説明

情報処理装置

【課題】設計上の自由度を高めることのできる情報処理装置を提供する。
【解決手段】この情報処理装置は、本体部の背面に表出して設けられ、第1の軸21、第2の軸22、第1の固定ブラケット25を含む第1の軸構造と、表示部に設けられ、第3の軸23、第4の軸24、第2の固定ブラケット26を含む第2の軸構造と、第1の軸構造と第2の軸構造とを互いに連結するアーム27,28とを含むヒンジ機構4を有する。ヒンジ機構4は、表示部を本体部に対して、表示部の画面が本体部の上面に対向する位置と、本体部の上面に対して画面を傾斜させた位置との間で表示部の回動の中心を可変しつつ回動可能に連結するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体部に対して表示部を回動自在な折り畳み式の情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノート型パーソナルコンピュータ等の情報処理装置は、ディスプレイを有する表示部と、キーボードやCPU、記憶装置などのコンピュータの主要なハードウェア部品を搭載した装置本体とがヒンジ機構により連結したものが主流である。この種の情報処理装置では、装置本体に対して表示部を、装置本体の上面を覆う状態位置から、装置本体の上面を開放しかつディスプレイ面がユーザから見て最適な角度に起立した状態位置との間で、ユーザのマニュアル操作で回動自在とされたものが主流である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の情報処理装置に採用されるヒンジ機構は、装置本体上で表示部を回動させることが可能なように、装置本体の奥側端部にヒンジ機構の一部分を露出させた状態で設けられることが一般的である。例えば、特許文献1の図1および図2に示される情報処理装置では、表示部の所要の回動範囲を得るために、装置本体に設けられた支軸を表示部の軸受部で回動自在に保持する構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2006-079265号公報(段落[0021]、[0022]、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1などに示されるように、一般的なノート型PCなどの情報処理装置では、情報処理装置の本体部の上面奥にヒンジ部が表出せざるを得ないため、このことが情報処理装置の本体部の上面の設計の自由度を妨げる要因となっていた。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、設計上の自由度を高めることのできる情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る情報処理装置は、キーボードが配置された第1の面と、この第1の面を形成する複数辺のうちの1辺を第1の面と共有する第2の面とを有する本体部と;画面が配置された第3の面を有する表示部と;前記本体部の前記第2の面に表出して設けられた第1の軸構造と、前記表示部に設けられた第2の軸構造と、前記第1の軸構造と前記第2の軸構造とを互いに連結する軸連結部とを具備し、前記表示部を前記本体部に対して、当該表示部の前記第3の面が当該本体部の前記第1の面に対向する第1の位置と、前記第1の面に対して前記第3の面を第1の所定の角度に傾斜させた第2の位置との間で前記表示部の回動の中心を可変しつつ回動可能に連結するヒンジ機構と;を具備する。
【0008】
本発明では、本体部の第2の面に第1の軸構造が表出して設けられるとともに、ヒンジ機構は、表示部を本体部に対して、第1の位置と第2の位置との間で表示部の回動の中心を可変しつつ回動可能に連結する。これにより、本体部の側のヒンジ機構の部品である第1の軸構造は本体部の第2の面側でのみ表示部の側のヒンジ機構の部品である第2の軸構造と連結する構造とすることができる。すなわち、本体部の第1の面にヒンジ機構が露出しない構成とすることができる。本体部の上面にヒンジ機構が露出しないことで、本情報処理装置を利用中のユーザからヒンジ機構は見えなくなり、情報処理装置全体の高級感が高まる。また、本体部の第1の面にヒンジ機構を露出させるためのスペースを設ける必要が排除できることで、LEDランプ、ボタンなどの別の目的の部品を配置するスペースを増大できる。これにより小型化が追求される情報処理装置の設計の自由度を高められる。
【0009】
前記本体部の前記第2の面は、前記第1の面から遠ざかるに連れて後退するテーパ状の面であり、前記表示部が前記第2の位置にあるとき、前記第3の面が前記テーパ状の面に平行に向きあうものとしてもよい。これにより、表示部が開いているとき、表示部と本体部との隙間を最小限にすることができ、デザイン性が向上する。
【0010】
本発明は、前記本体部の前記第2の面と前記表示部の前記第3の面にそれぞれ設けられ、前記表示部が前記第2の位置にあるとき、前記第1の軸構造、前記第2の軸構造および前記軸連結部を収容する1つの空間を形成する収容部をさらに具備するものであってもよい。これにより、本体部の第2の面と表示部の第3の面とがヒンジ機構の部品によって妨げられることなく、最小限のクリアランスを介して互いに重なり合うようにできる。
【0011】
前記第1の軸構造は、互いに軸心位置をずらして設けられた第1の軸及び第2の軸を有し、前記第2の軸構造は、互いに軸心位置をずらして設けられた第3の軸及び第4の軸を有し、前記軸連結部は、前記第1の軸と前記第3の軸とを連結する第1のアームと前記第2の軸と前記第4の軸とを連結する第2のアームとを具備し、前記第1の軸と前記第3の軸との軸心同士の距離と前記第2の軸と前記第4の軸との軸心同士の距離とが異なるものとしてもよい。こにより、表示部の回動軌跡と回動位置毎の姿勢を制御することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、本体部に対して表示部を回動できるタイプの情報処理装置の設計上の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る情報処理装置の表示部が開いた状態の斜視図である。
【図2】図1の情報処理装置の表示部が本体部の上面を覆った状態にあるときの斜視図である。
【図3】図2の情報処理装置の右側面図である。
【図4】図2の情報処理装置の背面図である。
【図5A】図1の情報処理装置において表示部が閉じた状態でのヒンジ機構を示す側面図である。
【図5B】図1の情報処理装置において表示部が閉じた状態から開き始めた時点の状態でのヒンジ機構を示す側面図である。
【図5C】図1の情報処理装置において表示部が本体部に対して略90度の起立状態まで回動された状態でのヒンジ機構を示す側面図である。
【図5D】図1の情報処理装置において表示部が本体部に対して略90度より大きく回動された状態でのヒンジ機構を示す側面図である。
【図5E】図1の情報処理装置において表示部が完全に開いた状態でのヒンジ機構を示す側面図である。
【図6】図5A−図5Eのヒンジ機構の斜視図である。
【図7】図5A−図5Eのヒンジ機構の平面図と両側面図である。
【図8】図5A−図5Eのヒンジ機構による表示部2の回動の軌跡を示す図である。
【図9A】変形例1のヒンジ機構を説明する側面図である(表示部が閉じた状態)。
【図9B】変形例1のヒンジ機構を説明する側面図である(表示部が開いた状態)。
【図10】変形例2のヒンジ機構の平面図及び側面図である。
【図11】変形例2において表示部が閉じているときと完全に開いているときのヒンジ機構の側面図である。
【図12】変形例2のヒンジ機構の動作を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る情報処理装置について説明する。
<第1の実施形態>
本実施形態は、中央演算処理装置、メインメモリ、記憶装置、キーボードユニットなど、情報処理のための各種電子デバイスを内蔵する本体部3と、ディスプレイを備える表示部と、本体部に対して表示部を所定の角度範囲で回動自在に連結するヒンジ機構とを備える情報処理装置に関する。この種の情報処理装置としては、パーソナルコンピュータ、携帯電話、ゲーム機、ディスプレイ付きのプレーヤ機器などがある。ヒンジ機構は、本体部に対して表示部を、本体部の上面を覆う状態位置(第1の位置)から、本体部の上面を開放しかつ表示部のディスプレイ面がユーザから見て最適な角度に起立した状態位置(第2の位置)との間で回動自在に連結する機構である。
【0015】
以下に、いわゆるノート型と呼ばれるタイプのパーソナルコンピュータについて本発明を適用した実施形態の詳細を説明する。
【0016】
[情報処理装置の構成]
図1は本発明の第1の実施形態に係る情報処理装置の外観を示す斜視図である。同図は本体部に対して表示部が開いた状態にあるときの様子を示す。図2は図1の情報処理装置の表示部が本体部の上面を覆った状態にあるときの斜視図である。図3は図2の右側面図である。ここで左右は本情報処理装置を使用するユーザから見た場合の向きである。図4は図2の情報処理装置の背面図である。本情報処理装置の基準のXYZの3軸を次のように定義する。X=表示部の画面の水平方向(左右方向)、Y=情報処理装置の奥行き方向、Z=情報処理装置の厚み方向。
【0017】
これらの図に示されるように、情報処理装置1は、表示部2と、本体部3と、これら表示部2と本体部3とを回動自在に連結するヒンジ機構4とを備えている。ヒンジ機構4は、本体部3に対して表示部2を、本体部3の上面(第1の面)を覆う状態位置(以降「閉じた位置」と呼ぶこともある。)から、本体部3の上面を開放しかつ表示部2のディスプレイ面がユーザから見て最適な角度に起立した状態位置(以降「開いた位置」と呼ぶこともある。)との間で回動自在に連結する。
【0018】
表示部2は、表示部筐体5と、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(organic electroluminescence)パネルなどにより構成される表示パネル6とを有する。以降、表示パネル6の表面を「画面」と呼ぶことがある。
【0019】
本体部3は本体部筺体7を有する。本体部筺体7の上面部にはタッチパッド部8、キーボードユニット9、情報処理装置1の状態を表示したりするLED(Light Emitting Diode)10などが設けられている。本体部筺体7の側面部には、ネットワークケーブルコネクタ11、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)コネクタ12、USB(Universal Serial Bus)コネクタ13、17、ヘッドホン出力端子14、電源入力端子15などが設けられている。その他、図示は省略したが、本体部筺体7の外周部には、排気口、ディスプレイ用コネクタ、メモリカードスロットなども設けられている。本体部筺体7のなかには、CPU(Central Processing Unit)、メインメモリ、記憶装置、マザーボードなど、コンピュータを構成する上で必要なハードウェア部品群が内蔵されている。記憶装置としては、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)等が用いられる。
【0020】
ヒンジ機構4は、情報処理装置1の背面部に左右に1つずつ計2個設けられている。2つのヒンジ機構4の構成は同じである。背面とは、情報処理装置1を利用するユーザから見た場合の後部にあたる面である。その逆方向を「正面」と呼ぶ。
【0021】
ヒンジ機構4の構成を説明する前に、本体部3および表示部2におけるヒンジ取り付け部分の構成から説明する。
[ヒンジ取り付け部分の構成]
図5Aにおいて、本体部3の背面42(第2の面)にはヒンジ機構4を収容可能な第1のヒンジ収容部41が設けられている。この第1のヒンジ収容部41は具体的には本体部3の背面に確保された空間である。第1のヒンジ収容部41の背面42はテーパ状となっている。すなわち、本体部3の背面42は、本体部3の上面側から下面側にかけて次第に後退するテーパ面である。その角度は例えば、本体部3の上面に対して45度〜60度程度である。第1のヒンジ収容部41はそのテーパ状の背面42よりも奥にヒンジ機構4を収容し得るように、本体部3の背面42よりも本体部3の内部に向けて後退した場所に確保される。そして第1のヒンジ収容部41には、ヒンジ機構4を固定するための第1のヒンジ固定部43が設けられている。すなわち、ヒンジ機構4は本体部3の背面に表出して設けられたものといえる。
【0022】
一方、表示部2にも、第1のヒンジ収容部41と協働してヒンジ機構4を収容可能な第2のヒンジ収容部51が設けられている。この第2のヒンジ収容部51は具体的には表示部2の画面側の部分に設けられた空間である。第2のヒンジ収容部51は表示部2が開いた状態にあるとき(図5E参照)、本体部3の後方に隠れてユーザから見えなくなる場所に設けられる。そして第2のヒンジ収容部51には、ヒンジ機構4を固定するための第2のヒンジ固定部52が設けられている。
【0023】
[ヒンジ機構4の構成]
次に、ヒンジ機構4の構成を説明する。
図5A−図5Eはヒンジ機構4の側面図、図6はその斜視図、図7はその平面図と両側面図である。
これらの図に示されるように、ヒンジ機構4は、第1の軸21、第2の軸22、第3の軸23、第4の軸24、第1の固定ブラケット25、第2の固定ブラケット26、第1のアーム27、および第2のアーム28を有している。第1の軸21、第2の軸22、第1の固定ブラケット25は特許請求の範囲の「第1の軸構造」に相当する。第3の軸23、第4の軸24、第2の固定ブラケット26は特許請求の範囲の「第2の軸構造」に相当する。第1のアーム27および第2のアーム28は特許請求の範囲の「軸連結部」に相当する。
【0024】
(第1の軸構造)
第1の固定ブラケット25は、第1のブラケット基体25a、第1の軸保持部25b、および第2の軸保持部25cを有する。
第1のブラケット基体25aには、本体部3の第1のヒンジ固定部43に設けられた個々の螺子穴に対応する複数の螺子穴251(図6、図7参照)が設けられている。すなわち、第1のブラケット基体25aは、本体部3の第1のヒンジ収容部41内に設けられた第1のヒンジ固定部43に螺子44(図5A参照)によって固定される。これにより、第1の固定ブラケット25が本体部3に固定され、ヒンジ機構4と本体部3との連結がとられる。
【0025】
第1の軸保持部25bと第2の軸保持部25cは第1のブラケット基体25aのX軸方向の両端に設けられている。第1の軸保持部25b及び第2の軸保持部25cは互いにX軸方向において対向するように第1のブラケット基体25aからX軸方向に対して直交する方向に突出する。第1の軸保持部25bには第1の軸21の小径部21aを回動自在に保持する軸穴25f(図7参照)が設けられている。同様に、第2の軸保持部25cには第2の軸22を回動自在に保持する軸穴25g(図7参照)が設けられている。
第1の軸21の軸心を通る直線L1と第2の軸22の軸心を通る第2の直線L2は互いに平行で且つY−Z軸空間で離隔した関係にある。
【0026】
(第2の軸構造)
次に、第2の固定ブラケット26について説明する。
第2の固定ブラケット26は、第2のブラケット基体26a、第3の軸保持部26b、および第4の軸保持部26cを有する。
【0027】
第2のブラケット基体26aには、表示部2の第2のヒンジ固定部52に設けられた個々の螺子穴に対応する複数の螺子穴261(図6、図7参照)が設けられている。すなわち、この第2のブラケット基体26aは、表示部2の第2のヒンジ固定部52内に設けられた第2のヒンジ固定部52に螺子(図示せず)によって固定される。これにより第2の固定ブラケット26が表示部2に固定され、ヒンジ機構4と表示部2との連結がとられる。
【0028】
第3の軸保持部26bと第4の軸保持部26cは第2のブラケット基体26aのX軸方向の両端に設けられている。第3の軸保持部26b及び第4の軸保持部26cは互いにX軸方向において対向するように第2のブラケット基体26aからX軸方向に対して直交する方向に突出する。第3の軸保持部26bには第3の軸23を回動自在に保持する軸穴26f(図7参照)が設けられる。同様に、第4の軸保持部26cには第4の軸24を回動自在に保持する軸穴26g(図7参照)が設けられている。
第3の軸23の軸心を通る直線L3と第4の軸24の軸心を通る直線L4は互いに平行で且つY−Z軸空間で離隔した関係にある。
【0029】
(軸連結部)
第1の固定ブラケット25と第2の固定ブラケット26とは第1のアーム27と第2のアーム28によって互いに連結されている。より具体的には、第1のアーム27は、第1の固定ブラケット25の第1の軸保持部25bに保持された第1の軸21の小径部21aと第2の固定ブラケット26の第3の軸保持部26bに保持された第3の軸23とを連結する。第1のアーム27は、第1の軸21の小径部21aおよび第3の軸23を個々に挿入して回転自在に保持する2つの軸穴27a、27b(図7参照)を有する。また、第2のアーム28は、第1の固定ブラケット25の第2の軸保持部25cに保持された第2の軸22と第2の固定ブラケット26の第4の軸保持部26cに保持された第4の軸24とを連結する。第2のアーム28は、第2の軸22および第4の軸24を個々に挿入して回転自在に保持する2つの軸穴28a、28b(図7参照)を有する。
【0030】
ここで、上記4つの軸(第1の軸21、第2の軸22、第3の軸23、第4の軸24)の位置関係について説明する。
【0031】
上記4つの軸21−24の軸心の向きはすべて、本情報処理装置1の基準のXYZ軸方向において表示部2のディスプレイ画面の水平方向に当たるX軸方向である。第1の固定ブラケット25に保持された第1の軸21及び第2の軸22それぞれの軸芯の位置はY−Z軸平面において互いにずれている。一方、第2の固定ブラケット26に保持された第3の軸23及び第4の軸24のそれぞれの軸芯の位置も同様にY−Z軸平面において互いにずれている。結果的に4本全ての軸21−24の軸心の位置は互いにずれた関係とされている。ここで、4本全ての軸21−24の軸心の位置は、表示部2の所望の回動軌跡が得られるように選定されている。
【0032】
図5Aから図5Eは本体部3に対して表示部2が回動される過程を示している。
図5Aは表示部2が閉じた状態、
図5Bは表示部2が閉じた状態から開き始めた時点の状態、
図5Cは表示部2が本体部3に対して略90度の起立状態まで回動された状態、
図5Dは表示部2が本体部3に対して略90度より大きく回動された状態、
図5Eは表示部2が完全に開いた状態、である。
【0033】
これらの図に示されるように、本実施形態で採用されたヒンジ機構4は、Y−Z軸空間内で表示部2が所定の軌跡を描くように表示部2を回動させる。
【0034】
図8は表示部2の回動の軌跡を示す図である。
P1は第1の軸21の軸心位置、P2は第2の軸22の軸心位置、P3は第3の軸23の軸心位置、P4は第4の軸24の軸心位置である。第1の軸21と第3の軸23とは第1のアーム27により互いに連結されているので、表示部2の回動過程で第3の軸23の軸心位置P3は、第1の軸21の軸心位置P1を中心に符号C1で示される第1の円の軌跡を描くようにして移動する。一方、第2の軸22と第4の軸24とは第2のアーム28により互いに連結されているので、表示部2の回動過程で第4の軸24の軸心位置P4は、第2の軸22の軸心位置P2を中心に符号C2で示される第2の円の軌跡を描くようにして移動する。
【0035】
ここで、P1とP2は互いにずれて設定され、かつP1とP3との距離L13とP2とP4との距離L24は異なるように設定されているため、第1の円C1と第2の円C2は互いに中心点のずれた半径の異なる2つの円になる。そしてこれら2つの円C1、C2の位置とサイズの選定によって表示部2の回動軌跡と回動位置毎の姿勢を制御することができる。
【0036】
すなわち、図8において、符号のA0−A5で示される線分は表示部2の回動に伴う表示部2の側の第3の軸23の軸心位置P3と第4の軸24の軸心位置P4とを結んだ仮想線である。この仮想線A0−A5の位置が表示部2のY−Z軸空間内での位置を示し、仮想線A0−A5の傾きが表示部2の姿勢(Y−Z軸空間内での傾き)を示す。
【0037】
線分A0は図5Aに示したように表示部2が閉じた状態のとき、
線分A1は図5Bに示したように表示部2が閉じた状態から開き始めた状態のとき、
線分A3は図5Cに示したように表示部2が本体部3に対して略90度の起立状態まで回動された状態のとき、
線分A4は図5Dに示したように表示部2が本体部3に対して略90度より大きく回動された状態のとき、
線分A5は図5Eに示したように表示部2が完全に開いた状態のとき、
のものである。
【0038】
次に、この表示部2の回動軌跡の特徴を説明する。
1.本体部側の軸と表示部側の軸とが同軸に設けられた典型的な構造のヒンジ機構においては表示部の回動の中心がY−Z軸方向に変位することはない。これに対して、本実施形態の情報処理装置1では、ヒンジ機構4が本体部3の側の軸21,22と表示部2の側の軸23,24をアーム27,28で連結したものであることで、表示部2の回動過程において表示部2の回動の中心をY−Z軸方向に変位させることができる(回動軌跡の特徴1)。
【0039】
2.図5Aから図5Cに示すように、表示部2が閉じた状態から起立するあたりまでの回動期間は、表示部2が本体部3の背面42の上端(上面の奥側先端)を避けるようにして離間した位置を通る(回動軌跡の特徴2)。これにより、本体部3の側のヒンジ機構4の部品は本体部3の背面側でのみ表示部2の側のヒンジ機構4の部品と連結する構造とすることができる。すなわち、本体部3の上面3F(第1の面)にヒンジ機構4が露出しない構成とすることができる(図1参照)。本体部3の上面にヒンジ機構4が露出しないことで、本情報処理装置1を利用中のユーザからヒンジ機構4は見えなくなり、情報処理装置全体の高級感が高まる。また、本体部3の上面3Fにヒンジ機構4を露出させるためのスペースを設ける必要が排除できることで、LEDランプ、ボタンなどの別の目的の部品を配置するスペースを増大できる。これにより小型化が追求される情報処理装置の設計の自由度を高められる。
【0040】
3.図5Aから図5Cに示すように、表示部2が閉じた状態から起立するあたりまでの回動期間は、表示部2が本体部3の背面42の上端を避けるようにして離間した位置を通るとともに、本体部3の高さ位置に対して下降する(回動軌跡の特徴3)。これにより、表示部2を閉じた状態から回動させることによって画面がユーザから見えるようになるのに連れて、表示部2の側のヒンジ機構4の部品が設けられた部分が本体部3の上面3Fより下へ沈んで行き、結果的に表示部2の側のヒンジ機構4の部品が回動中にユーザには殆ど見えない。このことによっても情報処理装置1の高級感を高めることができる。
【0041】
4.図5Cから図5Eに示すように、表示部2が本体部3に対して起立した状態から完全に開くまでの回動期間は、表示部2の第2のヒンジ収容部51が本体部3のテーパ状の背面42に近づいて行く。そしてテーパ状の背面42に対して表示部2の画面側の面2F(第3の面)とが互いに略平行に向き合った状態で、本体部3の側のストッパーとして働く部品(図示せず)と表示部2のストッパーとして働く部品(図示せず)とが干渉して表示部2の回動が規制され、表示部2が完全に開いた状態(図5E)で定位される(回動軌跡の特徴4)。
【0042】
また、図5Eに示すように、表示部2が完全に開いた状態においては、ヒンジ機構4の部品が表示部2と本体部3にそれぞれ設けられた第1のヒンジ収容部41と第2のヒンジ収容部51に収まることで、本体部3のテーパ状の背面42と表示部2の画面側の面2Fとがヒンジ機構4の部品によって妨げられることなく、最小限のクリアランスを介して互いに重なり合う。このことによっても情報処理装置1のデザイン性を高めることができる。
【0043】
<変形例1>
次に、上記の実施形態の変形例を説明する。
図9A及び図9Bは変形例1の情報処理装置を示す側面図であり、図9Aは表示部102を閉じた状態、図9Bは表示部102を完全に開いた状態を示す図である。
【0044】
この情報処理装置100に採用されているヒンジ機構104の構成は、第1の実施形態のヒンジ機構4と基本的に同じである。
すなわち、本変形例1のヒンジ機構104は、第1の軸121、第2の軸122、第3の軸123、第4の軸124、第1の固定ブラケット(図示省略)、第2の固定ブラケット(図示省略)、第1のアーム127、および第2のアーム128を有している。これらの部品は、第1の実施形態のヒンジ機構4における同じ名前の部品に対応するものである。
【0045】
本変形例1のヒンジ機構104と第1の実施形態のヒンジ機構4との相違点は次の点にある。
表示部102は、画面よりも突出させた部分102aを有している。この突出部分102aには、表示部102の側のヒンジ機構104の部品、例えば、第3の軸123、第4の軸124、第2の固定ブラケット(図示省略)などが少なくとも収容されている。
【0046】
この構成によっても、表示部102の回動過程において表示部102の回動の中心をY−Z軸空間内で変位させることができる。また、表示部102が開かれる際、表示部102が本体部103の背面142の上端を避けるようにして離間した位置を通るので、本体部103の側のヒンジ機構104の部品は本体部103の背面側でのみ表示部102の側のヒンジ機構104の部品と連結する構造とすることができる。
【0047】
さらに、本体部103の上面3Fにヒンジ機構104が露出しないことで、本情報処理装置100を利用中のユーザからヒンジ機構104は見えなくなり、情報処理装置100全体の高級感が高くなる。また、本体部103の上面3Fにヒンジ機構104を露出させるためのスペースを設ける必要が排除できることで、LEDランプ、ボタンなどの別の目的の部品を配置するスペースを増大できる。これにより小型化が追求される情報処理装置100の設計の自由度を高められる。
【0048】
さらに、表示部102が閉じた状態から起立するあたりまでの回動期間は、表示部102が本体部103の背面142の上端を避けるようにして離間した位置を通るとともに、本体部103の高さ位置に対して下降する。これにより、表示部102を閉じた状態から回動させることによって画面がユーザから見えるようになるのに連れて、表示部102の側のヒンジ機構104の部品が設けられた部分が本体部103の上面3Fより下へ沈んで行き、結果的に表示部102の側のヒンジ機構104の部品が回動中にユーザには殆ど見えない。このことによっても情報処理装置100の高級感を高めることができる。
【0049】
<変形例2>
次に、ヒンジ機構の別の変形例を説明する。
【0050】
図10は、この変形例2のヒンジ機構の正面図とその両側面図である。図11は表示部が閉じているときと完全に開いているときのヒンジ機構の側面図である。
これらの図に示すように、変形例2のヒンジ機構204は、本体部203に固定される第1の固定ブラケット70と、表示部202に固定される第2の固定ブラケット60とを有する。
【0051】
第1の固定ブラケット70は、本体部203に固定される第1のブラケット基体71を有する。この第1のブラケット基体71のX軸方向の両端にはZ軸方向に立ち起こされた側壁部72、73が設けられている。一方の側壁部72にはY軸方向に逃げを有する長穴74が設けられている。この長穴74には、スライダ75に立設された挿入ピン76が挿入されている。すなわち、長穴74内を挿入ピン76がY軸方向に移動自在であることで、スライダ75はY軸方向へ長穴74内を移動自在とされている。他方の側壁部73にはA軸77がX軸方向に突出されている。このA軸77にはアーム78の一端部が固定されている。
【0052】
一方、表示部202に固定された第2の固定ブラケット60には、B軸81をその軸方向において離間した2つの位置でそれぞれ回動自在に保持する一対のB軸保持部82a、82bが設けられている。B軸81には、上記のスライダ75の一端が支持されている。また、一方のB軸保持部82bにはC軸83を回動自在に保持するC軸保持部84が設けられている。B軸81及びC軸83はそれぞれ軸心線がX軸方向に沿うような向きでそれぞれの保持部82a、82b、84に保持されている。C軸83の軸心位置はB軸81の軸心位置に対してオフセットした位置にある。
【0053】
すなわち、このヒンジ機構204において、
1.表示部202はB軸81を支点に回動可能なように第2の固定ブラケット60に支持される。
2.C軸83は、B軸81の軸心位置に対してY軸方向とZ軸方向にそれぞれオフセットした位置にあるとともに、C軸83には、軸心位置が固定のA軸77に一端部が支持されたアーム78の他端部が支持されている。
3.B軸81に一端が支持されたスライダ75はY軸方向へ長穴74内を移動自在とされている。
以上のことから、表示部202が回動されるとB軸81の軸心位置がY−Z軸空間において所定の軌跡を描くように移動する。その詳細を次に説明する。
【0054】
図12は、表示部2の開かれるときのヒンジ機構204の動作を示す側面図であり、ヒンジ機構204の状態の変化をアーム78が見える側(図11とは左右逆側)から示したものである。
【0055】
同図に示すように、表示部2が閉じた状態(初期状態1)では、C軸83は、B軸81の軸心位置に対してY軸方向とZ軸方向にそれぞれオフセットした位置にある。より具体的には、C軸83は、B軸81の軸心位置に対してY軸方向においては情報処理装置の正面側にオフセットし、Z軸方向においてはB軸81の軸心位置に対して情報処理装置の底面側にオフセットしている。
【0056】
表示部2が閉じた状態から開かれる動作が開始されると、C軸83の軸心位置がB軸81の回動の軌跡に沿って移動するとともに、表示部2が第2の固定ブラケット60、B軸81およびC軸83を伴いY軸方向において情報処理装置の背面側に最大で距離d1だけ移動する(状態2)。
【0057】
表示部2がさらに開かれて行くと、C軸83の軸心位置がB軸81の回動の軌跡に沿ってさらに移動して行くとともに、表示部2は第2の固定ブラケット60、B軸81およびC軸83を伴って初期状態1から状態2への移行期間とは逆に情報処理装置の正面側に移動して行く(状態3−状態5)。
【0058】
最後に図11の開状態に示すように、表示部2の画面側の面2Fが本体部3のテーパ状の背面243と最小限のクリアランスを介して互いに重なり合う状態6となって表示部2の回動が規制される。なお、図12の状態4、5、6におけるd2、d3、d4はそれぞれ、初期状態1からのB軸81の軸心位置の正面側への移動量を示しており、d2<d3<d4の関係を有する。
【0059】
以上のように構成された変形例3のヒンジ機構204によっても、表示部202の回動過程において表示部202の回動の中心をY−Z軸空間内で変位させることができる。また、表示部202が開かれる際、表示部202が本体部203の背面243の上端を避けるようにして離間した位置を通るので、本体部203の側のヒンジ機構204の部品は本体部203の背面側でのみ表示部202の側のヒンジ機構204の部品と連結する構造とすることができる。
【0060】
さらに、本体部203の上面にヒンジ機構204が露出しないことで、本情報処理装置を利用中のユーザからヒンジ機構204は見えなくなり、情報処理装置全体の高級感が増す。また、本体部203の上面にヒンジ機構204を露出させるためのスペースを設ける必要が排除できることで、LEDランプ、ボタンなどの別の目的の部品を配置するスペースを増大できる。これにより小型化が追求される情報処理装置の設計の自由度を高められる。
【0061】
なお、本発明は以上説明した実施の形態には限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…情報処理装置
2…表示部
2F…表示部の画面側の面
3…本体部
3F…本体部の上面
4…ヒンジ機構
5…表示部筐体
6…表示パネル
7…本体部筺体
9…キーボードユニット
21…第1の軸
22…第2の軸
23…第3の軸
24…第4の軸
25…第1の固定ブラケット
25a…第1のブラケット基体
25b…第1の軸保持部
25c…第2の軸保持部
26…第2の固定ブラケット
26a…第2のブラケット基体
26b…第3の軸保持部
26c…第4の軸保持部
27…第1のアーム
28…第2のアーム
41…第1のヒンジ収容部
42…背面
51…第2のヒンジ収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーボードが配置された第1の面と、この第1の面を形成する複数辺のうちの1辺を第1の面と共有する第2の面とを有する本体部と;
画面が配置された第3の面を有する表示部と;
前記本体部の前記第2の面に表出して設けられた第1の軸構造と、前記表示部に設けられた第2の軸構造と、前記第1の軸構造と前記第2の軸構造とを互いに連結する軸連結部とを具備し、前記表示部を前記本体部に対して、当該表示部の前記第3の面が当該本体部の前記第1の面に対向する第1の位置と、前記第1の面に対して前記第3の面を第1の所定の角度に傾斜させた第2の位置との間で前記表示部の回動の中心を可変しつつ回動可能に連結するヒンジ機構と;
を具備する情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記本体部の前記第2の面は、前記第1の面から遠ざかるに連れて後退するテーパ状の面であり、
前記表示部が前記第2の位置にあるとき、前記第3の面が前記テーパ状の面に平行に向きあう
情報処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の情報処理装置であって、
前記本体部の前記第2の面と前記表示部の前記第3の面にそれぞれ設けられ、前記表示部が前記第2の位置にあるとき、前記第1の軸構造、前記第2の軸構造および前記軸連結部を収容する1つの空間を形成する収容部
をさらに具備する情報処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の情報処理装置であって、
前記第1の軸構造は、
互いに軸心位置をずらして設けられた第1の軸及び第2の軸を有し、
前記第2の軸構造は、
互いに軸心位置をずらして設けられた第3の軸及び第4の軸を有し、
前記軸連結部は、
前記第1の軸と前記第3の軸とを連結する第1のアームと前記第2の軸と前記第4の軸とを連結する第2のアームとを具備し、
前記第1の軸と前記第3の軸との軸心同士の距離と前記第2の軸と前記第4の軸との軸心同士の距離とが異なる
情報処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図5D】
image rotate

【図5E】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−141656(P2012−141656A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291982(P2010−291982)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】