説明

情報担体を走査する光学装置

情報担体を走査する光学走査装置が提供される。当該装置は、情報担体の走査のための放射線スポットアレイを入力放射線ビームから生成するように構成された光学素子アレイを含んでいる。当該装置は更に、放射線スポット群における光収差の補正のために、所定の光収差を放射線に適用するように構成された収差光学素子を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射スポットアレイを用いて情報担体を走査する光学走査装置、該装置で使用される光学素子、及び走査方法に関する。本発明は光データ記憶の分野で使用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
光学式記憶は、例えばCD(コンパクトディスク)及びDVD(デジタル多用途ディスク)の規格に基づく記憶システムにおいて、コンテンツ配信のために幅広く使用されている。光学式記憶は、情報担体が容易且つ安価に複製される点で、ハードディスク及び半導体記憶に対して大きな利点を有している。
【0003】
しかしながら、駆動装置内の多量の可動部のため、読み出し動作時に可動部に要求される安定性を考慮するに、この種の記憶装置を用いる既知の用途は読み出し動作を行う時の衝撃に対して堅牢ではない。結果として、光学式記憶は、例えば可搬式装置などの、衝撃が加えられる用途においては容易に用いられることができないでいる。
【0004】
最近、情報担体を走査するために光放射スポットのアレイを使用する新規の代替的な光学式記憶システムが提案されている。この情報担体はコンテンツ配信に使用されることができる。提案されたシステムの仕様は、切手サイズ(<1平方インチ)のディスクに1ギガバイト程度情報密度及び記憶容量を提供し得るものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、情報担体を走査するための光学走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従って提供される情報担体を走査する光学走査装置は:情報担体の走査のための放射線スポットアレイを入力放射線ビームから生成するように構成された光学素子アレイを有し;当該装置は更に、放射線スポット群における光収差の補正のために、所定の光収差を放射線に適用するように構成された収差光学素子を有する。
【0007】
このような収差光学素子を装置内に組み込むことにより、装置の性能が向上される。収差光学素子は所定の光収差を放射線に与え、さもなければ放射線スポット群に、例えば光学素子アレイの像内に、生じるであろう収差を相殺する。これにより、情報担体のデータ密度の増大が可能にされる。
【0008】
収差光学素子は光学素子アレイと放射線スポット群との間の光路上に配置されていてもよい。
【0009】
収差光学素子は入力放射線ビームのソースと光学素子アレイとの間の光路上に配置されていてもよい。
【0010】
収差光学素子は実質的に放射線の位相のみを変化させるように構成されていてもよい。
【0011】
好ましくは、収差光学素子は、実質的に均一な屈折率を有する透明材料を有し、該材料の厚さは所定の光収差をもたらすように該素子の全域で変化している。
【0012】
収差光学素子は個別素子として形成されていてもよい。
【0013】
収差光学素子は前記光学素子アレイを含んでいてもよい。
【0014】
光学素子アレイはレンズアレイ又は開口アレイであってもよい。
【0015】
光学素子アレイは該光学素子アレイから実質的にタルボット距離の位置に前記スポット群を生成するように構成されていてもよい。
【0016】
収差光学素子は、光学素子アレイのサイズが有限であることに起因する放射線スポット群における光収差を補正するために、所定の光収差を適用するように構成されていてもよい。
【0017】
当該装置は、情報担体によって生成された出力光ビームアレイから情報を検出するように構成された光センサーアレイを有していてもよい。
【0018】
本発明の第2の態様に従って提供される情報担体を走査する光学走査装置にて使用される収差光学素子にあっては、前記装置は、情報担体の走査のための放射線スポットを入力放射線ビームから生成するように構成された光学素子アレイを有し;当該収差光学素子は放射線スポット群における光収差の補正のために、所定の光収差を放射線に適用するように構成されている。
【0019】
本発明の第3の態様に従って提供される情報担体を走査する方法は:情報担体の走査のための放射線スポット群の2次元アレイを入力放射線ビームから生成する段階;及び放射線スポット群における光収差の補正のために、所定の光収差を放射線に適用する段階を有する。
【0020】
本発明の第4の態様に従って提供される情報担体を走査する光学走査装置を製造する方法は:情報担体の走査のための放射線スポットアレイを入力放射線ビームから生成する光学素子アレイを設ける段階;及び放射線スポット群における光収差の補正のために、所定の光収差を放射線に適用する収差光学素子を設ける段階を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
続いて、本発明の実施形態について、単に例示として、添付の概略的な図面を参照しながら説明する。図面において、同一の部分又は副工程については同様にして指し示すこととする。
【0022】
最初に、全般的な新規システム(すなわち、光学走査装置及び情報担体)と、取り得る様々な実施形態に関する実施例について、図1乃至16を参照しながら詳細に説明する。その後、上記システムで発生する光収差について、システム性能を向上させるために収差光学素子が本発明の実施形態に従ってどのように上記システム内に実装され得るかの例とともに詳細に説明する。
【0023】
システムは情報担体に記憶されたデータを走査するように構成されている。走査するという用語は、担体から情報を読み取ることと、担体に情報を書き込むこととの双方を包含するよう意図される。光学走査装置は一方の機能又は双方の機能の何れを実行するように構成されていてもよい。
【0024】
情報担体は、データマトリックスのようにアレイ状に編成されたデータを記憶するものである。このデータは好ましくはバイナリー形式、すなわち1及び0から成る形式、である。情報担体が透過的に読み出されるように意図される場合、情報担体に記憶されたバイナリーデータの状態は透明領域と不透明(すなわち、光吸収)領域とによって表される。他の例では、情報担体が反射的に読み出されるよう意図される場合、情報担体に記憶されたバイナリーデータの状態は非反射(すなわち、光吸収)領域と反射領域とによって表される。これらの領域は、例えばガラス、プラスチック、又は磁気特性を有する材料などの材料内に印される。システムは:
− 情報担体を走査するための光スポットアレイを入力光ビームから生成する光学素子、
− 情報担体によって生成された出力光ビームのアレイからデータを検出する検出器、
を有する。
【0025】
このシステムは、データマトリックス状に編成されたバイナリーデータを記憶するように意図された静止した情報担体(光カードとも呼ばれる)を含むことができる。情報担体上のビットは、例えば、透明領域と不透明領域とによって表される。
【0026】
この情報担体は単一の光ビームではなく、光学素子アレイによって生成された光スポットアレイによって照射されるように意図されている。この光学素子は有利には、タルボット効果を引き出すように設計されたマイクロレンズアレイ又は開口アレイに相当する。
【0027】
各々の光スポットは情報担体上で読み取られる特定領域のデータを選択し、このデータは検出器によって検出される。光学素子を情報担体の上方で移動させることにより、光スポット群は情報担体全体を走査することができる。
【0028】
情報担体は静止しているので、可動素子数は大いに削減され、このシステムは堅牢な機械的ソリューションを提供する。
【0029】
このシステムは、情報担体が静止しているという点で半導体記憶の利点と、システムが有する読み取り装置から取り外し可能である点で光学式記憶の利点とを併せ持つ情報担体の使用を可能にする。
【0030】
図1に示される第1実施形態において、情報担体101に記憶されたデータを読み取るシステム(すなわち、光学走査装置)は、入力光ビーム104から光スポットのアレイ103を生成する光学素子102を有している。光スポットアレイ103は情報担体101を走査するためのものである。
【0031】
光学素子102はマイクロレンズの2次元アレイに相当しており、その入力にはコヒーレントな入力光ビーム104が入射される。マイクロレンズアレイ102は、光スポットの焦点が情報担体上に合わされるように、情報担体101に対して平行且つ距離を置いて配置されている。マイクロレンズの開口数及び品質が光スポットの大きさを決定する。例えば、0.3に等しい開口数を有するマイクロレンズの2次元アレイ102が使用可能である。入力光ビーム104は入射レーザビームを拡げる導波路(図示せず)によって、あるいは結合されたマイクロレーザの2次元アレイによって実現され得る。
【0032】
光スポット群は情報担体101の透明又は不透明領域に当てられる。光スポットが不透明領域に当てられる場合、それに応じて情報担体から出力光ビームは生成されない。光スポットが透明領域に当てられる場合、それに応じて情報担体によって出力光ビームが生成され、この出力光ビームが検出器105により検出される。検出器105は、故に、光スポットが当てられた領域のデータの値(例えば、バイナリー値)を検出するために使用される。
【0033】
検出器105は有利には、例えばCMOSセンサー(相補型金属酸化物シリコン・センサー)又はCCD(電荷結合素子)であるセンサー素子のアレイから成る。例えば、情報担体の1つのデータ(すなわち、1ビット)を記憶する基本領域に対向して、検出器の1つのセンサー素子が配置される。この場合、検出器の1つのセンサー素子が情報担体の1つのデータを検出するよう意図される。
【0034】
有利には、情報担体により生成された出力光ビームを検出器上に集光し、データの検出を改善するために、情報担体101と検出器105との間にマイクロレンズアレイ(図示せず)が配置される。
【0035】
図2に示される第2実施形態においては、情報担体201に記憶されたデータを読み取るシステムは、入力光ビーム204から光スポットのアレイ203を生成する光学素子202を有している。光スポットアレイ203は情報担体201を走査するためのものである。
【0036】
光学素子202は開口の2次元アレイに相当しており、その入力にはコヒーレントな入力光ビーム204が入射される。この開口は、例えば、1μm以下の直径を有する円形の開口に相当する。入力光ビーム204は入射レーザビームを拡げる導波路(図示せず)によって、あるいは結合されたマイクロレーザの2次元アレイによって実現され得る。
【0037】
光スポット群は情報担体201の透明又は不透明領域に当てられる。光スポットが不透明領域に当てられる場合、それに応じて情報担体から出力光ビームは生成されない。光スポットが透明領域に当てられる場合、それに応じて情報担体によって出力光ビームが生成され、この出力光ビームが検出器205により検出される。図1に示された第1実施形態と同様に、検出器205は、故に、光スポットが当てられた領域のデータのバイナリー値を検出するために使用される。
【0038】
検出器205は有利には、例えばCMOSセンサー又はCCDであるセンサー素子のアレイから成る。例えば、情報担体の1つのデータ(すなわち、1ビット)を記憶する基本領域に対向して、検出器の1つのセンサー素子が配置される。この場合、検出器の1つのセンサー素子が情報担体の1つのデータを検出するよう意図される。
【0039】
有利には、情報担体により生成された出力光ビームを検出器上に集光し、データの検出を改善するために、情報担体201と検出器205との間にマイクロレンズアレイ(図示せず)が配置される。
【0040】
光スポットアレイ203は、以下のように作用する回折現象であるタルボット効果を引き出す開口アレイ202によって生成される。周期的な回折構造を有する物体、例えば開口アレイ等、にコヒーレントな光ビームが照射されるとき、開口アレイを通過直後のビームはコヒーレントな2次放射の周期的なアレイから成る。この回折光は、回折構造から予測可能な距離z0に配置された平面にて、周期的な回折構造直後のビームの正確な像に再結合する。この距離z0はタルボット距離として知られている。タルボット距離z0は、回折構造の周期をd、入射光ビームの波長をλとして、z0=2d/λで与えられる。より一般的には、再結像は回折構造から更に離れた、タルボット距離の倍数であるz(n)=2nd/λなる他の距離群z(n)で発生する。ここで、nは整数である。このような再結像はn=1/2+整数でも発生するが、この場合、像は半周期分だけシフトされる。この再結像はn=1/4+整数、及びn=3/4+整数でも発生するが、像は2倍の周波数を有するものとなり、すなわち、開口の周期性は開口アレイの周期性に対して半分にされたものとなる。
【0041】
タルボット効果を引き出すことにより、光学レンズを必要とすることなく、開口アレイ202から比較的大きい距離の位置(z(n)によって表現される数百ミクロン)に高品質の光スポットアレイを生成することが可能になる。これにより、開口アレイ202と情報担体201との間に、情報担体201を汚染(例えば、埃、指紋など)から保護する被覆層を挿入することが可能になる。さらに、これにより実装が容易になるとともに、マイクロレンズアレイの使用と比較してコスト効率良く、情報担体に当てられる光スポットの密度を増大させることが可能になる。
【0042】
図6は、このシステムの詳細図であり、情報担体601によって生成された出力光ビームからデータを検出するための検出器605を示している。この検出器は602、603、604として参照されるセンサー素子を有している。なお、示された素子数は理解を容易にするために限定されている。具体的には、素子602は情報担体のデータ領域606に記憶されたデータを検出するよう意図され、素子603は情報担体のデータ領域607に記憶されたデータを検出するよう意図され、そして素子604は情報担体のデータ領域608に記憶されたデータを検出するよう意図されている。各データ領域(マクロセルとも呼ばれる)は一組の基本データを有する。例えば、データ領域606は606a、606b、606c、606dと参照されるバイナリーデータを有する。
【0043】
この実施形態においては、検出器の1つのセンサー素子が一組のデータを検出するように意図されており、このデータセット間の各基本データは、図1に示されたマイクロレンズアレイ102又は図2に示された開口アレイの何れかによって生成される単一の光スポットによって連続して読み取られる。情報担体上のデータのこの読み取り技術は、以下において、マクロセル走査と呼ばれる。
【0044】
図6に基づく図7は、情報担体701のマクロセル走査の非限定的な一例を示している。
【0045】
情報担体701上に記憶されたデータは黒色領域(すなわち、不透明領域)又は白色領域(すなわち、透明領域)の何れかによって指し示された2つの状態を有する。例えば、黒色領域は“0”のバイナリー状態に相当し、白色領域は“1”のバイナリー状態に相当する。
【0046】
検出器705のセンサー素子が、情報担体701により生成された出力光ビームによって照射されるとき、センサー素子は白色領域により表されている。この場合、センサー素子は第1の状態を有する電気出力信号(図示せず)を供給する。逆に、検出器705のセンサー素子が情報担体から如何なる出力光ビームを受け取らないとき、センサー素子は斜線領域によって表されている。この場合、センサー素子は第2の状態を有する電気出力信号(図示せず)を供給する。
【0047】
この例においては、各データセットは4つの基本データを有しており、単一の光スポットが同時に各データセットに当てられている。光スポット703による情報担体701の走査は、例えば左から右に、2つの基本データ間の距離に等しい横方向変位を増加させながら実行される。
【0048】
位置Aにおいては、全ての光スポットは不透明領域に当てられているため、検出器領域の全てのセンサーは第2の状態にある。
【0049】
位置Bにおいては、光スポットの右への変位後、左側の光スポットは透明領域に当てられているため対応するセンサーは第1の状態にあるが、他の2つの光スポットは不透明領域に当てられているため検出器の対応する2つのセンサーは第2の状態にある。
【0050】
位置Cにおいては、光スポットの右への変位後、左側の光スポットは不透明領域に当てられているため対応するセンサーは第2の状態にあるが、他の2つの光スポットは透明領域に当てられているため検出器の対応する2つのセンサーは第1の状態にある。
【0051】
位置Dにおいては、光スポットの右への変位後、中央の光スポットは不透明領域に当てられているため対応するセンサーは第2の状態にあるが、他の2つの光スポットは透明領域に当てられているため検出器の対応する2つのセンサーは第1の状態にある。
【0052】
情報担体701の走査は、検出器のある1つのセンサーに面するデータセットの全てのデータに光スポットが当てられたときに完了する。情報担体に当てられる光スポットは2次元アレイを形成しているので、検出器のセンサーに対向するデータセットは、例えば、基本データの列毎に、且つ基本データの所与の列の基本データ毎にというように、連続して読み取られる。これは情報担体の2次元走査を意味する。
【0053】
図7に提示される例は、データはバイナリーの基本データに代えて、例えば多値スキームを用いて更に高い分解能で符号化され得るということにおいても非限定的なものである。一例は、4階調(0、1/4、1/2、3/4)を区別することにより画素毎に2つの基本ビットが検出されるスキームである。
【0054】
図8は、図2に示されるシステムを3次元的に示している。これは、情報担体801に当てられる光スポットのアレイを生成する開口アレイ802を有している。各々の光スポットは情報担体801の2次元データセット(太線の四角で表されている)上に当てられ、且つ走査される。この光スポットに応答して、情報担体はそれに応じて出力光ビームを生成し(あるいは、光スポットが不透明領域に当てられる場合には、生成しない)、出力光ビームは、走査されるデータセットに対向する検出器803のセンサーによって検出される。情報担体801の走査は、開口アレイ802をx軸及びy軸に沿って変位させて行われる。
【0055】
開口アレイ802、情報担体801、及び検出器803は平行平面群に積層されている。開口アレイ802は唯一の可動部である。
【0056】
図1に示されたシステムの3次元表示は、開口アレイ802をマイクロレンズアレイ102によって置き換えると、図8に示されたものと同一となる。
【0057】
光スポットアレイによる情報担体の走査は、情報担体に平行な平面内で行われる。走査装置は情報担体の全表面を走査するため、x及びyの二方向への並進運動を行う。
【0058】
図3に示される第1の解法においては、走査装置はH型ブリッジに相当している。光スポットを生成する光学素子(すなわち、マイクロレンズアレイ又は開口アレイ)は第1のスレッジ(sledge)301内に実装されており、第1のスレッジ301は第2のスレッジ302に対してy軸方向に移動可能である。このため、第1のスレッジ301はガイド307、308と接触する接合部303、304、305、306を有する。第2のスレッジ302はガイド309、310と接触する接合部311、312、313、314によってx軸方向に移動可能である。スレッジ301及び302は、例えばジャッキとして動作するステッピングモータ、磁気アクチュエータ、又は圧電アクチュエータなどの、作動装置(図示せず)によって平行移動させられる。
【0059】
図4に示される第2の解法においては、走査装置はフレーム401にて支持されている。フレーム401を吊すために使用される要素は、図5にて3次元的に詳細に示されている。これらの要素は:
− 第1の板バネ402、
− 第2の板バネ403、
− 走査装置401のx軸方向への作動をもたらす第1の圧電素子404、及び
− 走査装置401のy軸方向への作動をもたらす第2の圧電素子405
を有している。図4に示された第2の解法は、図3に示されたHブリッジの解法より少ない機械伝導装置を有する。フレーム401に接触する圧電素子は、電圧変化が圧電素子の寸法変化を生じさせ、それによりx及び/又はy軸方向へのフレーム401の変位をもたらすように電気制御される(図示せず)。
【0060】
位置P1は第1の位置にある走査装置401を示しており、一方、位置P2はx軸方向への平行移動後の第2の位置にある走査装置401を示している。板バネ402及び403の柔軟性がはっきりと表されている。
【0061】
同様の構成が、2つの追加の圧電素子が板バネ402及び403を置換して、4つの圧電素子を用いて構築され得る。この場合、対向する圧電素子の対は拮抗筋の対と同様にして1次元内で協働する。
【0062】
図9は、情報担体901の走査が可動部品を用いることなく実現された改善システムを示している。図9は図2に基づいているが、入力光ビーム904の経路内に配置された位相変調器906を追加的に有している。
【0063】
入力光ビーム904に、そして位相プロファイルを変化させることに、位相変調器906によって定められた位相プロファイルを適用することによって、非機械的な走査が実現される。位相変調器906は入力光ビーム904の位相を横方向の距離x(及び/又はy)に関して変化させる。
【0064】
なお、位相変調器906はまた、開口アレイ902と情報担体901との間に配置されることもできる(図示せず)。
【0065】
位相φ(x)が位置xに関して線形に変化するように位相変調器906が作用するとき、横軸x方向への光スポットアレイ903の横方向シフトΔxがもたらされる。位相φ(x)と横方向位置xとは次の関係によって結び付けられるとして定めることが可能である:
φ(x)=(2π/a)・(x/λ) …等式1
但し、xは(例えば、位相変調器906の左端からの)横方向位置、λは入力光ビーム904の波長、aは可変パラメータである。
【0066】
等式1によって定められる位相プロファイルが位相変調器906によって為される場合、光スポットアレイ903の横方向シフトΔxは次の関係によって与えられることが示される:
Δx=aZ …等式2
但し、Zは有利にはタルボット距離z0、又はタルボット距離z0の整数倍若しくは約数に相当する一定値である。
【0067】
パラメータaは、横方向シフトΔxを変化させることを考慮して位相プロファイルの線形係数を修正することを可能にする。パラメータaの値ごとに、異なる位相プロファイルが定められる。パラメータaの変化は、結果として、スポットのx方向へのシフトをもたらす。
【0068】
情報担体901の全表面を走査するためには、情報担体の各マクロセルがスポットアレイの内の1つの光スポットによって走査されなければならない。マクロセルの走査は、故に、x及びy軸方向への2次元走査に相当する。この2次元走査は、x及びy軸に従って線形位相変調を同時に定める際に実行され、定められる位相プロファイルは(等式1によって定められる)x軸に従った線形位相プロファイルと、(xをyで置き換えた等式1によって同様に定められる)y軸に従った線形位相プロファイルとの線形結合から得られる。
【0069】
位相変調器906は有利には、制御可能な液晶(LC)セルを有する。例えば、画素化された線形ネマチック液晶セルが、開口アレイ902の各開口がそれ自身の画素を有し、且つそれ故にそれ自身の位相φ(x)を与えられ得るようにして使用されることができる。従って、位相変調器906は2次元のLC画素アレイに相当する。ネマチック液晶は選択的な軸であるディレクタ方向に平均して配向された細長い分子から形成される。LC位相変調器はネマチック液晶層を2つの導電性基板間に配置し、LC層に電圧を印加することによって作成可能である。電界は、印加電界の方向にディレクタを傾ける。LC層は好ましくはツイストしていない。すなわち、セルを基板から基板へと旋回させるとき、ディレクタは何処でも同一面を向く。この平面方向の偏光を有する直線偏光された光のビームは、ディレクタと基板法線との間の角度に依存する屈折率を経る。その結果、印加電圧が変化すると、光路長ひいては位相が変化する。開口アレイ902の各開口はそれ自身の画素を有しているので、位相プロファイルは段階的に増加するランプ(ramp)を定め、このランプは等式1により定められる線形方程式を全体的にフィッティングする。
【0070】
他の例では、位相変調器906は、位相プロファイルの線形係数を変化させるために電気的に制御可能な連続的な事前設定の位相プロファイルを定めてもよい。
【0071】
他の例では、位相プロファイルを定めるためにエレクトロウェッティングセルが用いられ得る。この場合、横方向位置xに従った位相プロファイルは異なる高電圧をエレクトロウェッティングセルに印加することによって変化させられる。
【0072】
他の例では、入力光ビーム904の入射角を軸方向zから変化させて、光スポットアレイを情報担体上でシフトさせることができる。この解法は、光路中に配置される位相変調器が不要となるので有利である。これは、しかしながら、光ビーム904の角度を変化させるために作動手段(図示せず)を必要とする。開口アレイの表面法線に対する光ビームの角度がaであるとき、位相プロファイルは等式1によって定められるプロファイルと一致する。
【0073】
図10は、図9に示されたシステムを3次元的に示している。これは、情報担体1001に当てられる光スポットアレイを生成する開口アレイ1002を有している。各々の光スポットは情報担体1001の2次元データセット(太線の四角で表されている)上に当てられ、且つ走査される。この光スポットに応答して、情報担体は出力光ビームを生成し(あるいは、光スポットが不透明領域に当てられる場合には、生成しない)、出力光ビームは、走査されるデータセットに対向する検出器1003のセンサー素子によって検出される。情報担体1001のx軸及びy軸方向の走査は、如何なる要素をも動作させることなく、開口アレイ1002の下方に配置された位相変調器1006によって行われる。
【0074】
位相変調器1006、開口アレイ1002、情報担体1001、及び検出器1003は平行平面群に積層されている。
【0075】
図11はLCセルの一例を示している。これは、LC層1101、ガラス基板1102、透明電極1103、配向膜1104を有している。この図においては、パラメータdはセルの厚さに相当しており、θはLC分子の角度に相当している。液晶分子が再配向するとき、電圧発生器1105による印加電界のため、セルを伝播する直線偏光された光は異なる実効的な屈折率を経ることになり、位相変化を生じさせる。
【0076】
図11には、一例として、電圧に対する位相変化Δφについて得られたグラフも示されている。この曲線の特徴は使用されるLC材料、光の波長、及びセルの厚さdに依存する。
【0077】
入力光ビーム904の位相φ(x)が位置xに関して二次式で変化するように位相変調器906が作用するとき、軸方向の軸z方向への光スポットアレイ903の軸方向シフトΔzがもたらされる。位相φ(x)と横方向位置xとは次の関係によって結び付けられるとして定めることが可能である:
φ(x)=(2π/2R)・(x/λ) …等式3
但し、xは横方向位置、λは入力光ビーム904の波長、Rは位相プロファイルの曲率半径に相当する可変パラメータ、そしてΔzはz=0での位置に関する軸方向シフトである。
【0078】
等式3によって定められる位相プロファイルが位相変調器906によって形成される場合、光スポットアレイ903の軸方向シフトΔzは次の関係によって精度良く近似され得ることが示される:
Δz≒Z/R …等式4
但し、Zは有利にはタルボット距離z0、又はタルボット距離z0の整数倍若しくは約数に相当する一定値である。
【0079】
可変パラメータRは、軸方向シフトΔzを変化させることを考慮して位相プロファイルの2次係数を修正することを可能にする。パラメータRの値ごとに、異なる位相プロファイルが定められる。パラメータRの変化は結果としてシフトΔzをもたらす。光スポット903は、故に、情報担体901の表面に対して近接して、あるいは遠く離れて焦点を結ぶことになる。2次の位相プロファイルは、より伝統的な記録における焦点アクチュエータと同一の役割を果たすが、如何なる機械的素子をも用いていない。
【0080】
有利には、位相変調器906によって定められる位相プロファイルは等式1によって定められる(x及び/又はy軸に従った)線形位相プロファイルと、等式4によって定められる2次位相プロファイルとの線形結合から得られてもよい。これは、光スポットの焦点を情報担体901の表面に正確に設定しながら、光スポットの2次元走査を同時に実行することを可能にする。
【0081】
改善された一実施形態においては、システムの相異なる構成要素は、図1、2、8、9、10に示されるように積層される代わりに、平面型システムを定めるように互いの隣に配置される。この平面型システムは、第1表面及び第2表面を有する導波路に構築される。導波路の使用により、導波路の第1表面(すなわち、下表面)と第2表面(すなわち、上表面)との間の反射によって相異なる光ビームを横方向に移動させることが可能になる。この平面型システムは2つの形式に従って得られる。
【0082】
情報担体上に記憶されたデータを読み取る平面型システムの第1の形式を図12及び図13に示す。平面型システムの第1の形式は以下を有する:
− 第1表面1207、1307及び第2表面1208、1308を有する導波路1203、1303。この導波路は、複屈折又は密度差を有しないプラスチック、ガラス、又は何らかの材料から成る、
− 入力光ビーム1204、1304から第1の光ビームを生成するように上記の第1表面側に配置された開口アレイ1202、1302。光ビームは更なる導波路(図示せず)によって拡げられたレーザビームから得られてもよい、
− 第1の光ビームから第1の反射光ビームを生成するように上記の第2表面側に配置された第1の反射手段1209、1309、
− 第1の反射光ビームから位相変調された光ビームを生成するように上記の第1表面側に配置された反射式位相変調器1206、1306。位相変調された光ビームは上述のような光スポットアレイを有する、
− 位相変調された光ビームから、情報担体1201、1301を走査するための第2の反射光ビームを生成するように上記の第2表面側に配置された第2の反射手段1210、1310、
− 情報担体1201、1301によって生成された出力光ビームからデータを検出する検出器1205、1305。この検出器は、例えば上述のようなCMOS型であり、有利には、出力光ビームの焦点を検出器の感知セルに合わせるためのマイクロレンズアレイ(図示せず)を有する。
【0083】
図12に示される実施形態においては、検出器1205は第1表面1207の側に配置されており、情報担体1201は第1表面1207と検出器1205との間に配置されることが意図される。この特有の実施形態は、透過的に読み取られる情報担体1201の使用を暗示するものである。
【0084】
図13に示される実施形態においては、検出器1305は第2表面1308の側に配置されている。このシステムは更に以下を有する:
− 第2の反射手段1310と検出器1305との間に配置された反射偏光板1311、
− 第1表面1307と情報担体1301との間に配置された1/4波長板1312。
【0085】
導波路1303の左側にて、上方を向いた太い矢印は情報担体1301から戻ってきた光ビームを指し示している。この光ビームの偏光は1/4波長板によって回転させられており、その結果、この光ビームは反射偏光板1311を(第2の反射手段1310によって逸らされることなく)直接的に透過する。
【0086】
図13に示される特有の実施形態は、第1表面1307側に配置されて反射的に読み取られる情報担体1301の使用を暗示するものである。
【0087】
情報担体上に記憶されたデータを読み取る平面型システムの第2の形式を図14と、3次元的に見た図15とに示す。平面型システムの第2の形式は以下を有する:
− 第1表面1407及び第2表面1408を有する導波路1403。この導波路は、複屈折又は密度差を有しないプラスチック、ガラス、又は何らかの材料から成る、
− 入力光ビーム1404から第1の光ビームを生成するように上記の第1表面側に配置された開口アレイ1402。光ビームは更なる導波路(図示せず)によって拡げられたレーザビームから得られてもよい、
− 第1の光ビームから第1の反射光ビームを生成するように上記の第2表面側に配置された第1の反射手段1409、
− 第1の反射光ビームから位相変調された光ビームを生成するように上記の第1表面側に配置された反射式位相変調器1406。位相変調された光ビームは上述のような光スポットアレイを有する、
− 位相変調された光ビームから第2の反射光ビーム(下方を向いた細い矢印によって示されている)を生成するように上記の第2表面1408側に配置された第2の反射手段1410。第2の反射光ビームは情報担体1401の面に垂直である、
− 第2の反射光ビームから第3の反射光ビーム(上方を向いた太い矢印によって示されている)を生成するように上記の第1表面側に配置された反射偏光板1411。第3の反射光ビームは、第2の反射手段1410と情報担体との間に配置された1/4波長板1412を通過するように意図されており、また情報担体1401を走査するためのものである。反射偏光板1411は、所与の偏光を有する光ビーム(第2の反射光ビームに相当する)を反射し、この所与の偏光に対して90°回転させられた偏光を有する光ビーム(第3の反射光ビームに相当する)を透過させるものである、
− 情報担体1401によって生成された出力光ビーム(下方を向いた太い矢印によって示されている)からデータを検出するように反射偏光板1411の下方に配置された検出器1405。出力光ビームは1/4波長板1412及び反射偏光板1411を透過する。検出器は、例えば上述のようなCMOS型であり、有利には、出力光ビームの焦点を検出器の感知セルに合わせるためのマイクロレンズアレイ(図示せず)を有する。
【0088】
図14及び図15に示される特有の実施形態は、第2表面1408側に配置されて反射的に読み取られることが意図される情報担体1401の使用を暗示するものである。この平面型システムの実施形態は、全ての部品が導波路の同一側にある一方で情報担体が反対側にあるので有利である。この構成により、情報担体読み取り装置の実装が容易になる。好ましくは、第1表面1207、1307、1407と第2表面1208、1308、1408との間隔は、開口アレイ1202、1302、1402の出力で生成される光ビームが反射式位相変調器1206、1306、1406上で再結像するようにされる。
【0089】
平面型システムの全ての実施形態は、位相変調器を反射的に使用する点で共通している。光ビームは反射式位相変調器層を2度通るので、光ビームに加えられる位相シフト(等式1乃至4によって定められる)は2倍にされることが可能である。図9に示された実施形態と同様に、反射式位相変調器1206、1306、1406の各画素は電気的にアクセスされることができる。この場合、有利なことに液晶・オン・シリコン(LCOS)技術が使用可能である。
【0090】
図16は、第1の反射手段1609及び第2の反射手段1610の詳細を示している。
【0091】
導波路1603の第2表面1608側に三角形構造が配置されており、第1の反射光ビームの反射角は三角形構造の角度α1によって決定されてもよく、第2の反射光ビームの反射角は三角形構造の角度α2によって決定されてもよい。
【0092】
反射角はまた、ブレーズド(blazed)回折格子を形作り、逸らされた出力光ビームとして一次の回折ビームが使用されるように、この構造のピッチpを入力光ビームの波長λ程度に選定して決定されてもよい。
【0093】
このシステムは、有利なことに、情報担体上に記憶されたデータを読み取るための読み取り装置に実装されることが可能である。
【0094】
次に、上記のシステムに適用可能な高品質の光プローブ(optical probe)アレイを生成する方法及び装置について説明する。この技術はタルボット効果において基本的な光収差によって課される限界を克服するものであり、より高いデータ密度の実現を可能にする。この方法は、プローブを生成するために使用される開口アレイにおける収差を事前に補償することから成る。実際に、開口アレイは位相マスク(収差光学素子とも呼ばれる)によって置き換えられ得る。位相マスクは不連続の位相ステップを有することができる。
【0095】
数値シミュレーションによって、高品質プローブの生成が明らかにされるとともに、これが比較的単純な位相のみのマスクにより実現可能であることが示されている。
【0096】
最初に、タルボット効果において収差によって課される限界について示す。周期p及び長さLを有する、例えば図2のマスク202のような周期的な物体を考える。単位セルに対応する波数ベクトルはk=2π/pによって表される。周期的物体202のすぐ背後での図2のビーム204の電界E(x,z=0)は、
【数1】

によって与えられる。但し、F(x)は|x|<1/2のとき1であり、その他のときには0である(F(x)は物体の有限サイズを決定する)。係数Eは、周期的物体の単位セルの透過関数Ecell(x)のフーリエ成分であり、次式で表される。
【0097】
【数2】

物体の有限サイズはフーリエ成分のスメアリングを引き起こす。
【0098】
【数3】

なお、加算は伝搬波のみに限られ、故に、|n|はp/λより小さくなければならない。物体からの距離zでの電界が次式によって与えられる。
【0099】
【数4】

物体が無限大であるときには、sincはδ関数となる。
【0100】
【数5】

は単位セルのフーリエ変換であり、数式(1.5)は逆変換であるので、関数z√(k−(nk)は位相収差と見ることができる。
【0101】
位相収差の項は以下のように展開可能である:
【数6】

不連続なnの値のみが役割を果たすので、zは二次の項が打ち消されるように選定され得る:
【数7】

但し、mは整数である。(数式(1.6)の高次の項が無視される)近軸近似では、単位セルはタルボット距離zに完全に結像される。近軸近似が妥当でないとき(波長程度の構造を有する単位セルの場合)、高次の項は結像プロセスを歪ませる。伝統的な結像における収差と同様に、数式(1.6)の四次の項は球面収差に関連付けられることができる。
【0102】
図17は、周期パターン(開口アレイ)の背後での強度分布を示している。この構造はこの像の底部にあり、小さい開口のアレイ(1λの直径、20λの間隔)から構成されている。タルボット距離(800λ)は水平の直線によって指し示されている。この構造位置での強度分布がタルボット距離の位置に“結像”されていることが見て取れる。像の品質に影響を及ぼす2つの効果、すなわち、1)像端部のスポット群に主に影響を及ぼすアレイの有限サイズ、及び2)収差、が観察される。収差の影響は像の縦方向のずれとして、すなわち、最良の位置はタルボット距離より僅かにアレイに近いところにあることに、最も顕著に見て取れる。これは、最も鮮明な“位置”が水平線の僅かに下方にあることによって観察されることができる。収差はまたスポットの品質の低下を引き起こす。
【0103】
図18は、プローブアレイを生成するための開口アレイの使用を例示している。(A)は平面波の照明である。(B)は透過効率を高めるためのレンズアレイである。(C)は開口アレイであり、(D)はプローブアレイである。低いデータ密度のシステムでは、光プローブは比較的大きく、収差は根本的な問題となるとは思われない。しかしながら、データ密度を高めるためには、実効的な開口数が同様に増大される必要があり、収差は根本的な限界を課すことになる。故に、高密度システムが要求される場合には、収差を補正又は防止する方法が必要となる。
【0104】
本発明の一実施形態は、位相係数が収差を事前に補償するようにソースアレイを設計することによって位相収差を補正する方法から成る。これは、平行な光ビーム内に配置されることが可能なマスクをもたらす(図19参照)。代わりの実施形態においては、マスクは開口アレイの後ろに配置され得るように設計される(図20参照)。ある一定の場合には、これによりマスクがより単純化され得る。
【0105】
図19は、プローブアレイを生成し、且つ収差を事前補償するための、位相マスク又は収差光学素子(E)の使用を例示している。位相マスクは、例えば、ガラス板にエッチングされた高さプロファイルとして、あるいは透明基板上に複製された高さプロファイルとして実現され得る。
【0106】
図20は、開口アレイと組み合わせての位相マスクの使用を例示している。この実施形態においては、位相マスクは開口から所与の距離に配置される。異なる補正関数が必要とされることにより、マスク設計が単純化され得る。
【0107】
マスクを容易に製造できるようにするため、その設計を単純化することが好ましい。以下では、これが、1)振幅変調を無視する(位相のみのマスクを使用する)こと、2)不連続な位相ステップのみを使用すること、及び/又は3)計算されたマスクを小さい形状(例えば、製造が困難であろう所定サイズ制限未満の形状)を除去するように修正すること、によって可能であることを明らかにする。
【0108】
数値計算
//Fは電界の複素振幅
//kqは周期に対応した波数ベクトル
//k0は光放射線の波数ベクトル
//corrは収差を補正するために回折次数に加算される位相
//zcは収差が補正される伝搬距離
//amplは回折次数の振幅
for(n=0;n<(k0/kq);n=n+1)

kx=n*kq;
ampl=exp(−3*(n*kq/k0)**2);
corr=zc*(sqrt(k0**2−kx**2)−k0+(1/2)*kx**2/k0);
F=F+cos(n*kq*x)*exp(i*corr)*ampl;
}。
【0109】
マスクを如何にして生成するかということに使用され得る擬似コードが上に示されている。この擬似コードにおいて、sqrtは平方根演算を示し、exp(x)は指数関数eを示し、またx**yはxを示している。kqの倍数である空間周波数のみが使用されることにより、周期的物体が確実に得られる。回折次数の振幅(ampl)は、この例では、(ガウシアン形状を用いることにより)なだらかに減少するように選定される。この減少は実効的な開口数を決定する。位相の項(corr)は回折次数の位相を決定する。位相が等しく取られる(corr=0)とき、スポットアレイはソース位置に現れ(図21に示される)、タルボット距離には重度に収差の影響を受けた像が現れる(図22)。
【0110】
図21は収差が存在しない場合のプローブを例示している。右側の像は低強度の構造の視認性を高めるためにガンマ補正されたものである。この像の寸法は横方向に40波長分、縦方向に200波長分である。アレイの周期は20波長分である。このプローブは上述の擬似コードによって生成されている。
【0111】
図22は収差の影響を例示している。この強度パターンは、図21の構造がソースとして使用されたときにタルボット距離にて得られたものである。
【0112】
収差を補正するように位相が選択される(zcをタルボット距離、corrを上述の数値計算にて示されるようにする)場合、収差のない像が実現される(図23)が、より複雑なソース(図24)という犠牲を伴う。
【0113】
図23は、完全な(すなわち、単純化されていない)補正マスクが用いられるときの、タルボット距離での像を例示している。擬似コード(上述)において、位相の項にはcorr=zc*(sqrt(k0**2−kx**2)−k0+(1/2)*kx**2/k0)という表現が用いられている。図24は、図23のスポット群を生成するために使用されるマスク(1つのユニットセル)の振幅プロファイル(左図)及び位相プロファイル(右図)を例示している。
【0114】
次に、容易に製造可能なマスクを使用することができるかどうかを証明するため、ソースを単純化する。これは、ここでは先ず、(位相プロファイルのみを維持して)透過振幅を1に設定することによって為される(図25)。
【0115】
図25は、位相の項のみはそのままでマスクの振幅が1に設定されたときの、タルボット距離での像を示している。品質は依然として非常に良いことが見て取れる。故に、振幅の項は無視可能であることを示している。図26は、図25のスポット群を生成するために使用されるマスク(1つのユニットセル)の振幅プロファイル(左図)及び位相プロファイル(右図)を示している。
【0116】
//finは連続関数である位相
//foutはマスク用に離散化された位相
n=2
fout=(pi/n)*int(fin/(pi/n));
次に、上記の擬似コードに示されるように、マスクの離散的な位相ステップを選択した(図27及び図28)。演算“int”は数字が最も近い整数まで波数を切り捨てられることを示している。これは像の品質に殆ど影響を及ぼさないことが見て取れる。位相マスクを離散化するために使用される擬似コードは上に示されている。π/nの倍数である位相値のみが用いられる(ホログラムには全体として2n個のステップが存在する)。
【0117】
図27は、4つの不連続な位相ステップ(−1/2π、0、1/2π、π)を有するマスクを用いたときに、タルボット距離で得られた像を示している。離散化の擬似コードにおいてn=2である。図28は、図27のスポット群を生成するために使用されるマスク(マスクの振幅は1に保たれている)を示している。
【0118】
最後に、製造しやすさを最適化するためにマスクを手作業で変化させることが可能である。一例を図29及び図30に示す。図29は、製造しやすくするために所定の閾値未満の形状の除去によりマスクが手作業で修正された(図28のマスクから一部の最小形状が除去されている)ときの、タルボット距離で得られた像を示している。大規模な最適化手順に従っていないものの、像の品質は既に(図22と比較して)良いものである。図30は、図29に示されたプローブ群を生成するために使用されるマスク(振幅は1に保たれている)を示している。このマスクは3つのみの異なる位相レベルと波長程度の構造とを有している。
【0119】
上述のシミュレーションは1次元のアレイに関するものであったが、2次元のアレイ及びマスクに対しても結論は妥当であることは認識されるであろう。さらに、上述において光学素子アレイは、該光学素子アレイから実質的にタルボット距離の位置に放射線スポットアレイを生成するように構成されていると大まかに仮定されていたが、光学素子アレイは異なる距離の位置にスポット群を生成するようにも構成され得ることが認識されるであろう。収差光学素子は、如何なる所定位置にある焦点に持ってこられる放射線スポット群においても光収差を補正するように構成され得る。同様に、収差光学素子はスポット群の位置を変化させるように構成されてもよい。例えば、光学素子アレイが近軸タルボット距離に放射線スポットアレイを生成するように構成されている場合、収差光学素子は、放射線スポット群における光収差の補正のために所定の光収差を適用するとともに、スポット群のz位置(すなわち、スポット群と光学素子アレイとの間の光路に沿った間隔)を変化させるために所定の光学関数を適用するように構成されることができる。
【0120】
以上、収差光学素子について光学素子アレイとは別の個別ユニットとして大まかに説明してきた。しかしながら、2つの素子は単一の連続的なユニットとしても形成され得ることは認識されるであろう。他の例では、光学素子アレイは収差光学素子の一部を形成してもよい。すなわち、収差光学素子は放射線スポット群の光収差を補正するだけでなく、放射線スポット群のアレイを生成することもできるように構成されてもよい。
【0121】
動詞“有する”及びその活用形は、請求項にて挙げられる以外の要素又は段階の存在を排除するものではない。要素又は段階の前の冠詞“ある(“a”若しくは“an”)”の使用は、このような要素又は段階が複数存在することを排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】第1のシステムを示す図である。
【図2】第2のシステムを示す図である。
【図3】システムを情報担体上で移動させる第1の構成を示す図である。
【図4】システムを情報担体上で移動させる第2の構成を示す図である。
【図5】システムを情報担体上で移動させる第1の構成の詳細な構成要素を示す図である。
【図6】システム内で使用されるマクロセル走査用の構成要素の詳細を示す図である。
【図7A】マクロセル走査の原理を示す図である。
【図7B】マクロセル走査の原理を示す図である。
【図7C】マクロセル走査の原理を示す図である。
【図7D】マクロセル走査の原理を示す図である。
【図8】第1のシステムを3次元的に示す図である。
【図9】第3のシステムを示す図である。
【図10】第3のシステムを3次元的に示す図である。
【図11】電気的に制御可能な液晶セルと、その電圧制御曲線を示す図である。
【図12】平面型システムの第1実施形態を示す図である。
【図13】平面型システムの第2実施形態を示す図である。
【図14】平面型システムの第3実施形態を示す図である。
【図15】平面型システムの第3実施形態を3次元的に示す図である。
【図16】平面型システムで使用される構成要素を示す詳細図である。
【図17】タルボット効果を例示する、周期構造からの強度分布を示す図である。
【図18】プローブのアレイを生成するために開口アレイを使用することを例示する概略図である。
【図19】本発明の一実施形態に従って、プローブのアレイを生成するために位相マスクを使用することを例示する概略図である。
【図20】本発明の一実施形態に従って、プローブのアレイを生成するために開口アレイと組み合わせて位相マスクを使用することを例示する概略図である。
【図21】収差が存在しないときのプローブを示す図である。
【図22】収差が存在するときの、タルボット距離で得られたプローブの強度パターンを示す図である。
【図23】本発明の一実施形態に従って完全な収差補正が使用されたときのタルボット距離での像を示す図である。
【図24】図23のスポット群を生成するために使用される1つのユニットセルマスクの振幅(左図)及び位相(右図)プロファイルを示す図である。
【図25】本発明の一実施形態に従って位相条件のみを維持しマスク振幅を1に設定したときのタルボット距離での像を示す図である。
【図26】図25のスポット群を生成するために使用されるマスク(1つのユニットセル)の振幅(左図)及び位相(右図)プロファイルを示す図である。
【図27】4つの不連続な位相ステップ(−1/2π、0、1/2π、π)を有するマスクを用いたときのタルボット距離で得られた像を示す図である。
【図28】図27に示されたプローブを生成するために使用されるマスク(マスク振幅は1に保たれている)を示す図である。
【図29】作成が容易になるようにマスクが手動で修正された(図28におけるマスクと比較して、一部の最小形状が除去されている)ときのタルボット距離で得られた像を示す図である。
【図30】図29に示されたプローブを生成するために使用されるマスク(振幅は1に保たれている)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報担体を走査する光学走査装置であって:
情報担体の走査のための放射線スポット群の2次元アレイを入力放射線ビームから生成するように構成された光学素子アレイ;及び
放射線スポット群における光収差の補正のために、所定の光収差を放射線に適用するように構成された収差光学素子;
を有する装置。
【請求項2】
収差光学素子は光学素子アレイと放射線スポット群との間の光路上に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
収差光学素子は入力放射線ビームのソースと光学素子アレイとの間の光路上に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
収差光学素子は実質的に放射線の位相のみを変化させるように構成されている、請求項1乃至3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
収差光学素子は、実質的に均一な屈折率を有する透明材料を有し、該材料の厚さは所定の光収差をもたらすように該素子の全域で変化している、請求項1乃至4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
収差光学素子は個別素子として形成されている、請求項1乃至5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
収差光学素子は前記光学素子アレイを含んでいる、請求項1乃至5の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
光学素子アレイはレンズアレイ又は開口アレイである、請求項1乃至7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
光学素子アレイは該光学素子アレイから実質的にタルボット距離の位置に前記スポット群を生成するように構成されている、請求項1乃至8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
収差光学素子は、光学素子アレイのサイズが有限であることに起因する放射線スポット群における光収差を補正するために、所定の光収差を適用するように構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
情報担体によって生成された出力光ビームアレイから情報を検出するように構成された光センサーアレイを有する検出器を更に有する請求項1乃至10の何れか一項に記載の装置。
【請求項12】
情報担体を走査する光学走査装置にて使用される収差光学素子であって、前記装置は、情報担体の走査のための放射線スポット群の2次元アレイを入力放射線ビームから生成するように構成された光学素子アレイを有し、
当該収差光学素子は放射線スポット群における光収差の補正のために、所定の光収差を放射線に適用するように構成されている収差光学素子。
【請求項13】
情報担体を走査する方法であって:
情報担体の走査のための放射線スポット群の2次元アレイを入力放射線ビームから生成する段階;及び
放射線スポット群における光収差の補正のために、所定の光収差を放射線に適用する段階;
を有する方法。
【請求項14】
情報担体を走査する光学走査装置を製造する方法であって:
情報担体の走査のための放射線スポット群の2次元アレイを入力放射線ビームから生成する光学素子アレイを設ける段階;及び
放射線スポット群における光収差の補正のために、所定の光収差を放射線に適用する収差光学素子を設ける段階;
を有する製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2008−518247(P2008−518247A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537469(P2007−537469)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【国際出願番号】PCT/IB2005/053464
【国際公開番号】WO2006/046184
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】