説明

患者見守りシステム

【課題】医療従事者に負担をかけずに医療従事者が定期的に病室を訪れることができるようにする。
【解決手段】医療従事者に無線装置1を携行させ、病室内の無線装置1と通信する通信装置2を病室に設置して、タイマー14が計測した時間が所定時間になった場合に、インターフェース12が通信信号を入力していないと通信判定部16が判定したときには、タイマー14をリセットするとともに報知部15を動作させ、タイマー14が計測した時間が所定時間になっていない場合に、通信信号を入力したと判定したときにもタイマー14をリセットするようにしている。これにより、報知が行われた場合も医療従事者が病室を訪れた場合もタイマー14がリセットされるので、報知から医療従事者が病室を訪れるまでに所定時間に近い時間が経過した場合、次の報知が所定時間後となる。従って、医療従事者が病室を訪れた直後に報知が行われることがなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や介護施設などで看護師や介護者などが患者や被介護者を見守るための患者見守りシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、病院や介護施設などでは、ナースコールシステムが用いられている。ナースコールシステムは、病院の患者が医師や看護師のサポートを必要とする際、または介護施設の被介護者が介護師のサポートを必要とする際に、患者や被介護者(以下、これらをまとめて患者と記載する)がボタン状の呼出操作部を操作することによって医者や看護師、介護師(以下、これらをまとめて医療従事者と記載する)を呼び出すことができるように成されたシステムである。
【0003】
多くのナースコールシステムは、病室内のベッドの近傍やトイレ、浴室などに設置され、呼出操作部を備えるナースコール子機と、医療従事者が常駐するナースステーションに設置され、患者からの呼び出しを報知するナースコール親機と、病室や介護室などの各部屋(以下、これらをまとめて病室と記載する)の出入口付近の廊下側に設置され、病室内の患者の氏名を表示したり、病室内の患者が呼び出しを行ったりしていることを表示する廊下灯と、通話やデータの送受信に関する制御を行う制御機とを備えて構成されている。また、上述した構成に加えて、医療従事者が携行するPHS(Personal Handy phone System)端末などの携帯端末とPBX(Private Branch Exchange:電話交換機)とを備えたナースコールシステムも提供されている。
【0004】
このようなナースコールシステムでは、ナースコール子機の呼出操作部が操作されると、ナースコール子機にて生成された呼出信号が廊下灯を介してナースコール親機へ出力される。ナースコール親機や携帯端末では、患者から呼び出しが行われたことを音声などにより報知する。この報知を把握した医療従事者は、ナースコール親機に設置されているハンドセットをオフフックしたり、自身が携行している携帯端末をオフフックしたりすることで、呼び出しに応答することができる。
【0005】
また、ナースコール子機に通話機能が搭載されている場合には、ナースコール親機にて応答した後でナースコール子機との間で通話路が形成される。また、携帯端末で応答した後でナースコール子機との間で通話路が形成される。通話路が形成されると、医療従事者は患者と会話することができるので、患者がどのような用件で呼び出しを行ったのかを確認することができる。応答したり、会話したりした医療従事者は、原則的に患者の居る病室を訪れて看護行為を行う。
【0006】
ところで、ナースコール子機の呼出操作部の操作の有無は、患者に委ねられているため、患者によっては遠慮して呼出操作部を操作しないということがあった。そのため、患者が呼び出しを行ってからタイマーによる時間の計測を開始し、タイマーにより計測された時間が所定の時間となっても次の呼び出しが行われなかった場合に、擬似的な呼び出しを行う技術が知られている(例えば、特許文献1など)。この特許文献1に記載の技術では、医療従事者が患者を定期的に見守ることができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、患者が呼び出しを行う間隔が所定の時間となるだけなので、ナースコール子機による呼び出しに関係なく医療従事者が病室を訪れたことは無視されるので、医療従事者が病室を訪れた直後に擬似的な呼び出しが行われてしまい、医療従事者に負担をかけてしまうという問題があった。
【0008】
また、介護スケジュールで予め定めてある入室時刻になっても訪問介護者が被介護者の部屋に入室していない場合に、一定の猶予期間の後に訪問介護者に対して警告を行う技術が知られている(例えば、特許文献2など)。この特許文献2に記載の技術の介護スケジュールとして、上述した特許文献1に記載の所定の時間間隔での訪問を組み込めば、訪問介護者が被介護者の部屋に所定の間隔で入室するようになると考えられるため、訪問介護者が被介護者を定期的に見守ることができる。
【0009】
しかしながら、上述した従来技術では、訪問介護者に対して警告が行われてから、実際に訪問介護者が被介護者の部屋に入室するまでに所定の時間に近い時間が経過した場合には、訪問介護者が被介護者の部屋に入室してから次に警告が行われるまでの時間が短くなってしまうため、訪問介護者に負担をかけてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−285299号公報
【特許文献2】特開2000−259971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、医療従事者(特許文献2では訪問介護者)に負担をかけることなく、医療従事者がほぼ定期的に患者(特許文献2では被介護者)の病室を訪れることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明では、医療従事者に無線装置を携行させ、病室に入った無線装置と通信を行う通信装置を病室に設置する。そして、タイマーが動作してから通信装置が無線装置と通信を行ったか否かを判定し、タイマーが所定時間を計測しても通信装置が無線装置と通信を行っていないと判定したときにタイマーによる時間の計測をリセットし、所定時間に渡って医療従事者が病室を訪れていないことを報知するとともに、通信装置が無線装置と通信を行ったと判定した場合にもタイマーによる時間の計測をリセットするようにしている。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成した本発明によれば、タイマーによって計測した時間が所定時間となって報知が行われた場合も、医療従事者が病室を訪れて、その医療従事者が携行する無線装置が通信装置と通信を行っても、タイマーによる時間の計測がリセットされるので、報知が行われてから医療従事者が病室を訪れるまでに所定時間に近い時間が経過した場合に、医療従事者が病室を訪れてから次に報知が行われるまでの時間が所定時間となる。従って、医療従事者が病室を訪れた直後に報知が行われることがなくなり、医療従事者に負担をかけることなく、医療従事者がほぼ定期的に患者の病室を訪れることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態による患者見守りシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態による患者見守りシステムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による患者見守りシステムの構成例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態による患者見守りシステムは、無線装置1、通信装置2、見守り装置10を備えて構成されている。無線装置1は、各医療従事者によって携行されており、後述する通信装置2の通信範囲に入った場合に電源を供給されて、無線信号を送信する。なお、各医療従事者を識別する必要がある場合には、無線装置1を他の無線装置1と識別するための無線装置識別情報を無線信号に含ませるようにしても良い。
【0016】
通信装置2は、各病室に設置されており、病室に入った無線装置1に電源を供給して、電源が供給された無線装置1から送信された無線信号を受信する。ここで、通信装置2は、見守り装置10に接続されており、無線装置1から送信された無線信号を受信すると、通信信号を見守り装置10へ出力する。また、通信信号には、通信装置2を他の通信装置2と識別するための通信装置識別情報が含まれる。
【0017】
見守り装置10は、医療従事者が常駐するナースステーションなどに設置されており、制御部11、インターフェース12、記憶部13、タイマー14、報知部15、通信判定部16を備えて構成されている。制御部11は、見守り装置10の各構成要素を後述するように制御するためのものであり、CPU(Central Processing Unit)などにより構成されている。インターフェース12は、各通信装置2に接続されており、見守り装置10と各通信装置2とを電気的に接続する。ここで、インターフェース12は、通信装置2から出力された通信信号を入力する。
【0018】
記憶部13は、メモリやハードディスクドライブなどの記憶装置により構成されており、各通信装置2の通信装置識別情報と、その通信装置2が設置されている病室番号を示す病室番号情報とを関連付けて予め記憶している。タイマー14は、時間を計測するためのものであり、制御部11により動作の開始および停止を制御されている。報知部15は、スピーカーなどの放音装置や表示ディスプレイなどの表示装置、ランプなどの点灯装置の少なくとも一つの装置により構成されている。
【0019】
通信判定部16は、タイマー14が動作している状態で、インターフェース12が通信信号を入力したか否かを判定するためのものであり、CPUなどにより構成されている。なお、制御部11に用いられるCPUと通信判定部16に用いられるCPUとを同一のCPUにて構成するようにしても良い。
【0020】
このように構成された患者見守りシステムにおいて、病室の見守りを開始するタイミングで制御部11はタイマー14を動作させる。そして、タイマー14が計測した時間が所定時間になったか否かを制御部11にて判定する。ここで、所定時間は、医療従事者が病室を訪れるべき一定の間隔であり、例えば、3時間などに設定される。なお、この所定時間は、可変とするようにしても良いし、病室毎に可変とするようにしても良い。
【0021】
タイマー14が計測した時間が所定時間になったと制御部11にて判定した場合に、インターフェース12が通信信号を入力していないと通信判定部16が判定したときには、制御部11は、タイマー14による時間の計測をリセットするとともに、報知部15を動作させる。ここで、制御部11および通信判定部16は、病室(通信装置2)毎に上述した判定を行っており、タイマー14は、病室(通信装置2)毎に時間の計測を行っている。
【0022】
報知部15は、スピーカーから報知音を出力したり、表示ディスプレイに報知の表示を行ったり、ランプを点滅させたりして報知を行う。ここで、制御部11は、インターフェース12が通信信号を入力していない通信装置2の通信装置識別情報を抽出する。そして、制御部11は記憶部13を参照して、抽出した通信装置識別情報に関連付けて記憶されている病室番号情報を取得し、報知部15のスピーカーから出力される音声に病室番号を付加したり、表示ディスプレイに病室番号を表示させたり、該当する病室番号の近傍のランプを点滅させたりして、医療従事者が訪れるべき病室を特定する。
【0023】
報知部15が動作している状態で、見守り装置10に設けた図示しない停止ボタンが押下されると、制御部11は報知部15の動作を停止させる。なお、制御部11が報知部15を一定の時間だけ動作させるようにしても良い。
【0024】
一方、タイマー14が計測した時間が所定時間になっていないと制御部11にて判定した場合に(換言すると、タイマー14が計測した時間が所定時間になるまでに)、インターフェース12が通信信号を入力したと通信判定部16が判定したときには、制御部11は、タイマー14による時間の計測をリセットする。ここで、インターフェース12が通信信号を入力したと通信判定部16が判定した場合には、制御部11は、タイマー14による時間の計測をリセットすることになる。
【0025】
このように、本実施形態による患者見守りシステムでは、タイマー14が計測した時間が所定時間となるまでに無線装置1を携行する医療従事者が病室を訪れなかった場合、および、無線装置1を携行する医療従事者が病室を訪れた場合に、タイマー14による時間の計測がリセットされるので、医療従事者が所定時間に渡って病室を訪れていないことを示す報知が行われる間隔が所定時間以上となる。
【0026】
そのため、報知部15によって報知が行われても医療従事者が病室を訪れなかった場合には、報知が行われてから所定時間経過後に再び報知部15が報知を行うことになる。この場合、実際に医療従事者が病室を訪れる間隔が所定時間の二倍以上の時間となってしまうが、医療従事者が病室を訪れるように促すための報知が所定時間毎に行われるので、医療従事者がいずれ病室を訪れることになると考えられる。
【0027】
次に、本実施形態による患者見守りシステムの動作例を説明する。図2は、本実施形態による患者見守りシステムの動作例を示すフローチャートである。まず、通信装置2では、無線装置1と通信を行ったか否かを調べる(ステップS1)。無線装置1と通信を行っていないと通信装置2にて判定した場合には(ステップS1にてNO)、ステップS1の処理を繰り返す。一方、無線装置1と通信を行ったと通信装置2にて判定した場合には(ステップS1にてYES)、通信装置2は見守り装置10へ通信信号を出力して処理を終了する(ステップS2)。
【0028】
見守り装置10では、制御部11がタイマー14を動作させる(ステップS3)。ここで、制御部11がタイマー14を動作させるタイミングは、通信装置2が設置されている病室の見守りを開始するタイミングである。タイマー14にて計測した時間が所定時間経過したか否かを制御部11により調べる(ステップS4)。タイマー14にて計測した時間が所定時間経過したと制御部11にて判定した場合には(ステップS4にてYES)、制御部11はタイマー14による時間の計測をリセットし、報知部15を動作させて報知部15は報知を行う(ステップS5)。そして、ステップS6の処理へ移行する。
【0029】
一方、タイマー14にて計測した時間が所定時間経過していないと制御部11にて判定した場合には(ステップS4にてNO)、ステップS6の処理へ移行する。ステップS6では、インターフェース12が通信信号を入力したか否かを通信判定部16にて調べる。インターフェース12が通信信号を入力していないと通信判定部16にて判定した場合には(ステップS6にてNO)、ステップS4の処理に戻る。一方、インターフェース12が通信信号を入力したと通信判定部16にて判定した場合には(ステップS6にてYES)、制御部11はタイマー14による時間の計測をリセットする(ステップS7)。
【0030】
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、医療従事者に無線装置1を携行させ、病室に入った無線装置1と通信を行う通信装置2を病室に設置する。そして、病室の見守りを開始するタイミングで制御部11はタイマー14を動作させる。タイマー14が計測した時間が所定時間になったか否かを制御部11にて判定し、タイマー14が計測した時間が所定時間になったと制御部11にて判定した場合に、インターフェース12が通信信号を入力していないと通信判定部16が判定したときには、制御部11は、タイマー14による時間の計測をリセットするとともに、報知部15を動作させるようにしている。一方、タイマー14が計測した時間が所定時間になっていないと制御部11にて判定した場合に(換言すると、タイマー14が計測した時間が所定時間になるまでに)、インターフェース12が通信信号を入力したと通信判定部16が判定したときには、制御部11は、タイマー14による時間の計測をリセットするようにしている。
【0031】
これにより、タイマー14によって計測した時間が所定時間となって報知部15により報知が行われた場合も、医療従事者が病室を訪れて、その医療従事者が携行する無線装置1が通信装置2と通信を行っても、制御部11によってタイマー14による時間の計測がリセットされるので、報知が行われてから医療従事者が病室を訪れるまでに所定時間に近い時間が経過した場合に、医療従事者が病室を訪れてから次に報知が行われるまでの時間が所定時間となる。従って、医療従事者が病室を訪れた直後に報知が行われることがなくなり、医療従事者に負担をかけることなく、医療従事者がほぼ定期的に患者の病室を訪れることができるようになる。
【0032】
なお、前述した実施形態では、報知部15は見守り装置10に設けられているが、これに限定されない。例えば、医療従事者によって携行される携帯端末に報知部15を設け、この携帯端末を見守り装置10に連動させるようにしても良い。これにより、医療従事者は、ナースステーションに居なくても、報知を把握することができるようになる。
【0033】
また、前述した実施形態では、患者を見守るための専用の見守り装置10がナースステーションに設置されているが、これに限定されない。例えば、病院内に設置されているナースコールシステムに見守りシステムの機能を搭載するようにしても良い。この場合、通信装置2と見守り装置10のインターフェース12との通信は、既存のナースコール子機とナースコール親機との間の通信路を利用することが可能となり、その他、制御部11や記憶部13、報知部15などもナースコール親機に搭載されたものを兼用することができるようになる。
【0034】
また、前述した実施形態では、通信装置2が病室毎に設置されているが、これに限定されない。例えば、通信装置2を病床毎に設けるようにしても良い。これにより、各患者を個別に見守ることができるようになる。
【0035】
その他、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 無線装置
2 通信装置
10 見守り装置
11 制御部
12 インターフェース
13 記憶部
14 タイマー
15 報知部
16 通信判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療従事者によって携行される無線装置と、
病室内に設置され、前記病室内に入った無線装置と通信を行い、通信信号を出力する通信装置と、
前記通信装置から出力された通信信号を入力するインターフェースと、時間を計測するタイマーと、前記タイマーが動作してから前記インターフェースが前記通信信号を入力したか否かを判定する通信判定部と、所定時間に渡って医療従事者が前記病室を訪れていないことを報知する報知部と、前記タイマーが所定時間を計測したか否かを判定し、前記タイマーが所定時間を計測したと判定した場合に、前記インターフェースが前記通信信号を入力していないと前記通信判定部にて判定したときに前記タイマーによる時間の計測をリセットして前記報知部を動作させるとともに、前記インターフェースが前記通信信号を入力したと前記通信判定部にて判定した場合にも前記タイマーによる時間の計測をリセットする制御部とを有する患者見守り装置と、
を備えたことを特徴とする患者見守りシステム。

【図1】
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【図2】
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