説明

情報データ伝送装置

【課題】航空機IFE配信サービスにおけるコンテンツの音声出力と映像再生の同期化を損なわずに、配信用ネットワークの使用帯域を低減して安定したシステムを提供する。
【解決手段】旅客移動体における客室内の複数の客席それぞれに配備される乗客端末100と、乗客端末100に接続される操作制御部および音声情報再生部と、乗客端末に信号を伝達する伝送路とから構成される情報データ伝送装置であって、乗客端末100は、客席の椅子の背もたれ部背面に設置される映像情報表示部と、再生情報蓄積部と、伝送路信号接続部と、操作制御信号接続部と、音声信号接続部と、主制御部とを備え、再生情報蓄積部には客室内で再生される映像および音声を含む再生情報があらかじめ格納されており、伝送路の回線に映像および音声情報のデータそのものが伝送されずに、情報における操作を制御する信号のパケットのみが伝送される構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機などの客室内において各座席に搭載、配備されて、映画、音楽などのオーデオビジュアル(AV)ソフトやゲームソフトの配信サービスに用いられる情報データ伝送装置に関している。
【背景技術】
【0002】
近年、航空機などの旅客移動体においては、機内または客室内に搭載、配備されているIFE(In−Flight Entertainment)と呼ばれる機内エンターテインメントシステムにより、乗客には種々の機内サービスが提供されている。機内サービスとしては、例えば、乗客は配信される映画や音楽などを各座席のバックシートに備えられている液晶表示装置の画像表示部や、搭乗時に配布されるヘッドフォンを使用して視聴することができるほか、同様に各座席のひじ掛け部に備え付けられているハンドセットと呼ばれる操作用端末などを用いてゲームをしたり、航空機外部へ電話をかけたり、インターネットへの接続サービスを受けたりすることが可能なシステムも提供されている。これらのサービスは全て機内に配備されている情報通信システムの情報データ伝送装置により実現されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
以下、従来の航空機内における情報通信システムの情報データ伝送装置について、図4、図5および図6を用いて説明する。図4は従来の情報通信システムで用いる一般的な情報データ伝送装置の概略構成を示す斜視図、図5は従来の情報通信システムで用いる一般的な情報データ伝送装置において情報データ、信号の流れを概略的に示す立面図、図6(a)、(b)、(c)は情報データ伝送装置の端末でゲームをするときに画像表示部に表示される一般的なシューティングゲームの映像と音声の例を示す平面図である。図4、図5には、前後に並んだ2つの座席Aと座席Bのみを示し、各構成要素を参照する符号にはそれぞれの座席A、座席Bを区別するA、Bのサフィックスを付している。
【0004】
図4、図5において、従来の情報通信システムで用いられる一般的な情報データ伝送装置では、サーバ(図示せず)に蓄積されているAVソフトやゲームソフトなどのコンテンツがコントローラ102A、102B・・・の操作により乗客端末100A、100B・・・にネットワーク109の配線を経由して配信され、映像情報は乗客端末100A、100B・・・に備わる表示部である液晶表示部108A、108B・・・に、また音声情報はヘッドフォン101A、101B・・・に出力されて、再生される構成を有している。
【0005】
ここで航空機などに特有の特徴として、座席Aに座っている乗客は、乗客端末100Bに備わる液晶表示部108Bで再生表示される映像を見ており、そして座席Aの乗客端末100Aからの外部端子(図示せず)に接続されるヘッドフォン101Aに出力される音声を聞いており、映画、音楽などの各コンテンツのチャンネル選択、音声のボリュームコントロール、ゲームのコントロールなども座席Aの乗客端末100Aに接続されたコントローラ102Aを使用して行われることが挙げられる。すなわち、座席Aに座っている乗客は、座席Aに備わる乗客端末100Aだけで処理が完結するわけではなく、座席Aの乗客端末100Aと、その前の座席Bに備わる乗客端末100Bの両方の機器に分かれてエンターテインメントサービスが提供されている。
【0006】
このとき、エンターテインメントサービスとしてゲームを例に挙げると、ゲームに付随した音声は、乗客端末100Bでデジタルの音声として再生され、ネットワーク109を経由して乗客端末100Aで受信されて、アナログ音声としてヘッドフォン101Aに供給される。例えばゲームが、図6に映像と音声の一例を示したようなシューターから発射した弾などが的に当たると音を発するシューティングゲームである場合は、シューター600は弾などを発射し、図6(a)に示す的602に当たったときは、音1(バーン)という音を発し、図6(b)に示す的601に当たったときは、音2(ドーン)という音を発し、図6(c)に示す的603に当たったときは、音3(ドカーン)という音を発する。
【0007】
図5を参照して、シューティングゲーム時の信号の流れを説明する。座席Aに座っている乗客は、乗客端末100Aに接続されたコントローラ102Aで、乗客端末100Bに備わる液晶表示部108Bの画面上で、例えば、図6に示したようにシューター600を動かして弾を発射する動作を行わせるようにゲームをコントロールする。このとき、コントロール信号はパケットとして図5中に太一点鎖線の矢印曲線520で示すように乗客端末100Aで受信され、ネットワーク109を介して図5中に太実線矢印曲線521のように乗客端末100Bに転送される。乗客端末100Bでは、シューター600を画面上で動かして弾を発射し、当たった的に応じて、それに対応した音(上記、音1、音2、音3など)を再生する。再生された音声は図5中の極太破線の矢印曲線523に示すように乗客端末100Bから乗客端末100Aまで転送される。具体的には、ステレオ音声の場合は1.5Mbpsで、またモノラル音声の場合は半分の750kbpsなどのビットレートでデジタル非圧縮信号として伝送される。そして、乗客端末100Aではデジタル音声信号をアナログに変換して、図5中の太点線の矢印曲線523に示すような経路でヘッドフォン101Aに供給される。
【0008】
このような、従来の情報通信システムの情報データ伝送装置では、各座席には各コンテンツ(チャネル)の信号線を並列に引き回さなければならず、チャネル数が増加すると、配線数が増加してしまうために、各チャネルの信号をデジタル変換して、時分割で多重化して送信するための装置や方法、また、乗客端末100Bに備わる表示される液晶表示部108Bの画面上の映像と乗客端末100Aに接続されたヘッドフォン101Aで出力される音声との時間的なズレを解消するために音声出力と映像再生を同期化させるための種々の装置、方法などが提案されている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平7−143083号公報
【特許文献2】特開2006−246297号公報
【特許文献3】特開平3−214487号公報
【特許文献4】特開平9−65303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したような情報通信システムの情報データ伝送装置で用いられる技術においては、音声をネットワークで伝送するために、ネットワークの帯域を圧迫するという課題を有している。ネットワークの総帯域が足りない場合はシステムそのものが作動できず、実現できないことは明らかであるが、仮に総帯域が足りた場合であっても、ネットワークの総帯域に対して音声パケットを含む使用帯域が大きい場合、いわゆるネットワークの輻輳状態を引き起こす。この場合には、伝送する音声の遅延が大きくなり、映像と音声の同期が乱れたり、また、パケット廃棄が生じて音声の品質が低下したりして、システム全体の信頼性を大きく低下させるという問題がある。
【0010】
例えば、信号伝達用に電力線を用いるPLC(電力線通信)などの帯域を共有するネットワークでは、1つの端末に許容される帯域が制限されるので、映像情報と音声信号が対になったコンテンツを利用する場合、影響はより顕著となる。一方、イーサネット(登録商標)などの帯域の大きいネットワークを使用する場合であっても、ネットワーク上には映像パケットなど、帯域の大きいパケットが大量に流れており、システムが使用するネットワーク上の帯域が大きければシステム全体の信頼性が低下するので、システムが使用するネットワーク上の帯域が小さいほどシステム全体の信頼性が向上するという本質には変わりがない。すなわち、上述したような情報通信システムの情報データ伝送装置で用いられる方法では、帯域を使用する音声パケットそのものがネットワークを介して流れるためにシステムの信頼性を低下させていたという問題点が根本的にあった。これに加えて、ネットワークで映像信号を流すようなシステム構成を構築した場合、映像信号自体は圧縮を行った場合であっても、例えば、2Mbps以上となり、上述した問題はより深刻になる。
【0011】
さらに、ネットワークにイーサネット(登録商標)を利用する場合、高帯域が利用できるが、信号線が8本あるカテゴリー5以上の配線ではネットワークの配線全体の総重量はかなり大きくなって、航空機ではその重量自体が大きな負担になっていたという課題もあった。
【0012】
本発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであり、航空機などの旅客移動体における機内エンターテインメントシステムのAVソフトやゲームソフトなどの配信サービスのコンテンツの音声出力と映像再生の同期化を損なうことなく、配信用ネットワークの使用帯域を低減して安定したシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明の情報データ伝送装置は、旅客移動体における客室内の複数の客席それぞれに配備される乗客端末と、乗客端末に接続される操作制御部および音声情報再生部と、乗客端末に信号を伝達する伝送路と、から構成される情報データ伝送装置であって、乗客端末は、客席の椅子の背もたれ部背面に設置される映像情報表示部と、映像情報および音声情報からなるコンテンツがあらかじめ蓄積された情報蓄積部と、主制御部とを備え、乗客の客席に備わる第1の乗客端末に接続された音声情報再生部で音声情報を聴取し、客席の前隣りの第2の乗客端末の映像情報表示部で音声情報に関連した映像を鑑賞するに際し、第1の乗客端末の操作制御部からの指令信号に基づいて第1の乗客端末において主制御部は、情報蓄積部に蓄積された音声情報を読み出して音声情報再生部へ出力し、第2の乗客端末において主制御部は、情報蓄積部に蓄積された映像情報を読み出して映像情報表示部へ出力し、第1および第2の乗客端末の主制御部は、音声情報と映像情報を関連づけて情報蓄積部から読み出すためのコントロール信号を通信することを特徴とする。これにより、ネットワークの回線に映像および音声情報のデータそのものを伝送する必要がなく、映像や音声情報を再生するためのコントロール信号のみを伝送すればよいので、ネットワークの帯域を節約できるとともに高品質のコンテンツを乗客に提供できる。
【0014】
また本発明の情報データ伝送装置は、第1の乗客端末の主制御部は操作制御部からの指令信号を受信し、情報蓄積部に蓄積された音声情報を読み出すとともに、コントロール信号を伝送路を介して、第2の乗客端末の主制御部へ送信し、第2の乗客端末の主制御部は、コントロール信号を受信し、コントロール信号に基づいて情報蓄積部に蓄積された映像情報を読み出してもよい。これにより、乗客の操作で選択されたコンテンツの再生において、映像情報とそれに関連する音声情報をタイミングを合わせて再生することが可能となる。
【0015】
また本発明の情報データ伝送装置は、第1の乗客端末の主制御部は操作制御部からの指令信号を受信し、指令信号を伝送路を介して第2の乗客端末の主制御部へ送信し、第2の乗客端末の主制御部は指令信号を受信し、情報蓄積部に蓄積された映像情報を読み出すとともに、第1の乗客端末の主制御部へコントロール信号を送信し、第1の乗客端末の主制御部はコントロール信号を受信して、情報蓄積部に蓄積された音声情報を読み出してもよい。これにより、乗客が映像情報表示部で映像情報を確認しながらそれに関連する音声情報を再生するコマンドをほぼ同時に発行するために映像と音声の再生タイミングを容易に合わすことができる。
【0016】
また本発明の情報データ伝送装置は、コントロール信号は読み出しコマンド、コンテンツ情報、同期情報の少なくとも1つを含むことが望ましい。これにより、映像情報と関連する音声情報を簡単にかつ確実に同期させて再生することができる。
【0017】
また本発明の情報データ伝送装置は、主制御部はコントロール信号を送信後、所定の時間を待って音声情報または映像情報を再生してもよい。これにより、映像情報と関連する音声情報の再生タイミングを微妙に調整することが可能となる。
【0018】
また本発明の情報データ伝送装置は、通信は電力線通信(PLC)でもよい。これにより、コントロール信号伝送用に新たな回線が不要となり、装置の軽量化、低コスト化が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ネットワークの回線に映像および音声情報のデータそのものが伝送されずに、情報における操作を制御する信号のパケットのみが伝送されるので、電力線搬送通信(PLC)などの帯域幅にそれほど余裕のないネットワークを用いてIFEを実現可能なデータ伝送装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
【0021】
(実施の形態1)
最初に、本発明の実施の形態1における航空機内情報通信システムで用いられる情報データ伝送装置について図1、図2を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態1における情報通信システムで用いる情報データ伝送装置に備わる乗客端末および接続される外部機器の構成を概略的に示すブロック図、図2は本発明の実施の形態1における情報通信システムで用いる情報データ伝送装置において情報データ、信号の流れを概略的に示す立面図である。
【0022】
図1において、乗客端末100は、乗客端末100に接続されるヘッドフォン101などの音声情報再生部と、乗客端末100に接続される操作制御部であるコントローラ102と、主制御部であるCPU103と、音声信号接続部であるオーディオインターフェース104と、操作制御信号接続部であるコントローラインターフェース105と、信号を伝達する伝送路を形成するネットワーク109に接続される伝送路信号接続部であるネットワークインターフェース106と、再生情報蓄積部となる蓄積手段107と、映像情報表示部である液晶表示部108とから構成されている。
【0023】
CPU103は乗客が所望する操作をコントローラ102からコントローラインターフェース105を介してコントロール信号を受け取り、蓄積手段107から映像などの再生情報であるコンテンツを読み出して液晶表示部108に表示する機能を有している。蓄積手段107にはあらかじめ映像および音声からなる再生情報であるコンテンツが格納されていることが重要である。蓄積手段107への格納方法としては工場出荷時や、航空機などの旅客移動体が運行されていない駐機時などにあらかじめ書き込んでおく方法やネットワーク109経由でサーバなど(図示せず)からダウンロードする方法などが利用される。蓄積手段107にコンテンツをあらかじめダウンロードしておくことで、AVコンテンツをストリーミング伝送する従来の情報通信システムの情報データ伝送装置によく見られた不安定性に起因するAVコンテンツの信号の劣化が起こることがほとんどなくなる。さらに、CPU103はこのコンテンツの映像に関連づけられた音声信号を、蓄積手段107から読み出してオーディオインターフェース104を介してヘッドフォン101に出力して再生する機能も有している。そのため、それぞれの座席で異なるAVソフトのコンテンツを別々に再生させることが可能であり、選択されたコンテンツ(チャンネル)情報を関連する座席間で通知することが可能になり、共通のコンテンツについては必要ならば一斉同報の処理を行うこともできる。また、各座席の乗客端末100のほかに大型スクリーンを用いて再生されるようなIFEとは異なる離着陸時や緊急時の対応を説明するビデオコンテンツについても各乗客端末100の蓄積手段に格納しておいて、一斉同報により再生することが可能である。
【0024】
ここで注意が必要なのは、座席Aに座っている乗客はその前の座席Bに配備された乗客端末100Bに備わる液晶表示部108Bに表示された映像を見て、座席Aの乗客端末100Aに接続されているヘッドフォン101Aとコントローラ102Aを使用するという点である。したがって、コントローラ102Aからの動作を伝えるコントロール信号のパケット、音声のコントロール信号のパケットおよび映像のコントロール信号のパケットはネットワーク109からネットワークインターフェース106を介して、それぞれ乗客端末のCPU103へ伝送される。なお、ネットワーク109としては、PLC、イーサネット(登録商標)などを使用可能であるが、本発明はこれらに限定するものではない。
【0025】
ネットワーク109を介して映像のコントロール信号のパケットおよび音声のコントロール信号のパケットを伝送する方法を、背景技術において図6に示したのと同様にゲームを配信する場合を例として、図1および図2を用いて説明する。なお、以下の説明では座席Aおよびに座席Bにそれぞれ備わる乗客端末100Aおよび乗客端末100Bの各構成要素については各参照符号の末尾にA、Bのサフィックスをつけて区別する。
【0026】
座席Aに座る乗客はコントローラ102Aを用いて、乗客端末100Bに備わる液晶表示部108Bに表示される映像を見ながら、例えば、シューター600を動かして弾を発射するコントロールを行う。この映像をコントロールする信号のパケットは、図2中に太一点鎖線の矢印曲線210で示すように乗客端末100Aに入力される。つまり、この映像をコントロールする信号のパケットは乗客端末100Aに接続されているコントローラインターフェース105Aを介してCPU103Aに入力される。
【0027】
乗客端末100AのCPU103Aは蓄積手段107Aから音声情報を読み出し、音声情報データは図2中に太点線の矢印曲線211で示すようにオーディオインターフェース104Aを介してヘッドフォン101Aに送られ、音声を再生する。例えば、図6(a)に表示される画像の場合では音1(バーン)の音声情報データを乗客端末100Aに備わる蓄積手段107Aから読み出して再生する。このとき、ほとんど同時で間を置かずに、CPU103Aは乗客所望の映像動作のコントロールをさせる指令信号(以下コマンド信号とも記す)を乗客端末100Aに備わるネットワークインターフェース106Aからネットワーク109を介して図2中の太実線の矢印曲線212で示すように乗客端末100Bまで伝送する。
【0028】
乗客端末100Bではネットワーク109からネットワークインターフェース106Bを介してCPU103Bに映像動作のためのコントロール信号のパケットが伝送され、CPU103Bは蓄積手段107Bから映像情報を読み出し、乗客端末100Bに備わる液晶表示部108に映像を送り、再生する。例えば図6(a)に表示される映像の場合は、的602が狙えるところまでシューター600を移動させ、的602をめがけて弾などを発射する動作が音声と同期して表示される。
【0029】
なお、上述した本発明の実施の形態1における情報データ伝送装置の説明においては、音声出力と映像再生の同期をとるための方法については、特に詳しく説明しなかったが、種々の方法が考えられる。例えば、コントローラ102からの指令コマンドを受け取ったCPU103が、映像と音声がそれぞれ液晶表示部108とヘッドフォン101でタイミングが合うように映像および音声を再生するコマンドを発行してもよい。また、蓄積手段107に蓄積された関連した映像および音声に同期情報(例えばタイムコード)を記録しておき、前後の座席の乗客端末100間でこの同期情報を伝送して各端末間の時刻同期をとる方法でもよい。また、前後の乗客端末間では再生するコンテンツの情報(例えばチャンネル番号)などを通信してもよい。このほか、映像と音声の同期をとるために、映像と音声のいずれかあるいは両方の信号に再生遅延などの処理をいれてもよい。その場合、CPU103を用いて遅延を発生させることができる。これらの、時刻同期により、映像と音声の再生タイミングが正確に制御でき、高品質なAVコンテンツの配信サービスが可能になる。
【0030】
以上説明したように、本発明の実施の形態1における情報データ伝送装置では、ネットワーク109の回線には高帯域を使用する映像データそのものは伝送されず、映像をコントロールする信号のパケットのみが伝送される。このため、イーサネット(登録商標)に比べて帯域が狭いPLCをネットワーク109に使う場合でも、前後座席の乗客端末100間でAVコンテンツの再生が可能となり、IFEを実現することが可能になる。また、PLCをネットワーク109に使うことで、データ伝送用の配線を削減することができ、省線化が可能になる。したがって、音声出力と映像再生の同期化を損なわずに、ネットワークの帯域を有効に利用した高品質の映像音声再生システムが提供可能となる。
【0031】
さらに、蓄積手段107にコンテンツがあらかじめダウンロードされているので、AVコンテンツをストリーミング伝送する従来の情報通信システムの情報データ伝送装置によく見られた不安定性に起因するAVコンテンツの信号の劣化を避けることができる。
【0032】
(実施の形態2)
引き続き、本発明の実施の形態2における航空機内情報通信システムで用いられる別の情報データ伝送装置について図1、図3を用いて説明する。図3は本発明の実施の形態2における情報通信システムで用いる別の情報データ伝送装置において情報データ、信号の流れを概略的に示す立面図である。本発明の実施の形態2における情報データ伝送装置に備わる乗客端末と接続される外部機器の構成については、本発明の実施の形態1における情報データ伝送装置と同じであるので、図1、およびその記載内容を踏襲し、重複を避けるため詳しい説明を省略する。また、図3における構成要素で図2と同じものには同じ参照符号を付し、重複を避けるため詳しい説明は省略している。
【0033】
本発明の実施の形態2における情報データ伝送装置の場合も、ネットワーク109を介して映像のコントロール信号のパケットおよび音声のコントロール信号のパケットを伝送する方法について、背景技術において図6に示したのと同様にゲームを配信する場合を例として、図1および図3を用いて説明する。以下の説明においても、座席Aおよびに座席Bにそれぞれ備わる乗客端末100Aおよび乗客端末100Bの構成要素については各参照符号の末尾にA、Bのサフィックスをつけて区別する。
【0034】
図1および図3において、座席Aに座る乗客はコントローラ102Aを用いて、例えばシューター600を動かして的をめがけて弾などを発射するコントロールを行う。この映像をコントロールする信号のパケットは、図3中に太一点鎖線の矢印曲線220に示すように、乗客端末100Aに入力される。このとき、この映像をコントロールする信号のパケットは、乗客端末100Aに接続されているコントローラインターフェース105Aを介してCPU103Aに一旦入力される。次いでネットワークインターフェース106Aを介して乗客端末100Aからネットワーク109を介して送信される。そして、図3中太実線の矢印曲線221に示すような経路により乗客端末100Bで受信される。
【0035】
乗客端末100Bでは、ネットワーク109から乗客端末100Bに備わるネットワークインターフェース106Bを介してCPU103Bにコントロール信号のパケットが伝送され、CPU103Bは蓄積手段107Bから映像情報を読み出し、乗客端末100Bに備わる液晶表示部108Bに映像信号を送り、再生する。乗客は、乗客端末100Bに備わる液晶表示部108Bに表示される映像を見ながら、乗客端末100Aに接続されているコントローラ102Aを用いて、例えば、図6(a)の例では的602が狙えるところまでシューター600を移動させ、的602をめがけて弾などを発射する操作を行う。
【0036】
このとき、ほとんど同時に間を置かないで、乗客端末100BのCPU103Bは乗客端末100Bに備わる液晶表示部108Bに表示される映像に付随する音声を再生するための指令信号(以下指令信号をコマンド信号とも記す)のパケット(図6(a)の例では音1(バーン)を再生するためのコマンド信号のパケット)を乗客端末100Bのネットワークインターフェース106Bを介してネットワーク109に送信する。この音声再生のためのコマンド信号のパケットは、図3中の極太実線の矢印曲線223で示すように、乗客端末100Aで受信される。
【0037】
ネットワーク109を介して乗客端末100Aのネットワークインターフェース106Aで受信された音声再生のためのコマンド信号のパケットは、乗客端末100AのCPU103Aに送られ、CPU103Aはこの音声再生のためのコマンド信号のパケットにより、乗客端末100Bの液晶表示部108Bに表示されている映像に付随する音声データ(図6(a)の例で示される音1(バーン))を蓄積手段107Aから読み出し、図3中太点線の矢印曲線224に示すように、乗客端末100Aに備わるオーディオインターフェース104Aを介して乗客端末100Aからの外部端子に接続されているヘッドフォン101Aに送り、再生する。これにより、映像と音声の同期がはかられることになる。なお、本発明の実施の形態2における情報データ伝送装置の説明においても、音声出力と映像再生の同期をとるための方法については、実施の形態1における情報データ伝送装置の場合と同じであり、重複を避けるため説明を省略する。しかし、時刻同期により、高品質なAVコンテンツの配信サービスが可能になることは、本発明の実施の形態2における情報データ伝送装置の場合も同様である。
【0038】
以上説明したように本発明の実施の形態2における情報データ伝送装置では、ネットワーク109の回線には高帯域を使用する映像データや音声データそのものは伝送されず、映像をコントロールする信号のパケットと音声を再生させるためのコマンド信号のパケットのみが伝送される。特に、音声を再生させるためのコマンド信号は通常数バイトで構成可能であり、そのため、音声出力と映像再生の同期化が損なわれることなく、ネットワークの帯域を有効に利用した高品質の映像音声再生システムが提供可能となる。さらに、本発明の実施の形態2では液晶表示部108Bに表示された映像を見ながら映像情報と音声情報の再生コマンドをほぼ同時に発行することが可能なため、映像と音声の再生タイミングをより正確に合わすことが可能となる。また、イーサネット(登録商標)に比べて帯域が狭いPLCをネットワーク109に使う場合でも、コマンド信号のフィードバックで処理が可能であるので、前後座席の乗客端末100間でAVコンテンツの再生が可能となり、IFEを実現することができる。さらに、PLCをネットワーク109に使うことで、データ伝送用の配線を削減することができ、省線化が可能になることは、本発明の実施の形態2における情報データ伝送装置の場合でも同じである。
【0039】
なお、上述した実施の形態1、実施の形態2における情報データ伝送装置では、映像情報と音声信号が対になるものとして、ゲームを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。また、音声信号を乗客が座る客席の乗客端末で再生し、制御コマンド信号を前席の乗客端末に送る構成で説明したがこの構成に限るものではない。また、乗客端末としては、液晶表示部、蓄積手段、主制御部が一体となった構成で説明したが、これに限定されるものではなく、それぞれの構成要素が分離され離れた位置に設置されてもよい。さらに、旅客移動体に航空機を例に挙げて、機内または客室内における各座席に搭載、配備されて映画、ゲームソフトなどの配信サービスが提供されるエンターテインメントシステムに用いられる情報データ伝送装置を説明したが、旅客移動体としては航空機だけに限るものではないことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の情報データ伝送装置は、バス、鉄道などの車両やフェリー、客船などの船舶などを用いる公共交通機関において、ネットワークを使用して映像情報と音声信号が対になったコンテンツを配信する情報通信システムに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態1における情報通信システムで用いる情報データ伝送装置に備わる乗客端末および接続される外部機器の構成を概略的に示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における情報通信システムで用いる情報データ伝送装置において情報データ、信号の流れを概略的に示す立面図
【図3】本発明の実施の形態2における情報通信システムで用いる別の情報データ伝送装置において情報データ、信号の流れを概略的に示す立面図
【図4】従来の情報通信システムで用いる一般的な情報データ伝送装置の概略構成を示す斜視図
【図5】従来の情報通信システムで用いる一般的な情報データ伝送装置において情報データ、信号の流れを概略的に示す立面図
【図6】(a)、(b)、(c)は情報データ伝送装置の端末でゲームをするときに画像表示部に表示される一般的なシューティングゲームの映像と音声の例を示す平面図
【符号の説明】
【0042】
100,100A,100B 乗客端末
101,101A,101B ヘッドフォン
102,102A,102B コントローラ
103 CPU
104 オーディオインターフェース
105 コントローラインターフェース
106 ネットワークインターフェース
107 蓄積手段
108,108A,108B 液晶表示部
109 ネットワーク
210,211,212,220,221,223,224,520,521,523 矢印曲線
600 シューター
601,602,603 的

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旅客移動体における客室内の複数の客席それぞれに配備される乗客端末と、前記乗客端末に接続される操作制御部および音声情報再生部と、前記乗客端末に信号を伝達する伝送路と、から構成される情報データ伝送装置であって、
前記乗客端末は、前記客席の椅子の背もたれ部背面に設置される映像情報表示部と、映像情報および音声情報からなるコンテンツがあらかじめ蓄積された情報蓄積部と、主制御部とを備え、
前記乗客の客席に備わる第1の乗客端末に接続された音声情報再生部で音声情報を聴取し、前記客席の前隣りの第2の乗客端末の映像情報表示部で前記音声情報に関連した映像を鑑賞するに際し、
前記第1の乗客端末の前記操作制御部からの指令信号に基づいて
前記第1の乗客端末において前記主制御部は、前記情報蓄積部に蓄積された前記音声情報を読み出して前記音声情報再生部へ出力し、
前記第2の乗客端末において前記主制御部は、前記情報蓄積部に蓄積された前記映像情報を読み出して前記映像情報表示部へ出力し、
前記第1および第2の乗客端末の主制御部は、前記音声情報と前記映像情報を関連づけて前記情報蓄積部から読み出すためのコントロール信号を通信することを特徴とする情報データ伝送装置。
【請求項2】
前記第1の乗客端末の主制御部は前記操作制御部からの指令信号を受信し、前記情報蓄積部に蓄積された音声情報を読み出すとともに、前記コントロール信号を前記伝送路を介して、前記第2の乗客端末の主制御部へ送信し、
前記第2の乗客端末の主制御部は、前記コントロール信号を受信し、前記コントロール信号に基づいて前記情報蓄積部に蓄積された映像情報を読み出すことを特徴とする請求項1に記載の情報データ伝送装置。
【請求項3】
前記第1の乗客端末の主制御部は前記操作制御部からの指令信号を受信し、前記指令信号を前記伝送路を介して前記第2の乗客端末の主制御部へ送信し、
前記第2の乗客端末の主制御部は前記指令信号を受信し、前記情報蓄積部に蓄積された映像情報を読み出すとともに、前記第1の乗客端末の主制御部へ前記コントロール信号を送信し、
前記第1の乗客端末の主制御部は前記コントロール信号を受信して、前記情報蓄積部に蓄積された前記音声情報を読み出すことを特徴とする請求項1に記載の情報データ伝送装置。
【請求項4】
前記コントロール信号は読み出しコマンド、コンテンツ情報、同期情報の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報データ伝送装置。
【請求項5】
前記主制御部は前記コントロール信号を送信後、所定の時間を待って音声情報または映像情報を再生することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の情報データ伝送装置。
【請求項6】
前記通信は電力線通信(PLC)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の情報データ伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−311901(P2008−311901A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157209(P2007−157209)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】