説明

情報コード印刷シール

【課題】 被貼付物となる文字や画像を印刷した印刷物等の上から貼着しても、当該印刷物の視認を妨げることのない情報コード印刷シールの提供等を目的とすること。
【解決手段】 文字や数字等のキャラクタデータに変換可能な図形情報をシートに印刷した情報コード印刷シールであって、前記シートは、無色の粘着層を裏面に設けた透明な合成樹脂フィルムによって形成されており、前記シートの表面には、透明な印刷層によって前記図形情報が設けられていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、光学的な読取装置によって認識可能な情報を印刷した情報コード印刷シールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光学的な読取装置によって認識可能な印刷情報としてバーコードが知られている。当該バーコードは、太さの異なる不透明な黒色の線を横一列に複数配置したものであり、当該黒色線の配置パターンを光学的に認識することにより二値(0あるいは1)情報を取得し、数値や文字等のキャラクタ情報に変換をすることができるのである。当該バーコードを印刷したバーコード表示用ラベルとして、透明な表示フィルムの裏面にバーコードを印刷し、当該印刷面に感熱性接着剤とラベル台紙を貼り付けたものが知られている(特許文献1)。その他、情報のコード化技術に関して、特許文献2、特許文献3に記載された電子すかしが知られている。
【特許文献1】実開平2−27256号公報
【特許文献2】特開2004−15396号公報
【特許文献3】特開2005−39603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のバーコード表示用ラベルは、商品やその包装体に貼り付けることができるものの、当該バーコード表示用ラベルに印刷されたバーコード自体は光の透過性を有するものではない。このため、前記バーコード表示用ラベルを、前記商品やその包装体の表面に描かれた文字などの上から貼付すると、当該文字の外観を妨げてしまうものであった。また、JANコードその他の一般的なバーコードは、横方向に長い2次元平面上に表された図形であるが、当該長手方向に印刷された図柄の端部が欠けてしまうとコードとして認識することができないものである。したがって、バーコードを印刷したシール等を形成する場合には、図5に示すようにシールの切り抜き外形100がバーコード印刷部にかからないように、バーコード101の周囲には必ず余白102が必要であり、バーコードを表示するために必要な最小限の外形よりもシールの外形が大きくならざるをえないものであった。この場合、余白100を含めバーコードを印刷したシールは不透明体であるから、画像を表示することが目的である写真や、内容物を見せなくてはならない透明な商品パッケージ等の主要面には貼り付けることができないものである。
【0004】
本願発明は、上記課題に鑑み発明されたものであって、第1に、被貼付物となる文字や画像を印刷した印刷物等の上から貼着しても、当該印刷物の視認を妨げることのない情報コード印刷シールの提供を目的とするものである。また、第2にシールの外形と印刷された情報コードとの間に余白を設ける必要がなく、最小限の面積の情報コード領域を有していれば、当該情報コード領域の外形に関わりなく情報コードとして認識することができる情報コード印刷シールの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本願請求項1記載の発明は下記の構成を有する。すなわち、
文字や数字等のキャラクタデータに変換可能な図形情報をシートに印刷した情報コード印刷シールであって、
前記シートは、無色の粘着層を裏面に設けた透明な合成樹脂フィルムによって形成されており、
前記シートの表面には、透明な印刷層によって前記図形情報が形成されていることを特徴とする情報コード印刷シール。
【0006】
また、本願請求項2記載の発明は下記の構成を有する。すなわち、前記印刷層は、プロセスインクの内、黄色を主としたインクによって形成されていることを特徴とする請求項1記載の情報コード印刷シール。
【発明の効果】
【0007】
本願発明に係る情報コード印刷シールは、文字や数字等のキャラクタデータに変換可能な図形情報を透明シートに印刷したものであるから、当該シールの貼り付けによって被貼り付け物に対する視認を妨げないという効果を有している。また、前記図形情報には、webサイトのURLや、当該webサイトへのアクセスを許容するためのID若しくはパスワードといった認証情報を含めることができるが、情報量に比例した最低限の表示面積を有していれば、図形情報の外形形状に関わらずキャラクタデータとして取得することができるものである。これは、図形情報の周囲に余白等を設ける必要が無いということであり、図形情報をシールとして切り抜くためのハーフカットの大きさを印刷時の図形情報の外形よりも若干小さく設定しておくことで、図形情報とハーフカット用切刃との位置合わせの精度がさほど要求されず、製造工程上の作業が簡略化されるという効果がある。また、前記図形情報は最低限の表示面積を有していれば、外形形状がハート型であったり、円形であったり、中心部が切り抜かれた形状であっても構わず、被貼り付け物となる物品の形状やデザインに合わせて種々の形状に形成することができるという効果を有する。さらに、印刷に使用するインクを黄色の透過色にすると、CCDやCMOSセンサ等の光学的な撮像手段を使用した場合には、画像処理上は明確に認識をすることができるものであるが、人間の視覚には感知されにくいものとなる。これにより、図形情報が印刷されたシートを介して被貼り付け物を見た場合でも、視覚的には違和感なく被貼り付け物を見ることができるとともに、印刷された図形情報を画像処理装置によって確実に認識することができるという効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明に係る情報コード印刷シールについて説明する。図1は、本願発明の一実施の形態である情報コード印刷シール(以下単に「シール」という)1の平面図を表している。当該シール1には複雑な模様(図形情報)として描かれた情報コードAが印刷されている。また、シール1は、矩形形状の輪郭(切抜線)3を有した形状であり、四隅は所定の曲率で面取されたものとなっている。図2(a)は、約40mm四方の情報コードAを複数個印刷したシート4の一部を表した平面図である。シート4は、A4サイズ、B4サイズ等の定型の大きさのシートであり、当該シート4の表面に、一片が約40mmの矩形の情報コードAが、ほぼ等間隔の配置となるように印刷されている。図3に示すように、シート4は最下層に剥離紙5を有し、当該剥離紙5上に、裏面に粘着層6を設けた透明樹脂シート(フィルム)7が積層されたものである。樹脂シート7は、PET等の素材によって形成されており、表面には印刷用のインキが付着しやすくかつ落ちにくいように微細な粗面加工が施されている。当該粗面加工の一例として、フィルム7の表面にはPPマット加工と称されている一種のつや消し処理が行われている。
【0009】
また、図3に示すように、剥離紙5上に積層された透明樹脂シート7には、表面から粘着層6に至る深さの輪郭線3となる切抜部(所謂「ハーフカット」)が設けられている。当該切抜部が前記シール1の輪郭を形成するものであり、情報コードAを構成する図柄の外縁から1〜3mm程度内側となる位置に設けられている。なお、図3は説明の為に、肉厚方向の縮尺を拡大して記載しており、本実施の形態に係るシート4の肉厚は全体で約0.2mm、シール1の樹脂層の厚みは約0.025mm、粘着層6を含めたシール1の肉厚は約0.05mmとなっている。
【0010】
次に、印刷に使用されるインクについて説明する。通常の印刷には、一般的にプロセスインク(若しくはセットインク)と称されるCMYK(シアン,イエロー,マゼンタ,ブラック)という4色の顔料を含むインクによって色の層が形成されるようになっている。印刷層自体はほぼ透明であり、白色の紙上に印刷することにより目的の色を発色させるものとなっている。本実施の形態に係るシール1の場合、情報コードとして表される図形情報はY(イエロー)インクを主としたインクによって印刷が行われる。当該印刷は、被貼り付け物の表面の色合いによって、最大の濃さで印刷したり、当該最大濃さの75%程度、50%程度というように仕様により濃さが調節される。
【0011】
前述したように、一般的な印刷は不透明な白色をベースとして行われるのが前提であるが、本実施の形態に係るシール1の場合には、表面にPPマット加工を施した透明フィルムに対して印刷が行われるものである。このように、透明素材に対してY(イエロー)インクによって印刷を行った場合には、インクによる印刷層自体も透明層であるから、シール1全体として像を透過させることができるシールが形成される。なお、シール1の裏面には接着剤による粘着層6が設けられているが、当該粘着層6も比較的薄い無色の層であるため、被貼付物にシール1を貼り付けた場合には、当該被貼付物表面の絵柄等がはっきりと認識できる程度の透明度を発揮する性質を有している。前記構成により、たとえば写真等の印画紙の表面にシール1を貼り付けたとしても、印画紙上に表現された像の可視を妨げることなく、透けた黄色い模様として表された情報コードAとともに印画紙上の像を見ることができるようになっている。
【0012】
黄色は、人間にとっては視覚的に認識しにくく目立たない性質を有しているので、写真の印画紙等の上から貼り付けてもそれほど写真像の可視を妨げるものではないが、CCDやCMOSセンサ等の光学的な撮像手段を用いた場合にははっきりと認識できるものである。このように、本実施の形態に係るシール1は、写真上の画像の可視を妨げることなく、光学的な撮像手段によっては明確に認識することができる情報コードを搭載させることができるという性質を有する。なお、黄色インクの性質から、シール1を暗い色調の画像等の上に貼り付けた場合には、黄色インクによる明暗がはっきりせず、認識しにくくなるという傾向がある。したがって、このように、背景色となる被貼り付け部位の色調が暗いことが明らかな場合には、当該色調に対応してYインクの濃度を濃くし、反対に色調が薄いことが明らかな場合には、当該色調に対応してYインクの濃度を薄くするという調整をすることにより、必要以上に背景画像の視認を妨げることのない情報コード印刷シールを提供することができる。
【0013】
次に、シール1に印刷される情報コードについて説明する。本実施の形態で使用する情報コードは、一例として特開2004−15396号、特願2005−39603号に開示された「電子すかし」と称されているものと同様の図形情報(情報コード)が採用される。そして、当該情報コードとして格納される情報は、カメラ付き携帯電話を介して接続されるwebサイトのURLや、当該webサイトへのアクセスを許容するためのID若しくはパスワードといった認証情報である。本実施の形態で使用する情報コードは、画像のサイズとして350dpi(約4cm×4cm四方の大きさ)の大きさに表されるものである。しかし、前記特開2004−15396号等に開示された「電子すかし」は、その特質として、必ずしも画像が初期通りの外観を保つ必要がないという特徴を有しているものである。すなわち、画像として表される情報コードの外形が約4cm×4cm四方の大きさであるとするならば、当該情報コードの外縁部を切り取り、若しくは内部を切り抜く等しても、面積比で50%以上を確保できるならば、前記URLや認証情報といった情報を保持することができるものである。
【0014】
図4は、シール1の使用例の説明図である。図4(a)は、前述したシール1を表して
おり、当該シール1は、約4cm×4cm四方の大きさの矩形に形成され、カメラ付き携帯電話を介して接続されるwebサイトのURLや、当該webサイトへのアクセスを許容するためのID若しくはパスワードといった認証情報が、模様(図形情報)として印刷されたものである。当該シール1は、例えば図4(b)および図4(c)に示すように、印画紙上に焼き付けられている写真Bの表面に貼り付けることができ、印画紙上にシール1を貼り付けると、視覚的には透明な薄黄色の模様と印画紙上の画像とを合成したような状態にすることができる。このように構成すると、印画紙上の画像を視認することができるとともに、カメラ付き携帯電話等によって当該合成画像を撮影し、専用の画像処理アプリケーションプログラムによって図形情報を解析し、所定の情報を得ることができる。
【0015】
上記のように、シール1は写真等に貼り付けた状態で所定の情報を得ることができるものであるが、図4(d)および図4(e)に示すように、シール1の中央部分Cを任意の形状に切り抜いた後であっても、当該残領域の面積が当初の50%以上であれば、理論的には識別可能な情報を保持することができるようになっている。したがって、図4(d)の例のように、人物の顔のみが表出するように顔部分の輪郭に沿って任意の形状にシール1を切り抜いても、残りの領域部分に表された模様によって所定の情報を得ることができる。また、図4(e)に示すように、シール1上から濃いペン等で文字Dを書いたとしても、当該文字および前記切り抜きによって減少した領域が、当初の面積比50%以上であれば、識別可能な情報を保持することができるようになっている。
【0016】
本実施の形態における情報コードには、周波数変換法の一種であるフーリエ変換法が用いられている。フーリエ変換とは、“すべての信号は、三角関数(正弦波)の和として表現できる” という考えが基本となっている。正弦波はそれぞれ固有の周波数を持っており、フーリエ解析によって、信号の中にどの周波数成分がどれだけ含まれているかを調べることができるものである。また、フーリエ変換して抽出された周波数成分を再合成(逆フーリエ変換)すれば、元の信号に戻すことができるものである。1次元フーリエ変換を2次元に拡張したものを2次元フーリエ変換といい、2次元フーリエ変換は1次元フーリエ変換を、縦・横方向に行うことで求めることできるものである。画像は2次元で表されるため、2次元の変換が必要となる。本実施の形態における情報コードはこの2次元フーリエ変換の特徴を利用している。なお、本実施の形態における情報コードに関しては「電子透かしの基礎−マルチメディア時代のニュープロテクト技術−」(松井甲子雄著 森北出版会社)に参考となる記述があり、フーリエ変換に関しては、http://e-vod.cs.shinshu-u.ac.jp/it-univ/study/2003/06itoh-r/2.htm、2次元離散フーリエ変換に関してはhttp://e-vod.cs.shinshu-u.ac.jp/it-univ/study/2003/07itoh-t/1.htmlに説明がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る情報コード印刷シール単体の平面図である。
【図2】本発明に係る情報コード印刷シールを形成するシートの平面図である。
【図3】本発明に係る情報コード印刷シールの断面図である。
【図4】本発明に係る情報コード印刷シールの使用例の説明図である。
【図5】従来のバーコードを印刷する際のシートの平面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 情報コード印刷シール(シール)
3 輪郭(切抜線)
4 シート
5 剥離紙
6 粘着層
7 透明樹脂シート(フィルム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字や数字等のキャラクタデータに変換可能な図形情報をシートに印刷した情報コード印刷シールであって、
前記シートは、無色の粘着層を裏面に設けた透明な合成樹脂フィルムによって形成されており、
前記シートの表面には、透明な印刷層によって前記図形情報が形成されていることを特徴とする情報コード印刷シール。
【請求項2】
前記印刷層は、プロセスインクの内、黄色を主としたインクによって形成されていることを特徴とする請求項1記載の情報コード印刷シール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−338394(P2006−338394A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163081(P2005−163081)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(500231816)株式会社アートプレスト (2)
【Fターム(参考)】