説明

情報処理装置およびその製造方法

【課題】製造時における非接触ICチップの共振周波数のばらつきを調整し、非接触ICチップの共振周波数を適切な帯域幅に収めることができるようにする。
【解決手段】本発明に係る情報処理装置においては、リーダライタとの間で無線通信する非接触IC部47を備える情報処理装置において、非接触IC部47は、電気容量が複数段階に切り換え可能に接続される複数のコンデンサと、複数の前記コンデンサに接続されるコイルと、複数の前記コンデンサが有する電気容量と前記コイルが有するインダクタンスによって表わされる共振周波数が所定の有効共振周波数の範囲内に収まるように、複数の前記コンデンサの接続を切り換える切換部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理装置およびその製造方法に係り、特に、非接触ICチップを用いて無線通信により情報の授受を行うことができるようにした情報処理装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機には、単なる通話による通信機能だけでなく、アドレス帳機能、インターネットなどのネットワークを介したメール機能や、Webページなどを閲覧することが可能なブラウザ機能などの種々の機能が搭載されている。また、携帯電話機の所定の位置に内蔵された非接触ICチップ(例えばFeliCaチップ(登録商標)など)を用いた電子マネーサービスや各種の認証機能なども搭載されている。特に、この非接触ICチップを用いて、電車などの車両の乗り降りに伴う車券の購入および改札通過時の車券確認を行うサービスが実施さている。
【0003】
携帯電話機に内蔵された非接触ICチップを用いて車券の購入や商品の購入などを行う場合、駅の構内の改札機や各端末に設置されたICリーダ/ライタとの間で情報の授受が行われる。具体的には、携帯電話機に内蔵された非接触ICチップは、携帯電話機がICリーダ/ライタに近接され、そのICリーダ/ライタから輻射される電磁波を受信したとき、それに応じて、各種の情報を用いてICリーダ/ライタと無線通信を行う。
【0004】
非接触ICチップと無線通信を行うICリーダ/ライタには種々のものが存在し、非接触ICチップがICリーダ/ライタとの間で無線通信を行う際に用いられる最適な共振周波数は、無線通信を行う相手方であるICリーダ/ライタごとに異なる。そのため、携帯電話機に内蔵された非接触ICチップの有効共振周波数の帯域幅は、非接触ICチップとの間で無線通信を行う複数のICリーダ/ライタに最適な複数の共振周波数の帯域幅の論理積(AND)により表される帯域幅に設定される。
【0005】
なお、非接触ICチップに関連する技術として次のような技術が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1では、キャパシタンスが複数段階に切り換え可能に接続されている第1のコンデンサおよび第2のコンデンサと、第1のコンデンサおよび第2のコンデンサに接続され、インダクタンスが複数段階に切り換え可能であるアンテナコイルと、第1のコンデンサおよび第2のコンデンサ並びにアンテナコイルに接続され電力を消費する抵抗と、第1のコンデンサおよび第2のコンデンサのキャパシタンス並びにアンテナコイルのインダクタンスを共振周波数が所定の範囲内に収まるように切り換え、リーダライタからの磁界に対して応答させる切換部を備える集積回路が開示されている。これにより、通信不良を改善することができる。
【特許文献1】特開2007−306240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非接触ICチップとの間で無線通信を行うICリーダ/ライタの種類は増加する傾向にあり、その種類の増加に伴い、非接触ICチップの有効共振周波数の帯域幅も狭まってきている。そのため、非接触ICチップの有効共振周波数を決定する際の定数決めに対して非常に厳格さが要求される。ところが、たとえ非接触ICチップの有効共振周波数を決定する際の定数を厳格に決定したとしても、携帯電話機の製造時におけるばらつきのために、結果的に非接触ICチップの共振周波数が所望する有効共振周波数の帯域外になってしまう場合もある。非接触ICチップの共振周波数が所望の有効共振周波数の帯域外になってしまう携帯電話機が多く発生すると、携帯電話機の製造時における歩留まりが低下してしまう。
【0007】
このような課題は、特許文献1に提案されている技術では解決することはできない。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、製造時における非接触ICチップの共振周波数のばらつきを調整し、非接触ICチップの共振周波数を適切な帯域幅に収めることができる情報処理装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の情報処理装置は、上述した課題を解決するために、リーダライタとの間で無線通信する非接触IC部を備える情報処理装置において、非接触IC部は、電気容量が複数段階に切り換え可能に接続される複数のコンデンサと、複数のコンデンサに接続されるコイルと、複数のコンデンサが有する電気容量とコイルが有するインダクタンスによって表わされる共振周波数が所定の有効共振周波数の範囲内に収まるように、複数のコンデンサの接続を切り換える切換部とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の情報処理装置の製造方法は、上述した課題を解決するために、電気容量が複数段階に切り換え可能に接続される複数のコンデンサと、複数の前記コンデンサに接続されるコイルとを有してリーダライタとの間で無線通信する非接触IC部を備える情報処理装置の製造方法において、複数のコンデンサが有する電気容量とコイルが有するインダクタンスによって表わされる共振周波数が所定の有効共振周波数の範囲内に収まるように、複数の前記コンデンサの接続を切り換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製造時における非接触ICチップの共振周波数のばらつきを調整し、非接触ICチップの共振周波数を適切な帯域幅に収めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る情報処理装置として適用可能な携帯電話機1の外観の構成を表している。なお、図1(A)は、携帯電話機1を約180度に見開いたときの正面から見た外観の構成を表しており、図1(B)は、携帯電話機1を見開いたときの側面から見た外観の構成を表している。
【0013】
図1(A)および(B)に示されるように、携帯電話機1は、中央のヒンジ部11を境に第1の筐体12と第2の筐体13とがヒンジ結合されており、ヒンジ部11を介して矢印X方向に折り畳み可能に形成される。携帯電話機1の内部の所定の位置には、送受信用のアンテナ(後述する図3のアンテナ31)が設けられており、内蔵されたアンテナを介して基地局(図示せず)との間で電波を送受信する。
【0014】
第1の筐体12には、その表面に「0」乃至「9」の数字キー、発呼キー、リダイヤルキー、終話・電源キー、クリアキー、および電子メールキーなどの操作キー14が設けられており、操作キー14を用いて各種指示を入力することができる。
【0015】
第1の筐体12には、操作キー14として上部に十字キーと確定キーが設けられており、ユーザが十字キーを上下左右方向に操作することにより当てられたカーソルを上下左右方向に移動させることができる。具体的には、第2の筐体13に設けられたメインディスプレイ17に表示されている電話帳リストや電子メールのスクロール動作、簡易ホームページのページ捲り動作および画像の送り動作などの種々の動作を実行する。
【0016】
また、確定キーを押下することにより、種々の機能を確定することができる。例えば第1の筐体12は、ユーザによる十字キーの操作に応じてメインディスプレイ17に表示された電話帳リストの複数の電話番号の中から所望の電話番号が選択され、確定キーが第1の筐体12の内部方向に押圧されると、選択された電話番号を確定して電話番号に対して発呼処理を行う。
【0017】
さらに、第1の筐体12には、十字キーと確定キーの左隣に電子メールキーが設けられており、電子メールキーが第1の筐体12の内部方向に押圧されると、メールの送受信機能を呼び出すことができる。十字キーと確定キーの右隣には、ブラウザキーが設けられており、ブラウザキーが第1の筐体12の内部方向に押圧されると、Webページのデータを閲覧することが可能となる。
【0018】
また、第1の筐体12には、操作キー14の下部にマイクロフォン15が設けられており、マイクロフォン15によって通話時のユーザの音声を集音する。さらに、第1の筐体12には、携帯電話機1の操作を行うサイドキー16が設けられている。
【0019】
なお、第1の筐体12は、背面側に図示しない電池パックが挿着されており、終話・電源キーがオン状態になると、電池パックから各回路部に対して電力が供給されて動作可能な状態に起動する。
【0020】
一方、第2の筐体13には、その正面にメインディスプレイ17が設けられており、電波の受信状態、電池残量、電話帳として登録されている相手先名や電話番号及び送信履歴等の他、電子メールの内容、簡易ホームページ、CCD(Charge Coupled Device)カメラ(後述する図2のCCDカメラ20)で撮像した画像、外部のコンテンツサーバ(図示せず)より受信したコンテンツ、メモリカード(後述する図3のメモリカード46)に記憶されているコンテンツを表示することができる。また、メインディスプレイ17の上部の所定の位置にはレシーバ(受話器)18が設けられており、これにより、ユーザは音声通話することが可能である。なお、携帯電話機1の所定の位置には、レシーバ18以外の音声出力部としてのスピーカ(図3のスピーカ50)も設けられている。
【0021】
また、第1の筐体12と第2の筐体13の内部の所定の位置には、携帯電話機1の状態を検知するための磁気センサ19a、19b、19c、および19dが設けられる。なお、メインディスプレイ17は、例えば有機ELにより構成されるディスプレイでもよいし、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)でもよい。
【0022】
図2は、本発明に係る情報処理装置として適用可能な携帯電話機1の他の外観の構成を表している。図2の携帯電話機1の状態は、図1の携帯電話機1の状態から矢印X方向に回動させた状態である。なお、図2(A)は、携帯電話機1を閉じたときの正面から見た外観の構成を表しており、図2(B)は、携帯電話機1を閉じたときの側面から見た外観の構成を表している。
【0023】
第2の筐体13の上部には、CCDカメラ20が設けられており、これにより、所望の撮影対象を撮像することができる。CCDカメラ20の下部には、サブディスプレイ21が設けられており、現在のアンテナの感度のレベルを示すアンテナピクト、携帯電話機1の現在の電池残量を示す電池ピクト、現在の時刻などが表示される。
【0024】
図3は、本発明に係る情報処理装置に適用可能な携帯電話機1の内部の構成を表している。図示せぬ基地局から送信されてきた無線信号は、アンテナ31で受信された後、アンテナ共用器(DUP)32を介して受信回路(RX)33に入力される。受信回路33は、受信された無線信号を周波数シンセサイザ(SYN)34から出力された局部発振信号とミキシングして中間周波数信号に周波数変換(ダウンコンバート)する。そして、受信回路33は、このダウンコンバートされた中間周波数信号を直交復調して受信ベースバンド信号を出力する。なお、周波数シンセサイザ34から発生される局部発振信号の周波数は、制御部41から出力される制御信号SYCによって指示される。
【0025】
受信回路33からの受信ベースバンド信号は、CDMA信号処理部36に入力される。CDMA信号処理部36は、図示せぬRAKE受信機を備える。このRAKE受信機では、受信ベースバンド信号に含まれる複数のパスがそれぞれの拡散符号(すなわち、拡散された受信信号の拡散符号と同一の拡散符号)で逆拡散処理される。そして、この逆拡散処理された各パスの信号は、位相が調停された後、コヒーレントRake合成される。Rake合成後のデータ系列は、デインタリーブおよびチャネル復号(誤り訂正復号)が行われた後、2値のデータ判定が行われる。これにより、所定の伝送フォーマットの受信パケットデータが得られる。この受信パケットデータは、圧縮伸張処理部37に入力される。
【0026】
圧縮伸張処理部37は、DSP(Digital Signal Processor)などにより構成され、CDMA信号処理部36から出力された受信パケットデータを図示せぬ多重分離部によりメディアごとに分離し、分離されたメディアごとのデータに対してそれぞれ復号処理を行う。例えば通話モードにおいては、受信パケットデータに含まれる通話音声などに対応するオーディオデータをスピーチコーデックにより復号する。また、例えばテレビ電話モードなどのように、受信パケットデータに動画像データが含まれていれば、この動画像データをビデオコーデックにより復号する。さらに、受信パケットデータがダウンロードコンテンツであれば、このダウンロードコンテンツを伸張した後、伸張されたダウンロードコンテンツを制御部41に出力する。
【0027】
復号処理により得られたディジタルオーディオ信号はPCMコーデック38に供給される。PCMコーデック38は、圧縮伸張処理部37から出力されたディジタルオーディオ信号をPCM復号し、PCM復号後のアナログオーディオデータ信号を受話増幅器39に出力する。このアナログオーディオ信号は、受話増幅器39にて増幅された後、レシーバ18により出力される。
【0028】
圧縮伸張処理部37によりビデオコーデックにて復号されたディジタル動画像信号は、制御部41に入力される。制御部41は、圧縮伸張処理部37から出力されたディジタル動画像信号に基づく動画像を、図示せぬビデオRAM(例えばVRAMなど)を介してメインディスプレイ17に表示させる。なお、制御部41は、受信された動画像データだけでなく、CCDカメラ20により撮像された動画像データに関しても、図示せぬビデオRAMを介してメインディスプレイ17に表示させることも可能である。
【0029】
また、圧縮伸張処理部37は、受信パケットデータが電子メールである場合、この電子メールを制御部41に供給する。制御部41は、圧縮伸張処理部37から供給された電子メールを記憶部42に記憶させる。そして、制御部41は、ユーザによる入力部としての操作キー14の操作に応じて、記憶部42に記憶されているこの電子メールを読み出し、読み出された電子メールをメインディスプレイ17に表示させる。
【0030】
一方、通話モードにおいて、マイクロフォン15に入力された話者(ユーザ)の音声信号(アナログオーディオ信号)は、送話増幅器40により適正レベルまで増幅された後、PCMコーデック38によりPCM符号化される。このPCM符号化後のディジタルオーディオ信号は、圧縮伸張処理部37に入力される。また、CCDカメラ20から出力される動画像信号は、制御部41によりディジタル化されて圧縮伸張処理部37に入力される。さらに、制御部41にて作成されたテキストデータである電子メールも、圧縮伸張処理部37に入力される。
【0031】
圧縮伸張処理部37は、PCMコーデック38から出力されたディジタルオーディオ信号を所定の送信データレートに応じたフォーマットで圧縮符号化する。これにより、オーディオデータが生成される。また、圧縮伸張処理部37は、制御部41から出力されたディジタル動画像信号を圧縮符号化して動画像データを生成する。そして、圧縮伸張処理部37は、これらのオーディオデータや動画像データを図示せぬ多重分離部で所定の伝送フォーマットに従って多重化した後にパケット化し、パケット化後の送信パケットデータをCDMA信号処理部36に出力する。なお、圧縮伸張処理部37は、制御部41から電子メールが出力された場合にも、この電子メールを送信パケットデータに多重化する。
【0032】
CDMA信号処理部36は、圧縮伸張処理部37から出力された送信パケットデータに対し、送信チャネルに割り当てられた拡散符号を用いてスペクトラム拡散処理を施し、スペクトラム拡散処理後の出力信号を送信回路(TX)35に出力する。送信回路35は、スペクトラム拡散処理後の信号をQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)方式などのディジタル変調方式を使用して変調する。送信回路35は、ディジタル変調後の送信信号を、周波数シンセサイザ34から発生される局部発振信号と合成して無線信号に周波数変換(アップコンバート)する。そして、送信回路35は、制御部41により指示される送信電力レベルとなるように、このアップコンバートにより生成された無線信号を高周波増幅する。この高周波増幅された無線信号は、アンテナ共用器32を介してアンテナ31に供給され、このアンテナ31から図示せぬ基地局に向けて送信される。
【0033】
また、携帯電話機1は、外部メモリインタフェース45を備えている。この外部メモリインタフェース45は、メモリカード46を着脱することが可能なスロットを備えている。メモリカード46は、NAND型フラッシュメモリカードやNOR型フラッシュメモリカードなどに代表されるフラッシュメモリカードの一種であり、10ピン端子を介して画像や音声、音楽等の各種データの書き込み及び読み出しが可能となっている。さらに、携帯電話機1には、現在の正確な現在の時刻を測定する時計回路(タイマ)48が設けられている。
【0034】
制御部41は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)などからなり、CPUは、ROMに記憶されているプログラムまたは記憶部42からRAMにロードされた、オペレーティングシステム(OS)を含む各種のアプリケーションプログラムに従って各種の処理を実行するとともに、種々の制御信号を生成し、各部に供給することにより携帯電話機1を統括的に制御する。RAMは、CPUが各種の処理を実行する上において必要なデータなどを適宜記憶する。
【0035】
記憶部42は、例えば、電気的に書換えや消去が可能な不揮発性メモリであるフラッシュメモリ素子やHDD(Hard Disc Drive)などからなり、制御部41のCPUにより実行される種々のアプリケーションプログラムや種々のデータ群を格納している。電源回路44は、電池43の出力を基に所定の動作電源電圧Vccを生成して各回路部に供給する。電池43は図示しない保護回路などを含めて電池パックを構成する。非接触IC部47は、携帯電話機1がICリーダ/ライタ(図示せず)に近接され、そのICリーダ/ライタ(図示せず)から輻射される電磁波を受信したとき、それに応じて、各種の情報を用いてICリーダ/ライタと無線通信を行う。
【0036】
非接触IC部47との間で無線通信を行うICリーダ/ライタ61の種類は増加する傾向にあり、その種類の増加に伴い、非接触IC部47の有効共振周波数の帯域幅も狭まってきている。そのため、非接触IC部47の有効共振周波数を決定する際の定数決めに対して非常に厳格さが要求される。図4は、携帯電話機1の組み立て後における従来の非接触IC部47の共振周波数の測定方法を示している。図4に示されるように、従来の非接触IC部47は、非接触ICチップ、並列コンデンサC1乃至C3を有するアンテナ並列コンデンサ部、およびアンテナL1からなる。アンテナ並列コンデンサ部が有する電気容量は固定値である。非接触IC部47が携帯電話機1に組み込まれた後、ICリーダ/ライタ61は、非接触IC部47との間で無線通信を行うことによって非接触IC部47の共振周波数fを測定する。なお、非接触IC部47の共振周波数fは、1/{2π√(L1×(C1+C2+C3))}により表される。しかしながら、たとえ従来の非接触IC部47の有効共振周波数を決定する際の定数を厳格に決定したとしても、携帯電話機1の製造時におけるばらつきのために、結果的に非接触IC部47の共振周波数が所望する有効共振周波数の帯域外になってしまう場合もあった。非接触IC部47の共振周波数が所望の有効共振周波数の帯域外になってしまう携帯電話機1が多く発生すると、携帯電話機1の製造時における歩留まりが低下してしまう。
【0037】
図5は、携帯電話機1の製造時におけるばらつきのために非接触IC部47の共振周波数が所望する有効共振周波数の帯域外になる様子を示している。例えば非接触IC部47に関する有効共振周波数の中心周波数が14MHzであり、有効共振周波数の下限と上限がそれぞれ13.5MHzと14.5MHzであると仮定する。このときの有効共振周波数の帯域幅は1MHzである。しかし、携帯電話機1の製造時におけるばらつきのために結果的に非接触IC部47の共振周波数が例えば13.2MHzや14.8MHzなどになると、非接触IC部47の共振周波数は所望する有効共振周波数の帯域外となってしまう。
【0038】
従来では、非接触IC部47の共振周波数が所望する有効共振周波数の帯域外になってしまった場合、非接触IC47の共振周波数を所望する有効共振周波数の帯域内に収めるために、非接触IC部47に対して半田などを用いて調整していた。これに対して、本発明の実施形態においては、たとえ携帯電話機1の製造時におけるばらつきのために非接触IC部47の共振周波数が有効共振周波数の帯域外になってしまった場合であっても、アンテナ並列コンデンサ部の電気容量を可変させることで携帯電話機1の製造後に非接触IC部47の共振周波数を適切に調整するようにする。非接触IC部47の共振周波数の可変方法として、複数の並列コンデンサC1乃至C3の接続のON/OFFをそれぞれ機械的に切り換えて、アンテナ並列コンデンサ部の全体としての電気容量を変更するようにする。このとき、並列コンデンサC1乃至C3の接続のON/OFFを切り換える回路として、スイッチを用いる。
【0039】
図6は、本発明に係る非接触IC部47の内部の構成を表している。図6に示されるように、本発明に係る非接触IC部47は、非接触ICチップ、コンデンサCinと並列コンデンサC1乃至C3およびSW1乃至SW3を有するアンテナ並列コンデンサ部、およびアンテナL1からなる。コンデンサCinと並列コンデンサC1乃至C3が有する電気容量は固定値である。SW1乃至SW3は、並列コンデンサC1乃至C3の接続のON/OFFを切り換える回路である。非接触IC部47が携帯電話機1に組み込まれた後に、不揮発メモリ搭載のコントロールIC62が非接触IC部47に対して接続可能である。コントローラIC62は、非接触IC部47に接続後に非接触IC部47のSW1乃至SW3を制御し、SW1乃至SW3のON/OFFを切り換えることが可能である。
【0040】
並列コンデンサC1乃至C3の接続のON/OFFの切り換えには、8通りの組み合わせが考えられる。具体的には、C1/C2/C3=OFF/OFF/OFF、C1/C2/C3=ON/OFF/OFF、C1/C2/C3=OFF/ON/OFF、C1/C2/C3=OFF/OFF/ON、C1/C2/C3=ON/ON/OFF、C1/C2/C3=ON/OFF/ON、C1/C2/C3=OFF/ON/ON、C1/C2/C3=ON/ON/ONの組み合わせが考えられる。従って、非接触IC部47が携帯電話機1に組み込まれた後にコントローラIC62を用いてSW1乃至SW3のON/OFFを切り換えることによって、アンテナ並列コンデンサ部の全体としての電気容量を8通りに変更することができる。
【0041】
例えばC1/C2/C3=ON/OFF/OFFになるようにSW1乃至SW3を切り換えると、非接触IC部47の共振周波数fは、1/{2π√(L1×(Cin×C1)/(Cin+C1))}に変更される。また、例えばC1/C2/C3=OFF/ON/OFFになるようにSW1乃至SW3を切り換えると、非接触IC部47の共振周波数fは、1/{2π√(L1×(Cin×C2)/(Cin+C2))}に変更される。さらに、例えばC1/C2/C3=ON/OFF/ONになるようにSW1乃至SW3を切り換えると、非接触IC部47の共振周波数fは、1/{2π√(L1×(Cin×C1+Cin×C2)/(Cin+C1+C2))}に変更される。
【0042】
なお、各SW1乃至SW3の設定は一旦変更したら再度変更されることがないように、携帯電話機1の電源OFF時にもその設定値を記憶しておく必要がある。そのため、不揮発性メモリを搭載したコントローラIC62によってSW1乃至SW3の制御を行うようにする。
【0043】
図7は、携帯電話機1の製造時におけるばらつきのために非接触IC部47の共振周波数が所望する有効共振周波数の帯域外になった場合に、コントローラIC62を用いてSW1乃至SW3のON/OFFを切り換えることによって非接触IC部47の共振周波数を所望する有効共振周波数の帯域内に戻す様子を示している。携帯電話機1の製造時におけるばらつきのために結果的に非接触IC部47の共振周波数が例えば13.2MHzや14.8MHzなどになると、非接触IC部47の共振周波数は所望する有効共振周波数の帯域外となってしまう。非接触IC部47の共振周波数が携帯電話機1の製造時におけるばらつきのために例えば13.2MHzになったと仮定した場合、図7に示されるように、非接触IC部47の共振周波数を所望する有効共振周波数の帯域内に戻すために、アンテナ並列コンデンサ部の全体としての電気容量を小さく変更し、非接触IC部47の共振周波数fを高く変更する。一方、非接触IC部47の共振周波数が携帯電話機1の製造時におけるばらつきのために例えば14.8MHzになったと仮定した場合、図7に示されるように、非接触IC部47の共振周波数を所望する有効共振周波数の帯域内に戻すために、アンテナ並列コンデンサ部の全体としての電気容量を大きく変更し、非接触IC部47の共振周波数fを低く変更する。
【0044】
より具体的には、並列コンデンサC1乃至C3が有する電気容量がそれぞれ「1」、「4」、および「10」であると仮定すると、アンテナ並列コンデンサ部の全体としての電気容量は、(Cin×1)/(Cin+1)、(Cin×4)/(Cin+4)、(Cin×5)/(Cin+5)、(Cin×10)/(Cin+10)、(Cin×11)/(Cin+11)、(Cin×14)/(Cin+14)、および(Cin×15)/(Cin+15)のうちのいずれかの値をとることができる。例えばC1/C2/C3=OFF/OFF/ONになるようにSW1乃至SW3が設定されている状態で(すなわち、アンテナ並列コンデンサ部の全体としての電気容量が(Cin×10)/(Cin+10)である状態で)非接触IC部47の共振周波数が携帯電話機1の製造時におけるばらつきのために例えば13.2MHzになったと仮定した場合、非接触IC部47の共振周波数fを高く変更するべく、アンテナ並列コンデンサ部の全体としての電気容量を(Cin×10)/(Cin+10)から例えば(Cin×5)/(Cin+5)などに変更する。
【0045】
一方、例えばC1/C2/C3=OFF/OFF/ONになるようにSW1乃至SW3が設定されている状態で(すなわち、アンテナ並列コンデンサ部の全体としての電気容量が(Cin×10)/(Cin+10)である状態で)非接触IC部47の共振周波数が携帯電話機1の製造時におけるばらつきのために例えば14.8MHzになったと仮定した場合、非接触IC部47の共振周波数fを低く変更するべく、アンテナ並列コンデンサ部の全体としての電気容量を(Cin×10)/(Cin+10)から例えば(Cin×14)/(Cin+14)などに変更する。
【0046】
本発明の実施形態においては、リーダライタとの間で無線通信する非接触IC部47を備える携帯電話機1において、非接触IC部47は、電気容量が複数段階に切り換え可能に接続される複数のコンデンサ(アンテナ並列コンデンサ部)と、複数のコンデンサに接続されるアンテナコイルL1と、複数のコンデンサが有する電気容量とコイルが有するインダクタンスによって表わされる共振周波数が所定の有効共振周波数の範囲内に収まるように、複数のコンデンサの接続を切り換える切換部(SW1乃至SW3)とを備える。
【0047】
これにより、携帯電話機1の製造時におけるばらつきのために非接触IC部47の共振周波数が所望する有効共振周波数の帯域外になった場合に、コントローラIC62を用いてSW1乃至SW3のON/OFFを切り換えることによって非接触IC部47の共振周波数を所望する有効共振周波数の帯域内に戻すことができ、見かけ上の有効共振周波数の帯域幅を広くすることができる。従って、携帯電話機1の不良率を低減し、携帯電話機1の製造時における歩留まりを大幅に改善することができる。
【0048】
但し、ONに設定されるSWが1つのみであると、SWが有する抵抗のためにアンテナ波形がロスしてしまい、若干波形特性が悪くなってしまう。図8は、ONに設定されるSWの構成の違いによる波形特性への影響を示している。図8(A)は、ONに設定されるSWが1つである構成を示しており、図8(B)は、ONに設定されるSWが2つである構成を示している。図8(A)に示されるように、ONに設定されるSWが1つである場合、アンテナL1に印加される電圧Vant=(2.4kΩ+R)×I2である。一方、図8(B)に示されるように、ONに設定されるSWが1つである場合、アンテナL1に印加される電圧Vant=1.2kΩ×I3´×2+(R+2.4KΩ)×I3´=(4.8kΩ+R)×I3´である。
【0049】
図8(A)と図8(B)における電圧Vantは等しいことから、(2.4kΩ+R)×I2=(4.8kΩ+R)×I3´が成り立つ。このとこから、I2=(4.8kΩ+R)×I3´/(2.4kΩ+R)となる。従って、I2>I3´となり、図8(A)におけるVSW2(=R×I2)>VSW3(=R×I3´)となる。
【0050】
図9は、ONに設定されるSWの構成の違いによる波形特性の歪みを示している。図9(A)は、ONに設定されるSWが1つである構成における波形特性の歪みを示しており、図9(B)は、ONに設定されるSWが2つである構成における波形特性の歪みを示しており、図9(C)は、ONに設定されるSWがない構成における波形特性の歪みを示している。図9(C)に示される波形特性と図9(A)に示される波形特性を比較すると、図9(A)に示される波形特性の場合、ONに設定されるSWが1つであることから、SWの抵抗分によるロスによって電圧の振幅が一定量小さくなっており、また反射の影響で一定周期で電圧の振幅がさらに小さくなっている。また、一定周期で振幅の山が大きくなったり小さくなったりしているために、波形を連続表示するとつぶれたような波形となってしまう。これに対して、図9(B)に示される波形特性の場合、ONに設定されるSWが2つであることから、SWの抵抗分によるロスによって電圧の振幅が一定量小さくなり、図9(C)に示される波形に比べて振幅の山の先端が多少丸くなっている。しかし、図9(B)に示される波形特性の場合、図9(A)に示される波形特性に比べると、アンテナL1側から見たアンテナ並列コンデンサ部における全体としての電気容量は同じであっても、SWの抵抗分によるロスが少ないことから波形特性の歪みを少なく抑えることができる。これにより、SWを全く用いずに並列コンデンサのみにより構成されていた従来のアンテナ並列コンデンサ部における波形特性と同等の波形特性を得ることができる。
【0051】
なお、本発明は、携帯電話機1以外にも、PDA(Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータ、携帯型ゲーム機、携帯型音楽再生機、携帯型動画再生機、その他の情報処理装置にも適用することができる。
【0052】
また、本発明の実施形態において説明した一連の処理は、ソフトウェアにより実行させることもできるが、ハードウェアにより実行させることもできる。
【0053】
さらに、本発明の実施形態では、フローチャートのステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理の例を示したが、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別実行される処理をも含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る情報処理装置として適用可能な携帯電話機の外観の構成を示す図。
【図2】本発明に係る情報処理装置として適用可能な携帯電話機の他の外観の構成を示す図。
【図3】本発明に係る情報処理装置に適用可能な携帯電話機の内部の構成を示すブロック図。
【図4】携帯電話機の組み立て後における従来の非接触IC部の共振周波数の測定方法を示す図。
【図5】携帯電話機の製造時におけるばらつきのために非接触IC部の共振周波数が所望する有効共振周波数の帯域外になる様子を示す図。
【図6】本発明に係る非接触IC部の内部の構成を示す図。
【図7】携帯電話機の製造時におけるばらつきのために非接触IC部の共振周波数が所望する有効共振周波数の帯域外になった場合に、コントローラICを用いてSW1乃至SW3のON/OFFを切り換えることによって非接触IC部の共振周波数を所望する有効共振周波数の帯域内に戻す様子を示す図。
【図8】ONに設定されるSWの構成の違いによる波形特性への影響を示す図。
【図9】ONに設定されるSWの構成の違いによる波形特性の歪みを示す図。
【符号の説明】
【0055】
1…携帯電話機、11…ヒンジ、12…第1の筐体、13…第2の筐体、14…操作キー、15…マイクロフォン、16…サイドキー、17…メインディスプレイ、18…レシーバ、19a乃至19d…磁気センサ、20…CCDカメラ、21…サブディスプレイ、31…アンテナ、32…アンテナ共用器(DUP)、33…受信回路(RX)、34…周波数シンセサイザ(SYN)、35…送信回路(TX)、36…CDMA信号処理部、37…圧縮伸張処理部、38…PCMコーデック、39…受話増幅器、40…送話増幅器、41…制御部、42…記憶部、43…電池、44…電源回路、45…外部メモリインタフェース、46…メモリカード、47…非接触IC部、48…時計回路、50…スピーカ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダライタとの間で無線通信する非接触IC部を備える情報処理装置において、
前記非接触IC部は、
電気容量が複数段階に切り換え可能に接続される複数のコンデンサと、
複数の前記コンデンサに接続されるコイルと、
複数の前記コンデンサが有する電気容量と前記コイルが有するインダクタンスによって表わされる共振周波数が所定の有効共振周波数の範囲内に収まるように、複数の前記コンデンサの接続を切り換える切換部とを備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
複数の前記コンデンサは、第1のコンデンサと、前記第1のコンデンサに前記切換部を介して接続される少なくとも1つ以上の第2のコンデンサからなり、
前記切換部は、前記共振周波数が所定の有効共振周波数の範囲内に収まるように、前記第1のコンデンサに対する少なくとも1つ以上の前記第2のコンデンサの接続を切り換えることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記情報処理装置には少なくとも2つ以上の第2のコンデンサが設けられ、前記切換部は、前記共振周波数が所定の有効共振周波数の範囲内に収まるように、前記第1のコンデンサに対する少なくとも2つ以上の前記第2のコンデンサの接続をOFFからONに切り換えることを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
少なくとも1つ以上の前記第2のコンデンサは、互いに並列に接続されることを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第1のコンデンサと前記第2のコンデンサは、直列に接続されることを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記切換部は、前記共振周波数が下限の有効共振周波数と上限の有効共振周波数により示される有効共振周波数の範囲内に収まるように、複数の前記コンデンサの接続を切り換えることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記切換部は、前記共振周波数が下限の有効共振周波数よりも小さい場合、複数の前記コンデンサが有する電気容量を大きく変更するように複数の前記コンデンサの接続を切り換える一方、前記共振周波数が上限の有効共振周波数よりも大きい場合、複数の前記コンデンサが有する電気容量を小さく変更するように複数の前記コンデンサの接続を切り換えることを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記切換部は、前記共振周波数が所定の有効共振周波数の範囲内に収まるように、前記情報処理装置に接続される外部コントローラからの指示信号に従い、複数の前記コンデンサの接続を切り換えることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
電気容量が複数段階に切り換え可能に接続される複数のコンデンサと、複数の前記コンデンサに接続されるコイルとを有してリーダライタとの間で無線通信する非接触IC部を備える情報処理装置の製造方法において、
複数の前記コンデンサが有する電気容量と前記コイルが有するインダクタンスによって表わされる共振周波数が所定の有効共振周波数の範囲内に収まるように、複数の前記コンデンサの接続を切り換えることを特徴とする情報処理装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−147743(P2010−147743A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322011(P2008−322011)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】