説明

患者用椅子の構造的要素の相互位置を調整する方法及び装置

本発明の目的は、互いに連接される、背もたれ及びヘッドレストのような患者用椅子の2つの構造的要素の相互位置を調整する方法及び装置であり、当該方法において、連接によって互いに接続される2つの構造的要素(3、4、5)の相互位置は、駆動装置(13)によって調整される。駆動装置(13)を利用して、たとえば、ねじを利用して線形運動に変換することができる本質的に高速な回転運動を生成することが可能である。線形運動は、位置調整機構に属している連接軸(6、7)に機能的に接続されるねじ要素(9)を利用して本質的に低速な回転運動に変換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、互いに連接される、患者用椅子の2つの構造的要素の相互位置を調整する、請求項1の前文において定義される方法及び請求項8の前文において定義される装置である。
【背景技術】
【0002】
本発明は、特に、歯科治療で使用されるもの等、患者用椅子の連接機構、特に椅子のヘッドレスト及びそれに属している枕の連接機構の配置に関するが、より一般的には、本発明は、互いに連接される2つのこのような機械的要素を備える構造であって、外部の負荷又は構造の重量によってもたらされる高いか又は幾分か高いトルクが連接部に影響を与えている、構造での使用に適用可能である。以下、本発明による方法及び装置を、本発明による接合類解決法と呼ぶ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、歯科治療で使用される従来技術による患者用椅子のヘッドレストは、摺動レールを使用して患者の高さに従って長手方向に調整される。ここで、ヘッドレストは、摺動レールによって案内されるように、椅子の背もたれの端部から外側に引っ張られるか又は内側に押される。ヘッドレストの高さ調整のためと共にヘッドレストの枕の位置の調整のために、ヘッドレストは、連接機構と、連接要素を所望の位置に固定することができるようにするロック機構とを組み込む。調整は、患者の頭部が枕の上に載っている間にロックを開放し手動力を使用することによってヘッドレスト及び枕を正しい位置に配置することによって行われる。正しい位置に達すると、ヘッドレスト及び枕は選択された位置のそれぞれの場所に固定される。これらの解決法における問題は、手動力を必要とする重い位置調整である。さらに、実際には、患者の寸法が異なるため、調整は、常に各患者に対して新たに手動で、恐らくは治療操作又は作業段階の要件に従ってさらに別個にも行われなければならず、その別個のロック開放・調整・再ロック動作を含む手動プロセスにはいくつかの段階があり、したがって時間もかかる。
【0004】
従来技術によれば、電動式ヘッドレスト調整法もある。それらの典型的な問題は、機構部分及び動力伝達要素のサイズが大きいということであり、その結果、ヘッドレストの厚さ、及び恐らくは背もたれの上部の厚さも容易に実際的でないサイズになる。歯科医、又は一般には治療行為を行う人の典型的な作業位置において、背もたれの下面は、治療行為を行っている人の膝に接するか又は略接するように下げられており、それにより、背もたれの厚さ及び/又はヘッドレストの厚さは、治療行為を行っている人の観点から決定的要素である。手を高く維持しなければならないほど、治療行為が体に負担のかかる作業となる。
【0005】
これらの解決法における問題はまた、構造に高い内力が存在することであり、その結果として、位置調整機構が、容易に幾分か下方にはずれる。ヘッドレスト機構は、崩壊なしに、且つ好ましくは実際的にもいかなる降伏もなしに、構造自体の質量及び患者の頭部の質量によってもたらされるトルクだけでなく、治療操作中にもたらされる可能性のある追加のトルクを支持することができるべきである。機構における降伏により、治療操作の対象が操作中に移動する可能性があり、そのため治療行為が困難となる可能性がある。構造のあり得る崩壊もまた安全上の危険であり、そのため、たとえば歯科患者用椅子に対する設計規則があり、それらはその規則に従って一定の耐荷力を有していなければならない。規則は、静的耐荷力に関するが、当然ながら、モータ駆動構造は、動的状況における(且つ/又はモータ故障の場合における)例外的な負荷の影響さえも、駆動モータのトルクがこの種の例外的な負荷を持ち上げるために十分であるように構成されていない場合であっても、崩壊することなく保持することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、上記患者用椅子、特にそのヘッドレストの構造的要素の相互位置の調整に関する制御問題に対し、本発明の新たな発明的概念による解決法を提供することである。本発明の特定の目的は、人間工学的作業位置を可能にするような患者用椅子の実現を可能にする、患者用椅子のヘッドレスト及び枕の位置を調整するためのこのような着実な解決法を提供することである。目的は、たとえばヘッドレスト及び/又は背もたれを薄く構成することも可能である、このようなモータ駆動構造を達成することである。本発明のさらなる目的は、信頼性が高く且つ精密であり、患者用椅子の構造的要素の相互位置を調整するために十分な動力を提供する方法を作成することである。本発明による方法は、請求項1の特徴を表す部分に提示されているものによって特徴付けられる。別個に、本発明による装置は、請求項8の特徴を表す部分によって提示されているものによって特徴付けられる。本発明の他の実施の形態は、他の請求項において提示されているものによって特徴付けられる。
【0007】
本発明による解決法及びその好ましい実施の形態の利点は、それらが、小型の機械部品を有する調整機構の実現を可能にするということであり、それにより本発明を、狭い空間で小型構造として具現化することができる。このため、たとえば歯科患者用椅子のヘッドレスト及び/又は背もたれを、モータ化にも関わらず、可能な限り薄く実現することができ、そのため歯科行為を行っている人が手を可能な限り低く維持して作業することが可能になり、それにより、椅子の背もたれ及び/又はヘッドレストがより厚く、そのために作業位置がより人間工学的でない状況に比較して、それほど疲労しない。調整機構においてより小型の部品を使用することができることにより、それらを狭い空間において比較的長い可動域に配置することも可能になり、それにより、位置調整機構によって、調整位置の広く且つ汎用性のある実現が可能になる。たとえば、ヘッドレスト機構の可動域を、構造の幅を単に増大させることにより、ヘッドレスト自体の構造的厚さを変更することなく増大させることができる。別の利点は、本発明及びその好ましい実施の形態の構造的解決法により、機械要素において、又は調整機構を使用する載荷支持構造自体において大きい内力が存在しないように、ヘッドレスト及び枕の位置を調整するための大きい力が提供され、それにより、それらのサイズが小さく且つひいては安価であることが可能である。別の利点は、下方に降伏しない剛性且つ頑強な構造であり、したがって、その構造が精密な作業を可能にする。この解決法は、たとえば駆動モータからの力を伝達する要素における故障が、たとえば、本発明によって連接される患者用椅子のヘッドレストの崩壊をもたらす可能性がないように、安全であり且つ自己保持的である。また、構造にその最大持上げ容量を超えて過負荷を加えることにより、モータ自体に過負荷がかかる可能性がない。ヘッドレストの動きの制御を、たとえばジョイスティックにより、又は歯科治療で使用される患者用椅子に限れば、たとえば歯科機器のフットコントロールにより、制御システムによる制御を介して行われるように構成することができる。患者用椅子が、たとえば、患者情報を含むメモリを含むか又はそれに接続される歯科機器の制御システムと機能的に接続されるように構成される場合、ヘッドレスト及び枕の患者特定の位置をメモリに保存するように構成することも可能であり、それにより、ヘッドレストの正確な患者特性位置をメモリから選択することができ、且つその正確な位置を迅速に、正確に且つ自動的に調整することができる。
【0008】
以下、本発明について、適用例を使用し且つ添付図面を参照してより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、患者用椅子の背もたれ2の端部に配置される、患者用椅子のヘッドレスト1を示す。ヘッドレスト1は、細長い摺動要素3を備え、その摺動要素3は、連接構造の第1の構造的要素として機能し、一端に2つの固定ラグ3aを備え、且つヘッドレスト1の長手方向調整のために背もたれ2内においてその長手方向に摺動するように適合される。連接構造の第2の構造的要素として機能するヘッドレストの実際のフレーム4の第1の端は、摺動要素3の固定ラグ3aに固定されており、フレーム4は、ヘッドレストの高さ調整のために垂直面において回転するように構成される。別個に、ヘッドレストの枕部5は、連接軸5aを介してフレーム4のもう一方の端に連接固定されており、枕部の位置は、枕部5をその軸5aを中心に垂直面において回転させることによってヘッドレストのフレーム4に対して調整可能である。この場合、ヘッドレストのフレーム4は、連接組立体の第1の構造的要素を構成し、枕部5はその連接軸5aと共に第2の構造的要素を構成する。
【0010】
図2は、上方から見た図1によるヘッドレストを示し、フレーム4は水平面において回転し、枕部5は取り去られている。フレーム4は、互いに水平方向に間隔が空けられた2つのフレーム要素4aから構成され、それらの第1の端は連接軸6によって接続され、第2の端は連接軸7によって接続される。連接軸6は、その端部の両方からフレーム要素4aの外側に延在し、摺動要素3に対して不動であるように、その延在する端部において摺動要素3の端部の固定ラグ3aに固定される。連接軸6とフレーム要素4aとの間には、フレーム4が固定の連接軸6の中心軸の周りを回転するのを可能にする軸受構成がある。別個に、連接軸7とフレーム要素4aとの間には、連接軸7がフレーム4に対してその中心軸の周りを回転するのを可能にする軸受構成がある。枕部5の連接軸5aは、連接軸7の延在する端部に固定されており、それにより、連接軸7がその中心軸の周りを回転する時、連接軸5aがそれに従う。フレーム4及び枕部5の位置を調整するために、連接軸6、7には共に、本発明の概念による特別な回転機構1aを備え、そのより詳細な構造については後述する。
【0011】
フレーム4内には、連接軸6、7の両方のため、且つそれらの上の回転機構1aのための駆動モータ13が配置されており、それらのモータは、歯付きベルト14を介して、軸受と適合し且つ回転機構1aのためのアクチュエータ手段として機能する駆動ねじ8を、連接軸6、7上で回転させるように配置されている。駆動ねじ8の両方に、駆動ねじ8の細目ねじに取り付けられて、回転機構1aのための回転手段として機能する回転ナット9が配置され、それは、駆動ねじ8の回転に沿って、回転すると共に連接軸6、7に対して軸方向に移動する。さらに、回転ナット9には、その円柱状表面から延在するカム10があり、それは、ヘッドレスト1の調整段階中にヘッドレストのフレーム4の固定ストッパ12を押圧するように適合されている。ばね11が、回転ナット8の上方向の回転運動を制限し、常にヘッドレスト1をその最低自由位置まで戻し、且つ組立体を全体としてクリアランスがないように維持するよう適合されている。ヘッドレスト1の構造は、フレーム4及び枕部5の両方が、下げられている時に障害物、たとえば治療する人の膝に接触する場合、上方に後退するように構成されている。ばね11の抗力は、回避動作が可能であるように低く構成されている。
【0012】
図3は、且つ図2の切断線III−IIIに沿って切断されたヘッドレスト1のフレーム4を枕部5を除いた状態で示す。連接軸6上の回転ナット9のカム10は、フレーム上の固定ストッパ12の下方に配置されており、それにより、図3において、回転ナット9が反時計回りに回転する時、カム10はストッパ12からフレーム4を持ち上げる。別個に、連接軸7上の回転ナット9のカム10は、フレーム上の固定ストッパ12の上方に配置されており、それにより、枕部5がより高く持ち上げられると、カム10はストッパ12を押圧し、連接軸7は図3による場合はその中心軸の周りを時計回りに回転し、連接軸5aを上方に持ち上げる。
【0013】
図4は、上方から見た、明確にするために部分的に切断された、枕部5のないヘッドレスト1のフレーム4を示す。この図は、特に、連接軸6の構造の一部、並びに駆動ねじ8およびその上に取り付けられた回転ナット9の構造の一部を示す。これらの構造については、図5に関連してより詳細に説明する。図4はまた、駆動モータ13の歯付きベルトホイール15も示し、それにより、駆動モータ13の回転運動は、歯付きベルトを介して、駆動ねじ8の端部に固定されるように配置される歯16に伝達される。
【0014】
図5は、断面化され且つ上方から見た、連接軸6と、連接軸上に配置された、本発明の好ましい一実施形態の回転機構1aに属している駆動ねじ8及び回転ナット9とを示す。連接軸7は、その部品と共に、同様の構造である。軸方向において、連接軸6、7のおよそ中心に、連接軸の他の部分より径が大きい部分があり、そこは、回転機構1aの一部として機能し、たとえば約100mm等、少なくとも40mmであってもよいピッチを有する本質的に高ピッチの外部ねじ20を組み込む。別個に、回転ナット9の第1の端には、外部ねじ20と適合する高ピッチ内部ねじ21があり、第2の端には、本質的に低ピッチの内部ねじ19があり、その径は高ピッチ内部ねじ21の径より大きい。低ピッチ内部ねじ19のピッチは、たとえば約1mm等、0.5mmと5mmとの間であってもよい。
【0015】
駆動ねじ8は、連接軸6、7上で回転可能であるようにその端部の両方において軸受17と適合する。駆動ねじ8の第1の端には、歯付きベルト14と関連して機能するように適合される、径が残りの部分より大きい歯16がある。駆動ねじ8の第2の端において、その細長い本体部には、本質的に低ピッチの外部ねじ18があり、その径及びピッチは、回転ナット9の低ピッチ内部ねじ19の径及びピッチと適合するように構成されている。
【0016】
この構造は、駆動モータ13が、歯付きベルト14を介して、軸方向に連接軸に固定されるように配置される駆動ねじ8を回転させる時、駆動ねじ8が回転ナット9を連接軸6、7の軸方向に移動させ、それにより、駆動ねじ8がまた、高ピッチねじ20、21によって案内されるように連接軸6、7を中心に回転するように動作する。駆動モータ13の回転の第1の方向により、カム10がストッパ12を押圧し、ヘッドレストのフレーム4及び枕部5が上方に上昇する。別個に、回転の第2の方向により、カム10がストッパ12から解放され、枕部に載っている患者の頭部によってもたらされる可能性のある重力を含む重力の影響の結果として、ヘッドレストのフレーム4及び枕部5が下降する。ばね11が、重力の影響を支持し、クリアランスをなくしている。
【0017】
図6は、上方から見た本発明の別の好ましい実施形態による連接軸6a、7aと、連接軸に取り付けられた本発明による回転機構1aとを示し、この図では、駆動ねじ8a及び回転ナット9aは断面で示されている。軸方向において、およそ連接軸6a、7aの中心から連接軸の第1の端に向かって、上述した軸6、7の外部ねじ20と同様であってもよい、回転機構1aの一部として機能する本質的に高ピッチの外部ねじ20を有する、径が連接軸の残りの部分より大きい部分がある。別個に、回転ナット9aは、外部ねじ20に適合する高ピッチ内部ねじ21を組み込む。さらに、軸方向において、およそ連接軸6a、7aの中心から連接軸の第2の端に向かって、上述した駆動ねじの外部ねじ18と同様であってもよい、本質的に低ピッチの外部ねじ18aを有する、径が連接軸の端部における径より大きい部分がある。別個に、駆動ねじ8aは、この外部ねじ18aに適合される低ピッチ内部ねじ19aを組み込む。駆動ねじ8aは細長い形状であり、その外周部に、駆動ねじをその中心軸を中心に歯付きベルト14を利用して回転させるために、本質的に駆動ねじの長さである歯16aを有する。さらに、駆動ねじ8aの両端には、径が歯16aより大きいフランジがあり、そのフランジは歯付きベルト14が歯から落下しないようにする。駆動ねじ8aと回転ナット9aとの間には、スラスト軸受22がある。
【0018】
この構造は、駆動モータ13が歯付きベルト14によって駆動ねじ8aを回転させる時、歯付きベルト14が歯16a上を軸方向に滑動する間に駆動ねじ8aが低ピッチの細目ねじによって連接軸6a、7aの軸方向に移動するように動作する。駆動ねじ8aが回転し同時に軸方向に移動している間、駆動ねじ8aは、スラスト軸受22を介して回転ナット9aを連接軸6、7の軸方向において押し、それにより回転ナット9aは、その線形運動と同時に、高ピッチねじ20、21によって案内されるように連接軸6a、7aを中心に回転する。駆動モータ13の回転の第1の方向により、カム10がストッパ12を押し付け、ヘッドレストのフレーム4及び枕部5が上方に上昇する。別個に、回転の第2の方向により、カム10がストッパ12から外れ、枕部に載っている患者の頭部によってもたらされる可能性のある重力を含む重力の影響により、ヘッドレストのフレーム4及び枕部5が下降する。ばね11が、重力の影響を支持し、回転ナット9aを駆動ねじ8aに向かって押し、同時にクリアランスを無くす。
【0019】
回転機構の駆動ねじ8、8aの構造、回転ナット9、9aの構造及び高ピッチねじ20の構造とは無関係に、それらの径及びピッチは、回転機構の伝達率が本質的に高くなるように本発明の概念を具現化するように互いに対して適合されている。連接軸と一体化されるギアの構造を含む、このように具現化される本発明による構造は、すでにそれ自体自己保持的であり、そのため、位置調整機構に対する他のいかなる手段も自己抑制を達成するように構成する必要はなく、そのため、調整位置をロックする必要はない。本発明は、小型であり、すなわち狭い空間で構成することができ、効率がよく、且つ連接軸に直接統合することができ、大きいトルクを伝達することができるという特徴を有し、自己保持的である連接動作を提供する。さらに、駆動モータの過負荷を防止する手段を提供する。
【0020】
たとえば、歯科治療に関連して使用される患者用椅子のヘッドレストの典型的な寸法を鑑みると、本発明による連接軸と統合されるギアの伝達率は、連接軸上の高ピッチねじの長さがおよそ40mmである場合、約100であることが好ましい。この構造によって達成可能な回転の角度を、ねじを長くすることによって増大させてもよく、且つ/又はたとえば低ピッチねじのピッチ角をさらに小さいように構成してもよい。このため、上述したような低ピッチねじと高ピッチねじとの比は、Nがおよそ10等、少なくとも2である場合に、少なくともN×10:1のように本質的に高いことが好ましい。
【0021】
本発明による方法では、ヘッドレスト1の位置は、たとえば以下のように、フレーム4及び枕部5の位置を調整することによって調整される。すなわち、ヘッドレストのフレーム4を上方に持ち上げるためには、駆動モータが以下のように駆動される。歯付きベルト14及び歯15、16を介して駆動ねじ8、8aの回転運動に伝達される本質的に高速な回転運動が生成され、その回転運動は低ピッチねじ18、19aによって軸運動に変換され、その軸運動により、回転ナット9、9aが、連接軸上の高ピッチ外部ねじ20によって案内されるように、連接軸6、6a、7、7a上で連接軸の軸方向に移動し、それにより、同時に、線形移動に加えて、回転ナット9、9aはその回転軸を中心に回転する。このように、駆動モータ13の回転運動は、線形移動を提供するように構成され、それは、回転ナット9、9aと連接軸に配置される対応する高ピッチねじとを利用して本質的に低速な回転運動に変換される。
【0022】
回転ナット9、9aがさらに回転する間、そのカム10は、連接軸6、6a上の回転ナット9、9aのカム10がストッパ12を押圧し、そのためフレーム4を垂直位置まで回転させるように、フレーム4に位置するストッパ12と接触するように向けられる。別個に、連接軸7、7a上の回転ナット9、9aのカム10は、ストッパ12を押圧し、それにより、枕部5の連接軸5aを垂直位置まで回転させる。フレーム4及び枕部5を下方に下げるために、駆動モータ13は反対方向に回転し、回転ナット9、9aのカム10は所望の位置まで駆動され、フレーム4及び枕部5は、重力及びばね11を利用して所望の位置に静置される。
【0023】
上記では、本発明をその好ましい実施形態を利用して説明し、そこでは、回転ナットの線形移動が、駆動モータの回転運動を、回転する回転ねじに配置される低ピッチねじと回転ナットに配置される対応するねじとを利用して回転ナットの軸運動に変換することによって具現化されている。この解決法は、機械的に単純であるために、本発明の特に好ましい一実施形態であるが、しかしながら、原則的に、回転ナットの軸方向の移動を、本質的に高ピッチのねじによって案内されるように連接軸の軸方向において回転ナットを駆動するために十分な軸方向の力を生成する任意の構成によって具現化してもよい。
【0024】
一方、上記において特に回転ナット及び回転ねじのような用語を装置の一部に対して使用している場合、同様にたとえば第1のねじ要素及び第2のねじ要素に関してより一般的に述べることができると言うことができる。たとえば、回転ねじという用語を、この文脈において、実際のところ、対応する機能を提供する機械要素は必ずしもまったく「ねじ状」である必要はないため、具体的なねじとしてではなく例示的であるように解釈することができる。さらに、より一般的な用語である機械要素を、連接軸の高ピッチねじを組み込む部分に対して使用してもよい。
【0025】
当業者には、本発明の種々の実施形態が上述した例に限定されず、以下に提示する特許請求の範囲内で変化してもよいということが明らかである。そのため、たとえば、駆動ねじの駆動モータを、ヘッドレストのフレーム部分以外の別の場所に配置してもよい。1つの適当な場所は、たとえば、摺動要素のフレーム内及び患者用椅子の背もたれ内である。
【0026】
同様に、駆動ねじ及び摺動軸上の回転ナットの相互の構造及び適合は、上に提示したものと異なってもよい。駆動ねじを使用する実施形態では、本質的に高速の回転運動は線形運動に変換され、このようにもたらされる線形運動は低速回転運動に変換されることが必須である。さらに、当業者には、歯付きベルトの代りに、本発明による解決法において他の動力伝達解決法を使用してもよいということが明らかである。
【0027】
本発明による解決法に、メモリ手段と、メモリに保存された患者特定情報に基づいて連接機構を所望の調整位置まで自動的に駆動する制御部とを備えてもよい。本発明を、患者用椅子のヘッドレスト構造以外の部分を調整するために、たとえば手置き、背もたれ、又は恐らくは座席部とは別個の足置きの位置を調整するために、適用してもよい。
【0028】
当業者には、本出願の本発明の内容がいくつかの別個の発明から構成されることも可能であり、本出願における本発明の内容を、添付の特許請求の範囲で行われているものとは別の方法で定義してもよいということが明らかである。その場合、添付の請求項に含まれる定義のうちのいくつかは、別個の発明的概念に関する限り、不要である可能性がある。また、本発明の種々の実施形態の特徴を、本発明の基本概念内で、他の実施形態に関連して適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】側方から見た患者用椅子のヘッドレスト及び枕を示す図である。
【図2】上方から見た、枕部分が取り去られている、図1による患者用椅子のヘッドレストを示す図である。
【図3】側方から見た、枕部分が取り去られている、図2の切断線III−IIIに沿った水平位置における患者用椅子のヘッドレストを示す図である。
【図4】上方から見た、枕部分が取り去られ、部分的に切断された、本発明を適用するヘッドレストを示す図である。
【図5】簡略化され且つ部分的に断面化された本発明による連接軸構造を示す図である。
【図6】簡略化され且つ部分的に断面化された本発明による別の連接軸構造を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連接によって互いに接続される、患者用椅子の2つの構造的要素(3、4、5、5a)の相互位置を調整する方法であって、該位置は駆動装置(13)によって調整される、方法であって、
線形運動が、前記駆動装置(13)によって、且つ該駆動装置(13)に機能的に接続されている他のあり得る機械要素によって生成され、前記線形運動は、前記構造的要素(3、4、5、5a)を接続する連接軸(6、6a)に機能的に接続されて配置される第1のねじ要素(9)における本質的に低速な回転運動に変換されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記線形運動は、回転運動をもたらす前記駆動装置(13)と、該回転運動を前記連接軸(6、6a)上の軸方向運動に変換する第2のねじ要素(8、8a)とを利用して生成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
本質的に高速な回転運動が、前記第2のねじ要素(8、8a)に対し前記駆動装置(13)によって生成されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記本質的に高速な運動と前記本質的に低速な運動との間の比はおよそ100:1であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記駆動装置(13)によって生成される前記本質的に高速な回転運動は、本質的に低ピッチのねじ要素(18、19a)によって前記第2のねじ要素(8、8a)における前記第1のねじ要素(9、9a)の線形運動に変換され、該線形運動はさらに、該第1のねじ要素(9、9a)において、前記連接軸(6、6a、7、7a)上の本質的に高ピッチのねじ(20)を利用して、前記第1のねじ要素(9、9a)の前記本質的に低速な回転運動に変換されることを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記患者用椅子のヘッドレスト(1)の位置が、前記第1のねじ要素(9、9a)の前記本質的に低速な回転運動によって調整されることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
2つの連接軸(6、7)が、前記患者用椅子の前記ヘッドレスト(1)に関連して配置され、その第1の連接軸は、前記椅子の背もたれと前記ヘッドレスト(1)のフレーム(4)との間に配置され、第2の連接軸は、該ヘッドレスト(1)の該フレーム(4)と前記枕部(5)との間に配置されること、並びに該フレーム(4)及び該枕部(5)の位置は、請求項1乃至6のいずれか一項に従って調整されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
互いに連接される、患者用椅子の2つの構造的要素の相互位置を調整する装置であって、連接軸(6、6a、7、7a)と駆動装置(13)とを備え、該駆動装置(13)の駆動力により、前記連接軸(6、6a、7、7a)によって互いに接合される前記構造的要素の前記相互位置が調整されるように構成されている、装置であって、
前記連接軸(6、6a、7、7a)は、本質的に高ピッチのねじ(21)を備える第1のねじ要素(9、9a)と、対応するねじを備え且つ前記構造的要素(3、4、5、5a)のうちの第2の構造的要素と機能的に接続されている機械要素とを機能的に組み込むこと、及び前記第1のねじ要素は、前記駆動装置(13)から得られる力を利用して前記連接軸(6、6a、7、7a)の軸方向に移動するように配置されていることを特徴とする、装置。
【請求項9】
前記駆動装置(13)は回転運動をもたらす装置であること、及び該回転運動を前記第1のねじ要素(9、9a)の線形運動に変換するように構成されている第2のねじ要素(8、8a)を備えることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1のねじ要素と前記第2のねじ要素とのピッチ角度の比率は、Nがおよそ10等、少なくとも2である場合、少なくともN×10:1であるように本質的に高いことを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも、前記本質的に高ピッチの内部ねじ(21)を備える前記第1のねじ要素(9、9a)と前記駆動装置(13)によって駆動される前記第2のねじ要素(8、8a)とを備える回転機構(1a)を具備し、該第2のねじ要素は、前記連接軸(6、6a、7、7a)の軸方向において前記第1のねじ要素(9、9a)を移動させるように適合されること、及び高ピッチのねじを有する前記機械要素は、前記回転機構(1a)に属している本質的に高ピッチの外部ねじ(20)であり、該本質的に高ピッチの外部ねじ(20)の上において、前記第1のねじ要素(9、9a)は、前記第2のねじ要素(8、8a)によって駆動されるように線形に移動し、同時に、前記高ピッチの外部ねじ(20)によって案内されるようにその回転軸を中心に回転するように構成されることを特徴とする、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記連接軸(6、6a、7、7a)は本質的に前記高ピッチの外部ねじ(20)を備えること、並びに前記第2のねじ要素(8、8a)及び前記第1のねじ要素(9、9a)は共に、前記連接軸(6、6a、7、7a)の中心軸を中心に回転するように該連接軸(6、6a、7、7a)に取り付けられることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第2のねじ要素(8、8a)は、前記第1のねじ要素(9、9a)の線形移動を達成する本質的に低ピッチのねじ(18、19a)を備えることを特徴とする、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記第2のねじ要素(8、8a)の円柱状部分の外面に、前記本質的に低ピッチのねじ(18)があること、前記第1のねじ要素(9、9a)の前記第2のねじ要素の端部に、対応する前記本質的に低ピッチのねじ(19)があること、及び前記ねじ(18、19)は、前記第2のねじ要素(8、8a)が回転する間に、前記第1のねじ要素(9、9a)が前記ねじ(18、19)によって案内されるように前記連接軸(6、6a、7、7a)上を軸方向に移動するように構成されるように、相互に適合されていることを特徴とする、請求項11乃至13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記第2のねじ要素(8、8a)の前記円柱状部分の内面に、前記本質的に低ピッチのねじ(19a)があること、前記連接軸(6、6a、7、7a)は、該ねじ(19a)に対応する本質的に低ピッチの外部ねじ(18a)を備えること、及び前記第2のねじ要素(8a)は、前記連接軸(6、6a、7、7a)に配置される前記ねじ(19a)によって案内されるように該連接軸(6、6a、7、7a)上で回転するように、そのため線形に移動し同時に前記第1のねじ要素(9a)をその前面で前記連接軸(6、6a、7、7a)上で押すように構成されていることを特徴とする、請求項11乃至13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記回転機構(1a)は、前記ヘッドレスト(1)を備える前記患者用椅子において該ヘッドレスト(1)の位置を調整するために連接機構として配置されていることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
1つの回転機構(1a)が、前記患者用椅子の前記背もたれに対して前記ヘッドレストのフレーム(4)の位置を調整するために前記患者用椅子の前記ヘッドレスト(1)に配置され、第2の回転機構(1a)が、前記ヘッドレスト(1)の前記フレーム(4)に対して該ヘッドレスト(1)の前記枕部(5)の位置を調整するために配置されることを特徴とする、請求項16に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−535604(P2008−535604A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505916(P2008−505916)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【国際出願番号】PCT/FI2006/050142
【国際公開番号】WO2006/108923
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(591036309)
【Fターム(参考)】