説明

情報処理装置および通信方法

【課題】通信速度の低下を抑え、簡易な構成で安全に無線通信を行う。
【解決手段】無線LANによる通信を行う複数の無線部2,3と、無線部2,3のそれぞれにおける電波状況を監視する監視部4と、監視部4による監視結果に基づいて、どの無線部で通信を行うかを判定する判定部5と、判定部5による判定結果に従って、通信を行う無線部を切り替える制御部6とを備え、判定部5によって通信を行うと判定された無線部2は、暗号化処理を行った通信データを送信し、別の無線部3は、暗号化された通信データを復号化するための復号鍵を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LANによる通信を行う情報処理装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット回線において、有線通信は、高速な光通信が普及してきている。そして、無線LANが、高速通信におけるボトルネックになりつつある。また、無線LANでは、セキュリティ確保のために通信データのフレーム内に格納されるヘッダが多いため、ヘッダの分だけ通信可能なデータ量が少なくなる。
【0003】
無線LANの主な規格には、2.4GHz帯を使用するIEEE802.11gと、5GHz帯を使用するIEEE802.11aとがある。
【0004】
IEEE802.11gは、IEEE802.11aに比べて伝送距離が長く、障害物の影響を受けにくい。しかし、IEEE802.11gでは、同じ周波数帯を使用する多くの電子機器(例えば、電子レンジ、コードレス電話機またはBluetoothなど)が存在するために、混信などノイズの影響を受けやすく、同じ周波数帯を使用する電子機器の近くでは、通信速度が低下したり、通信が繋がりにくくなったりする。また、IEEE802.11gは、チャネル数が13個設けられているが、一部のチャネルでは周波数が重なっている。そのため、完全に周波数が重ならない3チャネル(例えば、1ch,6ch,11chというように、5ch刻みの3チャネル)以外のチャネルが使用された場合には、通信速度が低下する。
【0005】
IEEE802.11aは、IEEE802.11gよりも多くのチャネル数が設けられ、例えば、W52,W53,W56では19チャネルが設けられている。また、IEEE802.11aでは、使用する周波数帯も他の電子機器の影響を受けない。しかし、IEEE802.11g(2.4GHz帯)に比べて周波数が高いために、伝送距離が短めになり、障害物の影響を受けやすい。さらに、W53,W56では、レーダとの干渉を避けることが定められており、レーダを検出した場合には、使用しているチャネルを停止し、一定時間経過後に別のチャネルに移る。
【0006】
図7は、無線LANを介してストリーミング再生を行う情報処理装置の構成例を示すブロック図である。図7に示す情報処理装置30は、無線部31、バッファ32および再生部33を備える。無線LAN親機20は、インターネット網50を介して、ストリーミングサーバ40からストリーミング再生するデータ(ストリーミングデータ)を受信する。
【0007】
無線部31は、無線LAN親機20との間で無線通信を行い、無線LAN親機20が受信したストリーミングデータを受信する。バッファ32は、無線部31が受信したストリーミングデータを格納する。再生部33は、バッファ32に格納されたストリーミングデータを順次読出しながら、データのストリーミング再生を行う。
【0008】
しかし、このような情報処理装置30では、無線LANの通信速度が低下した場合に、ストリーミング再生を行うために必要充分なストリーミングデータを受信することができず、コマ落ちが発生するなどして、再生部33は、スムーズなストリーミング再生ができないことがある。また、電波状況によって通信が途切れてしまった場合に、バッファ32に格納されているストリーミングデータが空になってしまい、再生部33はストリーミング再生を停止することがある。
【0009】
特許文献1には、異種の無線通信システムの通信を高速かつ継ぎ目なく切り替えるソフトウェア無線機が記載されている。特許文献1に記載されたソフトウェア無線機では、通信状態測定部が現在の通信状態の監視を行い、無線通信システム切り替え部が現在の無線通信システムから次候補の無線通信システムに切り替える。特許文献1に記載されたソフトウェア無線機では、無線通信システムを切り替える前に、切り替え候補となる無線通信システムを実現するためのプログラムをFPGA群やCPUに書き込む処理を開始しておくことによって、無線通信システムの高速な切り替えを実現する。
【0010】
特許文献2には、複数の通信帯域を用いて通信を伝送する無線通信装置が記載されている。特許文献2に記載された無線通信装置は、データを複数の無線帯域のチャネルに分割して送信し、受信側で結合することによって、高速かつ高品質に伝送する。また、特許文献2では、無線環境が悪化した場合の対応も検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−173665号公報(段落0055−0057)
【特許文献2】特開2005−277481号公報(段落0009、段落0023、段落0026−0028)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1に記載されたソフトウェア無線機では、新たな無線通信システムのソフトウェアを書き換える作業が必要であり、例えば、電波状況が変化して頻繁に無線通信システムを切り替えなければならないような場合に、切り替え候補となる無線通信システムのプログラムを書き込む処理を頻繁に行うことになり、CPUに対する負荷が大きくなることが予想される。
【0013】
また、特許文献2に記載された無線通信装置では、データを複数の無線帯域に分割して送受信することによって高速かつ高品質な伝送を実現するが、標準的な動作状況として、1つの通信を行うために複数の無線帯域を占有することになってしまう。また、無線通信では、通信データに対するセキュリティを確保することも重要であるが、特許文献2に記載された無線通信装置では、無線LAN規格では基本的なセキュリティしか考察されていない。
【0014】
そこで、本発明は、通信速度の低下を抑え、簡易な構成で安全に無線通信を行う情報処理装置および通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による情報処理装置は、無線LANによる通信を行う複数の無線部と、無線部のそれぞれにおける電波状況を監視する監視部と、監視部による監視結果に基づいて、どの無線部で通信を行うかを判定する判定部と、判定部による判定結果に従って、通信を行う無線部を切り替える制御部とを備え、判定部によって通信を行うと判定された無線部は、暗号化処理を行った通信データを送信し、別の無線部は、暗号化された通信データを復号化するための復号鍵を送信することを特徴とする。
【0016】
本発明による通信方法は、無線LANによる通信を行う無線部を複数備えた情報処理装置における通信方法であって、無線部のそれぞれにおける電波状況を監視し、監視結果に基づいて、どの無線部で通信を行うかを判定し、判定結果に従って、通信を行う無線部を切り替え、通信を行うと判定された無線部は、暗号化処理を行った通信データを送信し、別の無線部は、暗号化された通信データを復号化するための復号鍵を送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、通信速度の低下を抑え、簡易な構成で安全に無線通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による情報処理装置の第1の実施形態(実施形態1)の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す情報処理装置において無線部を切り替える動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明による第2の実施形態の情報処理装置において無線部を切り替える動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明による第3の実施形態の情報処理装置において無線部を切り替える動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明による第4の実施形態の情報処理装置において無線部を切り替える動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明による情報処理装置の主要部を示すブロック図である。
【図7】無線LANを介してストリーミング再生を行う情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施形態1.
図1は、本発明による情報処理装置の第1の実施形態(実施形態1)の構成を示すブロック図である。図1を参照して、本発明による情報処理装置の第1の実施形態の構成を説明する。
【0020】
情報処理装置10は、制御部11、監視部12、処理部13、無線部14,15、およびバッファ16を備える。情報処理装置10は、無線部14または無線部15を使用して、無線LAN親機20との間で無線通信を行う。情報処理装置10には、3つ以上の無線部が設けられてもよい。
【0021】
制御部11は、監視部12からの指示に従って、無線LAN親機20との間の無線通信に使用する無線部(通信する無線部)を、無線部14または無線部15のいずれかに切り替える。
【0022】
監視部12は、無線部14,15と無線LAN親機20との間で行われる無線通信の通信速度を、常時または定期的に監視する。また、監視部12は、通信速度が所定の通信速度より低下したかなどの周囲環境の変化に応じて、どの無線部で通信を行うかを判定する。そして、監視部12は、判定結果に基づいた制御を制御部11に指示する。
【0023】
例えば、監視部12には、無線部の切り替えを指示する基準となる通信速度の規定値があらかじめ設定されており、監視部12は、無線部14,15における通信速度と、あらかじめ設定された規定値とに基づいて、どの無線部で通信を行うかを判定する。なお、監視部12は、無線部14,15における通信速度と、処理部13から通知されるストリーミング再生に必要な通信速度とに基づいて、どの無線部で通信を行うかを判定してもよい。
【0024】
処理部13は、無線部14または無線部15による無線通信によって送受信される通信データに対する処理を行う。例えば、処理部13は、無線部14,15によって受信されたデータをバッファ16に格納し、バッファ16に格納したストリーミングデータを順次読出しながら、ストリーミング再生を行う。また、処理部13は、ストリーミング再生に必要な通信速度を監視部に通知する。
【0025】
無線部14は、無線LAN親機20との間で、例えば、IEEE802.11gの規格による無線通信を行う。無線部15は、無線LAN親機20との間で、例えば、IEEE802.11aの規格による無線通信を行う。無線部14,15は、同じ無線LAN規格であってもよいし、異なる無線LAN規格であってもよい。
【0026】
図2は、図1に示す情報処理装置において無線部を切り替える動作を示すフローチャートである。図2を参照して、情報処理装置10において無線部を切り替える動作を説明する。
【0027】
まず、情報処理装置10は、無線通信を行うために無線LAN親機20に接続する(ステップS11)。このとき、監視部12は、無線部14(以下、無線部Aと呼ぶ。)および無線部15(以下、無線部Bと呼ぶ。)における通信速度を監視する。監視部12は、無線部Aにおける通信速度と無線部Bにおける通信速度とを比較する(ステップS12)。
【0028】
ステップS12において、無線部Aにおける通信速度のほうが高速であった場合には(ステップS12のY)、監視部12は、無線部Aで通信するよう制御部11に指示する。監視部12からの指示を受けた制御部11は、無線部Aを使って無線LAN親機20との通信を行う(ステップS13)。
【0029】
ステップS13において無線部Aを使った通信が開始されると、監視部12は、無線部Aにおける通信速度を常時または定期的に監視する。そして、無線部Aにおける通信速度が監視部12に設定された通信速度の規定値以下であるか否かを判定する(ステップS14)。
【0030】
無線部Aにおける通信速度が監視部12に設定された通信速度の規定値以下ではない場合には、無線部Aを使った通信を続ける。無線部Aにおける通信速度が監視部12に設定された通信速度の規定値以下になった場合には(ステップS14のY)、監視部12は、制御部11に、通信する無線部を切り替えるよう指示する。監視部12からの指示を受けた制御部11は、無線部Aから無線部Bに切り替えて無線LAN親機20との通信を行う(ステップS15)。
【0031】
具体的には、制御部11は無線部Aによる通信を停止し、無線部Bによる通信を開始する。無線部の切り替え時の受信途中のデータは、処理部13において結合する。なお、無線部Aによる通信の停止から無線部Bによる通信の開始までの処理、および、破損データの再送要求の処理などは、一般的な従来技術を利用してよい。後述する無線部Bによる通信から無線部Aによる通信に切り替える場合にも、同様の処理が行われる。
【0032】
また、ステップS12において、無線部Aにおける通信速度が無線部Bにおける通信速度より高速ではなかった場合にも(ステップS12のN)、監視部12は、無線部Bで通信するよう制御部11に指示し、制御部11は、指示に従って無線部Bを使った通信を行う。
【0033】
ステップS15において無線部Bを使った通信が開始されると、監視部12は、無線部Bにおける通信速度を常時または定期的に監視する。そして、無線部Bにおける通信速度が監視部12に設定された通信速度の規定値以下であるか否かを判定する(ステップS16)。
【0034】
無線部Bにおける通信速度が監視部12に設定された通信速度の規定値以下ではない場合には、無線部Bを使った通信を続ける。無線部Bにおける通信速度が監視部12に設定された通信速度の規定値以下になった場合には(ステップS16のY)、監視部12は、制御部11に、通信する無線部を切り替えるよう指示する。監視部12からの指示を受けた制御部11は、無線部Bから無線部Aに切り替えて無線LAN親機20との通信を行う(ステップS13)。
【0035】
なお、監視部12が、ストリーミング再生に必要な通信速度を処理部13から通知されている場合に、監視部12は、通信している無線部における通信速度が、ストリーミング再生に必要な通信速度以下であるか否かに基づいて、通信する無線部を切り替えるか否かを判定してもよい。また、監視部12は、無線部Aまたは無線部Bのうち、どちらが通信速度が速いかを判定して、通信速度の速い無線部を使って通信を行うように、制御部11に無線部の切り替えを指示してもよい。
【0036】
また、処理部13は、ストリーミング再生を行っている場合に、バッファ16に格納されたストリーミングデータが空にならないように、バッファ16に格納されているストリーミングデータの格納量を監視部12に通知してもよい。このとき、監視部12は、処理部13によって通知されたバッファ16に格納されているストリーミングデータの格納量に基づいて、通信する無線部を切り替えるか否かを判定してもよい。
【0037】
このような情報処理装置10は、無線部A,Bにおける電波状況(この場合には通信速度)を監視し、無線環境が変化して通信速度が低下した場合には、監視結果に基づいて、通信する無線部を切り替える。すなわち、無線環境の変化に対応して通信する無線部を決定し、無線通信の通信速度の低下を抑えることができる。とくに、異なる規格の無線部を有する場合には、電波状況や通信速度に応じて、より適切な規格の無線部を使い分けることが期待できる。
【0038】
また、このような情報処理装置10では、監視部12は、無線部における通信速度とあらかじめ設定された規定値とを比較して、どの無線部で通信を行うかを判定する。このとき、ストリーミング再生に最低限必要な通信速度よりも速い規定値を設定すれば、無線部の切り替えによってストリーミング再生に必要な通信速度を確保することができる。そして、ストリーミング再生でコマ落ちが発生することを防止し、スムーズなストリーミング再生を実現することができる。
【0039】
また、このような情報処理装置10では、無線部A,Bにおける通信速度を常時または定期的に監視した結果に基づいて、通信する無線部を切り替えるので、通信速度の低下によってストリーミング再生が停止してしまうことを防止することができる。例えば、通信している無線部Aにおける通信速度が低下すると、バッファに格納されるストリーミングデータが減ってしまい、最終的には空になってストリーミング再生が停止してしまうことが考えられるが、監視部12が常時または定期的に通信速度を監視して、通信する無線部を無線部Bに切り替えさせることによって、バッファに格納されるストリーミングデータが空になる前に、切り替えた無線部Bからデータを受信し、バッファに格納することができる。
【0040】
実施形態2.
本発明による情報処理装置の第2の実施形態(実施形態2)の構成は、図1に示す情報処理装置の構成と同様である。図3は、本発明による第2の実施形態の情報処理装置において無線部を切り替える動作を示すフローチャートである。図3を参照して、本発明による第2の実施形態の情報処理装置において無線部を切り替える動作を説明する。
【0041】
情報処理装置10が無線LAN親機20に接続し、監視部12が無線部A,Bにおける通信速度を監視し、制御部11に指示して通信速度が速いほうの無線部で通信を行わせる動作(図3に示すステップS21〜S23,S26に相当)は、図2のステップS11〜S13,S15に示す動作と同様である。
【0042】
ステップS23において無線部Aを使った通信が開始されると、監視部12は、無線部Aにおける通信速度を常時または定期的に監視する。そして、無線部Aにおける通信速度が監視部12に設定された通信速度の規定値以下であるか否かを判定する(ステップS24)。
【0043】
無線部Aにおける通信速度が監視部12に設定された通信速度の規定値以下ではない場合には、無線部Aを使った通信を続ける。無線部Aにおける通信速度が監視部12に設定された通信速度の規定値以下になった場合には(ステップS24のY)、監視部12は、制御部11に、無線部Aだけでなく、無線部Bでも通信を行うように無線部を切り替える指示をする。監視部12からの指示を受けた制御部11は、無線部Aと無線部Bとの双方で、無線LAN親機20と同時に通信を行うように制御する(ステップS25)。
【0044】
また、ステップS26において無線部Bを使った通信が開始されると、監視部12は、無線部Bにおける通信速度を常時または定期的に監視する。そして、無線部Bにおける通信速度が監視部12に設定された通信速度の規定値以下であるか否かを判定する(ステップS27)。
【0045】
無線部Bにおける通信速度が監視部12に設定された通信速度の規定値以下ではない場合には、無線部Bを使った通信を続ける。無線部Bにおける通信速度が監視部12に設定された通信速度の規定値以下になった場合には(ステップS27のY)、監視部12は、制御部11に、無線部Bだけでなく、無線部Aでも通信を行うように無線部を切り替える指示をする。監視部12からの指示を受けた制御部11は、無線部Bと無線部Aの双方で、無線LAN親機20と同時に通信を行うように制御する(ステップS28)。
【0046】
ステップS25,S28において、複数の無線部による通信を行う場合には、処理部13が、それぞれの無線部が受信したデータの結合処理を行う。
【0047】
このような情報処理装置10では、周囲の無線環境の変化などによって無線部Aまたは無線部Bのみでは十分な通信速度が確保できない場合に、両方の無線部によって通信を行ってデータの通信量を補うことができ、例えば、ストリーミング再生におけるパフォーマンス低下を防止することができる。具体的には、ストリーミング再生時に無線部(例えば、無線部A)における通信速度が低下すると、ストリーミングデータの時間当たりの受信量が低下する。このままではバッファ16に格納されているストリーミングデータが空になってしまい、ストリーミング再生が停止してしまうことも考えられるが、無線部Aと無線部Bとで通信を行うことによってデータの合計通信量の低下を補い、ストリーミング再生の停止やコマ落ちなどを防止してストリーミング再生を続けることができる。
【0048】
実施形態3.
本発明による情報処理装置の第3の実施形態(実施形態3)の構成は、図1に示す情報処理装置の構成と同様である。
【0049】
第3の実施形態の情報処理装置の監視部12は、無線部14,15が無線LAN親機20から受信する受信信号強度を、常時または定期的に監視する。受信信号強度は周囲の無線の使用状況に影響される。従って、監視部12は、受信信号強度を監視することによって、周囲の無線使用状況を監視することができる。
【0050】
そして、監視部12は、無線部14,15における受信信号強度に基づいて、どの無線部で通信を行うかを判定する。また、例えば、監視部12には、通信を行う無線部を判定するための受信信号強度の規定値があらかじめ設定されている。
【0051】
図4は、本発明による第3の実施形態の情報処理装置において無線部を切り替える動作を示すフローチャートである。図4を参照して、本発明による第3の実施形態の情報処理装置において無線部を切り替える動作を説明する。
【0052】
まず、情報処理装置10は、無線通信を行うために無線LAN親機20に接続する(ステップS31)。このとき、監視部12は、無線部Aおよび無線部Bにおける受信信号強度を監視する。監視部12は、無線部Aにおける受信信号強度と無線部Bにおける受信信号強度とを比較する(ステップS32)。
【0053】
ステップS32において、無線部Aにおける受信信号強度のほうが大きかった場合には(ステップS32のY)、監視部12は、無線部Aで通信するよう制御部11に指示する。監視部12からの指示を受けた制御部11は、無線部Aを使って無線LAN親機20との通信を行う(ステップS33)。
【0054】
ステップS33において無線部Aを使った通信が開始されると、監視部12は、無線部Aにおける受信信号強度を常時または定期的に監視する。そして、無線部Aにおける受信信号強度が監視部12に設定された受信信号強度の規定値以下であるか否かを判定する(ステップS34)。
【0055】
無線部Aにおける受信信号強度が監視部12に設定された受信信号強度の規定値以下ではない場合には、無線部Aを使った通信を続ける。無線部Aにおける受信信号強度が監視部12に設定された受信信号強度の規定値以下になった場合には(ステップS34のY)、監視部12は、制御部11に、通信する無線部を切り替えるよう指示する。監視部12からの指示を受けた制御部11は、無線部Aから無線部Bに切り替えて無線LAN親機20との通信を行う(ステップS35)。
【0056】
また、ステップS32において、無線部Aにおける受信信号強度が無線部Bにおける受信信号強度より大きくなかった場合にも(ステップS32のN)、監視部12は、無線部Bで通信するよう制御部11に指示し、制御部11は、指示に従って無線部Bを使った通信を行う。
【0057】
ステップS35において無線部Bを使った通信が開始されると、監視部12は、無線部Bにおける受信信号強度を常時または定期的に監視する。そして、無線部Bにおける受信信号強度が監視部12に設定された受信信号強度の規定値以下であるか否かを判定する(ステップS36)。
【0058】
無線部Bにおける受信信号強度が監視部12に設定された受信信号強度の規定値以下ではない場合には、無線部Bを使った通信を続ける。無線部Bにおける受信信号強度が監視部12に設定された受信信号強度の規定値以下になった場合には(ステップS36のY)、監視部12は、制御部11に、通信する無線部を切り替えるよう指示する。監視部12からの指示を受けた制御部11は、無線部Bから無線部Aに切り替えて無線LAN親機20との通信を行う(ステップS33)。
【0059】
このような情報処理装置10では、各無線部における受信信号強度に基づいてどの無線部で通信を行うかを判定するので、無線部における受信信号強度が低い場合に別の無線部に切り替えて通信を行うことができる。すなわち、周波数の干渉などによって受信信号強度が低下し、通信精度が低下してしまうことを防止できる。そして、通信精度が高い確実な通信方法を確保することによって、通信速度の低下を防止することも期待できる。
【0060】
なお、監視部12は、無線部A,Bにおける受信信号強度および通信速度を監視し、それぞれの監視結果に基づいて、通信を行う無線部を判定してもよい。このような情報処理装置10では、通信速度だけでなく、周囲の無線使用状況に影響される受信信号強度を、無線部切り替えのトリガとすることができる。このとき、実際に通信速度が低下するより前に無線部を切り替えることも考えられ、通信効率の向上が期待できる。
【0061】
実施形態4.
本発明による情報処理装置の第4の実施形態(実施形態4)を説明する。本発明による第4の実施形態の情報処理装置には、図1に示す情報処理装置10の構成に加えて、通信部(図示せず)が設けられる。
【0062】
通信部は、無線部A,Bとは異なる通信方法(例えば、有線LANや携帯電話通信など)によって、情報処理装置10と外部との通信を可能にするモジュールである。なお、通信部は、情報処理装置10の内部に複数設けられていてもよい。また、通信部は、制御用のインタフェースだけを情報処理装置10の内部に設けて、情報処理装置10の外部に接続して制御することによって、通信部の通信機能を実現してもよい。
【0063】
また、監視部12には、2種類の通信速度の規定値P,Qがあらかじめ設定されている。例えば、規定値Pは、規定値Qよりも高速な通信速度を示すとする。
【0064】
図5は、本発明による第4の実施形態の情報処理装置において無線部を切り替える動作を示すフローチャートである。図5を参照して、本発明による第4の実施形態の情報処理装置10において無線部を切り替える動作を説明する。
【0065】
情報処理装置10が無線部A,Bのどちらで通信を行い、通信速度が規定値(規定値P)以下であるか否かの比較結果によって、無線部A,Bの両方で同時に通信を行うように無線部を切り替える動作(図5に示すステップS41〜48に相当)は、図3のステップS21〜S28に示す動作と同様である。
【0066】
ステップS45またはS48において無線部A,Bの両方で通信を行うようになった場合に、監視部12は、無線部A,Bにおける通信速度を常時または定期的に監視する。そして、無線部A,Bにおける通信速度の両方が、あらかじめ監視部12に設定された規定値(規定値Q)以下であるか否かを比較する(ステップS49)。
【0067】
ステップS49において、無線部A,Bの少なくとも一方における通信速度が規定値Q以下ではなかった場合には(ステップS49のN)、そのまま無線部A,Bによる通信を行う(ステップS50)。なお、監視部12は、無線部A,Bにおける通信速度を継続して監視し、ステップS49における判定を繰り返し行ってもよい。
【0068】
ステップS49において、無線部A,B両方における通信速度が規定値Q以下であった場合には(ステップS49のY)、監視部12は、通信部でも通信を行うよう、制御部11に指示する。制御部11は、指示に従って、無線部A,Bだけでなく、通信部も使って通信を行う(ステップS51)。処理部13は、無線部A,Bおよび通信部によって受信されたデータを処理してまとめる。
【0069】
このような情報処理装置10では、無線環境が悪くなって無線部A,Bにおける通信速度が低下してしまった場合でも、無線LAN以外の通信方法を有する通信部によって受信データが補完される。そして、無線部A,B両方でも通信速度を確保できない場合でも、例えば、ストリーミング再生のコマ落ちや停止を防ぐことができる。
【0070】
実施形態5.
本発明による情報処理装置の第5の実施形態(実施形態5)を説明する。本発明による第5の実施形態の情報処理装置の構成は、図1に示す情報処理装置10の構成と同様である。第5の実施形態の情報処理装置は、無線LAN親機20と通信を行って、外部の装置(例えば、他の情報処理装置など)に通信データを送信する。
【0071】
例えば、第1〜第4の各実施形態に示す監視部12による判定によって、無線部Aを使ってデータの通信を行うとする。このとき、無線部Aは、送信する通信データに対して所定の暗号化方式による暗号化処理を行う。そして、無線部Aは、暗号化した通信データを無線LAN親機20に送信する。一方、無線部Bは、無線部Aによって暗号化された通信データを復号するために必要な復号鍵を作成し、復号鍵を無線LAN親機20に送信する。
【0072】
なお、処理部13が、送信する通信データに対する暗号化処理および当該通信データに対応する復号鍵の作成を行ってもよい。このとき、処理部13は、暗号化した通信データを無線部Aに出力し、復号鍵を無線部Bに出力する。そして、無線部Aは、暗号化された通信データを無線LAN親機20に送信し、無線部Bは、復号鍵を無線LAN親機20に送信する。
【0073】
無線LAN親機20は、無線部A,Bから受信した暗号化された通信データおよび当該通信データの復号鍵を、インターネット網などを介して、送信先である外部の装置に送信する。外部の装置は、無線LAN親機20から受信した暗号化された通信データおよび当該通信データの復号鍵を用いて、通信データを復号する。
【0074】
このような情報処理装置10では、無線部Aと無線部Bという別のモジュールから、暗号化された通信データと復号鍵とが別々に送信されるので、1つの無線部から暗号化された通信データと復号鍵とが出力される場合よりも、高いセキュリティ効果を期待することができる。
【0075】
なお、本発明による情報処理装置は、上記の各実施形態を1つ以上組み合わせて実現してもよい。また、上記の各実施形態では、無線部A,Bを有する情報処理装置を用いて説明を行ったが、無線通信を行う無線部が3つ以上設けられた情報処理装置であってもよい。
【0076】
図6は、本発明による情報処理装置の主要部を示すブロック図である。図6に示すように、情報処理装置1(例えば、図1に示す情報処理装置10に相当)は、無線LANによる通信を行う複数の無線部2,3(例えば、図1に示す無線部14,15に相当)と、無線部2,3のそれぞれにおける電波状況を監視する監視部4(例えば、図1に示す監視部12に相当)と、監視部4による監視結果に基づいて、どの無線部で通信を行うかを判定する判定部5(例えば、図1に示す監視部12に相当)と、判定部5による判定結果に従って、通信を行う無線部を切り替える制御部6(例えば、図1に示す制御部11に相当)とを備え、判定部5によって通信を行うと判定された無線部2は、暗号化処理を行った通信データを送信し、別の無線部3は、暗号化された通信データを復号化するための復号鍵を送信するように構成されている。
【0077】
また、上記の各実施形態では、以下の(1)〜(7)に示すような情報処理装置も開示されている。
【0078】
(1)無線部によって受信されたデータを格納するバッファ(例えば、図1に示すバッファ16に相当)に格納されているデータ(例えば、ストリーミングデータ)の格納量を通知する通知部を備え、判定部は、通知部から通知されるデータの格納量が所定値以下になった場合に、現在通信を行っている無線部とは別の無線部で通信を行うと判定する情報処理装置。
【0079】
(2)監視部は、無線部のそれぞれにおける通信速度を監視し、判定部は、監視部による監視結果である通信速度に基づいて、どの無線部で通信を行うかを判定する(例えば、図2のステップS14,16に示す動作によって実現される。)情報処理装置。
【0080】
(3)監視部は、無線部のそれぞれにおける受信信号強度を監視し、判定部は、監視部による監視結果である受信信号強度に基づいて、どの無線部で通信を行うかを判定する(例えば、図4のステップS34,36に示す動作によって実現される。)情報処理装置。
【0081】
(4)判定部は、監視部による通信を行っている無線部に対する監視結果が所定値以下になった場合に、別の無線部で通信を行うと判定する(例えば、図2のステップS14,16に示す動作によって実現される。)情報処理装置。
【0082】
(5)制御部は、判定部による判定結果に従って、通信を行っていた1つの無線部と他の無線部との双方で同時に通信を行うよう制御する(例えば、図3のステップS25,28に示す動作によって実現される。)情報処理装置。
【0083】
(6)無線部は、IEEE802.11gとIEEE802.11aとのうちのいずれかの無線LAN規格に従って無線通信を行う情報処理装置。
【0084】
(7)無線LAN以外の方法で通信を行う通信部(例えば、第4の実施形態における通信部に相当)を備え、判定部は、複数の無線部による通信速度が所定値以下になった場合に、無線部と通信部との双方による通信を行うと判定し、制御部は、判定部による判定結果に従って切り替えを行う(例えば、図5のステップS49,51に示す動作によって実現される。)情報処理装置。
【符号の説明】
【0085】
1 情報処理装置
2,3 無線部
4 監視部
5 判定部
6 制御部
10 情報処理装置
11 制御部
12 監視部
13 処理部
14,15 無線部
16 バッファ
20 無線LAN親機
30 情報処理装置
31 無線部
32 バッファ
33 再生部
40 ストリーミングサーバ
50 インターネット網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線LANによる通信を行う複数の無線部と、
前記無線部のそれぞれにおける電波状況を監視する監視部と、
前記監視部による監視結果に基づいて、どの無線部で通信を行うかを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果に従って、通信を行う無線部を切り替える制御部とを備え、
前記判定部によって通信を行うと判定された無線部は、暗号化処理を行った通信データを送信し、別の無線部は、前記暗号化された通信データを復号化するための復号鍵を送信する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
無線部によって受信されたデータを格納するバッファに格納されているデータの格納量を通知する通知部を備え、
判定部は、前記通知部から通知されるデータの格納量が所定値以下になった場合に、現在通信を行っている無線部とは別の無線部で通信を行うと判定する
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
監視部は、無線部のそれぞれにおける通信速度を監視し、
判定部は、前記監視部による監視結果である通信速度に基づいて、どの無線部で通信を行うかを判定する
請求項1または請求項2記載の情報処理装置。
【請求項4】
監視部は、無線部のそれぞれにおける受信信号強度を監視し、
判定部は、前記監視部による監視結果である受信信号強度に基づいて、どの無線部で通信を行うかを判定する
請求項1または請求項2記載の情報処理装置。
【請求項5】
判定部は、監視部による通信を行っている無線部に対する監視結果が所定値以下になった場合に、別の無線部で通信を行うと判定する
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
制御部は、判定部による判定結果に従って、通信を行っていた1つの無線部と他の無線部との双方で同時に通信を行うよう制御する
請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
無線部は、IEEE802.11gとIEEE802.11aとのうちのいずれかの無線LAN規格に従って無線通信を行う
請求項1から請求項6のうちのいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
無線LAN以外の方法で通信を行う通信部を備え、
判定部は、複数の無線部による通信速度が所定値以下になった場合に、前記無線部と前記通信部との双方による通信を行うと判定し、
制御部は、前記判定部による判定結果に従って切り替えを行う
請求項1から請求項7のうちのいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
無線LANによる通信を行う無線部を複数備えた情報処理装置における通信方法であって、
前記無線部のそれぞれにおける電波状況を監視し、
前記監視結果に基づいて、どの無線部で通信を行うかを判定し、
前記判定結果に従って、通信を行う無線部を切り替え、
通信を行うと判定された無線部は、暗号化処理を行った通信データを送信し、
別の無線部は、前記暗号化された通信データを復号化するための復号鍵を送信する
ことを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−60443(P2012−60443A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202023(P2010−202023)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】