患者防護・隔離用テント
【課題】
感染病から防護すると共に、感染病が疑われる者とそれ以外の疾患の者との接触を避けることによって、二次感染を可及的に防止し得る折り畳み式のテントを提供する。
【解決手段】
外側シートと内側シートとを重ねて形成したテント本体に通気部を設け、前記通気部に病原体の感染性を減少させる感染性減少手段を設けたことを特徴とする防護・離隔用の折り畳み可能なテントであり、感染性減少手段が発熱手段ないし消毒手段等を有することを特徴とするテント。
感染病から防護すると共に、感染病が疑われる者とそれ以外の疾患の者との接触を避けることによって、二次感染を可及的に防止し得る折り畳み式のテントを提供する。
【解決手段】
外側シートと内側シートとを重ねて形成したテント本体に通気部を設け、前記通気部に病原体の感染性を減少させる感染性減少手段を設けたことを特徴とする防護・離隔用の折り畳み可能なテントであり、感染性減少手段が発熱手段ないし消毒手段等を有することを特徴とするテント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症の患者を防護し隔離するためのテントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、SARSやエボラ出血熱などの感染症(細菌・ウィルス等の病原体が人体に入ることによって引き起こされる疾病)が出現し、現在、新型インフルエンザの発生が特に懸念されている。新型インフルエンザとは、人が免疫を持たないインフルエンザであって、世界保健機関(WHO)は平成16年末に「出現の可能性がいつになく高まっている。」と警鐘し、厚生労働省は、最悪の場合、国内での患者数(医療機関を受診する患者数)は約2500万人、死亡者数は約64万人に及ぶと推計している。
【0003】
この点、感染病の性質上、感染病が疑われる者とそれ以外の疾患の患者との接触を避けるべく、受診患者同士を隔離した状態で待機ないし入院させるための病床が必要になるが、その確保が極めて不十分である。感染症指定医療機関で確保されている病床は1,688床に過ぎない(2005年10月現在)。また、感染症指定医療機関で不足する場合は、感染症指定医療機関以外の医療機関や大型施設等に患者を入院させることが想定されているが(結核病床の活用)、それも15,584床に過ぎず、上記推計患者数には遠く及ばない。
【0004】
したがって、感染病が疑われる者とそれ以外の疾患の患者との接触を避けることによって、二次感染を可及的に防止し得る方策を確立することは喫緊の課題であるが、特許文献1に示すシェルターを建造する等、医療機関において設備を増強するのは時間的にも経済的にも現実的ではない。
【特許文献1】特開2002−34848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、感染病から防護すると共に、感染病が疑われる者とそれ以外の疾患の者との接触を避けることによって、二次感染を可及的に防止し得る折り畳み式のテントを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、外側シートと内側シートと重ねて形成したテント本体に通気部を設け、前記通気部に病原体の感染性を減少させる感染性減少手段を設けたことを特徴とする防護・離隔用の折り畳み可能なテントである(請求項1)。
【0007】
また、前記通気部に設けた感染性減少手段が、発熱手段を有することを特徴とする請求項1記載のテントである(請求項2)。
【0008】
また、前記通気部に設けた感染性減少手段が、消毒手段を有することを特徴とする請求項1記載のテントである(請求項3)。
【0009】
また、前記消毒手段が、消毒剤を含有する消毒剤含有部であることを特徴とする請求項3記載のテントである(請求項4)。
【0010】
また、前記消毒剤含有部に対して消毒剤を供給する供給手段を有することを特徴とする請求項4記載のテントである(請求項5)。
【0011】
また、前記消毒剤含有部が、不織布であることを特徴とする請求項4記載のテントである(請求項6)。
【0012】
また、前記消毒剤含有部が、親水性繊維に繊維状の吸水ポリマーを配合して成ることを特徴とする請求項4記載のテントである(請求項7)。
【0013】
また、前記通気部に設けた感染性減少手段が、感染性を減少させる波長光を照射する照射手段を有することを特徴とする請求項1記載のテントである(請求項8)。
【0014】
また、通気部に設けた感染性減少手段が、発熱手段と、消毒手段と、発熱手段と消毒手段とを隔てる断熱手段とを有することを特徴とする請求項1記載のテントである(請求項9)。
【0015】
また、前記通気部に設けた感染性減少手段が、発熱手段と防塵手段とを有することを特徴とする請求項1記載のテントである(請求項10)。
【0016】
また、前記通気部に設けた感染性減少手段が、消毒手段と防塵手段とを有することを特徴とする請求項1記載のテントである(請求項11)。
【0017】
また、内側シートと透明性を有するシートとすると共に、外側シートの一部を開閉可能に切り欠いてテント内部を確認するための確認窓を設けたことを特徴とする請求項1〜11記載のテントである(請求項12)。
【0018】
また、前記通気部に備えた感染性減少手段が、着脱可能であることを特徴とする請求項1〜12記載のテントである(請求項13)。
【0019】
また、前記通気部にテント内を換気する換気手段を備えたことを特徴とする請求項1〜13記載のテントである(請求項14)。
【0020】
また、発光部をテント本体に設けると共に、前記発光部を点灯するための操作部をテント内部に設けたことを特徴とする請求項1〜14記載のテントである(請求項15)。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、テント内部に収容された者から発せられ得る感染性病原体は、感染性減少手段を有する通気部を介してテント外部に排出されるため(感染性のあるウィルスの量が減少するため)、テント外部に存する者に対する二次感染は可及的に防止できる。
【0022】
また、テント外部に存する者から発せられ得る感染性病原体は、感染性減少手段を有する通気部を介してテント内部に流入するため、テント内部に収容された者に対する二次感染を可及的に防止できる。
【0023】
また、本発明は折り畳み式のテントであるから、折り畳んだ状態でコンパクトに収納しておくことが可能であるため、限られたスペースであっても多くの病床を確保することが可能であると共に安価に製造できる。したがって、病床の確保ないし維持コストが軽減され、病床不足という現状に対して極めて現実的な対応が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例として示す各図と共に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1に実施例1の外観を示す。実施例1は、外側シート10と内側シート11とを重ね合わせて形成したテント本体1に通気部2を設け、前記通気部2に病原体の感染性(感染性のあるウィルスの量)を減少させる感染性減少手段21を設けたことを特徴とする折り畳み可能なテントである。また、テント本体1は患者の出入口3と、テント内部を視認するための確認窓4と、テント本体の外部に設けた発光部5と、太陽光によって発電し、テント内部の内部灯(図示しない)等に電気を供給するための発電部6とを備える。
【0026】
(外側シート10)
外側シート10は、テント内部と外部を隔離すると共にテント内部の密閉性を高めるためのものである。テント外部から視線を排除してプライバシーを確保する観点から不透明性シートで構成されるのが好ましい。
【0027】
(内側シート11)
内側シート11は、外側シート10の裏面に重合され、テント内部の密閉性を高めるものである。テント内部を視認するための確認窓4を形成するべく、透明性シートで構成される。
【0028】
外側シート10及び内側シート11は、底面部(地面方向面)と前面部(入り口方向面)と後面部(入り口反対方向面)と左右面部とからなり、これらを溶着等で連結することにより密閉性を高め、テント内部をテント外部から隔離している。
【0029】
なお、外側シート10および内側シート11は通気性がないもの又は通気性が殆どないものを用いることができ、具体的には樹脂、ゴム、その他の材料からなるフィルム、シート又は織布若しく不織布等の布帛を採用することができる。また、布帛と樹脂、ゴムその他の材料とを複合させたもの等を採用することもできる。
【0030】
また、テント本体1は感染性病原体が付着する可能性が高いため、繰り返して使用するべきではなく、一患者による一使用毎に焼却するのが好ましい。したがって、焼却時に有毒ガス(塩素ガス、ダイオキシン類等)が大量に発生しないように、外側シート10および内側シート11をポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等で構成するのが好ましい。
【0031】
また、外側シート10及び内側シート11の2層構造であるが、少なくとも2層構造であれば良く、両シートの間にシートを介在させることによって3層や4層構造にしても良い。
【0032】
また、折り畳み構造はキャンプ用のテント等の公知の折り畳み構造を採用できる。
【0033】
なお、テント内は陽圧又は陰圧とすることが可能であり、特にテント内部の気圧をその外部の気圧より低くすることによって、外部に感染症の病原体を拡散させないようにするのが好ましい。
【0034】
(出入り口3)
出入口3は、人の出入を可能とすると共にテント内部の密閉性を高めるべく、外側シート10に設けたファスナーf1と、内側シート11に設けたファスナーf2よって密封される。
【0035】
なお、ファスナーは気密防水性を有することが好ましく、例えば、実開昭58−181210号公報、特公昭63−8763号公報、特公平1−54041号公報、特公平2−16648号公報、実公平5−2098号公報などに開示された務歯構造の気密防水性ファスナーを用いるのが好ましい。
【0036】
また、本実施例では、外側シート10に設けたファスナーf1と、内側シート11に設けたファスナーf2の2重のファスナーを採用したが、外側シート10にのみファスナーf1を設ける場合もある。この場合、内側シート11の前面(入り口3面)には縦方切り込みを入れて入り口を確保すると共に、切れ込みによって生じる左右のシート片が重なり合う状態(両シート片の両端部が前後方向に重複する重複部が形成される状態)となるような構成を採用する。
【0037】
また、外側シート10には外部に注意を喚起するための蛍光塗料等を塗布した蛍光部を部分的に設けることもでき、また、患者の氏名、住所、病名、病状などを記入するための表示部などを設けることもできる。
【0038】
(確認窓4)
確認窓4は、テント内部を視認するためのものである。外側シート10の一部を開閉可能に切り欠いて開閉蓋40を形成したものであり、確認者は開閉蓋40を開き、透明な内側シート11を介してテント内部を視認できる。
【0039】
また、同様の構造を用いてテント本体の上部に採光窓を設けることもできる。
【0040】
(通気部2)
通気部2は、図2に示すように、防塵フィルターたる防塵部20と感染性減少手段たる消毒剤含有部21とからなる。
【0041】
防塵部20は防塵機能を奏するものであれば良いが、0.3μmの粒子を1回に通過させて99.97%以上の集塵効果を持つヘパフィルターが好ましい。
【0042】
(消毒剤含有部21)
消毒剤含有部21は病原性を有する微生物を死滅させる又はその増殖を抑止するものであり、消毒剤を含ませた不織布で構成される。例えば、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維などからなる不織布を採用する。なお、不織布に代えて、紙、綿等の吸水性を備えるものであっても良い。
【0043】
消毒剤は、スプレー等によって吹き付けられ又は浸漬される等して消毒剤含有部21たる不織布に含有させる。消毒剤は病原性を有する微生物を死滅させる又はその増殖を抑止する薬剤であり、例えば、ヨウ素剤、マーキュロクロム液、グルコン酸クロルヘキシジン、アクリノール、エタノール、過酸化水素水(オキシドール)、ホウ酸等である。
【0044】
なお、消毒剤は増粘剤を含んだもの(例えば、エタノールに増粘剤たるカルボキシビニルポリマーを添加したもの)であれば、消毒剤の揮発を遅らせることができるため好ましい。
【0045】
また、消毒剤を速やかに吸収すると共に比較的長時間に亘って消毒剤を含有する(保持する)構成として、消毒剤含有部21を、親水性繊維に繊維状の吸水ポリマーを配合して成る構成とするのが好ましい。
【0046】
(親水性繊維・吸水ポリマー繊維)
親水性繊維は、分子構造中に水酸基を持つものであり、例えば、パルプ、綿、レーヨン等に代表されるセルロース繊維や、アクリロニトリル、ポリビニルアルコール等の親水性合成繊維等が挙げられ、これらのなかから一種類のみ用いても良いし、数種類混合して用いても良い。
【0047】
吸水ポリマー繊維は、吸水ポリマーを繊維状にしたもので、優れた吸水性を示すものである。例えば、アクリル繊維を加水分解し、表面近傍のアクリルニトリルのニトリル基を加水分解でアクリル酸やアクリルアミド基に変性した繊維等を用いる。吸水ポリマー繊維は、吸水量約150ml/g、荷重下の保水量約20ml/gのものが好適に用いられる。
【0048】
なお、上記吸水量は、5デニール×51mm(デニール×繊維長)からなる吸水ポリマー繊維の0.25gを、150mlの純水(蒸留水)に浸漬し、攪拌しながら10分間放置し、その後32メッシュの金属ふるいの上に注ぎ、5分間水切りをして、メッシュ上に残った重量から測定したものである(吸水量=重量−0.250/0.250)。
【0049】
吸水ポリマー繊維は、東洋紡績(株)のランシール(商標名)、鐘紡(株)のベルオアシス(商標名)などを挙げることができる。
【0050】
なお、親水性繊維に繊維状の吸水ポリマーを配合して密着させるために、熱融着繊維を配合することもできる。熱融着繊維は、加熱することにより繊維が溶融し、相互に接着する繊維であり、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、及びポリビニルアルコール等のオレフィン繊維、ポリエチレン−ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン−ポリエステル複合繊維、低融点ポリエステル−ポリエステル複合繊維及び繊維表面が親水性であるポリビニルアルコール−ポリプロピレン複合繊維、ポリビニルアルコール−ポリエステル複合繊維が用いられる。
【0051】
なお、消毒剤は経時的に揮発するため、消毒剤含有部21の感染性減少作用が衰えてゆくことから、一定時間毎に消毒剤を再供給することになる(スプレー等で消毒液含有部に吹き付ける。)。そこで、消毒剤含有部21に対して消毒剤を供給する供給手段を備えることが好ましい。供給手段としては、消毒剤を収容した袋などの容器を用い、該容器と消毒剤含有部21を管等で連結する構成が採用される。
【0052】
(発熱部22)
感染性減少手段たる消毒剤含有部21に代えて、発熱手段たる発熱部22を用いることもできる。例えば、図3に示すように、防塵フィルターたる防塵部20と、感染性減少手段たる発熱部22と、断熱手段たる断熱部23を積層して成ることもできる。
【0053】
発熱部22は病原性を有する微生物を死滅させる又はその増殖を抑止するために病原体を加熱するものであり、約40℃〜80℃程度の発熱で良い。例えば、電力供給(DC又はAC)によって発熱するカーボン系面状発熱体を用いる。なお、カーボン系面状発熱体は通気性を持たせるため複数の通気孔を有する。
【0054】
なお、面状発熱体としては、面状の絶縁輻射体の内部に抵抗発熱体を装着し、発熱体の伝導熱により加熱された輻射体からの遠赤外線輻射を利用する方式のヒーターであればよく、抵抗発熱体としては金属薄板、金属酸化物の表面処理、セラミクッス板タイプ、炭素繊維タイプ等を用いることができる。
【0055】
断熱部23は、熱伝導を抑える障壁の働きをするものであって、熱伝導性の低い素材を用いるが、通気性を備えるべく通気孔を有する。具体的には、グラスウール、ロックウール、ウレタンフォーム、ポリスチレンフォームなどで構成される。なお、断熱部23は、消毒剤含有部21と発熱部22とが隣接する際にその間に配置することによって、消毒剤含有部21から消毒剤が揮発するのを防止する。
【0056】
また、発熱部22は、シーズヒーター(金属パイプの中心に発熱コイルを挿入し、金属パイプと発熱コイルの隙間をMgOパウダーで固めた直管状の構造)や、蒸気または高温水によって放射熱を放出するものであってもよい。
【0057】
また、図4に示すように、防塵部20―消毒剤含有部21―断熱部23―発熱部22―断熱部23―防塵部20のように積層して構成することも可能である。
【0058】
また、図5のように、発熱部22として、通気孔を設けた懐炉24を用いてもよい。懐炉24は空気中で発熱する発熱組成物を通気性の収納袋に収容し、この内袋を非通気性の袋で包装した一般的なものであれば良く、例えば、鉄粉、水、活性炭、木粉、バーミキュライト、食塩等からなる発熱体をシート状にした内袋に封入したカイロ本体と、該カイロ本体を外気から遮断して発熱を防ぐための外装袋に包装したカイロが好ましい。
【0059】
また、発熱部22として、マイクロウェーブによって発熱する磁性体を用いることもできる。
【0060】
(発光部5)
発光部5は、テント内部の患者自身が体調の悪化等を外部の看護者に訴えるための手段であって、テント本体の外部に設けられる。テント内部には発光部5を点灯するための操作部(図示しない)が設けられる。
【0061】
発光部5は、例えば、赤色灯と黄色灯の複数の色の異なる発光部5を備え、操作部の操作方法に応じていずれかを点灯させるようにし(例えば、5〜10秒のスイッチON操作で黄色灯が点灯し、10秒以上のスイッチON操作で赤色灯が点灯する)、テント内部の患者の緊急性のレベルに合わせた点灯を可能にすることもできる。
【0062】
また、複数のテントを配置した場合に、一箇所で集中的に管理するのを容易にするため(発光部5の点灯の有無を容易に認識するようにするため)、各テントの操作部が操作されると発光部が点灯すると共に信号を発して(無線・有線を問わない)、一つの集中管理部がかかる信号を受信して、当該点灯したテントを認識することもできる。
【実施例2】
【0063】
実施例2を図6、7に示す。実施例1とは通気部2を除いて同一の構成を備えている。
【0064】
通気部2は、着脱自在であって感染性減少手段を備えた先端カートリッジ部26と、先端カートリッジ部26が装着されると共にテント内部に連結される通気路25とからなる。
【0065】
先端カートリッジ部26は筒体であって、図4に示す感染性減少手段を有する積層体(テント外側から順に、「防塵部20―消毒剤含有部21―断熱部23―発熱部22―断熱部23―防塵部20」)が内蔵されると共に(各部が各部に対応する凹部(先端カートリッジ部26の内周に形成された凹部)に嵌合した状態で内蔵されると共に)、筒体の端部の内周には螺子部27が形成され、通気路25の端部に形成された螺子部28に対して螺子止め可能に構成される。なお、通気路25は蛇腹状に形成されており、先端カートリッジ部26の向きは上下左右方向に可変であり、通常は防塵作用を考慮して下向きが好ましい。
【0066】
なお、先端カートリッジ部26に内蔵される感染性減少手段は、上記に限らず、テント外側から順に、「防塵部20―消毒剤含有部21―防塵部20」からなる積層体や、「発熱部22―断熱部23―防塵部20」からなる積層体であっても良い。
【0067】
さらに、先端カートリッジ部26に電動式のファンFを内蔵することもできる。一対の先端カートリッジ部26(テント左面の前後方向に配置された二つの通気部2に対応する各先端カートリッジ部26)のそれぞれに電動式のファンを設け、一の電動式ファンによってテント内の空気をテント外に排気し、他の電動式ファンによってテント外の空気をテント内に強制的に取り込むことができる。
【0068】
また、図8に示すように、紫外線や赤外線等の感染性を減少させる波長光を照射する手段たる照射部29を有することも可能である。
【0069】
また、図11、12に示すように、先端カートリッジ部26の内側に消毒剤を収容する収容部26aを形成し、収容部26aの開口26bから消毒剤含有部21に消毒剤を供給する構成を採用することもできる(なお、供給口26cは蓋で閉じられる。)。また、図13に示すように、先端カートリッジ部26に供給口26cを介して供給タンクTを螺子止等で外付けし、先端カートリッジ部26に形成した供給口26cを通じて消毒剤を供給することもできる。
【実施例3】
【0070】
実施例3を図9、10に示す。実施例1とは通気部2を除いて同一の構成を備えている。
【0071】
通気部2は、換気手段たるファンFによってテント内部から引き出された空気が通過する通気路25aと、テント内部に送り込まれる空気が通過する通気路25bと、感染性減少手段たる消毒剤含有部21及び発熱部22と、防塵部20と、断熱部23と、感染性を減少させる波長光を照射する照射部29と、スリット開口Sを備える。
【0072】
通気部2は矩形状の箱体であって、略中央に形成された隔壁Wによって2部屋に分離され、一方の部屋の背面にファン29を介してテント内部に至る通気路25aが接続され、他方の部屋の上面にテント内部に至る通気路25bが接続されている。前記一方の部屋の正面のスリット開口Sの内側には、消毒剤含有部21と発熱部22と防塵部20と断熱部23とからなる積層体が取り付けられており、ファンFによって吸引された空気は感染性減少手段21、22を介してテント外部に放出される。他方の部屋の正面のスリット開口Sからはテント外部の空気が引き込まれるが、ここにも上記と同様の積層体が取り付けられていることから、吸引された空気は感染性減少手段を介してテント内部に取り込まれる。このように、テント外部の空気を強制的に取り込んでテント内を循環させ、病原体の感染性をなくして不活性化するのが好ましい。
【0073】
なお、略中央に形成された隔壁Wは必ずしも必要ではなく、隔壁Wがなくとも、一定の空気循環は可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施例の斜視図
【図2】本発明の通気部の分解斜視図
【図3】本発明の通気部の分解斜視図
【図4】本発明の通気部の分解斜視図
【図5】本発明の通気部の分解斜視図
【図6】本発明の実施例の斜視図
【図7】本発明の通気部の断面図
【図8】本発明の通気部の断面図
【図9】本発明の実施例の斜視図
【図10】本発明の通気部の部分断面斜視図
【図11】本発明の通気部の一部部分断面図
【図12】図11のA−A線断面図。
【図13】図11の斜視図。
【符号の説明】
【0075】
1 テント本体
10 外側シート
11 内側シート
2 通気部
20 防塵部
21 消毒剤含有部
22 発熱部
23 断熱部
25 通気路
26 先端カートリッジ部
29 照射部
3 出入り口
4 確認窓
5 発光部
6 発電部
F ファン
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症の患者を防護し隔離するためのテントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、SARSやエボラ出血熱などの感染症(細菌・ウィルス等の病原体が人体に入ることによって引き起こされる疾病)が出現し、現在、新型インフルエンザの発生が特に懸念されている。新型インフルエンザとは、人が免疫を持たないインフルエンザであって、世界保健機関(WHO)は平成16年末に「出現の可能性がいつになく高まっている。」と警鐘し、厚生労働省は、最悪の場合、国内での患者数(医療機関を受診する患者数)は約2500万人、死亡者数は約64万人に及ぶと推計している。
【0003】
この点、感染病の性質上、感染病が疑われる者とそれ以外の疾患の患者との接触を避けるべく、受診患者同士を隔離した状態で待機ないし入院させるための病床が必要になるが、その確保が極めて不十分である。感染症指定医療機関で確保されている病床は1,688床に過ぎない(2005年10月現在)。また、感染症指定医療機関で不足する場合は、感染症指定医療機関以外の医療機関や大型施設等に患者を入院させることが想定されているが(結核病床の活用)、それも15,584床に過ぎず、上記推計患者数には遠く及ばない。
【0004】
したがって、感染病が疑われる者とそれ以外の疾患の患者との接触を避けることによって、二次感染を可及的に防止し得る方策を確立することは喫緊の課題であるが、特許文献1に示すシェルターを建造する等、医療機関において設備を増強するのは時間的にも経済的にも現実的ではない。
【特許文献1】特開2002−34848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、感染病から防護すると共に、感染病が疑われる者とそれ以外の疾患の者との接触を避けることによって、二次感染を可及的に防止し得る折り畳み式のテントを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、外側シートと内側シートと重ねて形成したテント本体に通気部を設け、前記通気部に病原体の感染性を減少させる感染性減少手段を設けたことを特徴とする防護・離隔用の折り畳み可能なテントである(請求項1)。
【0007】
また、前記通気部に設けた感染性減少手段が、発熱手段を有することを特徴とする請求項1記載のテントである(請求項2)。
【0008】
また、前記通気部に設けた感染性減少手段が、消毒手段を有することを特徴とする請求項1記載のテントである(請求項3)。
【0009】
また、前記消毒手段が、消毒剤を含有する消毒剤含有部であることを特徴とする請求項3記載のテントである(請求項4)。
【0010】
また、前記消毒剤含有部に対して消毒剤を供給する供給手段を有することを特徴とする請求項4記載のテントである(請求項5)。
【0011】
また、前記消毒剤含有部が、不織布であることを特徴とする請求項4記載のテントである(請求項6)。
【0012】
また、前記消毒剤含有部が、親水性繊維に繊維状の吸水ポリマーを配合して成ることを特徴とする請求項4記載のテントである(請求項7)。
【0013】
また、前記通気部に設けた感染性減少手段が、感染性を減少させる波長光を照射する照射手段を有することを特徴とする請求項1記載のテントである(請求項8)。
【0014】
また、通気部に設けた感染性減少手段が、発熱手段と、消毒手段と、発熱手段と消毒手段とを隔てる断熱手段とを有することを特徴とする請求項1記載のテントである(請求項9)。
【0015】
また、前記通気部に設けた感染性減少手段が、発熱手段と防塵手段とを有することを特徴とする請求項1記載のテントである(請求項10)。
【0016】
また、前記通気部に設けた感染性減少手段が、消毒手段と防塵手段とを有することを特徴とする請求項1記載のテントである(請求項11)。
【0017】
また、内側シートと透明性を有するシートとすると共に、外側シートの一部を開閉可能に切り欠いてテント内部を確認するための確認窓を設けたことを特徴とする請求項1〜11記載のテントである(請求項12)。
【0018】
また、前記通気部に備えた感染性減少手段が、着脱可能であることを特徴とする請求項1〜12記載のテントである(請求項13)。
【0019】
また、前記通気部にテント内を換気する換気手段を備えたことを特徴とする請求項1〜13記載のテントである(請求項14)。
【0020】
また、発光部をテント本体に設けると共に、前記発光部を点灯するための操作部をテント内部に設けたことを特徴とする請求項1〜14記載のテントである(請求項15)。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、テント内部に収容された者から発せられ得る感染性病原体は、感染性減少手段を有する通気部を介してテント外部に排出されるため(感染性のあるウィルスの量が減少するため)、テント外部に存する者に対する二次感染は可及的に防止できる。
【0022】
また、テント外部に存する者から発せられ得る感染性病原体は、感染性減少手段を有する通気部を介してテント内部に流入するため、テント内部に収容された者に対する二次感染を可及的に防止できる。
【0023】
また、本発明は折り畳み式のテントであるから、折り畳んだ状態でコンパクトに収納しておくことが可能であるため、限られたスペースであっても多くの病床を確保することが可能であると共に安価に製造できる。したがって、病床の確保ないし維持コストが軽減され、病床不足という現状に対して極めて現実的な対応が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例として示す各図と共に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1に実施例1の外観を示す。実施例1は、外側シート10と内側シート11とを重ね合わせて形成したテント本体1に通気部2を設け、前記通気部2に病原体の感染性(感染性のあるウィルスの量)を減少させる感染性減少手段21を設けたことを特徴とする折り畳み可能なテントである。また、テント本体1は患者の出入口3と、テント内部を視認するための確認窓4と、テント本体の外部に設けた発光部5と、太陽光によって発電し、テント内部の内部灯(図示しない)等に電気を供給するための発電部6とを備える。
【0026】
(外側シート10)
外側シート10は、テント内部と外部を隔離すると共にテント内部の密閉性を高めるためのものである。テント外部から視線を排除してプライバシーを確保する観点から不透明性シートで構成されるのが好ましい。
【0027】
(内側シート11)
内側シート11は、外側シート10の裏面に重合され、テント内部の密閉性を高めるものである。テント内部を視認するための確認窓4を形成するべく、透明性シートで構成される。
【0028】
外側シート10及び内側シート11は、底面部(地面方向面)と前面部(入り口方向面)と後面部(入り口反対方向面)と左右面部とからなり、これらを溶着等で連結することにより密閉性を高め、テント内部をテント外部から隔離している。
【0029】
なお、外側シート10および内側シート11は通気性がないもの又は通気性が殆どないものを用いることができ、具体的には樹脂、ゴム、その他の材料からなるフィルム、シート又は織布若しく不織布等の布帛を採用することができる。また、布帛と樹脂、ゴムその他の材料とを複合させたもの等を採用することもできる。
【0030】
また、テント本体1は感染性病原体が付着する可能性が高いため、繰り返して使用するべきではなく、一患者による一使用毎に焼却するのが好ましい。したがって、焼却時に有毒ガス(塩素ガス、ダイオキシン類等)が大量に発生しないように、外側シート10および内側シート11をポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等で構成するのが好ましい。
【0031】
また、外側シート10及び内側シート11の2層構造であるが、少なくとも2層構造であれば良く、両シートの間にシートを介在させることによって3層や4層構造にしても良い。
【0032】
また、折り畳み構造はキャンプ用のテント等の公知の折り畳み構造を採用できる。
【0033】
なお、テント内は陽圧又は陰圧とすることが可能であり、特にテント内部の気圧をその外部の気圧より低くすることによって、外部に感染症の病原体を拡散させないようにするのが好ましい。
【0034】
(出入り口3)
出入口3は、人の出入を可能とすると共にテント内部の密閉性を高めるべく、外側シート10に設けたファスナーf1と、内側シート11に設けたファスナーf2よって密封される。
【0035】
なお、ファスナーは気密防水性を有することが好ましく、例えば、実開昭58−181210号公報、特公昭63−8763号公報、特公平1−54041号公報、特公平2−16648号公報、実公平5−2098号公報などに開示された務歯構造の気密防水性ファスナーを用いるのが好ましい。
【0036】
また、本実施例では、外側シート10に設けたファスナーf1と、内側シート11に設けたファスナーf2の2重のファスナーを採用したが、外側シート10にのみファスナーf1を設ける場合もある。この場合、内側シート11の前面(入り口3面)には縦方切り込みを入れて入り口を確保すると共に、切れ込みによって生じる左右のシート片が重なり合う状態(両シート片の両端部が前後方向に重複する重複部が形成される状態)となるような構成を採用する。
【0037】
また、外側シート10には外部に注意を喚起するための蛍光塗料等を塗布した蛍光部を部分的に設けることもでき、また、患者の氏名、住所、病名、病状などを記入するための表示部などを設けることもできる。
【0038】
(確認窓4)
確認窓4は、テント内部を視認するためのものである。外側シート10の一部を開閉可能に切り欠いて開閉蓋40を形成したものであり、確認者は開閉蓋40を開き、透明な内側シート11を介してテント内部を視認できる。
【0039】
また、同様の構造を用いてテント本体の上部に採光窓を設けることもできる。
【0040】
(通気部2)
通気部2は、図2に示すように、防塵フィルターたる防塵部20と感染性減少手段たる消毒剤含有部21とからなる。
【0041】
防塵部20は防塵機能を奏するものであれば良いが、0.3μmの粒子を1回に通過させて99.97%以上の集塵効果を持つヘパフィルターが好ましい。
【0042】
(消毒剤含有部21)
消毒剤含有部21は病原性を有する微生物を死滅させる又はその増殖を抑止するものであり、消毒剤を含ませた不織布で構成される。例えば、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維などからなる不織布を採用する。なお、不織布に代えて、紙、綿等の吸水性を備えるものであっても良い。
【0043】
消毒剤は、スプレー等によって吹き付けられ又は浸漬される等して消毒剤含有部21たる不織布に含有させる。消毒剤は病原性を有する微生物を死滅させる又はその増殖を抑止する薬剤であり、例えば、ヨウ素剤、マーキュロクロム液、グルコン酸クロルヘキシジン、アクリノール、エタノール、過酸化水素水(オキシドール)、ホウ酸等である。
【0044】
なお、消毒剤は増粘剤を含んだもの(例えば、エタノールに増粘剤たるカルボキシビニルポリマーを添加したもの)であれば、消毒剤の揮発を遅らせることができるため好ましい。
【0045】
また、消毒剤を速やかに吸収すると共に比較的長時間に亘って消毒剤を含有する(保持する)構成として、消毒剤含有部21を、親水性繊維に繊維状の吸水ポリマーを配合して成る構成とするのが好ましい。
【0046】
(親水性繊維・吸水ポリマー繊維)
親水性繊維は、分子構造中に水酸基を持つものであり、例えば、パルプ、綿、レーヨン等に代表されるセルロース繊維や、アクリロニトリル、ポリビニルアルコール等の親水性合成繊維等が挙げられ、これらのなかから一種類のみ用いても良いし、数種類混合して用いても良い。
【0047】
吸水ポリマー繊維は、吸水ポリマーを繊維状にしたもので、優れた吸水性を示すものである。例えば、アクリル繊維を加水分解し、表面近傍のアクリルニトリルのニトリル基を加水分解でアクリル酸やアクリルアミド基に変性した繊維等を用いる。吸水ポリマー繊維は、吸水量約150ml/g、荷重下の保水量約20ml/gのものが好適に用いられる。
【0048】
なお、上記吸水量は、5デニール×51mm(デニール×繊維長)からなる吸水ポリマー繊維の0.25gを、150mlの純水(蒸留水)に浸漬し、攪拌しながら10分間放置し、その後32メッシュの金属ふるいの上に注ぎ、5分間水切りをして、メッシュ上に残った重量から測定したものである(吸水量=重量−0.250/0.250)。
【0049】
吸水ポリマー繊維は、東洋紡績(株)のランシール(商標名)、鐘紡(株)のベルオアシス(商標名)などを挙げることができる。
【0050】
なお、親水性繊維に繊維状の吸水ポリマーを配合して密着させるために、熱融着繊維を配合することもできる。熱融着繊維は、加熱することにより繊維が溶融し、相互に接着する繊維であり、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、及びポリビニルアルコール等のオレフィン繊維、ポリエチレン−ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン−ポリエステル複合繊維、低融点ポリエステル−ポリエステル複合繊維及び繊維表面が親水性であるポリビニルアルコール−ポリプロピレン複合繊維、ポリビニルアルコール−ポリエステル複合繊維が用いられる。
【0051】
なお、消毒剤は経時的に揮発するため、消毒剤含有部21の感染性減少作用が衰えてゆくことから、一定時間毎に消毒剤を再供給することになる(スプレー等で消毒液含有部に吹き付ける。)。そこで、消毒剤含有部21に対して消毒剤を供給する供給手段を備えることが好ましい。供給手段としては、消毒剤を収容した袋などの容器を用い、該容器と消毒剤含有部21を管等で連結する構成が採用される。
【0052】
(発熱部22)
感染性減少手段たる消毒剤含有部21に代えて、発熱手段たる発熱部22を用いることもできる。例えば、図3に示すように、防塵フィルターたる防塵部20と、感染性減少手段たる発熱部22と、断熱手段たる断熱部23を積層して成ることもできる。
【0053】
発熱部22は病原性を有する微生物を死滅させる又はその増殖を抑止するために病原体を加熱するものであり、約40℃〜80℃程度の発熱で良い。例えば、電力供給(DC又はAC)によって発熱するカーボン系面状発熱体を用いる。なお、カーボン系面状発熱体は通気性を持たせるため複数の通気孔を有する。
【0054】
なお、面状発熱体としては、面状の絶縁輻射体の内部に抵抗発熱体を装着し、発熱体の伝導熱により加熱された輻射体からの遠赤外線輻射を利用する方式のヒーターであればよく、抵抗発熱体としては金属薄板、金属酸化物の表面処理、セラミクッス板タイプ、炭素繊維タイプ等を用いることができる。
【0055】
断熱部23は、熱伝導を抑える障壁の働きをするものであって、熱伝導性の低い素材を用いるが、通気性を備えるべく通気孔を有する。具体的には、グラスウール、ロックウール、ウレタンフォーム、ポリスチレンフォームなどで構成される。なお、断熱部23は、消毒剤含有部21と発熱部22とが隣接する際にその間に配置することによって、消毒剤含有部21から消毒剤が揮発するのを防止する。
【0056】
また、発熱部22は、シーズヒーター(金属パイプの中心に発熱コイルを挿入し、金属パイプと発熱コイルの隙間をMgOパウダーで固めた直管状の構造)や、蒸気または高温水によって放射熱を放出するものであってもよい。
【0057】
また、図4に示すように、防塵部20―消毒剤含有部21―断熱部23―発熱部22―断熱部23―防塵部20のように積層して構成することも可能である。
【0058】
また、図5のように、発熱部22として、通気孔を設けた懐炉24を用いてもよい。懐炉24は空気中で発熱する発熱組成物を通気性の収納袋に収容し、この内袋を非通気性の袋で包装した一般的なものであれば良く、例えば、鉄粉、水、活性炭、木粉、バーミキュライト、食塩等からなる発熱体をシート状にした内袋に封入したカイロ本体と、該カイロ本体を外気から遮断して発熱を防ぐための外装袋に包装したカイロが好ましい。
【0059】
また、発熱部22として、マイクロウェーブによって発熱する磁性体を用いることもできる。
【0060】
(発光部5)
発光部5は、テント内部の患者自身が体調の悪化等を外部の看護者に訴えるための手段であって、テント本体の外部に設けられる。テント内部には発光部5を点灯するための操作部(図示しない)が設けられる。
【0061】
発光部5は、例えば、赤色灯と黄色灯の複数の色の異なる発光部5を備え、操作部の操作方法に応じていずれかを点灯させるようにし(例えば、5〜10秒のスイッチON操作で黄色灯が点灯し、10秒以上のスイッチON操作で赤色灯が点灯する)、テント内部の患者の緊急性のレベルに合わせた点灯を可能にすることもできる。
【0062】
また、複数のテントを配置した場合に、一箇所で集中的に管理するのを容易にするため(発光部5の点灯の有無を容易に認識するようにするため)、各テントの操作部が操作されると発光部が点灯すると共に信号を発して(無線・有線を問わない)、一つの集中管理部がかかる信号を受信して、当該点灯したテントを認識することもできる。
【実施例2】
【0063】
実施例2を図6、7に示す。実施例1とは通気部2を除いて同一の構成を備えている。
【0064】
通気部2は、着脱自在であって感染性減少手段を備えた先端カートリッジ部26と、先端カートリッジ部26が装着されると共にテント内部に連結される通気路25とからなる。
【0065】
先端カートリッジ部26は筒体であって、図4に示す感染性減少手段を有する積層体(テント外側から順に、「防塵部20―消毒剤含有部21―断熱部23―発熱部22―断熱部23―防塵部20」)が内蔵されると共に(各部が各部に対応する凹部(先端カートリッジ部26の内周に形成された凹部)に嵌合した状態で内蔵されると共に)、筒体の端部の内周には螺子部27が形成され、通気路25の端部に形成された螺子部28に対して螺子止め可能に構成される。なお、通気路25は蛇腹状に形成されており、先端カートリッジ部26の向きは上下左右方向に可変であり、通常は防塵作用を考慮して下向きが好ましい。
【0066】
なお、先端カートリッジ部26に内蔵される感染性減少手段は、上記に限らず、テント外側から順に、「防塵部20―消毒剤含有部21―防塵部20」からなる積層体や、「発熱部22―断熱部23―防塵部20」からなる積層体であっても良い。
【0067】
さらに、先端カートリッジ部26に電動式のファンFを内蔵することもできる。一対の先端カートリッジ部26(テント左面の前後方向に配置された二つの通気部2に対応する各先端カートリッジ部26)のそれぞれに電動式のファンを設け、一の電動式ファンによってテント内の空気をテント外に排気し、他の電動式ファンによってテント外の空気をテント内に強制的に取り込むことができる。
【0068】
また、図8に示すように、紫外線や赤外線等の感染性を減少させる波長光を照射する手段たる照射部29を有することも可能である。
【0069】
また、図11、12に示すように、先端カートリッジ部26の内側に消毒剤を収容する収容部26aを形成し、収容部26aの開口26bから消毒剤含有部21に消毒剤を供給する構成を採用することもできる(なお、供給口26cは蓋で閉じられる。)。また、図13に示すように、先端カートリッジ部26に供給口26cを介して供給タンクTを螺子止等で外付けし、先端カートリッジ部26に形成した供給口26cを通じて消毒剤を供給することもできる。
【実施例3】
【0070】
実施例3を図9、10に示す。実施例1とは通気部2を除いて同一の構成を備えている。
【0071】
通気部2は、換気手段たるファンFによってテント内部から引き出された空気が通過する通気路25aと、テント内部に送り込まれる空気が通過する通気路25bと、感染性減少手段たる消毒剤含有部21及び発熱部22と、防塵部20と、断熱部23と、感染性を減少させる波長光を照射する照射部29と、スリット開口Sを備える。
【0072】
通気部2は矩形状の箱体であって、略中央に形成された隔壁Wによって2部屋に分離され、一方の部屋の背面にファン29を介してテント内部に至る通気路25aが接続され、他方の部屋の上面にテント内部に至る通気路25bが接続されている。前記一方の部屋の正面のスリット開口Sの内側には、消毒剤含有部21と発熱部22と防塵部20と断熱部23とからなる積層体が取り付けられており、ファンFによって吸引された空気は感染性減少手段21、22を介してテント外部に放出される。他方の部屋の正面のスリット開口Sからはテント外部の空気が引き込まれるが、ここにも上記と同様の積層体が取り付けられていることから、吸引された空気は感染性減少手段を介してテント内部に取り込まれる。このように、テント外部の空気を強制的に取り込んでテント内を循環させ、病原体の感染性をなくして不活性化するのが好ましい。
【0073】
なお、略中央に形成された隔壁Wは必ずしも必要ではなく、隔壁Wがなくとも、一定の空気循環は可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施例の斜視図
【図2】本発明の通気部の分解斜視図
【図3】本発明の通気部の分解斜視図
【図4】本発明の通気部の分解斜視図
【図5】本発明の通気部の分解斜視図
【図6】本発明の実施例の斜視図
【図7】本発明の通気部の断面図
【図8】本発明の通気部の断面図
【図9】本発明の実施例の斜視図
【図10】本発明の通気部の部分断面斜視図
【図11】本発明の通気部の一部部分断面図
【図12】図11のA−A線断面図。
【図13】図11の斜視図。
【符号の説明】
【0075】
1 テント本体
10 外側シート
11 内側シート
2 通気部
20 防塵部
21 消毒剤含有部
22 発熱部
23 断熱部
25 通気路
26 先端カートリッジ部
29 照射部
3 出入り口
4 確認窓
5 発光部
6 発電部
F ファン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側シートと内側シートとを有するテント本体に通気部を設け、前記通気部に病原体の感染性を減少させる感染性減少手段を設けたことを特徴とする防護・離隔用の折り畳み可能なテント。
【請求項2】
前記通気部に設けた感染性減少手段が、発熱手段を有することを特徴とする請求項1記載のテント。
【請求項3】
前記通気部に設けた感染性減少手段が、消毒手段を有することを特徴とする請求項1記載のテント。
【請求項4】
前記消毒手段が、消毒剤を含有する消毒剤含有部であることを特徴とする請求項3記載のテント。
【請求項5】
前記消毒剤含有部に対して消毒剤を供給する供給手段を有することを特徴とする請求項4記載のテント。
【請求項6】
前記消毒剤含有部が、不織布であることを特徴とする請求項4記載のテント。
【請求項7】
前記消毒剤含有部が、親水性繊維に繊維状の吸水ポリマーを配合して成ることを特徴とする請求項4記載のテント。
【請求項8】
前記通気部に設けた感染性減少手段が、感染性を減少させる波長光を照射する照射手段を有することを特徴とする請求項1記載のテント。
【請求項9】
前記通気部に設けた感染性減少手段が、発熱手段と、消毒手段と、発熱手段と消毒手段とを隔てる断熱手段とを有することを特徴とする請求項1記載のテント。
【請求項10】
前記通気部に設けた感染性減少手段が、発熱手段と防塵手段とを有することを特徴とする請求項1記載のテント。
【請求項11】
前記通気部に設けた感染性減少手段が、消毒手段と防塵手段とを有することを特徴とする請求項1記載のテント。
【請求項12】
内側シートと透明性を有するシートとすると共に、外側シートの一部を開閉可能に切り欠いてテント内部を確認するための確認窓を設けたことを特徴とする請求項1〜11記載のテント。
【請求項13】
前記通気部に備えた感染性減少手段が、着脱可能であることを特徴とする請求項1〜12記載のテント。
【請求項14】
前記通気部にテント内を換気する換気手段を備えたことを特徴とする請求項1〜13記載のテント。
【請求項15】
発光部をテント本体に設けると共に、前記発光部を点灯するための操作部をテント内部に設けたことを特徴とする請求項1〜14記載のテント。
【請求項1】
外側シートと内側シートとを有するテント本体に通気部を設け、前記通気部に病原体の感染性を減少させる感染性減少手段を設けたことを特徴とする防護・離隔用の折り畳み可能なテント。
【請求項2】
前記通気部に設けた感染性減少手段が、発熱手段を有することを特徴とする請求項1記載のテント。
【請求項3】
前記通気部に設けた感染性減少手段が、消毒手段を有することを特徴とする請求項1記載のテント。
【請求項4】
前記消毒手段が、消毒剤を含有する消毒剤含有部であることを特徴とする請求項3記載のテント。
【請求項5】
前記消毒剤含有部に対して消毒剤を供給する供給手段を有することを特徴とする請求項4記載のテント。
【請求項6】
前記消毒剤含有部が、不織布であることを特徴とする請求項4記載のテント。
【請求項7】
前記消毒剤含有部が、親水性繊維に繊維状の吸水ポリマーを配合して成ることを特徴とする請求項4記載のテント。
【請求項8】
前記通気部に設けた感染性減少手段が、感染性を減少させる波長光を照射する照射手段を有することを特徴とする請求項1記載のテント。
【請求項9】
前記通気部に設けた感染性減少手段が、発熱手段と、消毒手段と、発熱手段と消毒手段とを隔てる断熱手段とを有することを特徴とする請求項1記載のテント。
【請求項10】
前記通気部に設けた感染性減少手段が、発熱手段と防塵手段とを有することを特徴とする請求項1記載のテント。
【請求項11】
前記通気部に設けた感染性減少手段が、消毒手段と防塵手段とを有することを特徴とする請求項1記載のテント。
【請求項12】
内側シートと透明性を有するシートとすると共に、外側シートの一部を開閉可能に切り欠いてテント内部を確認するための確認窓を設けたことを特徴とする請求項1〜11記載のテント。
【請求項13】
前記通気部に備えた感染性減少手段が、着脱可能であることを特徴とする請求項1〜12記載のテント。
【請求項14】
前記通気部にテント内を換気する換気手段を備えたことを特徴とする請求項1〜13記載のテント。
【請求項15】
発光部をテント本体に設けると共に、前記発光部を点灯するための操作部をテント内部に設けたことを特徴とする請求項1〜14記載のテント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−237704(P2008−237704A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84875(P2007−84875)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(502281161)株式会社環境機器 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(502281161)株式会社環境機器 (8)
【Fターム(参考)】
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