説明

情報処理装置及び情報処理方法

【課題】3次元形状が存在しない3次元空間上の架空の位置を指示選択するために必要な架空要素を最小限の定義のみで作成できるようにする。
【解決手段】標準化された架空要素の代表例がいくつか示された作成パターンを選択するための画面を表示装置に表示させるパターン表示制御手段と、前記パターン表示制御手段によって表示装置上に表示された作成パターンの中から作成したい架空要素と特徴が近似している3次元モデルのパターンの選択を検出するためのパターン選択手段と、前記パターン選択手段によって選択された作成パターンに応じて架空要素を定義する架空要素定義手段と、前記架空要素定義手段によって定義された架空要素を3次元モデル形状に関連付ける設定手段とを設け、架空要素を作る対象となる3次元形状をパターン化して容易に作成できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理装置及び情報処理方法に関し、特に、3次元CADを用いて作成した3次元モデルを利用するために用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3次元CAD装置を用いて、商品や製品を構成する部品の3次元形状を有する物品の設計を行っていた。CAD装置により作成された設計情報を利用するにあたり、3Dモデルに、寸法、寸法公差、幾何公差、注記、記号の属性情報を入力していた。3Dモデルに属性情報を入力するためには、3Dモデルの面、稜線、中心線、あるいは頂点を指示選択することにより行われる。
【0003】
また、付加した属性情報については、少なくとも1つ以上の属性配置平面(又は視線方向)に関連付けて記憶し、より多彩な属性情報の見せ方や3D図面の作成を可能にした技術が提案されている(特許文献1等参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002―324083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例の如き、3Dモデルに属性情報を付ける方法においては次のような課題が有った。すなわち、属性情報を入力するために、3次元形状が存在しない3次元空間上の架空の位置を指示選択する場合、その位置に架空の要素を作成する必要があるが、この架空要素の作成に手間がかかる問題点があった。
【0006】
また、架空要素が3Dモデルとどのような関連を持っているのかを別途指示しなければ、架空要素を参照する属性情報の3Dモデルとの関連性が第3者には分かり難い問題点があった。
【0007】
本発明は前述の問題点にかんがみ、3次元形状が存在しない3次元空間上の架空の位置を指示選択するために用いる架空要素を最小限の定義のみで作成できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の情報処理装置は、標準化された架空要素の代表例がいくつか示された作成パターンを選択するための画面を表示装置に表示させるパターン表示制御手段と、前記パターン表示制御手段によって表示装置上に表示された作成パターンの中から作成したい架空要素と特徴が近似している3次元モデルのパターンの選択を検出するためのパターン選択手段と、前記パターン選択手段によって選択された作成パターンに応じて架空要素を定義する架空要素定義手段と、前記架空要素定義手段によって定義された架空要素を3次元モデル形状に関連付ける設定手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定の作成ケースに限定した架空要素の定義方法を事前に複数用意し、それぞれに応じて3次元形状との適切な連動性と関連性を自動的に設定するようにしたので、3次元形状が存在しない3次元空間上の架空の位置を指示選択するために用いる架空要素を最小限の定義のみで架空要素を作成することができる。
また、本発明の他の特徴によれば、3次元形状が変更された際には、変更形状と関連性、連動性をもつ架空要素においてもその位置及びサイズが変更されるようにしたので、二重の変更作業を行うことが不要となり操作者の負荷を軽減することができる。また、架空要素の変更を怠ったり忘れたりした場合に生じる設計情報の誤りを事前に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて詳述する。
図8に本実施形態の情報処理装置である3D−CAD装置の構成例を説明するブロック図を示す。
図8において、情報処理装置は、CADデータや本実施形態の動作処理プログラムを展開するためのRAM901、CADデータや本実施形態の動作処理プログラムを格納するハードディスクなどの外部記憶装置902を有している。また、情報処理装置は、RAM901に展開されたプログラムに基づいて処理を実行するCPU903を有している。
【0011】
また、CPU903から送られてくる幾何形状の幾何データに対し、いわゆるクリッピング、シェーディング等の幾何計算、及び画像データのピクセルデータ計算、隠面処理等のラスター化処理を実行する。そして、不図示の記憶装置(表示バッファ)に保持し、後述の表示装置905に画像データを出力する画像処理装置904を有している。
【0012】
また、情報処理装置は、CPU903の命令に基づいて画像処理装置904から出力されるピクセルデータにより、3Dモデルの形状及び属性情報等を表示する表示装置905を有している。3Dモデルの形状及び属性情報は、表示装置905における表示に際し、ズーム、パン、回転等のCADの機能を用いて表示範囲を定めることができる。具体的には、3Dモデルに対する視点の位置及びその視点位置から3Dモデルを見る視線方向(視軸の方向)、視野の角度、視点方向の視野範囲(視野空間)等により表示範囲を定めることができる。
【0013】
また、本実施形態の情報処理装置は、プリンタあるいはプロッタとしての出力装置906を有している。印刷処理の流れとして、まず、画像処理装置904でラスター化された画像データが一時的にRAM装置901に保持され、CPU903の処理に基づいて変換された所定のフォーマットの画像データを紙等の記録媒体に印刷出力する。印刷出力は画像処理装置904でラスター化された画像データを利用したビットマップデータ等のイメージデータでの出力であり、簡単な処理のみで短時間で印刷出力できるものである。
【0014】
入力装置907は、CADプログラムに対して指示等を与えるマウス、キーボードなどによって構成される。また、外部接続装置908は、情報処理装置と外部の装置とを接続し、本装置と外部装置とのデータの交換を行うためのものである。
【0015】
前述のように構成された情報処理装置において、パターン表示制御手段、パターン選択手段、架空要素定義手段、属性定義手段等は、RAM901、外部記憶装置902及びCPU903等により構成されるコンピュータシステムによりプログラム構成される。
【0016】
まず、架空要素の定義を説明する。3次元形状が存在しない3次元空間上の架空の位置を指示、または参照するために仮想的に作成、配置する形状要素を架空要素と呼ぶ。架空要素には、点、稜線、面などがある。
【0017】
図1は、架空面を作成するときのCPU903が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下に、図1のフローチャート及び図8のブロック図を参照しながら処理の一例を説明する。
【0018】
図1に示したように、ステップS101において、CPU903は、標準化された架空要素の代表例がいくつか示された選択画面を表示装置905に表示させる。これは作成対象となる3次元形状とそこに作成される架空面の代表例が描かれた簡易図、及び補足説明文となる。
【0019】
図2は、その一例を示した図である。図2では4つのパターン例を示しており、立体図が3次元モデルで1点鎖線で表した面が架空面を示している。第1のパターン例201は、3次元モデルで対称となる2つの面の中間の位置に架空平面を作成する場合である。
【0020】
第2のパターン例202は、3次元モデルの穴の軸上に位置した架空平面で、さらに別の1軸または1点を指定することで架空平面の向きを定義する場合である。第3のパターン例203は、3次元モデルの3つ以上の穴の中心を通る架空円筒面を作成する場合である。第4のパターン例204は、3次元モデルの円錐面と平面が交差する位置に平面に垂直方向の軸となる架空円筒面を作成する場合である。なお、パターンの種類、定義、及び数はここで示した例に限らず必要十分なパターンを用意することが望ましい。
【0021】
CPU903は、作成パターン選択画面で示されたパターンのうち、CAD上で作成したい架空面と合致するパターンが入力装置907からの信号によって選択したことを検出した場合(ステップS102)、ステップS103に進む。ステップS103においては、CPU903は、選択されたパターンに応じて架空面の作成定義に必要な情報、例えば3次元形状の選択、または方向・軸の指定、または数値、を入力するような入力画面を表示装置905に表示させる。
【0022】
図3を用いて、架空面の作成定義の一例を説明する。図示されたCAD上の3次元モデルにおける穴31の構成面である一方の平面311と他方の平面312の中間に架空面を作成する場合、この作成に適したパターンが操作者により選択される。この場合は、図2の選択画面上に表示された第1のパターン例201をマウスカーソルによりピックしたことをCPU903が検出することにより選択が確定される。
【0023】
次に、CPU903は、一方の平面311と他方の平面312を選択入力する入力画面を表示装置905に表示させる。そして、CPU903は、一方の平面311と他方の平面312を連続してマウスカーソルにより選択されたことを検出する。
【0024】
次に、ステップS104に進み、図4に示すように、CPU903は、一方の平面311と他方の平面312の入力情報から3次元空間上に架空面41を作成する。この作成した架空面41は対話的なサイズ変更を可能とする。具体的には、CPU903は、架空面41のサイズの数値入力画面を表示装置905に表示させ、操作者の入力を促すか(平面なら縦横長さ、円筒面なら半径または直径)、または入力装置907の入力に応じて架空面41の大きさを伸び縮みさせる。
【0025】
平面の場合、面の右上角と左下角の位置をマウスでドラッグしながら移動してドロップすることで平面のサイズが確定する処理が実行される。また、円筒面の場合、面に対するマウスカーソルによる選択をCPU903が検出し、円筒面軸方向に移動して指定された位置を検出することにより円筒面の高さが変更される。なお、この例では架空面41を1つ作成する例を説明するが、架空要素はパターンによっては1つとは限らず複数作成されるようにしてもよい。
【0026】
次に、ステップS105に進み、CPU903は、架空面41と、一方の平面311及び他方の平面312との関連要素、ならびに連動要素とを属性で定義する処理を行う。本実施形態において、関連要素とは架空面41の設計意図を示す要素のことである。通常、寸法の参照先を確認する場合、寸法が引き出されている関連要素を確認する。
【0027】
しかし、架空面41を参照する場合は寸法が引き出されている要素は架空面41であり、この架空面41がどのような定義のもとで作成されているのかは第三者には分かりづらい。
【0028】
このため、架空面41が3次元形状のどの部分に対して定義されたものなのかを第三者に容易に、そして確実に示す必要がある。そこで、CPU903は、架空面41を参照する寸法がマウスカーソルで選択指示されたことを検出すると、参照する架空面と架空面41に関連付けられた関連要素とを視覚的に確認できるように表示装置905に表示させる。表示方法の例としては、要素の色を一時的に変えるハイライト表示が一般的である。
【0029】
図5で示す寸法51は、架空面41を参照している。CPU903は、この架空面41を指示したとき関連要素として設定した一方の平面311と他方の平面312を表示装置905にハイライト表示させる。次に、CPU903は、ステップS106において処理を終了するか否かを判定する。この判定の結果、処理を終了しない場合にはステップS101に戻って前述した処理を繰り返し行う。
【0030】
次に、架空面41と連動要素との関係を説明する。
連動要素とは、3次元形状の頂点、または稜線、面の移動や角度の変更がなされ全体の形状が変わった際には、架空面41もその形状変更に追従して位置や大きさ等が変更される対象となる要素のことである。
【0031】
図6では、架空面41の連動要素である一方の平面311を図5の位置から移動した状態を示している。一方の平面311の移動方法は、操作者が一方の平面311をマウスカーソルで選択し、移動方向を方向指定メニューよりX軸方向に指定し、移動量を入力することで一方の平面311は指定位置に移動する。
【0032】
なお、移動量の入力は、入力画面に数値(距離)を入力する方法と一方の平面311をマウスカーソルで選択しながらドラッグし、指定方向に向けマウスカーソルを移動させて指定位置(移動距離)でドロップすることで移動を確定する方法がある。これに連動して架空面41が位置を変更した例を図6で示している。
【0033】
架空面41の位置や大きさが変われば、図5の寸法51(20±0.1)が、図6の寸法51では(12±0.1)に変わったように、これを参照する寸法も追従し変更されるのは言うまでもない。なお、関連要素と連動要素は必ずしも同一ではないので別々に設定保持すべきである。
【0034】
図7は、パターン作成された架空要素を修正するときのCPU903が実行する処理の流れの一例を説明するフローチャートである。
先ず、ステップS701において、CPU903は、操作者によりCAD上でマウスカーソルを用いて選択された既存の架空要素を検出する。次に、ステップS702に進み、CPU903は、架空要素作成時に付加した属性情報からパターン作成履歴情報を取得する。パターン作成履歴情報とは架空要素の属性付加情報であり、作成時のパターン種別や定義情報である。
【0035】
次に、ステップS703において、CPU903は、パターン作成履歴の有無を判定する。この判定の結果、パターン作成履歴情報が存在する場合にはステップS704に進み、CPU903は、その属性情報の1つであるパターンIDを取得する。ここで、パターンIDとは、架空要素を作成したパターン種別を特定するための文字列、または数字、またはそれらの組み合わせによるパターン識別子である。
【0036】
次に、ステップS705に進み、CPU903は、取得したパターンIDから作成パターン種別を識別しこれに応じた修正用画面を表示する。修正画面は作成時と同様の入力定義画面であり、かつ作成時に入力した値が初期値として定義済みとなっていることが望ましい。
【0037】
次に、ステップS706に進み、CPU903は、入力装置907の入力に応じて定義済みの入力値の再定義やサイズ調整を行う。入力値の再定義は、作成時に選択した形状要素や入力した方向、数値を改めて定義することである。また、サイズ調整方法は、架空面41のサイズの数値入力画面を表示し操作者に入力させる方法(平面なら縦横長さ、円筒面なら半径または直径)と、マウス操作で架空面41のドラッグ&ドロップにより大きさを伸び縮みさせる方法がある。そして、CPU903は、この修正内容を架空要素に反映することで修正が確定する(ステップS707)。
【0038】
次に、ステップS703の判定の結果、パターン作成履歴が取得できなかった場合の処理方法について説明する。本実施形態において、パターン作成履歴が取得できないケースとは、パターン作成せず操作者が任意に架空要素を定義し作成した場合である。パターン登録されていない特殊な架空要素の作成においては、操作者による入力装置の入力に応じて、架空要素の作成定義、関連要素と連動要素の設定が実行される(ステップS708)。
【0039】
パターン作成のように適切な定義方法は明示的に指示されないので、架空要素の種別指定(点、直線、円弧線、平面、円筒面等)、作成方法、入力値・属性の設定はすべて操作者に任される。なお、この場合、架空要素の修正においても作成時と同様にすべての定義、設定が操作者に任される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】架空要素(ここでは架空面)をパターンにより作成する処理の全体の流れの一例を示したフローチャートである。
【図2】架空面作成パターンの選択画面の一例を示す図である。
【図3】架空面を作成する前の3次元モデルの例を示す図である。
【図4】3次元モデル上に架空面を作成した例を示す図である。
【図5】3次元モデル上に架空面を作成した例を示す図である。
【図6】3次元モデル上に架空面を作成した例を示す図である。
【図7】架空要素を修正(再定義)する処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】本実施形態の情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0041】
901 RAM
902 外部記憶装置
903 CPU
904 画像処理装置
905 表示装置
906 出力装置
907 入力装置
908 外部接続装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準化された架空要素の代表例がいくつか示された作成パターンを選択するための画面を表示装置に表示させるパターン表示制御手段と、
前記パターン表示制御手段によって表示装置上に表示された作成パターンの中から作成したい架空要素と特徴が近似している3次元モデルのパターンの選択を検出するためのパターン選択手段と、
前記パターン選択手段によって選択された作成パターンに応じて架空要素を定義する架空要素定義手段と、
前記架空要素定義手段によって定義された架空要素を3次元モデル形状に関連付ける設定手段とを有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記架空要素と前記3次元モデルとの関連要素と連動要素とを定義する属性定義手段を有することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記関連要素は、前記架空要素の設計意図を示す要素であることを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
標準化された架空要素の代表例がいくつか示された作成パターンを選択するための画面を表示装置に処理ユニットが表示させるパターン表示制御工程と、
前記パターン表示制御工程において表示装置上に表示された作成パターンの中から作成したい架空要素と特徴が近似している3次元モデルのパターンの選択を前記処理ユニットが検出するためのパターン選択工程と、
前記パターン選択工程において選択が検出された作成パターンに応じて架空要素を前記処理ユニットが定義する架空要素定義工程と、
前記架空要素定義工程において定義された架空要素を3次元モデル形状に前記処理ユニットが関連付ける設定工程とを有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の情報処理方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−140185(P2008−140185A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326183(P2006−326183)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】