説明

情報管理システムとそのデータ更新操作方法

【課題】マスタ情報の更新操作に同期してその関連情報も更新され、しかもこの関連情報に対する更新操作がシステム本来の動作に影響を及ぼすことなく実行されるようにする。
【解決手段】管理者の操作に応じ予約操作設定データを生成し保存し、現在時刻がこの保存された予約操作設定データに含まれる実行予約時刻になると、マスタ情報を上記予約操作設定データに応じて更新する。また、上記実行予約時刻になる前に、上記保存された予約操作設定データをもとに同時修正データの更新操作所要時間を見積もり、この所要時間がシステムが許容する遅延時間内であれば、上記実行予約時刻になる前に上記同時修正データの更新操作の準備を開始し、上記実行予約時刻になった時点で上記同時修正データの更新操作を実行する。これに対し、上記更新操作の所要時間が遅延時間を超える場合には、上記実行予約時刻になった時点で上記同時修正データの更新操作を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば医療機関や保健関連機関、自治体等が保有する医療や健康に係る情報を通信ネットワークを介して相互に共有する情報管理システムとこのシステムで使用されるデータ更新操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザの組織や役職、資格等のユーザ属性を示す情報をマスタ情報において管理し、このマスタ情報に基づいてユーザ情報に対するアクセス制御を実行するシステムが提案されている。このシステムは、ユーザのログインに対し上記マスタ情報を参照して認証を行い、その認証結果を表す情報に上記マスタ情報に含まれるユーザ属性の一部を含めて流通し、このユーザ属性を受け取ってユーザの個人情報に対する閲覧等を可能にするものとなっている。このような蓄積された情報を許可された利用者にだけ開示するためのシステムとしては、例えばインスタンス指示子、利用者指示子、操作指示子、操作内容条件の4つ組みからなるインスタンス操作許可情報を管理するものが知られている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3788113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような情報管理システムを運用する際には、組織の再編や国家資格の変更などに応じてユーザ属性を含むマスタ情報を最新化する操作、すなわちマスタ情報におけるデータの追加、修正、削除といった更新操作が常に必要となる。しかし、マスタ情報に記載されたデータは、アクセス制御のルールの設定値としても記述されているため、単にマスタ情報のみを更新してしまうと、設定当初の意図と異なるユーザ属性を持つユーザに対してデータアクセスを許可してしまったり、また正当なユーザ属性を持つユーザからのデータアクセスを拒否してしまうといった不具合が発生することがある。すなわち、ユーザ属性によるデータアクセス制御を正しく実施できなくなるおそれがある。
【0005】
例えば、複数の医療機関や保健関連機関が保有する医療や健康に係る情報を、通信ネットワークを介して相互に共有することで統合的な医療・健康サービスを目指すEHR(Electronic Health Record)システムを例にとると、「A病院の組織再編でA病院外科がA病院第一外科、第二外科に分離された」ことをマスタ情報に反映しようとした場合に、マスタ情報だけを修正し、アクセス制御ルール中に記述されている“A病院外科”を放置すると、以後上記A病院の外科に属する医師等によるアクセス要求に対し正しいアクセス制御が実施できなくなる可能性がある。すなわち、本来アクセス権限を持っているはずの医師Xがデータにアクセスできなくなったり、逆にアクセス権限のないユーザがデータにアクセスできてしまうなどの不具合が発生してしまう。このような不具合は、特許文献1に記載されたシステムにおいても発生し、その対策が切望されていた。
【0006】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、マスタ情報の更新操作に同期してその関連情報も更新されるようにし、しかもこの関連情報に対する更新操作がシステム本来の動作に影響を及ぼすことなく実行されるようにした情報管理システムとそのデータ更新操作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためにこの発明の1つの観点は、マスタデータを含む第1の管理情報と、この第1の管理情報に含まれる一部のデータを含む第2の管理情報とを記憶し、これらの第1及び第2の管理情報に基づいてそれぞれ異なる処理を実行するシステムにおいて、管理者の予約操作に応じて、上記第1の管理情報に対する更新操作の実行予約時刻を指定する時刻指定情報と、上記第1の管理情報の更新操作前後のデータの遷移情報を含む予約操作設定データを生成して保存する。この状態で、現在時刻が上記保存された予約操作設定データに含まれる時刻指定情報により指定される実行予約時刻になった後に、上記第1の管理情報を上記予約操作設定データに含まれる遷移情報をもとに更新操作する。また、現在時刻が上記実行予約時刻になる前に、上記保存された予約操作設定データに含まれる遷移情報をもとに上記第2の管理情報の更新操作の所要時間を予測し、この予測された所要時間が予め設定されたしきい値以内であるか否かを判定する。そして、この判定の結果、上記更新操作の所要時間がしきい値を超える場合には、現在時刻が上記実行予約時刻になる前に上記予約操作設定データに含まれる遷移情報をもとに上記第2の管理情報を更新操作するための準備処理を実行し、現在時刻が上記実行予約時刻になった後に上記準備処理により生成された準備情報をもとに上記第2の管理情報を更新操作する。これに対し、上記更新操作の所要時間がしきい値以内と判定された場合には、現在時刻が上記実行予約時刻になった後に、上記予約操作設定データに含まれる遷移情報をもとに上記第2の管理情報を更新操作する。
【発明の効果】
【0008】
したがってこの発明の1つの観点によれば、予約操作設定データに基づいて、マスタデータを含む第1の管理情報に対する更新操作が行われると、これに同期して関連性を有する第2の管理情報に対しても更新操作が行われる。すなわち、第1の管理情報のマスタデータが更新されると、それに伴い関連性を有する第2の管理情報も自動的に更新される。このため、例えば本来アクセス権限を持っているはずのユーザがデータにアクセスできなくなったり、逆にアクセス権限のないユーザがデータにアクセスできてしまうといった不具合の発生は確実に防止される。
【0009】
しかも、現在時刻が実行予約時刻になる前に第2の管理情報の更新操作の所要時間が予測され、この予測された所要時間が予め設定されたしきい値を超える場合には、現在時刻が上記実行予約時刻になる前に上記第2の管理情報に対する更新操作の準備が開始され、上記実行予約時刻になった時点で上記準備した結果をもとに第2の管理情報の更新操作が実行される。このため、第2の管理情報に対する更新操作に多くの時間を要する場合でも、システムを一時停止させたりシステム本来の処理を遅延させることなく第2の管理情報を更新操作することが可能となる。
【0010】
すなわち、マスタ情報の更新操作に同期してその関連情報も更新することができ、しかもこの関連情報に対する更新操作をシステム本来の動作に影響を及ぼすことなく実行可能とした情報管理システムとそのデータ更新操作方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る情報管理システムの機能構成を示すブロック図。
【図2】図1に示した情報管理システムの処理の概要を示す図。
【図3】図1に示した情報管理システムの仲介サーバ及び提供側サーバの処理手順と処理内容を示すフローチャート。
【図4】図3に示した処理手順のうち準備処理の処理手順と処理内容の第1の例を示すフローチャート。
【図5】図3に示した処理手順のうち準備処理の処理手順と処理内容の第2の例を示すフローチャート。
【図6】図1に示した情報管理システムの提供側サーバに記憶されるアクセス制御ルールデータの一例を示す図。
【図7】図1に示した情報管理システムの仲介サーバに記憶されるユーザデータ及びマスタ情報の一例を示す図。
【図8】図1に示した情報管理システムの仲介サーバに記憶される予約操作設定データに含まれるデータ項目の一例を示す図。
【図9】データ修正を行う場合の予約操作設定データの一例を示す図。
【図10】データ削除を行う場合の予約操作設定データの一例を示す図。
【図11】データ追加を行う場合の予約操作設定データの一例を示す図。
【図12】この発明の第2の実施形態に係る情報管理システムの機能構成を示すブロック図。
【図13】図12に示した情報管理システムによる変更履歴提供処理の手順と処理内容を示すフローチャート。
【図14】図12に示した情報管理システムによるリカバリ処理の処理手順と処理内容の第1の例を示すフローチャート。
【図15】図12に示した情報管理システムによるリカバリ処理の処理手順と処理内容の第2の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
(システムの構成)
図1は、この発明の第1の実施形態に係る情報管理システムの機能構成を示すブロック図である。
この情報管理システムは、利用者(ユーザ)が利用する複数の要求側サーバRSV1〜RSVnと、情報提供者が管理する複数の提供側サーバDSV1〜DSVmと、システム運用者が管理する仲介サーバMSVとを、図示しない通信ネットワークを介して接続可能にしたものである。通信ネットワークとしては、例えばIP(Internet Protocol)網が用いられる。
【0013】
要求側サーバRSV1〜RSVnは、データ要求受付処理部11と、データ送受信部12を備えている。データ要求受付処理部11はユーザインタフェース(UI)を有し、図示しないユーザ端末からログイン要求を受信すると、仲介サーバMSVとの間で認証手順を実行する処理と、この認証手順により利用者の正当性が確認された後、ユーザ端末からデータ操作要求を受信するとこの要求をアクセス先の提供側サーバDSV1〜DSVmへ送信し、提供側サーバDSV1〜DSVmからそのデータ操作結果を表す応答を受信する処理を実行する。データ送受信部12は、仲介サーバMSV及び提供側サーバDSV1〜DSVmとの間で上記各要求及びその応答を送受信する機能を有する。
【0014】
提供側サーバDSV1〜DSVmは、データ送受信部21と、データ提供処理部22と、アクセス対象データ記憶部23と、アクセス制御ルールデータ記憶部25を備え、さらにこの発明に係る新たな機能として同時修正データ操作処理部24を備えている。
【0015】
データ送受信部21は、上記要求側サーバRSV1〜RSVnとの間でデータ操作要求とその応答を送受信すると共に、仲介サーバMSVから予約操作設定通知を受信する機能を有する。
【0016】
データ提供処理部22はアクセス制御部221を有する。そして、上記データ操作要求を受理した場合に、アクセス制御ルールデータ記憶部25に記憶されたアクセス制御ルールに従いログインユーザ(アクセス元ユーザ)にアクセス対象ユーザに対する操作の権限があるか否かを判定する処理と、権限があると判定された場合にアクセス対象データ記憶部23に記憶されたデータに対し操作を実施してその結果を表す応答を要求側サーバRSV1〜RSVnへ返送する処理と、権限がないと判定された場合には操作不許可の判定結果を要求側サーバRSV1〜RSVnへ返送する処理を実行する。
【0017】
同時修正データ操作処理部24は、以下の処理機能を有する。
(1) 後述する仲介サーバMSVから予約操作設定データを受け取り、現在時刻がこの予約操作設定データに記述された実行予約時刻になる前に、上記アクセス制御ルールデータ記憶部25に記憶されたアクセス制御ルールデータに対する更新操作の所要時間を見積もる。そして、この見積もった所要時間がシステムで許容された遅延時間内であるか否かを判定する処理。
(2) 上記更新操作の所要時間が許容された遅延時間を超えると判定された場合には、現在時刻が上記実行予約時刻になる前に、上記アクセス制御ルールデータに対する更新操作を開始する処理。
(3) 上記更新操作の所要時間が許容された遅延時間内であると判定された場合には、現在時刻が上記実行予約時刻になった時点で、上記アクセス制御ルールデータに対する更新操作を開始する処理。
【0018】
仲介サーバMSVは、データ送受信部30と、認証部31と、ユーザデータ記憶部32と、運用管理部33と、マスタ情報記憶部37とを備え、さらにこの発明に係る新たな機能としてデータ予約操作設定処理部34と、予約操作設定データ記憶部35と、マスタ情報予約操作処理部36と、同時修正データ操作処理部38と、関係者データ記憶部39を備えている。
【0019】
ユーザデータ記憶部32には、利用者の認証に必要なユーザIDやパスワード等のユーザデータが予め記憶されている。マスタ情報記憶部37には、システムが情報提供処理を実行する際の基礎情報となるマスタ情報が記憶されている。マスタ情報には、利用者のユーザ属性を示す組織データ、資格データが含まれる。
【0020】
データ送受信部30は、上記要求側サーバRSV1〜RSVnとの間で上記認証手順のための信号の送受信を行うと共に、提供側サーバDSV1〜DSVmへ予約操作設定データを通知するために用いられる。
【0021】
認証部31は、要求側サーバRSV1〜RSVnから送られた認証要求に応じて、ユーザデータ記憶部32に記憶されたユーザデータをもとに本人認証を行い、その認証結果を表す認証トークンを要求側サーバRSV1〜RSVnへ返送する機能を有する。
【0022】
運用管理部33はユーザインタフェース(UI)を有し、運用者が自身の端末(図示せず)において予約操作のために手動入力した各データ項目を当該運用者端末から受信し、この受信した各データ項目をデータ予約操作設定処理部34に渡す機能を有する。
【0023】
データ予約操作設定処理部34は、以下の処理機能を有する。
(1) 上記運用管理部33から渡された予約操作のためのデータ項目をもとに予約操作設定データを生成し、この予約操作設定データを予約操作設定データ記憶部35に格納する処理。
(2) 上記予約操作設定データ記憶部35に新たな予約操作設定データが格納されるごとに、現在時刻がこの予約操作設定データに含まれる操作実行予約時刻になる前に、当該予約操作設定データを仲介サーバMSV及び提供側サーバDSV1〜DSVmの同時修正データ操作処理部38,24に通知する処理。
(3) 現在時刻が、予約操作設定データに含まれる操作実行予約時刻になった時点で、マスタ情報予約操作処理部36と、仲介サーバMSV及び提供側サーバDSV1〜DSVmの同時修正データ操作処理部38,24にそれぞれ実行要求を送付する処理。
【0024】
マスタ情報予約操作処理部36は、上記データ予約操作設定処理部34から実行要求と予約操作設定データを受け取った場合に、この受け取った予約操作設定データを参照してマスタ情報記憶部37内の更新操作対象のデータを更新操作する処理を実行する。
【0025】
同時修正データ操作処理部38は、先に述べた提供側サーバDSV1〜DSVmの同時修正データ操作処理部24と同様に、以下の処理機能を有する。
(1) 後述する仲介サーバMSVから予約操作設定データを受け取り、現在時刻がこの予約操作設定データに記述された実行予約時刻になる前に、上記関係者データ記憶部39に記憶された関係者データに対する更新操作の所要時間を見積もる。そして、この見積もった所要時間がシステムで許容された遅延時間内であるか否かを判定する処理。
(2) 上記更新操作の所要時間が許容された遅延時間を超えると判定された場合には、現在時刻が上記実行予約時刻になる前に、上記関係者データに対する更新操作を開始する処理。
(3) 上記更新操作の所要時間が許容された遅延時間内であると判定された場合には、現在時刻が上記実行予約時刻になった時点で、上記関係者データに対する更新操作を開始する処理。
なお、関係者データ記憶部39には、利用者ごとに当該利用者と関係する他の利用者や関係組織(例えばかかりつけの病院等)を表す情報が記憶されている。
【0026】
(システムの動作の概要)
次に、以上のように構成されたシステムの処理動作の概要を説明する。図2はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
運用者は、自身の端末において、更新操作対象とするマスタ情報のデータ名と、操作実行予約時刻と、更新装置の種類(変更、削除、追加)と、操作対象のデータ項目の操作前後の遷移関係を表すデータ値を入力する(ステップS1)。そうすると、この入力された各データ項目は運用管理部33により受信されてデータ予約操作設定部34に渡され、このデータ予約操作設定部34においてステップS2により一時記憶された後、予約操作設定データとして予約操作設定データ記憶部35に格納される(ステップS3)。
【0027】
予約操作設定データ記憶部35に新たな予約操作設定データが格納されると、現在時刻が上記予約操作設定データに含まれる操作実行予約時刻になったか否かがデータ予約操作設定部34により監視される。そして、現在時刻が操作実行予約時刻になると、データ予約操作設定部34から、仲介サーバMSV内のマスタ情報予約操作処理部36及び同時修正データ操作処理部38と、提供側サーバDSV1〜DSVm内の同時修正データ操作処理部24に対しそれぞれ実行要求及び上記予約操作設定データが送付される(ステップS4)。
【0028】
マスタ情報予約操作部36及び同時修正データ操作部24,38では、上記データ予約操作設定処理部34から実行要求を受け取ると、これと同時に又は事前に受け取った予約操作設定データを参照して、それぞれマスタ情報記憶部37内の更新操作対象のデータに対する更新操作(ステップS6)、アクセス制御ルールデータ記憶部25に記憶された更新対象データに対する更新操作(ステップS7)、関係者データ記憶部39に記憶された関係者データに対する更新操作(ステップS8)が実行される。
【0029】
すなわち、ステップS5に示すようにマスタ情報記憶部37に記憶されたマスタ情報の更新操作と、アクセス制御ルールデータ記憶部25に記憶されたアクセス制御ルールデータの更新操作と、関係者データ記憶部39に記憶された関係者データの更新操作が、操作実行予約時刻に同期して実行される。この更新操作の同期実行を実現するために、仲介サーバMSV及び提供側サーバDSV1〜DSVmのシステム時間は、例えばNTP(Network Time Protocol)を用いることで互いに同期がとられている。
なお、同時修正データ操作部24,38において行われる、更新操作の所要時間がシステムの許容遅延時間を超えると予測される場合の事前処理開始動作については、後に詳しく述べる。
【0030】
(システムの詳細な動作)
次に、この実施形態に係る情報管理システムのデータ更新処理動作を詳細に説明する。図3は、その仲介サーバMSV及び提供側サーバDSV1〜DSVmの処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
ここでは、アクセス制御ルールデータ記憶部25に例えば図6に示すようなアクセス制御ルールデータが、またユーザデータ記憶部32及びマスタ情報記憶部37に例えば図7に示すようなユーザデータ及びマスタ情報がそれぞれ記憶されているものとして説明を行う。すなわち、マスタ情報においては組織ID=O0001に関連付けて「A病院」が記憶され、またアクセス制御ルールデータにおいては「A病院」に読み取り許可を与えることを意味する「所属組織ID=O0001に対して読み取りOK」のルールが記載されている。
【0031】
(1)予約操作データの設定
仲介サーバMSVでは、運用管理部33において予約操作のためのデータ項目の入力操作が監視されている(ステップS11)。この状態で、運用者が自身の端末において、予約操作のデータ項目を入力したとする。そうすると、この入力されたデータ項目はステップS12において運用管理部33により受信されてデータ予約操作設定部34に渡され、このデータ予約操作設定部34において上記入力データ項目をもとに予約操作設定データが生成され、予約操作設定データ記憶部35に記憶される(ステップS13)。
【0032】
上記運用者により入力されるデータ項目は、例えば図8に示すように更新操作の対象となるマスタ情報のデータテーブル名と、要求操作の種類(変更、削除、追加)を表す情報と、操作実行予約時刻と、マスタ情報と同時に更新操作が必要なデータテーブル名と、操作対象となるマスタ情報中のデータ項目と、マスタ情報における操作後のデータ値と、同時修正データにおける操作後のデータ値からなる。このうち、マスタ情報の操作後のデータ値とは別に同時修正データの操作後のデータ値を入力する理由は、マスタ情報のデータ項目の更新内容によっては、マスタ情報自体の更新内容と、アクセス制御ルールデータなどの同時修正データの修正内容が異なることがあるためである。
なお、予約番号はデータ予約操作設定処理部34により自動採番される。また、マスタ情報における操作前のデータ値は、上記操作対象とするデータ項目を指定するとマスタ情報から自動取得される。
【0033】
ところで、上記予約操作設定データの生成は、要求操作の種類(変更、削除、追加)によって異なる。以下にその生成処理の内容を説明する。
<ケース(1)>
ケース(1) は、マスタ情報のデータ項目を変更、例えばデータ項目の分割をするケースである。このケースでは、アクセス制御ルールデータや関係者データ等の同時修正データについてもマスタ情報と同様の変更が実施される。図9はこのケース(1) の場合の予約操作設定データの一例を示すものである。
【0034】
データ予約操作設定部34は、ユーザにより指定された操作対象データを参照し、「操作対象データ項目」に「操作前の値」を格納する。「操作後の値(マスタ情報)」には、ユーザにより指定されたデータを格納する。「操作後の修正(同時修正データ)」には、「操作後の値(マスタ情報)」をコピーする。なお「操作後の値(マスタ情報)」については、操作対象のデータ項目がツリーの最下位のデータでなければ、操作対象データの配下の構成員の分割に関するデータも格納する。このデータも運用者が入力する。
【0035】
<ケース(2)>
ケース(2) は、マスタ情報のデータ項目を削除するケースである。この場合、マスタ情報のデータ項目は削除されても、アクセス制御ルール等を適切な継承組織に引き継ぐ必要がある。このため、アクセス制御ルールデータや関係者データ等の同時修正データに対し、マスタ情報とは異なる更新処理を実施する必要がある。図10はこのケース(2) の場合の予約操作設定データの一例を示すものである。
【0036】
データ予約操作設定部34は、ユーザにより指定された操作対象データを参照し、「操作前の値」に操作対象データ項目の値を格納する。「操作後の値(マスタ情報)」には自動的にNULLを格納する。「操作後の値(同時修正データ)」には、ユーザにより指定されたデータを格納する。なお、「操作後の値(同時修正データ)」について、A病院の情報がB病院に引き継がれない完全廃止の場合には、自動的にNULLが格納される。
【0037】
<ケース(3)>
ケース(3) は、マスタ情報にデータ項目を追加するケースである。この場合、アクセス制御ルール等には当該データ項目に関する記述が存在しないため、データアクセス制御ルールデータや関係者データ等の同時修正データに対する操作は実施しない。図11はこのケース(3) の場合の予約操作設定データの一例を示すものである。
【0038】
ケース(3) の場合、操作前にはデータ項目は存在しないため、データ予約操作設定部34は、「操作前の値」にNULLを自動で格納する。「操作後の値(マスタ情報)」には、運用者により指定されたデータを格納する。「操作後の値(同時修正データ)」には、NULLを自動で格納する。
【0039】
(2)予約操作設定データの通知
上記予約操作設定データ記憶部35に新たな予約操作設定データが格納されると、データ予約操作設定処理部34により、現在時刻がこの予約操作設定データに含まれる操作実行予約時刻になる前に、当該予約操作設定データが同時修正データ操作処理部38に通知され、またデータ送受信部30から同時修正データ操作処理部24へ送信される(ステップS14)。この予約操作設定データは、提供側サーバDSV1〜DSVmにおいてデータ送受信部21により受信され、同時修正データ操作処理部24に渡される(ステップS18)。上記予約操作設定データを同時修正データ操作処理部24,38に通知する理由は、後述する同時修正データに対する更新操作の事前準備のためである。
【0040】
(3)マスタ情報に対する更新操作
またデータ予約操作設定処理部34では、上記予約操作設定データ記憶部35に新たな予約操作設定データが格納されると、現在時刻が予約操作設定データに含まれる操作実行予約時刻になったか否かがステップS22で監視される。そして、現在時刻が操作実行予約時刻になると、その時点でステップS23によりデータ予約操作設定処理部34から仲介サーバMSV内のマスタ情報予約操作処理部36に実行要求が通知される。なお、このとき仲介サーバMSV内の同時修正データ操作処理部38と、提供側サーバDSV1〜DSVm内の同時修正データ操作処理部24にも、上記実行要求がそれぞれ通知される。
【0041】
マスタ情報予約操作処理部36では、上記データ予約操作設定処理部34から実行要求と予約操作設定データを受け取ると、ステップS24において、この受け取った予約操作設定データの予約番号が付与された設定項目に記載された更新操作が実行される。このとき、マスタ情報予約操作処理部36で用いる設定項目は、「操作対象データ」、「操作対象データ項目」及び「操作後の値(マスタ情報)」である。
【0042】
すなわち、「操作対象データ」で指定されたマスタ情報のデータテーブルを参照し、「操作対象データ項目」で指定されたデータ項目が更新される。要求操作に応じた各データ項目の修正内容は、既にデータ予約操作設定処理部34にて予約操作設定データの「操作後の値(マスタ情報)」にセットされている。このため、マスタ情報予約操作処理部36では、指定されたデータ項目に「操作後の値(マスタ情報)」を上書きすればよい。
【0043】
例えば、いま「A病院外科」が「第一外科」と「第二外科」に分離されたことに伴い、予約操作設定データとして図9に示す設定データが記憶されていたとする。この設定データにおける更新操作の種類は「変更」であり、その操作内容は「A病院外科」に関するデータを「A病院第一外科」と「A病院第二外科」に関するデータに変更することである。この場合には、予約操作設定データの記述に従い、マスタ情報記憶部37に記憶されているマスタ情報中の操作対象データ項目「組織ID」、「組織名称」及び「組織説明」の操作前のデータがそれぞれ「O0028,O0029」、「A病院第一外科」と「A病院第二外科」、「2010-09に外科から分離」に変更される。
【0044】
また、いま「A病院」の「B病院」への吸収合併に伴い、予約操作設定データとして図10に示す設定データが記憶されていたとする。この設定データにおける更新操作の種類は「削除」であり、その操作内容は「A病院」に関するデータの削除である。この場合には、上記予約操作設定データの記述に従い、マスタ情報記憶部37に記憶されているマスタ情報中の操作対象データ項目「組織ID」、「組織名称」及び「組織説明」の操作前のデータがいずれもNULLに変更される。
【0045】
さらに、C病院の新設に伴い、予約操作設定データとして図11に示す設定データが記憶されていたとする。この設定データにおける更新操作の種類は「追加」であり、その操作内容は「C病院」に関するデータの追加である。この場合には、上記予約操作設定データの記述に従い、マスタ情報記憶部37に記憶されているマスタ情報に「C病院」に関するデータを追加するための操作対象データ項目が新設され、当該操作対象データ項目の「組織ID」、「組織名称」及び「組織説明」に、それぞれ操作後のデータである「O0082」、「C病院」、「2010/09にxx地区に新設された病院」が記述される。
かくして、マスタ情報記憶部37内の更新操作対象のデータを更新(変更、削除、追加)する操作が行われる。
【0046】
(4)同時修正データの更新操作
アクセス制御ルールデータや関係者データなど、マスタ情報の更新操作に付随して修正すべき「同時修正データ」中には、操作対象とするマスタ情報のデータが、いくつかのデータ項目の値として設定されている。従って、アクセス制御ルールデータ記憶部25及び関係者データ記憶部39内の更新対象箇所を発見するために、これらの記憶部25,39内のデータ項目の値をすべてチェックする必要がある。記憶部のサイズにもよるが、このチェック処理にはある程度の処理時間を必要とする場合がある。そこで、同時修正データ操作部24,38では、データ予約操作設定処理部34から実行要求を受信する前に、処理遅延を縮小するために以下の事前準備が実行される。
【0047】
(4−1)所要時間の見積もり計算
すなわち、上記予約操作設定データが通知されると同時修正データ操作処理部38では、先ずステップS15により、現在時刻がこの通知された予約操作設定データに記述された実行予約時刻になる前に、関係者データ記憶部39に記憶された関係者データに対する更新操作の所要時間を見積もるための計算処理が行われる。
【0048】
また提供側サーバDSV1〜DSVmの同時修正データ操作処理部24においても、ステップS19により、現在時刻がこの通知された予約操作設定データに記述された実行予約時刻になる前に、アクセス制御ルールデータ記憶部25に記憶されたアクセス制御ルールデータに対する更新操作の所要時間を見積もるための計算処理が行われる。
【0049】
これらの更新操作所要時間の見積計算は、上記通知された予約操作設定データに基づいて関係者データ記憶部39及びアクセス制御ルールデータ記憶部25への操作クエリを生成し、各記憶部39,25が備える分析機能等を用いることにより行われる。
【0050】
(4−2)更新操作準備処理の要否判定
次に同時修正データ操作処理部38では、ステップS16において、上記処理時間の見積結果から、指定された実行予約時刻に処理を開始した場合に予め定められたシステム要件を満たす遅延時間以内に処理を完了できるか否かが判定される。具体的には、見積計算により得られた所要時間が、システムで許容された遅延時間をもとに設定されたしきい値と比較され、所要時間がしきい値以内であるか否かが判定される。そして、更新操作の所要時間が許容された遅延時間を超えると判定されるとステップS17に移行し、先に述べたデータ予約操作設定処理部34からの実行要求の通知を待たずに、上記関係者データに対する更新操作の準備処理が開始される。
【0051】
また、提供側サーバDSV1〜DSVmの同時修正データ操作処理部24においても、ステップS20により、上記処理時間の見積結果から、指定された実行予約時刻に処理を開始した場合に予め定められたシステム要件を満たす遅延時間以内に処理を完了できるか否かが判定される。そして、更新操作の所要時間が許容された遅延時間を超えると判定されるとステップS21に移行し、先に述べたデータ予約操作設定処理部34からの実行要求の通知を待たずに、上記関係者データに対する更新操作の準備処理が開始される。
【0052】
(4−3)更新操作準備処理の具体例
更新操作の準備処理の具体的な手法としては、以下に示す第1の手法と第2の手法がある。
<第1の手法>
図4は、第1の手法の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
すなわち、データ予約操作設定部36から事前に予約操作設定データにより通知された実行予約時刻までの期間に、先ずステップS31によりアクセス制御ルールデータ記憶部25及び関係者データ記憶部39中において操作対象のデータ項目が検索される。そして、この検索により見つかった操作対象のデータ項目の出現位置、つまり当該データのテーブル上のインデックス等と、「予約番号」及び「予約子番号」とのマッピング情報が生成され、この生成されたマッピングデータが一時的に保存される(ステップS32)。
【0053】
なお、できる限り短い処理時間で後述する更新操作を実施できるように、例えば記憶部25,39中に位置指定のためのラベルやインデックスを追加するようにしておいてもよい。また、この更新操作の準備処理は、仲介サーバMSV及び提供側サーバDSV1〜DSVmにおいて実行中の主たる処理の応答時間にできる限り影響を及ぼさないように、リソースの空き時間を利用して短いトランザクションで実施される。
【0054】
また、上記出現位置のマッピングデータを一時保存してから、データ予約操作設定部36から実行要求が到来するまでの間に、当該同時修正データに対する操作対象データ項目が含まれる書込要求が発生するか否かがステップS33により監視される。そして、アクセス制御ルールデータ記憶部25及び関係者データ記憶部39中に新たに該当操作対象データ項目が追加或いは削除された場合には、ステップS34において上記一時記憶されているマッピングデータが当該追加又は削除に応じて更新される。
【0055】
<第2の手法>
図5は、第2の手法の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
すなわち、データ予約操作設定部36から事前に予約操作設定データにより通知された実行予約時刻までの期間に、先ずステップS41によりアクセス制御ルールデータ記憶部25及び関係者データ記憶部39中の操作対象データ項目が含まれるカラムもしくはテーブル全体のコピーが差し替えデータとして作成される。そして、この作成された差し替えデータ中の、予約操作設定データで指定された修正箇所がステップS42により修正される。なお、これらの準備処理は、仲介サーバMSV及び提供側サーバDSV1〜DSVmにおいて実行中の主たる処理の応答時間にできる限り影響を及ぼさないように、リソースの空き時間を利用して短いトランザクションで実施される。
【0056】
また、上記差し替えデータを作成してから、データ予約操作設定部36から実行要求が到来するまでの間に、当該同時修正データに対する操作対象データ項目が含まれる書込要求が発生するか否かがステップS43により監視される。そして、アクセス制御ルールデータ記憶部25及び関係者データ記憶部39中に新たに該当操作対象データ項目が追加或いは削除された場合には、ステップS44において上記一時記憶されているマッピングデータが当該追加又は削除に応じて更新される。
【0057】
(5)同時修正データに対する更新操作
現在時刻が操作実行予約時刻になり、データ予約操作設定処理部34から仲介サーバMSV内の同時修正データ操作処理部38に実行要求が通知されたとする。そうすると同時修正データ操作処理部38では、ステップS25において、先に通知された予約操作設定データに基づいて、関係者データ記憶部39に記憶されている関係者データに対し更新操作が行われる。
【0058】
また、提供側サーバDSV1〜DSVm内の同時修正データ操作処理部24においても、ステップS26により上記実行要求の到来が検出されると、ステップS27において、先に通知された予約操作設定データに基づいて、アクセス制御ルールデータ記憶部25に記憶されているアクセス制御ルールデータに対し更新操作が行われる。
【0059】
上記更新操作は、予約操作設定データの当該予約番号が付与された設定項目により指定される。同時修正データ操作処理部24,38で更新操作に用いる設定項目は、「同時修正データ」、「操作対象データ項目」、「操作後の値(同時修正データ)」である。
【0060】
すなわち、「同時修正データ」で指定されたデータテーブルが参照され、「操作対象データ項目」で指定されたデータ項目が更新される。要求操作に応じた各データ項目の修正内容は、データ予約操作設定処理部34により予約操作設定データが生成される際に、当該予約操作設定データに「操作後の値(同時修正データ)」としてセットされている。このため、同時修正データ操作処理部24,38は、指定されたデータ項目を「操作後の値(同時修正データ)」に上書きすればよい。
【0061】
例えば、図9に例示した予約操作設定データの場合には、この予約操作設定データの記述に従い、アクセス制御ルールデータ記憶部25に記憶されているアクセス制御ルールデータ及び関係者データ記憶部39に記憶されている関係者データにそれぞれ含まれる操作対象のデータ項目「組織ID」、「組織名称」及び「組織説明」の操作前のデータが、マスタ情報と同様にそれぞれ「O0028,O0029」、「A病院第一外科」と「A病院第二外科」、「2010-09に外科から分離」に変更される。
【0062】
また、図10に例示した予約操作設定データの場合、つまり「削除」の場合には、この予約操作設定データの記述に従い、アクセス制御ルールデータ及び関係者データにそれぞれ含まれる操作対象のデータ項目「組織ID」が、「O0020」から「O0030」に書き換えられる。なお、A病院の情報がB病院に引き継がれない完全廃止の場合には、自動的にNULLが記載される。
【0063】
さらに、図11に例示した予約操作設定データの場合、つまり「追加」の場合には、操作前にはデータ項目は存在しないため、アクセス制御ルールデータ及び関係者データには、自動的にNULLが記載される。
【0064】
なお、先に(4−3)で述べた更新操作の準備処理において、マッピングデータが生成されている場合には、このマッピングデータをもとに更新位置が特定され、データ更新が実行される。また、同様に差し替えデータが生成されている場合には、「操作後の値(同時修正データ)」に対する更新処理は既に差し替えデータ中で行われているので、関係者データ及びアクセス制御ルールデータのテーブルもしくはカラムがそのまま差し替えデータに置き換えられる。
【0065】
以上詳述したように第1の実施形態では、管理者の操作に応じて予約操作設定データを生成し保存し、現在時刻がこの保存された予約操作設定データに含まれる時刻指定情報により指定される実行予約時刻になると、マスタ情報を上記予約操作設定データに応じて更新する。また、現在時刻が上記実行予約時刻になる前に、上記保存された予約操作設定データに基づいて同時修正データの更新操作の所要時間を見積もり、この見積もった所要時間がシステムの許容遅延時間以内であるか否かを判定する。そして、上記更新操作の所要時間が許容遅延時間以内であれば、現在時刻が上記実行予約時刻になる前に上記同時修正データの更新操作の準備を開始して、現在時刻が上記実行予約時刻になった時点で上記同時修正データの更新操作を実行する。これに対し、上記更新操作の所要時間が遅延時間を超える場合には、現在時刻が上記実行予約時刻になった時点で上記同時修正データの更新操作を実行するようにしている。
【0066】
したがって、予約操作設定データに基づいて、マスタ情報に対する更新操作が行われると、これに同期して関連性を有する同時修正データに対しても更新操作が行われる。すなわち、マスタ情報が更新されると、それに伴い同時修正データも自動的に更新操作される。このため、例えば本来アクセス権限を持っているはずの利用者がデータにアクセスできなくなったり、逆にアクセス権限のない利用者がデータにアクセスできてしまうといった不具合の発生は確実に防止される。
【0067】
しかも、現在時刻が実行予約時刻になる前に同時修正データの更新操作所要時間の見積もりが計算され、この見積もられた更新操作所要時間がシステムの許容遅延時間を超える場合には、現在時刻が上記実行予約時刻になる前に上記同時修正データに対する更新操作の準備が開始され、上記実行予約時刻になった時点で上記準備結果を用いて上記同時修正データの更新操作が実行される。このため、同時修正データに対する更新操作に多くの時間を要する場合でも、システムを一時停止させたりシステム本来の処理を遅延させることなく第2の管理情報を更新操作することが可能となる。
【0068】
また、現在時刻が前記実行予約時刻になる前に、予約操作設定データを仲介サーバMSVから提供側サーバDSV1〜DSVmへも転送するようにしている。このため、同時修正データが仲介サーバMSVばかりでなく提供側サーバDSV1〜DSVmにも存在する場合でも、それぞれの同時修正データ操作処理部24,38において更新操作の準備処理を実行することができる。
【0069】
[第2の実施形態]
図12は、この発明の第2の実施形態に係る情報管理システムの機能構成を示すブロック図である。なお、同図において前記図1と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0070】
仲介サーバMSVには、図1に示した機能に加え、変更履歴提供処理部41と、リカバリ処理部42がさらに設けられている。
変更履歴提供処理部41は、マスタ情報と、アクセス制御ルールデータや関係者データなどの同時修正データの変更履歴を提供するもので、以下の処理機能を有する。
(1) 先ずマスタ情報については、予約操作設定データの「操作後の値(マスタ情報)」が指定されたデータ項目である最新の行を抽出して、この抽出した行の「操作前の値」を更新履歴に追加し、以後は「操作前の値」に記載された値を指定されたデータ項目として、抽出した行の「操作前の値」がNULLになるまで、上記最新の行の抽出および抽出した行の更新履歴への追加処理を繰り返す。
(2) 次に同時修正データについては、予約操作設定データの「操作後の値(同時修正データ)」が指定されたデータ項目である最新の行を抽出して、この抽出した行の「操作前の値」を更新履歴に追加し、以後「操作前の値」に記載された値を指定されたデータ項目として、抽出した行の「操作前の値」がNULLになるまで、上記最新の行の抽出および抽出した行の更新履歴への追加を繰り返す。
【0071】
リカバリ処理部42は、マスタ情報および同時修正データ本体と、予約操作設定データを用いて、指定された予約番号や時刻の状態まで、マスタ情報および同時修正データの値を戻すもので、以下の処理機能を有する。
(1) 指定された予約操作又は予約操作設定データの「実行予約時刻」が指定された時刻より前になるまで、上記予約操作設定データに蓄積された操作設定情報のうち、新しい操作設定情報から順に、「操作対象データ」に記述されたマスタ情報の「操作対象データ項目」に記述されたデータ項目を「操作前の値」に変更する処理。
(2)同時修正データ中の「操作対象データ項目」を抽出し、この抽出した全ての値を「操作前の値」に変更する処理。
【0072】
次に、上記変更履歴提供処理及びリカバリ処理の動作を説明する。図13及び図14はそれぞれ変更履歴提供処理及びリカバリ処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
(1)変更履歴提供処理
ステップS51において、運用管理部33は変更履歴要求の入力を監視している。この状態で、運用者が自己の端末により変更履歴要求を入力すると、この変更履歴要求は運用管理部33により受信されて変更履歴提供処理部41に渡される(ステップS52)。上記変更履歴要求を受け取ると変更履歴提供処理部41は、ステップS53において変更履歴ファイルを新規作成し、指定された組織データの現在の値(組織ID、組織名称、組織説明)を上記この変更履歴ファイルに格納する。
【0073】
次に変更履歴提供処理部41は、ステップS54において、予約操作設定データ記憶部35に記憶された予約操作設定データの「操作後の値(マスタ情報)」の中から現在の組織IDが含まれる行を抽出し、さらにこの抽出された行の中から予約番号が最新の行を抽出する(ステップS55)。続いてステップS56に6おいて、上記ステップS55により抽出された行の「操作前の値」と、該当行と同一の予約番号でかつ「操作対象データ項目」が組織名称、組織説明の行の「操作前の値」を、上記更履歴ファイルに追加する。そして、上記ステップS55により抽出された行の「操作前の値」がNULLであるか否かをステップS57により判定する。この判定の結果、「操作前の値」がNULL以外の場合には、ステップS58において、上記ステップS54により抽出された「現在の組織ID」を「操作前の値」に記載された組織IDに読み替えたのち、上記ステップS54に戻って現在の組織IDが含まれる行の抽出処理を実行する。
【0074】
以後、変更履歴提供処理部41は上記ステップS54からステップS58の処理を、「操作前の値」がNULLに、つまりこの時に新規追加されたことを表す値になるまで繰り返す。かくして、変更履歴ファイルには現在の組織データを起点とした変更履歴が格納される。この変更履歴ファイルはステップS59により変更利履歴提供処理部41内の記憶部に保存された後、ステップS60により運用管理部33に返却される。そして、この変更履歴ファイルは運用管理部33から運用者の端末へ送出される。
なお、操作対象データに関する変更履歴要求の場合には、「操作後の値(マスタ情報)」を「組織後の値(同時修正データ)」に置き換えて上記ステップS51からステップS60による処理が実行される。
【0075】
(2)リカバリ処理
リカバリ処理には、予約番号を利用した処理と、予約時刻を利用した処理がある。図14及び図15はそれぞれ予約番号を利用した処理及び予約時刻を利用した処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0076】
(2−1)予約番号を利用した場合
リカバリ処理部42は、ステップS71により予約操作設定データ記憶部35から予約操作設定データを読み出し、この読み出された予約操作設定データを「予約番号」の降順にソートする。
そして、このソートされた予約操作設定データの上から順に、先ずステップS72において、該当行の「操作対象データ」に記述されたマスタ情報の「操作対象データ項目」に記述されたデータ項目を、「操作後の値(マスタ情報)」であることを確認の上、「操作前の値」に変更する。次にステップS73において、該当行の「同時修正データ」に記述された同時修正データ中の「操作対象データ項目」を抽出し、この抽出された全ての値を、「操作後の値(同時修正データ)」であることを確認の上「操作前の値」に変更する。そして、「予約番号」が予め運用者から指定された予約番号と一致したか否かをステップS74で判定し、予約番号が指定番号と一致するまで上記ステップS72及びステップS73の処理を繰り返し実行し、予約番号が指定番号と一致すると処理を終了する。
【0077】
(2−2)予約時刻を利用した場合
リカバリ処理部42は、先ずステップS81により予約操作設定データ記憶部35から予約操作設定データを読み出し、この読み出された予約操作設定データを「予約時刻」の降順にソートする。
そして、このソートされた予約操作設定データの上から順に、先ずステップS82において、該当行の「操作対象データ」に記述されたマスタ情報の「操作対象データ項目」に記述されたデータ項目を、「操作後の値(マスタ情報)」であることを確認の上、「操作前の値」に変更する。次にステップS83において、該当行の「同時修正データ」に記述された同時修正データ中の「操作対象データ項目」を抽出し、この抽出された全ての値を、「操作後の値(同時修正データ)」であることを確認の上「操作前の値」に変更する。そして、「予約時刻」が予め運用者から指定された予約時刻と一致したか否かをステップS84で判定し、予約時刻が指定された時刻と一致するまで上記ステップS82及びステップS83の処理を繰り返し実行する。そして、予約時刻が指定番号と一致すると処理を終了する。
【0078】
以上述べたように第2の実施形態によれば、予約操作設定データを利用して、マスタ情報及び同時修正データの操作対象となるデータ項目についてその操作前後の遷移関係を表す変更履歴ファイルが作成され、この作成された変更履歴ファイルが運用者に提供される。このため、操作の前後で不整合が発生した場合でも、運用者はこの変更履歴ファイルを参照して適切な対策を講じることが可能となる。
【0079】
また、同じく予約操作設定データを利用して、マスタ情報の操作対象データ項目に記述された操作後のデータと、同時修正データ中の操作対象データ項目に記載された操作後のデータが、操作前のデータに変更される。このため、操作の前後で不整合が発生した場合でも、マスタ情報と、それと関係するアクセス制御ルールデータ及び関係者データを更新操作前の状態に戻すことができる。
【0080】
[その他の実施形態]
前記第1及び第2の実施形態では、同時修正データがアクセス制御ルールデータ及び関係者データの場合を例にとって説明したが、ログイン中の利用者の認証トークン等を同時修正データに含めるようにしてもよい。このようにすると、マスタ情報の更新操作と同時に、仲介サーバMSVで管理する認証トークンリストに対し更新操作を実行することができる。また、予約操作設定データを生成する際に、予約操作時刻を「即時」に設定してもよい。このようにすると、同期が必要のない他のデータ(通常データ)についてもその変更履歴を作成し提供したり、またリカバリ処理を利用ですることが可能となる。
【0081】
また、前記各実施形態ではデータ予約操作設定処理部34及び予約操作設定データ記憶部35を仲介サーバMSVには位置した場合を例にとって説明したが、提供側サーバDSV1〜DSVmのうちの任意のサーバに配置してもよく、さらにはプロバイダサーバ等のその他の情報処理装置に配置するようにしてもよい。
さらに、前記各実施形態では同時修正データが複数のサーバに分散配置されている場合を例にとって説明したが、マスタ情報とすべての同時修正データが1台のサーバに記憶されている場合にも、この発明は適用可能である。
【0082】
その他、各サーバ装置の種類と構成、予約操作設定データの生成処理、マスタ情報に対する更新操作処理、同時修正データの更新操作処理、同時修正データの更新操作のための準備処理の各処理手順と処理内容についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0083】
要するにこの発明は、上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0084】
RSV1〜RSVn…要求側サーバ、DSV1〜DSVm…提供側サーバ、MSV…仲介サーバ、11…データ要求受付け処理部、12,21,30…データ送受信部、22…データ提供処理部、23…アクセス対象データ記憶部、24,38…同時修正データ操作処理部、25…アクセス制御ルールデータ記憶部、31…認証部、33…運用管理部、34…データ予約操作設定処理部、35…予約操作データ記憶部、36…マスタ情報予約操作処理部、37…マスタ情報記憶部、39…関係者データ記憶部、41…変更履歴提供処理部、42…リカバリ処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタデータを含む第1の管理情報と、この第1の管理情報に含まれる一部のデータを含む第2の管理情報とを記憶し、これらの第1及び第2の管理情報に基づいてそれぞれ異なる処理を実行する情報管理システムにおいて、
管理者の予約操作に応じて、前記第1の管理情報に対する更新操作の実行予約時刻を指定する時刻指定情報と、前記第1の管理情報の更新操作前後のデータの遷移情報を含む予約操作設定データを生成して保存する第1の手段と、
現在時刻が、前記保存された予約操作設定データに含まれる時刻指定情報により指定される実行予約時刻になった後に、前記第1の管理情報を前記予約操作設定データに含まれる遷移情報をもとに更新操作する第2の手段と、
現在時刻が前記実行予約時刻になる前に、前記保存された予約操作設定データに含まれる遷移情報をもとに前記第2の管理情報の更新操作の所要時間を予測し、この予測された所要時間が予め設定されたしきい値以内であるか否かを判定する第3の手段と、
前記更新操作の所要時間がしきい値を超えると判定された場合に、現在時刻が前記実行予約時刻になる前に前記予約操作設定データに含まれる遷移情報をもとに前記第2の管理情報を更新操作するための準備処理を実行し、現在時刻が前記実行予約時刻になった後に前記準備処理により生成された準備情報をもとに前記第2の管理情報を更新操作する第4の手段と、
前記更新操作の所要時間がしきい値以内と判定された場合には、現在時刻が前記実行予約時刻になった後に、前記予約操作設定データに含まれる遷移情報をもとに前記第2の管理情報を更新操作する第5の手段と
を具備することを特徴とする情報管理システム。
【請求項2】
前記第1の手段は、
前記入力操作により指定された更新操作の種類が変更の場合に、前記第1の管理情報における更新操作前及び更新操作後の各データ値としてそれぞれ前記予約操作により指定された第1の管理情報中の操作対象データ項目の現在値及び前記予約操作により入力された新たな値を保存し、かつ前記第2の管理情報における更新操作後のデータ値として前記第1の管理情報の更新操作後のデータ値を複写して保存する手段と、
前記予約操作により指定された更新操作の種類が削除の場合に、前記第1の管理情報における更新操作前及び更新操作後の各データ値としてそれぞれ前記予約操作により指定された第1の管理情報中の操作対象データ項目の現在値及びNULLを保存し、かつ前記第2の管理情報における更新操作後のデータ値として前記予約操作により入力された新たな値を保存する手段と、
前記予約操作により指定された更新操作の種類が追加の場合に、前記第1の管理情報における更新操作前データ値及び更新操作後の各データ値としてそれぞれNULL及び前記予約操作により入力された新たな値を保存し、かつ前記第2の管理情報における更新操作後のデータ値としてNULLを保存する手段と
のうち少なくとも一つを備えることを特徴とする請求項1記載の情報管理システム。
【請求項3】
前記第2の管理情報が複数の情報処理装置に分散配置されている場合に、前記保存された予約操作設定データを、現在時刻が前記実行予約時刻になる前に前記複数の情報処理装置へそれぞれ転送する第6の手段を、さらに備え、
前記第3の手段は、前記複数の情報処理装置の各々において、当該情報処理装置に保存されている第2の管理情報について前記転送された予約操作設定データをもとにその更新操作の所要時間を予測し、この予測された所要時間が予め設定されたしきい値以内であるか否かを判定することを特徴とする請求項1又は2記載の情報管理システム。
【請求項4】
前記第4の手段は、
前記第2の管理情報中から更新操作対象データ項目を検索し、この検索された更新操作対象データ項目の前記第2の管理情報中における出現位置を示す情報と、前記予約操作設定データ中において前記更新操作対象データ項目に付与された識別情報とを関連付けたマッピング情報を生成し保存する手段と、
前記マッピング情報を保存してから現在時刻が前記実行予約時刻になるまでの期間に、前記第2の管理情報中の更新操作対象データ項目に対するデータ書込処理が行われた場合に、このデータ書込処理後のデータの出現位置が前記マッピング情報に含まれるように前記保存されたマッピング情報を更新する手段と、
前記生成又は更新されたマッピング情報に従い、前記第2の管理情報を前記予約操作設定データに含まれる更新操作前のデータ値から更新操作後のデータ値に更新する処理を行う手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の情報管理システム。
【請求項5】
前記第4の手段は、
前記第2の管理情報中の更新操作対象データ項目が含まれるカラムもしくはテーブル全体の複製を差し替えデータとして作成し、この作成された差し替えデータ中の前記予約操作設定データで指定される修正箇所を修正する手段と、
前記差し替えデータが作成されてから前記実行予約時刻になるまでの期間に、前記第2の管理情報中の更新操作対象データ項目に対するデータ書込処理が行われた場合に、前記差し替えデータ中の該当する更新操作対象データ項目を更新する手段と、
前記生成又は更新された差し替えデータに従い、前記第2の管理情報を前記予約操作設定データに含まれる更新操作前のデータ値から更新操作後のデータ値に更新する処理を行う手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の情報管理システム。
【請求項6】
前記予約操作設定データから、現在のデータ値を基点として対応する更新操作前のデータ値を新しい順に抽出し、この抽出されたデータ値により変更履歴ファイルを作成する手段を、さらに具備することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の情報管理システム。
【請求項7】
前記予約操作設定データに蓄積された更新操作前及び更新操作後のデータ値のうち、予め指定された数又は期間のデータ値を読み出し、この読み出されたデータ値をもとに、前記第1及び第2の管理情報に含まれる該当する更新操作後のデータ値を更新操作前のデータ値に復旧させるリカバリ手段を、さらに具備することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の情報管理システム。
【請求項8】
マスタデータを含む第1の管理情報と、この第1の管理情報に含まれる一部のデータを含む第2の管理情報とを記憶し、これらの第1及び第2の管理情報に基づいてそれぞれ異なる処理を実行するシステムで用いられる情報更新操作方法であって、
管理者の予約操作に応じて、前記第1の管理情報に対する更新操作の実行予約時刻を指定する時刻指定情報と、前記第1の管理情報の更新操作前後のデータの遷移情報を含む予約操作設定データを生成して保存する第1の過程と、
現在時刻が、前記保存された予約操作設定データに含まれる時刻指定情報により指定される実行予約時刻になった後に、前記第1の管理情報を前記予約操作設定データに含まれる遷移情報をもとに更新操作する第2の過程と、
現在時刻が前記実行予約時刻になる前に、前記保存された予約操作設定データに含まれる遷移情報をもとに前記第2の管理情報の更新操作の所要時間を予測し、この予測された所要時間が予め設定されたしきい値以内であるか否かを判定する第3の過程と、
前記更新操作の所要時間がしきい値を超えると判定された場合に、現在時刻が前記実行予約時刻になる前に前記予約操作設定データに含まれる遷移情報をもとに前記第2の管理情報を更新操作するための準備処理を実行し、現在時刻が前記実行予約時刻になった後に前記準備処理により生成された準備情報をもとに前記第2の管理情報を更新操作する第4の過程と、
前記更新操作の所要時間がしきい値以内と判定された場合には、現在時刻が前記実行予約時刻になった後に、前記予約操作設定データに含まれる遷移情報をもとに前記第2の管理情報を更新操作する第5の過程と
を具備することを特徴とする情報更新操作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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