説明

患者にアミロイドーシスおよびタンパク質凝集性障害における特異的免疫応答をもたらす方法

主に、病原性形態の前記タンパク質またはタンパク質複合体上に存在する病的タンパク質凝集物またはネオエピトープに対する抗体応答を増強または維持することによる、アルツハイマー病およびタンパク質のミスフォールディングまたは凝集が関与している他の障害の新規な処置を提供する。さらに、生体外で(ex vivo)刺激した抗原選択末梢血リンパ球を、対応するドナーに再移植する治療方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患の病的状態に特徴的であるとともに、獲得免疫システムにより疾患抗原として選択的に同定される内因性タンパク質凝集物内に存在するネオエピトープの出現を特徴とする疾患の処置に関する。本発明は、特に、外因性免疫原の共投与の必要なく少なくとも1種類の免疫賦活剤の単独投与によって少なくとも1種類の内因性タンパク質に対する抗体応答を誘導することによる、アルツハイマー病およびタンパク質のミスフォールディングまたは凝集が関与している障害の処置に関し、ここで、かかる抗体応答は、主に、病原性形態の前記タンパク質またはタンパク質複合体上に存在するネオエピトープに対するものである。さらに、本発明は、生体外で(ex vivo)抗原選択末梢血リンパ球に投与される免疫賦活剤の使用に関する。該リンパ球は続いて、対応するドナーに再移植される。また、本発明は、治療観察結果を利用するものであり、種々の障害、特に神経系障害、例えば、アルツハイマー病およびアミロイドーシス(βアミロイド病変など)の処置における新規な結合分子(抗体であってもそうでなくてもよい)、標的および薬物についてスクリーニングする方法を含む。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(「AD」)は加齢性認知症の最も一般的な原因であり、高齢者の身体障害および死亡の主な原因である。この疾患は、現在、有効な治療法がなく、だんだん衰弱し、広範な認知欠陥、例えば、記憶喪失、言語障害、ならびに判断力および抽象推理の低下を特徴とする、長期間にわたって進行する中枢神経系の神経変性障害である。
AD患者の脳組織の死後検査により、タンパク質性の原線維および微細線維を含む細胞外斑、βアミロイドの血管内沈着物、ならびにニューロン内神経細線維もつれが示された。このような原線維および微細線維は、それぞれ、βアミロイドペプチド(Aβ)およびタウと称されるβアミロイド前駆体タンパク質(「APP」)バリアントの凝集物を含む。APP遺伝子における変異または多型は家族性ADを有する患者に見られ、培養細胞、トランスジェニックマウスおよびヒト患者においてAβ生成を増大させるのに充分であり、したがって、ヒト遺伝子バリアントと該疾患病変との直接的な関連性が確立されている。さらに、より一般的には、脳内へのアミロイドタンパク質の異常な沈着により、さまざまな病状、障害、および疾患で顕性となるアミロイドーシスがもたらされると考えられており、その最も顕著なものの一例は、アルツハイマー病である。
【0003】
現在、アルツハイマー病およびアミロイドーシスと関連している他の病状の進行の予防、遅延、停止または逆転に有効な処置法は知られていない。
したがって、アミロイドーシスと関連している病状、例えば、アルツハイマー病ならびに他の疾患の予防および処置できる処置方法の緊急に必要である。
同様に、一般的に、異常タンパク質構造物の蓄積およびペプチド凝集によって引き起こされる疾患および障害、特に、神経変性疾患、また、異常なタンパク質凝集によって引き起こされる末梢アミロイドーシス、いわゆる「タンパク質凝集性障害」の処置方法が必要である。
また、上記障害において治療的に有効であり、実質的に副作用が回避され、かつ好都合には他の医療適応症に対する臨床試験で既に証明された化合物を使用する処置方法が必要である。
【0004】
一例として、アセチルコリン阻害薬を用いた現行のアルツハイマー病の処置は、神経変性の結果減少する記憶関連神経伝達物質であるアセチルコリンの置換に依存している。したがって、これは、βアミロイド沈着または神経細線維もつれの形成に対して直接的な効果のない対症療法である。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬では、一部の患者で限定的な期間、認知症の症状が改善され得るが、全患者ではない。該阻害薬は、アルツハイマー病の治療薬とはみなされていない。同様に、現在使用されている他の治療剤、例えば、NMDAアンタゴニストは、一部の患者集団で、ある程度の有効性が示されているが、アルツハイマー病の原因病変に影響を及ぼすものではない。このような対症療法は、一部のアルツハイマー病患者で疾患進行が一時的に遅延され得ることがあったとしても、原因となっているβアミロイド病変を標的とする原因治療は利用可能でなく、緊急に必要である。中でも、免疫療法は最も有望なアミロイドを低減させる原因治療アプローチであるが、能動的にワクチン療法を受けた患者の6%における亜急性無菌性髄膜脳炎のため、最初のワクチン療法臨床試験は中止された(Orgogozoら,Neurology 2003)。同様に、マウスにおいて発生させたモノクローナル抗体を使用する受動免疫療法では、脳出血が起こることがあり得、大きな安全性の問題が生じる(Pfeiferら,Science 2002)。したがって、βアミロイドに対する安全で耐容性のある免疫療法の開発は、将来のアルツハイマー病の処置において大きな飛躍的進歩となろう。能動的ワクチン療法の臨床的有効性の最初の徴候は、ワクチン療法患者の追跡試験で観察された(Hockら,2003)。同様に、他のタンパク質凝集性疾患、例えば、タウオパチー、パーキンソン病およびハンチントン病における病的タンパク質凝集物に対する同様の免疫療法も、同様に安全で有効であり得る。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、被検体において、診断上、特に治療上有用な結合分子を誘導するため、特に、内因性タンパク質の病的バリアントおよび/または凝集に対する抗体を誘導するための方法である。本明細書に記載する発明は、TLRアゴニスト、例えば限定されないが、CpGが、内因性の病的タンパク質凝集物に対して生得的に起こる免疫応答を増強し得るという予期しない観察結果に基づいたものである。本発明によると、TLRアゴニストにより抗原刺激を受けたBリンパ球の刺激は、通常存在している形態の前駆体タンパク質よりも病的タンパク質凝集物に対する選択的抗体応答に有利となることが予測される。その結果、TLRアゴニストにより、被検体において病的タンパク質凝集物に対して生得的に起こるが治療的に有効でない免疫応答が増強および維持され得、これは、免疫機能に障害を有する高齢患者の処置に特に有益であり得る。別の実施形態において、このアプローチはまた、症状発現前の病的タンパク質凝集物の沈着物を有する健常被検体の疾患の予防にも有用である。
【0006】
本発明は、ヒト被検体または動物の罹患組織内の内因性または外因性起源の病的タンパク質凝集物の沈着を特徴とする障害の処置、診断または予防のための医薬組成物調製のための自然免疫システムまたは適応免疫システムの免疫賦活剤の使用に関する。病的凝集物は、典型的にはネオエピトープを含み、これは、生理的に生じる形態のそれぞれのタンパク質には存在せず、ミスフォールディング、異常な凝集によって形成され、多くの場合、3次元構造が病的に改変されることによる可溶性の劇的な低下を伴う。多くの場合、構造的改変は、生理学的分解機構もしくはプロテアーゼによって該凝集物質が分解され得ないことによる異常なタンパク質凝集物の半減期の増大、罹患組織内への蓄積、該異常なタンパク質凝集物に付着する多くの他のタンパク質との会合、対応するタンパク質の生理学的機能の低下、または該病的タンパク質構造物の毒性機能の獲得を伴う。ネオエピトープは、その異常構造のため寛容を逃れた、または規定される免疫システムによって、例えば、病的タンパク質凝集物に結合するそれぞれの抗体との特異的反応(例えば、そのネオエピトープの認識)によって認識可能なエピトープを意味するものとする。
【0007】
より詳しくは、本発明は、病的ネオエピトープ、特に、アミロイドーシス発生性の線維性形態または斑様形態のタンパク質/タンパク質またはタンパク質/ペプチドまたはペプチド/ペプチドの凝集物の少なくとも1種類の型の病的ネオエピトープの存在を特徴とする障害に苦しむ被検体の処置のための医薬組成物の調製のための自然または適応免疫システムの免疫賦活剤の使用に関する。
【0008】
本発明は、外因性免疫原の共投与なしでの免疫賦活剤の単独投与によって少なくとも1種類の内因性タンパク質に対する抗体応答を増強または維持することにより、アルツハイマー病をシミュレーションしたマウスモデル系において、処置に対する選択的な抗体応答が好成績で増強され得るという新規で驚くべき所見に基づき、ここで、かかる抗体応答は、主に、病原性形態の前記タンパク質またはタンパク質複合体上に存在するネオエピトープに対するものである。また、これに関連して、免疫賦活剤を生体外で(ex vivo)抗原選択末梢血リンパ球に投与してもよく、続いて、該リンパ球を対応するドナーに再移植すると、有益な治療効果が奏され得る。
【0009】
本発明は、種々のエフェクター機能の自然または適応免疫状態を増強し、既存の記憶B細胞もしくはB細胞を追加免疫刺激し、一例として前記タンパク質のミスフォールディング、オリゴマー化、凝集もしくは複合体形成によって生じた前記タンパク質の病的コンホメーションに対するそれぞれの自己抗体を産生させるため、または関連する適用において、受動免疫処置でかかる抗体もしくは抗体混合物が共投与される場合に、全身免疫システムのエフェクター機能を増強するため、または関連する適用において、免疫応答不全の高齢被検体において、病的コンホメーションを有する内因性自己抗原に対するエフェクター機能および自家ワクチン療法の有効性を増強するため、または関連する適用において、末梢血リンパ球のTLR機能を生体外で(ex vivo)刺激するための、既知類型の免疫賦活剤、特に核酸およびその誘導体ならびにTOLL様受容体ファミリー(TLR)の低分子量アゴニストに関する。かかるアミロイドーシスは、主に、神経変性疾患などの疾患、例えば、アルツハイマー病、ダウン症候群、脳のアミロイド血管症、混合型認知症、もしくは封入体筋炎、緑内障、もしくは動脈硬化関連アミロイドーシス、または以下の前駆体タンパク質SAA(血清アミロイドタンパク質A)、AL(免疫グロブリンのκもしくはl−軽鎖)、AH(g1 Ig−重鎖)、ATTR(トランスサイレチン、血清プレアルブミン)、AApo−A−1(アポリポタンパク質A1)、AApoA2(アポリポタンパク質A2)、AGel(ゲルソリン)、ACys(シスタチンC)、ALys(リゾチーム)、AFib(フィブリノゲン)、βアミロイド(アミロイド前駆体タンパク質)、βアミロイド2M(β2−ミクログロブリン)、APrP(プリオンタンパク質)、ACal(プロカルシトニン)、AIAPP(膵島アミロイドポリペプチド);APro(プロラクチン)、AIns(インスリン);AMed(ラクタドヘリン);Aker(ケラトエピテリン);ALac(ラクトフェリン)、Abri(AbriPP)、ADan(ADanPP);またはAANP(心房性ナトリウム利尿(natriuretical)ペプチド)の少なくとも1種類に由来する線維性タンパク質で構成される他の形態のアミロイドーシス、または異常凝集形態の内因性タンパク質、例えば限定されないが、アルツハイマー病、ダウン症候群、脳のアミロイド血管症、オランダ型およびアイスランド型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血におけるβアミロイド、パーキンソン病、アルツハイマー病、レヴィー小体による認知症、多系統萎縮症におけるα−シヌクレイン;クロイツフェルト・ヤコブ病および関連プリオン病におけるプリオンタンパク質、ハンチントン病におけるハンチンチン、タウオパチー、例えば、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、嗜銀顆粒性疾患(AGD)、前頭側頭型認知症(FTD)、パーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP17)におけるタウもしくは他の神経細線維もつれ関連タンパク質、ピック病におけるピック小体、脊髄小脳性運動失調におけるアタキシン、筋萎縮性側索硬化症における銅/亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ、ならびに前頭側頭葉変性症および筋萎縮性側索硬化症におけるTDP−43の沈着を特徴とする神経変性疾患などと関連している。また、別の実施形態において、免疫応答の刺激は、アミロイド関連タンパク質に対するものであり得る。
【0010】
上記の疾患の少なくとも1種類に苦しむ患者において、かかる疾患の発生を逆転、安定化または予防するためのかかる免疫賦活剤の治療的使用は、大部分がB細胞によって媒介され、T細胞によって補助される自然免疫応答の追加免疫刺激に対するものであり、ここで、該B細胞は活性化され、その表面に結合された免疫グロブリンが、異常コンホメーションまたはアミロイド沈着物または構成成分モノマーの病的集合体で構成された他の異常タンパク質凝集物において検出可能な疾患関連タンパク質のネオエピトープを認識する。かかる構成成分モノマーは、天然の内因性タンパク質に由来するもの、または該タンパク質からプロセッシングされたものであり、患者の体内に、病的バリアントの形態で広く存在している、または斑など(クラスターなど)の病的沈着物の状態で会合している、および/または正常な生理学的細胞内局在/環境と比べて異なる局在を示す。
【0011】
また、本発明は、かかる免疫賦活剤を単独で、または結合性物質、抗体又はその模倣物との組み合わせで含む医薬組成物、および種々の障害、特に神経系障害(アルツハイマー病など)およびβアミロイド病変およびアミロイドーシス、ならびにタンパク質凝集性疾患一般の処置における新規な結合性物質(抗体であってもそうでなくてもよい)、標的および薬物についてスクリーニングする方法に関する。
【0012】
また、本発明は、加齢が免疫監視機構の機能の低下と関連しており、一方、加齢は、病的タンパク質凝集物(例えば、βアミロイド)の沈着の最も重要なリスクファクターであるという観察結果に基づいたものである。したがって、アミロイドーシスの加齢性のリスクの増大は、免疫システムのかかる沈着物の検出および除去能の加齢性低下と並行して起こっている可能性がある。本明細書に記載の方法で免疫システムを刺激すると、かかる加齢性の発病が低減されると予測される。
【0013】
特に記載のない限り、本明細書で用いる用語は、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology,Oxford University Press,1997,2000年改訂および2003年再版,ISBN 0 19 850673 2に示された定義を示す。用語「病的ネオエピトープ」は、疾患または病的表現型の状態に特徴的なエピトープをいう。上掲も参照のこと。
【0014】
明確にするため、および曖昧な場合は、以下の用語定義を適用する。
Aβ=アミロイドβ−ペプチド=モノマーペプチド(Aβl−40およびAβ1−42ならびにさらなるマイナー形態)。
Aβオリゴマー=モノマーAβペプチドの可溶性および不溶性のオリゴマー集合体すべて。
Aβ線維=βアミロイド線維=Aβペプチド線維性集合体すべて、大部分は不溶性。
βアミロイド=老人斑およびコンゴ好染アミロイド血管症におけるAβ線維とAβオリゴマーの大きな蓄積物。
APP=βアミロイド前駆体タンパク質、あらゆるAβペプチドの前駆体。
老人斑=不溶性のβアミロイド線維およびAβオリゴマーを含む、コンゴーレッドおよびThioS陽性、ならびにTAPIR陽性(すなわち、国際特許出願公開公報WO2004/095031に記載の免疫療法で新たに生じた組織アミロイド斑免疫反応性(TAPIR)アッセイでモニタリングする方法による測定による)下記も参照のこと。
びまん型斑=可溶性のAβおよび可溶性のAβオリゴマーを含む、原線維なし、コンゴーレッドおよびThioS陰性、TAPIRのみ陽性。
CAA=コンゴ好染アミロイド血管症=血管周囲にβアミロイド線維、コンゴーレッドおよびThioS陽性、ならびにTAPIR陽性。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、Y字型迷路におけるCpG処置マウスの行動の図である。A.総アーム進入回数。B.総アーム進入回数に対するパーセンテージとしての交替行動。10または50μgいずれかのCpGでの処置により、APPsweArcトランスジェニックマウスにおいてアーム進入回数ならびに交替行動パーセントの増加がもたらされ、これは、CpGで処置すると探索活動および作業記憶が改善されることを示す。
【図2】図2は、第4日目の3〜5ブロックのプラットホーム到達の平均時間(A)およびエラー数(B)の図である。APPsweArcのCpG処置は、学習成績の用量依存的改善傾向と関連している。
【図3】図3は、APPsweArcマウスの皮質および海馬(HC)における総脳内Aβ斑負荷(Zymed pan−Aβ)およびコンゴ好染緻密アミロイド沈着物(Congo Red)の図である。10μgまたは50μgのCpGで慢性処置すると、PBS対照動物と比べ、総Aβ斑病変および緻密Aβ斑病変のレベルの低下が観察された。
【図4】図4は、PBS中およびTritonX−100脳抽出物中の可溶性の脳内Aβ40およびAβ42のレベルの図である。両CpG処置レジメンで、Aβ40とAβ42の脳内レベルが低下している。TritonX−100 Aβ42レベルはELISAの検出限界未満であり、したがって解析しなかった。
【図5】図5は、グアニジン脳抽出物中の不溶性の脳内Aβ40およびAβ42のレベルの図である。両CpG処置レジメンで、不溶性のAβの脳内レベルが対照群(PBS)と比べて最大50%低下している。
【図6】図6は、CpG処置すると、APPsweArcマウスにおいて末端部採取血中Aβ40とAβ42結合抗体レベルが増大している図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一態様において、本発明は、種々の型のアミロイドーシスおよび神経変性疾患において観察されるような、一例として、タンパク質ミスフォールディング、オリゴマー化、凝集、複合体形成または斑、線維性構造物もしくは封入体構造物の形成によって生じる内因性タンパク質の病的コンホメーションに対して生得的に起こる免疫応答を増強するための方法に関する。特に、本発明は、アミロイドーシス発生性の線維性形態または斑様形態のタンパク質/タンパク質またはタンパク質/ペプチドまたはペプチド/ペプチドの凝集物の少なくとも1種類の型の病的ネオエピトープの存在を特徴とする障害に苦しむ被検体の処置のための医薬組成物の調製のための自然免疫システムまたは適応免疫システムの免疫賦活剤の使用に関する。
【0017】
換言すると、理論に拘束されることを意図しないが、本発明の治療アプローチは、それぞれ線維性または斑様形態のタンパク質/タンパク質、タンパク質/ペプチドまたはペプチド/ペプチドの凝集物および構造物と関連しているアミロイドーシスを特異的に認識する自己抗体を誘導することを特徴とするものであり得る。
この点において、本発明による驚くべき所見の1つは、新規な治療アプローチに使用される化合物が、かなり特異的な抗体応答誘導することができるが、身体に害となり得、紅斑性狼瘡などの自己免疫疾患をもたらし得る過剰反応性免疫システムをもたらさないことである。さらに、本発明の医薬組成物に意図される化合物の多く(例えばCpGなど)は、既に臨床試験で試験され、安全であることがわかっているため、副作用は予測され得ないことが証明されているようなものであり、したがって、本発明の治療アプローチは、可能な限り早く臨床的に試験され得る。これに関連して、本発明の治療アプローチに対する処置レジメンおよび投薬量は、タンパク質凝集性疾患およびアミロイドーシス、例えば限定されないが、アルツハイマー病、ダウン症候群、脳のアミロイド血管症、オランダ型およびアイスランド型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、混合型認知症、レヴィー小体による認知症、多系統萎縮症;封入体筋炎、緑内障、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳性運動失調、パーキンソン病、ハンチントン病、レヴィー小体による認知症、タウオパチー、例えば、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、嗜銀顆粒性疾患(AGD)、前頭側頭型認知症(FTD、パーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP17)、前頭側頭葉変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病および関連プリオン病、ピック病(Morbus Pick)、家族性アミロイドポリニューロパチー、ならびに以下の前駆体タンパク質:タウ、α−シヌクレイン、ハンチンチン、アタキシン、スーパーオキシドジスムターゼ、TDP−43、SAA(血清アミロイドタンパク質A)、AL(免疫グロブリンのκもしくはl−軽鎖)、AH(g1 Ig−重鎖)、ATTR(トランスサイレチン、血清プレアルブミン)、AApo−A−1(アポリポタンパク質A1)、AApoA2(アポリポタンパク質A2)、AGel(ゲルソリン)、ACys(シスタチンC)、ALys(リゾチーム)、AFib(フィブリノゲン)、βアミロイド(アミロイド前駆体タンパク質)、βアミロイド2M(β2−ミクログロブリン)、APrP(プリオンタンパク質)、ACal(プロカルシトニン)、AIAPP(膵島アミロイドポリペプチド);APro(プロラクチン)、AIns(インスリン);AMed(ラクタドヘリン);Aker(ケラトエピテリン);ALac(ラクトフェリン)、Abri(AbriPP)、ADan(ADanPP);またはAANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)の少なくとも1種類に由来する線維性タンパク質で構成されるアミロイドーシス(概説については、例えば、Skovronskyら,Annu.Rev.Pathol.Mech.Dis.1(2006),151−70およびBuxbaum,Curr.Opin.Rheumatol.16(2003),67−75を参照されたい)の処置におけるCpGなどの化合物について報告されたものに実質的に従うものであり得ることを理解されたい。
【0018】
さまざまな著者によって、βアミロイド関連タンパク質に対する抗体または抗体の存在が高齢被検体またはアルツハイマー病の患者において検出されることがあり得、これが、かかる患者におけるアルツハイマー病の進行の遅滞と関連している可能性があることが示されている(Brettschneiderら,Biol.Psychiatry 57(2005),813;Moirら,J Biol Chem 280(2005),17458−17463;Songら,J.Int.Med.Res.35(2007),301−306もまた参照のこと)。内因的に存在するかかる抗体は、血液脳関門を越えて脳内に侵入する能力を有するため、およびかかる抗体は脳からの異常な病的タンパク質凝集物、例えば限定されないが、βアミロイドの除去において活性なため、かかる抗体は、内因的予防またはかかる被検体におけるアルツハイマー病の進行速度の遅滞と関連している可能性がある。また、ヒト患者からクローニングされた抗体ならびにインビトロまたはマウスモデル系において生成させた抗体、ならびに市販のIVIg調製物中に存在しているヒトβアミロイド抗体(Wekslerら,Cornell University)は、βアミロイド前駆体タンパク質のヒト疾患を引き起こす変異型由来のヒト様βアミロイド斑構造物を生成するマウスモデル系においてアミロイド斑負荷を低減させ得ることが示され得る。アルツハイマー病の処置において受動免疫処置剤として投与される種類の抗体の薬理学的有用性を調べるための種々のストラテジーが、現在、臨床試験および前臨床試験中である。能動免疫処置のストラテジーは、免疫システムによって種々のエピトープに対するいくつかの抗体応答およびT細胞応答が生じる限り成立せず、該応答の一部のものは潜在的に有益な価値があるが、一部のものは、アミロイド斑負荷もしくは斑としての糸屑状構造物から血管へのアミロイドの再沈着をさらに増強することにより、または亜急性無菌性髄膜脳炎および関連形態の自己免疫を誘導することにより、潜在的に有害な効果を有する。能動免疫処置と関連する別の内在性リスクは、モノマーAβペプチドまたは凝集構造物の線状エピトープまたは構造的エピトープ内に存在する生理的に生じるエピトープ上に存在する内因性自己エピトープに対して抗体が生成すること、したがって、天然プロセッシング形態の生理学的アミロイド前駆体タンパク質(APP)誘導体(例えばAβ)と交差反応する抗体が生じること、および潜在的に、特性が未だ不明の自己免疫疾患に至ることである。
【0019】
したがって、本発明の治療アプローチは、多くの高齢患者が、疾患原因因子に対する免疫応答が不充分なために疾患に苦しんでいるため、高齢被検体の処置において特に好都合である。本発明によると、病的タンパク質/ペプチドおよびタンパク質/ペプチド構造物に対する適切な免疫応答は、該患者に対し、若者と同様に該病的ネオエピトープ含有因子に対処できる状態がもたらされるように誘導および/または追加免疫刺激され得る。
高齢患者における免疫システムの状態は、関連抗体を生成、最適化および産生する能力と、自然または適応免疫応答の完全性に非常に大きく依存する抗体媒介性機能(エフェクター機能など)を補助する能力の両方において機能的に低下することがわかっている。かかるネオエピトープに対する自己免疫応答を選択的に生じさせるが、機能的に関連する生理的エピトープ(例えば、AβなどのAPPの生理的に生じる誘導体など)に対する主要な自己免疫応答は回避されることが所望され得る。また、異常な病的タンパク質凝集物、例えば限定されないが、アミロイド線維性構造物、高齢患者および若年患者の両方における封入体、ならびに予防的適用では、高齢期にタンパク質凝集性障害を発病するリスクのある健常被検体における封入体内に存在する記載のかかる構造物のネオエピトープに対して選択的な免疫グロブリンによって、基礎的だが非効率的な既存の免疫応答を増強することが有益であり得る。また、薬物として適用されるかかる抗体または抗体の組合せが機能的に増強され得る場合も有益であり得、抗原特異的B細胞がIgG産生形質細胞に分化されるように活性化され得る場合も有益であり得る。
【0020】
したがって、本発明の治療アプローチのさらなる利点の1つは、内因的に抗原刺激を受けた免疫システムの誘導が標的化されるため、同時投与またはワクチン療法が必要とされないことである。したがって、本発明の一実施形態において、使用される医薬組成物は、前記病的ネオエピトープを有する抗原を含まない。同様に、追加的に又は代替的に、本発明の使用における医薬組成物は、前記病的ネオエピトープを有する抗原でのワクチン療法を受けたことがない被検体に投与されるように設計される。Leeら(Ann.Neurol.58(2005),430−435)によって、生理的にプロセッシングされたタンパク質またはペプチド上に潜在的に存在する非配座エピトープに対する抗体が優先的に誘発され得ることが観察されたように、かかる共投与は、さらにリスクを生じやすいことがあり得る。
【0021】
本発明の治療アプローチの対象となる障害は、好ましくは、TAPIRアッセイ、すなわち、国際特許出願公開公報WO2004/095031に記載の免疫療法のモニタリング方法を、アミロイドーシス群、例えば、アルツハイマー病、ピック病、ダウン症候群、脳のアミロイド血管症、混合型認知症、封入体筋炎、緑内障もしくは動脈硬化関連アミロイドーシス、または異常凝集形態の内因性タンパク質、例えば限定されないが、アルツハイマー病、ダウン症候群、脳のアミロイド血管症、オランダ型およびアイスランド型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血におけるβアミロイド、パーキンソン病、アルツハイマー病、レヴィー小体による認知症、多系統萎縮症におけるα−シヌクレイン;クロイツフェルト・ヤコブ病および関連プリオン病におけるプリオンタンパク質、ハンチントン病におけるハンチンチン、タウオパチー、例えば、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、嗜銀顆粒性疾患(AGD)、前頭側頭型認知症(FTD、パーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP17)、アルツハイマー病、ピック病におけるタウまたは神経細線維維もつれ関連タンパク質;脊髄小脳性運動失調におけるアタキシンならびに筋萎縮性側索硬化症における銅/亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ、ならびに前頭側頭葉変性症および筋萎縮性側索硬化症におけるTDP−43の沈着を特徴とする神経変性疾患などのアミロイド組織の種々の被検物に対して適用することにより診断され得る。また、別の実施形態において、免疫応答の刺激は、アミロイド関連タンパク質に対するものであり得るか、または以下の前駆体タンパク質SAA(血清アミロイドタンパク質A)、AL(免疫グロブリンのκもしくはl−軽鎖)、AH(g1 Ig−重鎖)、ATTR(トランスサイレチン、血清プレアルブミン)、AApo−A−1(アポリポタンパク質A1)、AApoA2(アポリポタンパク質A2)、AGel(ゲルソリン)、ACys(シスタチンC)、ALys(リゾチーム)、AFib(フィブリノゲン)、βアミロイド(アミロイド前駆体タンパク質)、βアミロイド2M(β2−ミクログロブリン)、APrP(プリオンタンパク質)、ACal(プロカルシトニン)、AIAPP(膵島アミロイドポリペプチド);APro(プロラクチン)、AIns(インスリン);AMed(ラクタドヘリン);Aker(ケラトエピテリン);ALac(ラクトフェリン)、Abri(AbriPP)、ADan(ADanPP);またはAANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)の少なくとも1種類に由来する線維性タンパク質で構成される他の形態のアミロイドーシスが、さまざまな患者におけるそれぞれのタンパク質凝集物構造物に対する抗体の存在と関連していることが示されている。
【0022】
本発明に従って処置される一部の障害において、前記ネオエピトープは、オリゴマー化もしくは線維形成された後に形成される配座エピトープ、または少なくとも1種類の異なるペプチドもしくは分子性存在体とヘテロマー複合体の状態で会合している原線維形成ペプチドの1つによって形成されるエピトープを含むもの、または該エピトープからなるものである。かかるオリゴマー化と一般的に関連している、および/または引き起こされる障害としては、限定されないが、アルツハイマー病、加齢に伴うアミロイド沈着、軽度の認知機能障害、ダウン症候群、脳のアミロイド血管症、混合型認知症、封入体筋炎、緑内障、ピック病、動脈硬化、パーキンソン病、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭葉変性症、ハンチントン病、タウオパチー、およびピック病、頭部外傷、ボクサー認知症、慢性外傷性脳症、脳のアミロイド血管症、クロイツフェルト・ヤコブ病、嚢胞性線維症、またはゴーシェ病が挙げられる。
【0023】
添付の実施例において実証され得たように、免疫賦活剤CpGを、アルツハイマー病の重症な症状、特にアミロイドーシスを示すマウスに投与すると、Aβ斑負荷の改善および動物の行動の改善がもたらされた。したがって、CpG療法は、進行が進んでいる該障害に苦しむ患者の処置に特に好都合であるようである。したがって、本発明の一実施形態において、免疫賦活剤は、臨床段階において該障害の発症後に、好ましくは、脳内のアミロイド斑負荷を特徴とし、かつ記憶障害などのアルツハイマー病の古典的な症状を示す被検体に投与されるように設計される。
【0024】
他方において、理論に拘束されることを意図しないが、該障害の発病の初期段階に存在している被検体の免疫応答により、該障害の克服、その進行の遅滞および/または該疾患の重症な症状の発現の予防が補助され得ると考えられる。したがって、本発明に従って行なわれた実験において、CpG処置後に自己抗体レベルが大きく増大することを示すことができた。したがって、CpGによる早期の治療的介入もまた、例えばアルツハイマー病の予防的処置として非常に有望である。したがって、本発明の別の実施形態において、免疫賦活剤は、非認知症個体の障害、例えばアミロイドーシス、特に脳アミロイドーシスの不顕性段階で投与されるように設計される。
【0025】
本発明によると、また、以下の実験の検討から推測されるように、被検体の自然免疫システムまたは適応免疫システムを誘導するために使用される免疫賦活剤はTOLL様受容体アゴニストである。理論に拘束されることを意図しないが、3種類のTOLL様受容体TLR7、TLR8またはTLR9(Davisら,米国特許第6,406,705号およびTaoら,PNAS USA 104(2007),13750−13755に記載)の少なくとも1種類と拮抗的に相互作用するCpGsまたは安定化免疫調節性RNA(SIMRA)化合物などの自然免疫システムまたは適応免疫システムの賦活剤は、原因療法としてかかる病的タンパク質エピトープもしくは斑構造物に対処するためにそれぞれの抗体の生成を刺激するため(患者においてかかる病的に改変されたタンパク質もしくはタンパク質凝集物もしくは斑の濃度が低下するという結果を伴う)、または抗原選択B細胞を生体外で(ex vivo)活性化するため(該B細胞は、その後、対応するドナーに再移植するるとIgG分泌形質細胞に分化する)の、残存する各B細胞を刺激する潜在能を有する可能性があると考えられる。非メチル化CpGモチーフならびにSIMRAは、一般的な微生物感染またはウイルス感染の認識および該感染に対する防御と関連している自然免疫システムまたは適応免疫システムの天然の強力な活性化因子であると思われる。本発明は、ネオエピトープに対する自家ワクチン療法であるが、かかる前記のネオエピトープを含む化合物を投与しない療法に関するものであるが、好ましい適用においては、かかるネオエピトープに対するmAbと組み合わせた療法に関するものであり、関連する適用においては、抗原選択リンパ球における前記免疫賦活剤の生体外使用に関するものである。
【0026】
TOLL様受容体TLR9受容体と拮抗的に相互作用し得るCpGモチーフは、自然免疫システムまたは適応免疫システムの活性化状態を増強することがわかっており(LanzavecchiaおよびSallusto,Curr.Opin.Immunol.19(2007),268−274)、またSIMRA化合物はTLR−7、−8およびTLR8を刺激する(Taoら,2007(上掲))。しかしながら、かかる活性はいずれも、かかるTOLL様受容体TLR−7、−8またはTLR−9の阻害薬の投与によって好成績で対処され得る紅斑性狼瘡などの自己免疫疾患の場合は、絶対に禁忌である。アルツハイマー病の患者において同定される内因的に存在するβアミロイド斑またはオリゴマー性もしくは凝集型Aβペプチドに対して反応性の抗体により、かかる患者は、防御的自己免疫反応の状態を有すると考えられ得る。天然状態で生じるタンパク質構造物に対する天然状態で生じる抗体が望ましくない効果を有することがあり得、そのため、APP由来のタンパク質およびペプチドが種々の組織で発現され、広範な未知機能を有する。TLR−7またはTLR−9の刺激はいずれも、かかるそれぞれの記憶B細胞が増殖して抗体を産生するように積極的に誘発された場合、マイナスの影響を有し得る。特に、かかるペプチドをワクチンとして適用することによりAβ−ペプチドに対して生成させた抗体は、主として、かかるペプチドの線状エピトープと反応するようである(Leeら,2005 Ann.Neurol.58(2005),430−435)。かかる天然状態で生じる抗体または抗体産生B細胞の活性がそれぞれ増強された場合、天然状態で生じるプロセッシングAPP誘導体(例えば、Aβ)に対する望ましくない自己免疫応答が誘導されることが予測される。この自己免疫現象は、ヒト患者において大きな問題ではないにせよ、免疫システムが若年患者の通常の活性のほんの10〜20%である高齢患者の状態と関係している可能性がある。しかしながら、生理的に生じるAPP誘導体またはAβペプチドの病的凝集の際に構造的ネオエピトープが生じたため、かかる応答は、内因的に生じた病的構造物に対する免疫応答として見られることもあり得、かかる病的構造物の予防的もしくは治療的中和または除去がもたらされる。天然状態で生じる抗体は、天然状態で生じるが病的なタンパク質構造物に対するものである。
【0027】
上記の考慮事項に鑑み、好ましい一実施形態において、本発明は、上記規定の病的ネオエピトープまたはタンパク質凝集物の存在を特徴とする障害に苦しむ被検体の処置のための、少なくとも1つの非メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む少なくとも1種類のオリゴヌクレオチドまたは修飾オリゴヌクレオチドを含む免疫賦活剤の使用に関する。
【0028】
さらに、一部の実施形態において、本発明に従って調製される医薬組成物は、少なくとも1つの前記ネオエピトープに対する少なくとも1種類の結合分子を含むものであるか、または該結合分子と組み合わせて適用されるように設計されたものであり、好ましくは前記結合分子は抗体であり、典型的にはIgG型のもの、優先的にはヒトIgGである。
【0029】
ネオエピトープ/凝集物をもたらすかかる内因性タンパク質は、アルツハイマー病、加齢に伴うアミロイド沈着、軽度の認知機能障害、頭部外傷、ボクサー認知症、慢性外傷性脳症、ピック病、ダウン症候群、脳のアミロイド血管症、混合型認知症、封入体筋炎、緑内障もしくは動脈硬化関連アミロイドーシス、または異常凝集形態の内因性タンパク質、例えば限定されないが、アルツハイマー病、加齢に伴うアミロイド沈着、軽度の認知機能障害、ダウン症候群、脳のアミロイド血管症、オランダ型およびアイスランド型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血におけるβアミロイド、パーキンソン病、アルツハイマー病、レヴィー小体による認知症、多系統萎縮症におけるα−シヌクレイン;クロイツフェルト・ヤコブ病および関連プリオン病におけるプリオンタンパク質、ハンチントン病におけるハンチンチン、タウオパチー、例えば、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、嗜銀顆粒性疾患(AGD)、前頭側頭型認知症(FTD、パーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP17)、ピック病におけるタウもしくは神経細線維維もつれ関連タンパク質;脊髄小脳性運動失調におけるアタキシン、筋萎縮性側索硬化症における銅/亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ、ならびに前頭側頭葉変性症および筋萎縮性側索硬化症におけるTDP−43の沈着を特徴とする神経変性疾患に属するものである。また、別の実施形態において、免疫応答の刺激は、アミロイド関連タンパク質に対するものであり得るか、または以下の前駆体タンパク質SAA(血清アミロイドタンパク質A)、AL(免疫グロブリンのκもしくはl−軽鎖)、AH(g1 Ig−重鎖)、ATTR(トランスサイレチン、血清プレアルブミン)、AApo−A−1(アポリポタンパク質A1)、AApoA2(アポリポタンパク質A2)、AGel(ゲルソリン)、ACys(シスタチンC)、ALys(リゾチーム)、AFib(フィブリノゲン)、βアミロイド(アミロイド前駆体タンパク質)、βアミロイド2M(β2−ミクログロブリン)、APrP(プリオンタンパク質)、ACal(プロカルシトニン)、AIAPP(膵島アミロイドポリペプチド);APro(プロラクチン)、AIns(インスリン);AMed(ラクタドヘリン);Aker(ケラトエピテリン);ALac(ラクトフェリン)、Abri(AbriPP)、ADan(ADanPP);またはAANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)の少なくとも1種類で構成される他の形態のアミロイドーシスに対するものであり得る。かかるヒト抗体は、アミロイドーシスに苦しむ患者の処置のために、非機能性のヒト免疫応答を補うため、または不充分な免疫応答を強化および補完的に補助するためのいずれかで、単独または異なる抗体と組み合わせて適用され得る。
【0030】
本発明のさらなる実施形態において、かかる抗体はまた、少なくともTOLL様9受容体および誘導体(例えば、Kriegら,米国特許出願公開公報第2007/0066554号およびDavisら,米国特許第6,406,705号に記載)のアゴニストとしてのCpGなどの免疫賦活剤と組み合わせて適用され得る。CpG型免疫賦活剤の代わりに、他の免疫賦活剤も、少なくともTOLL様9受容体に対する結合を拮抗的に妨害するである限り同様に適用され得る。
【0031】
非小細胞肺癌(NSCLC)に対する臨床試験では、少なくとも1つの型の自然免疫システムまたは適応免疫システムの免疫賦活剤として、少なくとも1種類の形態のアミロイドーシスに苦しむ高齢患者において、少なくとも1つの非メチル化CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチド、例えば、Coley Pharmaceutical社のProMuneTM(これは、B−Class CpG ODNのCPG7909である)が適用された。したがって、少なくとも1種類の型のアミロイドーシス発生性の線維性形態のタンパク質斑のネオエピトープに対する適応免疫応答を増強するため、またはかかるネオエピトープに対する抗体の機能を補助するための広範な種類のCpG化合物が、Coley Pharmaceuticalsによる特許出願から利用可能であり/報告されており、したがって、同様の結果を伴う択一的なオリゴヌクレオチドが適用され得る一群のものから利用可能であり/報告されている。少なくとも1つの非メチル化CpGモチーフを含む少なくとも1種類の型の前記オリゴヌクレオチドを投与することにより増強される抗体応答の量および質は、TAPIRアッセイによって測定された。記載のように、TAPIRアッセイは、抗体結合のためのかかるネオエピトープ(neo−eptitope)を提供する病原性形態のかかるタンパク質クラスターの存在を利用するものである。
【0032】
結合されたかかるヒト抗体(IgGなど)の染色(例えば、蛍光標識抗ヒトIgG)により、かかる抗体は、それぞれの製剤において可視化され得、CpGモチーフ型オリゴヌクレオチドで処置されていないマウス由来の試料の染色と半定量的に識別され得る。本発明によれば、択一的な免疫賦活剤が、単独または組合せで適用され得るが、かかる活性化合物の少なくとも1種類は、TOLL様受容体サブタイプの少なくとも1種類(TOLL様受容体−9(TLR−9)など)の該受容体アゴニスト群に属するものである。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、使用される医薬組成物は、デポ効果をもたらし得る少なくとも1種類の非核酸アジュバントを含む。典型的には、少なくとも1種類の型の自然免疫システムまたは適応免疫システムの免疫賦活剤は、Kriegら,米国特許出願公開公報第2007/0066554号およびDavisら,米国特許第6,406,705号に記載の少なくとも1種類の成分のアジュバントとともに適用され、ここで、該少なくとも1種類の免疫賦活剤は、デポ効果をもたらす少なくとも1種類の非核酸アジュバントを含む。一実施形態において、アジュバントが、ミョウバン、乳剤系配合物、鉱油、非鉱油、油中水型乳剤、水中油中水型乳剤、Seppic製のISAシリーズMontanideアジュバント、MF−59、およびPROVAXからなる群より選択される。好ましくは、アジュバントは免疫賦活性アジュバントを含む。本発明の手順において特に有効な組合せは、記憶B細胞をIg分泌形質細胞にするCpGモチーフとビタミンAの組合せ(Ertesvagら、Blood 109(2007),3865−3878参照)で、血清濃度1nM〜100nMのものである。
【0034】
好ましくは、CpG型試薬の投与は、デポ効果をもたらすアジュバントとの共投与で行なわれ、かかるアジュバントは、ミョウバン、乳剤系配合物、鉱油、非鉱油、油中水型乳剤、水中油中水型乳剤、Seppic製のISAシリーズMontanideアジュバント;MF−59;またはPROVAXからなる群より選択される。アジュバントとして、本発明者らは、典型的には、サポニン、PCPPポリマー;リポ多糖の誘導体、MPL、MDP、t−MDP、OM−174、およびリーシュマニア属伸長因子からなる群より選択される非核酸アジュバントを投与する。
【0035】
付加的に又は代替的に、デポ効果と免疫システムの非特異的刺激の両方を同時にもたらす薬剤が好ましく使用される。かかる化合物の群は、ISCOMSまたはSB−AS2またはAS2またはSB−AS4または非イオンブロックコポリマーおよびSAFからなる。また、治療的に適用される成分混合物の組成物には、アミロイド形成性ペプチドの群より選択される抗原が含まれることがあり得る。特定の適用において、かかる抗原は、ネオエピトープとしての前記配座結合部位をもたらす予備形成凝集物として提供される。かかる試薬は、記憶B細胞またはそれぞれの形質細胞に既存の追加免疫刺激因子が複製もしくはさらなる成熟のために刺激されること、またはかかるネオエピトープを認識するそれぞれの抗体のクラススイッチのいずれかを補助するようである。したがって、本発明の一部の実施形態において、医薬組成物に、本明細書において上記のいずれかの疾患に対して規定のネオエピトープを有する抗原を含めることが好ましいことがあり得る。
【0036】
本発明のさらなる態様において、かかる免疫賦活剤で処置された患者は、Bernasconiら(2002)または特に国際特許出願公開公報WO2008/081008(その開示内容は引用により本明細書に組み込まれる)に記載のようなB細胞クローニング(それぞれのIgGコード配列の同定およびクローニング、その単離、およびそれぞれの抗体(特に、IgGの種々のサブタイプ−1、2、−3、もしくは−4)の作製のための発現ベクター構築のための使用、診断上および治療上有用な結合分子(特に、ネオエピトープを有する内因性タンパク質の病的バリアントに対する抗体)の検証および作製を含む)によって媒介される、かかるネオエピトープに対する抗体およびそれをコードするcDNAの強力な供給源とみなされ得る。
【0037】
本発明による実施例に言及および記載のように、進行性アミロイドーシスに反作用するのに有効な抗体は、典型的には、生理的にプロセッシングされた存在体としてのモノマータンパク質の前駆体形態と反応するのではなく、斑構造物のネオエピトープと反応することがわかった。国際特許出願公開公報WO2004/095031に記載のTAPIRアッセイにより、健常領域由来の被検物切片において検出可能でない特異的構造物存在体としてのかかる病的ポリマー構造物を選択的に染色することにより、かかる型の両抗体間の選択的な識別が可能となる。かかるネオエピトープは、線維状構造物が単独で、または他の分子体と密に会合して重合すると形成される配座エピトープを優先的に示すようである。
【0038】
特に、新規な観察結果として、Knoblochら,Neurobiol.Aging7月28日号(2006)に記載のそれぞれの脳領域内に重度のβアミロイド線維斑負荷を有するマウスは、CpG処置マウスと非CpG処置マウスを比較すると、作用部位におけるネオエピトープ認識抗体の出現もしくはその有効濃度の増強に明白に媒介された、または該出現もしくは該増強に関連した相当な斑負荷の低減を示す。理論に拘束されることを意図しないが、本発明によると、CpGは、B細胞または記憶B細胞の活性化を補助または媒介しており、アミロイドーシスに関して、B細胞が、主に、かかるポリマー構造物のネオエピトープに対して反応し、非ネオエピトープに対する有意な自己免疫応答をもたらさないようにすることを補助または媒介していると考えられる。しかしながら、TOLL様受容体アゴニストと能動免疫処置アプローチを共投与することは、かかるワクチン療法によって、同じく天然プロセッシングタンパク質の一部である線状エピトープを認識する抗体が生じることがあり得ることがわかっているため(Leeら,2005(上掲))、ヒト患者の治療的処置に対して禁忌となることがあり得る。本発明の新規な治療アプローチの驚くべき知見は、少なくとも1種類の免疫賦活剤によって少なくとも1種類の患者自身のタンパク質に対する抗体応答がもたらされるため、同様に防御的自己免疫疾患群に属しているという特徴を有する例えばアルツハイマー病の処置が好成績なことであり、ここで、かかる患者自身の抗体は、主に、病原性形態の前記タンパク質またはタンパク質複合体上で発現されるネオエピトープに対するものである。
【0039】
かかる治療的に関連した型のB細胞または少なくとも1種類のネオエピトープを認識するB細胞のクローンまたはオリゴクローンのインビボ拡大培養は、前記処置対象患者における治療効果に関して積極的に寄与するだけでなく、患者の血液試料からかかるB細胞をインビトロで選択し、かかるB細胞を一時的に安定化または固定化し、同定されたそれぞれの抗体をキャラクタライズし(好ましくは、TAPIRアッセイ(上記参照)によって)、かかる抗体をコードするcDNAクローンを作製する(かかる工程はすべて、国際特許出願公開公報WO2008/081008(上掲)に詳細に記載のとおりに実施)ための実験の基礎を提供し助長する。
【0040】
したがって、さらなる態様において、本発明は、哺乳動物試料からの上記規定のネオエピトープ特異的結合分子の作製方法であって、該試料を採取する前に、本明細書において前記の医薬組成物を哺乳動物に投与しておく方法に関する。前記方法は、好ましくは、前記病的ネオエピトープの認識による病原性形態の斑または線維性凝集物の検出に基づいたアッセイによって、例えば、TAPIRアッセイまたはその派生型アッセイによって被検物ネオエピトープに対する結合分子の結合を調べること、ならびに任意選択で、そのようにして同定された結合分子を単離することを含む。また、解析対象試料の供給源として使用される哺乳動物は、好ましくは、障害または前記障害の進行を克服したことがある動物である。これは、本発明の知見により、かかる哺乳動物が、それぞれオリゴマー化したタンパク質およびペプチドの蓄積によって媒介される障害の発症、進行または再発から該該哺乳動物を保護する抗体を分泌することができるB細胞と記憶B細胞を有すると予測することが合理的なためである。
【0041】
本発明の特に好ましい実施形態において、前記哺乳動物は、神経変性疾患、特にアルツハイマー病に罹患したことがある哺乳動物である。付加的に又は代替的に、前記哺乳動物は、本発明の治療的使用および方法により処置されたことがある哺乳動物であってもよく、処置されたことがない哺乳動物であってもよい。特に好ましい実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0042】
典型的には、前記試料は体液または細胞試料、例えば、尿、血液、リンパもしくは脳脊髄液またはその細画分を含む。本実施例から明白なように、結合分子は好ましくは抗体であり、したがって、試料は、通常、B細胞もしくは記憶B細胞、またはこれらに由来する細胞を含むもの、または該細胞からなるものである。
【0043】
さらなる実施形態において、本発明の方法は、さらに、
(i) 結合分子、すなわち、ネオエピトープ被検物に結合するが、前記ネオエピトープを有しない対応対照被検物には結合しないか、実質的にあまり結合しない抗体を含むと同定された試料からB細胞または記憶B細胞を精製する工程;
(ii) 前記B細胞または記憶B細胞から前記抗体に対する免疫グロブリン遺伝子レパートリーを得る工程;および
(iii) 前記抗体を発現させるために前記レパートリーを使用する工程
を含み、任意で、工程(ii)が、
(iv) 前記B細胞または記憶B細胞からmRNAを得る工程;
(v) 工程(iv)のmRNAからcDNAを得る工程;および
(vi) プライマー伸長反応を用いて、前記cDNAから、前記抗体の重鎖(HC)およびκ/λ軽鎖(LC)に対応する断片を増幅させる工程
を含む。
【0044】
上記のように、ポリクローナルB細胞活性化因子の存在下でエプスタイン‐バーウイルス(EBV)を使用し、ヒト記憶Bリンパ球を形質転換する工程を含む固定化ヒトB細胞および記憶Bリンパ球のクローンの作製方法は、国際特許出願公開公報WO2004/076677に要約されている。また、この国際特許出願公開公報には、目的の抗体をコードする核酸配列を得るための方法であって、固定化B細胞クローンを調製する工程、およびB細胞クローンから、該目的の抗体をコードする核酸を取得/配列決定する工程、さらに、該核酸の挿入または該の使用によって該目的の抗体を発現し得る発現宿主を作製する工程、該目的の抗体が発現される条件下で発現宿主を培養または継代培養する工程、ならびに任意の工程として該目的の抗体を精製する工程を含む方法が記載されている。該核酸は、制限部位を導入するため、コドン使用頻度を変更するため、および/または転写および/または翻訳調節配列を付加もしくは最適化するために、途中で操作されてもよいことは言うまでもない。このような手法はすべて、当該技術分野の技術水準のものであり、過度の負担なく当業者によって実施され得る。
【0045】
これに関連して、本発明はまた、本明細書に記載の本発明の方法によって得られ得る結合分子、好ましくは、障害関連タンパク質またはペプチドのネオエピトープを選択的に認識することができる結合分子に関する。有利なことに、本発明の結合分子は、非障害関連形態の前記タンパク質を実質的に認識しない。典型的には、結合分子は、抗体またはその抗原結合断片であり、最も好ましくはヒト抗体である。
【0046】
他のイムノアッセイおよび治療的使用の場合と同様、結合分子を、例えば、酵素、放射性同位体、フルオロフォアおよび重金属からなる群より選択される検出可能な標識で検出可能に標識してもよい。あるいはまたさらに、結合分子を薬物に結合させてもよい。
【0047】
さらに、本発明は、本発明の方法に従って同定および取得される結合分子を含む組成物に関する。一実施形態において、該組成物は医薬組成物であり、さらに薬学的に許容され得る担体を含む。好ましくは、該医薬組成物は、アルツハイマー病またはアミロイドーシスの処置用に設計されたものであり、任意で、さらに、有機小分子、抗βアミロイド抗体、およびその組合せからなる群より選択されるアルツハイマー病の処置に有用なさらなる薬剤を含む。
【0048】
本発明によると、少なくとも1つの前記型のアミロイドーシスまたはタンパク質凝集性障害の前記アミロイド斑に対して優先的に特徴的な少なくとも1種類の型のネオエピトープに対するかかるクローニングされた抗体、かかるクローニングされた抗体に由来する物質を含むそれぞれの抗体断片または他の種類もしくは修飾形態の抗体断片は、単独で、または他の生物学的活性化合物との組み合わせで、かかるそれぞれの疾患に苦しむ患者を好成績で処置するために、少なくともTLR9受容体のアゴニストとしてのCpG型化合物とともに共投与され得る。かかる抗体は、エフェクター機能によって、主に、Fc受容体媒介性食作用またはADCCもしくはCDCエフェクター機能(これは、かかるアミロイド斑の形成の抑制または逆転に必要であると思われる)の誘導によって、それぞれのT細胞活性または単球型の細胞(例えば、樹状細胞もしくは小グリア細胞)の活性を直接補助することができる。TLR−9アゴニスト適用の代替として、他のTLR−アゴニスト、例えば、本明細書において先に挙げたDavisらおよびTaoらに記載のTLR−4アゴニストまたはTLR−7もしくはTLR−8アゴニストなども同様に適用され得る。
【0049】
本発明の別の実施形態において、抗原選択末梢血リンパ球を生体外で(ex vivo)刺激することにより免疫応答の刺激を起こし、続いて、この活性化させた自己B細胞を対応するドナーに再移植する。したがって、本発明は、さらに、本明細書において上記の本発明の方法において規定され、該方法において患者から中間生成物として得られ得るB細胞および記憶B細胞を、それぞれ、本明細書において規定の障害の処置のための医薬組成物の調製における自己移植物としての使用のために使用することに関し、前記B細胞は、例えば、白血球搬出法によって富化され、および/またはアミロイド斑のネオエピトープに結合するものに関して分取されるか、またはその分泌産物が、タンパク質もしくはペプチドの斑もしくは線維性構造物の一部としてのネオエピトープに結合するものに関して分取され、場合によっては拡大培養され、後に前記患者に、免疫賦活剤のさらなる適用とともに、または該適用なしで再投与されるように設計される。
したがって、本発明は、概して、中枢神経系内のタンパク質/ペプチドの異常な蓄積お
【0050】
よび/または沈着を特徴とする神経系障害の処置方法であって、それを必要とする被検体に、治療有効量の本明細書における医薬組成物または生体外刺激B細胞を投与することを含む方法に関する。
【0051】
これに関連して、かかる種類の疾患に影響される患者のネオエピトープあるいは天然プロセッシングモノマーに対する未だ検出可能でない免疫応答または既に検出可能な免疫応答を選択的に刺激することにより、上記のような多様な型のアミロイドーシスに罹患した患者を処置するために、免疫賦活剤、特にCpGモチーフ(CpG 1826など)を活性物質として一般的に使用することが想定される(Davisら,J.Immunol.160(1998),870−876;Hartmannら,J.Immunol.164(2000),944−953;Hartmannら,J.Immunol.164(2000),1617−1624;およびDavisら,上掲も参照のこと)。
【0052】
上記のように、択一的な実施形態において、アミロイドーシスに苦しむかかるインビボ動物モデル系またはヒト患者は、B細胞および記憶B細胞を活性化させるためにCpGで処置され得、該細胞をクローニングし、βアミロイド斑構造物との選択的相互作用性について試験し、反応性が陽性のものを自己移植物として再移植して患者に戻す。
【0053】
しかしながら、本発明は、アミロイドーシスまたはプロセッシングされたβアミロイド−モノマーペプチド由来のポリマーによってもたらされるアミロイドーシスに対するものであるだけでなく、ピック病、ダウン症候群、加齢に伴うアミロイド沈着、軽度の認知機能障害、頭部外傷、ボクサー認知症、慢性外傷性脳症、嚢胞性線維症、ゴーシェ病、脳のアミロイド血管症、混合型認知症、封入体筋炎と関連しているアミロイドーシス、緑内障もしくは動脈硬化関連アミロイドーシス、または異常凝集形態の内因性タンパク質、例えば限定されないが、パーキンソン病、アルツハイマー病、レヴィー小体による認知症、多系統萎縮症におけるα−シヌクレイン;クロイツフェルト・ヤコブ病および関連プリオン病におけるプリオンタンパク質、ハンチントン病におけるハンチンチン、タウオパチー、例えば、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、嗜銀顆粒性疾患(AGD)、前頭側頭型認知症(FTD、パーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP17)、アルツハイマー病、ピック疾患におけるタウまたは神経細線維維もつれ関連タンパク質;脊髄小脳性運動失調におけるアタキシン、筋萎縮性側索硬化症における銅/亜鉛スーパーオキシドジスムターゼならびに前頭側頭葉変性症および筋萎縮性側索硬化症におけるTDP−43の沈着を特徴とする神経変性疾患に対するものでもある。また、別の実施形態において、免疫応答の刺激は、アミロイド関連タンパク質(Liaoら,J.Biol.Chem.2004)、または以下の前駆体タンパク質SAA(血清アミロイドタンパク質A)、AL(免疫グロブリンのκもしくはl−軽鎖)、AH(g1 Ig−重鎖)、ATTR(トランスサイレチン、血清プレアルブミン)、AApo−A−1(アポリポタンパク質A1)、AApoA2(アポリポタンパク質A2)、AGel(ゲルソリン)、ACys(シスタチンC)、ALys(リゾチーム)、AFib(フィブリノゲン)、βアミロイド(アミロイド前駆体タンパク質)、βアミロイド2M(β2−ミクログロブリン)、APrP(プリオンタンパク質)、ACal(プロカルシトニン)、AIAPP(膵島アミロイドポリペプチド);APro(プロラクチン)、AIns(インスリン);AMed(ラクタドヘリン);Aker(ケラトエピテリン);ALac(ラクトフェリン)、Abri(AbriPP)、ADan(ADanPP);またはAANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)の少なくとも1種類に由来する線維性タンパク質を構成する他の形態のアミロイドーシスに対するものであり得る。
【0054】
別の実施形態において、本発明は、上記の結合分子、抗体、抗原結合断片、ポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞のいずれか1つ、および任意選択で、検出に適当な手段(免疫診断法または核酸に基づいた診断法において慣用的に使用されている試薬など)を含む診断用組成物に関する。本発明の抗体は、例えば、液相で使用され得るか、または固相担体に結合され得るイムノアッセイにおける使用に適したものである。本発明の抗体が使用され得るイムノアッセイの例は、直接形式または間接形式いずれかの競合的又は非競合的イムノアッセイである。かかるイムノアッセイの例は、ラジオイムノアッセイ(RIA)、サンドイッチ(免疫測定法)、フローサイトメトリーおよびウエスタンブロットアッセイである。本発明の抗原および抗体は、種々の多くの担体に結合させることができ、担体に特異的に結合された細胞を単離するために使用され得る。よく知られた担体の例としては、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、デキストラン、ナイロン、アミロース、天然および改質セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、ならびにマグネタイトが挙げられる。担体の性質は、本発明では可溶性であっても不溶性であってもよい。当業者には、種々の多くの標識および標識方法がわかる。本発明において使用され得る標識の種類の例としては、酵素、放射性同位体、コロイド状金属、蛍光化合物、化学発光化合物、および生物発光化合物(本明細書において上記の実施形態も参照のこと)が挙げられる。
【0055】
さらなる実施形態により、結合分子、特に本発明の抗体はまた、試験対象個体から体液試料(これは、血液試料、リンパ試料または任意の他の体液試料であり得る)を採取し、該体液試料を本発明の抗体と、抗体抗原複合体の形成が可能な条件下で接触させることにより、個体の障害の診断方法において使用され得る。次いで、かかる複合体のレベルが、当該技術分野で知られた方法によって測定される。対照試料中で形成されたものより有意に高いレベルは、試験対象個体における疾患の存在を示す。同様にして、本発明の抗体に結合された特異的抗原を使用してもよい。したがって、本発明は、本発明の抗体を含むインビトロイムノアッセイに関する。
【0056】
本発明はまた、1種類以上の上記の成分、特に、本明細書において上記規定の免疫賦活剤、結合分子、抗体もしくはその結合断片、および任意選択で、ネオエピトープ結合の検出のための試薬が充填された1つ以上の容器、および/または使用説明書を備える、医薬用又は診断用のパックまたはキットを提供する。かかる容器(1つまたは複数)には、医薬品または生物製剤の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形態の通知書が添付されていてもよく、該通知書は、該機関によるヒト投与のための製造、使用または販売の承認を反映する。付加的に又は代替的に、キットは、免疫診断法または核酸に基づいた診断法で慣用的に使用されている試薬、および/または適切な診断用アッセイにおける使用のための使用説明書を備えたものである。本発明の組成物、すなわちキットは、もちろん、上記規定の障害関連タンパク質の存在を伴う障害、特にアミロイドーシスの診断、予防および処置に特に適したものであり、特に、アルツハイマー病(AD)の処置に適用可能なものである。
【0057】
用語「処置」、「処置すること」などは、本明細書において、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを一般的に意味するために用いる。該効果は、疾患またはその症状を完全に、もしくは一部妨げる点では予防的であり得る、および/または疾患および/または疾患に起因する有害効果を一部もしくは完全に治癒させる点では治療的であり得る。用語「処置」は、本明細書で用いる場合、哺乳動物、特にヒトの疾患の任意の処置を包含し、(a)疾患に対して素因を有しているかもしれないが該疾患を有すると未だ診断されていない被検体において、該疾患が生じるのを妨げること;(b)疾患を抑制すること、すなわち、その発病を停止させること;または(c)疾患を軽減すること、すなわち、疾患の後退を引き起こすことが挙げられる。医薬組成物の投与は、種々の様式、例えば限定されないが、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、鼻腔内、非経口によって、またはエアロゾルとして行なわれ得る。
【0058】
さらに、用語「被検体」または「患者」は、病状、障害または疾患の処置を必要とする哺乳動物、好ましくはヒトをいう。
【0059】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野でよく知られた方法に従って製剤化され得る。例えば、University of Sciences in PhiladelphiaによるRemington:The Science and Practice of Pharmacy(2000),ISBN 0−683−306472を参照のこと。好適な医薬用担体の例は当該技術分野でよく知られており、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルジョン(油/水型エマルジョンなど)、種々の型の湿潤剤、滅菌溶液などが挙げられる。かかる担体を含む組成物は、よく知られた慣用的な方法によって製剤化され得る。このような医薬組成物は被検体に、適当な用量で投与され得る。好適な組成物の投与は、種々の様式、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経表面または皮内投与によって行なわれ得る。経鼻スプレー製剤などのエアロゾル製剤には、活性剤の精製された水溶液または他の溶液が、保存剤および等張剤とともに含まれる。かかる製剤は、好ましくは、鼻粘膜に適合性のpHおよび等張性状態に調整される。経直腸または経膣投与のための製剤は、適当な担体を用いた坐剤として提示され得る。
【0060】
さらに、本発明は、本発明の薬物を投与するための現在標準的な(だが、幸い使用頻度が低い)頭蓋の小穿孔手順を含むが、好ましい態様では、本発明の結合分子、特に抗体または抗体系薬物は血液脳関門を通過することができ、これにより静脈内または経口投与が可能である。
【0061】
投薬レジメンは、担当医師および臨床因子によって決定される。医学分野でよく知られているように、任意の一患者に対する投薬量は、多くの要素、例えば、患者の体格、体表面積、年齢、投与される具体的な化合物、性別、投与の期間および経路、一般健康状態、および同時に投与されている他の薬物に依存する。典型的な用量は、例えば、0.1mg/kg体重〜10mg/kg体重の範囲(または、この範囲で発現または発現阻害される核酸の用量)であり得る。しかしながら、特に上述の要素を考慮し、この例示的な範囲より下または上の用量も想定される。一般的に、該医薬組成物の標準的投与としてのレジメンは、1μg〜10mg/kg体重単位の範囲で週に1回または2回であるのがよい。また、該レジメンが連続注入である場合、それぞれ1μg〜10mg単位/kg体重/分の範囲であるのがよい。進行は、定期的評価によってモニタリングされ得る。非経口投与のための調製物としては、滅菌された水性または非水性の液剤、懸濁剤、および乳剤が挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(オリーブ油など)、および注射用有機エステル(オレイン酸エチルなど)である。水性担体としては、水、アルコール系溶液/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液、例えば、生理食塩水および緩衝媒体が挙げられる。非経口用ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、または固定油が挙げられる。静脈内用ビヒクルとしては、流動性の栄養補給物、電解質補給物(リンゲルデキストロース系のものなど)などが挙げられる。また、保存料および他の添加剤(抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤、および不活性ガスなど)を存在させてもよい。さらに、本発明の医薬組成物は、該医薬組成物の意図される用途に応じて、ドパミン薬または精神薬理作用薬などのさらなる薬剤を含むものであってもよい。さらに、該医薬組成物はまた、ワクチンとして製剤化されたものであってもよい。受動免疫処置のための抗Aβ抗体を含むものも本発明の医薬組成物であり得る。
【0062】
また、他の薬剤の共投与または逐次投与が望ましいことがあり得る。治療上有効な用量または量は、症状または病状が改善されるのに充分な活性成分の量をいう。かかる化合物の治療有効性および毒性は、標準的な製薬手順によって細胞培養物または実験動物において、例えば、ED50(集団の50%において治療上有効な用量)およびLD50(集団の50%に対して致死性である用量)で判定され得る。治療効果と毒性効果の用量比は治療指数であり、これは、LD50/ED50の比で表示され得る。好ましくは、治療用薬剤は組成物中に、アルツハイマー病の場合では、通常行動および/または認知特性が測定可能に改善されるのに充分な量で存在させる。
【0063】
これらおよび他の実施形態は、本発明の説明および実施例に開示および包含される。本発明に従って使用される、材料、方法、使用および化合物のいずれかに関するさらなる文献は、公共の図書館およびデータベースから、例えば、電子デバイスを用いて検索され得る。例えば、公共のデータベース「Medline」が利用され得、これは、米国立衛生研究所の米国立バイオテクノロジー情報センターおよび/または米国立医学図書館によって提供されている。さらなるデータベースおよびウェブアドレス(欧州分子生物学研究所(EMBL)の一部門である欧州バイオインフォマティクス研究所(EBI)のものなど)は、当業者に知られており、インターネット検索エンジンを用いて入手することもできる。バイオテクノロジーにおける特許情報の総覧、ならびに遡及調査および現状把握調査に有用な特許情報の関連情報源の調査結果は、Berks,TIBTECH 12(1994),352−364に示されている。
【0064】
上記の開示は、本発明を一般的に記載したものである。本明細書の本文中に、いくつかの文献を挙げている。充分な書誌的記載は、特許請求の範囲の直前の本明細書の最後部を見るとよい。引用したすべての参考文献(例えば、本出願書類中に挙げた参考文献、発行済特許、公開特許出願など、および製造業者の仕様書、使用説明書など)の内容は、引用により明示的に本明細書に組み込まれる。しかしながら、引用した文献はいずれも、まさに本発明に関する先行技術であると自認するものではない。
以下の具体的な実施例を参照することによって、より完全な理解を得ることができよう。本実施例は、本明細書において例示の目的で示したものにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0065】
本明細書において使用されるものなどの慣用的な方法の詳細な説明は、引用した文献をみるとよい。また、“The Merck Manual of Diagnosis and Therapy”第17版, BeersおよびBerkow編(Merck & Co.,Inc.2003)も参照のこと。
【0066】
本発明の実施には、特に記載のない限り、当該技術分野の技能の範囲である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学、の慣用的な手法が使用される。本発明の実施に有用な一般的手法のさらなる詳細については、実施する者が、細胞生物学および組織培養の標準的な教科書および概説を参照するとよい。また、本実施例において引用した参考文献も参照のこと。分子細胞生化学における一般的な方法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版(Sambrookら,Harbor Laboratory Press 2001);Short Protocols in Molecular Biology,第4版(Ausubelら編,John Wiley & Sons 1999);DNA Cloning,第I巻および第II巻(Glover編,1985);Oligonucleotide Synthesis(Gait編,1984);Nucleic Acid Hybridization(HamesおよびHiggins編,1984);Transcription And Translation(HamesおよびHiggins編,1984);Culture Of Animal Cells(FreshneyおよびAlan,Liss,Inc.,1987);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(MillerおよびCalos編);Current Protocols in Molecular Biology and Short Protocols in Molecular Biology,第3版(Ausubelら編);ならびにRecombinant DNA Methodology(Wu編,Academic Press).Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(MillerおよびCalos編,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology,第154巻および第155巻(Wuら編);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(MayerおよびWalker編,Academic Press,London,1987);Handbook Of Experimental Immunology,第I〜IV巻(WeirおよびBlackwell編,1986).Protein Methods(Bollagら,John Wiley & Sons 1996);Non−viral Vectors for Gene Therapy(Wagnerら編,Academic Press 1999);Viral Vectors(Kaplitt & Loewy編,Academic Press 1995);Immunology Methods Manual(Lefkovits編,Academic Press 1997);ならびにCell and Tissue Culture:Laboratory Procedures in Biotechnology(Doyle & Griffiths,John Wiley & Sons 1998)などの標準的な教科書をみるとよい。本開示において言及した遺伝子操作のための試薬、クローニングベクターおよびキットは、BioRad、Stratagene、Invitrogen、Sigma−Aldrich、およびClonTechなどの市販の供給元から入手可能である。
【0067】
動物
APPsweArcトランスジェニックマウスを作出し、既報(Knoblochら,2006)のようにして飼育した。マウスを標準的な収容条件下に維持し、飼料と水は自由に摂取させた。処置群は、年齢(開始時14〜15月齢)、性別および同腹子(遺伝的背景)が釣り合っていた。
【0068】
処置および処置群
3つのAPPsweArcトランスジェニックマウス群と2つの野生型同腹子群を解析した。第1群のAPPsweArcマウスは、滅菌内毒素無含有PBS中で希釈した50μgのCPG 1826(Coley Pharmaceutical Group Inc.)で、100μl/マウスの一定注射容量で週2回i.p.処置した。第2群のAPPsweArcマウスは、10μgのCPG 1826で週1回i.p.処置した。第3群のAPPsweArcマウスは、100μlのPBSを週2回i.p.注射した。2つの野生型マウス群は、50μgのCPG 1826で週2回i.p.処置するか、または未処置のままのいずれかとした。動物を、病気および/または苦痛の徴候がないかどうかについて定期的に観察した。CPG 1826またはPBSは合計20週間投与した(14〜15月齢で開始)。
【0069】
第1群:APPsweArcマウス;50μgのCPG 1826を週2回i.p.(n=9)
第2群:APPsweArcマウス;10μgのCPG 1826を週1回i.p.(n=8)
第3群:APPsweArcマウス;PBSを週2回i.p.(n=10)
第4群:野生型同腹子;50μgのCPG 1826を週2回i.p.(n=8)
第5群:野生型同腹子、未処置(n=6)
【0070】
Y字型迷路行動試験
実験の少なくとも1週間前に、マウスを明期逆転サイクルに適合させた。マウスをY字型迷路(アーム長40cm)内に入れ、5分間探索させた。行動をカメラとEtho Visionソフトウェアで記録し、アームへの進入を手作業で記録した。交替行動パーセントを、起こり得る交替行動(総アーム進入回数−2と規定)に対する実際の交替行動の比×100%として計算した。
【0071】
放射状アーム水迷路行動試験
Y字型迷路の1週間後、マウスをAlamedら(2006)による放射状アーム水迷路(RAWM)内で試験した。RAWMは、連続4日間行なった。第1日目は、マウスに最初の12回の試行を提示し、プラットホームは、可視および不可視を交互にした。第2日目と第3日目は、マウスを不可視プラットホームのみで訓練した。第1日目〜第3日目において、プラットホームは同じ位置に維持した。第4日目は、プラットホームの位置を変更し、マウスは、新たな位置のプラットホームを探し出さなければならなかった。各試行は最大60秒間持続し、各試行間の間隔はほぼ10分間とした。各マウスに対して1日あたり合計15回の試行を行なった。
【0072】
Aβ40とAβ42の脳内レベルの解析
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)脳ホモジネート用に、凍結脳半球(脳幹、小脳および視葉を除く)を、加圧型ホモジナイザーを用い、プロテアーゼ阻害薬カクテル(Roche Applied Science,インディアナポリス,IN)を含む5容量のTBS中でホモジネートした。試料を175,000gで30分間、4℃で遠心分離した。上清み(PBS可溶性ホモジネート)を収集し、−80℃で保存した。ペレットを等量のPBS−T(TBS/1%triton X−100+プロテアーゼ阻害薬カクテル)バッファー中に再懸濁させ、4℃の水浴内で5分間超音波処理し、ホモジネートし、175,000gで30分間、4℃で遠心分離した。膜結合Aβを含む上清み(PBS−T可溶性ホモジネート)を回収し、−80℃で保存した。ペレットを3回目に(a third time)、既報(Johnson−Woodら,1997)のようにして、氷冷グアニジンバッファー(5Mグアニジン−HCl/50mM Tris,pH8.0)を用いて抽出した(本明細書においてPBS不溶性またはグアニジンホモジネートという)。PBS、PBS−Tおよびグアニジン脳ホモジネート中のAβl−40(Aβ40)およびAβ1−42(AB42)レベルを測定した。Aβ40とAβ42の濃度は、βAMYLOID[1−40]およびβAMYLOID[1−42]ELISAキット(Invitrogen,USA)を製造業者の指示書に従って使用し、ELISAにより調べた。
【0073】
組織学的検査および斑負荷解析
組織学的検査に選択したマウスを麻酔し(10ml/g体重のケタミン/キシラジン(xylaxine))、PBSを経心的に灌流した。脳半球の一方は、さらなる生化学的解析のためにドライアイス上で即座に凍結させた。他方の半球は、4%パラホルムアルデヒド中に一晩固定させた。滑走式ミクロトームを用いて30μmの浮遊冠状切片を調製した。緻密斑に対するコンゴーレッド染色をWilcockら(2006)に従って行なった。緻密斑およびびまん型斑の両方に対する抗体染色は、α−Aβウサギポリクローナル抗体(Zymed,USA)を用いて行なった。コンゴーレッドおよびAβ染色の定量は、ImageProPlusソフトウェア(MediaCybernetics,ドイツ)を用いて行なった。定量には、動物1匹あたり8つの切片のうち連続する2つの切片を使用した。
【0074】
抗Aβ自己抗体ELISA
96ウェルプレート(Corning)の半分の領域を、コーティングバッファー(炭酸バッファー、pH9.6)中にて、1μg/mlの線維性Aβ42またはAβ40で一晩コートした。マウス血漿の1:20または1:100希釈液を1.5時間インキュベートした後、標準的なHRP結合抗マウス二次抗体(Jackson Laboratories,USA)を用いて検出した。
【0075】
実施例1:APPトランスジェニックマウスにおける斑負荷の低減と同時の抗βアミロイド斑抗体力価の上昇の誘導
本発明の基礎をなす仮説は、CpGモチーフまたはSIMRA化合物を、ヒトAβペプチドに対する自己抗体のベースラインレベルが低い免疫応答性アミロイド前駆体タンパク質トランスジェニックマウスに適用することにより確認される。本発明の好ましい実施形態において、トランスジェニック動物は、北極型変異(G693G)とスウェーデン型変異(KM670/671NL)からなるアミロイド前駆体タンパク質(APP)をコードし、プリオンタンパク質プロモーター(PrP)の制御下にある導入遺伝子を有する、arcAβマウス(Knoblochら,Neurobiol.Aging 7月28日号(2006)と称されるマウスである。高齢arcAβマウスを、0.2〜20mg/kg体重の完全ホスホロチオエート修飾型CpG−オリゴデオキシリボヌクレオチド1826(これは、ヒトTLR−9アゴニストCpG 7909と同等であると想定される。ProMune商標(Coley Pharmaceuticals)と称される)、または対照の非刺激性オリゴデオキシリボヌクレオチド1982(ヌクレオチド配列については、Milasら,Cancer Research 64(2004),5074−5077および上記の参考文献を参照)の単回もしくは反復皮下注射により処置する。血清試料を抗βアミロイド抗体について、ELISAおよびTAPIRアッセイによって解析する。上記参照。抗体力価を血清の連続希釈法によって調べる。βアミロイド特異的抗体の血清力価の増大は、CpG−オリゴデオキシリボヌクレオチド1826処置した動物と、非刺激性オリゴデオキシリボヌクレオチド1982で処置した対照群との比較において検出され得る。処置開始の3〜6ヶ月後、マウスを麻酔し(10μl/g体重ケタミン/キシラジン)、PBSを経心的に灌流する。脳を4%パラホルムアルデヒド中に固定し、パラフィン中に包埋する。Leica RM 2135ミクロトーム(Bannockburn,イリノイ州)を用いて5μmの矢状切片に切断する。免疫組織化学検査のため、この薄切片を脱パラフィン処理し、4%BSA、5%ヤギ血清および5%ウマ血清含有PBS中にて1時間、室温でブロックする。脳内βアミロイド斑の検出のため、1:500希釈度の6E10抗体(Signet)を4℃一晩インキュベートした後、フルオロフォア結合二次抗体とともに室温で2時間インキュベーションする。脳1つあたり約75μm離れた3つの切片を解析に使用する。1つの切片あたり2つの画像を、倒立顕微鏡(Leica DMIRE2)を用いて10倍の倍率で撮影する。皮質内βアミロイド斑負荷の定量的解析は、ImageJソフトウェア(http://rsb.info.nih.gov/ij/)を用いて行なう。
【0076】
実施例2:CpG処置により、アルツハイマー病のトランスジェニックマウスモデルの行動が改善される
Y字型迷路では、解析した両方の野生型同腹子群と比べ、PBS処置トランスジェニックAPPsweArcマウスでアーム進入回数の減少が観察された(図1a)。10μgまたは50μgいずれかのCpGでの処置によりアーム進入回数の増加がもたらされ、これは探索活動レベルの上昇を示す。同様に、交替行動パーセンテージは、両方の野生型群と比べてPBS処置APPsweArcマウスにおいて低下し、これは作業記憶の障害を示す(図1b)。対照的に、いずれか用量のCpGで処置したAPPsweArcマウスは野生型マウスと同様の成績であり、これは、CpG処置により認知機能が改善されたことを示す。
【0077】
RAWM実験において、プラットホームに到達するまでの平均時間とエラー数を、第4日目の3〜5ブロックで解析した。PBS処置APPsweArcマウスは、両方の野生型群と比べて、それぞれ時間(図2a)とエラー率(図2b)の増大を示す。10μgまたは50μgいずれかのCpGでの処置は、プラットホームの位置を見つけるのに要する時間ならびにエラー頻度における用量依存的改善傾向と関連している。これは、CpG処置により、アルツハイマー病のAPPsweArcトランスジェニックマウスモデルにおいて学習成績が改善され得ることを示す。
【0078】
実施例3:CpG処置により、総脳内Aβ斑負荷およびコンゴ好染緻密アミロイド沈着物が低減される
ポリクローナル抗Aβ抗体を用いた総脳内Aβの免疫組織化学的検査により、PBS処置APPsweArcトランスジェニックマウスの皮質と海馬(図3a)において広範なAβ斑沈着が示された。10μgまたは50μgいずれかのCpGでの処置は、総Aβ斑負荷の用量依存的低減の明白な傾向と関連していた。同様の低減がコンゴ好染緻密アミロイド沈着物で観察された(コンゴーレッド染色により示された)。これは、CpGデオキシ(desoxy)ヌクレオチドでの慢性処置によりアミロイド斑病変が改善され得ることを示す。
【0079】
実施例4:CpG処置により脳内の可溶性および不溶性のAβが低減される
可溶性および不溶性のAβ40とAβ42の脳内レベルに対するCpG処置の効果を評価するため、APPsweArcマウスの脳をPBS、PBS/Triton X−100およびグアニジン中で連続的に抽出し、各画分中のAβレベルをサンドイッチELISAによって解析した。CpGで慢性処置すると、PBS画分(図4a、b)およびPBS/Triton X−100画分(図4c)において、可溶性のAβ40とAβ42の脳レベルの中程度の低減が観察された。不溶性のAβ40とAβ42の大脳内レベル(グアニジン抽出によって測定)は、PBS処置トランスジェニック動物と比べ、両方のCpG処置群において最大50%大きく低下した(図5)。ばらつきが大きく、群サイズが小さかったため、観察された変化は有意性に達しなかった。このデータは、Aβ斑負荷に対して観察された効果と整合し、CpG処置により、トランスジェニックアルツハイマー病モデルマウスにおいてAβの病的脳内蓄積/沈着が改善され得ることを示す。
【0080】
実施例4:CpG処置により線維性Aβに対する血漿抗体が増強される
βアミロイド線維に対する血漿自己抗体の力価を、末端部採取血の血漿のELISA解析によって測定した。βアミロイド線維に対する循環抗体の大幅な増大が、50μgのCpG処置群において検出され、これは、βアミロイド自己抗体レベルの上昇が誘導され、処置パラダイムの終了時に、なお検出可能であったことを示す。異なる群間で、総IgGおよびIgMレベル間に差は検出されなかった。CpG処置では、さらに、Aβ40とAβ42の血漿レベルが上昇し、脳から末梢区画へのAβのシフトを示す。
【0081】
まとめ
本発明によると、驚くべきことに、APPトランスジェニックマウスは、CpG−オリゴデオキシリボヌクレオチドでの処置後、βアミロイド斑に対する抗体の有意に高い力価および有意に低い脳内βアミロイド斑負荷を示すが、対照のCpG無含有オリゴヌクレオチドまたはPBS処置では示さないことがわかり、本発明の基礎として示され得る。本発明によると、理論に拘束されることを意図しないが、好ましくはβアミロイドの非ネオエピトープと反応性である既存の抗体は、寛容性の発現によって好成績で抑制されるが、βアミロイド斑内に存在するネオエピトープに対するB細胞は刺激された状態となり、したがって、望ましくない型の自己免疫疾患は実質的に誘導されないと考えられる。要約すると、アミロイドーシスと関連している病状、例えば、アルツハイマー病ならびに異常タンパク質構造物の蓄積およびペプチド凝集によって引き起こされる他の疾患および障害、特に神経変性疾患を処置するための新規なアプローチが確立された。
【0082】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
病的タンパク質凝集物またはネオエピトープの存在を特徴とする障害に罹患した被検体の診断、予防または処置のための自然または適応免疫システムの免疫賦活剤。
【請求項2】
任意選択で薬学的に許容され得る担体とともに医薬組成物として製剤化される、請求項1に記載の免疫賦活剤。
【請求項3】
前記障害が、アミロイドーシス発生性の線維性形態または斑様形態のタンパク質/タンパク質凝集物、タンパク質/ペプチド凝集物またはペプチド/ペプチド凝集物の少なくとも1種類の型の病的タンパク質凝集物またはネオエピトープの存在を特徴とするものである、請求項1または2に記載の免疫賦活剤。
【請求項4】
前記医薬組成物が、前記病的タンパク質凝集物またはネオエピトープを含む抗原を含まない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の免疫賦活剤。
【請求項5】
前記タンパク質凝集物またはネオエピトープが、Aβおよびβアミロイド関連タンパク質、α−シヌクレイン、ハンチンチン、タウもしくは神経細線維維もつれ関連タンパク質、TDP−43、プリオンタンパク質、アタキシン、銅/亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ、SAA(血清アミロイドタンパク質A)、AL(免疫グロブリンのκもしくはl−軽鎖)、AH(g1 Ig−重鎖)、ATTR(トランスサイレチン、血清プレアルブミン)、AApo−A−1(アポリポタンパク質A1)、AApoA2(アポリポタンパク質A2)、AGel(ゲルソリン)、ACys(シスタチンC)、ALys(リゾチーム)、AFib(フィブリノゲン)、βアミロイド(アミロイド前駆体タンパク質)、βアミロイド2M(β2−ミクログロブリン)、APrP(プリオンタンパク質)、ACal(プロカルシトニン)、AIAPP(膵島アミロイドポリペプチド);APro(プロラクチン)、AIns(インスリン);AMed(ラクタドヘリン);Aker(ケラトエピテリン);ALac(ラクトフェリン)、Abri(AbriPP)、ADan(ADanPP);またはAANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)からなる群より選択されるペプチドまたはタンパク質に含まれているか、または該ペプチドまたはタンパク質と会合している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の免疫賦活剤。
【請求項6】
前記病的タンパク質凝集物またはネオエピトープが、オリゴマー化もしくは線維形成されると形成される配座エピトープ、または少なくとも1種類の異なるペプチドもしくは分子性物質とヘテロマー複合体の状態で会合している線維形成ペプチドの1つによって形成されるエピトープを含むもの、または該エピトープからなるものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の免疫賦活剤。
【請求項7】
前記障害が、アルツハイマー病、脳のβアミロイドーシス、軽度の認知機能障害、ダウン症候群、脳のアミロイド血管症、混合型認知症、頭部外傷、ボクサー認知症、慢性外傷性脳症、封入体筋炎、緑内障、動脈硬化、パーキンソン病、ハンチントン病、タウオパチー、例えば、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭葉変性症、嗜銀顆粒性疾患(AGD)、前頭側頭型認知症(FTD、パーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP17)、前頭側頭葉変性症、ゴーシェ病、ピック病、オランダ型およびアイスランド型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、レヴィー小体による認知症、多系統萎縮症;クロイツフェルト・ヤコブ病および関連プリオン病、脊髄小脳性運動失調、筋萎縮性側索硬化症、糖尿病、リウマチ性炎症、英国型/デンマーク型認知症、軽鎖型アミロイドーシス、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイドポリニューロパチー、伝染性海綿状脳症、アミロイド心臓障害ならびに腎アミロイドーシスからなる群より選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の免疫賦活剤。
【請求項8】
前記障害の不顕性段階で投与されるように設計される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の免疫賦活剤。
【請求項9】
処置対象の被検体が、脳内のアミロイド斑負荷を特徴とし、記憶障害などのアルツハイマー病の古典的な症状を示す、請求項1〜7のいずれか1項に記載の免疫賦活剤。
【請求項10】
TOLL様受容体アゴニストである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の免疫賦活剤。
【請求項11】
前記TOLL様受容体が、TOLL様7、TOLL様8およびTOLL様9受容体からなる群のうちの少なくとも1種類に属している、請求項10に記載の免疫賦活剤。
【請求項12】
オリゴヌクレオチド、または少なくとも1つの非メチル化CpGジヌクレオチドモチーフもしくは安定化免疫調節性RNA(SIMRA)を含む修飾オリゴヌクレオチドからなる群より選択される核酸系化合物の少なくとも1種類を含む、または該核酸系化合物からなる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の免疫賦活剤。
【請求項13】
医薬組成物が前記少なくとも1種類の病的タンパク質凝集物またはネオエピトープに対する少なくとも1種類の結合分子を含むものであるか、または該結合分子と組み合わせて適用されるように設計されたものである、請求項2〜12のいずれか1項に記載の免疫賦活剤。
【請求項14】
前記結合分子が抗体である、請求項13に記載の免疫賦活剤。
【請求項15】
前記結合分子がIgGである、請求項13または14に記載の免疫賦活剤。
【請求項16】
ヒトIgGである、請求項15に記載の免疫賦活剤。
【請求項17】
前記医薬組成物が、デポ効果をもたらし得る少なくとも1種類の非核酸アジュバントを含む、請求項2〜16のいずれか1項に記載の免疫賦活剤。
【請求項18】
アジュバントが、ミョウバン、乳剤系配合物、鉱油、非鉱油、油中水型乳剤、水中油中水型乳剤、Seppic製のISAシリーズMontanideアジュバント、MF−59、およびPROVAXからなる群より選択される、請求項17に記載の免疫賦活剤。
【請求項19】
アジュバントが免疫賦活性アジュバントを含む、請求項17または18に記載の免疫賦活剤。
【請求項20】
アジュバントがビタミンAを含む、請求項17〜19のいずれか1項に記載の免疫賦活剤。
【請求項21】
アジュバントが、サポニン、PCPPポリマー、リポ多糖の誘導体、MPL、MDP、t−MDP、OM−174、およびリーシュマニア属伸長因子、および酢酸グラチラマーからなる群より選択される化合物を含む、請求項17〜21のいずれか1項に記載の免疫賦活剤。
【請求項22】
デポ効果をもたらし、免疫システムを刺激するアジュバントが、ISCOMS、SB−AS2、AS2、SB−AS4、非イオンブロックコポリマー、およびSAFからなる群より選択される、請求項17〜21のいずれか1項に記載の免疫賦活剤。
【請求項23】
前記医薬組成物が、請求項1〜7のいずれか1項に記載のネオエピトープを有する抗原を含む、請求項17〜22のいずれか1項に記載の免疫賦活剤。
【請求項24】
哺乳動物試料からの請求項13〜16のいずれか1項に記載の病的タンパク質凝集物またはネオエピトープ特異的結合分子の作製方法であって、該試料を採取する前に、請求項1〜23のいずれか1項に記載の免疫賦活剤が該哺乳動物に投与される、方法。
【請求項25】
前記病的タンパク質凝集物またはネオエピトープの認識による病原性形態の斑または線維性凝集物の検出に基づく、TAPIRアッセイまたはその派生型アッセイなどのアッセイによって被検物ネオエピトープに対する結合分子の結合を調べること、ならびに任意選択で、そのようにして同定された結合分子を単離することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記哺乳動物が障害または前記障害の進行を克服したことがある動物である、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記哺乳動物が、神経変性疾患、特にアルツハイマー病に苦しんだことがある動物である、請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記哺乳動物が、請求項1〜23のいずれか1項に記載のようにして処置されたことがある動物である、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記試料が体液または細胞試料を含む、請求項24〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記体液が、尿、血液、リンパもしくは脳脊髄液またはその細画分である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記結合分子が抗体である、請求項24〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記試料が、B細胞または記憶B細胞を含むか、または該細胞由来のものである、請求項24〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記哺乳動物がヒトである、請求項24〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
さらに、
(i) 結合分子、すなわち、病的タンパク質凝集物またはネオエピトープ被検物に結合するが、前記病的タンパク質凝集物またはネオエピトープを有しない対応対照被検物には結合しない抗体、を含むと同定された試料からB細胞または記憶B細胞を精製する工程;
(ii) 前記B細胞または記憶B細胞から前記抗体に対する免疫グロブリン遺伝子レパートリーを得る工程;および
(iii) 前記抗体を発現させるために前記レパートリーを使用する工程
を含む、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
工程(ii)が、
(iv) 前記B細胞または記憶B細胞からmRNAを得る工程;
(v) 工程(iv)のmRNAからcDNAを得る工程;および
(vi) プライマー伸長反応を用いて、前記cDNAから、前記抗体の重鎖(HC)およびκ軽鎖(LC)に対応する断片を増幅させる工程
を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項24〜35のいずれか1項に記載の方法によって得られ得る結合分子であって、障害関連タンパク質またはペプチドの病的タンパク質凝集物またはネオエピトープを選択的に認識する結合分子。
【請求項37】
非障害関連形態の前記タンパク質を実質的に認識しない、請求項36に記載の結合分子。
【請求項38】
抗体またはその抗原結合断片である、請求項36または37に記載の結合分子。
【請求項39】
ヒト抗体である、請求項38に記載の抗体。
【請求項40】
検出可能に標識された、請求項36〜39のいずれか1項に記載の結合分子。
【請求項41】
検出可能な標識が、酵素、放射性同位体、フルオロフォアおよび重金属からなる群より選択される、請求項40に記載の結合分子。
【請求項42】
薬物に結合させた、請求項36〜39のいずれか1項に記載の結合分子。
【請求項43】
請求項36〜42のいずれか1項に記載の結合分子を含む組成物。
【請求項44】
医薬組成物であり、さらに薬学的に許容され得る担体を含む、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
さらに、有機小分子、抗βアミロイド抗体、およびその組合せからなる群より選択される、アルツハイマー病の処置に有用なさらなる薬剤を含む、請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項46】
診断用組成物であり、さらに、免疫診断法または核酸に基づいた診断法において慣用的に使用されている試薬を含む、請求項43に記載の組成物。
【請求項47】
請求項32〜34のいずれか1項に記載の方法において規定され、該方法において患者から中間生成物として得られる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の障害の処置のための自己移植物としてのB細胞または記憶B細胞であって、前記B細胞が、アミロイド斑の病的タンパク質凝集物もしくはネオエピトープに結合するものに関して分取されるか、またはその分泌産物が、タンパク質もしくはペプチドの斑もしくは線維性構造物の一部としての病的タンパク質凝集物またはネオエピトープに結合するものに関して分取され、優先的に拡大培養され、後に前記患者に、免疫賦活剤の適用とともに、または該適用なしで再投与されるように設計されるB細胞または記憶B細胞。
【請求項48】
中枢神経系内のタンパク質/ペプチドの異常な蓄積および/または沈着を特徴とする神経系障害の処置方法であって、それを必要とする被検体に、治療有効量の請求項1〜23のいずれか1項に記載の免疫賦活剤または請求項44もしくは45に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項49】
投与が静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、鼻腔内、非経口で、またはエアロゾルとしてなされる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の免疫賦活剤、および任意選択で、病的タンパク質凝集物またはネオエピトープの結合の検出のための試薬および/または使用説明書を備える、請求項24〜35のいずれか1項に記載の方法における使用のためのキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−536907(P2010−536907A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522256(P2010−522256)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007127
【国際公開番号】WO2009/027105
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(507370666)
【氏名又は名称原語表記】Neurimmune Therapeutics AG
【Fターム(参考)】