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心臓幹細胞
説明

心臓幹細胞

【課題】哺乳動物の損傷を受けたまたは罹病した心臓の機能を高めるための方法の提供。
【解決手段】カーディオスフェア(cardiosphere)から得られた細胞を単層として表面上で培養するプロセスによって得られるヒト心臓幹細胞を用いて、哺乳動物の損傷を受けたまたは罹病した心臓の機能を高める方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、成体幹細胞の領域に関する。特に、それは幹細胞の回収、増幅、および再導入に関する。
【0002】
本出願は、2004年11月8日に出願された米国特許仮出願第60/625,695号の恩典を主張し、その開示は本明細書に明確に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
最近まで、支配的な定説は、心臓が再生能を有しない最終分化臓器であると前提としていた。その見解は、成体の心臓が、心臓前駆細胞としても公知であり、c-Kit、MDRI、またはSca-1のそれらの表面発現によって同定できる(1〜5)、内因性の関係づけられた心臓幹細胞(CSC)の小さい集団を含むことの実証によって、序々に衰えた。CSCは、心臓再生療法を開発するための必然的な細胞供給源である。それらの初期心臓転写因子の発現、および心臓系譜へのエキソビボおよびインビボの分化に関する能力は、その他の細胞供給源と比較して、高度な心臓発生の見通しを与える。CSCは、ヒトの外科試料から選択圧なしに単離し、初代培養で増幅させることができる(6)。
【0004】
培養において心臓の外科生検は「カーディオスフェア(cardiosphere)」と呼ばれる、球状で多細胞集団を生じる(6)。そのようなカーディオスフェアは、興味深いことに、それらにおけるキーとなる心筋構造タンパク質の発現において、心臓と類似し;マウスの心臓の中に注入した場合、ヒト・カーディオスフェアは心筋および脈管構造をインビボで再生した。
【0005】
自家性の、同種異系の、同系の、または異種の移植のための、ヒトCSCの回収および増幅のための簡単で非外科的な方法に対する継続的なニーズが、当技術分野において存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の1つの態様によると、哺乳動物の損傷を受けたまたは罹病した心臓の機能を高めるための方法が提供される。細胞の集団が哺乳動物に投与される。細胞の集団はそれによって哺乳動物における心臓機能を高める。細胞の集団は、カーディオスフェアから得られた細胞を単層として表面上で培養するプロセスによって得られる。
【0007】
本発明のもう1つの態様は、哺乳動物の損傷を受けたまたは罹病した心臓の機能を高めるための方法を提供する。インビトロで増幅させた細胞の集団が、哺乳動物に投与される。細胞は懸濁培養においてカーディオスフェアを形成する能力を有する。しかしながら細胞は投与される際にカーディオスフェアの形状にはない。
【0008】
本発明のさらにもう1つの態様は、損傷を受けたまたは罹病した心臓を持っている哺乳動物を治療する方法を提供する。心臓組織は、哺乳動物の損傷を受けたもしくは罹病した心臓から、またはドナーの健康な心臓から、経皮的心内膜心筋生検によって得られる。心臓組織を処理して、心臓幹細胞の集団を取得し、増幅させる。心臓幹細胞および/またはそれらの子孫は、哺乳動物の損傷を受けたまたは罹病した心臓の中に導入される。
【0009】
本発明のもう1つの態様によると、心臓生検検体を処理する方法が提供される。心臓生検検体は、プロテアーゼ存在下でインキュベートされる。プロテアーゼ・インキュベーションによって生検検体から遊離させた細胞が採取される。採取した細胞は、単層として表面上で培養し、細胞の数を増幅させる。
【0010】
本発明のもう1つの局面は、損傷を受けたまたは罹病した臓器を持っている哺乳動物を治療する方法である。組織は、哺乳動物の損傷を受けたもしくは罹病した臓器から、またはドナーの健康な臓器から、経皮的生検によって得る。組織を処理して、幹細胞の集団を取得し、増幅させる。幹細胞および/またはそれらの子孫は、哺乳動物の損傷を受けたまたは罹病した臓器の中に導入される。
【0011】
本発明のさらなる局面は、心臓幹細胞の集団を増幅するための方法である。1つまたは複数のカーディオスフェアは、個々の細胞または細胞のより小さい凝集体に脱凝集される。個々の細胞または細胞のより小さい凝集体は、単層として表面上で培養される。
【0012】
本発明は、単層におけるインビトロで増幅させた細胞の集団をもまた提供する。細胞は、懸濁培養においてカーディオスフェアを形成する能力を有する。しかしながら細胞はカーディオスフェアの形状にはない。
【0013】
本発明のなおもう1つの局面は、単層として表面上で細胞を培養するプロセスによって作られる細胞の集団である。細胞は脱凝集されたカーディオスフェアから得られる。
【0014】
本発明のさらなる副産物は、腎生検検体を処理する方法である。腎生検検体は、プロテアーゼの存在下で培養される。プロテアーゼ・インキュベーションによって生検検体から遊離させた細胞が採取される。採取した細胞は、単層として表面上で培養し、細胞の数を増幅させる。
【0015】
明細書を読むと当業者に明白になる、これらおよびその他の態様は、罹病したおよび損傷を受けた臓器の療法のための方法および集団を当技術分野に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】カーディオスフェアの増殖およびカーディオスフェア由来細胞(CDC)の増幅のための検体処理。図1の概略図は、検体処理に含まれる段階を図示している。図1B)1日目におけるヒト心内膜心筋生検片。図1C)平板培養後3日のヒト外植片。図1D)間質様で明位相差像の細胞が示されている、平板培養後13日におけるヒト外植片の縁。図1E)カーディオスフェア形成細胞を用いて行った亜集団選択の結果。c-Kit+細胞はCD105の90.0±4.7%+、c-Kit-細胞はCD105+の94.0±0.8%がであった(n=3)。図1F)カーディオスフェア形成細胞の採取後12日目、25日目におけるヒト・カーディオスフェア。図1G)増幅のためにフィブロネクチン上に蒔かれている、2回継代中のヒトCDC。図1H)非移植患者からの11検体についての累積的増殖が4ヶ月の経過に渡り図示されている。図1I)移植患者からの59検体についての増殖が示されている。0日目は検体が採取された日に相当し、その日における細胞数は、検体からカーディオスフェア形成細胞がまだ何も回収されていないため、ログ・スケール上で1とプロットされている。
【図2】カーディオスフェアおよびCDC表現型。図2A)c-Kitをその中心全域に渡って、CD105をその周辺上に発現している、カーディオスフェア。図2B)心臓のMHCおよびTnIを主としてその周辺上に発現している、カーディオスフェア。図2C)1つの代表的な検体について示された、2回継代目のCDCにおけるc-KitおよびCD105の発現レベル(n=3およびn=2)。
【図3】生着および再生。図3Aおよび3B)ヘマトキシリン・エオシンおよびβガラクトシダーゼに対して二重染色した心臓切片において注入後20日にCDC(図3A)または線維芽細胞(図3B)の生着が図示されている。CDCの浸潤が明確なバンドとして見られる一方、いくつかの切片において2〜3の線維芽細胞のまれな群を認めることができる。図3Cおよび3D)心筋再生を計算するために用いたマッソン・トリクローム染色が、代表的なCDC注入マウス(図3C)および線維芽細胞注入マウス(図3D)について示されている。図3E)CDC(n=8)、PBS(n=4)、および線維芽細胞(n=4)を注入した群において、梗塞領域中に見出された生存能力のある心筋の百分率が示されている。* p<0.01。
【図4】機能の向上。図4Aおよび4B)CDCを注入したマウスにおいて20日後に行った心エコー図からの長軸像。図4Aは、拡張末期を示す。図4Bは、収縮末期を示す。左心室領域の周りを辿る黄色い線は、LVEFおよびLVFAの計算のために使用されている。図4Cおよび図4D)線維芽細胞を注入したマウスにおける比較像。図4E)20日後の3つの実験群についての左心室駆出率(CDC n=8、PBS n=7、線維芽細胞 n=4;* p<0.01)。LVFA=100×(左心室容量拡張期−左心室容量収縮期)/左心室容量拡張期、この場合において、左心室容量は、扁長楕円体であると仮定して、長軸像から計算される。図4F)20日後の3つの実験群についての左心室の分画領域百分率。* p<0.01。LVFA=100×(左心室領域拡張期−左心室領域収縮期)/左心室領域拡張期
【図5】再生の定量化。図5A)マッソン・トリクローム染色が、代表的なCDC注入マウスについて示されている。全梗塞帯域は、図5Bおよび5Cにおいて、黄色い線で輪郭が描かれている。図5B)線維形成の領域が画像処理を経て赤色で示されている。図5C)生存能力のある心筋の領域が画像処理を経て赤色で示されている。動物ごとに6つの切片が分析され、平均がとられている。
【図6】生着の時間経過。図6A)ヘマトキシリン・エオシン染色切片において、注入した細胞のボーラスが0日目に示されている。図6B)CDCの生着が注入後8日に図示されている。図6Cおよび6D)注入後20日のCDCの生着。図6Eおよび6F)lac-Z陽性CDCおよび生存能力のある心筋の共局在性を明示している、図6Cおよび6Dの対応するより高倍率の像。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明者らは、少量の初期試料だけが必要とされるような、臓器由来の常在性幹細胞の集団を増幅するための方法を開発した。そのような少量の初期試料は、単純な経皮的侵入によって、比較的非侵襲性に得ることができる。そのような手順は非常に単純なので、それらを、大手術または全身麻酔なしに、外来患者を基礎として行うことができる。
【0018】
常在性幹細胞は、特定の臓器において見出されるものである。本出願人はいかなる特定の説によっても制約されることを望まないが、特定の臓器において見出される幹細胞は多能性ではなく、むしろ分化の特定の分枝にかかわっていると考えられている。従って心臓においては心臓幹細胞が見出されることが期待され、腎臓においては腎幹細胞が見出されることが期待される。それにもかかわらず、本発明によって増幅され単離された幹細胞のうちいくつかは、それらがそこから得られた臓器以外の臓器の細胞に発達することが考えられる。
【0019】
カーディオスフェアは自己会合性の細胞の凝集体であり、心筋細胞の一定の性質を表すことが示されている。従ってカーディオスフェアは、インビトロで「拍動する」ことが示されている。それらは興奮性であり、同調して収縮する。カーディオスフェアを形成する細胞は心臓生検から得られている。カーディオスフェアは、限定されるわけではないが研和、攪拌、振盪、混成を含む、細胞の凝集塊または凝集体を分離するための当技術分野において公知の標準的手段を用いて、脱凝集することができる。好ましくはカーディオスフェアは単一細胞まで脱凝集されるが、少なくともそれらは細胞のより小さい凝集体にまで脱凝集される。脱凝集の後、細胞は、培養ディッシュ、容器の壁または底部、マイクロタイターディッシュ、ビーズ、フラスコ、ローラーボトルなどの、固体表面上で増殖させることができる。表面は、例えば、ガラスまたはプラスチックであり得る。細胞は固体表面の材料に付着させることができるか、あるいは固体表面は付着を促進する物質でコーティングすることができる。そのような物質は当技術分野において周知であり、フィブロネクチン、ハイドロゲル、ポリマー、ラミニン、血清、コラーゲン、ゼラチン、およびポリ-L-リジンを含むが、それに限定されるわけではない。表面上での増殖は、好ましくは単層増殖である。
【0020】
脱凝集させた細胞の増殖の後、それらは、それを必要としている哺乳動物に直接投与することができ、またはそれらはカーディオスフェアの形成に有利な条件下で増殖させることができる。表面増殖と懸濁増殖(カーディオスフェア)との間の繰り返しサイクルは、望ましい細胞の迅速で指数関数的な増幅につながる。カーディオスフェア期を除外し、表面上で増殖させた細胞を各々の継代においてカーディオスフェアを形成させずに繰り返し増幅させることもできる。
【0021】
本発明の細胞培養は、細胞表面上であろうとカーディオスフェアの状態であろうと、外因性の成長因子の非存在下で行うことができる。ウシ胎児血清を用いることができる一方で、その他の因子が消費できることが分かっている。例えば本発明の細胞は、添加されるEGF、bFGF、カーディオトロフィン-1、およびトロンビンの非存在下で、簡単に培養される。
【0022】
細胞のドナーおよびレシピエントであり得る哺乳動物は、限定されない。ヒトは両細胞を提供しレシピエントになることができるが、しばしばその他の哺乳動物も有用である。例えば、ブタ細胞はヒトに移植することができる。そのような異種間の移植は異種移植として公知である。移植は、全て単一種の範囲内である、同種間、同系、または自家性であることもできる。本発明における使用のために適した哺乳動物には、ヒトのみならず、イヌ、ネコ、ウサギなどのペット;ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの畜産物も含まれる。
【0023】
哺乳動物への細胞の投与は、当技術分野において公知の任意の手段によることができる。心臓の細胞は、心臓に全身性にまたは局所性に送達することができる。細胞は概してカーディオスフェアの形状にはない。概してそれらは、適当な条件下においてではあるが、カーディオスフェアを形成する能力を有する。局所性投与はカテーテルによるか、または手術時であり得る。全身性投与は、静脈内もしくは動脈内注射、潅流、または点滴であり得る。本発明の細胞の集団を全身性投与する場合、それらは然るべき臓器、例えばその細胞が常在性の心臓の幹細胞に由来する場合は心臓、に遊走する。哺乳動物への細胞の投与に際して観察される有益な効果は、細胞それ自体に原因するか、または細胞が発現する産物に原因する可能性がある。例えば、細胞の生着が、好ましい結果を生むことがありうる。サイトカインもしくはケモカインまたはその他の拡散性因子は、常在性細胞を刺激して、増殖させ、再生させ、またはより良く機能させることもありうる。
【0024】
心臓幹細胞の効果的な用量は、概して1×106と100×106との間であり、好ましくは10×106と50×106との間であると考えられる。心臓の損傷を受けた部位のサイズに応じて、多かれ少なかれ細胞を用いることができる。損傷のより大きい部位は、より大きい用量の細胞を必要とする可能性があり、小さい部位の損傷はより小さい用量の細胞を必要とする可能性がある。レシピエントの体重に基づいて、効果的な用量は、体重1kgにつき細胞1個と10×106個との間であり、好ましくは体重1kgにつき細胞1×106個と5×106個との間であることができる。患者の年齢、全般的な条件、および免疫学的体質が、投与される用量を決定する際の要因として用いられる可能性がある。
【0025】
本発明によって治療できる疾患には、急性および慢性心疾患が含まれる。例えば、心臓は虚血性事故にあった場合があるか、または慢性虚血もしくはうっ血性心疾患の対照となる場合がある。患者は心臓移植の候補者または心臓移植のレシピエントである場合がある。加えて、外科手術の間に誘発された損傷またはその他の突発損傷などの外傷によって損傷を受けた心臓は、本発明による細胞で治療され得る。
【0026】
達成される細胞集団の優れた増幅のため、初期細胞試料は多量である必要がない。従って、外科手術の間に得られる通常の生検試料で始めるよりもむしろより少ない試料を用いることができ、それによって侵襲性の外科手術に対する必要性が除外される。そのような試料は、経皮的生検鉗子を用いて得ることができる。生検鉗子は、心臓、腎臓、肝臓、脾臓、および膵臓を含む、任意の臓器供給源から組織試料にアクセスするために使用することができる。生検鉗子を用いてアクセスできる、心臓内部の特に適した位置には、分界稜、右心室心内膜、中隔または心室壁、および心耳が含まれる。これらの位置は、潤沢な幹細胞または前駆細胞を提供することが見出されている。そのような位置にアクセスすることは、診断目的で右心室心内膜にアクセスするために使用される標準的な生検鉗子よりもっと柔軟な生検鉗子の使用によって円滑になる。好ましくは生検鉗子は外部コントローラによってもまた操縦可能である。
【0027】
少ない生検試料を初期材料として使用する能力をもたらした強化の1つは、これまで無視されたりまたは捨てられたりしてきた細胞集団の採取である。この細胞集団は生検試料をプロテアーゼで処理し、生検試料から遊離した細胞を回収または採取することによって形成される。これらの遊離した細胞の使用は、細胞集団の増幅の速度を向上させる。使用できるプロテアーゼの例には、コラゲナーゼ、マトリクスメタロプロテアーゼ、トリプシン、およびキモトリプシンが含まれる。本手法は、そこから常在性幹細胞が望まれる任意の臓器、例えば心臓、腎臓、肺、脾臓、膵臓、および肝臓を含む、に適用することができる。
【0028】
本発明によって採取され、増幅され、および/または投与された細胞集団は、遺伝子改変されることができる。それらは、例えばタンパク質のコード配列でトランスフェクションすることができる。タンパク質は、心臓などの罹病した臓器にとって有益であり得る。使用できるコード配列の例には、akt、コネキシン43、その他のコネキシン、HIF1α、VEGF、FGF、PDGF、IGF、SCF、ミオカルディン、カルディオトロピン、L型カルシウムチャネルαサブユニット、L型カルシウムチャネルβサブユニット、およびNkx2.5が含まれるが、それに限定されるわけではない。細胞は、細胞が哺乳動物に投与される前に、簡便に遺伝子改変されることができる。既知タンパク質を発現するように細胞を遺伝子改変するための手法は、当技術分野において周知である。
【0029】
カーディオスフェア由来細胞(CDC)は、生検検体から容易に回収され、簡単に増幅された、かつ本発明者らはそれらが急性心筋梗塞モデルにおいて心筋を再生し、機能を向上することを示した。驚くべきことに、70名のうち69名の患者が、本発明者らの方法によって細胞を生じる検体を有しており、自家細胞性の心筋形成術の目標を達成可能なものとした。早期の臨床研究は、必然的に、完全な遺伝学的一致であり従って同種異系細胞よりもより少ない安全上の注意を与える、自家細胞に焦点を合わせた。自家細胞の使用に伴う実際的な限界は、組織回収から細胞移植までの遅延に起因する。遅延を避けるために、明確な免疫学的特徴を持っている患者から心臓幹細胞(CSC)の細胞バンクを作製することができる。これらは、同種異系移植における使用のための、ドナー細胞およびレシピエントの免疫学的抗原の適合を可能にするであろう。適合のための抗原は、移植の当技術分野において公知である。
【0030】
急性心筋梗塞に続く2週間以内に骨髄由来幹細胞が患者に注入されるこれまでの臨床研究は、5〜80×106細胞の冠内点滴によってLVEFの著しい向上をもたしており(15〜17)、本発明者らに、数百万個のCDCが効果的な治療用量を構成する可能性があると仮定させた。単一の生検鉗子検体から、ほんの2継代の後に数百万のCDCを導き出すことができ;生検が特に治療目的のために行われる場合、出発物質の量を10倍またはそれより多くに容易に拡大し、全体の細胞収率をさらに向上できる可能性がある。慢性心不全を持っている患者もまたCDC療法の良い候補である。
【0031】
増幅のための継代数を最小限にすることは、間葉系幹細胞において>6継代以降だけではあるが観察されている問題である(18)CDCの癌性変換のリスクを最小限にする。もう1つの細胞移植の目だったリスクは、催不整脈性になる可能性がある(19〜21)。不整脈は、心臓幹細胞については記録されていない。
【0032】
本発明者らは、ヒト生検に由来するCDCを抗原選択なしに使用した。本発明者らは、初期心臓検体からそぎ落とした全ての細胞をわざと含めたが、それらは続いてカーディオスフェアの形成に寄与した。従って、本発明者らの細胞は、1つまたはもう1つの推定上の幹細胞マーカーに関する抗原パニングによって単離された心筋「幹細胞」(2、3)とは基本的に異なる。それにもかかわらず、CDCは、幹細胞マーカーを提示する相当の大きさの細胞の集団を含み、観察されるインビボの再生能はCDCが多数の常在性幹細胞を含むという考えをさらに支持する。本発明者らは、CDCのサブトラクションが有益な効果を生むのに十分かどうかをまだ知らない。実際、亜分画はおそらく移植を遅らし、人工的な選択の段階を導入することによる調節上の心配を引き起こす可能性が高いため、本発明者らは亜分画を避けてきた。
【0033】
成体ヒト心臓幹細胞は、増殖および心筋再生によって心肥大の状態に(4)、ならびに、障害境界帯域への動員およびそれに続く再生によって急性虚血に、限られた程度まで反応することが示されているが、慢性虚血性の設定においてしばしば最終的にアポトーシスのため死ぬ(5)。動物モデルを用いて、CSCのインビボの生存、動員、増殖およびそれに続く分化を高める手段を特定するための著しい進展が目下なされている(22、23)。本発明者らの、常在性幹細胞のエキソビボの増幅に関する、それに続く自家移植のための方法は、それらの細胞集団に、心筋再生を媒介するための常在性のおよび増幅される、組み合わせた能力をかなりの程度において与えることができる。そうである場合、心臓幹細胞療法は、多分、心機能不全障害の治療に向けた本発明者らの基本的なアプローチを変化させるであろう。
【0034】
上記開示は本発明を一般的に記載している。本明細書に開示されている全ての参照は、参照として明確に組み入れられる。より完全な理解は、説明だけの目的で本明細書に提供されており本発明の範囲を限定することを意図するものではない以下の具体的な例を参照することによって、得ることができる。
【実施例】
【0035】
実施例1
材料と方法:
検体処理およびカーディオスフェアの増殖
機関のガイドラインに従い、ならびに患者の同意を持って、臨床的に指示された経皮的心内膜心筋生検を受け、かつ変更を伴う記載されているように(6)処置されたヒト生検検体を患者から得た。検体は、生検鉗子の「ひとかじり(bite)」の全体または一部から成り、高カリウム心停止液中に氷上で保管し、かつ2時間以内に処理した(図1A、段階1)。試料を断片に切り分け、そこから全結合組織を取り除いた。断片は次に洗浄し、酵素により部分消化し、かつ単一細胞は廃棄した。残りの組織片は「外植片」としてファイブロネクチンでコーティングしたディッシュ上で培養した(図1A、段階2)。数日後、間質様細胞の層が粘着外植片から現れてきて、その上には小さく、丸く、明位相差像の細胞が遊走していた。ひとたびコンフルエントになったら、外植片を取り囲んでいる緩く粘着した細胞は、穏やかな酵素消化によって回収した(図1A、段階3)。これらの細胞は、カーディオスフェアの最適な増殖のために設計した培地中で、ポリ-D-リジンでコーティングしたディッシュ上に、2〜3×104細胞/mlで播種した(図1A、段階4)。剥離したカーディオスフェアは、次にファイブロネクチンでコーティングしたフラスコ上に蒔き、粘着単層として増幅させたが(図1A、段階5)、それは引き続きトリプシン処理によって継代することができた。単一細胞は、各々の検体につき、カーディオスフェア形成細胞として、ならびにCDC継代の間に細胞増殖を追跡するために、血球計算板を用いて位相差顕微鏡下でカウントした。カーディオスフェア形成細胞の単離は、同じ検体からさらに3回まで繰り返した。
【0036】
亜集団の選択およびフローサイトメトリー解析:
カーディオスフェアを形成する細胞の抗原特性を特徴づけるため、最初の回収(図1A、3)の間に得た細胞を、APCを結合したc-Kitに対するモノクローナル抗体を用いた磁化活性化細胞分別法(magnetic-activated cell separation)によって亜選択し、引き続きマイクロビーズを結合した抗APCで標識し、引き続きオクトマックスを用いて分離した。CD105+集団は、次にマイクロビーズに直接結合した二次抗体を用いて亜選択した。
【0037】
CDCは、粘着単層として2回継代し、次いでフローサイトメトリー実験のために用いた。c-Kit-APC、CDl05-PE、および同様に結合したアイソタイプの一致した対照モノクローナル抗体を利用した。ゲートは、7-AAD蛍光および前方散乱によって確立した。データは、ファックスキャリバー・サイトフルオロメーターを用いて、CellQuestソフトウエアで採取した。
【0038】
アデノウイルス作製および細胞形質導入:
大腸菌(E.coli) βガラクトシダーゼ(lacZ)遺伝子は、アデノウイルスのシャトルベクターpAd-Loxにクローニングして、記載されているような(9)Cre-4 293 HEK細胞におけるCre-Lox 組換えによって、pAd-Lox-LacZを生成した。CDCは、粘着単層として2回継代し、ウイルスによって形質導入をした。MOI 20、12時間で90%の形質導入効率が達成された。
【0039】
心筋梗塞および細胞注入:
アデノウイルスで形質導入したCDCは、10〜16週齢の成体オスSCIDベージュマウスに注入した。心筋梗塞(MI)は、記載されているように(10)、左冠動脈前下行枝中央の結紮によって作製し、細胞または媒体は、梗塞周囲の2つの部位に直接観察下で注入した。CDC(105個)は、10μlのPBS(各々の部位に5μl)の用量において、105個の初代ヒト皮膚線維芽細胞線維芽細胞または10μlのPBSを対照として用いて、注入した。全てのマウスは外科手術に先立ち(ベースライン)、および外科手術後20日に再び、心エコー検査を受けた。駆出率(EF)は、V1.3.8ソフトウェアを用いて梗塞性領域を通して撮った2D長軸像から計算した。マウスは次に0日、8日、または20日で安楽死させ、摘出した心臓は組織学用に調製した。
【0040】
免疫染色、免疫組織化学、および顕微鏡検査:
カーディオスフェアは、それらがサイズにおいて100〜1000細胞に達した場合に、免疫染色のために採取した。c-Kit、CD105、心筋ミオシン重鎖(cMHC)および心筋トロポニンI(cTnI)に対する一次抗体を、免疫染色のために用いた。Alexa蛍光色素と結合した二次抗体を利用した。免疫染色は、これまでに記載されているように(6)行った。共焦点蛍光画像処理は、クリプトン/アルゴン・レーザーを装備しているエクリプスTE2000-Uで、UltraVIEWソフトウェアを用いて行った。
【0041】
マウス心臓を摘出し、OCTコンパウンド中に包埋し、凍結し、かつ5μm薄片の切片にした。組織切片はヘマトキシリン・エオシンおよびbガラクトシダーゼ試薬またはマッソン・トリクロームで染色した(11)。梗塞帯域内の組織生存能は、マッソン・トリクローム染色切片から、梗塞境界を手作業で追跡することによって計算し(12、13)、次に、図S1に示されているように、ImageJソフトウェアを使用して全体の梗塞領域の中で生存能力のある心筋の百分率を計算した。
【0042】
統計:
全ての結果は、平均値±SEMで与えられる。任意の2つの群間の差異の有意性は、スチューデントt検定によって求めた。複数の群は、GB-Statソフトウェアを用い一元配置の分散分析を用いて比較し、群対は、有意なF値が得られた場合、ボンフェローニ・ダン法によって比較した。p<0.05である値を有意とみなした。
【0043】
高い細胞収率と独立して関係するパラメータを特定するために、一般化推定方程式(GEE)アプローチを使用した(14)。複数の検体を供与した患者からのデータは、反復測定として処理した。一変量モデルにおいて有意(p≦0.1)であったそれらのパラメータは、最後の多変量モデルに含めた。解析はSASソフトウェアの使用によって行った。p<0.05である最後の値を有意とみなした。報告されている全てのp値は両側である。
【0044】
(表1)製品および製造メーカー


【0045】
実施例2
検体処理およびカーディオスフェア形成亜集団:
図1Bは、外植片が得られた日、ならびに3日目(図1C)および最初の回収の直前である13日目(図1D)における、微塵切りおよび部分酵素消化の後の典型的な外植片を示す。カーディオスフェア形成細胞の回収(図1A、段階3)は、最初は検体を得て8日またはそれより多くの日数後に、それ以降は4〜12日間隔で行った。パネルEは、3つの異なる患者検体から回収した細胞を用いて行った、亜集団選択実験の結果を要約する。カーディオスフェアを生成する細胞の大多数はCD105+であり、それはc-Kit+でありおよびc-Kit-である。典型的なカーディオスフェアは、図1Fに、回収後12日が示されている。浮遊カーディオスフェアは、段階3の後4〜28日に増幅のために蒔き(図1A、段階5)、それ以降2〜7日間隔で継代した。図1Gは、2継代目の増幅の間における、ファイブロネクチン上に蒔いたCDCを示し、それらの細胞はその際注入のために回収された。
【0046】
実施例3
患者検体およびカーディオスフェアの増殖:
解析のために、83個の患者検体(21.0±1.9 mg)を得た。検体のうち72個は、心臓移植を受けた患者から、11個は移植を待っている患者から得られた。9人の移植患者は、複数の検体を供与した。83個の検体のうち78個が処理を受け、1度も回収されなかったそれらの検体のうちの4個は反復した患者からのものであり、70人の患者のうち69人からの増殖データを得た。各々の検体についての累積的増殖曲線が、図1、パネルHおよびIに図示されている。移植を待っている患者からの増殖曲線(図1H)は、移植された患者からのそれら(図1I)と同様であり、検体間での増殖潜在性が広範囲なことを示す。患者のパラメータは、非移植および移植群について、表2に要約されている。表に載っている全ての患者のパラメータを含んだGEE解析によって、非移植群の中では、高い細胞収率を独立して予測するものがないことが明らかになった。移植群の中では、より高いEFを持っている患者からの検体がより多くの細胞を生じる傾向があったが、その効果は弱かった(R2=??、最終推定値=0.04、p<0.05)。
【0047】
(表2)患者集団の要約

【0048】
実施例4
カーディオスフェアおよびカーディオスフェアに由来する細胞の表現型:
CDCを使用することについての理論的根拠は、カーディオスフェアおよびそれらの細胞子孫の独特な生物学に存する。自己構築するカーディオスフェアは、幹細胞抗原(例えば、c-KitおよびCD105、図3A)の発現に好都合なニッチ環境を作製し、しばしば成熟した心臓に特異的な抗原(cMHCおよびcTnI、図3B)によって特色づけられる表面表現型を、内部の「幹細胞であること(stemness)」の保持とともに、明白に示す。実際のところ、c-KitおよびCD105は、試験をした全てのカーディオスフェア(10人の患者の各々から10個またはそれより多く)において存在し、c-Kitは中心に局在化するかまたはスフェア全体に発現しており、CD105は概して周辺に局在化するかまたは全体に発現していた。2回継代後のCDCは、高いレベルのc-KitおよびCD105の抗原の発現を保持している(図3C、それぞれ3人および2人の異なる患者からのCDCの発現プロファイルの代表)。
【0049】
実施例5
カーディオスフェアに由来する細胞の生着、再生、および機能的向上:
4人の異なる患者からのCDCをインビボ実験のために利用した。生着および細胞の遊走を評価するため、マウスにLac-Zを発現するCDCを注入し、3つの時点(注入後0日、8日、20日)のそれぞれにおいて屠殺した。0日目において、CDCは境界帯域中の注入部位に位置していたが、8日目および20日目において、注入した細胞は主として心筋梗塞領域中に分布し、βガラクトシダーゼ陽性組織の島または連続的なバンドを形成していた(図5)。
【0050】
8匹のマウスに、CDCを注入し、20日間追跡し;11匹のマウスは対照としての機能を果たした(4匹が線維芽細胞線維芽細胞、7匹がPBS)。図4Aは、インビボにおける20日後の注入したヒト細胞の分布を示す、典型的なβガラクトシダーゼ染色パターンを示す。線維芽細胞線維芽細胞を注入したマウス(図4B)またはPBSを注入したマウスにおいてははっきりわからない、梗塞帯域に浸潤している青い細胞のバンドに注目のこと。マッソン・トリクローム染色した切片は、補遺で説明されているように、再生を定量化するために用いた(図4、CおよびD)。パネルCは、CDCを注入した心臓からのものだが、青い梗塞帯域中に多数のはっきりした赤い部位を示し;線維芽細胞線維芽細胞を注入した心臓においては、より少数のそのような部位が明らかである(図4D)。CDCを注入したマウスは、線維芽細胞線維芽細胞を注入したマウス(17.7±1.8%、p<0.01)またはPBSを注入したマウス(13.7±0.7%、p<0.01)、と比較して、より高い割合の生存能力のあるフクシン陽性組織を心筋梗塞帯域中に有していた(24.9±1.1%)が、総合的な全梗塞領域は2つの対照群におけるそれと同様であった(60.6±6.4 CDC、76.9±7.0 線維芽細胞線維芽細胞、75.7±2.7 PBS、単位は104ピクセル;p=NS)。CDC群と対照群の各々との間の、心筋梗塞帯域中における生存能力のある心筋の百分率における差異は、7.2%および11.2%であり、CDCに帰因し得る心筋再生の程度を表す。
【0051】
心エコー図は、20日に全ての群について行った。図5は、拡張末期および収縮末期における、CDCおよび線維芽細胞で処理した群からの例を示す。左心室EFおよび(LVEF、図5E)および左心室分画(fractional)領域(LVFA、図5F)についてのプールしたデータによって、線維芽細胞で処理した群(24.5±1.8%、p<0.01)またはPBSで処理した群(26.4±3.0%、p<0.01)のどちらかと比較して、CDCで処理した群(38.8±1.7%)におけるより高いLVEFが明らかにであるが、2つの対照群は区別できなかった。ベースラインにおいてLVEF間で差異はなかった。
【0052】
実施例6
心臓生検検体からの心臓幹細胞の単離のためのプロセス
多能性幹細胞は、多段階のプロセスを用い(概略図について図1aを参照のこと)、心臓生検検体またはその他の心臓組織から単離されることができる。最初に、心臓組織は経皮的心内膜心筋生検を介して、または心臓の無菌切開を介して得られる。ひとたび得られたら、組織検体は、それらが処理されるまで(12時間後まで)、高カリウム心停止液(5% ブドウ糖、68.6 mmol/L マンニトール、12.5ミリ当量の塩化カリウム、および12.5ミリ当量の炭酸水素ナトリウムを含み、10単位/mLのヘパリンの添加を加える)中に氷上で保管される。処理のために、検体は無菌鉗子および鋏を用いて1〜2mm3の小片に切り分けられ;いかなる全結合組織も除かれる。断片は次にCa++-Mg++フリーのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、典型的には、0.05% トリプシン-EDTAによって室温で5分間、消化される。または、組織片は、37℃で30分間、IV型コラゲナーゼ(1 mg/mL)中で消化されることができる。予備的な実験により、コラゲナーゼを使用すると、外植片組織 mg ごとの細胞収率が大きいことが示されている。
【0053】
ひとたび消化が完了したら、残りの組織片はイスコフ改変ダルベッコ培地中、20% 熱失活ウシ胎児血清、100単位/mL ペニシリンG、100μg/mL ストレプトマイシン、2mmol/L L-グルタミン、およびO.1mmol/L 2-メルカプトエタノールを含む「完全外植片培地」(CEM)で洗浄して、消化プロセスを反応停止する。組織片は無菌鉗子および鋏で再び微塵切りにして、次にファイブロネクチンでコーティングした(25μg/mLで≧1時間)組織培養プレートに移し、そこでそれらはプレートの表面に渡って配置され、均等にスペースが置かれる。プレートにCEMの最小量を加え、その後それを37℃および5% CO2で30分間インキュベートして、ここで「外植片」と呼ばれる組織片をプレートに付着させる(図1b)。ひとたび外植片が付着したら、十分なCEMをプレートに加えて外植片を覆い、プレートをインキュベータに戻す。
【0054】
8日またはそれより多くの期間の後、粘着外植片から間質様細胞の層が生じ始め、外植片を囲みながらプレートの表面を覆う。この層の上方に、小さく、丸く、明位相差像の細胞の集団が見られる(図1c、d)。ひとたび間質細胞層がコンフルエントになり、明位相差像の大きな集団が存在したら、外植片を囲む緩く粘着した細胞を回収する。これは、プレートを最初にCa++-Mg++-フリーのPBSで、次に0.48mmol/L EDTAで(1〜2分間)、かつ最後に0.05%のトリプシンEDTAで(2〜3分間)洗浄することによって行う。全ての洗浄は室温で目視管理下で行い、ゆるく粘着した細胞がいつ剥離し始めたかを決定する。各々の段階の後、洗浄液を採取し、その他の段階からのそれとともにプールする。最後の洗浄の後、外植片をCEMで再び覆い、インキュベータに戻す。外植片の各々のプレートは、5〜10日の間隔で4回まで、このように回収することが可能である。プールした洗浄液は次に1000回転で6〜8分間遠心分離し、細胞のペレットを形成する。遠心分離が完了したら、上清を除き、ペレットを懸濁し、血球計を用いて細胞をカウントする。細胞は次にポリ-D-リジンでコーティングした24穴の組織培養プレートに3〜5×104細胞/ウェル(種による)の範囲の濃さで蒔き、インキュベータに戻す。細胞は、65%のハムF-12補充による1:1ダルベッコ改変イーグル培地、35%の2% B27を含むCEM、25ng/mL 上皮成長因子、80ng/mL 塩基性線維芽細胞増殖因子、4ng/mL カーディオトロフィン-1および1単位/mL トロンビンから成る「カーディオスフェア成長培地」(CGM)中、またはCEM単独中のどちらかで増殖させることができる。
【0055】
どちらの培地においても、4〜28日間の後、多細胞集団(「カーディオスフェア」)が形成され、組織培養表面から剥離し、懸濁状態で増殖し始める(図1e、f)。サイズおよび数において十分になると、これらの自由浮動性のカーディオスフェアは、次にそれらの培地の吸引によって回収され、結果として生じる懸濁液はファイブロネクチンでコーティングした組織培養フラスコのCEM中に移される(ポリ-D-リジンでコーティングしたディッシュに粘着したままの細胞がさらに増幅することはない)。ファイブロネクチンの存在下では、カーディオスフェアは付着して「カーディオスフェア由来細胞」(CDC)の粘着単層を形成する(図1g)。これらの細胞はコンフルエントにまで増殖し、次にCDCとして繰り返し継代および増幅されるか、またはポリ-D-リジンでコーティングしたプレートに戻され、そこでそれらが再びカーディオスフェアを形成すると考えられる。CDCとして増殖した場合、組織の起源がヒト(図1i)であろうと、ブタであろうと、またはげっ歯類(データ示さず)であろうと、何百万もの細胞が、心臓組織が得られてから4〜6週間のうちに増殖することができる。コラゲナーゼが使用される場合、外植片組織の塊ごとに回収された細胞の最初の増大は、たくさんのCDCの迅速な産出をもたらす。
【0056】
参照
引用された各々の参照の開示は、本明細書に明示的に組み入れられる。
【0057】
参照



【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の集団を哺乳動物に投与し、それによって、その細胞の集団が哺乳動物における心臓の機能を高め、その細胞の集団がカーディオスフェア(cardiosphere)から得られた細胞を単層として表面上で培養するプロセスによって得られる段階
を含む、哺乳動物の損傷を受けたまたは罹病した心臓の機能を高める方法。
【請求項2】
細胞が全身性に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
細胞が損傷を受けたまたは罹病した心臓に遊走し、罹病した心臓に生着する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
細胞が損傷を受けたまたは罹病した心臓に遊走し、罹病した心臓に拡散性産物を提供する、請求項2記載の方法。
【請求項5】
細胞が局所性に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
哺乳動物が慢性心疾患を有している、請求項1記載の方法。
【請求項7】
哺乳動物が急性心疾患を経験している、請求項1記載の方法。
【請求項8】
細胞が、外因性の成長因子EGFおよびbFGF、カーディオトロフィン-1、ならびにトロンビンの非存在下で培養される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
カーディオスフェアが、外因性の成長因子EGFおよびbFGF、カーディオトロフィン-1、ならびにトロンビンの非存在下で形成される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
細胞が、ウシ胎児血清の存在下だがその他の外因性成長因子の非存在下で培養される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
カーディオスフェアが、ウシ胎児血清の存在下だがその他の外因性成長因子の非存在下で形成される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
細胞が哺乳動物に対して同種異系である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
細胞が哺乳動物に対して自家性である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
インビトロで増幅した細胞の集団を哺乳動物に投与し、その細胞が懸濁培養においてカーディオスフェアを形成する能力を有するが、
その細胞が投与される際にはカーディオスフェアの形状にはない段階
を含む、哺乳動物の損傷を受けたまたは罹病した心臓の機能を高める方法。
【請求項15】
細胞が全身性に投与される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
細胞が局所性に投与される、請求項14記載の方法。
【請求項17】
哺乳動物が慢性心疾患を有している、請求項14記載の方法。
【請求項18】
損傷を受けたまたは罹病した心臓が急性心疾患を経験している、請求項14記載の方法。
【請求項19】
細胞が哺乳動物に対して同種異系である、請求項14記載の方法。
【請求項20】
細胞が哺乳動物に対して自家性である、請求項14記載の方法。
【請求項21】
経皮的心内膜心筋生検によって、哺乳動物の損傷を受けたもしくは罹病した心臓からまたはドナーの健康な心臓から心臓組織を得る段階;
心臓組織を処理して心臓幹細胞の集団を取得し、増幅する段階;
心臓幹細胞および/またはそれらの子孫を、哺乳動物の損傷を受けたまたは罹病した心臓の中に導入する段階
を含む、損傷を受けたまたは罹病した心臓を持っている哺乳動物を治療する方法。
【請求項22】
1番目および2番目の哺乳動物が2個体であり、細胞が2番目の哺乳動物に対して同種異系である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
1番目および2番目の哺乳動物が1個体であり、細胞が哺乳動物に対して自家性である、請求項21記載の方法。
【請求項24】
心臓組織が心臓内部の分界稜から得られる、請求項21記載の方法。
【請求項25】
心臓組織が心臓内部の右心室心内膜から得られる、請求項21記載の方法。
【請求項26】
心臓組織が中隔または心室壁から得られる、請求項21記載の方法。
【請求項27】
心臓組織が心耳から得られる、請求項21記載の方法。
【請求項28】
処理の段階が、心臓組織のプロテアーゼとのインキュベーション、およびそれによって心臓組織から遊離された心臓幹細胞の採取による心臓幹細胞の集団の形成を用いる、請求項21記載の方法。
【請求項29】
プロテアーゼがコラゲナーゼである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
処理の段階が、懸濁状態で培養してカーディオスフェアを得ることを用いる、請求項21記載の方法。
【請求項31】
処理の段階が、懸濁状態で培養してカーディオスフェアを得ることに続いた表面上での単層増殖を用いる、請求項21記載の方法。
【請求項32】
得る段階が柔軟なカテーテルを含む生検鉗子を用いる、請求項21記載の方法。
【請求項33】
再導入する段階が心臓幹細胞の全身性投与を用いる、請求項21記載の方法。
【請求項34】
再導入する段階が心臓への局所性投与を用いる、請求項21記載の方法。
【請求項35】
再導入する段階がカテーテルまたは直接観察による心臓壁内部への針の注入によって行われる、請求項21記載の方法。
【請求項36】
再導入する段階が冠動脈を介する、請求項21記載の方法。
【請求項37】
プロテアーゼの存在下で心臓生検検体をインキュベートする段階;
プロテアーゼ・インキュベーションによって生検検体から遊離した細胞を採取する段階;
細胞を単層として表面上で培養して細胞の数を増幅させる段階
を含む、心臓生検検体を処理する方法。
【請求項38】
細胞を懸濁培養で増殖させ、それによってそれらがカーディオスフェアを形成する段階をさらに含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
細胞を哺乳動物に導入する段階をさらに含む、請求項37記載の方法。
【請求項40】
細胞が哺乳動物に対して同種異系である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
細胞が哺乳動物に対して自家性である、請求項39記載の方法。
【請求項42】
プロテアーゼがコラゲナーゼである、請求項37記載の方法。
【請求項43】
経皮的生検によって、哺乳動物の損傷を受けたもしくは罹病した臓器からまたはドナーの健康な臓器から組織を得る段階;
組織を処理して幹細胞の集団を取得し、増幅する段階;
幹細胞および/またはそれらの子孫を、哺乳動物の損傷を受けたまたは罹病した臓器の中に導入する段階
を含む、損傷を受けたまたは罹病した臓器を持っている哺乳動物を治療する方法。
【請求項44】
臓器が腎臓である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
細胞が哺乳動物に対して同種異系である、請求項43記載の方法。
【請求項46】
細胞が哺乳動物に対して自家性である、請求項43記載の方法。
【請求項47】
一つまたは複数の最初のカーディオスフェアを個々の細胞または細胞のより小さい凝集体に脱凝集させる段階;
該個々の細胞または細胞のより小さい凝集体を単層として表面上で培養する段階
を含む、心臓幹細胞の集団を増幅するための方法。
【請求項48】
脱凝集が研和によって行われる、請求項47記載の方法。
【請求項49】
培養がウシ胎児血清の存在下だがその他の外因性成長因子の非存在下で行われる、請求項47記載の方法。
【請求項50】
単層の細胞の少なくともいくつかを懸濁培養でインキュベートし、それによってそれらが一つまたは複数の第2のカーディオスフェアを形成する段階をさらに含む、請求項47記載の方法。
【請求項51】
一つまたは複数の第2のカーディオスフェアを個々の細胞または細胞のより小さい凝集体に脱凝集させる段階をさらに含む、請求項50記載の方法。
【請求項52】
細胞が懸濁培養においてカーディオスフェアを形成する能力を有するが、それらがカーディオスフェアの形状にはない、単層状態のインビトロで増幅させた細胞の集団。
【請求項53】
細胞が脱凝集させたカーディオスフェアから得られる、単層として表面上で細胞を培養するプロセスによって作られた細胞の集団。
【請求項54】
細胞が、akt、コネキシン43、その他のコネキシン、HIF1α、VEGF、FGF、PDGF、IGF、SCF、ミオカルディン、カルディオトロピン、L型カルシウムチャネルαサブユニット、L型カルシウムチャネルβサブユニット、およびNkx2.5から成る群から選択されるタンパク質のコード配列を含む発現コンストラクトでトランスフェクションされている、請求項1、14、または21記載の方法。
【請求項55】
細胞が、akt、コネキシン43、その他のコネキシン、HIF1α、VEGF、FGF、PDGF、IGF、SCF、ミオカルディン、カルディオトロピン、L型カルシウムチャネルαサブユニット、L型カルシウムチャネルβサブユニット、およびNkx2.5から成る群から選択されるタンパク質のコード配列を含む発現コンストラクトでトランスフェクションされている、請求項52または53記載の集団。
【請求項56】
表面がファイブロネクチンでコーティングされている、請求項1、31、37、47、または53記載の方法。
【請求項57】
哺乳動物がヒトである、請求項1、14、21、39、または43記載の方法。
【請求項58】
哺乳動物がイヌである、請求項1、14、21、39、または43記載の方法。
【請求項59】
哺乳動物がウマである、請求項1、14、21、39、または43記載の方法。
【請求項60】
細胞がヒト細胞である、請求項1、14、21、37、43、または47記載の方法。
【請求項61】
細胞がウマ細胞である、請求項1、14、21、37、43、または47記載の方法。
【請求項62】
細胞がイヌ細胞である、請求項1、14、21、37、43、または47記載の方法。
【請求項63】
細胞がブタ細胞である、請求項1、14、21、37、43、または47記載の方法。
【請求項64】
細胞がヒト細胞である、請求項52または53記載の集団。
【請求項65】
細胞がウマ細胞である、請求項52または53記載の集団。
【請求項66】
細胞がイヌ細胞である、請求項52または53記載の集団。
【請求項67】
細胞がブタ細胞である、請求項52または53記載の集団。
【請求項68】
プロテアーゼの存在下で腎臓生検検体をインキュベートする段階;
プロテアーゼ・インキュベーションによって生検検体から遊離した細胞を採取する段階;
細胞を単層として表面上で培養して細胞の数を増幅させる段階
を含む、腎臓生検検体を処理する方法。
【請求項69】
細胞を哺乳動物に導入する段階をさらに含む、請求項68記載の方法。
【請求項70】
細胞が哺乳動物に対して同種異系である、請求項69記載の方法。
【請求項71】
細胞が哺乳動物に対して自家性である、請求項69記載の方法。
【請求項72】
プロテアーゼがコラゲナーゼである、請求項68記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−46780(P2013−46780A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−229481(P2012−229481)
【出願日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【分割の表示】特願2007−540148(P2007−540148)の分割
【原出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(506321481)ザ ジョンズ ホプキンス ユニバーシティー (9)
【Fターム(参考)】