説明

患者を含む対象に対する可聴検査と超音波検査を組み合わせるための方法及び装置

【課題】患者を含む対象に対する可聴検査と超音波検査を組み合わせるための方法及び装置を提供する。
【解決手段】検知エリア内部の可聴音を受け取るように構成された可聴音センサ(204)と、同じ検知エリアにおいて超音波信号を放出しかつ該超音波信号の反射を受け取るように構成されたマルチ素子超音波トランスジューサ(106)と、を含む収集構成要素(52)を提供する。可聴音センサ(204)とマルチ素子超音波トランスジューサ(106)は同時に動作可能であるように構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般的には、生きている患者を含む対象に対する可聴及び超音波検査に関する。
【背景技術】
【0002】
聴診は、一般開業医が心臓や肺の疾患を診断するためによく使用する方法の1つである。聴診には従来では電子式やディジタル式の聴診器が必要である。従来の音響式聴診器はそれ自体が耳の中に挿入されたダクトと結合させた気体キャビティ(例えば、ヘルムホルツ共鳴器)を用いる。周知の電子聴診器はマイクロフォンを使用して超音波信号を受動的に捕捉し、次いで電子増幅器及びフィルタを用いてこの信号を電子的に増強している。ディジタル式聴診器は、音をディジタル的に保存しこの音を解析のためにコンピュータに転送する機能を備えた電子聴診器である。
【0003】
さらに最近では、聴診からの幾つかの知見に対する確定または拒絶のために専門家によって超音波エコーが使用されている。聴診/エコーの同時実施によってある種の診断検査に対する価値が増大することが分かっている。
【0004】
可搬式超音波装置は周知であり、より大型の超音波スキャナと概ね同じ方式で使用される。しかし人の掌の中に納まるような超音波撮像デバイスは目下開発段階である。こうした掌サイズデバイスは理学的検査中に聴診を補完することが可能な視覚的「聴診器」となる可能性を有している。(例えば、Xie T、 Chamoun AJ、 McCulloch M、 Tsiouris N、 Birnbaum Y、 Ahmad M.による「Rapid screening of cardiac patients with a miniaturized hand−held ultrasound imager−−comparisons with physical examination and conventional two−dimensional echocardiography」(Clin Cardiol.2004 Apr;27/4:241〜5)、Duvall WL、 Croft LB、 Goldman MEによる「Can hand−carried ultrasound devices be extended for use by the noncardiology medical community?」(Echocardiography. 2003 Jul;20/5:471〜6)、並びにKotler MN、 Segal BL、 Parry WRによる「Echocardiographic and phonocardiographic correlation of heart sounds and murmurs」(Cardiovasc Clin.1978;9/2:39〜57)を参照されたい。)しかし目下知られている掌サイズデバイスでは依然として、エコーと聴診検査の同時実施に少なくとも2人の要員、あるいは少なくとも1人の例外的に熟練したユーザが必要である。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0225476号
【非特許文献1】Xie T、 Chamoun AJ、 McCulloch M、 Tsiouris N、 Birnbaum Y、 Ahmad M.による「Rapid screening of cardiac patients with a miniaturized hand−held ultrasound imager−−comparisons with physical examination and conventional two−dimensional echocardiography」(Clin Cardiol.2004 Apr;27/4:241〜5)
【非特許文献2】Duvall WL、 Croft LB、 Goldman MEによる「Can hand−carried ultrasound devices be extended for use by the noncardiology medical community?」(Echocardiography. 2003 Jul;20/5:471〜6)
【非特許文献3】Kotler MN、 Segal BL、 Parry WRによる「Echocardiographic and phonocardiographic correlation of heart sounds and murmurs」(Cardiovasc Clin.1978;9/2:39〜57)
【非特許文献4】R. Salerniらによる「Noninvasive graphic evaluation: phonocardiography and echocardiography」(Cardiovasc Clin. 1986;16/2:173〜210)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
聴診とエコーの同時実施には、聴診器とエコー装置の形態か、あるいは1つの超音波スキャナに2つの別々の探触子(例えば、別々の超音波探触子とホノン探触子)とした形態のいずれかによる2つの別々のデバイスが必要である。
【0006】
さらに、視覚的超音波聴診器は心臓疾患の発見やその他の診断用途において通常の聴診器より優れているが、視覚的超音波聴診器は超音波信号が肺や腸管などの気体充満性臓器を通過しないために通常の聴診器に完全に取って代わることができない。したがって例えば、医師がハンドへルド型スキャナを用いて回診をしているときに、依然として音響式聴診器も携えている必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、検知エリア内部の可聴音を受け取るように構成された可聴音センサと、同じ検知エリアにおいて超音波信号を放出しかつ該超音波信号の反射を受け取るように構成されたマルチ素子超音波トランスジューサと、を含む収集構成要素を提供する。
【0008】
別の実施形態では、上述のような収集構成要素に加えて、超音波送信器、超音波受信器、プロセッサ及びディスプレイを含んだ超音波撮像装置を含む検査装置を提供する。この超音波撮像装置は、受け取った反射超音波信号に従って画像を表示するように構成されている。本検査装置はさらに、受け取った可聴音に従って可聴音を生成するように構成された可聴音受信器を含む。
【0009】
さらに別の実施形態では、上述のような検査装置を用いて聴診を実施するための方法を提供する。本方法は、患者のある検知エリアにおいて収集構成要素を用いて患者の臓器に対する聴診を実施する一方、同時に患者の同じ検知エリアにおいて超音波エコーを実施する工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
上述した要約、並びに本発明のある種の実施形態に関する以下の詳細な説明は、添付の図面と共に読むことによってさらに十分な理解が得られよう。これらの図面が様々な実施形態の機能ブロックからなる図を表している場合も、必ずしもこれらの機能ブロックがハードウェア回路間で分割されることを意味するものではない。したがって例えば、1つまたは複数の機能ブロック(例えば、プロセッサやメモリ)を単一のハードウェア(例えば、汎用の信号プロセッサ、ランダムアクセスメモリのブロック、ハードディスク、その他)の形で実現させることがある。同様にそのプログラムは、スタンドアロンのプログラムとすること、オペレーティングシステム内のサブルーチンとして組み込まれること、インストールしたソフトウェアパッケージの形で機能させること、その他とすることができる。こうした様々な実施形態は図面に示した配置や手段に限定されるものではないことを理解すべきである。
【0011】
本明細書で使用する場合、単数形で「a」や「an」の語を前に付けて記載した要素や工程は、これに関する複数の要素や工程も排除していない(こうした排除を明示的に記載している場合を除く)と理解すべきである。さらに、本発明の「一実施形態」に対する言及は、記載した特徴も組み込んでいる追加的な実施形態の存在を排除すると理解されるように意図したものではない。さらに特に明示的に否定する記述をしない限り、ある具体的な性状を有する1つまたは複数の構成要素を「備える(comprising)」または「有する(having)」実施形態は、こうした構成要素で当該性状を有しない追加的な構成要素も含むことがある。
【0012】
本発明の実施形態は音波と超音波のセンサを1つのデバイスに一体化しており、これにより医師は例えば回診を実施する際に聴診器を別に持ち運ぶ必要がなくなる。さらに本発明の実施形態は聴診とエコーの同時実施を可能にしており、この際医師は特別な熟練者であることを要することがなくかつ介助者の手助けを得る必要がない。本発明の実施形態は、超音波画像を記録する機能、並びに医師による身体からの音の聴取及び/または視覚化を可能にする機能(別々と同時のいずれでもよいがすべて単一の検知エリアからのもの)を有する。
【0013】
本発明の様々な実施形態は図1に示すような検査装置50を提供する。検査装置50は任意のタイプのシステム(例えば、超音波撮像システム、X線撮像システム、コンピュータ断層(CT)撮像システム、単一光子放出コンピュータ断層(SPECT)システム、陽電子放出断層(PET)撮像システム、核医学撮像システム、磁気共鳴撮像(MRI)システム、これらの組み合わせ(例えば、マルチモダリティ撮像システム)(ただし、これらに限らない)など様々なタイプの検査装置)とすることができる。しかしこうした様々な実施形態は医用撮像システムすなわち人を対象とした撮像のための撮像システムに限定するものではなく、人間以外の対象の撮像のためや非破壊撮像または試験、セキュリティ撮像(例えば、空港のセキュリティ・スクリーニング)、その他の実行のための非医学用の検査装置も含むことがある。
【0014】
検査装置50は一般に、画像データ(例えば、超音波画像データ)と、本発明の幾つかの実施形態では可聴音と、を収集するように構成された収集構成要素52を含む。収集構成要素52は例えば、探触子、スキャナ、あるいは被検物や関心対象ボリュームを走査するための別の同様のデバイスとすることがある。収集構成要素52は画像処理構成要素54に接続されている。画像処理構成要素54は、本明細書でより詳細に記載しているように、収集した画像データの処理、並びに表示画面62上への表示のための処理済み画像データに対する構成及び/またはフォーマット設定が可能な任意のタイプの画像プロセッサである。表示画面62は、画像、グラフィックス、テキスト、その他の表示が可能な任意のタイプの画面とすることがある。携行式やポケットサイズ検査装置50の大部分の実施形態では、表示画面62として液晶ディスプレイ(LCD)が設けられているが、幾つかの実施形態では表示画面62を陰極線管(CRT)画面やプラズマ画面、あるいは別のタイプのディスプレイとすることがある。
【0015】
プロセッサ64(例えば、コンピュータ)やその他の処理ユニットによって、検査装置50内の様々な動作が制御される。例えばプロセッサ64は、ユーザインタフェース66からユーザ入力を受け取り、要求された画像データの表示や表示画像データに対する設定の調整を行うことがある。幾つかのケースではその画像プロセッサ54及びプロセッサ64が同じ処理デバイス内に配置されることになる。
【0016】
図2は、検知エリア内部の可聴音を受け取るように構成された可聴音センサ204と、同じ検知エリアにおいて超音波信号を放出しかつ該超音波信号の反射を受け取るように構成されたマルチ素子超音波トランスジューサ106と、を有する探触子として構成した収集構成要素52のアキシャル断面図である。可聴音センサ204及びマルチ素子超音波トランスジューサ106は同時に動作可能、別々に動作可能、あるいはこれら両方が可能であるように構成される。
【0017】
さらに詳細には幾つかの実施形態では、収集構成要素52は、超音波トランスジューサ素子104のアレイを備えかつハウジング208の前部に装着されたレンズ200(例えば、シリコンラバーRTVレンズ)と有するマルチ素子超音波トランスジューサ106を備える。レンズ200は、超音波トランスジューサ素子104のアレイと音響的に結合されている。マルチ素子超音波トランスジューサはさらに、1つまたは複数の可聴音センサ204をその上または後ろ側に装着させる裏当て202を含む。可聴音センサは、可聴音を表す電気信号を発生させることが可能な任意のデバイスとすることができ、この電気信号は検出してその可聴音またはその有用な近似音まで変換して戻すことが可能である。こうした可聴音センサ204の例には、加速度計、マイクロフォン、容量式マイクロフォン、水中聴音器(hydrophone)、地中聴音器(geophone)(ただし、これらに限らない)が含まれる。
【0018】
超音波センサの実施形態の例には、圧電材料(セラミックや単結晶)からなるスタックを有しかつその前部が整合層でその底部が裏当て層となったセンサが含まれる。裏当て層は、厚くする(例えば、数mmの吸収材料とする)こと、非常に薄くすること、あるいは存在させない(例えば、脱整合層テクノロジー)ことがあり得る。例えば速度センサや加速度センサを、裏当ての後ろ側に直接または裏当て無しでスタック上に直接に取り付けることができる。超音波センサの別の例は、可聴周波数域で屈曲共鳴を有するように設計可能な薄い膜を備え、これによりその内部に取り付けたまたは一体化した速度センサまたは加速度センサ上の受信音響信号を増幅するマイクロマシン加工の容量性デバイス(cMUTデバイス)である。cMUTテクノロジーは、センサ及び増幅器の超音波アレイとの一体化に特によく適合する。このタイプのセンサはまた、マイクロフォンにより検出する圧力が増幅されるようにヘルムホルツ共鳴器の気体キャビティやその他の任意の機械的共鳴構造体と結合させることができる。
【0019】
音響センサの実施形態の例には、固体/液体(高音響インピーダンス)センサ及び気体(低インピーダンス)結合式センサが含まれる。固体/液体センサは加速度センサまたは速度センサ(例えば、加速度計、水中聴音器、地中聴音器、あるいはこれらを組み合わせたもの)を使用している一方、気体結合式センサはマイクロフォンを使用することがある。
【0020】
センサに関しては、厚みモードまたは曲げモード共鳴器テクノロジー、圧電または電気力学的テクノロジー、容量性(例えば、コンデンサ、エレクトレット)テクノロジー、及び/あるいは電気ひずみ、電気音響的結合または光学的検出器テクノロジー(ただし、これらに限らない)を含め様々なテクノロジーを用いることが可能である。
【0021】
幾つかの実施形態では、可聴音センサ204及び/またはマルチ素子トランスジューサ106を選択的に有効化または無効化するように構成されたスイッチ206を設けている。例えば一実施形態では、スイッチ206をその開放位置にしたときに可聴音センサ204からの電気信号を伝達するケーブルの両端にゼロ電圧が提供されるように押下したときに可聴音センサ204を短絡させる小型のロック式押しボタンスイッチ206をハウジング208上に設けている。可聴音センサ204及び/またはマルチ素子トランスジューサ106向けには、ハウジング208の上や中以外で切り替えを提供する機構を含め多種多様な異なる切り替え機構を使用することができる。適当な切り替え機構の選択は、電気設計や電子設計技術者が設計選択することができる。
【0022】
幾つかの実施形態では、ハウジング208の内部に内蔵オーディオ増幅器218が設けられている。増幅器218に対する電力は、電気ケーブル216を介する、かつ/またはハウジング208の内部にある内蔵充電式電池または交換式電池によって提供することがある。イヤホンまたはヘッドホン220は増幅器218を介して可聴音センサ204と動作可能に結合されている。内蔵オーディオ増幅器218が設けられた実施形態では、イヤホン220への単独のイヤホンケーブル222がハウジング208から出ていることがあり、あるいはイヤホンケーブル222が電気ケーブル216から分岐されていることがある。イヤホン220に加えられる可聴信号はまた、電気ケーブル216を介して単独の構成要素を通りかつこの単独構成要素からイヤホン220までルート設定されることがある。幾つかの別の実施形態では、オーディオ増幅器218は別のシステム構成要素の内部に収容されており、またイヤホン220は単に増幅器をその内部に収容した構成要素にプラグ接続されることがある。イヤホン220をスピーカに置き換えることがあり、また別の実施形態では、ワイヤレス送受信器(例えば、Bluetooth)を用いてワイヤレスヘッドホンに接続させることがある。
【0023】
収集構成要素の別の実施形態のアキシャル断面図を図3に表している。この実施形態では、マルチ素子超音波トランスジューサ106はトランスジューサスタック250(例えば、トランスジューサ素子104及び裏当て202)を備え、また可聴音センサ204はトランスジューサスタック250の後ろ側にネック258を有するヘルムホルツ共鳴器252を備える。ヘルムホルツ共鳴器252は、可聴音の増幅のためにその形状及び容器材料254によって構成された気体充満性共鳴器である。エレクトレットマイクロフォンなどの小型の気体マイクロフォン256は増幅した可聴音を検出するように構成される。例えばエレクトレットマイクロフォン204は、ヘルムホルツ共鳴器252の容器材料254の上にまたはこれを貫通して設けられる。マイクロフォン204は、その検知素子が共鳴器252内に来るように対面させて位置決めされるか、さもなければ増幅した可聴音を検出するように構成される。ヘルムホルツ共鳴器252はまた、トランスジューサスタック250の電気ケーブルのための封止した微小な進入及び/または脱出点262を有することがあり、あるいはこの目的のためにネック258を用いることがある。本明細書に記載した図1の実施形態に関連して説明した機構と同様にしてトランスジューサスタック250及びマイクロフォン204からの合成ケーブル216を配列させることが可能であり、また同様にしてイヤホンやヘッドホンを設けることもある。
【0024】
上述の収集構成要素の実施形態は、収集構成要素の一部のみを患者その他の被検物と接触させた状態で、同じ表面、フットプリントまたは検知エリア(例えば、レンズのうち患者の身体などの被検物と接触した部分)を通過する音波及び超音波を同時に検知するので有利である。
【0025】
本発明の幾つかの実施形態では、図4のブロック図に示すような検査装置50が提供される。検査装置50はプロセッサ64の制御下にあると共に、マルチ素子超音波トランスジューサ106内部の素子アレイ(例えば、圧電素子)を駆動して被検物(例えば、患者身体)内にパルス状の超音波信号を放出する送信器102を含む。超音波信号は、血球や筋肉組織など身体内の構造で後方散乱され、マルチ素子超音波トランスジューサ106に戻されるエコーを発生させる。このエコーは受信器108によって受け取られる。受け取ったエコーは、ビーム形成を実行しRF信号を出力するビーム形成器110を通過させる。次いでこのRF信号はRFプロセッサ112を通過する。別法としてRFプロセッサ112は、エコー信号を表すIQデータ対を形成するようにRF信号を復調する複素復調器(図示せず)を含むことがある。RFまたはIQの信号データは次いで、保存のためにメモリ114に直接ルート設定されることがある。
【0026】
検査装置50はさらに、収集した超音波情報(例えば、RF信号データまたはIQデータ対)を処理しディスプレイ62向けの超音波情報フレームを作成するための画像プロセッサ54を含む。画像プロセッサ54は、収集した超音波情報に対して複数の選択可能な超音波モダリティに従った1つまたは複数の処理動作を実行するように適応させている。収集した超音波情報は、エコー信号を受信しながら走査セッション中にリアルタイムで処理されて表示されることがある。追加としてまたは別法として、その超音波情報は走査セッション中はメモリ114内に一時的に保存しておき、オフライン動作で処理されて表示されることがある。
【0027】
画像プロセッサ54は、画像プロセッサ54の動作を制御できるユーザインタフェース64に接続されている。ディスプレイ62は、診断及び解析のためにユーザに対して診断超音波画像を含む患者情報を提示する1つまたは複数のモニタを含む。メモリ114とメモリ122のうちの一方または両方は、超音波データからなる3次元データ組を保存することがあり、こうした3Dデータ組は2D及び3D画像を提示するためにアクセスを受ける。これらの画像は修正を受けることがあり、またディスプレイ118の表示設定はさらにユーザインタフェース66を用いて手作業で調整される。
【0028】
検査装置50はボリュメトリックデータ組を様々な技法によって(例えば、3D走査、リアルタイム3D撮像、ボリューム走査、位置決めセンサを有するトランスジューサによる2D走査、ボクセル相関技法、2Dまたはマトリックスアレイトランスジューサを用いたフリーハンド走査、その他によって)取得することがある。マルチ素子超音波トランスジューサ106は直線経路や弓形経路に沿うなど、関心領域(ROI)を走査しながら移動させている。直線や弓形の各位置において、トランスジューサ106はスキャン面を取得し、これがメモリ114内に保存される。
【0029】
マルチ素子超音波トランスジューサ106を動作させている間に、音響信号をオーディオ増幅器218に提供することによって可聴音センサ204も動作させている。オーディオ増幅器218はスピーカ302及び/またはヘッドホンやイヤホン220を駆動する。さらに図示した実施形態では、可聴音センサ204で検知した可聴音をメモリ114及び/またはメモリ122内に記録することを可能にするディジタイザ370も設けられている。
【0030】
図5は、検知エリア内部の可聴音を受け取るように構成された可聴音センサ204(図5では図示せず)と、同じ検知エリアにおいて超音波信号を放出しかつ該超音波信号の反射を受け取るように構成されたマルチ素子超音波トランスジューサ106と、を包含した収集構成要素52を含むポケットサイズ検査装置50の外観図である。この検知エリアは本質的には、患者や被検物のうちレンズ200により覆われたエリアである。可聴音センサ204とマルチ素子超音波トランスジューサ106は、同時に動作可能とするあるいは別々に動作可能とするように構成される。これらの実施形態では、超音波送信器102、超音波受信器108、プロセッサ64及び表示画面62を内部に含んだ(図4参照)ハンドへルド型(または、可搬式)コンソール300も設けられている。ハンドへルド型または可搬式コンソール300は受け取った反射超音波信号に従って画像190を表示するように構成されている。検査装置50内にはさらに、受け取った可聴音に従って可聴音を生成するように検査装置50を構成できるように可聴音受信器(例えば、オーディオ増幅器218)も含まれている。オーディオ増幅器218は図5では図示していないが、図4には図示している。検査装置50の幾つかの実施形態では、オーディオ増幅器218は、収集構成要素52のハウジング208内部あるいはハンドへルド型や可搬式コンソール300のハウジング内部にある。しかし本発明の幾つかの実施形態では、収集構成要素52及びコンソール300から分離させたオーディオ増幅器218を使用することができる。幾つかの構成では、オーディオ増幅器218はイヤホンやヘッドホン220(図4)及び/またはスピーカ302を備えるようにして設けられている。図5に示すようにスピーカ302がコンソール300の内部に装着されることがある。
【0031】
別の実施形態に関連しまた図5及び図1〜4を参照しながら上で記載したように、マルチ素子超音波トランスジューサ106は裏当て202を備えることができ、また可聴音センサ204はマルチ素子超音波トランスジューサの裏当ての上またはその後ろ側に装着することができる。さらに収集構成要素52はまた、可聴音センサ204及び/またはマルチ素子超音波トランスジューサ106を選択的に有効化または無効化するように構成された少なくとも1つのスイッチ206を含むことがある。さらに幾つかの実施形態では、マルチ素子超音波トランスジューサ106はさらにトランスジューサスタック250を備えており、かつ可聴音センサ204はさらにトランスジューサスタックの後ろ側にある可聴音を増幅するように構成されたヘルムホルツ共鳴器252を備えている。増幅した可聴音の検出のためには気体マイクロフォン256が使用されることがある。さらに可聴音センサ204により受け取られた可聴音の再生のためにスピーカが設けられることがある。
【0032】
検査装置50の幾つかの実施形態では、コンソール300はさらに、受け取った可聴音から導出したオーディオスペクトルまたは心音図372の表示、かつ/またはアナログやディジタル式の記録メディア(例えば、メモリ114)上への受け取った可聴音の内容の記録を行う(例えば、メモリ内のソフトウェアによる)ように構成されている。この実施形態によれば、心音とエコー心電図の同時記録が特に容易になるという点で臨床的な恩恵が増大する。
【0033】
本発明の幾つかの実施形態は検査装置50を用いて聴診を実施するための方法を提供する。こうした方法の流れ図400を図6に示す。本方法は、402における患者のある検知エリアにおいて収集構成要素52を用いて患者の臓器(限定ではなく例えば、気体充満性臓器)に対する聴診を実施する工程と、また同時404における患者の同じ検知エリアにおいて超音波エコーを実施する工程と、を含む。本方法は次に406において、超音波エコーを用いて聴診からの知見を確定または拒絶する工程、あるいはこれらを組み合わせて新たな知見を追加する工程を含む。超音波エコーを用いた聴診からの知見の確定または拒絶については、例えば、T. Xieらによる「Rapid screening of cardiac patients with a miniaturized hand−held ultrasound imager−−comparisons with physical examination and conventional two−dimensional echocardiography」(Clin Cardiol. 2004 Apr;27/4:241〜5)、W.L. Duvallらによる「Can hand−carried ultrasound devices be extended for use by the noncardiology medical community?」(Echocardiography. 2003 Jul;20/5:471〜6)、M.N. Kotlerらによる「Echocardiographic and phonocardiographic correlation of heart sounds and murmurs」(Cardiovasc Clin. 1978;9/2:39〜57)、並びにR. Salerniらによる「Noninvasive graphic evaluation: phonocardiography and echocardiography」(Cardiovasc Clin. 1986;16/2:173〜210)を参照されたい。
【0034】
聴診の実施のためには可聴音センサと動作可能に結合されたイヤホンを用いることが可能であり、また聴診の実施のためにコンソール内に収容されたスピーカを用いることが可能である。幾つかの実施形態では408において、受け取った可聴音がアナログ及び/またはディジタル式記録メディア上に記録される。
【0035】
一例としてポケットサイズ検査装置50(収集装置52及びケーブル216は除外)は、幅が概ね2インチ、長さが概ね4インチかつ深さが概ね0.5インチで、重さが3オンス未満のポケットサイズまたは掌サイズの超音波システムとすることがある。ディスプレイ62は例えば、320×320画素のカラーLCDディスプレイ(この上に医用画像190を表示することができる)とすることがある。ユーザインタフェース66内には、タイプライター様のキーボードが含まれることがある。これらの寸法及び仕様は幾つかの実施形態を表すものと見なすべきであり、限定を見なすべきではない。
【0036】
寸法、重量及び電力消費が異なるフルサイズ検査装置と接続させて様々な実施形態を実現できることに留意すべきである。
【0037】
本発明の少なくとも1つの実施形態の技術的効果はしたがって、音響センサと超音波センサを単一のユニットに一体化し、医師が例えば回診中に別に聴診器を持ち歩く必要を無くすことを含む。さらに本発明の幾つかの実施形態は聴診とエコーの同時実施を可能にしており、この際医師は特別な熟練者であることを要することがなくかつ介助者の手助けを得る必要がない。本発明の幾つかの実施形態は、超音波画像を記録する機能、並びに医師による身体からの音の聴取を可能にする機能(別々と同時のいずれでもよいがすべて単一の検知エリアからのもの)を有する。
【0038】
さらに、様々な実施形態及び/または構成要素(例えば、モニタやディスプレイ、あるいはこれらの内部にある構成要素や制御器)は、1つまたは複数のコンピュータまたはプロセッサの一部として実現させることができる。このコンピュータやプロセッサは、コンピュータ処理デバイス、入力デバイス、表示ユニット、及び例えばインターネットにアクセスするためのインタフェースを含むことがある。このコンピュータやプロセッサは、マイクロプロセッサを含むことがある。このマイクロプロセッサは、通信バスと接続させることがある。このコンピュータやプロセッサはさらにメモリを含むことがある。このメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)や読出し専用メモリ(ROM)を含むことがある。このコンピュータやプロセッサはさらに、ハードディスクドライブ、あるいはフラッシュメモリスティック、SD(Secure Digital)カード、その他などの取外し可能な記憶装置とし得る記憶デバイスを含むことがある。この記憶デバイスはさらに、コンピュータプログラムやその他の命令をコンピュータやプロセッサにロードするための別の同様の手段とすることがある。
【0039】
本明細書で使用する場合、「コンピュータ」という用語は、マイクロコントローラを用いたシステム、縮小命令セットコンピュータ(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、論理回路、及び本明細書に記載した機能を実行可能な任意の回路やプロセッサを含めプロセッサベースまたはマイクロプロセッサベースの任意のシステムを含むことができる。上述の例は単に例示であり、またしたがっていかなる意味においても「コンピュータ」という用語の定義及び/または意味を限定することを意図していない。
【0040】
このコンピュータやプロセッサは、入力データを処理するために1つまたは複数の記憶素子内に格納された1組の命令を実行する。この記憶素子はさらに、所望によりまたは必要に応じて、データやその他の情報も記憶することがある。この記憶素子は情報ソースの形態とすることや、処理装置内部にある物理的な記憶素子とすることがある。
【0041】
この命令の組は、本発明の様々な実施形態の方法や処理などの指定の動作を実行するように処理装置としてのコンピュータまたはプロセッサに指令するための様々なコマンドを含むことがある。この命令の組はソフトウェアプログラムの形態とすることがある。このソフトウェアは、システムソフトウェアやアプリケーションソフトウェアなど様々な形態とすることがある。さらにこのソフトウェアは、個別プログラムからなる集合体、より大きなプログラムの内部のプログラムモジュール、あるいはプログラムモジュールの一部分の形態とすることがある。このソフトウェアはさらに、オブジェクト指向プログラミングの形態をしたモジュール型プログラミングを含むことがある。処理装置による入力データの処理は、ユーザコマンドに応答すること、以前の処理結果に応答すること、あるいは別の処理装置が発した要求に応答することがある。
【0042】
本明細書で使用する場合、「ソフトウェア」と「ファームウェア」という用語は置き換え可能であり、RAMメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ及び不揮発性RAM(NVRAM)メモリを含めコンピュータによって実行するためにメモリ内に記憶された任意のコンピュータプログラムを含む。上述のメモリタイプは単に例示であり、またしたがってコンピュータプログラムの記憶に使用可能なメモリのタイプを限定するものではない。
【0043】
上の記述は例示であって限定でないことを理解されたい。例えば上述の実施形態(及び/または、その態様)は互いに組み合わせて使用されることがある。さらに、具体的な状況や材料を本発明の教示に適応させるように本趣旨を逸脱することなく多くの修正を実施することができる。本明細書に記載した材料の寸法及びタイプは本発明のパラメータを規定することを意図していても、これらは決して限定ではなく実施形態の例示である。上の記述を検討することにより当業者には別の多くの実施形態が明らかとなろう。本発明の範囲はしたがって、添付の特許請求の範囲、並びに本請求範囲が規定する等価物の全範囲を参照しながら決定されるべきである。添付の特許請求の範囲では、「を含む(including)」や「ようになった(in which)」という表現を「を備える(comprising)」や「であるところの(wherein)」という対応する表現に対する平易な英語表現として使用している。さらに添付の特許請求の範囲では、「第1の」、「第2の」及び「第3の」その他の表現を単にラベル付けのために使用しており、その対象に対して数値的な要件を課すことを意図したものではない。さらに、添付の特許請求の範囲の限定は手段プラス機能形式で記載しておらず、また35 U.S.C.§112、第6パラグラフに基づいて解釈されるように意図したものでもない(ただし、本特許請求の範囲の限定によって「のための手段(means for)」の表現に続いて追加的な構造に関する機能排除の記述を明示的に用いる場合を除く)。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に従って製作した検査装置のブロック図である。
【図2】検知エリア内部の可聴音を受け取るように構成された可聴音センサと、同じ検知エリアにおいて超音波信号を放出しかつ該超音波信号の反射を受け取るように構成されたマルチ素子超音波トランスジューサと、を有する探触子として構成した収集構成要素のアキシャル断面図である。
【図3】収集構成要素の別の実施形態のアキシャル断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に従って製作した検査装置のブロック図である。
【図5】検知エリア内部の可聴音を受け取るように構成された可聴音センサと、同じ検知エリアの内部において超音波信号を放出しかつ該超音波信号の反射を受け取るように構成されたマルチ素子超音波トランスジューサと、を包含した収集構成要素を含むポケットサイズ検査装置の一実施形態の外観図である。
【図6】検査装置の一実施形態を用いて聴診を実施するための方法の流れ図である。
【符号の説明】
【0045】
50 検査装置
52 収集構成要素
54 画像処理構成要素
62 ディスプレイ、表示画面
64 プロセッサ
66 ユーザインタフェース
102 送信器
104 超音波トランスジューサ素子
106 マルチ素子超音波トランスジューサ
108 受信器
110 ビーム形成器
112 RFプロセッサ
114 メモリ
118 ディスプレイ
122 メモリ
190 画像
200 レンズ
202 裏当て
204 可聴音センサ
206 スイッチ
208 ハウジング
216 電気ケーブル
218 オーディオ増幅器
220 ヘッドホン、イヤホン
222 イヤホンケーブル
250 トランスジューサスタック
252 ヘルムホルツ共鳴器
254 容器材料
256 気体マイクロフォン
258 ネック
262 進入点、脱出点
300 コンソール
302 スピーカ
370 ディジタイザ
372 オーディオスペクトル、心音図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知エリア内部の可聴音を受け取るように構成された可聴音センサ(204)と、
前記検知エリア内で超音波信号を放出し該超音波信号の反射を受け取るように構成されたマルチ素子超音波トランスジューサ(106)と、
を備える収集構成要素(52)。
【請求項2】
前記可聴音センサ(204)及び前記マルチ素子超音波トランスジューサ(106)は同時に動作可能であるように構成されている、請求項1に記載の収集構成要素(52)。
【請求項3】
前記可聴音センサ(204)は前記マルチ素子超音波トランスジューサ(104)のスタックの上または後ろ側に装着されている、請求項1に記載の収集構成要素(52)。
【請求項4】
前記可聴音センサ(204)は、機械結合式センサ、加速度計、水中聴音器、地中聴音器、及びこれらの組み合わせのうちの1つを含む、請求項3に記載の収集構成要素(52)。
【請求項5】
さらに、前記可聴音センサ(204)と前記マルチ素子超音波トランスジューサ(106)のうちの少なくとも一方を選択的に有効化または無効化するように構成されている請求項1に記載の収集構成要素(52)。
【請求項6】
さらに、前記可聴音センサ(204)と動作可能に結合されたイヤホン(220)を備える請求項1に記載の収集構成要素(52)。
【請求項7】
前記マルチ素子超音波トランスジューサ(106)はさらにトランスジューサスタック(250)を備えており、かつ前記可聴音センサ(204)はさらに該トランスジューサスタック(250)の後ろ側にある可聴音を増幅するように構成されたヘルムホルツ共鳴器(252)及び該増幅した可聴音を検出するように構成された気体結合式マイクロフォン(256)を備えている、請求項1に記載の収集構成要素(52)。
【請求項8】
検知エリア内部の可聴音を受け取るように構成された可聴音センサ(204)及び該検知エリア内で超音波信号を放出し該超音波信号の反射を受け取るように構成されたマルチ素子超音波トランスジューサ(106)を有する収集構成要素(52)と、
前記受け取った反射超音波信号に従って画像を表示するように構成されている、超音波送信器(102)、超音波受信器(108)、プロセッサ(64)及びディスプレイ(62)を備えた超音波撮像装置と、
受け取った可聴音に従って可聴音を生成するように構成された可聴音受信器と、
を備える検査装置を用いて聴診を実施するための方法(400)であって、
患者のある検知エリアにおいて患者の気体充満性臓器に対して収集構成要素を用いて聴診を実施する工程(402)と、
患者の同じ検知エリアにおいて前記聴診と同時に超音波エコーを実施する工程(404)と、
を含む方法(400)。
【請求項9】
可聴音センサ(204)と動作可能に結合させたイヤホン(220)を利用して前記聴診を実施する工程をさらに含む請求項8に記載の方法(400)。
【請求項10】
超音波撮像装置内に収容されたスピーカ(302)を利用して前記聴診を実施する工程をさらに含む請求項8に記載の方法(400)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−95670(P2009−95670A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264825(P2008−264825)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】