説明

心不全を診断するための特異性抗体

本発明は、心不全のin vitro診断に関する。更に特には、本発明は、プロBNP(1−108)のヒンジ領域R7677の何れかの側に位置するペプチドドメインの特異的抗体に関する。特に、本発明は、前記抗体を取得する方法、及びBNP(1−76)及びBNP(77−108)以外の血中のプロBNP(1−108)を検出するための前記抗体の使用に関する。本発明は、血中プロBNP(1−108)の検出方法、試薬及びそのキットにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心室性心不全のin vitro診断の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
鬱血性の心不全は、特に高齢の人には、一般的な臨床症状である。鬱血性の心不全は、通常、運動に伴う咳、疲労及び抹消性浮腫の出現などの非特異的症状を、知らない間に引き起こすかたちで現れる。診断は、月並みに、臨床的兆候[4つのステージ、すなわちNYHA(つまり、ニューヨーク心臓協会)のステージI〜IVに分類される]、心エコー検査法、シンチグラフィ、運動テスト等の種々のパラメーターの研究に基いている。
【0003】
心疾患の重大さ、またその治療の高コストのため、当該症状の早期診断が、明らかに大いに望まれている。すなわち、当該早期診断により、重度の心不全の症状の急速な進行を回避できる。そのためには、人の心不全の危険の確認が必要とされる。このことはまた、より速く、より簡便で、かつ高価でない治療モニタリングの採用を可能にしている。不幸なことに、十分満足でき、かつ実に参考となる疾患の診断方法は存在しない。
【0004】
長年に渡り、心不全を予測する症状が起こる前のマーカーが捜し求められてきた。この点に関し、心臓肥大がナトリウム排泄増加活性を有するペプチドを生産し、分泌するという事実が説明されてきた。すなわち、心房性起源のペプチド、ANP(atrial natriurenic peptide)が、Bold et al.,Life Science 1981,vol.28(1):89-94により、ラットで発見され、BNP(brain natriurenic peptide)と呼ばれる心室起源のナトリウム排泄増加性ペプチドが、Sudoh et al.,Nature 1988,Vol.332:78-81により、豚で、続いてヒトで発見された。
【0005】
BNP前駆体は、前プロBNP(1−134)であり、心臓肥大では分子を前プロBNP(1−134)の形態で貯蔵している。当該前駆体が断されると、シグナルペプチド及びプロBNP(1−108)が放出される。プロBNP(1−108)は、108のアミノ酸のポリペプチドからなり、その配列は、
1PLGSPGSASDLETSGLQEQRNHLQGKLSELQVEQTSLEPLQESPRPTGVWKSREVATEGIRGHRKMVLYTLRAPR7677PKMVQGSGCFGRKMDRISSSSGLGCKVLRRH108
(配列番号1)である。
【0006】
プロBNP(1−108)は、分泌前及び/又は分泌中に、アミノ酸Arg76とSer77との間で切断され、まず、BNP(77−108)、BNP−32又はBNP(1−32)とも言われるBNP、及びプロホルモンのN−末端部分、すなわちプロBNPのN−末端フラグメント又はNT−プロBNPとも言われるBNP(1−76)になる。
【0007】
BNP又はBNP(77−108)、すなわち血管に作用する形態の分子は、32のアミノ酸のペプチドからなり、その配列は、
77PKMVQGSGCFGRKMDRISSSSGLGCKVLRRH108
(配列番号2)である。
【0008】
NT−プロBNP又はBNP(1−76)は、次の配列、
1PLGSPGSASDLETSGLQEQRNHLQGKLSELQVEQTSLEPLQESPRPTGVWKSREVATEGIRGHRKMVLYTLRAPR76
(配列番号3)を構成するプロBNP(1−108)の76のN−末端アミノ酸からなる。
【0009】
血中のホルホンのBNP、すなわちBNP(77−108)は、心室ジストロフィーを示す患者では高値であった。その上、血漿中のBNP(77−108)のアッセイでは、心室心不全を予測するマーカーとしてBNP(77−108)の使用を説明してきた。
しかしながら、ホルモンのBNP(77−108)が比較的不安定であることは良く知られている。その結果として、アッセイには特別の措置が必要である(Davidson, N.C.et al.,Circulation 1995,91:1276;Gobinet-Georges et al.,Clin.Chem.Lab.Med.2000; 38:519-23)。加えて、BNPの半減期は非常に短く、その血漿濃度はあまり高くない。その結果、心不全の危険においては、人によっては、一定の偽陰性の結果が観察される。従って、BNP(77−108)のアッセイは、NYHA分類のステージIの患者と健常人とを正しく識別することができない(Clerico A.et al.,J.Endocrinol.Invest. 1998;21:170-9;Del Ry S, et al.,Scand.J.Clin.Lab.Invest.2000;60:81-90)。
【0010】
当該困難を解決するために、特許出願国際公開第93/24531号パンフレットは、BNP(1−76)(プロBNPのN−末端フラグメント)、すなわちBNP(77−108)ホルモンと比べて長い半減期を有する多数の化合物の検出に基く、心不全のin vitro診断方法を記載している。しかしながら、当該方法は、出願の国際公開第93/24531号パンフレットでは、血液試料中のBNP(1−76)で実施するのは簡単ではないと考えられると記載している。事実、示した実施例のみがうまくいき、実際の血清では、合成ペプチド、ペプチドBNP(47−64)、BNP(1−76)の配列を使用すると、標準的レンジで得られた。この欠点を克服するには、それ以来、非常に洗練された自動システムが必要であることが判った。
【0011】
論文Hunt et al.,Biochemical and Biophysical Research Communications, vol.214(3), 1995,pp.1175-1183は、プロBNP(1−13)のN−末端フラグメントに対する抗血清を含む、心不全に苦しむ患者の血漿を用いるBNPの競争的RIAアッセイを記述している。当該論文は、心不全患者において、BNP(1−76)の濃度、これはBNP(77−108)の濃度と非常に良い相関を示すが、この濃度が、コントロールの人に観察される濃度と比べると非常に高いことを、はっきりと示している。
【0012】
しかしながら、血漿BNP(1−76)のみを特異的に抽出するために記載されたプロトコールは、Sep−pak C18(登録商標)カートリッジ(Millipore−Waters)上で血漿を抽出した後に、HPLCクロマトグラフィーに付す必要があるため、複雑である。その上、当該論文は、このようにして使用されてきたRIAアッセイでは、プロBNP(1−108)は認識できるほど現れてこないことを強調している。このことは、むしろ、プロBNP(1−108)は心臓組織から循環系へ分泌されるが、その後、N−末端アミノ酸の切断により、非常に早く小さなペプチドに分解していく、ことを示唆している。あるいは、当該論文によれば、プロBNP(1−108)は、抗プロBNP(1−108)抗血清がそれに結合できないように存在している。最後に、BNP(1−76)(プロBNPのN−末端フラグメント)は、BNP(77−108)よりもあるいはプロBNPのN−末端フラグメントよりも、心臓機能障害のより特異的なマーカーであるとさえ示唆している。
【0013】
論文Karl et al.,Scand.J.Clin.Lab.Invest.,1999,59(Suppl 230):177-181は、特許出願の国際公開第93/24531号パンフレットの方法と類似した、BNP(1−76)を検出する方法を記述しているが、患者の試料について得られた結果は示していない。
【0014】
論文Schulz et al.,Scand.J.Clin.Lab.Invest.,2001,vol.61,pp.33-42はまた、BNP(1−76)(プロBNPのN−末端フラグメント)に特異的なラジオイムノアッセイ、すなわち、抽出せずに、当該フラグメントのアミノ酸1−21に対する抗血清を使用するアッセイを記述している。著者は、心室心不全の診断におけるBNP(1−76)アッセイの利点と、またBNP(77−108)のアッセイとの良好な相関関係を確認している。プロBNP(1−108)の種々の循環形態の研究において、著者は、プロBNP(1−108)が、プロホルモンそのものの形及び切断生成物、すなわちBNP(1−76)(プロBNPのN−末端フラグメント)及びBNP(77−108)の形で血中を循環するという仮説を提唱した。しかしながら、プロBNP(1−180)の可能性のある生理学的活性及び心室心不全の予測又は診断マーカーとしてのプロBNP(1−180)の診断上の価値については、言及あるいは示唆が全くない。
【0015】
論文Shimazu et al.,Clinica Chimica Acta,2002,vol.316 pp.129-135は、血中のヒトBNPの分解、及び心不全患者の血漿中の免疫反応性BNPの循環分子形についての研究を示している。当該研究では、後者の血漿で、2つの免疫反応性BNP形、すなわち高分子量BNP(36KDで、これはプロBNP(1−180)のトリマーに対応する)及び低分子量BNPの存在を観察している。低分子量BNPは、ホルモンのBNP−32(ここでは、BNP(1−32)と言う)のN−末端のセリン及びプロリンが欠けたBNP−32の分解生成物の形(すなわち、脱SerPro−BNP(BNP3−32))と同時に存在する。
【0016】
プロBNP(1−108)及びホルモンのBNP(BNP−32、BNP(1−32)又はBNP(77−108))は、心臓によって血中へ分泌される。しかしながら、著者は、オリゴマー化された形(トリマー)でのプロBNP(1−108)が循環BNP(77−108)の濃度と同様な濃度で存在することを示唆していると思われるが、それを測定はしていない。その結果、プロBNP(1−108)の濃度と患者の臨床症状との相関関係は研究されていない。結果として、プロBNP(1−108)血清の診断的又は予知的価値は、ここでは説明されておらず、低分子量BNPを慣例的にアッセイできることは示唆もされていない。
【0017】
更に、プロBNP(1−108)に存在する一定の数のエピトープが知られている。すなわち、出願の国際公開第97/32900号パンフレットのBNP(77−108)検出の文脈に、BNP(77−108)の10のN−末端アミノ酸(AA 1−10)に対応する配列S77PKMVQGSGC86(配列番号105)のエピトープが記載されている。同様に、出願の国際公開第00/35951号パンフレットのBNP(1−76)(プロBNPのN−末端フラグメント)検出の文脈に、BNP(1−76)(プロBNPのN−末端フラグメント)の12のC−末端アミノ酸に対応する配列R65KMVLYTLRAPR76(配列番号106)のエピトープが記載され、類似した配列H64RKMVLYTLRAPR76(配列暗号107)は、出願の国際公開第00/45176号パンフレットに記載されている。
しかしながら、上記文献の中で、当該配列の中間体及びハイブリッドであるエピトープの存在について記述又は示唆する特許出願は存在しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
それゆえ、心不全の早期診断の状況には、先行技術の欠点を避ける方法の必要性がなお存在する。特に、一般的に使用され、信頼性があり、それ程多くは存在せず、比較的不安定なBNP(77−108)検出の欠点を回避し、同時に、BNPの他の分子形をアッセイすることによって招く複合体の抽出を防ぎ、洗練された自動化を必要とする範囲で使用できる簡便な方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
そのため、本発明の著者は、提示された問題を解決するために、別の方法を開発しようとしてきた。本発明の中心には、本発明者によってなされた予期しない発見があり、それは、ヒンジ配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85(配列番号4)又はプロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84(配列番号108)のドメインに位置する特定の性質を有するエピトープであって、少なくとも配列RAPR7677P(配列番号5)を含むエピトープについてである。
【0020】
事実、ウサギを、プロBNP(1−108)のヒンジ領域、すなわち、配列CY70TLRAPR7677PKMVQGSG85(配列番号16)のペプチド、又は配列CY70TLRAPR7677PKMVQGS84(配列番号109)のペプチドで免疫すると、驚くべきことに、得られた抗血清は、BNP(1−76)形及びBNP(77−108)形を実質的に認識せず、ヒンジ領域の前記ペプチドのみを特異的に認識する抗体を含むだけでなく、加えて、循環プロBNP(1−108)を認識する能力を有することを本発明者は発見した。
【0021】
本願の著者は、最初に、循環プロBNP(1−108)が、心不全を予測する効果的なマーカーであり、健常人よりも心不全患者に著しく高い濃度で存在することも示している。
【0022】
著者は、当該タイプの抗体の別の取得方は、完全なプロBNP(1−108)分子を用いて動物を免疫することであることも発見している。事実、著者は、完全なプロBNP(1−108)分子で免疫すると、ヒンジ領域の配列を特異的に認識する抗体の出現を誘導できることを見出している。
【0023】
加えて、本発明の著者は、本発明に従う抗体によって認識される最小エピトープが次の配列RAPR7677Pを有すると説明している。著者は、本発明の課題である抗体の成功した取得方法が、下記一般式:
1−X1−RAPRSP−X2−a2 (I)
[式中、
1は、水素原子であるかあるいはチオール、アルコール、アミノキシ、第一アミンもしくは第二アミン官能基、アミノカルボキシル基、ビオチニル基及びアセチル基から選ばれる官能基又は化学基を表し、
1は、0〜3のアミノ酸のペプチド配列であって、プロBNP(1−108)の天然配列に由来しても由来しなくてもよい配列を表し、
2は、0〜8のアミノ酸、好ましくは0〜7のアミノ酸のペプチド配列であって、プロBNP(1−108)の天然配列に由来しても由来しなくてもよい配列を表し、
2は、OH官能基、NH2官能基又はアルコキシ基を表す。]
で表されるペプチドで、動物を免疫することであることも示している。
【0024】
同様に、本発明の著者は、配列RAPR7677Pを含むペプチド又は下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z (II)
[式中、Xは、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zは、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表す。]
で表されるペプチドで動物を免疫することにより、同じ特異的な抗体を取得できることを示している。
【0025】
加えて、本発明の著者は、下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z (III)
[式中、Xは、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zは、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表す。]
で表されるペプチドで動物を免疫することにより、同じ特異的な抗体を取得できることを示している。
【0026】
本発明の著者はまた、血中の循環プロBNP(1−108)の検出に基く心不全の早期診断として簡便で信頼できる方法、及び循環プロBNP(1−108)の当該検出を実施するためのキットを開発してきた。
【0027】
従って、本発明の課題は、第一に、プロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85を特異的に認識し、BNP(1−76)又はBNP(77−108)を実質的に認識せず、第二に、ヒト血清又は血漿の試料中の循環プロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する、ことを特徴とする抗プロBNP(1−108)抗体にある。
【0028】
本発明の課題は、第一に、プロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84を特異的に認識し、BNP(1−76)又はBNP(77−108)を実質的に認識せず、第二に、ヒト血清又は血漿の試料中の循環プロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する、ことを特徴とする抗プロBNP(1−108)抗体にもある。
【0029】
本発明の課題は、特に、第一に、プロBNP(1−108)の配列PAPR7677Pを特異的に認識し、BNP(1−76)又はBNP(77−108)を実質的に認識せず、第二に、ヒト血清又は血漿の試料中の循環プロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する、ことを特徴とする抗プロBNP(1−108)抗体にもある。
【0030】
本発明の課題は、BNP(1−76)及びBNP(77−108)を実質的に除き、プロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85、配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84及び/又は前記配列RAPR7677Pを特異的に認識し、ヒト血清試料又は血漿試料中の循環プロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する抗プロBNP(1−108)抗体を取得するための方法であって、動物をプロBNP(1−108)分子の全体で免疫し、BNP(77−108)ペプチド及び/又はBNP(1−76)ペプチドを用いて、得られた抗血清を除去する方法にもある。
【0031】
所定の特異性抗原(免疫抗原)に対して得られる「抗血清の除去」という表現は、上記抗血清を、「非特異性抗原」、すなわち免疫抗原とは異なる抗原に接触させ、インキュベートし、次いで、上記「非特異性抗原」と反応した抗体を免疫学的に分離、除去し、このように除去(すなわち、非特異性抗体の除去)された抗血清を回収することによって、当該血清中に潜在的に存在する非特異的抗体の除去を意味しようとするものである。当該除去は、慣用的に、特定の抗原に対する特異的抗血清を提供するために役立つ。
【0032】
本発明の場合、プロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85及び/又は配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84又は配列RAPR7677Pを認識する抗血清は、上記BNP(77−108)及び/又はBNP(1−76)と接触させることにより、除去できる、すなわち、特異性を発現できる。例えば、後者については、固相に固定でき、当業者に知られた従来の技術に従う免疫吸着によるクロマトグラフィー用支持体として役立てることができる。
【0033】
本発明の課題は、下記式:
1−X1−RAPRSP−X2−a2 (I)
[式中、
1は、水素原子であるかあるいはチオール、アルコール、アミノキシ、第一アミンもしくは第二アミン官能基、アミノカルボキシル基、ビオチニル基及びアセチル基から選ばれる官能基又は化学基を表し、
1は、0〜3のアミノ酸のペプチド配列であって、プロBNP(1−108)の天然配列に由来しても由来しなくてもよい配列を表し、
2は、0〜7のアミノ酸のペプチド配列であって、プロBNP(1−108)の天然配列に由来しても由来しなくてもよい配列を表し、
2は、OH官能基、NH2官能基又はアルコキシ基を表す。]
で表されるペプチドにもある。
【0034】
本発明の課題は、下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z (II)
[式中、Xは、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zは、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表す。]
で表されるペプチドにもある。
【0035】
本発明の課題は、下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z (III)
[式中、Xは、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zは、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表す。]
で表されるペプチドにもある。
【0036】
上記式(I)及び(II)において、アミノ酸の数(Y70、R76、S77、S84又はG85)が、本発明の理解、及びプロBNP(1−108)配列に関する式(I)と(II)の配列の位置づけに役立つように自然に維持されていたことは注目に値すべきである。本願中の他の配列に関する数についても同じことが当てはまる。
【0037】
本発明は、配列X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z(II)、又は配列X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z(III)、あるいは部分RAPR7677Pをそのまま維持(特に非置換)する条件下で、位置70のアミノ酸の内の一つを位置85又は84に伝統的に又は非伝統的に置換した形での上述の配列(II)又は(III)の内の一つをそれぞれ含むペプチドにも関する。
【0038】
従って、本発明は、アミノ酸Y70、T71、L72、K79、M80、V81、Q82、G83、S84及びG85の内の1以上のアミノ酸で置換された配列X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z(II)又は配列X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z(III)であって、Xがないか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zがないか又はOH官能基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸であり得る配列に由来する配列を含むペプチドである。
【0039】
最後に、本発明は、配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85のペプチド及び配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84のペプチドに関する。
【0040】
本発明の課題は、BNP(1−76)及びBNP(77−108)を実質的に除き、プロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85、配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84及び/又は配列RAPR7677Pを特異的に認識し、ヒト血清試料又は血漿試料中の循環プロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する抗プロBNP(1−108)抗体を取得するための方法であって、下記式:
1−X1−RAPRSP−X2−a2 (I)
[式中、a1、X1、X2及びa2は、前記と同じ意味である。]
で表されるペプチドで動物を免疫し、場合により、BNP(77−108)ペプチド及び/又はBNP(1−76)ペプチドを用いて、得られた抗血清を除くことを特徴とする方法にもある。このようにして得られた抗体は、単一特異的な抗体である。
【0041】
本発明の課題は、BNP(1−76)及びBNP(77−108)を実質的に除き、プロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85、配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84及び/又は配列RAPR7677Pを特異的に認識し、ヒト血清試料又は血漿試料中の循環プロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する抗プロBNP(1−108)抗体を取得するための方法であって、
下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z (II)
又は下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z (III)
[式中、X及びZは、前記で定義したとおりである。]
で表されるペプチドで動物を免疫し、場合により、BNP(77−108)ペプチド及び/又はBNP(1−76)ペプチドを用いて、得られる抗血清を除くことを特徴とする方法にもある。
【0042】
本発明の課題は、BNP(1−76)及びBNP(77−108)を実質的に除き、プロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85、配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84及び/又は配列RAPR7677Pを特異的に認識し、ヒト血清試料又は血漿試料中の循環するプロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する抗プロBNP(1−108)抗体を分泌するハイブリドーマを取得するための方法であって、
下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z (II)
又は下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z (III)
[式中、X及びZは、前記で定義したとおりである。]
の部分RAPR7677Pをそのまま維持(特に非置換)する条件下で、伝統的に又は非伝統的に置換された形でのペプチドで動物を免疫し、場合により、BNP(77−108)ペプチド及び/又はBNP(1−76)ペプチドを用いて、得られた抗血清を除くことを特徴とする方法にもある。
【0043】
本発明の課題は、BNP(1−76)ペプチド及びBNP(77−108)ペプチドを実質的に除き、プロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85、配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84及び/又は配列RAPR7677Pを特異的に認識し、ヒト血清試料又は血漿試料中の循環プロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する抗プロBNP(1−108)抗体を取得するための方法であって、配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85のペプチド又は配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84のペプチドで動物を免疫し、場合により、BNP(77−108)ペプチド及び/又はBNP(1−76)ペプチドを用いて、得られた抗血清を除くことを特徴とする方法にもある。
【0044】
本発明の課題は、BNP(1−76)及びBNP(77−108)を実質的に除き、プロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85、配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84及び/又は配列RAPR7677Pを特異的に認識し、ヒト血清試料又は血漿試料中の循環するプロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する抗プロBNP(1−108)抗体を分泌するハイブリドーマを取得するための方法であって、
次式:
1−X1−RAPRSP−X2−a2 (I)
[式中、a1、X1、X2及びa2は上記と同じ意味である。];
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z (II)
[式中、X及びZは上記と同じ意味である。];
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z (III)
[式中、X及びZは上記と同じ意味である。];
部分RAPR7677Pをそのまま維持(特に非置換)する条件下で、伝統的に又は非伝統的に置換された形での
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z (II)
[式中、X及びZは上記と同じ意味である。];
部分RAPR7677Pをそのまま維持(特に非置換)する条件下で、伝統的に又は非伝統的に置換された形での
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z (III)
[式中、X及びZは上記と同じ意味である。];
70TLRAPR7677PKMVQGSG85;及び
70TLRAPR7677PKMVQGS84
のペプチドから選ばれるペプチドで動物を免疫し、
イムノグロブリン分泌リンパ球を当該動物から採取し、次いで、
当該リンパ球をミエローマ細胞と融合して、少なくとも一種のイムノグロブリン分泌ハイブリドーマを得る、
ことを特徴とする方法にもある。
【0045】
上記の方法は、ハイブリドーマ取得の慣用的な技術、すなわちKohler and Milstein,(1975) Nature(London),256:495-497に記載された原理に対応する。
【0046】
本発明の課題は、このようなハイブリドーマ及び上記ハイブリドーマによって分泌されるモノクローナル抗プロBNP(1−108)抗体にもある。
【0047】
本発明の課題は、生物学的試料、好ましくは血液、血漿又は血清を、BNP(1−76)及びBNP(77−108)を実質的に除き、プロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85、配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84及び/又は配列RAPR7677Pを特異的に認識し、ヒト血清試料又は血漿試料中の循環プロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する抗プロBNP(1−108)抗体に接触させること、並びに試料中のプロBNP(1−108)を検出することを含む、ヒトの心不全のin vitro診断の方法にもある。
【0048】
本発明は、一般的に、ヒトの心不全のin vitro診断方法であって、
a)生物学的試料、好ましくは血液、血漿又は血清を、BNP(1−76)及びBNP(77−108)を実質的に除き、プロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85、配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84及び/又は配列RAPR7677Pを特異的に認識し、ヒト血清試料又は血漿試料中の循環プロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する抗プロBNP(1−108)抗体に接触させること、
b)抗原抗体複合体の形成を可能にする条件下で、当該混合物をインキュベートすること、及び
c)場合により、一次複合体中に存在するプロBNP(1−108)に特異的に結合できる標識検出抗体を用いるか、又は一次複合体中に存在する上記プロBNP(1−108)に対する抗体に結合できる標識検出抗原を用いるかして、形成された抗原抗体複合体を明らかにすること、
を含む方法を提供する。
【0049】
特に、本発明は、上述のステップa、b及びcに加えて、明らかにされた抗原抗体複合体の量を、人の臨床症状と相関させるためのステップd)を含む、ヒトの心不全のin vitro診断方法を提供する。
【0050】
本発明の課題は、生物学的な試料、特に血液、血漿又は血清の試料中のプロBNP(1−108)を検出するためのキットであって、BNP(1−76)及びBNP(77−108)を実質的に除き、プロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85、配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84及び/又は配列RAPR7677Pを特異的に認識し、ヒト血清試料又は血漿試料中の循環プロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する、少なくとも一つの抗プロBNP(1−108)抗体を含むキットでもある。
【0051】
最後に、本発明は、生物学的な試料、特に血液、血漿又は血清の試料中のプロBNP(1−108)を検出するためのキットであって
次式:
1−X1−RAPRSP−X2−a2 (I)
[式中、a1、X1、X2及びa2は上記と同じ意味である。];
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z (II)
[式中、X及びZは上記と同じ意味である。];
部分RAPR7677Pをそのまま維持(特に非置換)する条件下で、伝統的に又は非伝統的に置換された形での
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z (II)
[式中、X及びZは上記と同じ意味である。];
部分RAPR7677Pをそのまま維持(特に非置換)する条件下で、伝統的に又は非伝統的に置換された形での
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z (III)
[式中、X及びZは上記と同じ意味である。];
70TLRAPR7677PKMVQGSG85;及び
70TLRAPR7677PKMVQGS84
のペプチドの群より選ばれる少なくとも一つのペプチドを含む化合物を、スタンダード及び/又はコントロールとして含むキットに関する。
【0052】
<定義>
本発明の文脈において、「生物学的試料」又は「生物学的に流動性の試料」は、好ましくは、血液、血漿、血清、尿、濃脊髄液、唾液等の生物学的液体からなる。
【0053】
「心不全」の用語は、心臓機能の異常が、器官の代謝要求を満足する程に十分に心臓が血液を送れないことに起因する、及び/又は、心臓が、異常な高充填圧力を除いて、当該要求を満たしていない、病状を意味することを意図している。特に、右及び/又は左の心不全である。
【0054】
「抗体」の用語は、完全な抗体又は抗体の機能的フラグメント(遺伝子工学によって得られるものでも又は得られないものでもよい)であって、前記抗体を、少なくとも一つの抗原結合サイトにおいて、抗原性化合物の少なくとも一つの抗原決定部に結合させることを含む、あるいは結合させることからなるものを言う。
抗体フラグメントの例を挙げれば、Fab、Fab’と(Fab‘)2フラグメント、及び1本鎖可変フラグメント(scFv鎖)である。
【0055】
本発明による抗プロBNP(1−108)抗体は、ポリクローナ抗体でも又はモノクローナル抗体でもよい。本発明に従うポリクローナル抗プロBNP(1−108)抗体は、特に、ウサギ、マウス等の動物をプロBNP(1−108)全体を使って免疫し、得られる抗血清を採取し、そしてそれを、例えばBNP(77−108)及び/又はBNP(1−76)を含む免疫吸着剤上で、それ自体当業者に知られた方法に従って除去することによって得られる。本発明に従うモノクローナル抗プロBNP(1−108)抗体は、特に、Kohler and Milstein(Nature(London),256:495-497(1975)の慣用的な方法によって得られる。
【0056】
モノクローナル抗体又は単一特異的ポリクローナル血清、あるいは遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることによって得られる抗体の製造は、本発明の文脈では有用であり、後に詳述する慣用的技術によってなされる。
【0057】
「抗体捕獲」の用語は、抗体又は一部分の抗体、好ましくは固相に結合した抗体であって、生物学的試料中に存在するプロBNP(1−108)抗原を親和性結合によって保持できるものを意味する意図である。
【0058】
生物学的試料中の抗原の存在は、「検出手段」によって明らかになる。抗原の検出に関して、少なくとも一つの「検出用抗体」を用いる特定の検出を想定している。かかる検出用抗体は、標識されており、親和性結合によって、捕獲された抗原に結合することができ、また捕獲抗体によって認識されるエピトープ部位とは異なったエピトープ部位を認識することができる。
【0059】
「標識された」の用語は、直接標識(酵素、放射性同位体、蛍光色素、発光性化合物等の手段)及び非直接標識(例えばそれ自体が直接標識された抗体の手段、又は、限定されないが、標識アビジン−ビオチンペア等の標識「親和性ペア」の試薬を使用する手段)の両方を言う。
【0060】
「抗原性フラグメント」の用語は、免疫された動物中に、プロBNP(1−108)のみに実質的に特異的な抗体の合成を誘導することができる、プロBNP(1−108)の部分を意味する意図である。
【0061】
本発明によれば、「抗原性フラグメント」は、少なくとも「エピトープサイト」又はエピトープRAPR7677Pを含む。「エピトープサイト」又は「エピトープ」は、少なくとも一つの抗体によって認識され、その特異的結合をつくるアミノ酸の配列である。
【0062】
「単一特異的ポリクローナル抗体」の用語は、一つのエピトープに特異性を有するポリクローナル抗体について使用する。これは、抗体が、当該エピトープを含むアミノ酸を含有するプロBNP(1−108)配列のアミノ酸配列に結合できるが、当該エピトープを含むアミノ酸を含有しない配列プロBNP(1−108)のアミノ酸配列には結合できないことを意味する。
【0063】
「特異的に」の用語は、抗原に対する抗体の認識又は特異的結合について言う場合には、抗体が、他の抗原とは実質的に相互作用することなく、当該抗原と相互作用することを意味し、あるいはエピトープについて「特異的」認識と言う場合には、当該エピトープの事実上唯一の認識を意味する。会合定数は、108L.mol-1よりも大きいことが好ましい。
【0064】
「保守的置換」の用語は、特に、ある類のアミノ酸を同じ類のアミノ酸に置換することであって、その置換は、得られるペプチドの免疫反応性を、もとのペプチドの免疫反応性に比べて著しくは変化させないことを意味する意図である。種々のアミノ酸の類の中では、極性側鎖を有するアミノ酸(アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン及びチロシン等)非極性側鎖を有するアミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン及びシステイン等)、塩基性側鎖を有するアミノ酸(リジン、アルギニン及びヒスチジン等)及び酸性側鎖を有するアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸等)に一般的に分類される。
【0065】
「非伝統的な置換」の用語は、もとのペプチドの免疫反応性に比較して、得られるペプチドの免疫反応性を実質的に変化させない他のタイプの置換を意味する意図である。
【0066】
「BNP(1−76)又はBNP(77−108)を実質的に認識しない」の用語は、本発明による標的抗体が、20%未満、特に10%未満、好ましくは5%未満のBNP(1−76)又はBNP(77−108)と交差反応を示すことを意味する意図である。交差反応の割合は、それ自体当業者に知られた方法、例えば実施齢5に例示した方法に従って決定される。
【0067】
BNP(1−76)又はBNP(77−108)ペプチドの「実質的な」非認識は、本発明の抗体と当該ペプチドとの反応が存在しない、又は実質的に存在しないことに相当する。
【0068】
「BNP(1−76)又はBNP(77−108)を実質的に除き」の用語は、抗体が、上記に意味において、「実質的にBNP(1−76)又はBNP(77−108)を認識しない」ことを意味する意図である。
【発明の効果】
【0069】
本発明により、ヒトプロBNP(1−108)のヒンジ領域に位置する新規なエピトープ、RAPR7677Pを発見し、それを含む免疫原性ペプチドを得、更に、BNP(1−76)及びBNP(77−108)を実質的に認識しないプロBNP(1−108)に特異的な抗体であって、その中の、ヒト血清又は血漿試料中の循環プロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する抗体を取得できた、ことは開示の全体から明らかである。
【0070】
本発明により、心不全を簡便に、一般的にかつ確実に診断することを可能にする循環プロBNP(1−108)ためのアッセイを開発することができたことも明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
<特異的抗体の製造>
本発明で使用する抗体は、抗原特異性抗体であり、それゆえ、モノクローナル抗体又は単一特異的ポリクローナル抗体、すなわち一つのエピトープのみを特異的に認識する抗体である。
【0072】
モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,Nature,1975,256:495-497によって説明されているリンパ球融合及びハイブリドーマ培養の慣用的方法によって取得できる。他のモノクローナル抗体の製造方法は(Harlow et al.,ed.,1988「抗生物質:研究室マニュアル」)でも知られている。モノクローナル抗体は、哺乳類(例えばマウス、ラット、ウサギ、ヒト等)を免疫し、リンパ球融合技術を用いて、ハイブリドーマを樹立することにより製造できる(Kohler and Milstein,1975)。
【0073】
当該一般的な技術にとって換わる技術がある。例えば、ハイブリドーマからクローニングした核酸を発現することによってモノクローナル抗体を製造することができる。ファージ表示技術、すなわち、通常、線状ファージであって、当該ファージの表面にV遺伝子ライブラリーを与えるベクターにcDNAを導入することによって、モノクローナル抗体を製造することもできる(例えば大腸菌についてfuSE5,J.K.Scott and G.P.Smith,Science,1990,249:386-390)。当該抗体ライブラリーを構築するためのプロトコールは、Marks et al.,1991,J.Mol.Biol,222:581-597に記載されている。
【0074】
ポリクローナル抗体は、通常の手段に従い、本来ペプチドである抗原に免疫にした動物の血清から取得できる。このようにして得られたポリクローナル抗体は、必要ならば、それ自体当業者に知られた技術、例えばカラム免疫吸着剤に従い、BNP(77−108)及びBNP(1−76)で除去することにより、配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85、配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84及び/又はRAPR7677Pを含むペプチドに対する単一特異性を発現し、実質的にBNP(1−76)及びBNP(77−108)を除き、プロBNP(1−108)についての特異性を確実にする。
【0075】
<捕獲抗体及び/又は検出抗体>
サンドウィッチ技術では、捕獲抗体は、患者の天然抗原上のエピトープを特異的に認識するものを選択する。一方、検出抗体は、患者の天然抗原上の別のエピトープを特異的に認識するものを選択し、これは必ずしも好ましいことではない。
【0076】
生物学的試料は、前段階で場合により処理し、検出するエピトープの露出を促進する条件下で、少なくとも一つの捕獲抗体と共に直接使用することができる。
【0077】
本発明に従う診断方法は、当業者によく知られた種々のフォーマット、すなわち、固相又は均一相で、1段階又は2段階で、サンドウィッチ法又は競合法など限定されない例により実施できる。
【0078】
好ましい具体例によれば、捕獲抗体は、固相上で免疫する。限定されない固相の例としては、マイクロプレート、特にDynal又はMerck-Eurolab(フランス)により市販されているポリスチレンマイクロプレートを使用してもよい。Dynal又はMerck-Eurolab(フランス)(登録商標はEstapor)によって提供される固相粒子もしくは固相ビーズ、常磁性ビーズ又はポリスチレンもしくはプロピレン試験管なども使用できる。
【0079】
2つの抗体のサンドウィッチ(捕獲抗体及び検出抗体)等のイムノアッセイフォーマットは、生物学的試料中の抗原の検出に特に有利である。競合によって抗原を検出するイムノアッセイフォーマットも使用できる。他のイムノアッセイ様式もまた想定でき、当業者によく知られている。
【0080】
ELISAアッセイ、放射性免疫アッセイ又は他の検出技術は、形成した抗原抗体複合体の存在を明らかにするのに使用できる。
【0081】
<キット>
本発明の方法に従う生物学的流動性試料中のプロBNP(1−108)の検出に使用するキット及び試薬は、多数の生物学的試料に簡便で適用可能である本発明の実施に提供できる。
【0082】
生物学的試料中のプロBNP(1−108)の検出キットは、上で定義した少なくとも一つの抗体を含んでもよい。上で定義した式(I)もしくは(II)のペプチド又は置換ペプチドの少なくとも一つを、スタンダード及び/又はコントロールとして含む他のキットも、本発明の実施に有用である。
【0083】
そこで、別の特別な本発明の課題は、生物学的流動性試料中のプロBNP(1−108)を検出するキットである。このキットは、BNP(1−76)及びBNP(77−108)を実質的に除き、プロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85、配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84及び/又は配列RAPR7677Pを特異的に認識し、ヒト血清試料又は血漿試料中の循環プロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する、少なくとも一つの抗プロBNP(1−108)抗体であって、好ましくは、前記生物学的試料中に存在する前記プロBNP(1−108)を捕獲するための抗体、並びに形成する抗原抗体複合体に特異的に結合できる標識コンジュゲート、を含む。
【0084】
上述のように、捕獲抗体は、有利なことに、マイクロプレート、これに限定されるものではないが、のような固相上に固定化した形態で提供される。
【0085】
好ましいキットは少なくとも、BNP(1−76)及びBNP(77−108)を実質的に除き、プロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85、配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84及び/又は配列RAPR7677Pを特異的に認識し、ヒト血清試料又は血漿試料中の循環プロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する、抗プロBNP(1−108)捕獲抗体であって、固相上に固定されている抗体;並びにプロBNP(1−108)の別のエピトープであって、そのままのエピトープに対する標識検出抗体;あるいは、場合により、プロBNP(1−108)ペプチド又はプロBNP(1−108)そのものである標識検出抗原を含む。
【0086】
特定の具体例によれば、生物学的試料中のプロBNP(1−108)を検出するためのキットは、一つの容器には、上で定義した少なくとも一つの抗体;並びにもう一つの容器には、スタンダード及び/又はコントロールとして特に有用である上で定義した少なくとも一つのペプチドを含んでもよい。
【0087】
以下の図及び実施例は本発明を説明するものであるが、範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0088】
実施例1:免疫用のペプチドの合成
合成ペプシドは、当業者によく知られた技術によって製造できる。例を挙げれば、簡単に実施できるという利点を有するメリフィールド型の合成によって製造できる(Merrifield,(1963);R.C.Sheppard(1971);Atherton et al.(1989))。自動合成装置として、ミリポア(Millipore)の「9050プラス・ペップ・シンセザイザー」、パースペクティブ(Perspective)の「パイオニア」シンセサイザイー又はABIの「433A」シンセサイザイーが使用できる。ペプチドは、均一相合成によっても得られる。
【0089】
ここでの合成は、「Fmoc」(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)化学を使ってパイオニアシンセサイザイーで行った。各ステップでは、試薬[すなわち、保護アミノ酸及びカップリング活性化剤(TBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチル−ウロニウム)]を大過剰に(試薬のモル/樹脂上の置換可能な基のモルの比5で)加えた。合成の最後には、ペプチドは、トリフルオロ酢酸系溶液(試薬K)で樹脂から分離した。このペプチドは、冷エーテル溶液で沈殿させ、そしてHPLCで精製した。
【0090】
本発明者は、ヒンジ領域R7677のアミノ酸配列を含む以下のペプチドを合成した。
配列番号6:C−G−R−A−P−R−S−P
配列番号7:アセチル−C−G−R−A−P−R−S−P
配列番号8:C−G−R−A−P−R−S−P−K
配列番号9:アセチル−C−G−R−A−P−R−S−P−K
配列番号10:C−G−R−A−P−R−S−P−K−M−V
配列番号11:C−G−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−G
配列番号12:R−A−P−R−S−P−G−C
配列番号13:アセチル−R−A−P−R−S−P−G−C
配列番号14:アセチル−C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K
配列番号15:C−H−R−K−M−V−L−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K
配列番号16:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−G(ペプチドC13P30)
配列番号17:C−F−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−G
配列番号18:C−F−S−I−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−G
配列番号19:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−βA
配列番号20:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−A−T−βA
配列番号21:C−F−S−I−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−A−T−βA
配列番号22:C−F−S−I−R−A−P−R−S−P−A−L−A−S−G−T−A
及び
配列番号109:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S(ペプチドCN32)
配列番号110:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K
配列番号111:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V
配列番号112:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q
配列番号113:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G
配列番号114:アセチル−C−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q
配列番号115:C−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G
配列番号116:C−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S
配列番号117:C−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−G
配列番号118:C−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V
配列番号119:C−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q
配列番号120:L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−C
配列番号121:C−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S
配列番号122:C−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−G
注:βAはβ−アラニンを意味する。
【0091】
実施例2:免疫用の担体蛋白質へのペプチドの結合
ペプチドは、ペプチドの免疫原性を高めるために、種々の機能(チオール、アミン、アルデヒド等)によって、担体蛋白質、KLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)、チログロブリン、BSA(牛胎児血清)に結合した。ペプチドを蛋白質に結合させるために使用するカップリング剤は、ヘテロ二官能性又はホモ二官能性である。最も一般的に使用される試薬は、BS3、sSMCC、SPDP、グルタールアルデヒド等である。使用するカップリング技術の一つは、化学カップリング剤としてグルタールアルデヒド、担体蛋白質としてKLHを用いる技術である。KLHのペプチドへの結合は、ペプチドのアミン機能を使用して行った(主にリジンによるN−末端基及びアミノ基)。
【0092】
配列YTLRAPRSPKMVQGSG−NH2(配列番号16)のペプチドC13P30又は配列YTLRAPRSPKMVQGS−NH2(配列番号109)のペプチドCN32の5mg/ml溶液は、pH7.4の0.15M NaClを含むダルベッコ PBS緩衝液で調製した。PBS緩衝液で10mg/mlKLH溶液となるように、20mgの乾燥KLHのPBS緩衝液ボトル(Pierce#77600)をとり、2mlの水で注射調製した。
【0093】
1mlのペプチド溶液(すなわち、5mg)を1.25mlのKLH溶液(すなわち、12.5mg)と混合した。吸引フードの下で、調製した2.25mlの2%グルタールアルデヒド溶液(25%グルタールアルデヒド、Sigma#G-5882)を当該混合物に即座に加えた。KLH複合体の生成を避けるため、2%グルタールアルデヒド溶液は、1滴ずつ、混合物を攪拌しながら加えた。コンジュゲーション反応は、室温で2時間30分インキュベートしながら行った。カップリング反応は、10mg/mlの最終濃度となるように、100mg/ml水素化ホウ素ナトリウム溶液を加えて停止した。反応混合物を4℃で一晩インキュベートした。最後に、この溶液を、pH7.4のダルベッコ PBS緩衝液で、4℃で一晩透析した。この溶液を最後に等分し、−80℃で保存した。
【0094】
実施例3:ペプチドによる免疫
ポリクローナル抗体の作製のために、ウサギ(ニュージーランド種の雌)を、実施例2に従って、KLHに結合したペプチドCys−YTLRAPRSPKMVQGSG−NH2で免疫した。最初の注射用に、1.5mlの完全フロイントアジュバント(Sigma#F-5881)と共に、1.5mlのKLH結合ペプチドのエマルションを調製し、1mlの完全フロイントアジュバント(すなわち、200μgのペプチド)を各ウサギに皮内注射した。1mlのKLH結合ペプチド(すなわち、200μgのペプチド)のエマルションを完全フロイントアジュバント(Sigma#F-5881)と共に皮内注射することにより、20日間離して2回の追加免疫を行った。第二の追加免疫の20日後に、前の追加免疫と同じ方法、但し皮下注射で第三の追加免疫を行った。第三の追加免疫を行い、得られた抗体の力価を評価した20日後に、ウサギの採血を行った。
【0095】
特に、KLHに結合したペプチドC−YTLRAPRSPKMVQGSG−NH2(配列番号16)の免疫によって得られる、番号#046805及び046832によって特定されるウサギ由来のポリクローナル抗体、並びにKLHに結合したペプチドC−YTLRAPRSPKMVQGS−NH2(配列番号109)の免疫によって得られる、数#L01235によって特定されるウサギ由来のポリクローナル抗体は、本研究のその他として用いた。
【0096】
実施例4:抗体の取得及び精製
精製した後、ウサギ血清を4℃、4500rpmで30分間遠心した。静置して分離後、当該血清を半分、1M Naclを含むpH8.0の1.5Mグリセリン緩衝液で希釈した。
【0097】
実施例4a:プロテインA−セファロース上でのIgG精製
ポリクローナル抗体の精製は、プロテインA−セファロースゲル(Amersham Biosciences#17.1279.02)上でアフィニティクロマトグラフィーにより行った。黄色ブドウ球菌から抽出したプロテインAをIgG分子のFcフラグメントと特異的に混合した。次いで、サブクラスを全て含むIgGをpH3.0で溶出した。
【0098】
使用する全ての緩衝液は、気泡の生成を防ぐため、カラムに使用する前に、超音波洗浄機で15分間、脱気した。
【0099】
クロマトグラフィーカラムは、12mlのプロテインA−セファロースを使用して作った。ゲルカラムは、蒸留して脱気した水で40分間、更に0.5M Naclを含むpH7.4のダルベッコ PBS緩衝液で40分間、最後に1M NaClを含むpH8.0の1.5Mグリセリン緩衝液で、正しいベースラインが得られるまで平衡化した。
【0100】
次に、1M NaClを含むpH8.0の1.5Mグリセリン緩衝液で半分希釈した10mlのウサギ血清を、0.5ml/分の流速でカラムに通過させた。アルブミンピークが現れた後、IgG血清を、0.1M トリス−クエン酸ナトリウム緩衝液でpH3.0に調整した0.1Mクエン酸溶液の方法で溶出した。IgG溶出ピークを回収し、即座に、4℃で一晩、pH7.4のダルベッコ PBS緩衝液中で透析した。
【0101】
プロテインAによる精製後、ポリクローナル抗体の反応性を、プロBNP(1−108)、BNP(1−76)又はBNP(77−108)を0.25μg/mlの吸着量で被覆した殻斗上でELISAにより試験した。ウサギ#046805由来のポリクローナル抗体について得られた結果を、図1に示す。ウサギ#046832由来のポリクローナル抗体も同じ結果を与えた。ウサギ#046805及び#046832由来のポリクローナル抗体は、プロBNP(1−108)に対し、比較的特異的であった。しかしながら、我々は、高濃度において抗プロBNP(1−108)の反応性が低いことに気付くことができた。すなすち、ウサギ由来の単一特異的ポリクローナル抗体を作製し、実施例4.bで述べる方法に従い、BNP−K3−NHS−セファロース樹脂で除去することにより、無視できる反応性である。
【0102】
実施例4b:BNP−K3−NMS−セファロース樹脂上でのIgGの除去
当該操作の目的は、BNP(77−108)に関して観察される交差反応を排除することである。
【0103】
得られたポリクローナル抗体の交差反応は、BNP(77−108)分子のN−末端位に位置するので、排除するイムノグロブリンにBNP(77−108)の当該領域を正しく提示することは重要である。当該目的のため、BNP(77−108)は、そのC−末端部によってNHS−セファロース樹脂への結合を促進するために、C−末端位を3つのリジン残基(BNP−K3)で延長して合成した。
【0104】
BNP−K3:S−P−K−M−V−Q−G−S−G−C−F−G−R−K−M−D−R−I−S−S−S−S−G−L−G−C−K−V−L−R−R−H−K−K−K(配列番号104)は、実施例1で上述した、「Fmoc」(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)化学を使ってパイオニアシンセサイザイーで行った。
【0105】
0.5M NaClを10mg/mlの濃度で加えたpH8.3の100mM NaHCO3緩衝液を使って、5mgのBNP−K3を溶解した。2mlのNHS−セファロース樹脂(NHS−活性化セファロース 4高速フロー、Amersham Biosciences #17.0906.01)を4℃、1000rpmで30秒間遠心した。樹脂を15mlの冷1mM HCl溶液で洗浄した。HCl溶液を遠心及び除去した後、樹脂をBNP−K3リガンドと10mg/mlで混合した。当該混合物を、ゆっくり攪拌しながら、室温で1時間インキュベートした。リガンド溶液を遠心及び除去した後、樹脂の非反応性基をpH8.0の0.1M グリシン緩衝液5mlでブロックした。当該混合物を、ゆっくり攪拌しながら、室温で1時間インキュベートした。ブロッキング緩衝液を遠心及び除去した後、0.5M NaClを加えたpH8.3の100mM NaHCO3緩衝液5mlで、樹脂を吸収し、当該緩衝液で4回洗浄した。最後の洗浄後、混合物をクロマトグラフィーカラムに装填した。
【0106】
クロマトグラフィーカラムを調製後、10mgのウサギ#046805由来のIgG又はウサギ#046832由来のIgGを当該カラムに装填した。カラムに接続したペリスタポンプにより、4℃で一晩、ウサギ血清IgGを循環させることができた。次の日、IgG溶液を回収した(ろ液)。BNP−K3に結合したIgGフラクションを、5M 尿素を含むpH8.0の20mMトリス緩衝液溶出した(溶出液)。当該溶出液及びろ液は、除去の効果を確認するために試験した。図2及び3は、ウサギ#046805及び#046832由来の各ポリクローナル血清のろ液を用い、ELISAにより行った試験結果を示す。図4及び5は、ウサギ#046805及び#046832由来の各ポリクローナル血清の溶出液を用い、ELISAにより行った試験結果を示す。
【0107】
予想とおり、ウサギ#046805及び#046832由来のポリクローナル血清のろ液は、プロBNP(1−108)に特異的であった。すなわち、BNP(1−76)又はBNP(77−108)では反応性が認められなかった。溶出液は、プロBNP(1−108)についてはかなりの反応性を有し、BNP(77−108)についても反応性を有していた。当該結果は、BNP−K3−NHS−セファロース樹脂に対するウサギポリクローナル血清の効果を確認するものである。
【0108】
BNP(77−108)は、Sigma(#B-5900)から入手し、プロBNP(1−108)及びBNP(1−76)は、ベクターpGEX−2T(Amersham Pharmacia Biotech)にクローニングし、当業者によく知られた慣用的手段で大腸菌に導入した後に発現する組換え蛋白質の形で製造した。ベクターの起源はBerlex Biosciences(Richmond,CA,USA)社から提供を受け、その製造は、Yan et al.(PNAS,2000,vol.97,pp.8525-8529)によって記述されている。プロBNP(1−108)の濃度及びBNP(1−76)の濃度は、比色蛋白質試験に関するBradford法によって測定した(M.Bradford,Anal.Biochem.1976;72:248-54)。
【0109】
実施例5:BNP(1−76)及びBNP(77−108)に関する、ウサギ#046805及び#L01235由来の抗プロBNP(1−108)抗体の交差反応割合の決定
【0110】
材料:
1)固相:平底Maxisorpマイクロプレート、Nunc(Denmark)。
2)BNP(77−108)は、Sigma(#B-5900)から入手し、プロBNP(1−108)及びBNP(1−76)は、組換え蛋白質の形で製造した。当該蛋白質溶液の濃度は、比色分析蛋白質アッセイに関するBradford法によって測定した(M.Bradford,Anal.Biochem.1976;72:248-54)。
3)使用したコンジュゲートは、ペルオキシダーゼ結合抗ウサギIgGポリクローナル抗体(Sigma #A-9169)である。
4)飽和緩衝液:1%の牛胎児血清アルブミン(BSA,Sigma #A-7888)を含むpH7.4のダルベッコPBS緩衝液。
5)希釈溶液:0.1%のBSA及び0.1%のツィーン20を含むpH7.4のダルベッコPBS緩衝液。
6)洗浄液:0.1%のツィーン20を含むpH7.4のダルベッコPBS緩衝液。
7)視覚化溶液:視覚化溶液は、
7a)基質溶液:0.33%のH22を含む0.01M クエン酸と0.04M トリナトリウム・シトレートの最終pH5.6の溶液、及び
7b)色原体:OPD(オルト−フェニレンジアミン)錠で、1OPD錠は、10mlの基質緩衝液に溶解している、
を含む。
8)停止溶液:4N H2SO4
【0111】
プロトコール:
アッセイは、マイクロプレートの殻斗に固定された種々の蛋白質に対するポリクローナル抗体の免疫反応性を直接評価することにある。
【0112】
・ダルベッコ PBS緩衝液(pH7.4)で種々のコーティング溶液、すなわちBNP(77−108)を0.25μg/ml含む第一の溶液、プロBNP(1−108)を0.25μg/ml含む第二の溶液、BNP(1−76)を0.25μg/ml含む第三の溶液、及びGST(バックグラウンドノイズ制御蛋白質)を0.25μg/ml含む第四の溶液をまず調製した。
・当該溶液の各100μlをマイクロプレートのウェルに別々に入れた。
・このマイクロプレートを4℃で一晩インキュベートした。
・コーティング溶液を除いた後、マイクロプレートを、0.1%のツィーン20を含むpH7.4のダルべッコ PBS緩衝液300μlで洗浄し、1%のBSAを含むpH7.4のダルべッコ PBS緩衝液250μlを添加して飽和させた。
・その後、マイクロプレートを37℃で1時間インキュベートした。
・次いで、マイクロプレートを洗浄液で3回洗浄した。
・予め、ウサギ#046805由来のポリクローナル血清については2及び1μg/mlに、ウサギ#L01235由来のポリクローナル血清については1/2500及び1/5000に希釈したポリクローナル抗体溶液100μlを各殻斗に置いた。
・反応媒体を室温で2時間インキュベートした。
・次いで、マイクロプレートを300μlの洗浄液で3回洗浄した。
・100μlのペルオキシダーゼ結合抗ウサギIgGポリクローナル抗体コンジュゲートを希釈緩衝液で1/8000に希釈したマイクロプレートの各ウェルに加えた。
・反応媒体を室温で1時間インキュベートした。
・次いで、プレートを300μlの洗浄液で5回洗浄する。100μlの視覚化溶液を各殻斗に分注した。反応を黒っぽくなるまで、室温で20分間放置した。
・次いで、50μlの停止溶液を各殻斗に分注した。
・反応を停止後、光学密度を490/620nmで分光光度計で読んだ。
【0113】
抗プロBNP(1−108)抗体について、0.25μg/mlを吸着させたBNP(77−108)、0.25μg/mlを吸着させたプロBNP(1−108)及び0.25μg/mlを吸着させたGST上で試験し、BNP(77−108)抗体との交差反応の割合を次式:
【0114】
【数1】

【0115】
を使って計算した。
【0116】
抗プロBNP(1−108)抗体について、0.25μg/mlを吸着させたBNP(1−76)、0.25μg/mlを吸着させたプロBNP(1−108)及び0.25μg/mlを吸着させたGST上で試験し、BNP(1−76)抗体との交差反応の割合を次式:
【0117】
【数2】

【0118】
を使って計算した。
【0119】
【表1】

【0120】
結論:
上記血清ポリクローナル抗体の交差反応は、BNP(1−76)については2%未満であり、BNP(77−108)については5%未満であった。BNP(77−108)の交差反応性は、実施例4.bに記載した除去方法の手段により排除できた。しかしながら、当該ポリクローナル抗体は、実施例19及び20に記載のように、プロBNP(1−108)の免疫酵素測定法の条件、及び患者に通常見られるBNP(77−108)濃度やBNP(1−76)濃度では結果的に交差反応を示さずに、除去しない状態で使用できた。
【0121】
実施例6:BNP−K3−NHS−セファロース樹脂上で除去する前後の、ウサギ#046805及び#046832由来のポリクローナル血清によって認識されるエピトープの同定
NP−K3−NHS−セファロース樹脂上で除去する前後の、ウサギ#046805及び#046832由来のポリクローナル血清は、当該ポリクローナル血清によって認識されるエピトープを同定するために、スポット法により試験した。Frankによって説明される当該方法(Tetrahedron,1992;48:9217-32)は、非常に多くの未特定配列のペプチドのニトロセルロース膜上での迅速合成が可能である。使用するプロトコールは、Molina et al.によって説明されている(Pet.Res.,1996;9:151-5)。
【0122】
アミノ化機能を含む直径約5mmのスポットを1枚のシート上で作り、当該スポットは、合成ぺプチドのC−末端アミノ酸の支点として役立った。ペプチド鎖は、活性化Fmocアミノ酸の連続的な添加によって伸張できた。アミノ酸側鎖は、適当な化学基で保護した。全てのペプチドは、N−アセチル化したN−末端残基を用いて合成した。合成の最後には、側鎖はトリフルオロ酢酸の作用により脱保護した。当該処理は、ペプチド及びセルロース支持体との結合に影響を与えるものではなく、ペプチドの反応性は比色試験の手段により評価できた。
【0123】
膜上で合成した一連のペプチドは、プロBNP(1−108)の全体的配列を表す、3つのアミノ酸残基がシフトした32のペンタデカペプチドから成っていた。
【0124】
【表2】

【0125】
0.1%ツィーン20、5%ブロッキング緩衝液(Euromedex#SU-07-250)及び5%スクロースを加えたpH7.0のTBS(トリス緩衝生理食塩水)緩衝液30mlで上記膜を飽和した後、10μg/mlに希釈したウサギポリクローナル血清20mlの反応性を試験した(37℃で1時間30分間、攪拌しながらインキュベートした後に試験した)。
【0126】
0.1%ツィーン20を加えたpH7.0のTBS緩衝液で洗浄した後、20mlのアルカリホスファターゼ結合抗ウサギIgGコンジュゲート(Sigma#A-8025)を室温で1時間、攪拌しながらインキュベートした。最後に、30mlの洗浄液で最終洗浄を行った後、30mlの基質溶液[0.15M BCIP(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート)120μl、1M MgCl2 150μl及び0.1M MTT(チアゾイル・ブルー・テトラゾリウムブロミド)180μlを含む、pH7.0のCBS(クエン酸緩衝生理食塩水)緩衝液30ml]を添加することによって、当該スポットを視覚化した。
【0127】
上記膜をスキャンした後、膜のスポット強度を、画像処理ソフトウェアを用いて評価した(相対的強度単位で)。バックグラウンドノイズは、抗血清によって検出したスポットから計算した。除去前のウサギ#046805由来のポリクローナル血清に関するエピトープ分析の結果を図6に示す。5つのペプチド(スポット22〜26)をポリクローナル血清によって検出し、これら5つのペプチドに共通の配列は、R7677Pであった。
【0128】
しかしながら、RAPユニットをR7677PユニットのN−末端位に加えると、反応性が顕著に増加した。BNP−K3−NHS−セファロース樹脂上での除去後のウサギ#046805由来のポリクローナル血清に関するエピトープ分析の結果を、図7に示す。4つのペプチド(スポット22〜25)をポリクローナル血清によって検出し、これら5つのペプチドに共通の配列は、RAPR7677Pであった。除去前のポリクローナル血清について観察されたものと異なり、R7677Pユニットの反応性だけが観察されなかった(スポット26)。
【0129】
このことは、BNP−K3−NHS−セファロース樹脂上での除去前では、ポリクローナル血清はBNP(77−108)を検出しなかった、ことを説明している(心覚えに、S77Pユニットは、BNP(77−108)の配列の最初の2つのアミノ酸に対応していた)。結局、単一特異性を示すウサギ#046805由来のポリクローナル血清によって認識されるエピトープは、RAPR7677Pであった。
【0130】
実施例7:除去前後のウサギ#046805及び#046832由来のポリクローナル血清の最小エピトープの、アラニン(Ala)スキャン法による同定
NP−K3−NHS−セファロース樹脂上で除去前後のウサギ#046805及び#046832由来のポリクローナル血清は、ポリクローナル血清によってプロBNP(1−108)のみを特異的に認識する、ヒンジペプチド中の最小エピトープを同定するために、(実施例6に記載の)スポット方法で試験した。ヒンジペプチドYTLRAPRSPKMVQGSの配列を繰り返した16つのペンタデカペプチドからなり、一つのアミノ酸がアラニン残基(アラニン・スキャニング又は「Ala−スキャン」)又はグリシン残基で順々に置換、この置換は、毎回、一つのアミノ酸残基ごとに右にシフトするような置換である、がなされている膜を合成した(表3−1、3−2)。BNP−K3−NHS−セファロース樹脂上で除去前後のウサギ#046805及び#046832由来のポリクローナル血清のAla−スキャン分析の結果を表3に示す。
【0131】
【表3】

【0132】
【表4】

【0133】
ウサギ#046805及び#046832由来のポリクローナル血清によって認識されるエピトープの認識に不可欠であるアミノ酸は、R7677Pであった。しかし、BNP−K3−NHS−セファロース樹脂上でのウサギ#046805由来のポリクローナル血清の除去後では、R7677Pユニットに加えて、RAユニットが認識に寄与していた。除去前のウサギ#046832由来のポリクローナル血清に関しては、プロリンP78のみが認識に寄与するが、BNP−K3−NHS−セファロース樹脂上でのウサギ#046832由来のポリクローナル血清の除去後では、認識に寄与するユニットはR−PR7677Pであった。これらの結果は、ウサギ#046805及び#046832由来のポリクローナル血清によるプロBNP(1−108)の特異的認識に必須の最小エピトープがRAPR7677Pである、ことを示している。
【0134】
実施例8:Ala−スキャン法によるウサギ#L01235由来のポリクローナル血清の最小エピトープの同定
最初(除去の必要がない)からプロBNP(1−108)に特異的な、ウサギ#L01235由来にポリクローナル血清は、ポリクローナル抗体によってプロBNP(1−108)のみを特異的に認識する、ヒンジ中の最小エピトープを同定するために、(実施例6に記載の)スポット法で試験した。使用した膜は、実施例7に記載したものである。ウサギ#L01235由来のポリクローナル血清のAla−スキャン分析の結果を表4に示す。
【0135】
【表5】

【0136】
ウサギ#046805及び#046832由来のポリクローナル血清に関し(実施例7)、これらの結果は、ウサギ#L01235由来のポリクローナル血清によるプロBNP(1−108)の特異的認識に必須の最小エピトーがRAPR7677Pである、ことを示している。
【0137】
実施例9:プロBNP(1−108)組換え蛋白質によるマウスの免疫
BALB/c(雌性6週齢)のマウスを、実施例4.bで述べた組換えプロBNP(1−108)で、当業者によく知られた慣用的技術により免疫した。最初の注射では、プロBNP(1−108)1mlの完全フロイントアジュバント(Sigma#F-5881)1mlによるエマルションを調製し、このエマルションの300μl(すなわち100μgの蛋白質)を各マウスに皮下注射した。2つの追加免疫は、プロBNP(1−108)(すなわち100μgの蛋白質)の不完全フロイントアジュバント(Sigma#F-5506)によるエマルション300μlの腹腔内注射により、15日間あけて行った。第二の追加免疫の15日後、第三の追加免疫を先と同じ方法により、但し皮下注射によって行った。最後に、最終追加免疫の15日後、スポット技術による免疫反応を分析するために、マウスから血液試料を採取した。マウス12の免疫反応は、本研究のリマインダーに特に有益であることが判った。
【0138】
実施例10:マウス12由来のポリクローナル抗体によって認識される、プロBNP(1−108)配列のエピトープの同定
マウス12由来のポリクローナル抗体によって認識される、プロBNP(1−108)配列のエピトープの同定に使用したスポット法は、実施例6に記載した。
【0139】
膜上で合成した一連のペプチドは、プロBNP(1−108)の配列全体を表している94のペンタデカペプチドからなり、各ぺプチドは、1アミノ酸残基ずつシフトしている。マウス12由来のポリクローナル血清の反応性は、1/500に希釈し、実施例6に記載の膜上で試験した。膜をスキャン後、膜上のスポット強度(相対的強度ユニット)を、画像処理ソフトウェアにより評価した。抗血清によって検出したスポットから計算したバックグラウンドノイズは、相対的強度ユニットが30であった。
【0140】
プロBNP(1−108)の配列のN−末端位に位置する3領域は、マウス12由来の抗血清の抗体によって特に良好に認識された。この3領域とは、配列H1PLGSPGSASDLETS15(配列番号23)(スポット1〜12)、配列L17QEQRNHLQGK27(配列番号123)(スポット17〜27)及び配列L38EPLQESPRPTG49(配列番号124)(スポット38〜49)である。
【0141】
驚いたことに、マウス12由来の抗血清は、ぺプチド配列がRAPR7677Pユニットを含むスポット、すなわちスポト64〜68を認識することができる抗体も含んでいた。スポットのペプチド配列を表5に記載する。
【0142】
【表6】

【0143】
【表7】

【0144】
モノクローナル抗体作製のために選んだマウス(5週齢BALB/c雌性)を、KLH(keyhole limpet hemocyanin)に結合した配列番号16 C−YTLPAPRSPKMVQGSG−NH2(C13P30)のペプチドで、次のプロトコールに従い免疫した。すなわち、完全フロイントアジュバントで2倍に希釈した100μgのKLH結合ペプチドで皮下注射した。4回の追加免疫を、不完全フロイントアジュバントで2倍に希釈したKLH結合ぺプチド100μgの皮下注射により、3週間あけて行った。
【0145】
リンパ球融合を実施する前の3日間、マウスを次のプロトコールに従い、超免疫した。滅菌PBS緩衝液中にKLHに結合したC−YTLPAPRSPKMVQGSG−NH2ペプチド100μgについて、イムノゲンの総用量を4回の注射に分注した。第一及び第二の注射は各々、総用量の1/10に相当した。これらの注射は、種々の部位に、45分間おきに皮下に行った。総用量の2/10に相当する第三の注射は、第二の注射の45分後に皮下に行った。第三の注射の30分後、アナフィラシー・ショックを避けるために、プロメタジンの殺菌PBSの1mg/ml溶液(2.5% フェネルガン、Laboratories Medeva Parma)100μlを腹腔内注射した。最後に、15分後、総用量の6/10に相当する最終注射を腹腔内に行った。
【0146】
リンパ球ハイブリダイゼーションは、Kohler and Milstein(Nature,1975;256:495-97)によって説明されている方法に従って実施した。予め非動化した10%の牛胎児血清(Bio-Whittaker#BE02701E)及び8−アザグアニン(Sigma#A-8526)を添加したL−グルタミン、ペニシリン及びストレプトマイシン(Sigma#G-6784)の混合物を補足したRPMI 1640倍地(Bio-Whittaker#BE12-167F)で前もって培養した、マウスの脾臓から抽出したリンパ球細胞及びミエローマ細胞(P3−X63−Ag8.653)を使って行った。
【0147】
牛胎児血清を添加せず、L−グルタミン、ペニシリン及びストレプトマイシン(Sigma#G-6784)の混合物を補足したRPMI 1640倍地(Bio-Whittaker#BE12-167F)で前もって培養したリンパ球細胞及びミエローマ細胞は、1ミエローマ細胞につき5リンパ球の割合で混合した。
【0148】
当該混合物を室温、900rpmで7分間遠心し、細胞ペレットを再懸濁した後、1mlのハイブリ−マックス(登録商標)ポリスチレングリコール(Sigma#P-7777)を加えた。37℃のウォーターバスで1分間インキュベートした後、当該細胞を室温、1000rpmで1分30秒間遠心した。最後に、37℃のウォーターバスで2分間インキュベートした後、ペレットを再懸濁し、L−グルタミン、ペニシリン及びストレプトマイシン(Sigma#G-6784)の混合物を補足したRPMI 1640倍地(Bio-Whittaker#BE12-167F)であって、予め37℃にしておいた倍地6mlを5秒毎に100μlに速度で添加し、9mlの同じ倍地全てを直ちに添加した。室温、900rpmで10分間遠心し、上清を除いた後、予め非動化した10%の牛胎児血清(Bio-Whittaker#BE02701E)及びHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン、Sigma#H-0262)を添加したL−グルタミン、ペニシリン及びストレプトマイシン(Sigma#G-6784)の混合物を補足したRPMI 1640倍地(Bio-Whittaker#BE12-167F)で、1ウェル当り120000細胞となるように、100μlを分注するために、当該ペレットを溶解した。
【0149】
当該溶液を、予め、ネズミのマクロファージを播種した96培養プレートのウェルに100μl加えた。当該プレートをCO2インキュベーターに置いた。リンパ球ハイブリダイゼーションの15日後、融合プレートに存在するクローンの数を見積り、ハイブリドーマの割合の変化で表した。
【0150】
ハイブリドーマの選択は、プロBNP(1−108)、BNP(1−76)、BNP(77−108)及び配列RAPR7677P(C13P30)を有するペプチドのELISAによって行った。プロBNP(1−108)及び配列RAPR7677Pを有するC13P30ペプチドを検出することができ、実質的にBNP(1−76)及びBNP(77−108)を認識することができない抗体を分泌するハイブリドーマのみを選択した。選択したハイブリドーマは、培養で維持し、希釈を制限することによってクローン化した。このようにしてクローン化したハイブリドーマは、腹水中でモノクローナル抗体の分泌のために用いることができた。
【0151】
上記の方法により、本発明者は、本発明に従う抗体の特徴を有するアイソタイプIgG1κのイムノグロブリンを分泌するネズミのハイブリドーマ、クローン3D4を作製した。当該ハイブリドーマは、2003年7月31日に、寄託番号CNCM I−3073として、CNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes[National Collection of Microorganism Cultures],Pasteur Institute,25 rue du Docteur Roux,75 724 Paris,Cedex 15,France)に寄託した。
【0152】
実施例12:ハイブリドーマ3D4によって分泌された抗体の特異性のELISAによる確認
材料:
1)固相:平底Maxisorpマイクロプレート、Nunc(Denmark)。
2)BNP(77−108)は、Sigma(#B-5900)から入手し、プロBNP(1−108)及びBNP(1−76)は、組換え蛋白質の形で製造した。当該蛋白質溶液の濃度は、比色分析蛋白質アッセイに関するBradford法によって測定した(M.Bradford,Anal.Biochem.1976;72:248-54)。
3)使用したコンジュゲートは、ペルオキシダーゼ結合抗ウサギIgGポリクローナル抗体(Sigma#A-9169)である。
4)飽和緩衝液:1%の牛胎児血清アルブミン(BSA,Sigma#A-7888)を含むpH7.4のダルベッコPBS緩衝液。
5)希釈溶液:0.1%のBSA及び0.1%のツィーン20を含むpH7.4のダルベッコPBS緩衝液。
6)洗浄液:0.1%のツィーン20を含むpH7.4のダルベッコPBS緩衝液。
7)視覚化溶液:視覚化溶液は、
7a)基質溶液:0.33%のH22を含む0.01M クエン酸と0.04M トリナトリウム・シトレートの最終pH5.6の溶液、及び
7b)色原体:OPD(オルト−フェニレンジアミン)錠で、1OPD錠は、10mlの基質緩衝液に溶解している、
を含む。
8)停止溶液:4N H2SO4
【0153】
プロトコール:
アッセイは、マイクロプレートの殻斗に固定された種々の蛋白質に対するハイブリドーマ3D4の培養上清の免疫反応性を直接評価することにある。
【0154】
・ダルベッコ PBS緩衝液(pH7.4)で種々のコーティング溶液、すなわちBNP(77−108)を1μg/ml含む第一の溶液、プロBNP(1−108)を1μg/ml含む第二の溶液及びBNP(1−76)を1μg/ml含む第三の溶液を全てまず調製した。
・当該溶液の各100μlをマイクロプレートのウェルに別々に入れた。
・このマイクロプレートを4℃で一晩インキュベートした。
・コーティング溶液を除いた後、マイクロプレートを、0.1%のツィーン20を含むpH7.4のダルべッコ PBS緩衝液で洗浄し、1%のBSAを含むpH7.4のダルべッコ PBS緩衝液250μlを添加して飽和させた。
・その後、マイクロプレートを37℃で1時間インキュベートした。
・次いで、マイクロプレートを300μlの洗浄液で3回洗浄した。
・予め、1/2に希釈したハイブリドーマ3D4上清100μlを各殻斗に置いた。
・反応媒体を室温で2時間インキュベートした。
・次いで、マイクロプレートを300μlの洗浄液で3回洗浄した。
・100μlのペルオキシダーゼ結合抗ウサギIgGポリクローナル抗体コンジュゲートを希釈緩衝液で1/2000に希釈し、マイクロプレートの各ウェルに加えた。
・反応媒体を室温で1時間インキュベートした。
・次いで、プレートを300μlの洗浄液で5回洗浄する。100μlの視覚化溶液を各殻斗に分注した。反応を黒っぽくなるまで、室温(18〜24℃)で20分間放置した。
・次いで、50μlの停止溶液を各殻斗に分注した。
・反応を停止後、光学密度を490/620nmで分光光度計で読んだ。
【0155】
図8は、当該アッセイの結果を説明している。ハイブリドーマ3D4上清中に分泌された抗体は、プロBNP(1−108)及びC13P30免疫ペプチドのみを検出することができ、BNP(1−76)及びBNP(77−108)には反応しなかった。この結果により、BNP(1−76)及びBNP(77−108)を除き、ハイブリドーマ3D4によって分泌された抗体のプロBNP(1−108)に対する特異性を確認した。
【0156】
従って、本発明に従うハイブリドーマ3D4由来の抗体は、実質的にBNP(1−76)及びBNP(77−108)を除き、抗体のプロBNP(1−108)を特異的に認識する抗体であることが明白である。
【0157】
実施例13:ハイブリドーマ3D4によって分泌された抗体の特異性のウェスタンブロッティングによる確認
材料:
1)一般的なSDS−PAGE電気泳動装置。
2)スタッキングゲル:5%アクリルアミド。
3)溶解ゲル:16%アクリルアミド。
4)陽極緩衝液:0.2M トリス、pH8.9。
5)陰極緩衝液:0.1M トリス−トリシン;0.1%SDS。
6)試料緩衝液:0.5M トリス、pH6.8;25%グリセロール;2%SDS;14.4mM β−メルカプトエタノール;0.1%ブロモフェノールブルー。
7)電気泳動装置。
8)移動緩衝液;190mMグリシン;20%メタノール;0.05%SDS。
9)BNP(77−108)は、Sigma(#B-5900)から入手し、プロBNP(1−108)、BNP(1−76)−GST及びGST(ネガティブコントロール)は、組換え蛋白質の形で製造した。当該蛋白質溶液の濃度は、比色分析蛋白質アッセイに関するBradford法によって測定した(M.Bradford,Anal.Biochem.1976;72:248-54)。
10)コンジュゲートは、ペルオキシダーゼ結合ロバ抗マウスIgGポリクローナル抗体(Jackson Immunoresearch#715-035-150)を用いた。
11)ウェスタンブロッティングの検出用のECLキット(Amersham Biosciences#RPN2106)。
【0158】
プロトコール:
当該アッセイの実施は、16%アクリルアミドゲル中の種々の蛋白質の電気泳動的な移動、当該蛋白質のニトロセルロース膜への転写、そして最後にウェスタンブロッティング、の3つの主なステップを含む。
【0159】
・種々の溶液、すなわちプロBNP(77−108)を1μg含む第一の溶液、GSTを1μg含む第二の溶液、BNP(1−76)−GSTを1μg含む第三の溶液、及びBNP(77−108)を1μg含む第四の溶液、を同一の緩衝液で35μlの最終体積に調製した。
・各溶液を100℃で5分間、ウォーターバス中でインキュベートし、次いでゲルのウェルに装填した。アクリルアミドゲル中の移動は、120Vの一定の電圧下で1時間30分間行った。図9は、得られるアクリルアミドゲルの写真である。装填した蛋白質はクマズーブルーで染色した。
・移動後、ゲル中の蛋白質を120mAで1時間、ニトロセルロース膜上に転写した。
・ニトロセルロース膜は、0.1%ツィーン20入りのPBS緩衝液で洗浄し、室温で30分間、0.1%ツィーン20、2%スキムムルク入りのPBS緩衝液で飽和させた。
・0.1%ツィーン20入りのPBS緩衝液で3回洗浄後、当該膜に5mlのハイブリドーマ3D4上清を加えて、37℃で1時間、揺り動かしながらインキュベーした。
・0.1%ツィーン20入りのPBS緩衝液で3回洗浄後、当該膜に0.1%ツィーン20、2%スキムムルク入りのPBS緩衝液で1/2000に希釈した10mlのペルオキシダーゼ結合抗マウスIgGコンジュゲートを加えて、室温で1時間、揺り動かしながらインキュベートした。
・0.1%ツィーン20入りのPBS緩衝液で3回洗浄後、写真用フィルムに4曝す前に、当該膜をECL視覚化剤に4分間浸漬した。
【0160】
得られたスキャンした写真画像である図10に示したようにハイブリドーマ3D4上清中に分泌した抗体は、プロBNP(1−108)に対応するバンドのみを検出することができた。BNP(1−76)、BNP(77−108)及びGSTは、ハイブリドーマ3D4の抗体によっては検出されなかった。当該結果により、ハイブリドーマ3D4によって分泌した抗体のプロBNP(1−108)に対する特異性も確認した。
【0161】
本発明に従うハイブリドーマ3D4由来の抗体が、実施的にBNP(1−76)、BNP(77−108)を除き、プロBNP(1−108)を特異的に認識する抗体であることは明白である。
【0162】
実施例14:ハイブリドーマ3D4によって分泌される抗体によって認識されるエピトーピのスポット法による同定
ハイブリドーマ3D4上清は、ハイブリドーマ3D4抗体によって認識されるエピトープを同定するために、スポット法(実施例6に記載)で試験した。得られた結果は、3D4抗体がRAPR7677Pユニットを含むペプチド配列を効率良く認識することを示した。
【0163】
当該結果は、プロBNP(1−108)に対する3D4抗体の特異性を確認する、ELISA(実施例12)及びウェスタンブロッティング(実施例13)で得られた結果と一致した。
【0164】
実施例15:プロBNP(1−108)のラジオイムノアッセイ
材料:
1)固相:平底分裂型ウェル(cleavable-well)Maxisorpマイクロプレート、Nunc(Denmark)。
2)使用した捕獲抗体は、ウサギ#046805由来の血清から得られた、非除去のポリクローナル抗体である。
3)使用したコンジュゲートは、I125(抗BN:−I125)で標識した抗BNP(77−108)抗体である。当該抗体は、シオノギ社のシオノリアBNPキットのトレーサー抗体である。
4)飽和緩衝液:1%牛胎児血清(BSA,Sigma#A-7888)を含むpH7.4のダルベッコPBS緩衝液。
5)希釈緩衝液:0.1%BSA及び0.1%ツィーン20(Sigma#P-1379)を含むpH7.4のダルベッコPBS緩衝液。
6)洗浄緩衝液:0.1%ツィーン20を含むpH7.4のダルベッコPBS緩衝液。
7)プロBNP(1−108)スタンダード:組換え蛋白質の形の製造物。
【0165】
プロトコール:
使用したアッセイの原理は、平底分裂型ウェルマイクロプレートで行うサンドウィッチラジオイムノアッセイ法に基く。試料(又はプロBNP(1−108)のスタンダード)及びトレーサーを次々に加えるワンステップアッセイである。
【0166】
・コーティング溶液を、まず、ウサギ#046805由来のポリクローナル抗体を用いて、ダルベッコ PBS緩衝液(pH7.4)で40μg/mlに希釈し、全て調製した。当該溶液の300μlをマイクロプレートの各ウェルに加えた。
・このマイクロプレートを4℃で一晩インキュベートした。
・コーティング溶液を除いた後、マイクロプレートを、0.1%のツィーン20を含むpH7.4のダルべッコ PBS緩衝液300μlで洗浄し、1%のBSAを含むpH7.4のダルべッコ PBS緩衝液300μlを添加して飽和させた。
・その後、マイクロプレートを37℃で1時間インキュベートした。
・次いで、マイクロプレートを洗浄液(0.1%のツィーン20を含むpH7.4のダルべッコ PBS緩衝液)で3回洗浄した。
・100μlのスタンダードプロBNP(1−108)溶液、血清又は血漿を各殻斗(cupule)に入れた。プロBNP(1−108)をもし必要ならば固相上に保持されている捕獲抗体に結合させた。
・200μlの用時調製抗BNP−I125トレーサー溶液(シオノギ社のシオノリアBNPキットから入手)を各ウェルに加えた。
・反応媒体を4℃で一晩(18〜22時間)インキュベートした。
・翌日、マイクロプレートを300μlの洗浄液で3回洗浄した。最終洗浄し、洗浄溶液を吸引した後、各殻斗を不特定のチューブに移した。
・各殻斗に存在し、結合トレーサー量と試料中に存在のプロBNP(1−108)の量に比例する放射活性をガンマカウターを使って測定した。
【0167】
図11は、プロBNP(1−108)のスタンダードレンジを使って得た結果を示す。
【0168】
実施例16:ヒト試料のアッセイ結果
建常人の14試料及び心不全に苦しむ患者の15試料を、実施例15に記載の本発明に従うプロBNP(1−108)IRMAアッセイ、及びロシュ社から販売され、エレクシー(登録商標)自動装置を使用するBNP(1−76)アッセイの手段により試験した。血液試料は全て、EDTAを含むチューブに入れた。
図12は、本発明に従うプロBNP(1−108)IRMAアッセイにより当該試料について行った試験のcpm(counts per minute)の結果を示す。心不全に苦しむ患者の試料から得られた結果は、建常人の試料から得られた結果よりも、著しく高かった。当該結果は、心不全に苦しむ患者の試料中の循環プロBNP(1−108)の存在を明らかにするものであり、血清プロBNP(1−108)が心不全の予測マーカーであるという最初の証明である。
図13は、心不全に苦しむ患者の14試料についての、本発明に従うプロBNP(1−108)IRMAアッセイの手段によって測定したプロBNP(1−108)濃度(pg/ml)とエレクシー(登録商標)自動装置を使用するロシュ社のアッセイの手段によって測定したプロBNP(1−108)濃度(pg/ml)との相関関係を示す。観察できた相関関係は、相関係数R2が0.85で、有意であった。
【0169】
実施例17:ウサギ#046805由来のポリクローナル抗体とビオチンとのカップリング
カップリング法は、IgGの第一アミンと反応してアミド結合をつくるビオチンのN−ヒドロキシコハク酸アミド(NHS)を使用した。
【0170】
(+)−ビオチン・N−スクシンイミジルエステル(Fluka#14405)の100mM溶液を、ビオチンをジメチルホルムアミドに溶解して調製した。ビオチン化は、ガラスフラスコ中で行った。除去していない、予め精製したウサギ#046805由来のポリクローナル抗体の500μgを、100mMのビオチン溶液(ビオチン/抗体のモル比は500)17μlと一緒にフラスコに入れた。反応はpH7.4のダルベッコPBS緩衝液中で行った。反応混合物を室温で1時間30分、攪拌しながらインキュベートした。冷却後、2M グリシン緩衝液を加えて、ビオチンを不活性化した。混合物を室温で10時間、ゆっくり攪拌しながらインキュベートした。最後に、混合物をpH7.4のダルベッコPBS緩衝液で4℃一晩透析した。翌日、ナトリウムアジド溶液を0.02%の最終濃度で加えた。当該コンジュゲートを4℃で保存した。
【0171】
実施例18:プロBNP(1−108)の酵素免疫試験
本発明に従う酵素免疫試験を設定した。
【0172】
材料:
1)固相:平底Maxisorpマイクロプレート、Nunc(Denmark)。
2)使用した捕獲抗体は、Strategic Biosolution社から市販のポリクローナル抗BNP(1−108)抗体(#B9105RA00-A0)である。
3)使用したコンジュゲートは、実施例17に記載の方法に従う、ビオチンに結合した、非除去のウサギ#046805由来のポリクローナル抗体である。
4)ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼコンジュゲート(Amersham Pharmacia Biotech#RPN1231V)。
5)飽和緩衝液:1%牛胎児血清(BSA,Sigma#A-7888)を含むpH7.4のダルベッコPBS緩衝液。
6)希釈溶液:0.1%BSA及び0.1%ツィーン20を含むpH7.4のダルベッコPBS緩衝液。
7)洗浄緩衝液:0.1%ツィーン20を含むpH7.4のダルベッコPBS緩衝液。
8)プロBNP(1−108)スタンダード:組換え蛋白質。
9)視覚化溶液:視覚化溶液は、
9a)基質溶液:0.33%のH22を含む0.01M クエン酸と0.04M トリナトリウム・シトレートの最終pH5.6の溶液、及び
9b)色原体:OPD(オルト−フェニレンジアミン)錠で、1OPD錠は、10mlの基質緩衝液に溶解している、
を含む。
10)停止溶液:4N H2SO4
【0173】
プロトコール:
使用したアッセイの原理は、平底プレート中で行うサンドウィッチ型酵素免疫法に基く。まず、試料(又はスタンダード溶液)を捕獲抗体とインキュベートし、次いでインキュベーション及び洗浄後、検出抗体を添加する2ステップアッセイである。
【0174】
・コーティング溶液は、まず、pH7.4のダルベッコ PBS緩衝液で10μg/mlに希釈した抗BNP(7−108)ポリクローナル抗体で調製した。100μlの当該溶液をマクロプレートの各ウェルに入れた。
・このマイクロプレートを4℃で一晩インキュベートした。
・コーティング溶液を除いた後、マイクロプレートを、0.1%のツィーン20を含むpH7.4のダルべッコ PBS緩衝液300μlで洗浄し、1%のBSAを含むpH7.4のダルべッコ PBS緩衝液250μlを添加して飽和させた。
・その後、マイクロプレートを37℃で1時間インキュベートした。
・次いで、マイクロプレートを洗浄液で3回洗浄した。
・100μlのスタンダードプロBNP(1−108)溶液、血清又は血漿を各殻斗に入れた。プロBNP(1−108)がもし存在するならば、固相に保持されている捕獲抗体に結合させた。
・反応媒体を室温で2時間インキュベートした。
・次いで、マイクロプレートを300μlの洗浄液で5回洗浄した。
・ウサギ#046805由来のビオチン化ポリクローナル抗体100μl(6μg/mlに濃縮)をマイクロプレートの各ウェルに加えた。
・反応媒体を室温で1時間30分インキュベートした。
・次いで、プレートを300μlの洗浄液で5回洗浄した。100μlの視覚化溶液を各殻斗に分注した。反応は、室温(18〜24℃)で20分間、黒っぽくなるまで放置した。
・次いで、50μlの停止溶液を各殻斗に分注した。
・反応を停止後、光学密度を490/620nmで分光光度計で読んだ。
【0175】
図14は、スタンダードプロBNP(1−108)レンジを用いて得た結果を示す。
【0176】
実施例19:抗プロBNP(1−108)ポリクローナル抗体を共存させる、サンドウィッチ型のプロBNP(1−108)ELISAアッセイを用いる、BNP(1−76)及びBNP(77−108)に関する、非除去の、ウサギ#046805由来のビオチン結合ポリクローナル抗体の交差反応の評価
BNP(1−76)及びBNP(77−108)に関する、本発明に従う、非除去の、ビオチン化抗プロBNP(1−108)ポリクローナル抗体の交差反応は、実施例8に記載のプロBNP(1−108)ELISAアッセイの手段により評価した。プロBNP(1−108)、BNP(1−76)及びBNP(77−108)の5ng/ml〜100ng/mlの濃度レンジを調製し、実施例18に記載のプロBNP(1−108)ELISAアッセイの手段により試験した。
【0177】
濃度に対する490nmにおける光学密度の変化の結果を、各蛋白質について図15に示す。BNP(1−76)又はBNP(77−108)については全く交差反応が認められなかった。すなわち、得られたシグナルは、如何なる濃度で試験しても、バックグラウンドと等価であった。患者に一般的に見られるBNP(1−76)及びBNP(77−108)の濃度(最高濃度では、1ng/mlのオーダー)では、ウサギ#046805由来のポリクローナル抗体は、交差反応を示さない非除去バージョンに使用することができた。
【0178】
実施例20:抗NT−プロBNP(1−29)ポリクローナル抗体を共存させる、サンドウィッチ型のプロBNP(1−108)ELISAアッセイを用いる、BNP(1−76)及びBNP(77−108)に関する、非除去の、ウサギ#046805由来のビオチン結合ポリクローナル抗体の交差反応の評価
BNP(1−76)及びBNP(77−108)に関する、非除去の、ビオチン化ポリクローナル抗体の交差反応を、実施例20では、抗プロBNP(1−108)抗体を抗NT−プロBNP(1−29)ポリクローナル抗体に換える以外は、実施例8に記載のプロトコール及び試薬を用いるプロBNP(1−108)ELISAアッセイの手段により評価した。
【0179】
抗NT−プロBNP(1−29)ポリクローナル抗体は、イムノゲンとして使用したペプチドがKLHに結合したペプチドNT−プロBNP(1−108)であった事実を除いて、実施例3に記載のプロトコールに従って作製した。プロBNP(1−108)、BNP(1−76)及びBNP(77−108)の5ng/ml〜100ng/mlの濃度レンジを調製し、プロBNP(1−108)ELISAアッセイの手段により試験した。
【0180】
濃度に対する490nmにおける光学密度の変化の結果を、各蛋白質について図16に示す。本発明に従うウサギ#046805由来のポリクローナル抗体の交差反応は、BNP(1−76)又はBNP(77−108)については全く認められなかった。すなわち、得られたシグナルは、如何なる濃度で試験しても、バックグラウンドと等価であった。患者に一般的に見られるBNP(1−76)及びBNP(77−108)の濃度(最高濃度では、1ng/mlのオーダー)では、ウサギ#046805由来のポリクローナル抗体は、交差反応を示さない非除去バージョンに使用することができた。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】図1は、プロテインA−セファロースで精製したウサギ#046805由来のポリクローナル抗体の、マイクロプレート上に0.25μg/mlで吸着させたプロBNP(1−108)、BNP(1−76)フラグメント、BNP(77−108)又はGST(glutathione-S-transferase、コントロール蛋白質として用いた)との反応性を示す。
【図2】図2は、BNP−K3−NHS−セファロース樹脂で除去した後に得たウサギ#046805のろ液のポリクローナル抗体の反応性を示す。当該ポリクローナル抗体は、2〜20μg/mlのレンジの希釈形態で調製し、次いで0.25μg/mlの吸着量のプロBNP(1−108)、BNP(1−76)又はBNP(77−108)ポリペプチドで被覆した殻斗上で試験した。
【図3】図3は、BNP−K3−NHS−セファロース樹脂で除去した後に得たウサギ#046832のろ液のポリクローナル抗体の反応性を示す。当該ポリクローナル抗体は、5〜20μg/mlのレンジの希釈形態で調製し、次いで0.25μg/mlの吸着量のプロBNP(1−108)、BNP(1−76)又はBNP(77−108)ポリペプチドで被覆した殻斗上で試験した。
【図4】図4は、BNP−K3−NHS−セファロース樹脂で除去した後に得たウサギ#046805のポリクローナル血清の溶出液の反応性を示す。当該ポリクローナル抗体は、2〜20μg/mlのレンジの希釈形態で調製し、次いで0.25μg/mlの吸着量のプロBNP(1−108)、BNP(1−76)又はBNP(77−108)ポリペプチドで被覆した殻斗上で試験した。
【図5】図5は、BNP−K3−NHS−セファロース樹脂で除去した後に得たウサギ#046832のポリクローナル血清の溶出液の反応性を示す。当該ポリクローナル抗体は、5〜20μg/mlのレンジの希釈形態で調製し、次いで0.25μg/mlの吸着量のプロBNP(1−108)、BNP(1−76)又はBNP(77−108)ポリペプチドで被覆した殻斗上で試験した。
【図6】図6は、スポット技術の手段による、除去前のウサギ046805由来のポリクローナル血清のエピトープ分析を表す(当該実施例では、ノイズのバックグラウンドは、30.4±5.93相対強度単位)。
【図7】図7は、スポット技術の手段による、BNP−K3−NHS−セファロース樹脂上での除去後のウサギ046805由来のポリクローナル血清のエピトープ分析を表す(当該実施例では、ノイズのバックグラウンドは、31.3±6.31相対強度単位)。
【図8】図8は、0.25μg/mlの吸着量のプロBNP(1−108)、BNP(1−76)、BNP(77−108)又はペプチドYTLRAPRSPKMVQGSG(C13P30)で被覆した殻斗上で試験した、1/2に希釈したハイブリドーマ3D4の培養上清の反応性を表す。
【図9】図9は、各々の蛋白質が移動している(1レーン当たり、1μgの蛋白質)、16%アクリルアミドゲルの写真を示す。レーン1:分子量マーカー;レーン2:プロBNP(1−108)−GST;レーン3:GST(ネガティブコントロール蛋白質);レーン4:BNP(1−76)−GST;レーン5:BNP(77−108)。
【図10】図10は、プロBNP(1−108)−GST(レーン2)、GST(ネガティブコントロール蛋白質)(レーン3)、BNP(1−76)−GST(レーン4)及びBNP(77−108)(レーン5)をゲル(1ゲル当たり、1μgの蛋白質)上に装填し、次いでニトロセルロース膜上に移す、3D4ハイブリドーマによって分泌された抗体を用いるウェスタンブロッティングアッセイの結果を示す。
【図11】図11は、プロBNP(1−108)IRMAアッセイのスタンダードカーブを表す。
【図12】図12は、14人の健常人からの試料及び心不全に苦しむ15人の患者からの試料中のプロBNP(1−108)のIRMAアッセイの結果をcpm(counts per minute)で示す。
【図13】図13は、心不全に苦しむ14人の患者からの試料について、本発明に従う免疫放射定量測定法の手段によって測定したプロBNP(1−108)(pg/ml)の濃度と、エレクシー(Elecsys)(登録商標)自動装置(ホフマン・ラロシュ社の登録商標)によるアッセイの手段によって測定したBNP(1−76)(pg/ml)の濃度との関係を示す。
【図14】図14は、本発明に従うプロBNP(1−108)のELISAAアッセイのスタンダードカーブを表す。
【図15】図15は、プロBNP(1−108)ELISAアッセイで、抗BNP(77−108)ポリクローナル抗体を共存させ、サンドウィッチに使用した、除去を行わず、ビオチンに結合させたウサギ#046805のポリクローナル抗体のBNP(1−76)及びBNP(77−108)に関する交差反応の評価を表す。
【図16】図16は、プロBNP(1−108)ELISAアッセイで、抗NT−プロBNP(1−29)ポリクローナル抗体を共存させ、サンドウィッチに使用した、除去を行わず、ビオチンに結合させたウサギ#046805のポリクローナル抗体のBNP(1−76)及びBNP(77−108)に関する交差反応の評価を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一に、プロBNP(1−108)の配列RAPR7677P(配列番号5)を特異的に認識し、ペプチドBNP(1−76)又はペプチドBNP(77−108)を実質的に認識せず、第二に、ヒト血清又は血漿の試料中の循環プロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する、ことを特徴とする抗プロBNP(1−108)抗体。
【請求項2】
プロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85(配列番号4)を特異的に認識する、請求項1記載の抗プロBNP(1−108)抗体。
【請求項3】
プロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84(配列番号108)を特異的に認識する、請求項1記載の抗プロBNP(1−108)抗体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の抗プロBNP(1−108)抗体を取得するための方法であって、動物をプロBNP(1−108)分子全体で免疫し、次いで、BNP(77−108)ペプチド及び/又はBNP(1−76)ペプチドを用いて、得られた抗血清を除去する前記方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載の抗プロBNP(1−108)抗体を取得するための方法であって、
−下記式:
1−X1−RAPRSP−X2−a2 (I)
[式中、
1は、水素原子であるかあるいはチオール、アルコール、アミノキシ、第一アミンもしくは第二アミン官能基、アミノカルボキシル基、ビオチニル基及びアセチル基から選ばれる官能基又は化学基を表し、
1は、0〜3のアミノ酸のペプチド配列であって、プロBNP(1−108)の天然配列に由来しても又は由来しなくてもよい配列を表し、
2は、0〜7のアミノ酸のペプチド配列であって、プロBNP(1−108)の天然配列に由来しても由来しなくてもよい配列を表し、
2は、OH官能基、NH2官能基又はアルコキシ基を表す。]
で表されるペプチド;
−下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z (II)
[式中、Xは、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zは、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表す。]
で表されるペプチド;
−下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z (III)
[式中、Xは、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zは、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表す。]
で表されるペプチド;
−アミノ酸Y70、T71、L72、K79、M80、V81、Q82、G83、S84及びG85の内の1以上のアミノ酸で置換された配列X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z(II)又は配列X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z(III)であって、Xが、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zが、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸であり得る配列に由来する配列を含むペプチド;
−配列C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−G(C13P30:配列番号16)を有するペプチド;
−配列C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S(CN32:配列番号109)を有するペプチド;
から選ばれるペプチドで動物を免疫し、次いで、場合により、BNP(77−108)ペプチド及び/又はBNP(1−76)ペプチドを用いて、得られた抗血清を除去する前記方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項記載の抗プロBNP(1−108)抗体を分泌するハイブリドーマを取得するための方法であって、
−下記式:
1−X1−RAPRSP−X2−a2 (I)
[式中、
1は、水素原子であるかあるいはチオール、アルコール、アミノキシ、第一アミンもしくは第二アミン官能基、アミノカルボキシル基、ビオチニル基及びアセチル基から選ばれる官能基又は化学基を表し、
1は、0〜3のアミノ酸のペプチド配列であって、プロBNP(1−108)の天然配列に由来しても由来しなくてもよい配列を表し、
2は、0〜7のアミノ酸のペプチド配列であって、プロBNP(1−108)の天然配列に由来しても由来しなくてもよい配列を表し、
2は、OH官能基、NH2官能基又はアルコキシ基を表す。]
で表されるペプチド;
−下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z (II)
[式中、Xは、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zは、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表す。]
で表されるペプチド;
−下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z (III)
[式中、Xは、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zは、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表す。]
で表されるペプチド;
−アミノ酸Y70、T71、L72、K79、M80、V81、Q82、G83、S84及びG85の内の1以上のアミノ酸で置換された配列X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z(II)又は配列X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z(III)であって、Xが、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zが、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸であり得る配列に由来する配列を含むペプチド;
−配列C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−G(C13P30:配列番号16)を有するペプチド;
−配列C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S(CN32:配列番号109)を有するペプチド;
から選ばれるペプチドで動物を免疫し、
イムノグロブリン分泌リンパ球を当該動物から採取し、そして、
当該リンパ球をミエローマ細胞と融合して、少なくとも一種のイムノグロブリン分泌ハイブリドーマを取得する前記方法。
【請求項7】
式(II)の前記ペプチドが、配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85(配列番号4)を有する、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
式(III)の前記ペプチドが、配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84(配列番号108)を有する、請求項5又は6記載の方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項記載の方法によって製造されるハイブリドーマ。
【請求項10】
請求項9記載のハイブリドーマによって分泌される抗プロBNP(1−108)モノクローナル抗体。
【請求項11】
生物学的試料を請求項1〜3及び10のいずれか1項記載の抗プロBNP(1−108)抗体と接触させること、及び当該試料中の前記抗プロBNP(1−108)を検出することを含む、ヒトの心不全のin vitro診断方法。
【請求項12】
ヒトの心不全のin vitro診断方法であって、
a)生物学的試料を請求項1〜3及び10のいずれか1項記載の抗プロBNP(1−108)抗体と接触させること、
b)抗原抗体複合体の形成を可能にする条件下で、当該混合物をインキュベートすること、及び
c)当該一次複合体中に存在する前記プロBNP(1−108)に特異的に結合することができる標識検出抗体、又は当該一次複合体中に存在する前記プロBNP(1−108)に対する抗体に結合することができる標識検出抗原を場合により使用して、形成された抗原抗体複合体を明らかにすること、
を含む前記方法。
【請求項13】
前記明らかにされた抗原抗体複合体の量を、人の臨床症状と相関させるためのステップd)を更に含む、請求項12記載の診断方法。
【請求項14】
請求項1〜3及び10のいずれか1項記載の少なくとも一つの抗体を含む、生物学的な試料中のプロBNP(1−108)を検出するためのキット。
【請求項15】
請求項14記載の生物学的な試料中のプロBNP(1−108)を検出するためのキットであって、
(i)一つの容器には、請求項1〜3及び10のいずれか1項記載の少なくとも一つの抗体を、
(ii)もう一つの容器には、
−下記式:
1−X1−RAPRSP−X2−a2 (I)
[式中、
1は、水素原子であるかあるいはチオール、アルコール、アミノキシ、第一アミンもしくは第二アミン官能基、アミノカルボキシル基、ビオチニル基及びアセチル基から選ばれる官能基又は化学基を表し、
1は、0〜3のアミノ酸のペプチド配列であって、プロBNP(1−108)の天然配列に由来しても由来しなくてもよい配列を表し、
2は、0〜7のアミノ酸のペプチド配列であって、プロBNP(1−108)の天然配列に由来しても由来しなくてもよい配列を表し、
2は、OH官能基、NH2官能基又はアルコキシ基を表す。]
で表されるペプチド;
−下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z (II)
[式中、Xは、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zは、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表す。]
で表されるペプチド;
−下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z (III)
[式中、Xは、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zは、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表す。]
で表されるペプチド;
−アミノ酸Y70、T71、L72、K79、M80、V81、Q82、G83、S84及びG85の内の1以上のアミノ酸で置換された配列X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z(II)又は配列X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z(III)であって、Xが、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zが、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸であり得る配列に由来する配列を含むペプチド;
−配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85(配列番号4)を有するペプチド;
−配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84(配列番号109)を有するペプチド;
−配列C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−G(C13P30:配列番号16)を有するペプチド;
−配列C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S(CN32:配列番号109)を有するペプチド;
から選ばれる少なくとも一つのペプチド
を含む前記キット。
【請求項16】
下記式:
1−X1−RAPRSP−X2−a2 (I)
[式中、
1は、水素原子であるかあるいはチオール、アルコール、アミノキシ、第一アミンもしくは第二アミン官能基、アミノカルボキシル基、ビオチニル基及びアセチル基から選ばれる官能基又は化学基を表し、
1は、0〜3のアミノ酸のペプチド配列であって、プロBNP(1−108)の天然配列に由来しても由来しなくてもよい配列を表し、
2は、0〜7のアミノ酸のペプチド配列であって、プロBNP(1−108)の天然配列に由来しても由来しなくてもよい配列を表し、
2は、OH官能基、NH2官能基又はアルコキシ基を表す。]
で表されるペプチド。
【請求項17】
下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z (II)
[式中、Xは、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zは、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表す。]
で表されるペプチド。
【請求項18】
前記配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85(配列番号4)を有する、請求項17記載のペプチド。
【請求項19】
下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z (III)
[式中、Xは、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zは、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表す。]
で表されるペプチド。
【請求項20】
前記配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z(配列番号108)を有する、請求項19記載のペプチド。
【請求項21】
アミノ酸Y70、T71、L72、K79、M80、V81、Q82、G83、S84及びG85の内の1以上のアミノ酸で置換された配列X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z(II)又は配列X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z(III)であって、Xが、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zが、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸であり得る配列に由来する配列を含むペプチド。
【請求項22】
以下の配列;
配列番号16:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−G(ペプチド C13P30)
配列番号109:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S(ペプチド CN32)
配列番号6:C−G−R−A−P−R−S−P
配列番号7:アセチル−C−G−R−A−P−R−S−P
配列番号8:C−G−R−A−P−R−S−P−K
配列番号9:アセチル−C−G−R−A−P−R−S−P−K
配列番号10:C−G−R−A−P−R−S−P−K−M−V
配列番号11:C−G−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−G
配列番号12:R−A−P−R−S−P−G−C
配列番号13:アセチル−R−A−P−R−S−P−G−C
配列番号110:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K
配列番号111:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V
配列番号112:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q
配列番号113:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G
配列番号19:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−βA
配列番号20:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−A−T−βA
配列番号114:アセチル−C−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q
配列番号115:C−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G
配列番号116:C−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S
配列番号117:C−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−G
配列番号118:C−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V
配列番号119:C−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q
配列番号120:L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−C
配列番号121:C−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S
配列番号122:C−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−G
からなる群より選ばれる配列を有する、請求項16記載のペプチド。
【請求項23】
前記BNP(1−76)ペプチド及び前記BNP(77−108)ペプチドを実質的に除き、プロBNP(1−108)の前記配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85、前記配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84及び/又は前記配列RAPR7677Pを特異的に認識し、ヒト血清試料又は血漿試料中の循環プロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する抗プロBNP(1−108)抗体を取得するための方法であって、動物を請求項16〜22のいずれか1項記載のペプチドで免疫し、場合により、前記BNP(77−108)ペプチド及び/又は前記BNP(1−76)ペプチドを用いて、得られた抗血清を除く前記方法。
【請求項24】
前記BNP(1−76)ペプチド及び前記BNP(77−108)ペプチドを実質的に除き、プロBNP(1−108)の前記配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85、前記配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84及び/又は前記配列RAPR7677Pを特異的に認識し、ヒト血清試料又は血漿試料中の循環プロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する抗プロBNP(1−108)抗体を分泌するハイブリドーマを取得するための方法であって、動物を請求項16〜22のいずれか1項記載のペプチドで免疫し、イムノグロブリン分泌リンパ球を当該動物から採取し、そして、前記リンパ球をミエローマ細胞と融合し、少なくとも一種のイムノグロブリン分泌ハイブリドーマを取得する前記方法。
【請求項25】
請求項23記載の方法によって得られることを特徴とする、抗プロBNP(1−108)抗体。
【請求項26】
プロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85又は配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84を特異的に認識する、請求項25記載の抗プロBNP(1−108)抗体。
【請求項27】
請求項24記載の方法によって製造され得るハイブリドーマ。
【請求項28】
請求項27記載のハイブリドーマによって分泌される抗プロBNP(1−108)モノクローナル抗体。
【請求項29】
CNCMに番号CNCM I−3073で寄託されたハイブリドーマ3D4によって分泌される、請求項28記載の抗プロBNP(1−108)モノクローナル抗体。
【請求項30】
生物学的試料を請求項25、26、28及び29のいずれか1項記載の抗プロBNP(1−108)抗体と接触させること、及び当該試料中の前記プロBNP(1−108)を検出することを含む、ヒトの心不全のin vitro診断方法。
【請求項31】
ヒトの心不全のin vitro診断方法であって、
a)生物学的試料を請求項25、26、28及び29のいずれか1項記載の抗プロBNP(1−108)抗体と接触させること、
b)抗原抗体複合体の形成を可能にする条件下で、当該混合物をインキュベートすること、及び
c)当該一次複合体中に存在する前記プロBNP(1−108)に特異的に結合することができる標識検出抗体、又は当該一次複合体中に存在する前記プロBNP(1−108)に対する抗体に結合することがでできる標識検出抗原を場合により使用して、形成された抗原抗体複合体を明らかにすること、
を含む前記方法。
【請求項32】
明らかにされた抗原抗体複合体の量を人の臨床症状と相関させるためのステップd)を更に含む、請求項31記載の診断方法。
【請求項33】
請求項25、26、28及び29記載の少なくとも一つの抗体を含む、生物学的試料中のプロBNP(1−108)を検出するためのキット。
【請求項34】
請求項16〜22のいずれか1項記載の少なくとも一つのペプチドをスタンダード及び/又はコントロールとして含む、生物学的試料中のプロBNP(1−108)を検出するためのキット。
【請求項35】
生物学的な試料中のプロBNP(1−108)を検出するためのキットであって、
−一つの容器に、請求項25、26、28及び29記載の少なくとも一つの抗体を、
−もう一つの容器に、請求項16〜22のいずれか1項記載の少なくとも一つのペプチドを含む、生物学的試料中のプロBNP(1−108)を検出するための前記キット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一に、プロBNP(1−108)の配列RAPR7677P(配列番号5)を特異的に認識し、ペプチドBNP(1−76)又はペプチドBNP(77−108)を実質的に認識せず、第二に、ヒト血清又は血漿の試料中の循環プロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する、ことを特徴とする抗プロBNP(1−108)抗体。
【請求項2】
プロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85(配列番号4)を特異的に認識する、請求項1記載の抗プロBNP(1−108)抗体。
【請求項3】
プロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84(配列番号108)を特異的に認識する、請求項1記載の抗プロBNP(1−108)抗体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の抗プロBNP(1−108)抗体を取得するための方法であって、動物をプロBNP(1−108)分子全体で免疫し、次いで、BNP(77−108)ペプチド及び/又はBNP(1−76)ペプチドを用いて、得られた抗血清を除去する前記方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載の抗プロBNP(1−108)抗体を取得するための方法であって、
−下記式:
−X−RAPRSP−X−a (I)
[式中、
は、水素原子であるかあるいはチオール、アルコール、アミノキシ、第一アミンもしくは第二アミン官能基、アミノカルボキシル基、ビオチニル基及びアセチル基から選ばれる官能基又は化学基を表し、
は、0〜3のアミノ酸のペプチド配列であって、プロBNP(1−108)の天然配列に由来しても又は由来しなくてもよい配列を表し、
は、0〜7のアミノ酸のペプチド配列であって、プロBNP(1−108)の天然配列に由来しても由来しなくてもよい配列を表し、
は、OH官能基、NH官能基又はアルコキシ基を表す。]
で表されるペプチド;
−下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z (II)
[式中、Xは、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zは、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表す。]
で表されるペプチド;
−下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z (III)
[式中、Xは、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zは、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表す。]
で表されるペプチド;
−アミノ酸Y70、T71、L72、K79、M80、V81、Q82、G83、S84及びG85の内の1以上のアミノ酸で置換された配列X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z(II)又は配列X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z(III)であって、Xが、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zが、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸であり得る配列に由来する配列を含むペプチド;
−配列C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−G(C13P30:配列番号16)を有するペプチド;
−配列C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S(CN32:配列番号109)を有するペプチド;
から選ばれるペプチドで動物を免疫し、次いで、場合により、BNP(77−108)ペプチド及び/又はBNP(1−76)ペプチドを用いて、得られた抗血清を除去する前記方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項記載の抗プロBNP(1−108)抗体を分泌するハイブリドーマを取得するための方法であって、
−下記式:
−X−RAPRSP−X−a (I)
[式中、
は、水素原子であるかあるいはチオール、アルコール、アミノキシ、第一アミンもしくは第二アミン官能基、アミノカルボキシル基、ビオチニル基及びアセチル基から選ばれる官能基又は化学基を表し、
は、0〜3のアミノ酸のペプチド配列であって、プロBNP(1−108)の天然配列に由来しても由来しなくてもよい配列を表し、
は、0〜7のアミノ酸のペプチド配列であって、プロBNP(1−108)の天然配列に由来しても由来しなくてもよい配列を表し、
は、OH官能基、NH官能基又はアルコキシ基を表す。]
で表されるペプチド;
−下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z (II)
[式中、Xは、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zは、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表す。]
で表されるペプチド;
−下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z (III)
[式中、Xは、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zは、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表す。]
で表されるペプチド;
−アミノ酸Y70、T71、L72、K79、M80、V81、Q82、G83、S84及びG85の内の1以上のアミノ酸で置換された配列X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z(II)又は配列X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z(III)であって、Xが、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zが、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸であり得る配列に由来する配列を含むペプチド;
−配列C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−G(C13P30:配列番号16)を有するペプチド;
−配列C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S(CN32:配列番号109)を有するペプチド;
から選ばれるペプチドで動物を免疫し、
イムノグロブリン分泌リンパ球を当該動物から採取し、そして、
当該リンパ球をミエローマ細胞と融合して、少なくとも一種のイムノグロブリン分泌ハイブリドーマを取得する前記方法。
【請求項7】
式(II)の前記ペプチドが、配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85(配列番号4)を有する、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
式(III)の前記ペプチドが、配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84(配列番号108)を有する、請求項5又は6記載の方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項記載の方法によって製造されるハイブリドーマ。
【請求項10】
請求項9記載のハイブリドーマによって分泌される抗プロBNP(1−108)モノクローナル抗体。
【請求項11】
生物学的試料を請求項1〜3及び10のいずれか1項記載の抗プロBNP(1−108)抗体と接触させること、及び当該試料中の前記抗プロBNP(1−108)を検出することを含む、ヒトの心不全の診断のためのin vitro検定方法。
【請求項12】
ヒトの心不全の診断のためのin vitro検定方法であって、
a)生物学的試料を請求項1〜3及び10のいずれか1項記載の抗プロBNP(1−108)抗体と接触させること、
b)抗原抗体複合体の形成を可能にする条件下で、当該混合物をインキュベートすること、及び
c)当該一次複合体中に存在する前記プロBNP(1−108)に特異的に結合することができる標識検出抗体、又は当該一次複合体中に存在する前記プロBNP(1−108)に対する抗体に結合することができる標識検出抗原を場合により使用して、形成された抗原抗体複合体を明らかにすること、
を含む前記方法。
【請求項13】
前記明らかにされた抗原抗体複合体の量を、人の臨床症状と相関させるためのステップd)を更に含む、請求項12記載の検定方法。
【請求項14】
請求項1〜3及び10のいずれか1項記載の少なくとも一つの抗体を含む、生物学的な試料中のプロBNP(1−108)を検出するためのキット。
【請求項15】
請求項14記載の生物学的な試料中のプロBNP(1−108)を検出するためのキットであって、
(i)一つの容器には、請求項1〜3及び10のいずれか1項記載の少なくとも一つの抗体を、
(ii)もう一つの容器には、
−下記式:
−X−RAPRSP−X−a (I)
[式中、
は、水素原子であるかあるいはチオール、アルコール、アミノキシ、第一アミンもしくは第二アミン官能基、アミノカルボキシル基、ビオチニル基及びアセチル基から選ばれる官能基又は化学基を表し、
は、0〜3のアミノ酸のペプチド配列であって、プロBNP(1−108)の天然配列に由来しても由来しなくてもよい配列を表し、
は、0〜7のアミノ酸のペプチド配列であって、プロBNP(1−108)の天然配列に由来しても由来しなくてもよい配列を表し、
は、OH官能基、NH官能基又はアルコキシ基を表す。]
で表されるペプチド;
−下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z (II)
[式中、Xは、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zは、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表す。]
で表されるペプチド;
−下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z (III)
[式中、Xは、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zは、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表す。]
で表されるペプチド;
−アミノ酸Y70、T71、L72、K79、M80、V81、Q82、G83、S84及びG85の内の1以上のアミノ酸で置換された配列X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z(II)又は配列X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z(III)であって、Xが、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zが、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸であり得る配列に由来する配列を含むペプチド;
−配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85(配列番号4)を有するペプチド;
−配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84(配列番号108)を有するペプチド;
−配列C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−G(C13P30:配列番号16)を有するペプチド;
−配列C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S(CN32:配列番号109)を有するペプチド;
から選ばれる少なくとも一つのペプチド
を含む前記キット。
【請求項16】
下記式:
−X−RAPRSP−X−a (I)
[式中、
は、水素原子であるかあるいはチオール、アルコール、アミノキシ、第一アミンもしくは第二アミン官能基、アミノカルボキシル基、ビオチニル基及びアセチル基から選ばれる官能基又は化学基を表し、
は、0〜3のアミノ酸のペプチド配列であって、プロBNP(1−108)の天然配列に由来しても由来しなくてもよい配列を表し、
は、0〜7のアミノ酸のペプチド配列であって、プロBNP(1−108)の天然配列に由来しても由来しなくてもよい配列を表し、
は、OH官能基、NH官能基又はアルコキシ基を表す。]
で表されるペプチド。
【請求項17】
下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z (II)
[式中、Xは、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zは、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表す。]
で表されるペプチド。
【請求項18】
前記配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85(配列番号4)を有する、請求項17記載のペプチド。
【請求項19】
下記式:
X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z (III)
[式中、Xは、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zは、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表す。]
で表されるペプチド。
【請求項20】
前記配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z(配列番号108)を有する、請求項19記載のペプチド。
【請求項21】
アミノ酸Y70、T71、L72、K79、M80、V81、Q82、G83、S84及びG85の内の1以上のアミノ酸で置換された配列X−Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85−Z(II)又は配列X−Y70TLRAPR7677PKMVQGS84−Z(III)であって、Xが、水素原子であるか又はアセチル基もしくはプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸を表し、そして、Zが、OH官能基又はプロBNP(1−108)の配列に属さない1〜3のアミノ酸であり得る配列に由来する配列を含むペプチド。
【請求項22】
以下の配列;
配列番号16:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−G(ペプチド C13P30)
配列番号109:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S(ペプチド CN32)
配列番号6:C−G−R−A−P−R−S−P
配列番号7:アセチル−C−G−R−A−P−R−S−P
配列番号8:C−G−R−A−P−R−S−P−K
配列番号9:アセチル−C−G−R−A−P−R−S−P−K
配列番号10:C−G−R−A−P−R−S−P−K−M−V
配列番号11:C−G−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−G
配列番号12:R−A−P−R−S−P−G−C
配列番号13:アセチル−R−A−P−R−S−P−G−C
配列番号110:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K
配列番号111:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V
配列番号112:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q
配列番号113:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G
配列番号19:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−βA
配列番号20:C−Y−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−A−T−βA
配列番号114:アセチル−C−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q
配列番号115:C−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G
配列番号116:C−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S
配列番号117:C−T−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−G
配列番号118:C−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V
配列番号119:C−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q
配列番号120:L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−C
配列番号121:C−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S
配列番号122:C−L−R−A−P−R−S−P−K−M−V−Q−G−S−G
からなる群より選ばれる配列を有する、請求項16記載のペプチド。
【請求項23】
前記BNP(1−76)ペプチド及び前記BNP(77−108)ペプチドを実質的に除き、プロBNP(1−108)の前記配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85、前記配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84及び/又は前記配列RAPR7677Pを特異的に認識し、ヒト血清試料又は血漿試料中の循環プロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する抗プロBNP(1−108)抗体を取得するための方法であって、動物を請求項16〜22のいずれか1項記載のペプチドで免疫し、場合により、前記BNP(77−108)ペプチド及び/又は前記BNP(1−76)ペプチドを用いて、得られた抗血清を除く前記方法。
【請求項24】
前記BNP(1−76)ペプチド及び前記BNP(77−108)ペプチドを実質的に除き、プロBNP(1−108)の前記配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85、前記配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84及び/又は前記配列RAPR7677Pを特異的に認識し、ヒト血清試料又は血漿試料中の循環プロBNP(1−108)を特異的に認識する能力を有する抗プロBNP(1−108)抗体を分泌するハイブリドーマを取得するための方法であって、動物を請求項16〜22のいずれか1項記載のペプチドで免疫し、イムノグロブリン分泌リンパ球を当該動物から採取し、そして、前記リンパ球をミエローマ細胞と融合し、少なくとも一種のイムノグロブリン分泌ハイブリドーマを取得する前記方法。
【請求項25】
請求項23記載の方法によって得られることを特徴とする、抗プロBNP(1−108)抗体。
【請求項26】
プロBNP(1−108)の配列Y70TLRAPR7677PKMVQGSG85又は配列Y70TLRAPR7677PKMVQGS84を特異的に認識する、請求項25記載の抗プロBNP(1−108)抗体。
【請求項27】
請求項24記載の方法によって製造され得るハイブリドーマ。
【請求項28】
請求項27記載のハイブリドーマによって分泌される抗プロBNP(1−108)モノクローナル抗体。
【請求項29】
CNCMに番号CNCM I−3073で寄託されたハイブリドーマ3D4によって分泌される、請求項28記載の抗プロBNP(1−108)モノクローナル抗体。
【請求項30】
生物学的試料を請求項25、26、28及び29のいずれか1項記載の抗プロBNP(1−108)抗体と接触させること、及び当該試料中の前記プロBNP(1−108)を検出することを含む、ヒトの心不全の診断のためのin vitro検定方法。
【請求項31】
ヒトの心不全の診断のためのin vitro検定方法であって、
a)生物学的試料を請求項25、26、28及び29のいずれか1項記載の抗プロBNP(1−108)抗体と接触させること、
b)抗原抗体複合体の形成を可能にする条件下で、当該混合物をインキュベートすること、及び
c)当該一次複合体中に存在する前記プロBNP(1−108)に特異的に結合することができる標識検出抗体、又は当該一次複合体中に存在する前記プロBNP(1−108)に対する抗体に結合することがでできる標識検出抗原を場合により使用して、形成された抗原抗体複合体を明らかにすること、
を含む前記方法。
【請求項32】
明らかにされた抗原抗体複合体の量を人の臨床症状と相関させるためのステップd)を更に含む、請求項31記載の検定方法。
【請求項33】
請求項25、26、28及び29記載の少なくとも一つの抗体を含む、生物学的試料中のプロBNP(1−108)を検出するためのキット。
【請求項34】
請求項16〜22のいずれか1項記載の少なくとも一つのペプチドをスタンダード及び/又はコントロールとして含む、生物学的試料中のプロBNP(1−108)を検出するためのキット。
【請求項35】
生物学的な試料中のプロBNP(1−108)を検出するためのキットであって、
−一つの容器に、請求項25、26、28及び29記載の少なくとも一つの抗体を、
−もう一つの容器に、請求項16〜22のいずれか1項記載の少なくとも一つのペプチドを含む、生物学的試料中のプロBNP(1−108)を検出するための前記キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2006−514609(P2006−514609A)
【公表日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−526985(P2004−526985)
【出願日】平成15年8月7日(2003.8.7)
【国際出願番号】PCT/FR2003/002483
【国際公開番号】WO2004/014952
【国際公開日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【出願人】(502056400)バイオ−ラド パストゥール (2)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【出願人】(505045713)ユニベルシテ モンペリエ アン (2)
【Fターム(参考)】