説明

心拍数に基づく生体リズム判定方法及び測定装置、並びに月経周期判定方法及び測定装置

【課題】月経周期が簡単に判定できる方法を提供する。
【解決手段】被験者の睡眠中の心拍数を測定し、複数日にわたる心拍数のデータを収集し、前記収集された心拍数のデータに基づいて被験者の月経周期を判定する。
【効果】睡眠中に被験者の心拍数を測定するだけで、女性の月経周期を判定することができる。睡眠中に測定できるので、被験者が特別に意識しなくても、測定を行うことができ、長期間にわたって測定を続けることが容易にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の睡眠中の心拍数に基づいて判定される生体リズム判定方法及び月経周期判定方法並びにこれらの方法を実施することができる測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
女性の生体リズム、例えば月経周期を予想するために種々の方法が考案されている。従来、月経からの日数で割り出す方法(荻野式)、毎朝の基礎体温を測定する方法(基礎体温法)、採取し乾燥させた唾液の状態を測定する方法、生体電気インピーダンスを測定する方法などが知られている。
前記月経からの日数割り出す方法(荻野式)は、簡単であるが誤差が多い。
【0003】
毎朝の基礎体温を測定する法は、朝、布団から起きあがる前に数分間体温測定をして、グラフを記録しなければならない。
また、乾燥させた唾液の状態を測定する方法は、朝食事をする前に口の中から唾液のサンプルを採取して容器に採り乾燥させ、その乾燥状態を見て判断しなければならない。
前記、3つ方法のうち、後の2つの方法は、測定手順中に、起きあがって何らかの測定をする動作が必要であり、数分間ただ待っていなければならず、長期にわたって習慣的に測定を続けなければならないことを考えると、継続するのが難しくなる。
【0004】
一方、健康管理のための生体情報モニタ方法の一つとして、就寝中において、体の動きを圧力変化としてとらえ、高感度かつ低ノイズで測定できる心拍数、呼吸数又は体動のモニタ方法が提案されている。
この心拍数、呼吸数又は体動のモニタ方法は、水などの液体を可撓性容器に封入し、前記容器を、板に貼り付けて枕の下に設置し、被験者の頭を枕の上に載せて、前記容器に封入された液体の圧力変化を測定する方法である。
【0005】
この方法を用いれば、被験者の睡眠中に測定が完了してしまうので、被験者は何もしなくてもよい。したがって、長期にわたって測定を習慣的に行いやすいという利点がある。
【特許文献1】特開昭63-305850号公報
【特許文献2】特開2002-102191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、前記心拍数、呼吸数又は体動のモニタ方法を、女性の月経周期を初めとする、人の生体リズムの判定に採用できないかどうか検討したところ、心拍数が基礎体温と同じような月変化の傾向を示すことを見いだした。
したがって、心拍数を毎日測定し続けることによって、月経周期などの生体リズムを簡単に判定できるようになると期待できる。
【0007】
本発明は、被験者の生体リズムが簡単に判定でき、しかも長期間の測定に適した生体リズム判定方法及び測定装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、月経周期が簡単に判定でき、しかも長期間の測定に適した月経周期判定方法及び測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の生体リズム判定方法は、被験者の睡眠中の心拍数を測定し、複数日にわたる心拍数のデータを収集し、前記収集された心拍数のデータに基づいて被験者の生体リズムを判定する方法である。
この方法によれば、睡眠中に被験者の心拍数を測定するだけで、女性の生体リズムを判定することができる。睡眠中に測定できるので、被験者が特別に意識しなくても、測定を行うことができ、長期間にわたって測定を続けることが容易にできる。
【0009】
また、本発明の月経周期判定方法は、被験者の睡眠中の心拍数を測定し、複数日にわたる心拍数のデータを収集し、前記収集された心拍数のデータに基づいて被験者の月経周期を判定する方法である。
この方法によれば、睡眠中に被験者の心拍数を測定するだけで、女性の月経周期を判定することができる。睡眠中に測定できるので、被験者が特別に意識しなくても、測定を行うことができ、長期間にわたって測定を続けることが容易にできる。
【0010】
前記心拍数のデータには、睡眠中に収集された心拍数の睡眠時間にわたる平均値(「日平均値」という)を用いることができる。このような平均化されたデータを用いることにより、生体リズムや月経周期を判定する精度を高めることができる。ただし、飲酒など、心拍に影響を与えるようなことをした日のデータは、除外することが望ましい。
前記心拍数のデータを収集する場合、被験者に一定以上の体動があった時間を除外することが望ましい。睡眠中は、寝返りなどで体を動かす時間があるので、その寝返りの間の心拍数のデータを使うと、正確な日平均値が得られないおそれがあるからである。
【0011】
前記月経周期は、前記心拍数が、前回の月経終了後徐々に高くなり、月経が始まる数日前に低下することに基づいて判定することができる。これは、心拍数が基礎体温と同じような月変化の傾向を示すことに基づくものである。 心拍数の日平均値が低下したら、その数日後に、月経が始まると予測することができる。
また、月経周期の中で、心拍数は前回の月経終了後、徐々に高くなるという性質を利用すれば、前記心拍数の日平均値を、前々回の月経日から前回の月経日までに収集された心拍数の統計処理値と比較することにより、排卵日及び/又は月経開始日を判定することができる。
【0012】
特に、心拍数の日平均値が、前々回の月経日から前回の月経日までの前記心拍数の月平均値を、2日以上連続して上回った場合のその初日を排卵日とすれば、排卵日を正確に判定することができる。
また、前記心拍数の日平均値が、前々回の月経日から前回の月経日までの前記心拍数の月平均値を下回った場合、その数日後に月経開始があると予測することができる。
【0013】
本発明の生体リズム測定装置は、液体を封入した可撓性容器と、前記可撓性容器を設置した板と、前記板を枕に配置し、被験者の頭を枕に載せた状態で、当該容器内の液体の圧力変化を測定する圧力測定手段と、前記圧力測定手段による測定結果に基づいて、被験者の睡眠中の心拍数のデータを算出し、複数日にわたる心拍数のデータの収集し、前記収集された心拍数のデータに基づいて被験者の生体リズムを判定する判定手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
この生体リズム測定装置によれば、脳内に送られる血液の量が心拍のために変化するために、頭部の重量が微妙に変化し、それにより可撓性容器の圧力に変化が現れる。この可撓性容器を枕の下に配置することにより、頭部の重量変化や動きを検出することができるので、被験者に違和感や拘束感を与えることがなく、被験者が寝ている間に、心拍数の測定ができる。被験者は寝ているだけでよく、手間をかけさせないので、長期間にわたって測定を続けることが容易にできる。
【0015】
本発明の月経周期測定装置は、液体を封入した可撓性容器と、前記可撓性容器を設置した板と、前記板を枕に配置し、被験者の頭を枕に載せた状態で、当該容器内の液体の圧力変化を測定する圧力測定手段と、前記圧力測定手段による測定結果に基づいて、被験者の睡眠中の心拍数のデータを算出し、複数日にわたる心拍数のデータを収集し、前記収集された心拍数のデータに基づいて被験者の月経周期を判定する月経周期判定手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
この月経周期測定装置も、前記生体リズム測定装置と同様、被験者が寝ている間に心拍数の測定ができ、被験者に違和感や拘束感を与えることがないので、長期間にわたって習慣的に測定を続けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
<測定装置>
図1(a)は、本発明の月経周期測定装置を実施するための心拍数を計測するシステムを示す平面図、図1(b)は側断面図である。この測定システムは、圧力を感知する部材として、水が封入されたチューブ1,2を、2枚の板3a,3bの間に設置している。板3bは透明なものとして描いている。2枚の板3a,3bどうしは、テープ(図示せず)で固定している。
【0018】
チューブ1,2は、合成樹脂製のシートを材料として使用し、このシートを、シーラーによって熱融着し、所定の直径と長さをもつチューブ1,2に加工したものである。なお、チューブ1,2に封入しているのは水であるが、水以外にも、シリコンオイルなどのような液体を封入してもよい。
板3a,3bの厚みは0.5から4mmとする。板3a,3bの材質は、限定されないが、木、又はアクリルなどの合成樹脂があげられる。その硬さは、頭の荷重を与えたときに2枚の板が変形して接触しない硬さであればよい。
【0019】
チューブ1,2の一端に、バルブ8を取り付けている。チューブ1,2の他端には、チューブ1,2内の水の圧力を測定するための圧力センサ4を取り付けている。圧力センサ4は、心拍や呼吸に基づく圧力を測定するものである。
圧力センサ4の構造は限定されないが、例えばチューブ1,2に接続される金属製円筒容器の底面にダイヤフラムを取り付けた構造のものでもよい。このダイヤフラムに、ダイヤフラムの変形を電気信号に変換する歪ゲージを取り付けて、その検知信号を出力するようにする。
【0020】
圧力センサ4の検知信号は、増幅器5に供給され、ここで電圧増幅されるとともに増幅器5内部のハイパスフィルタを通されて、心拍、呼吸又は体動に基づく圧力の変化分のみが取り出される。増幅器5の電圧増幅率は、非常に微小な圧力変化を測定するため、回路に応じて最適な値に設定する。例えば2倍から10倍に設定する。ハイパスフィルタを通す理由は、チューブ1,2に封入された水の静水圧や、頭をチューブ1,2に接触させたときに加わる静水圧を差し引いて、オフセット値である0ボルトを中心として、心拍と呼吸による水圧の変化のみを表示し記録したいためである。ハイパスフィルタの遮断周波数は、例えば0.08Hzに設定する。また、増幅器5においては、高周波のノイズを除くため、信号をローパスフィルタに通す。ローパスフィルタの遮断周波数は、例えば3.34Hzに設定する。
【0021】
図2は、増幅器5の具体的な回路図である。増幅器5の増幅チャンネルは1チャンネルのみ表示しているが、チューブが2本あり圧力センサも2つある場合は、増幅器5も2つの増幅チャンネルを持つ必要がある。
この回路によれば、圧力センサ4の検知信号が、0.08HzのハイパスフィルタHPFと、3.34HzのローパスフィルタLPF通過し、10kΩの抵抗を通して演算増幅器51に印加されている。演算増幅器51の出力は、50kΩの可変抵抗器を通して演算増幅器51の入力側にフィードバックされており、これにより、2倍(3dB)から5倍(10dB)の可変増幅率で検知信号の反転増幅を行うことができる。
【0022】
増幅器5から取り出された検知信号は、A/D変換器6でデジタル信号に変換されて、所定の入出力インターフェイスを通してコンピュータ7に入力される。
なお、前記増幅器5からA/D変換器6を経てコンピュータ7の内部に至るまでの経路に、圧力検知信号を、その中に含まれる心拍数の信号と呼吸数の信号に分離するために、遮断スロープの鋭いフィルタを設けることが望ましい。例えば、心拍数の信号を分離するには、0.8〜5Hzのバンドパスフィルタを通せば心拍数のみによる圧力変化を取り出すことができ、呼吸数の信号を分離するには、0.5Hzのローパスフィルタを通せば呼吸数のみによる圧力変化を取り出すことができる。これらのフィルタは、前記増幅器5からA/D変換器6までのアナログ部分に設置する場合は、ICやトランジスタを用いたフィルタ回路で実現することができ、A/D変換器6からコンピュータ7までのデジタル部分に設置する場合は、ハードウェア又はソフトウェアで構成されるディジタルフィルタで実現することができる。
【0023】
コンピュータ7に入力された圧力検知信号は、計算ソフトを用いて、コンピュータ7付属の表示器の上にグラフ化して表示させる。表示と同時に、あるいは表示なしでプリンタを使って紙のチャートに記録させてもよい。
<判定方法>
板3bの上に枕Pを載せて、前記心拍数を計測するシステムを用いて、女性被験者の睡眠中に心拍数を測定する。
【0024】
睡眠中に寝返りなどをした時間(体動時間という)中のデータは、除去することが望ましい。
前記体動時間を除いた心拍数のデータに基づいて、平均値(「日平均値」という)を算出する。日平均値を算出するにあたって、データの収集時間は、データの信頼性を高めるために、一晩あたり所定時間以上あることが望ましい。所定時間とは、例えば3時間とする。
【0025】
次に、月経開始日から次の月経開始日までにわたって、日平均値を平均して、月平均値を求める。月平均値を求めるに当たっては、所定日数以上の日平均値データに基づいて平均値を求めることが望ましい。所定日数とは、例えば15日とする。また、飲酒などした日は除外することが望ましい。また、日平均値のない日が4日以上連続しないことが望ましい。
【0026】
以上のようにして、心拍数の日平均値、月平均値が求められると、被験者の月経周期や排卵日を予想することができる。
月経日の予測は、心拍数の日平均値が、前回の月経終了後徐々に高くなり、心拍数の日平均値が前々回の月経日から前回の月経日までの前記心拍数の月平均値を下回った場合、その数日後に月経が始まることを予測できる。
【0027】
また、前記心拍数の日平均値を、前々回の月経日から前回の月経日までに収集された心拍数の月平均値と比較することにより、排卵日を判定することができる。具体的には、心拍数の日平均値が先月の月平均値を2日以上連続して上回ると、その初日を排卵日と判定することができる。
以上のようにして、前月の月平均値と、月経開始日から次の月経開始日までにわたる日平均値とに基づいて、月経周期や排卵日を予想することができる。
【実施例】
【0028】
図3は、この心拍数を計測するシステムを用いて心拍数を測定している状態を示す平面図(a)および側面図(b)である。
このシステムは、圧力を感知する部材として、水が封入されたチューブ1を、2枚の板3a,3bの間に設置している。もう1本の頸から遠い方のチューブ14は、スペーサとして使用している。
【0029】
板3a,3bは2mm厚、300×150mmのアクリル板を使用した。
チューブ1は、ナイロン製の厚み0.1mmのシートから作成した。このシートを、シーラーによって熱融着し、直径6.4mm、長さ300mmをもつチューブに加工した。水を4kPaの大気圧との差圧で封入した。水の体積は、9.5cm2であった。
アクリル板3bの上には、短く切断した合成樹脂のパイプを多数封入した枕を載せた。パイプの断面直径は4mm、長さは5mmである。封入量は、850g、枕のサイズは50cm×30cmである。
【0030】
圧力センサ4には、株式会社キーエンス製のセンサヘッドAP−12を使用した。増幅器5の回路構成は、前に図2に示したものと基本的に同じであり、ハイパスフィルタも含まれている。ハイパスフィルタの遮断周波数は0.08Hz、増幅率は3倍に設定した。
なお、前記チューブ1と圧力センサ4のセンサヘッドとの間を、さらに、ナイロン製の内径2.4mm、外径4mm、長さ10cmのカテーテルでつないだ。
【0031】
また、チューブ1内の水の圧力と大気圧との差圧(静止圧)を測定するための差圧計をバルブ8の先に取り付けた。この差圧計としては、長野計器株式会社製のデジタル差圧計GC50を用いて測定した。
増幅器5の出力信号は、株式会社キーエンス製のデータ収集システムNR−2000によって収集し、ここでA/D変換をした。サンプリング周波数は、100Hzとした。変換後のデータは、パーソナルコンピュータ7に取り込み、サイバネットシステム株式会社が販売しているデータ解析ソフトウェア"MATLAB"を用いて、測定結果をデータ処理し、ディスプレイに表示させた。この処理において、心拍数と呼吸数とを分離するために、データ解析ソフトウェア上で、呼吸数を分離するために遮断周波数0.5Hzのローパスフィルタを設定し、心拍数を分離するために通過帯域幅0.8Hz〜5Hzのバンドパスフィルタを設定した。
【0032】
女性被験者の睡眠中に、コンピュータ7に入力された圧力検知信号を、計算ソフトを用いて、コンピュータ7付属のプリンタを使って紙のチャートに記録させた一例を、図4のグラフに示す。
図4の横軸は、時刻を表す。一目盛りは15秒である。縦軸は、電圧に換算された圧力検知信号を表す。圧力の中心が0、上がプラス、下がマイナスであり、目盛りは相対目盛りである。
【0033】
圧力検知信号には、しきい値Vthを設定している。しきい値Vthを超えると、体動があったとみなす。しきい値Vthの具体的数値は、実際の体動を観察して経験的に設定するとよい。図4では、時刻約183秒から約203秒までと、217秒以後に、体動が観測されている。
図4のグラフから、体動がないときの圧力検知信号は、周期的に変化していることがわかる。この周期(秒)を算出して、60から割り算すれば心拍数(bpm)に換算できる。この心拍数の値を時刻ごとに心拍数データとして蓄積する。ただし、体動のある期間のデータは、心拍数が正確に求められないので使用しない。一晩に3時間以上の心拍数のデータが収集できた場合、心拍数の日平均値を算出する。
【0034】
この被験者の、108日にわたる、心拍数の日平均値のデータを収集した。この結果を、表1から表4に示す。表1から表4において、日は、延べで表示している。心拍数のデータが抜けている日は、旅行・出張で外泊した日などのため測定ができなかった日である。
基礎体温も併せて測定したので、表1から表4に掲載している。
【0035】
また、参考までに荻野式の予想日を併せて掲げている。斜めハッチングを施した日は月経の続いた日、クロスハッチングを施した日は、荻野式排卵予測日を示す。
また、飲酒日と、月経開始日とを、被験者が手で印を付けている。
【0036】
【表1】

【0037】
表1は、1番目の月経月における表である。
月経があったのは27日である。
排卵日については、荻野式では、次の月経日から12日〜16日前、すなわち11日から15日を排卵日として予測している。
基礎体温法で予測した排卵日は、14日である。
【0038】
本発明の心拍数に基づく月経周期判定方法では、先月のデータが収集されていないので、排卵日と月経開始日の判定ができない。もっぱら次の月の判定のため、心拍数の月平均値(58bpm)を算出している。
【0039】
【表2】

【0040】
表2は、次の月経月のデータを示す。27日は、月経があったので、印を入れている。なおこの日は飲酒日であり、飲酒した日の日平均値のデータは高くなるので、月平均値の算出にあたっては除外している。
本発明の心拍数に基づく月経周期判定方法では、心拍数の日平均値が52日目に58bpmを下回った。したがって、次の月経日が数日後に近いことを予測できる。実際に月経があったのは53日である。
【0041】
荻野式で予測した排卵日は、39日から43日である。基礎体温法で予測した排卵日は、39日である。
本発明の月経周期判定方法では、前月の月平均値を2日以上連続して上回った日を排卵日と予測する。先月の月平均値は、58.00bpm(beats per minute)である。表2をみれば、この値を2日以上連続して上回った日は、39日、40日となっている。したがって、39日を排卵日と予測する。
【0042】
本発明の心拍数で予測した排卵日と、基礎体温法で予測した排卵日とは、同じ日になっている。
この月の心拍数の月平均値は、57.72bpmとなった。
【0043】
【表3】

【0044】
表3は、次の月経月におけるデータを示す。53日は、月経があった日である。
本発明の心拍数に基づく月経周期判定方法では、心拍数の日平均値が80日目に57.72bpmを下回った。したがって、次の月経日が数日後に近いことを予測できる。実際に月経があったのは81日である。
荻野式で予測した排卵日は、65日から69日である。基礎体温法で予測した排卵日は、68日である。
【0045】
本発明の心拍数に基づく月経周期判定方法では、先月の月平均値は、57.72bpmであるので、表3をみれば、心拍数がこの値を2日以上連続して上回った日は、65日、66日である。したがって、65日を排卵日と予測する。
この月の心拍数の月平均値は、58.42bpmとなった。
【0046】
【表4】

【0047】
表4は、次の月経月におけるデータを示す。81日は、月経があった日である。
本発明の心拍数に基づく月経周期判定方法では、心拍数の日平均値が107日目に58.42bpmを下回った。したがって、次の月経日が数日後に近いことを予測できる。実際に月経があったのは109日である。
荻野式で予測した排卵日は、93日から97日である。基礎体温法で予測した排卵日は、97日である。
【0048】
本発明の心拍数に基づく月経周期判定方法では、先月の月平均値は、58.42bpmであるので、表4をみれば、心拍数がこの値を2日以上連続して上回った日は、93日、94日となっている。したがって、93日を排卵日と予測する。
<まとめ>
以上の表1〜表4の結果から、本発明の心拍数に基づく月経周期判定方法で、次の月経日を、2〜3日の精度で予測できることがわかった。
【0049】
また、本発明の心拍数に基づく月経周期判定方法で予測した排卵日は、表1〜表4を用いて説明したとおり、荻野式や基礎体温法で予測した排卵日に近いものであった。
図5は、以上に説明した表1から表4の心拍数データをプロットしたグラフである。「×」印は飲酒日、「△」は本発明の心拍数に基づく月経周期判定方法で予測した排卵日を示している。
【0050】
一方、図6は、同じ女性被験者について、同じ期間に測定した基礎体温の変化を表すグラフである。基礎体温から判断した排卵日を「△」でマーク付けしている。
図5と図6とを比べると、心拍数の日平均値と基礎体温に、共通の変化がみられることがわかる。
基礎体温法は、長く知られ、行われている方法であるので、基礎体温法で予測した月経周期は、信頼性はあるとみなしてよい。
【0051】
したがって、本発明の心拍数に基づく月経周期判定方法での予測には、信頼性がおけると考えている。
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前記の実施形態に限定されるものではない。例えば、男性であっても、心拍数との相関関係のある、何らかの周期を持った生体リズムが存在し、女性であっても月経周期以外に心拍数との相関関係のある生体リズムが存在すると考えられる。したがって、本発明を月経周期判定だけでなく、広く一般の生体リズムの判定に用いることができる。また、心拍数の測定は、「液体を可撓性容器に封入し、前記容器を、板に貼り付けて枕の下に設置し、被験者の頭を枕の上に載せて、前記容器に封入された液体の圧力変化を測定する方法」に限られるものではない。心電図などから心拍数を測定する方法を用いても、睡眠中の心拍数の測定ができるので、これらの方法を採用してもよい。その他、本発明の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】心拍数を計測するシステムを示すブロック図(a)及び断面図(b)である。
【図2】増幅器5の具体的な回路図である。
【図3】この測定システムを用いて心拍数を測定する状態を示す平面図(a)及び断面図(b)である。
【図4】被験者の睡眠中の圧力検知信号を記録したグラフである。
【図5】被験者の、心拍数の日平均値のデータを収集し、プロットしたグラフである。
【図6】同じ被験者について、同じ期間に測定した基礎体温の変化を表すグラフである。
【符号の説明】
【0053】
1,2 チューブ
3a,3b 板
4 圧力センサ
5 増幅器
6 A/D変換器
7 コンピュータ
8 バルブ
9 枕
14 チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の睡眠中の心拍数を測定し、
複数日にわたる心拍数のデータを収集し、
前記収集された心拍数のデータに基づいて被験者の生体リズムを判定することを特徴とする生体リズム判定方法。
【請求項2】
前記心拍数のデータは、睡眠中に収集された心拍数の睡眠時間にわたる平均値(「日平均値」という)で構成される請求項1記載の生体リズム判定方法。
【請求項3】
前記心拍数のデータを収集する場合、被験者に一定以上の体動があった時間を除外する請求項1又は請求項2記載の生体リズム判定方法。
【請求項4】
被験者の睡眠中の心拍数を測定し、
複数日にわたる心拍数のデータを収集し、
前記収集された心拍数のデータに基づいて被験者の月経周期を判定することを特徴とする月経周期判定方法。
【請求項5】
前記心拍数のデータは、睡眠中に収集された心拍数の睡眠時間にわたる平均値(「日平均値」という)で構成される請求項4記載の月経周期判定方法。
【請求項6】
前記心拍数のデータを収集する場合、被験者に一定以上の体動があった時間を除外する請求項4又は請求項5記載の月経周期判定方法。
【請求項7】
前記月経周期は、前記心拍数が、前回の月経終了後徐々に高くなり、月経が始まる数日前に低下することに基づいて判定される請求項4から請求項6のいずれかに記載の月経周期判定方法。
【請求項8】
前記心拍数の日平均値を、前々回の月経日から前回の月経日までに収集された心拍数の統計処理値と比較することにより、排卵日及び/又は月経開始日を判定する請求項4から請求項7のいずれかに記載の月経周期判定方法。
【請求項9】
前記心拍数の日平均値が、前々回の月経日から前回の月経日までの前記心拍数の月平均値を、2日以上連続して上回った場合のその初日を排卵日と判定する請求項8記載の月経周期判定方法。
【請求項10】
前記心拍数の日平均値が、前々回の月経日から前回の月経日までの前記心拍数の月平均値を下回った場合、その数日後に月経開始があると予測する請求項8又は請求項9記載の月経周期判定方法。
【請求項11】
液体を封入した可撓性容器と、
前記可撓性容器を設置した板と、
前記板を枕に配置し、被験者の頭を枕に載せた状態で、当該容器内の液体の圧力変化を測定する圧力測定手段と、
前記圧力測定手段による測定結果に基づいて、被験者の睡眠中の心拍数のデータを算出し、複数日にわたる心拍数のデータの収集し、前記収集された心拍数のデータに基づいて被験者の生体リズムを判定する判定手段とを備えることを特徴とする生体リズム測定装置。
【請求項12】
液体を封入した可撓性容器と、
前記可撓性容器を設置した板と、
前記板を枕に配置し、被験者の頭を枕に載せた状態で、当該容器内の液体の圧力変化を測定する圧力測定手段と、
前記圧力測定手段による測定結果に基づいて、被験者の睡眠中の心拍数のデータを算出し、複数日にわたる心拍数のデータの収集し、前記収集された心拍数のデータに基づいて被験者の月経周期を判定する月経周期判定手段とを備えることを特徴とする月経周期測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−94969(P2006−94969A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−282633(P2004−282633)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【出願人】(399006700)
【Fターム(参考)】