HF症例と区別するために診断力に関してROC曲線およびAUCを示す。C、F、およびIは、miR−423−5p(P=0.002)に対して有意であり、miR−18b*(P=0.049)に対してぎりぎり有意であるproBNPとmiRNA間のSpearman相互関係を示す。単一の異常値の省略は、miR423−5pの相互関係に影響しないが、miR−18b*を減少させた。
【図7】図7は、非心臓性原因(コントロール)によって死んだ対象と比較して、拡張型心筋症(DCM)によって死んだ対象由来の死後心筋組織におけるmiRNA発現を示す。miR−423−5pに対するリアルタイムPCRをU6の発現に対して標準化した。*は、コントロールと比較してp<0.05を示す。
【図8】図8は、心不全のアテローム性動脈硬化 対 非アテローム性動脈硬化形態を有する対象における循環miRNAレベルを示す。心不全の根本にある原因にしたがって循環miRNAレベルを比較するために、我々は、HFのアテローム性動脈硬化形態とHFの非アテローム性動脈硬化形態を区別した。この試験において、我々は、活性虚血がHFの原因として除かれるように、心筋虚血の実際の徴候を示す患者を除いたことを強調することが重要である。30人のうち12人の患者は、HFに至る慢性の高度の冠状アテローム性動脈硬化疾患の病歴を有した。アテローム性動脈硬化疾患を有するこれらの対象は、非アテローム性動脈硬化HFを有する患者(n=18)と比較して、miR−18b*ではなく、miR−423−5pおよびmiR−675の有意に高い循環レベルを示した。*:非アテローム性動脈硬化形態と比較してp<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0032】
好ましい態様の記載
「心不全(heart failure)」または「心不全(cardiac failure)」なる用語は、心臓が、心機能の異常(検出可能または不可能)を介して、代謝組織の必要性と比例した速度で血液を供給できない、および/または異常に上昇した拡張期充満圧のみから供給する病態生理学状態を示す。心不全は、心筋障害により引き起こされ得るが、また、高需要の条件下でほぼ正常な心機能の存在で起こり得る。心不全は、いつも循環障害を引き起こすが、種々の心臓以外の状態(例えば、血液量減少性ショック、敗血症性ショック)が、正常な、ある程度の異常な、または通常でない心機能の存在において循環障害を生じることができるため、逆は必ずしも引き起こさない。したがって、「心不全」なる用語は、心不全の原因にかかわりなく、ならびに心不全および/または心不全の原因と関連する遺伝的要素があるか否かにかかわりなく、収縮期および拡張期心不全、急性心不全および慢性心不全を含む。
【0033】
本明細書において使用される「核酸」は、一本鎖または二本鎖形態のいずれかにおけるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーへの言及を含み、他に記載のない限り、天然ヌクレオチド(例えば、ペプチド核酸)と同様の様式において一本鎖核酸にハイブリダイズするような天然ヌクレオチドの重要な性質を有する既知の類似体を含む。
【0034】
「単離された細胞」における「単離された」なる用語は、天然環境において見出されるとき、通常、付随するか、または相互作用する成分と実質的または本質的に遊離している物質、例えば、細胞を示す。単離された細胞は、通常、存在する組織から分離され、由来の生物体の組織においてもはや統合されない細胞を培養することにより得られる細胞培養物であり得る。
【0035】
「ヌクレオチド」は、一般的に受け入れられている1文字表記による以下のIUPAC命名法で示す:A(アデニン)、C(シトシン)、T(チミン)、G(グアニン)、U(ウラシル)、W(AまたはT)、R(AまたはG)、K(GまたはT)、Y(CまたはT)、S(CまたはG)、M(AまたはC)、B(C、GまたはT)、H(A、CまたはT)、D(A、GまたはT)、V(A、CまたはG)、N(A、C、GまたはT)。
【0036】
「コードする(coding)」または「コードする(encoding)」配列は、タンパク質のアミノ酸配列、または機能性RNA、例えば、tRNAまたはrRNAをコードする遺伝子の一部である。
【0037】
本明細書において使用される「遺伝子」なる用語は、ポリペプチド鎖に翻訳することができるmRNAに転写されるか、rRNAまたはtRNAに転写されるか、またはDNA複製、転写および調節と関連する酵素および他のタンパク質に対する認識部位として働き得るDNA配列を含むが、これらに限定されないDNA配列を示す。該用語は、いくつかの作動可能に連結したDNAフラグメントを含むあらゆるDNA配列、例えば、プロモーター領域、5’非翻訳領域(5’UTR)、コード領域(タンパク質をコードしていてもよく、コードしていなくてもよい)、およびポリアデニル化部位を含む非翻訳3’領域(3’UTR)を示す。一般的に、5’UTR、コード領域および3’UTRは、RNAに転写され、遺伝子をコードするタンパク質の場合、コード領域はタンパク質に翻訳される。遺伝子は、通常、イントロンおよびエキソンを含む。遺伝子は、さらなるDNAフラグメント、例えば、イントロンを含み得る。
【0038】
「サンプル」は、核酸を含む広い意味において使用される。サンプルは、体液、例えば、血液または尿;細胞調製物の可溶性画分、または細胞が増殖した培地のアリコート;細胞から単離または抽出された染色体、細胞小器官または膜;溶液中の、または基質に結合したゲノムDNA、RNAまたはcDNA;細胞;組織;組織跡;指紋、口腔細胞、皮膚または髪などを含み得る。
【0039】
本発明のmiRNAの検出のための好ましいサンプルは、血液および尿から選択される体液である。もっとも好ましいサンプルは血液サンプルである。血液サンプルは、全血サンプル、または遠心分離および/または濾過により得られるサンプル、例えば、血漿、血清、血小板、赤血球、白血球を含んでよく、当業者に知られているとおりである。血液サンプルは、静脈穿刺、動脈穿刺および/または毛細血管穿刺、例えば、指穿刺により得ることができる。サンプル、好ましくは血液サンプルは、抗凝固剤を含むチューブ、例えば、ヘパリンチューブまたはEDTAチューブに回収され得、当業者に知られているとおりである。
【0040】
本発明は、hsa−miR−423−5p、hsa−miR−191*、hsa−miR−15b、hsa−miR−1228*、hsa−miR−181a、hsa−miR−18a*、hsa−miR−107、hsa−miR−299−3p、hsa−miR−342−3p、hsa−miR−652、hsa−miR−675、hsa−miR−129−5p、hsa−miR−18b*、hsa−miR−1254、hsa−miR−622、HS_202.1、hsa−miR−191、hsa−miR−302d、hsa−miR−30e、hsa−miR−744、hsa−miR−142−3p、solexa−2952−306、solexa−3927−221として本明細書において示されているmiRNAの診断、予知および治療的使用に関する。これらのmiRNAのヌクレオチド配列は、図3に提供されている。
【0041】
MiRNAは、タンパク性遺伝子産物をコードする遺伝子によってコードされるmRNAをアニールすることにより、特定の遺伝子産物の発現を中和する。したがって、miRNAは、標的mRNAを翻訳的に抑制し、それにより標的mRNAを機能的に調節する能力を有する。
【0042】
したがって、細胞におけるこれらのmRNAによってコードされる遺伝子産物の発現は、該細胞内でhsa−miR−423−5p、hsa−miR−191*、hsa−miR−15b、hsa−miR−1228*、hsa−miR−181a、hsa−miR−18a*、hsa−miR−107、hsa−miR−299−3p、hsa−miR−342−3p、hsa−miR−652、hsa−miR−675、hsa−miR−129−5p、hsa−miR−18b*、hsa−miR−1254、hsa−miR−622、HS_202.1、hsa−miR−191、hsa−miR−302d、hsa−miR−30e、hsa−miR−744、hsa−miR−142−3p、solexa−2952−306、solexa−3927−221、またはそれらの機能性部分もしくは誘導体からなる群から選択される少なくとも1個のmiRNAの発現、量および/または活性に影響することにより、および/または標的mRNAと該細胞内でhsa−miR−423−5p、hsa−miR−191*、hsa−miR−15b、hsa−miR−1228*、hsa−miR−181a、hsa−miR−18a*、hsa−miR−107、hsa−miR−299−3p、hsa−miR−342−3p、hsa−miR−652、hsa−miR−675、hsa−miR−129−5p、hsa−miR−18b*、hsa−miR−1254、hsa−miR−622、HS_202.1、hsa−miR−191、hsa−miR−302d、hsa−miR−30e、hsa−miR−744、hsa−miR−142−3p、solexa−2952−306、solexa−3927−221、またはそれらの機能性部分もしくは誘導体からなる群から選択される少なくとも1個のmiRNAの相互作用に影響することにより影響される。したがって、該細胞におけるmiRNAの標的mRNAによってコードされる特定の遺伝子産物の発現に影響するための、hsa−miR−423−5p、hsa−miR−191*、hsa−miR−15b、hsa−miR−1228*、hsa−miR−181a、hsa−miR−18a*、hsa−miR−107、hsa−miR−299−3p、hsa−miR−342−3p、hsa−miR−652、hsa−miR−675、hsa−miR−129−5p、hsa−miR−18b*、hsa−miR−1254、hsa−miR−622、HS_202.1、hsa−miR−191、hsa−miR−302d、hsa−miR−30e、hsa−miR−744、hsa−miR−142−3p、solexa−2952−306、solexa−3927−221またはそれらの機能性部分または誘導体からなる群から選択される少なくとも1個のmiRNAの使用、または細胞におけるhsa−miR−423−5p、hsa−miR−191*、hsa−miR−15b、hsa−miR−1228*、hsa−miR−181a、hsa−miR−18a*、hsa−miR−107、hsa−miR−299−3p、hsa−miR−342−3p、hsa−miR−652、hsa−miR−675、hsa−miR−129−5p、hsa−miR−18b*、hsa−miR−1254、hsa−miR−622、HS_202.1、hsa−miR−191、hsa−miR−302d、hsa−miR−30e、hsa−miR−744、hsa−miR−142−3p、solexa−2952−306、solexa−3927−221からなる群から選択される少なくとも1個のmiRNAの発現、量および/または活性に影響することができる化合物の使用、または標的mRNAとhsa−miR−423−5p、hsa−miR−191*、hsa−miR−15b、hsa−miR−1228*、hsa−miR−181a、hsa−miR−18a*、hsa−miR−107、hsa−miR−299−3p、hsa−miR−342−3p、hsa−miR−652、hsa−miR−675、hsa−miR−129−5p、hsa−miR−18b*、hsa−miR−1254、hsa−miR−622、HS_202.1、hsa−miR−191、hsa−miR−302d、hsa−miR−30e、hsa−miR−744、hsa−miR−142−3p、solexa−2952−306、solexa−3927−221からなる群から選択される少なくとも1個のmiRNAの相互作用に影響することができる化合物の使用も提供する。1つの態様において、特定の遺伝子産物の発現は、インビトロにて、例えば、細胞培養において影響される。
【0043】
miRNAは、当業者に知られている標準命名法系に従う。大文字で始められていない「mir−」はプレ−miRNAを示し、大文字で始められた「miR−」は成熟形態を示す。ほぼ同一の配列を有するMiRNAは、さらなる小文字で注釈される。例えば、miR−123aはmiR−123bと密接に関連している。100%同一であるが、ゲノムにおいて異なる場所でコードされるMiRNAは、さらなるダッシュ−数字接尾辞で示される:miR−123−1およびmiR−123−2は同一であるが、異なるプレ−miRNAから生産される。起源の種は3文字接頭辞で示され、例えば、hsa−miR−123はヒト(Homo sapiens)由来であり、oar−miR−123はヒツジ(Ovis aries)miRNAである。相対的発現レベルが知られているとき、名前に続くアステリスクは、ヘアピンの反対のアームにおけるmiRNAと比較して低レベルで発現されるmiRNAを示す。例えば、miR−123およびmiR−123*はプレ−miRNAヘアピンを共有するが、比較的よりmiR−123は細胞において見出される。接尾辞5pおよび3pは、miRNAがプレ−miRNAの5’アームまたは3’アームのそれぞれに由来するとき示す。これらの接尾辞は、miRNAの両方が等レベルで発現するとき使用される。例えば、miR423−5pおよびmiR423−3pはプレ−miRNAヘアピンを共有する。本発明において、本明細書に記載されているmiRNAは特定の遺伝子産物の発現を中和することができる。本明細書において使用される「miRNA」なる用語は、該miRNAのあらゆるアイソフォームを含み、該miRNAファミリーの全てのメンバーは、特定の遺伝子産物の発現を中和することができる。したがって、「miRNA」なる用語は、前駆体、例えば、プリ−miRNAおよびプレ−miRNA、スター(star)配列、例えば、miR−123およびmiR−123*、ファミリーメンバー、例えば、miR−17およびmiR−18;およびクラスター(cluster)メンバー、例えば、miR−92a、miR−92a−2*およびmiR−363を含む。
【0044】
したがって、miR−423−5pなる用語は、アイソフォームpre−mir423およびmiR423−3pを含み;miR−129−5pなる用語は、アイソフォームpre−mir129−1、pre−mir129−2、miR−129*およびmiR−129−3pを含み;miR−18b*なる用語は、アイソフォームpre−mir18b、miR−18b、pre−mir17、miR−17、miR−17*、pre−mir18a、miR−18a、miR−18a*、pre−mir20a、miR−20a、pre−mir20b、miR−20b、miR−20b*、pre−mir93、miR−93、miR−93*、pre−mir106a、miR−106a、miR−106a*、pre−mir106b、miR−106b、miR−106b*、pre−mir19b−2、miR−19b、miR−19b−2*、pre−mir92a−2、miR−92a、miR−92a−2*、pre−mir363、miR−363およびmiR−363*を含み;miR−1254なる用語は、アイソフォームpre−mir1254を含み;miR−622なる用語は、アイソフォームpre−mir622を含み;HS_202.1なる用語は、アイソフォームpre−mir221、miR−221およびmiR−221*を含む。
【0045】
したがって、本明細書において使用される「miRNA」なる用語は、あらゆるmiRNAメンバーを含む。hsa−miR−423−5p、hsa−miR−191*、has miR−15b、hsa−miR−1228*、hsa−miR−181a、hsa−miR−18a*、hsa−miR−107、hsa−miR−299−3p、hsa−miR−342−3p、hsa−miR−652、hsa−miR−675、hsa−miR−129−5p、hsa−miR−18b*、hsa−miR−1254、hsa−miR−622、HS_202.1、hsa−miR−191、has miR 302d、hsa−miR−30e、hsa−miR−744、hsa−miR−142−3p、solexa−2952−306、およびsolexa 3927 221は当分野で知られているが、心不全とのそれらの関連および心不全におけるそれらの効果は、本発明の前に知られていなかった。
【0046】
本発明は、上記miRNAが心不全と関連する見識を提供するため、心不全を診断、予防および処置することが可能になった。本明細書に記載されているmiRNAと心不全の関連は、発現がmiRNAにより予防または調節される特定の遺伝子産物を介する。これらの特定の遺伝子産物の発現の中和は、より少ない量のこれらの特定の遺伝子産物をもたらし、同様に、心不全の発症、進行および/または影響を減少させる。これは、発現が心不全中に上方調節されるmiRNAにより調節される遺伝子産物に特に当てはまる。加えて、例えば、miRNAの発現を防止することによる、これらの特定の遺伝子産物の発現の刺激は、より高い量の他のこれらの特定の遺伝子産物をもたらし、また、心不全の発症、進行および/または影響を減少させ得る。これは、発現が心不全中に下方調節されるmiRNAにより調節される遺伝子産物に特に当てはまる。したがって、これらの特定の遺伝子産物は、未だ未知のメカニズムによる心不全の重要なメディエーターとして示される。本発明にしたがって、hsa−miR−423−5p、hsa−miR−191*、hsa−miR−15b、hsa−miR−1228*、hsa−miR−181a、hsa−miR−18a*、hsa−miR−107、hsa−miR−299−3p、hsa−miR−342−3p、hsa−miR−652、hsa−miR−675、hsa−miR−129−5p、hsa−miR−18b*、hsa−miR−1254、hsa−miR−622、HS_202.1、hsa−miR−191、hsa−miR−302d、hsa−miR−30e、hsa−miR−744、hsa−miR−142−3p、solexa−2952−306、solexa−3927−221から選択されるいくつかのmiRNAは、特定の遺伝子産物の発現を中和することにより心不全を中和することができる。
【0047】
したがって、1つの態様は、対象における心不全を中和、処置、減少、遅延および/または予防するための方法であって:
−該対象内でhsa−miR−191、hsa−miR−30e、hsa−miR−744、hsa−miR−142−3p、solexa−2952−306またはそれらの機能性部分または誘導体からなる群から選択されるmiRNAの発現、量および/または活性を減少させる、および/または
−特定の標的mRNAと該対象内でhsa−miR−191、hsa−miR−30e、hsa−miR−744、hsa−miR−142−3p、solexa−2952−306、またはそれらの機能性部分または誘導体からなる群から選択されるmiRNAの相互作用を増加させることを含む方法を提供する。本明細書に上記されているとおり、該miRNAは、該miRNAファミリーのあらゆるメンバーを含み、および/または
−該対象内で、hsa−miR−423−5p、hsa−miR−191*、hsa−miR−15b、hsa−miR−1228*、hsa−miR−181a、hsa−miR−18a*、hsa−miR−107、hsa−miR−299−3p、hsa−miR−342−3p、hsa−miR−652、has−mir−675、hsa−miR−129−5p、hsa−miR−18b*、hsa−miR−1254、hsa−miR−622、HS_202.1、miR−302dおよび/またはsolexa−3927−221またはそれらの機能性部分または誘導体からなる群から選択されるmiRNAの発現、量および/または活性を減少させ、および/または
−該対象内で、特定の標的mRNAとhsa−miR−423−5p、hsa−miR−191*、hsa−miR−15b、hsa−miR−1228*、hsa−miR−181a、hsa−miR−18a*、hsa−miR−107、hsa−miR−299−3p、hsa−miR−342−3p、hsa−miR−652、hsa−miR−675、hsa−miR−129−5p、hsa−miR−18b*、hsa−miR−1254、hsa−miR−622、HS_202.1および/またはsolexa−3927−221、またはそれらの機能性部分または誘導体からなる群から選択されるmiRNAの相互作用を減少させる。本明細書に上記されているとおり、該miRNAは、該miRNAファミリーのあらゆるメンバーを含む。
【0048】
1つの態様において、該対象は、心不全と診断されている。別の態様において、しかしながら、例えば、該対象がすでに損傷または疾患に罹患しているため、該対象は心不全の高い危険性を有する。別の態様において、本発明の方法は、一般的に非罹患対象において心不全を予防するために実施される。
【0049】
心不全を診断するための方法は、当分野で知られている。対象は、例えば、機械的剛性が増加しているか否か、正常機能、例えば、心臓の電気的特性が減少しているか否か、ECMタンパク質が過剰に蓄積しているか否か、および/または特定の遺伝子産物のレベルがある域値レベルを越えているか否かを決定することにより、心不全と診断される。しばしば、対象が損傷または障害に罹患しているとき、心不全の危険性は増加する。
【0050】
本発明の方法は、心不全に対する診断および治療的使用のために適当である。1つの好ましい態様において、本発明の方法は、心不全を中和、処置、減少、遅延および/または予防するために使用される。したがって、対象における心不全を処置および/または予防するための方法であって、
−このような処置および/または予防の必要な対象内で、本明細書において特定されているとおり心不全において下方調節されているmiRNAの発現、量および/または活性を増加させ、および/または本明細書において特定されているとおり心不全において上方調節されているmiRNAの発現、量および/または活性を減少させることを含む方法をさらに提供する。これは、例えば、下方調節された、および上方調節されたmiRNAそれぞれに対して、これらのmiRNAの標的mRNA間の相互作用を増加させることにより、および/またはこれらのmiRNAの標的mRNA間の相互作用を減少させることにより達成され得る。
【0051】
1つの好ましい態様において、該対象は、心不全を有する、または心不全の危険性を有すると診断されている。別の態様において、該方法は、一般的に非罹患対象において心不全を予防するために実施される。
【0052】
例えば、miRNAの発現および/または活性を増加させることができる活性化化合物を投与することにより、直接的に本明細書において示されている心不全において下方調節されるmiRNAの発現、量および/または活性を増加させることができる。また、例えば、miRNAのインヒビターの発現、量および/または活性を減少させることにより、間接的にmiRNAの発現、量および/または活性を増加させることができる。本明細書において示されている心不全において上方調節されるmiRNAの発現、量および/または活性を減少させるという逆もある。
【0053】
好ましい態様において、miRNAの量は、プリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNA、またはそれらの機能性部分もしくは誘導体を該対象に投与することにより増加する。これらのいずれかの化合物、またはこれらの化合物の任意の組み合わせの投与は、標的mRNAの(増加された)中和、したがって、心不全の中和および/または予防をもたらす。プリ−miRNAは、RNAポリメラーゼIIによるゲノムmiRNA配列の転写後に得られる数キロベース長を有するmiRNAの一次転写産物である。プレ−miRNAは、リボヌクレアーゼDroshaによるプリ−miRNAのプロセッシング後に得られるより短い70−100ヌクレオチドのステムループ構造である。本明細書において示されているmiRNAの配列は、図3に記載されている。
【0054】
プリ−miRNAまたはプレ−miRNAまたはmiRNAの機能性部分は、プリ−miRNAまたはプレ−miRNAまたは(成熟)miRNAのそれぞれよりも短く、標的mRNA遺伝子(miRNAが結合するmRNAをコードする遺伝子)および/または標的mRNAに結合し、標的mRNA由来のタンパク質または該遺伝子の発現を中和することができる少なくとも7ヌクレオチド長を有する核酸配列として本明細書において定義される。該機能性部分は、好ましくはmiRNAにより結合されることができる標的mRNAの同じ3’UTR領域に結合することができる。該機能性部分は、好ましくはmiRNAのシード領域の配列を含む。miRNAのシード領域は、天然miRNAの5’領域に存在する。該シード領域は標的認識に特に関与する。miRNAのシード領域の配列は、miRNAとmRNA間の結合試験を実施することにより困難性または発明力なしに当業者により見出すことができる。したがって、プリ−miRNAまたはプレ−miRNAまたはmiRNAの機能性部分は、好ましくはシード領域配列を含む少なくとも7ヌクレオチド長を有する核酸配列である。しかしながら、標的mRNA遺伝子または標的mRNAに結合する能力が維持されている限り、該シード領域のわずかな修飾が可能である。したがって、プリ−miRNAまたはプレ−miRNAまたはmiRNAの機能性部分は、また、本明細書において示されているmiRNAのシード領域の配列と少なくとも72%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも86%、さらに好ましくは少なくとも90%配列同一性を有する配列を含む、少なくとも7ヌクレオチド長を有する核酸配列を含む。
【0055】
プリ−miRNAまたはプレ−miRNAまたはmiRNAの機能性誘導体は、本明細書において、プリ−miRNAまたはプレ−miRNAまたはmiRNAと70%以上100%未満の配列同一性を有する配列を含み、定量的考察にかかわりなく共通して少なくとも1個の同じ特性を有する分子と定義される。該機能性同等物は、プリ−miRNAまたはプレ−miRNAまたはmiRNAと必ずしも同程度ではないが、標的mRNA遺伝子および/または標的mRNAに結合し、該遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を中和することができる。このような機能性同等物は、例えば:
−1つ以上のヌクレオチドがプリ−miRNAまたはプレ−miRNAまたはmiRNAの天然配列に付加されたポリヌクレオチド;
−シード領域配列が図3において示されているmiRNA配列と少なくとも72%配列同一性を維持している限り、1−40%間のヌクレオチドが1つ以上の他のヌクレオチドにより置換されているプリ−miRNAまたはプレ−miRNAまたはmiRNA分子;および/または
−得られる産物が非天然ヌクレオチドを有するように、少なくとも1個のヌクレオチドが修飾されているプリ−miRNAまたはプレ−miRNAまたはmiRNA誘導体を含む。好ましくは、プリ−miRNAまたはプレ−miRNAまたはmiRNAの機能性同等物は、プリ−miRNAまたはプレ−miRNAまたはmiRNAと少なくとも約75%配列同一性、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、さらに好ましくは少なくとも約95%を有するヌクレオチド配列を有する。配列同一性が高いほど、該機能性同等物はプリ−miRNAまたはプレ−miRNAまたはmiRNAとより密接に似る。
【0056】
プリ−miRNAまたはプレ−miRNAまたはmiRNAの機能性同等物の好ましい例は、少なくともmiRNAのシード領域を含むベクター、またはシード領域配列と少なくとも72%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも86%、さらに好ましくは少なくとも90%配列同一性を有する配列を含むベクターである。
【0057】
「%配列同一性」なる用語は、本明細書において、配列をアラインし、所望により、必要なとき、最大%配列同一性を成し遂げるためにギャップを導入した後に、興味ある核酸配列におけるヌクレオチドと同一である核酸配列におけるヌクレオチドのパーセントとして定義される。アラインメントのための方法およびコンピュータープログラムは当分野でよく知られている。本明細書において使用される「核酸配列」および「ヌクレオチド」なる用語は、また、核酸配列に基づく、および/または該配列に由来の非天然分子、例えば、人工的に修飾された核酸配列、ペプチド核酸、ならびに少なくとも1個の修飾されたヌクレオチドおよび/または非天然ヌクレオチド、例えば、イノシンを含む核酸配列を含む。
【0058】
ポリヌクレオチドを細胞に導入するための方法は当分野で知られている。核酸を導入するための方法は、例えばリン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーションまたはリポソーム介在トランスフェクションを含む。あるいは、ポリヌクレオチドの直接注射を使用する。しかしながら、好ましくは、核酸配列はベクター、好ましくはウイルスベクターにより細胞に導入される。該ベクターは、好ましくはレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、またはレンチウイルスベクターを含む。1つの態様において、AAV9ベクターを使用する。
【0059】
ベクターにより核酸の細胞への導入を示す種々の用語が当分野で知られている。このような用語の例は、「形質導入」、「トランスフェクション」および「形質転換」である。核酸配列を有するベクターを作製するため、および該ベクターを細胞に導入するための技術は当分野で知られている。
【0060】
好ましくは、インビボにて哺乳動物細胞に導入することができるプリ−miRNAまたはプレ−miRNAまたはmiRNA、またはそれらの機能性部分または誘導体を使用する。本発明の方法の非限定的な例は、該核酸配列の細胞透過性ペプチド、マイクロキャリアまたはナノキャリアへの結合、または該核酸配列を含むリポソームの使用である。好ましくは、該インヒビターは、例えば、該インヒビターへ結合した人工HDL様粒子を使用して、心筋への送達を増強することにより、心筋細胞に標的化される。
【0061】
本発明において、心不全は、該対象において下方調節されているか、または下方発現されているプリ−miRNAまたはプレ−miRNAまたはmiRNA、またはそれらの機能性部分もしくは誘導体を、心不全に罹患しているか、または罹患している危険性がある対象に投与することにより、特に中和および/または予防される。心不全は、また、該対象において下方調節されているか、または下方発現されているmiRNAの発現、量および/または活性を増加または回復することができる化合物を投与することにより、または該対象において標的mRNAと下方調節されているか、または下方発現されているmiRNAの相互作用を増加することができる化合物を投与することにより、中和および/または予防される。したがって、本発明は、心不全の中和、処置、減少、遅延および/または予防における使用のための、該対象において下方調節されているか、または下方発現されているプリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNA、またはそれらの機能性部分もしくは誘導体、または、細胞において本明細書において示されている心不全において下方調節されているか、または下方発現されているmiRNAの発現、量および/または活性を増加または回復することができる化合物、または、標的mRNAと本明細書において示されている心不全において下方調節されているか、または下方発現されているmiRNAの相互作用を増加することができる化合物をさらに提供する。本明細書において示されている心不全において上方調節されているまたは上方発現されているmiRNAについての逆は真である。
【0062】
したがって、上記化合物またはそれらの任意の組合せは、心不全に対する薬剤または予防剤の調製に対して特に適当である。したがって、本明細書において示されているプリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNA、またはそれらの機能性部分もしくは誘導体の使用、または細胞におけるmiRNAの発現、量および/または活性を増加または回復することができる化合物の使用、または心不全に対する薬剤または予防剤の調製のための標的mRNAと該miRNAの相互作用を増加することができる化合物の使用をさらに提供する。該予防剤は、心不全の危険性が高い対象、ならびに心不全にすでに罹患している対象に対して特に適当である。しかしながら、該予防剤は、また、一般的に非罹患対象における心不全の予防に対して適当である。
【0063】
上記は、また、本明細書において特定されているmiRNAの標的mRNAによってコードされるタンパク質産物の量または活性を増加または減少させることにより成し遂げることができる。上記化合物のいずれか、またはそれらの任意の組合せの対象への投与は、該対象における心不全の中和および/または予防に対して特に適当である。1つの態様において、上記化合物のいずれか、またはそれらの任意の組合せが、心不全と診断された対象に投与される。別の態様において、上記化合物のいずれかまたはそれらの任意の組合せは、心不全の危険性が高い対象、例えば、損傷または疾患にすでに罹患している対象に投与される。しかしながら、該化合物またはそれらの任意の組合せは、また、一般的に非罹患対象における心不全の予防に対して適当である。
【0064】
すでに記載されているとおり、心不全の存在または危険性を確立するための方法は、心臓機能の試験を含む。今回、本明細書において特定されている(プリ/プレ)miRNAレベルまたは標的mRNAによってコードされるタンパク質のレベルの蓄積の測定を含む方法を提供することができることを見出した。しかしながら、今回、本発明は、miRNAのグループと心不全間の関連の存在を記載し、さらなる方法が利用できるようになった。本発明において、心不全の存在または危険性は、対象のサンプルにおける本明細書において特定されている心不全と関連するプリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNAの量が特定の参照値より高いか低いかを決定することにより確立される。1つの態様において、該参照値は、健常対象または健常集団におけるmiR−191、miR−30e、miR−744、miR−142−3pおよびsolexa−2952−306からなる群から選択されるプリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNAの量を示す。対象のサンプルにおける該プリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNAの量が参照値よりも有意に低いとき、標的mRNA発現は有意に中和されない。結果として、標的mRNAによってコードされるタンパク質の発現は非常に高く、対象は心不全に罹患している、または罹患している危険性がある。このような場合において、本発明の治療が推奨される。
【0065】
他方では、対象のサンプルにおけるmiR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR−652、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、miR−302dおよび/またはsolexa−3927−221からなる群から選択されるmiRNAのプリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNAの量が参照値よりも有意に高いとき、標的mRNA発現(またはタンパク質への標的mRNAの翻訳)は大幅に中和される。この場合、対象は、また、心不全に罹患している、または罹患している危険性があると診断される。
【0066】
心不全と関連するプリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNAの量は、サンプル、好ましくは血液サンプルまたは尿サンプルからのRNAの単離後に決定され得る。RNAの単離は、好ましくは、存在するときRNaseを不活性化するために、強い変性剤、例えば、GITC、LiCl、SDSおよび/またはフェノールの存在下で実施される。RNAを単離するための方法は、市販のRNA単離キット、例えば、例えば、mirVana PARIS kit (Ambion) en Trizol LS (Invitrogen)の使用を含む当分野で知られている。しかしながら、サンプルは、RNAの単離なしに、例えば、サンプルから小胞、例えば、微小胞を単離することにより、miRNA配列の検出のために処理することができる。
【0067】
サンプルにおけるmiRNAの検出のための方法は、当業者に知られており、ノーザンブロット法、マイクロおよびマクロアレイの使用、インサイチュハイブリダイゼーション、液体相の単一の分子検出、超並列配列決定および定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR)を含む。サンプルにおけるRNAは、好ましくはmiRNA配列の検出の前に増幅される。RNA配列の増幅のための方法は、当分野で知られており、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)および核酸配列ベースの増幅(NASBA)を含む。好ましい増幅方法は、例えば、SYBR GREEN(Roche, Basel, Switzerland)または蛍光標識されたTaqman プローブ(Applied Biosystems, Foster City, USA)の使用によるRNA配列の定量的増幅を含む。
【0068】
逆転写酵素介在cDNA合成のためのプライマーは、ライゲーションにより、またはターミナルトランスフェラーゼの作用を介して、全てのmiRNA配列に対する共有の配列、例えば、ポリ(A)−テイルの提供、次にアダプター−オリゴ(dT)プライマーのアニーリングにより提供され得る。さらなる方法は、ステムループプライマーの使用、および/またはmiRNA−特異的プライマーの使用を含む。好ましくはリアルタイムPCRによる、RNA配列の定量的増幅は、好ましくは、ユニバーサルプライマーおよびmiRNA−特異的プライマーを含む。
【0069】
検出、cDNA合成および/または増幅のために使用されるプライマーは、好ましくはRNAヌクレオチド、DNAヌクレオチドまたは修飾されたヌクレオチド、例えば、Locked 核酸(LNA)ヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)ヌクレオチド、および/または2’−O−アルキル修飾、2’−フルオロ修飾、4’−チオ修飾、ホスホロチオエート結合、モルホリノ結合、ホスホノカルボキシ結合を含む。好ましい態様において、プライマー、好ましくはmiRNA−特異的プライマーの長さは、特定のmiRNAの長さと同一である。さらに好ましい態様において、miRNA特異的プライマーの長さは、特定のmiRNAの長さに依存してmiRNAの長さよりも短く、例えば、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、または23ヌクレオチドである。プライマー、好ましくはmiRNA−特異的プライマーの配列は、好ましくは、miRNAまたはmiRNAに加えられるアダプター配列の配列と比較して1または2個のミスマッチを含み、より好ましくはmiRNAの配列と同一である。
【0070】
サンプルにおける1つ以上のmiRNAの検出のための方法および手段は、好ましくはキットとして提供される。該キットは、好ましくは、プライマーのセット、好ましくは少なくとも1個の特異的なプライマーのセット、酵素、例えば、RNA依存性DNAポリメラーゼおよび/またはDNA依存性DNAポリメラーゼ、ならびに反応行うための少なくとも1個のバッファーを含む。該キットは、例えば凍結乾燥後の、乾燥させた物質、または液体として提供され得る。
【0071】
対象のサンプルにおけるプリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNAの量が参照値と本質的に同じであるとき、標的mRNA発現は十分に中和されている。この場合、対象は、心不全に罹患している、または罹患する危険性があると診断されない。
【0072】
もちろん、健常対象のもの以外の他の種類の参照値を使用することができる。例えば、参照値は、心不全に罹患している対象または集団におけるプリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNAの量を示すものを使用することができる。この場合、該参照値と本質的に同じであるプリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNAの量を有するサンプルは、心不全(の危険性)を示す。該値が非常に少ない、または多いサンプルは健常を示す。
【0073】
したがって、本発明は、対象が心不全に罹患しているか否かを、または対象が心不全を発症する危険性が高いか否かを決定するための方法であって、
−該対象由来のサンプルを得;
−該サンプルにおいて本明細書において心不全と関連すると示されているプリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNAの量を決定し;
−該量と参照量を比較し;
−対象が心不全に罹患しているか否か、または心不全を発症する危険性が高いか否かを該比較から決定する
ことを含む方法を提供する。
【0074】
対象のサンプルにおけるプリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNAの量は、好ましくは結合化合物を使用して確立される。少なくとも一部のサンプルを、好ましくはこのような結合化合物と接触させ(所望によりサンプルの以前の処理後)、その後、非結合成分を好ましくは洗い流し、結合化合物を好ましくは可視化および定量化する。したがって、1つの態様は、対象が心不全に罹患しているか否かを、または対象が心不全を発症する危険性が高いか否かを決定するための本発明の方法であって、少なくとも1部の該サンプルとプリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNAに特異的に結合することができる少なくとも1個の化合物を接触させることをさらに含む方法を提供する。もちろん、該サンプルの一部のみが使用されるとき、適当な試験が実施されるようにmicroRNAを含む一部を使用される。
【0075】
サンプルは、好ましくは血液または血漿または尿サンプルである。
本発明は、本発明の方法を実施するためのパーツのキットをさらに提供する。したがって、
−心不全と関連すると本明細書において示されているプリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNAに特異的に結合することができる少なくとも1個の化合物;および
−対象が心不全に罹患しているか否かを決定するための該化合物の使用のための指示書
を含むパーツのキットをさらに提供する。
【0076】
本発明は、本発明の治療を実施するためのパーツのキットをさらに提供する。このようなパーツのキットで、標的mRNA発現は、一般的に、miRNAを介して中和される。本発明のパーツのキットは、
−心不全において下方調節または下方発現されると本明細書において示されているプリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNA、またはそれらの機能性部分もしくは誘導体、および/または
−細胞において心不全において下方調節または下方発現されると本明細書において示されているプリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNAの発現、量および/または活性を増加または回復することができる化合物、および/または
−標的mRNAと心不全において下方調節または下方発現されると本明細書において示されているプリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNAの相互作用を増加することができる化合物、および
−必要とする対象における心不全を中和、処置、減少、遅延および/または予防するための該化合物の使用のための指示書を含む。心不全において下方調節または下方発現されると本明細書において示されている該プリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNA、またはそれらの機能性部分もしくは誘導体は、好ましくはベクターに存在する。また、任意の上記化合物をコードする核酸配列を含むベクターを使用することができる。好ましくは、該ベクターは、ウイルスベクター、さらに好ましくはレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスまたはレンチウイルスベクターを含む。1つの態様において、AAV9ベクターを使用する。
【0077】
したがって:
−心不全において下方調節または下方発現されると本明細書において示されているプリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNA、またはそれらの機能性部分もしくは誘導体、および/または
−細胞において心不全において下方調節または下方発現されると本明細書において示されているmiRNAの発現、量および/または活性を増加または回復することができる化合物をコードする核酸配列、および/または
−心不全において下方調節または下方発現されると本明細書において示されている標的mRNAとmiRNAの相互作用を増加することができる化合物をコードする核酸配列
を含むベクターをさらに提供する。
【0078】
1つの好ましい態様において、該ベクターは、
−1つ以上のmiR−191、miR−30e、miR−744、miR−142−3pおよびsolexa−2952−306、またはそれらのプレ−またはプリ−miRNA、またはそれらの機能性部分もしくは誘導体、および/または
−細胞において1つ以上のmiR−191、miR−30e、miR−744、miR−142−3pおよびsolexa−2952−306の発現、量および/または活性を増加または回復することができる化合物をコードする核酸配列、および/または
−1つ以上のmiR−191、miR−30e、miR−744、miR−142−3pおよびsolexa−2952−306の標的mRNAとmiR−191、miR−30e、miR−744、miR−142およびsolexa−2952−306の相互作用を増加することができる化合物をコードする核酸配列を含む。このようなベクターは、心不全を中和するために特に適当である。
【0079】
本発明のベクターは、好ましくはレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスまたはレンチウイルスベクターを含む。1つの態様において、該ベクターは、AAV9ベクターを含む。
【0080】
任意の本発明のベクターの上記核酸配列は、好ましくは、該核酸の発現がトランスフェクション後に起こるようにプロモーターに作動可能に連結している。該プロモーターは、好ましくは哺乳動物細胞における発現のために適当である。特に好ましい態様において、本発明のベクターは、心不全(の危険性)が中和されるように、心臓細胞における発現のために適当である。この事実において、該ベクターは、好ましくは心臓細胞における発現に適当なプロモーターを含む。しかしながら、別の態様において、本発明のベクターは、ユビキタスプロモーターを含む。本発明のベクターの(少なくとも1個の)核酸の発現が任意に調節されるように、誘導プロモーターを使用する利点がある。誘導プロモーターの非限定的な例は、心筋細胞特異的プロモーターである心臓トロポニンおよびアルファミオシン重鎖である。1つの態様において、心臓繊維芽細胞特異的プロモーターを使用してもよい。
【0081】
本発明のベクターは治療のために特に適当である。したがって、心不全を中和、処置、減少、遅延および/または予防するための薬剤および/または予防剤の調製のための上記定義のベクターの使用をさらに提供する。
【0082】
また、対象における心不全を中和、処置、減少、遅延および/または予防するための方法であって、治療量の本発明のベクターを対象に投与することを含む方法も提供する。繰り返しになるが、該ベクターは、好ましくはレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスまたはレンチウイルスベクターを含む。1つの態様において、AAV9ベクターを使用する。本発明のベクターを含む単離された細胞または組換え細胞を提供する。
【0083】
インビトロにてプリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNAを有する細胞を提供することができる。このような細胞は研究目的のために特に適当である。さらに、このような細胞は治療のために適当である。例えば、1つ以上のmiR−191、miR−30e、miR−744、miR−142−3pおよびsolexa−2952−306を過剰発現する細胞を、心不全の危険性を減少させるために対象に投与することができる。したがって、心不全を中和、処置、減少、遅延および/または予防するための薬剤および/または予防剤の調製のための、1つ以上のmiR−191、miR−30e、miR−744、miR−142−3pおよびsolexa−2952−306、またはそれらの機能性部分もしくは誘導体を過剰発現することができる単離された細胞の使用をさらに提供する。あるいは、心不全に罹患している対象において過剰発現されていると本明細書において示されているmiRNAの標的mRNAによってコードされる1つ以上のタンパク質を過剰発現する、好ましくは分泌することができる単離された細胞の使用を予測する。
【0084】
本明細書において示されている化合物の1種または組合せを、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と共に含む心不全の予防および/または処置を可能にする医薬組成物も、本明細書において提供される。
【0085】
本発明の医薬組成物は、本明細書において示されている下方調節または下方発現が心不全と関連するmiRNAのプリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNA、またはそれらの機能性部分もしくは誘導体、および/または
−細胞における該miRNAの発現、量および/または活性を増加または回復することができる化合物、および/または
−標的mRNAと該miRNAの相互作用を増加することができる化合物、および/または
−細胞における該miRNAを発現することができる本発明のベクター、および/または
−該miRNA、またはそれらの機能性部分もしくは誘導体を過剰発現することができる細胞、および/または
−本明細書において示されている上方調節または過剰発現が心不全と関連するmiRNAの標的mRNAによってコードされるタンパク質、または該タンパク質を発現することができるベクターまたは細胞
を薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と共に含み得る。
【0086】
また、対象における心不全を中和、処置、減少、遅延および/または予防するための方法であって、治療量の本発明の医薬組成物を該対象に投与する方法も提供する。
【0087】
−上方または下方調節が本明細書において示されている心不全と関連する1つ以上のプリ−miRNAおよび/またはプレ−miRNAおよび/またはmiRNA、またはそれらの機能性部分もしくは誘導体を含む外因性核酸配列、および/または
−上方または下方調節が細胞において本明細書において示されている心不全、またはそれらの機能性部分もしくは誘導体と関連するmiRNAの発現、量および/または活性を増加または阻害することができる化合物をコードする外因性核酸配列、および/または
−標的mRNAと上方または下方調節が本明細書において示されている心不全と関連するmiRNAの相互作用を増加することができる化合物をコードする外因性核酸配列
を含む非ヒト動物をさらに提供する。
【0088】
該非ヒト動物は、好ましくは、哺乳動物を含む。1つの好ましい態様において、該非ヒト動物は、試験動物、例えば、齧歯動物、ウサギ、ヤギ、ウシ、ヒツジまたはサルを含む。本発明のベクター、単離された細胞、および/または医薬組成物で提供されている非ヒト動物も提供される。本発明の非ヒト動物は、とりわけ、本明細書において示されている心不全を脱調節するmiRNAの発現、量および/または活性を阻害または減少することができる候補化合物のスクリーニング、検出および/または同定のために有用である。このような非ヒト試験動物は、また、とりわけ、標的mRNAとその対応するmiRNAの相互作用を減少させることができる候補化合物のスクリーニング、検出および/または同定のために有用である。したがって、本発明の非ヒト試験動物は、とりわけ、心不全を増加または増強することができる候補化合物のスクリーニング、検出および/または同定のために有用である。候補化合物がこの特性を有することが明白であるとき、ヒト対象への投与を回避することを推奨する。
【0089】
本発明の処置方法において、対象は、好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトであり、本明細書において示されているmiRNAは、好ましい態様において、ホモサピエンス(hsa)miRNAを言及する。
【0090】
さらに別の態様において、方法は、心不全を中和、処置、減少、遅延および/または予防することができる候補化合物のスクリーニング、検出および/または同定のために提供される。この態様において、候補化合物を、一般的に、下方調節が心不全と関連するmiRNAの発現、量および/または活性を増加する可能性のある能力、上方調節が心不全と関連するmiRNAの発現、量および/または活性を減少する可能性のある能力、または本明細書において示されている異常miRNA発現と関連する異常タンパク質発現の効果を中和する能力に対してスクリーニングする。候補化合物がこの特性を有することが明白であるとき、心不全において中和または予防することができる。したがって、候補化合物が、心不全を中和、処置、減少、遅延および/または予防することができるか否かを決定するための方法であって、
−該候補化合物を細胞、好ましくは心臓細胞と接触させ、
−該候補化合物が、該細胞において本明細書において示されている異常miRNA発現と関連する異常タンパク質発現の効果を中和することができるか否かを決定する
ことを含む方法をさらに提供する。
【0091】
1つの好ましい態様において、候補化合物を、miRNA発現または活性時の候補化合物の効果がさらに明白に認識できるように、miRNA(好ましくは、心不全において下方調節されている)の発現を減少させる本発明の細胞と接触させる。しかしながら、また、本発明のスクリーニング方法において現在当分野で知られているあらゆる細胞または非ヒト動物を使用することができる。1つの態様において、本発明において非ヒト動物を使用する。
【0092】
別の態様において、候補化合物を、標的mRNAと本明細書において示されているmiRNA、またはそれらの機能性部分または誘導体の相互作用を増加する能力に対してスクリーニングする。候補化合物が下方調節が心臓疾患と関連するmiRNAに関してこの特性を有することが明白であるとき、心不全において中和または予防することができる。したがって、候補化合物が、心不全を中和、処置、減少、遅延および/または予防することができるか否かを決定するための方法であって、
−該候補化合物を細胞、好ましくは心臓細胞と接触させ、
−該候補化合物が、該細胞内で、mRNAと1つ以上のmiR−191、miR−30e、miR−744、miR−142−3pおよびsolexa−2952−306、またはそれらの機能性部分または誘導体の相互作用を増加することができるか否かを決定する
ことを含む方法をさらに提供する。
【0093】
好ましい態様において、本発明の心不全に罹患しているか、または心不全を発症する危険性があると対象を診断するための方法は、(a)miR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR−652、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、solexa−3927−221、miR−191、miR−302d、miR−30e、miR−744、miR−142−3pおよび/またはsolexa−2952−306、またはそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物から選択される少なくとも1個のmiRNAレベルを決定する工程、(b)工程(a)において決定された該少なくとも1個の遺伝子マーカーのレベルに基づいて、対象が心不全に罹患しているか、または心不全を発症する危険性があるか否かを診断する工程を含む。好ましいmiRNAは、miR−423−5pである。
【0094】
さらに好ましい態様において、本発明の方法は、miR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR−652、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、solexa−3927−221、miR−191、miR−302d、miR−30e、miR−744、miR−142−3pおよび/またはsolexa−2952−306、またはそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物から選択される少なくとも2個のmiRNA、miR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR−652、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、solexa−3927−221、miR−191、miR−302d、miR−30e、miR−744、miR−142−3pおよび/またはsolexa−2952−306、またはそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物から選択される、例えば、2個のmiRNA、3個のmiRNA、4個のmiRNA、5個のmiRNA、6個のmiRNA、7個のmiRNA、8個のmiRNA、9個のmiRNA、10個のmiRNA、15個のmiRNA、20個のmiRNA、全てのmiRNAレベルを決定することを含む。
【0095】
好ましい態様において、該少なくとも2個のmiRNAは、miR−423−5pおよびmiR−191*、miR−423−5pおよびmiR−15b、miR−423−5pおよびmiR−1228*、miR−423−5pおよびmiR−181a、miR−423−5pおよびmiR−18a*、miR−423−5pおよびmiR−107、miR−423−5pおよびmiR−299−3p、miR−423−5pおよびmiR−342−3p、miR−423−5pおよびmiR−652、miR−423−5pおよびmiR−675、miR−423−5pおよびmiR−129−5p、miR−423−5pおよびmiR−18b*、miR−423−5pおよびmiR−1254、miR−423−5pおよびmiR−622、miR−423−5pおよびHS_202.1、miR−423−5pおよびmiR−191、miR−423−5pおよびmiR−302d、miR−423−5pおよびmiR−30e、miR−423−5pおよびmiR−744、miR−423−5pおよびmiR−142−3p、miR−423−5pおよびsolexa−2952−306、またはmiR−423−5pおよびsolexa−3927−221からなる群から選択される。
【0096】
本発明の診断および/または予知するための好ましい方法は、心不全を診断および/または予知するために使用され得る1つ以上のバイオマーカーの検出をさらに含む。これらのバイオマーカーは、好ましくは、炎症マーカー、例えば、C−反応性タンパク質および炎症性サイトカイン、例えば、インターロイキン−6および腫瘍壊死因子(TNF);酸化ストレスの指標、例えば、低密度のリポタンパク質、マロンジアルデヒドおよびミエロペルオキシダーゼならびに血漿および尿中のイソプロスタンレベル;心室の細胞外マトリックスのリモデリングに対するマーカー、例えば、プロペプチドプロコラーゲンI型および/またはプロペプチドプロコラーゲンIII型;神経ホルモン、例えば、ノルエピネフリンおよびエンドセリン−1の血漿レベル;筋細胞損傷に対するマーカー、例えば、心臓トロポニンTおよびI;心臓リモデリングおよび線維症のマーカー、例えば、ガレクチン−3、および筋細胞ストレスに対するマーカー、例えば、ナトリウム利尿ペプチドBNPおよびN−末端プロ−脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT−プロ−BNP)、アドレノメデュリンおよびST2、インターロイキン−1受容体ファミリーメンバーを含む。加えて、本発明の診断および/または予知するためのさらなる好ましい方法は、慣用の方法、例えば、心電図検査法、心エコー検査、および/または心臓磁気共鳴画像法(CMR)を含む。
【0097】
さらに好ましい態様において、本発明の診断および/または予知するための方法の結果は、心不全に罹患しているか、または心不全を発症する危険性がある対象の処置の方法の少なくとも一部で決定される。可能な処置は、食事療法、例えば、ナトリウム摂取の低下、肥満対象における体重減少、および/または喫煙の阻止;薬物、例えば、アンジオテンシン変換酵素インヒビターおよび/またはベータ−アドレナリン受容体アンタゴニストの処方;および/または侵襲的方法、例えば、血行再建術、僧帽弁手術、心室回復および心臓移植を含む。処置の選択は、少なくとも1部分において、対象から得られたサンプルにおいて決定されるmiR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR−652、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、miR−191、miR−302d、miR−30e、miR−744、miR−142−3p、solexa−2952−306、およびsolexa−3927−221、ならびにそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物からなる群から選択される少なくとも1個の遺伝子マーカーの同一性および/または発現レベルに依存し得る。
【0098】
医薬組成物および治療的使用
医薬組成物は、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは小分子を含むことができ、まとめて本明細書において医薬化合物と呼ばれる。該医薬組成物は、治療有効量の本明細書に記載されているバイオマーカータンパク質、ポリヌクレオチドまたは小分子のいずれかを含み得る。
【0099】
本明細書において使用される「治療有効量」なる用語は、所望の疾患または状態を処置、改善または予防するか、または検出可能な治療または予防効果を示す治療剤の量を示す。該効果は、例えば、化学マーカーまたは抗原レベルにより検出することができる。治療効果は、また、身体症状の減少を含む。対象に対する正確な有効量は、対象のサイズおよび健康、状態の性質および程度、ならびに投与のために選択される治療剤または治療剤の組合せに依存する。したがって、あらかじめ正確な有効量を明細書に記載することは有益でない。しかしながら、所定の状況に対する有効量は、日常の実験により決定することができ、臨床医の判断の範囲内である。
【0100】
本発明の目的のために、有効用量は、投与される個体において約0.01mg/kgから50mg/kgまたは0.05mg/kgから約10mg/kgのポリヌクレオチドまたはポリペプチド組成物であり得る。
【0101】
医薬組成物は、また、薬学的に許容される担体を含むことができる。「薬学的に許容される担体」なる用語は、治療剤、例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチドおよび他の治療剤の投与のための担体を示す。該用語は、それ自体、組成物を受ける個体に有害な抗体の生産を誘導せず、過度の毒性なしに投与され得るあらゆる医薬担体を示す。適当な担体は、大型のゆっくり代謝される高分子、例えば、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマーおよび不活性ウイルス粒子であり得る。このような担体は当業者によく知られている。
【0102】
薬学的に許容される塩は、例えば、鉱酸塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩など;および有機酸の塩、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などを使用することができる。薬学的に許容される賦形剤の徹底的な議論は、Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Pub. Co., N.J. 1991)において利用できる。
【0103】
治療組成物における薬学的に許容される担体は、液体、例えば、水、塩水、グリセロールおよびエタノールを含み得る。さらに、補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などがこのようなビヒクルに存在し得る。一般的に、治療組成物は、注射可能な液体溶液または懸濁液のいずれかとして製造される;注射前に液体ビヒクル中の溶液または懸濁液のために適当な固体形態も製造され得る。リポソームは、薬学的に許容される担体の定義内に含まれる。
【0104】
送達方法
製剤化された本発明の医薬組成物は、(1)対象に直接投与するか;(2)エキソビボにて対象由来の細胞に送達するか;または(3)インビトロにて組換えタンパク質の発現のために送達することができる。
【0105】
該組成物の直接送達は、一般的に、皮下、腹腔内、静脈内、または筋肉内のいずれかへの注射によりにより成し遂げられるか、または組織の間質腔に送達される。該組成物は、また、神経系に投与することができる。他の投与様式は、局所的、経口的、坐薬的、および経皮的適用、針、ならびにパーティクル・ガンまたは皮下噴射器を含む。投与処置は、単回投与スケジュールまたは複数回投与スケジュールであり得る。
【0106】
形質転換細胞の対象へのエキソビボでの送達および再移植のための方法は、当分野で知られており、例えば、国際公開番号WO93/14778に記載されている。エキソビボでの適用において有用な細胞の例は、例えば、幹細胞、特に造血、リンパ細胞、マクロファージ、樹状細胞、または腫瘍細胞を含む。
【0107】
一般的に、エキソビボおよびインビトロでの両方の適用のための核酸の送達は、例えば、デキストラン介在トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン介在トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソームにおけるポリヌクレオチドのカプセル化、およびDNAの核への直接微量注入により成し遂げることができ、これらはすべて当分野でよく知られている。
【0108】
種々の方法が、治療組成物を体の特定の部位に直接投与するために使用される。アンチセンスポリヌクレオチド、サブゲノムポリヌクレオチド、または特定の組織に対する抗体を含む治療組成物の受容体介在で標的化された送達も使用される。受容体介在DNA送達技術は、例えば、Findeis et al., Trends in Biotechnol. (1993) 11:202-205; Wu et al., J. Biol. Chem. (1994) 269:542-46に記載されている。
【0109】
ポリヌクレオチドを含む医薬組成物は、好ましくは、遺伝子治療プロトコールにおいて局所投与のために約100ngから約200mgの範囲のポリヌクレオチドにおいて投与される。約500ngから約50mg、約1μgから約2mg、約5μgから約500μg、および約20μgから約100μgの濃度範囲のポリヌクレオチドが、また、遺伝子治療プロトコールに使用することができる。因子、例えば、作用方法ならびに形質転換および発現の有効性は、ポリヌクレオチドの究極の有効性のために必要とされる用量に影響するであろうことが考慮される。より良い発現が望ましいとき、組織のより広い地域、より大きな量のポリヌクレオチド、または連続投与プロトコールの同じ量の再投与、または例えば、神経終末またはシナプスの組織部分の異なる隣接部分または接近した部分への複数回の投与が、陽性治療結果に影響を与えるために必要であり得る。全ての場合において、臨床試験における日常の実験によって、最適な治療効果のための特定の範囲を決定するであろう。遺伝子治療ベクター、とりわけレトロウイルスベクターのさらに完全な記載は、WO98/00542に含まれており、これを本明細書に明白に包含させる。
【0110】
本発明は、今回、以下の非限定的な実施例の方法により説明される。
【実施例】
【0111】
実施例
実施例1.心不全の検出のための循環バイオマーカーとしてのmiRNAの使用
血液を、2人の健常個体および3人の心不全患者から取った。1550×gで15分間の遠心分離後、血漿を回収した。Small RNAを、製造業者のプロトコールにしたがって、RNA単離のためのPARIS kit(Applied Biosystems)を使用して、単離した。MiRNA発現プロフィールを、Illumina human miRNA Expression Profiling Panel(User card for bead chip cat#MI-501-1001, part#11297760 RevA)を使用して行った。これはパイロットアレイ(pilot-array)であった。Genespringソフトウェアを使用して、標準化を行った。
【0112】
全9個のmiRNAは、心不全患者の血液において有意に上方調節されることが見出され、6個のmiRNAは下方調節された(表1、ならびに図1および2参照)。
これらの特異的に調節されたmiRNAは、心不全の検出のためのバイオマーカーとして使用され得る。
表1.心不全患者の血漿中で特異的に発現するmiRNA
HFにおいて上方調節される
【表1−1】


HFにおいて下方調節される
【表1−2】

【0113】
実施例2.心不全の検出のための循環バイオマーカーとしてのmiRNAの使用。最終的なアレイ。
上記実施例を、この新規スクリーニングのために特異的に生産された新規アレイにおけるmiRNAの重複セットに対して繰り返した。12人の健常個体および12人の心不全患者から血液を取った。1550×gで15分間の遠心分離後、血漿を回収した。製造業者のプロトコールにしたがって、RNA単離のためのmirVana PARIS kit(Applied Biosystems)を使用して、Small RNAを単離した。MiRNA発現プロフィールを、Illumina human miRNA Expression Profiling Panelを使用して行った。Genespringソフトウェアを使用して、標準化を行った。
【0114】
図4に示されているアレイの結果は、QPCRにより確認した。1個のmiRNA(solexa-3927-221)は、図1のパイロットアレイ試験において下方調節されたように見られたが、この試験において上方調節されることを見出した。QPCR結果は、MiRNAが、実際に、心不全患者において上方調節されることを確認した。残っているmiRNAを確認した。
これらの特異的に調節されたmiRNAは、心不全の検出のためのバイオマーカーとして使用され得る。
【0115】
実施例3:心不全の検出のための循環バイオマーカーとしてのmiRNAの使用。独立臨床試験における確認。
方法
ヒト血漿サンプルを、ヒト材料の適当な二次使用に関して、Academic Medical Center施設内倫理委員会による一般的な権利放棄の下にインフォームドコンセントで得た。呼吸困難登録のために、血漿サンプルを、オランダにおける多施設努力(effort)関連の3個のセンターの一部として得た。記載されている試験を、Academic Medical Centerで得られたサンプルにおいて行った。
【0116】
それらが診断のためのFramingham基準に合ったとき、および循環NT−proBNPが1000ng/Lを越えたとき、対象をHF症例として分類した。臨床診断がHFを排除し、循環NT−proBNPがJanuzzi et al. (Januzzi et al. 2006. Eur Heart J 27:330)により公開されている加齢関連カットオフポイント以下であったとき、対象を非HF症例として分類した。全体で、77人の患者のうちの50人を基準に満足した呼吸困難登録のためにスクリーニングした。
【0117】
39人の健常コントロールおよび呼吸困難登録の50人の対象を試験した。50人の患者のうちの20人の対象は、HFを有さないと診断され、30人の対象はHFを有すると診断された。症例とコントロール間のMiRNA発現レベルを、スチューデントt−検定またはMann−Whitney−U−検定を使用して比較した。分析を、ロジスティック回帰分析を使用して行った。受信者動作特性(ROC)曲線は、非HF症例または健常コントロールとHF症例の区別におけるロジスティック回帰モデルの予期される確率の種々のカットオフレベルを越えた。ROC曲線下面積(AUC)を、miRNAの診断精度を評価するために概算した。全ての分析はSPSSを使用して行われ、全ての統計試験は両側であった。全ての分析に関して、p−値<0.05を統計的に有意と考えた。
【0118】
心筋組織
我々は、特発性DCMによって死んだ対象由来の死体心筋サンプルおよび非心臓症例によって死んだ対象由来の心筋サンプルを得た。全RNAをTrizol(Invitrogen)を使用して抽出した。RNAの質は保証され、次に、miR−423−5pの発現レベルを評価するためにリアルタイムPCRを使用した。これをU6の発現のために標準化し、miR−423−5pの相対心筋発現を評価した。
【0119】
血液処理
全ての対象の血液を、直接静脈穿刺を介して2.7mlのクエン酸ナトリウムを含むチューブ(BD Biosciences 363048)に回収した。miRNAアレイのために対象から10.8mlの血液を抜き取り、リアルタイムPCRのために、我々は5.4mlの血液を回収した。全ての血液を、回収の4時間以内に血漿の単離のために処理した。血液を、室温で10分間1550×gでの回転により処理した。血漿を新鮮なRNAse/DNAseなしのチューブに注意深く移し、−80℃で保存した。
【0120】
RNA単離
miRNAアレイのために、我々は4.4mlの血漿のRNAを単離し、リアルタイムPCRのために、我々は500μlの血漿のRNAを単離した。血漿を氷上で解凍し、RNAを液体サンプルに対して製造業者のプロトコールにしたがってmirVana PARIS kit (Ambion)を使用して単離した。サンプルを等量の酸フェノールクロロホルムで2回抽出し、カラムを最後の洗浄工程後かつ溶離前に3分間乾燥させるように、プロトコールを修正した。
【0121】
miRNAアレイ
miRNAアレイのための溶離サンプルから、50μlを12μlに濃縮し、それぞれのサンプルに対して、5μlをアレイのために使用した。Illumina human v2 miRNA Expression Profilingをこれらのサンプルにおいて行った。Illumina miRNAビーズチップで、1146個のmiRNAおよびmiRNAであると予期される他のsmall RNAを探査した。1,2の生のデータを前処理し、要約し、対数変換し、変位値を統計ソフトウェアパッケージR(バージョン2.9.0)におけるビーズアレイパッケージ(バージョン1.12.1)を使用して標準化した。差次的発現を、limma パッケージ(バージョン2.18.3)を使用するモデレートt−検定を使用して評価した。P−値が0.05未満であるとき、MicroRNAは有意に特異的に発現すると考えた。
【0122】
リアルタイムPCR
血漿サンプルに対して8μlの固定された容量のRNA単離からの溶離物、および心筋組織サンプルに対して1μgのインプット(input)RNAを逆転写反応においてインプットとして使用した。インプットRNAを、製造業者のプロトコールにしたがってmiScript逆転写キット(Qiagen)を使用して逆転写した。リアルタイムPCRを、High Resolution Melting Master(Roche)を使用して行った。MgCl2を2.5mmol/Lの最終濃度で使用し、2μlの8回希釈したcDNAを10μlの全容量で使用した。フォワードプライマーは、全てのUをTに変化されている成熟miRNA配列と同じ配列を有し、リバースプライマーの配列は、miRNAのcDNAを作製するために使用されるRTプライマー(miScript 逆転写キットの一部)のアダプター配列に相補的であるGAATCGAGCACCAGTTACGCである。リアルタイムPCR反応は、以下のプログラムを使用してLightCycler480 system II(Roche)で行った:95℃で10分プレインキュベーションならびに95℃で45秒変性、 55℃で45秒アニーリング、および72℃で45秒伸長の40サイクル。データは、LinRegPCR 定量的PCRデータ分析ソフトウェア、バージョン11.3.3を使用して分析した。このソフトウェアにより概算されるmiRNAの出発濃度をmiR−1249の概算出発濃度に対して補正し、内因性miRNAは我々のmiRNAアレイにおいて安定に発現した。
【0123】
結果
HF患者の血漿中のMiRNAの発現プロフィール
MiRNAアレイ(Illumina beadchip, human v2 miRNA panel)を、12人のHF患者および12人の健常コントロールの血漿由来のRNAで行った。全108個のmiRNAが、HF患者とコントロール間で有意に特異的に発現した。これらから、我々は、さらなる確認のために、これらの倍数変化および確率値に基づいて16個のmiRNAを選択した。
【0124】
独立集団における候補miRNAの確認
我々は、対象の3つの新規グループにおいて16個の候補miRNAの発現を確認した。第1のグループは、HFと診断された呼吸困難登録からの対象からなり(HF症例、n=30)、対象の第2のグループは、臨床診断でHFを有さないと確立された呼吸困難登録から得られ(非HF症例、n=20)、第3のグループは、健常コントロールからなった(n=39)。HF症例において、30人の対象のうち19人は、45%より低い駆出率(EF)を有するが、非HF症例において、20人の対象のうち3人は45%より低いものを有した。したがって、これらの後者の3人の対象は左室後機能障害を有するが、HFを診断するための臨床およびNTproBNP基準を欠いていた。miRNAの発現レベルをリアルタイムPCRにより評価し、アレイにおいて変化がないと見出されたmiRNAであるmiR−1249の発現レベルにより標準化した。HF症例 対 健常コントロールに対するmiRNAレベルの倍数変化は図5に示されている。
【0125】
候補miRNAの診断精度
1個のmiRNAであるmiR−423−5pは、年齢および性別を含む多変数ロジスティック回帰モデルにおいてHF診断の有意な予測因子であることが見出された。図6は、miR−423−5pが健常コントロールおよび呼吸困難非HF症例の両方と比較して、HF症例において特異的に増加することを示す。MiR−423−5pは、0.91(95%信頼間隔、0.84から0.98)の曲線下面積(AUC)で健常コントロールとHF症例を区別した。miR−423−5pの予測力は、また、HFおよび非HF症例(AUC、0.83;95%信頼間隔、0.71から0.94)と比較したとき、呼吸困難登録内で高かった。循環miR−423−5pは、NT−proBNPおよびEF(Spearman相関係数:0.43、確率値:0.002;Spearman相関係数:0.34、確率値:0.023、各々)と相関していた。miR−423−5pの発現は、正常なヒト心臓と比較してヒト不全心筋において3倍に増加した(図7参照)。
【0126】
miR−423−5pに加えて、6つの他のmiRNA(miR−18b*、miR−129−5p、miR−1254、miR−675、HS_202.1およびmiR−622)はHF症例において増加することを見出した。これらのうちのmiR−18b*およびmiR−675は図6に示されている。しかしながら、呼吸困難集団内で、miR−18b*は、また、非HF症例においてわずかに増加するが、miR−675は非HF症例においてHF症例と同じレベルに上方調節される。これは、HF症例を健常コントロールと比較することにより最初に同定されるいくつかのmiRNAは、また、実際に、呼吸困難がHFにより引き起こされないとき高いようであり、したがってHFにあまり特異的でないことを例示する。しかしながら、miR−18b*のようなmiRNAがさらにHFの重要なバイオマーカーであり得るように、NT−proBNPも右心室過負荷に起因する肺疾患でわずかに増加し得ることが知られている。
【0127】
候補miRNAが疾患重症度または病因に関するか否かを研究するために、我々は、これらのEF、NYHAクラスまたは基礎的病因にしたがってHF患者を分類した。循環miR−423−5pおよびmiR−18b*のレベルは、>45%のEFを有する対象と比較して、≦45%のEFを有する対象においてより高いが、これは統計的有意性に到達しなかった。miR−423−5pおよびmiR−18b*のような他のmiRNAの循環レベルは、NYHAクラスの増加で増加した。最後に、いくつかの候補miRNA(miR−18b*ではなくmiR−423−5pおよびmiR−675)は、HFの非アテローム性動脈硬化形態と比較してHFのアテローム性動脈硬化形態においてより高かった(図8参照)。
【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】

【図1−4】

【図2−1】

【図2−2】

【図2−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
心不全に罹患しているか、または心不全を発症する危険性があると対象を診断するための方法であって、
a)該対象から得られた体液における少なくとも1個の遺伝子マーカーのレベルを決定する工程、ここで、該少なくとも1個の遺伝子マーカーがmiR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR−652、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、miR−191、miR−302d、miR−30e、miR−744、miR−142−3p、solexa−2952−306、およびsolexa−3927−221、ならびにそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物からなる群から選択されるmiRNAである;
b)工程a)において決定された該少なくとも1個の遺伝子マーカーのレベルに基づいて、対象が心不全に罹患しているか、または心不全を発症する危険性があるか否かを診断する工程
を含む方法。
【請求項2】
−miR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR−652、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、miR−302dおよび/またはsolexa−3927−221、またはそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物の発現、量および/または活性が、心不全に罹患していないか、または心不全を発症する危険性がないコントロール対象と比較して上方調節されている;および/または
−miR−191、miR−30e、miR−744、miR−142−3pおよび/またはsolexa−2952−306、またはそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物の発現、量および/または活性が、心不全に罹患していないか、または心不全を発症する危険性がないコントロール対象と比較して下方調節されている
とき、該対象が心不全に罹患していると診断されるか、または心不全を発症する危険性があると予知される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の少なくとも1個の遺伝子マーカーのレベルに基づいて、対象が心不全に罹患しているか、または心不全を発症する危険性があるか否かを診断し;
該対象が心不全に罹患しているか、または心不全を発症する危険性があるとき、該対象を処置する
ことを含む、対象における心不全を処置または予防するための方法。
【請求項4】
−該対象内で少なくとも1個のmiRNAの発現、量および/または活性を減少させるか;または
−該対象内で少なくとも1個のmiRNAとそのmRNA標的の相互作用を減少させるか;または
−該対象内で少なくとも1個のmiRNAのmRNA標的の発現、量および/または活性を増加させる、
工程を含み、該少なくとも1個のmiRNAがmiR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR−652、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、miR−302dおよびsolexa−3927−221からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
対象における心不全を処置または予防するための請求項3に記載の方法であって、
−該対象内で少なくとも1個のmiRNAの発現、量および/または活性を増加させるか;または
−該対象内で少なくとも1個のmiRNAとそのmRNA標的の相互作用を増加させるか;または
−該対象内で少なくとも1個のmiRNAのmRNA標的の発現、量および/または活性を減少させる、
工程を含み、該少なくとも1個のmiRNAがmiR−191、miR−30e、miR−744、miR−142−3pおよびsolexa−2952−306からなる群から選択される方法。
【請求項6】
該miRNAの発現、量および/または活性または相互作用を増加させる該工程が、機能性miRNA、前駆体microRNA(プレ−miRNA)、またはmicroRNA一次転写産物(プリ−miRNA)として該miRNAを該対象に投与することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
医薬としての使用のための、好ましくは心不全の処置または予防における使用のための、miR−191、miR−30e、miR−744、miR−142−3pおよびsolexa−2952−306、またはそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物からなる群から選択されるmiRNA。
【請求項8】
医薬としての使用のための、好ましくは心不全の処置または予防における使用のための、miR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR 299 3p、miR−342−3p、miR−652、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、miR−302dおよびsolexa−3927−221、ならびにそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物からなる群から選択される少なくとも1個のmiRNAに特異的に結合し、それによりそれらの活性および/または機能を阻害することができる核酸。
【請求項9】
医薬としての使用のための、好ましくは心不全の処置または予防における使用のための、該(プレまたはプリ)miRNAまたは核酸を発現することができる、請求項7に記載のmiRNAまたはそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物をコードする核酸配列、または、請求項8に記載の核酸を含むベクター。
【請求項10】
医薬としての使用のための、好ましくは心不全の処置または予防における使用のための、請求項9に記載のベクターを含む細胞。
【請求項11】
対象における心不全を処置または予防するための医薬組成物であって、
−請求項7に記載の(プレ−もしくはプリ−)miRNA、請求項8に記載の核酸、請求項9に記載のベクター、または請求項10に記載の細胞、および
−薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤
を含む医薬組成物。
【請求項12】
心不全に罹患しているか、または心不全を発症する危険性があると対象を診断するためのパーツのキットであって、
−miR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR−652、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、miR−191、miR−302d、miR−30e、miR−744、miR−142−3p、solexa−2952−306、およびsolexa−3927−221、ならびにそれらの前駆体microRNA(プレ−miRNA)またはmicroRNA一次転写産物からなる群から選択される少なくとも1個のmiRNAに特異的に結合することができる少なくとも1個の化合物;および
−請求項1または2に記載の方法にしたがって、心不全に罹患しているか、または心不全を発症する危険性があると対象を診断するための該化合物の使用のための指示書
を含むキット。
【請求項13】
候補化合物がヒト対象における心不全を処置または予防することができるか否かを決定するための方法であって、
−該候補化合物とヒト組織細胞、好ましくは心臓組織細胞を接触させ、
−該候補化合物が該組織細胞におけるmiR−423−5p、miR−191*、miR−15b、miR−1228*、miR−181a、miR−18a*、miR−107、miR−299−3p、miR−342−3p、miR−652、miR−675、miR−129−5p、miR−18b*、miR−1254、miR−622、HS_202.1、miR−191、miR−302d、miR−30e、miR−744、miR−142−3p、solexa−2952−306、またはsolexa−3927−221の発現、量および/または活性を調節することができるか否かを決定する
ことを含む方法。

【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図4−5】
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【図4−6】
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【図4−7】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−525144(P2012−525144A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508418(P2012−508418)
【出願日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050251
【国際公開番号】WO2010/126370
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(511264744)アカデミス・メディス・セントルム・ベイ・デ・ウニフェルジテイト・ファン・アムステルダム (1)
【氏名又は名称原語表記】ACADEMISCH MEDISCH CENTRUM BIJ DE UNIVERSITEIT VAN AMSTERDAM
【Fターム(参考)】