説明

情報入力装置

【課題】情報入力装置におけるキャリブレーションを精度よく、かつ的確な頻度で自律的に実行可能とする。
【解決手段】情報入力装置は、第1機会に複数の第1画像51のうちの1つが認識され、次いで到来する第2機会において第2画像52が認識された場合に、第2機会に次いで到来する第3機会において指定された画像が第1機会において認識された画像と操作画像50の中において隣り合うものであるか否かを判定する。肯定判断がなされた場合に、情報入力装置は、第1機会において認識された画像と第3機会において認識された画像の相互の位置関係を示すデータと、肯定判断の累積回数を示すデータと、を記録する。そして、累積回数が所定数に達した場合に、情報入力装置は、位置関係を示すデータに基づいて、位置検出手段から出力される電気信号に対して与えるべき補正値を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置と組み合わせて用いられる情報入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの表示装置と組み合わせて用いられるタッチ式の情報入力装置は、様々な電子機器、装置における入力インターフェースとして広く利用されている。かかる情報入力装置は、通常、表示装置の画面上に配置される透光性のパネル部を備えている。ユーザは、パネル部を通して画面上に表示される画像を視認しながら、パネル部の表面に指などを触れることにより、所望の操作入力を行う。
【0003】
上記のような情報入力装置においては、個体差や経年変化等の要因により、ユーザによって実際に押下された位置(座標値)とパネル部による検出結果に基づいて認識される座標値との間に差異(タッチズレ)が発生する。このため、何らかの形でこのタッチズレを是正する補正処理(キャリブレーション)が必要となる。一般的な抵抗膜方式のタッチパネルにおけるキャリブレーション方法としては、表示装置の画面上に、パネル部の中点および4隅に対応する計測点を表示し、これらの計測点をユーザに押下させることによりタッチズレを是正する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。具体的には、特許文献1に開示された方法においては、タッチパネルによって検出される位置と各計測点の表示位置との関係に基づいて4つの一次変換式を定めておき、実際にタッチパネルによって検出された位置を前述の一次変換式によって補正すること等によってキャリブレーションが実行される。しかし、この方法は、ユーザに煩雑な操作を強いるという点で負担をかける。また、ユーザ自身がキャリブレーションについての予備知識を習得しておく必要があるという点でも負担をかける。
【0004】
上記のような不都合を解決するべく、ユーザが通常の操作入力を行った際の位置検出結果を適宜に利用し、自動的にキャリブレーションを実行する手法が提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0005】
特許文献2においては、画像部品オブジェクトの重心位置と、ユーザによって押下された位置の検出結果との差異に基づいて補正値を算出することにより、ユーザの押下位置の検出結果と画像部品オブジェクトの重心位置とを一致させるという手法が開示されている。しかし、この手法においてはユーザが必ず画像部品オブジェクトの重心位置を押下するということを技術的な前提としているため、実際にタッチズレが生じているか否かに関わらず、ユーザが画像部品オブジェクトの重心位置から多少でも外れた位置を押下した場合には、これをタッチズレと認識するおそれがある。この場合には、実際には必要ではないキャリブレーションが頻繁に実行されることになり好ましくない。
【0006】
特許文献3においては、画像部品オブジェクトの有効領域と無効領域のそれぞれへの押下情報を活用し、両者の分布を統計的に捕らえてキャリブレーションを実行するという手法が開示されている。しかし、この手法は、画像部品オブジェクト同士が近接しており、無効領域をあまり確保できない場合には不向きである。例えば、「ひらがな」を示す画像部品オブジェクトがマトリクス状に配列されているような場合には不向きである。また、無効領域を飛び越えて、隣の画像部品オブジェクトの有効領域が押下されたと誤認識したケースについては考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−341911号公報
【特許文献2】特開2006−139655号公報
【特許文献3】特開2004−280590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明に係る具体的態様は、情報入力装置におけるキャリブレーションを精度よく、かつ的確な頻度で自律的に実行可能とする技術を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る一態様の情報入力装置は、表示装置と接続して用いられる情報入力装置であって、(a)前記表示装置の画面上に配置されるパネル部を有し、当該パネル部の表面においてユーザにより指定された位置に応じた電気信号を出力する位置検出手段と、(b)前記位置検出手段と接続された制御手段と、(c)前記制御手段と接続された記憶手段と、を含む。
上記した制御手段は、(d)情報入力を行うために用いられる複数の第1画像と、情報入力を取り消すために用いられる第2画像と、を含んだ操作画像を表示装置に表示させるための画像信号を生成して当該表示装置へ出力する画像生成手段と、(e)位置検出手段から出力される電気信号に基づいて、複数の第1画像の中から、ユーザにより指定された位置に対応する指定画像を認識する認識手段と、(f)第1機会において認識された指定画像を特定するデータを記憶手段へ書き込む第1記録手段と、(g)第1機会に次いで到来する第2機会において認識された指定画像が第2画像であるか否かを判定する第1判定手段と、(h)第1判定手段において肯定判断がなされた場合に、第2機会に次いで到来する第3機会において認識された指定画像が、第1機会において認識された指定画像と操作画像中において隣り合うものであるか否かを判定する第2判定手段と、(i)第2判定手段において肯定判断がなされた場合に、第1機会において認識された指定画像と第3機会において認識された指定画像の相互の位置関係を示すデータと、第2判定手段における肯定判断の累積回数を示すデータと、を記憶部へ書き込む第2記録手段と、(j)累積回数を示すデータに基づいて、当該累積回数が所定数に達したか否かを判定する第3判定手段と、(k)第3判定手段において肯定判断がなされた場合に、位置関係を示すデータに基づいて、位置検出部から出力される電気信号に対して与えるべき補正値を設定する補正手段と、を有する。
【0010】
上記の情報入力装置は、隣り合った第1画像の一方についての入力がされた後のその入力が取り消され、その後他方の第1画像についての入力がされた場合に、隣り合った第1画像の位置関係と修正が行われた累積回数とを記録する。このため、タッチズレの傾向(例えば右方向へずれている等)を判断し、同じ傾向の修正が繰り返されている場合に、キャリブレーションを実行することができる。このため、不必要なキャリブレーションを抑制することが可能となり、精度のよいキャリブレーションを的確な頻度で自律的に実行することが可能となる。
【0011】
上記した位置検出手段は、例えば抵抗膜方式によるタッチパネルである。
【0012】
これにより、抵抗膜の経年劣化等によるタッチズレに対して自律的なキャリブレーションを実行することができる。
【0013】
上記した画像生成手段は、第2画像を複数の第1画像の何れよりも相対的に大きく表示させるように画像信号を生成することが好ましい。また、上記した画像生成手段は、複数の第1画像の相互間の隙間よりも、複数の第1画像の各々と第2画像との隙間が大きく表示されるように画像信号を生成することも好ましい。
【0014】
これらの少なくとも一方を採用することにより、タッチズレが生じている場合であっても、ユーザが第2画像をより確実に押下できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態の情報入力装置の構成を示すブロック図である。
【図2】タッチパネルの構造を示す図である。
【図3】表示装置の画像表示部に表示される操作画像の一例を示す図である。
【図4】制御部によって実行される処理手順を示すフローチャートである。
【図5】操作画像を簡略化して示す図である。
【図6】タッチパネルから出力され、制御部へ取り込まれる電気信号(A/D入力値)とアイコン描画座標との関係を示す図である。
【図7】補正手段によるキャリブレーションの一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、一実施形態の情報入力装置の構成を示すブロック図である。図1に示す情報入力装置1は、表示装置2と接続して用いられるものであり、制御部10、タッチパネル20、記憶部30を含んで構成されている。
【0018】
制御部(制御手段)10は、情報入力装置1の全体動作を制御するものであり、認識手段11、記録手段12、判定手段13、補正手段14、画像生成手段15を有する。制御部10は、例えばCPU等の演算手段からなり、記憶部30に格納された制御プログラム31を読み込んでこれを実行することにより、上記した各手段として機能する。認識手段11等の各手段により実行される処理内容については後ほどフローチャート等と合わせて詳述する。なお、記録手段12が「第1記録手段」および「第2記録手段」のそれぞれに相当し、判定手段13が「第1判定手段」、「第2判定手段」、「第3判定手段」のそれぞれに相当する。
【0019】
タッチパネル20は、表示装置2の画像表示部(画面)41の上側においてユーザが指等によって指定した位置を検出するためのものであり、パネル部21と検出回路22を有する。パネル部21は、平板状に形成されており、図2(A)に示すように表示装置2の画像表示部41の上側に配置される。このパネル部21は、画像表示部41に表示された画像をユーザが視認できるように透光性を有する。例えば、パネル部21は、図2(B)に示すように、図示のZ方向において離間して対向配置される2つの透明導電膜21a、21bを含んで構成される(膜抵抗方式)。検出回路22は、パネル部21の表面においてユーザにより指定された位置(XY座標)に応じた電気信号を出力する。
【0020】
記憶部30は、ROM、RAM、EEPROM等の不揮発性メモリなどから構成されており、制御プログラム31および部品オブジェクト座標テーブル32を格納する。また、記憶部30は、入力座標修正履歴を格納するための領域33(以後「入力座標修正履歴格納領域33」と称する。)も備えている。制御プログラム31は、情報入力装置1の全体動作を制御するためのものであり、上記のように制御部10によって実行される。部品オブジェクト座標テーブル32、入力座標修正履歴格納領域33およびこれに格納される入力座標修正履歴の詳細については後述する。
【0021】
表示装置2は、画像表示部41、表示制御部42および表示メモリ43を含んで構成されている。画像表示部41は、制御部10の画像生成手段15によって生成されて出力される画像信号に基づく画像を表示する。この画像表示部41としては、例えば液晶表示パネルを用いることができる。表示メモリ43は、制御部10の画像生成手段15から出力される画像信号(画像データ)を格納する。表示制御部42は、表示メモリ43に格納された画像信号に基づいて、画像表示部41に画像表示を行わせるための制御信号を生成し、画像表示部41へ供給する。
【0022】
図3は、表示装置2の画像表示部41に表示される操作画像の一例を示す図である。図3に示す操作画像は、記憶部30に格納された部品オブジェクト座標テーブル32を用いて、制御部10の画像生成手段15によって生成される画像信号に基づいて表示される。この操作画像は、ユーザが所望の文字情報を入力するために用いられるべき複数の部品オブジェクト画像を含んでいる。それら複数の部品オブジェクト画像(以下「アイコン」という。)のうち、「あ、い、う…」といった平仮名文字をそれぞれ示した複数のアイコン51が「第1画像」に相当し、それらを用いた情報入力を取り消すために用いられる「修正」の文字を示したアイコン52が「第2画像」に相当する。ユーザは、この操作画像を視認しながらタッチパネル20のパネル部21を押下することによって情報入力を行うことができる。
【0023】
図3に示す本例の操作画像50においては、「修正」の文字を示したアイコン52が複数のアイコン51のいずれよりも相対的に大きく表示されている。これにより、タッチズレが生じている場合であっても、ユーザがアイコン52をより確実に押下できるという効果を得られる。さらに、図3に示す本例の操作画像50においては、複数のアイコン51の相互間の隙間よりもこれらのアイコン51の各々とアイコン52との隙間が大きく表示されている。これによっても、タッチズレが生じている場合であっても、ユーザがアイコン52をより確実に押下できるという効果を得られる。
【0024】
本実施形態の情報入力装置1およびこれと接続される表示装置2は上記のような構成を有している。次に、この情報入力装置1の動作について詳細に説明する。
【0025】
図4は、制御部10によって実行される処理手順を示すフローチャートである。また、説明の便宜上、上述した操作画像を簡略化したものを図5として示す。図5に示すように、以下では、ユーザがアイコン51aを選択しようとするが、タッチズレが生じていることにより情報入力装置1ではアイコン51aに隣り合うアイコン51bが選択されたと認識される状況を想定する。なお、アイコン51a、51bは、各々、複数のアイコン51のうちの1つである。
【0026】
制御部10の認識手段11は、タッチパネル20から出力される電気信号に基づいて、操作画像に含まれる複数のアイコンの中から、ユーザによってタッチパネル20のパネル部21上において指定された位置に対応するアイコン(指定画像)を認識する(ステップS10)。説明の便宜上、このタイミング(第1機会)にて認識されたアイコンを以後「アイコン(1)」と称する。上記したようにユーザはアイコン51aを選択しているが、タッチズレの発生により、認識手段11はアイコン(1)としてアイコン51bを認識する(図5参照)。記録手段12は、この第1機会においてアイコン(1)として認識された指定画像であるアイコン51bを特定するデータを記憶部30に書き込む。
【0027】
次いで、制御部10の認識手段11は、位置検出手段としてのタッチパネル20から出力される電気信号に基づいて、操作画像に含まれる複数のアイコンの中から、ユーザによってタッチパネル20のパネル部21上において指定された位置に対応するアイコン(指定画像)を認識する(ステップS11)。説明の便宜上、このタイミング(第2機会)にて認識されたアイコンを以後「アイコン(2)」と称する。
【0028】
制御部10の判定手段12は、第2機会において認識されたアイコン(2)がアイコン52であるか否か、すなわち修正機能を有するものであるか否かを判定する(ステップS12)。ここでは、ステップS10においてユーザが意図したアイコンとは異なるアイコンが認識されているため、多くの場合にユーザは、アイコン52を選択する。なお、アイコン(2)がアイコン52ではない場合には、ステップS12において否定判断がなされる。この場合には、上記したステップS11以降に処理が繰り返される。
【0029】
アイコン(2)がアイコン52である場合、すなわち修正機能を有するものである場合には、ステップS12において判定手段13により肯定判断がなされる。この場合には、制御部10の認識手段11は、位置検出手段としてのタッチパネル20から出力される電気信号に基づいて、操作画像に含まれる複数のアイコンの中から、ユーザによってタッチパネル20のパネル部21上において指定された位置に対応するアイコン(指定画像)を認識する(ステップS14)。説明の便宜上、このタイミング(第3機会)にて認識されたアイコンを以後「アイコン(3)」と称する。
【0030】
次いで、制御部10の判定手段13は、上記の第3機会において認識された指定画像であるアイコン(3)が、上記した第1機会において認識された指定画像であるアイコン(1)と、操作画像50の中において隣り合うものであるか否かを判定する(ステップS15)。ここでは、ユーザが意図したアイコン51aに対してX方向にずれた位置にあるアイコン51bが認識されていたことから、ユーザは、タッチパネル20のパネル部21上において、アイコン51aの重心から左側に対応する位置を押下すると考えられる。そしてこのユーザの行動により、アイコン(3)としては、ユーザが本来意図しているアイコン51aが認識されるものとする。この場合、アイコン(1)とアイコン(3)とは互いに隣り合う関係にあるため、ステップS15においては判定手段13により肯定判断がなされる。
【0031】
なお、アイコン(3)とアイコン(1)とが隣り合う関係にない場合には、ステップS15において否定判断がなされる。この場合には、上記したステップS11以降に処理が繰り返される。
【0032】
上記したステップS15において肯定判断がなされた場合に、記録手段12は、第1機会において認識された指定画像であるアイコン(1)と第3機会において認識された指定画像であるアイコン(3)との相互の位置関係を示すデータと、ステップS15において判定手段13により肯定判断がなされた累積回数を示すデータと、を記憶部30の入力座標修正履歴記憶領域33へ書き込む(ステップS16)。「累積回数を示すデータ」は、判定手段13によりステップS15において肯定判断がなされたのが始めてであれば「1」となり、それ以後は、肯定判断がなされる毎に「2」、「3」・・・と加算されていくデータである。「位置関係を示すデータ」については次段落で詳述する。
【0033】
上記の「位置関係を示すデータ」とは、アイコン(1)とアイコン(3)とがX方向またはY方向においてどのように隣り合っているかを示すデータである。例えば、図5に示したアイコン51aとアイコン51bとの関係でいえば、アイコン51bは、アイコン51aに対してX方向に沿ってプラス方向(X座標値が増加する方向)へずれた位置で隣り合っている。図6は、タッチパネル20から出力され、制御部10へ取り込まれる電気信号(A/D入力値)とアイコン描画座標との関係を示す図である。タッチパネル20が理想的なものである場合には、アイコン51aを押下された際に得られるA/D入力値は、アイコン位置座標を電圧値に変換することで簡単に算出できる。また、誤って押下されたアイコン51bについても同様である。本例でいえば、アイコン51aに対応するA/D入力値とアイコン51bに対応するA/D入力値との関係から、「右方向へタッチズレを生じている」ことが分かる。なお、図6ではX方向についての関係のみを示しているがY方向についても同様である。さらに、アイコン(1)とアイコン(3)とが斜めに隣り合っている場合についても、X方向についての判断とY方向についての判断を合わせることで判断できる。なお、「位置関係を示すデータ」をタッチズレの方向ごとに分類し、タッチズレの方向ごとに個別に上記した「累積回数」を計数することも好ましい。
【0034】
図4に戻り、制御部10の判定手段13は、上記した「累積回数を示すデータ」に基づいて、累積回数が規定数に達したか否かを判定する(ステップS17)。ここで「規定数」については任意に設定可能であり、「2」より大きい値に設定されることが好ましい。規定数を「2」以上とすることで、必要以上に頻繁なキャリブレーションが実行されることを回避できるからである。累積回数が規定数に達していない場合には、ステップS17において否定判断がなされる。この場合には、次のステップS18において説明されるキャリブレーションが実行されない。
【0035】
一方、累積回数が規定数に達していた場合には、ステップS17において肯定判断がなされる。この場合には、制御部10の補正手段14は、タッチパネル20から得られる電気信号に対して与える補正値の設定を更新する(ステップS18)。すなわち、補正手段14は、キャリブレーションを実行する。
【0036】
図7は、補正手段14によるキャリブレーションの一例を説明するための図である。例えば、タッチパネル20が理想的なものである場合において、アイコン51aの重心座標が押下されたときのA/D入力値が2.0V、アイコン51bの重心座標が押下されたときのA/D入力値が3.0Vであるとする。このとき、タッチズレの影響により上記のように制御部10の認識手段11がアイコン51aに対するA/D入力値が3.0Vであると認識したとする。この場合には、補正手段14は、図7に示すようにA/D入力値に対して「−1.0V」のオフセットを加えるように補正値を更新する。これにより、以降の認識機会においては、ユーザが押下したアイコンの座標と認識手段11において認識される座標とがリンクすることになる。
【0037】
本実施形態の情報入力装置1による動作の具体例について上記の図3を用いて説明する。例えば、ユーザは「こうふ」という情報を入力する意思をもっており、「こ」と「う」については入力が完了し、次いで「ふ」を入力しようとしている場面を考える。ユーザは「ふ」のアイコンを押下しようと試みたが、情報入力装置1側では「ふ」の右隣の「ぬ」が押下されたと認識し、操作画面50の左上側の欄に「ぬ」と表示されたとする。この「ぬ」の表示を見たユーザは、「修正」のアイコンを押下することにより「ぬ」の入力をキャンセルする。その後ユーザは改めて「ふ」のアイコンを押下し、これに成功する。このような場合に、本実施形態の情報入力装置1は、「ふ」と「ぬ」の各アイコンが隣り合った関係にあることから、タッチズレが生じている可能性があると判断し、「ふ」と「ぬ」の各アイコンの位置関係(右隣)を記録するとともに、その回数をカウントする。以後も同様な処理を行うことにより、例えば、「右隣」の位置関係にあるアイコンについての再入力の回数が規定数に達した場合には、情報入力装置1は上記したキャリブレーションを実行する。ほかの位置関係(左隣、上隣、下隣など)にあるアイコンについても同様である。
【0038】
以上のように、本実施形態の情報入力装置は、隣り合った第1画像の一方についての入力がされた後にそれが取り消され、他方の第1画像についての入力がされた際に、隣り合った第1画像同士の位置関係と修正が行われた累積回数とを記録する。このため、タッチズレの傾向(例えば右方向へずれている等)を判断し、同じ傾向の修正が繰り返されている場合に、キャリブレーションを実行することができる。このため、不必要なキャリブレーションを抑制することが可能となり、精度のよいキャリブレーションを的確な頻度で自律的に実行することが可能となる。
【0039】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した実施形態においては、表示装置を備えない形態で情報入力装置が構成されていたが、表示装置も備えた形態で情報入力装置が構成されてもよい。また、上記した実施形態においては位置検出手段の一例としてタッチパネルを挙げていたが、位置検出手段はこれに限定されない。また、図2に示した操作画像は一例であり、操作画像によって示される情報は平仮名以外に、片仮名、漢字、英文字等の外国文字、数字、記号、予め定められた任意の文字列など種々に変更可能である。また、情報入力を取り消すために用いられる第2画像の一例として「修正」のアイコンを示していたが、これと類する他のアイコン(例えば「BS(バックスペース)」が存在する場合には、それらを第2画像として扱ってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 情報入力装置、2 表示装置、10 制御部、11 認識手段、12 記録手段、13 判定手段、14 補正手段、15 画像生成手段、20 タッチパネル、21 パネル部、22 検出回路、30 記憶部、31 制御プログラム、32 部品オブジェクト座標テーブル、33 入力座標修正履歴格納領域、50 操作画像、51、51a、51b アイコン(第1画像)、52 アイコン(第2画像)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置と接続して用いられる情報入力装置であって、
前記表示装置の画面上に配置されるパネル部を有し、当該パネル部の表面においてユーザにより指定された位置に応じた電気信号を出力する位置検出手段と、
前記位置検出手段と接続された制御手段と、
前記制御手段と接続された記憶手段と、
を含み、
前記制御手段は、
情報入力を行うために用いられる複数の第1画像と、前記情報入力を取り消すために用いられる第2画像と、を含んだ操作画像を前記表示装置に表示させるための画像信号を生成して当該表示装置へ出力する画像生成手段と、
前記位置検出手段から出力される前記電気信号に基づいて、前記複数の第1画像及び前記第2画像の中から、前記ユーザにより指定された位置に対応する指定画像を認識する認識手段と、
第1機会において認識された前記指定画像を特定するデータを前記記憶手段へ書き込む第1記録手段と、
前記第1機会に次いで到来する第2機会において認識された前記指定画像が前記第2画像であるか否かを判定する第1判定手段と、
前記第1判定手段において肯定判断がなされた場合に、前記第2機会に次いで到来する第3機会において認識された前記指定画像が、前記第1機会において認識された前記指定画像と前記操作画像中において隣り合うものであるか否かを判定する第2判定手段と、
前記第2判定手段において肯定判断がなされた場合に、前記第1機会において認識された前記指定画像と前記第3機会において認識された前記指定画像の相互の位置関係を示すデータと、前記第2判定手段における肯定判断の累積回数を示すデータと、を前記記憶部へ書き込む第2記録手段と、
前記累積回数を示すデータに基づいて、当該累積回数が所定数に達したか否かを判定する第3判定手段と、
前記第3判定手段において肯定判断がなされた場合に、前記位置関係を示すデータに基づいて、前記位置検出手段から出力される前記電気信号に対して与えるべき補正値を設定する補正手段と、
を有する、情報入力装置。
【請求項2】
前記位置検出手段は、抵抗膜方式によるタッチパネルである、
請求項1に記載の情報入力装置。
【請求項3】
前記画像生成手段は、前記第2画像を前記複数の第1画像の何れよりも相対的に大きく表示させるように前記画像信号を生成する、
請求項1又は2に記載の情報入力装置。
【請求項4】
前記画像生成手段は、前記複数の第1画像の相互間の隙間よりも、前記複数の第1画像の各々と前記第2画像との隙間が大きく表示されるように前記画像信号を生成する、
請求項1〜3の何れか1項に記載の情報入力装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−107864(P2011−107864A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260714(P2009−260714)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】