説明

情報記憶装置及びシステム情報の書き換え制御方法

【課題】システム情報の書き換えに関する信頼性を確保しつつ、システム情報の記憶媒体への書き込み時間を短縮する情報記憶装置を提供する。
【解決手段】磁気ディスク装置1が備えるMPU18が、磁気ディスク25上において欠陥管理を実行する領域に所定のシステム情報を書き込む。また、MPU18が、上記所定のシステム情報が書き込まれる領域において欠陥セクタが検出された場合に、欠陥セクタへのアドレス情報の割り当てをせずに、欠陥セクタの次のセクタから順次アドレス情報を割り当てるセクタスリップ処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記憶装置及びシステム情報の書き換え制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ディスク装置において、システム情報とは、ユーザによって記録されたデータではなく、ディスク装置自身を制御するためのデータ、及び、ユーザ環境での使用状況を記録するデータである。システム情報は、例えば、ディスク装置のPCA(Printed Circuit Assembly:プリント回路板)上の各種回路に設定する値に関するデータ、記憶媒体であるディスク上のデフェクト位置を示すデータ、ユーザ環境での電源ON/OFF回数などのログ情報や、様々な装置制御用/装置特性調査用のデータである。システム情報は、ユーザによって記録されたデータとは区別されて、ディスクのシステム領域に書き込まれている。
【0003】
なお、ユーザ領域において後発欠陥セクタが検出された場合に、後発欠陥セクタを飛ばして、論理アドレスの割り当てを後方にずらす情報記録再生装置について提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−228070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者の検討によれば、一般に、ディスク装置が備えるディスクのシステム領域には、一つのシステム情報が多重書き込みされている。多重書き込みとは、ディスク装置が、1つのシステム情報をシステム領域のセクタに書き込むとともに、該システム情報の複数個のコピーを作成し、作成した各々のコピーを異なるセクタに書き込むことをいう。ディスク装置が、一つのシステム情報をシステム領域に多重書き込みするようにしているのは、システム情報の書き換えに関する信頼性を確保するためである。
しかし、ディスク装置がシステム情報をシステム領域に多重書き込みすると、システム情報のディスクへの書き込み時間が長くなる。その結果、例えば、ディスク装置の上位の装置に対する、ディスク装置からの応答が遅れるといった問題が生じる。
【0006】
本発明は、システム情報の書き換えに関する信頼性を確保しつつ、システム情報の記憶媒体への書き込み時間を短縮する情報記憶装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願で開示する情報記憶装置は、記憶媒体へのシステム情報の書き換え制御を行う情報記憶装置である。上記情報記憶装置は、前記記憶媒体上において欠陥管理を実行する領域に所定のシステム情報を書き込む制御手段を備える。制御手段が、前記所定のシステム情報が書き込まれる領域において欠陥セクタが検出された場合に、該欠陥セクタへのアドレス情報の割り当てをせずに、該欠陥セクタの次のセクタから順次アドレス情報を割り当てるセクタスリップ処理を実行する。
【発明の効果】
【0008】
開示の情報記憶装置によれば、所定のシステム情報が、多重書き込み領域ではなく、デフェクト管理が実行される領域に書き込まれる。また、上記システム情報の書き込み処理において書き込みエラーが発生した場合には、セクタスリップ処理が実行される。従って、本情報記憶装置によれば、システム情報の書き換えに関する信頼性を確保しつつ、システム情報の記憶媒体への書き込み時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の情報記憶装置の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態の情報記憶装置の構成例を示す図である。
【図3】新規システム領域を説明する図である。
【図4】欠陥セクタ管理テーブルの例を示す図である。
【図5】デフェクト管理を実行する領域へのLBAの割り当て例を示す図である。
【図6】デフェクト管理を実行する領域のLBAの管理を説明する図である。
【図7】新規システム領域へのシステム情報の書き込み例を説明する図である。
【図8】開示の情報記憶装置が実行するセクタスリップ処理を説明する図である。
【図9】セクタスリップ処理後の欠陥セクタ管理テーブルを示す図である。
【図10】システム情報の書き換え処理フローの例を示す図である。
【図11】システム情報の書き込み処理の例を説明する図である。
【図12】システム情報の書き込み処理の他の例を説明する図である。
【図13】セクタスリップ処理の詳細を説明する図である。
【図14】本発明者が検討した、ディスク内部のデータの配置状況を示す図である。
【図15】システム情報の多重書き込みの例を示す図である。
【図16】本発明者が検討した、システム情報のディスクへの書き込み時間が長くなることの問題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図14は、本発明者が検討した、ディスク内部のデータの配置状況を示す図である。
図14は、ディスク内部の領域が、ユーザによって記録されたデータが記憶されるユーザ領域と、システム情報が記憶されるシステム領域とに分かれていることを示している。
【0011】
顧客環境でディスク装置が使用されている間、システム情報のいくつかはメモリ上で更新されている。このメモリ上で更新されている情報の一つは、例えばディスク装置の使用状況を示すログデータであり、このログデータは、適宜更新され、ディスクのシステム領域に保存される。このログデータは、障害等が発生した場合に、その原因を調べるためのデータとして利用することなどにも使われるほか、ディスク装置内の統計情報やエラーの程度等の情報を取得するコマンドであるSMARTコマンドのデータを生成するための基本データとしても用いられている。例えば、リードセクタ総数、ライトセクタ総数、電源ON/OFF回数、エラーリカバリ記録などが、システム領域に記録されている。上記ログデータをもとにSMARTコマンドで送信するデータが生成される。
【0012】
また、システム情報のうち、リライト情報も、ユーザ環境で更新される情報である。リライト情報とは、ユーザ領域において同じ箇所への書き込みが何回繰り返されたかを管理する情報と、書き込みが繰り返された箇所の隣接トラックを示す情報である。
近年のディスク装置では、トラック間隔が狭く、かつ、トラック幅も細くなってきており、書き込みしたトラックの隣のトラックが書き込み動作の影響を受けやすくなってきている。例えば、あるトラックに繰り返し10万回程度の書き込みを行うと、その期間何もデータ更新されていない隣のトラックではデータの読み出しができなくなる可能性が高い。これは、書き込み時の磁束の影響を隣のトラックが受けて、元々隣のトラックに書き込んであったデータが劣化していくためである。従って、ディスク装置には、一般に、読み出しエラーが起きないようにするために、書き込みが集中しているような箇所を記録する仕組みが備わっている。ディスク装置がトラックへの書き込みの集中を検出すると、ディスク装置は、書き込みが集中したトラックの隣接トラックのデータの書き直しを自動的に行う。また、データの書き直し時には、データの読み出しと、その同じ場所への再書き込みが行われるが、このときのデータの一時保管場所として、システム領域が用いられている。リライト情報をディスクのシステム領域に記録することで、ディスク装置の電源OFF/ONをまたいでも、リライト情報を更新し続けることができる。
【0013】
図15は、システム情報の多重書き込みの例を示す図である。
図15に示すように、システム領域には、一つのシステム情報が多重書き込みされている。システム情報が多重書き込みされている領域を、多重書き込み領域という。図15に示す例では、ディスク装置が備える一つのヘッダによって、例えばディスク装置のログデータを含むシステム情報Aと、システム情報Aのコピー1からコピー27までの27個のコピーとが、多重書き込み領域に書き込まれている。システム情報が多重書き込みされている理由は以下のとおりである。
【0014】
第一に、システム情報には、デフェクトの位置そのものを管理する情報もあることによる。つまり、デフェクトの位置を管理する情報が記録される領域にも欠陥がある可能性があるので、この情報を多重に書き込む必要がある。また、ユーザ領域でセクタの交代処理が発生した場合には、どのLBA(Logical Block Address:論理ブロックアドレス)が新たにどの位置のセクタに割り当てられるかを管理データとして管理する必要がある。セクタの交代処理とは、欠陥セクタが発生した場合に、この欠陥セクタの代わりに、交代セクタに対してLBAを割り当てる処理である。交代セクタとは、欠陥セクタに対応付けて予め定められたセクタである。
しかし、ディスク装置は、管理データ自身を、この管理データによって管理される領域自体に配置することができないので、結果的にシステム領域には欠陥回避処理が適用できない。従って、ディスク装置は、システム領域については、セクタの交代処理ではなく、多重書き込みによって信頼性を保証する。
【0015】
第二に、一般的に、工場でのディスク装置の検査は、ディスク装置内に組み込まれたプログラムで装置自身が自分自身を検査しており、ディスク(媒体)の検査のためのデータ及びプログラムは、予めディスク上のシステム領域に書き込まれている。そのため、システム領域については、自分自身を検査するプログラムの実施以前に、工場設備にて常温での読み書き試験を行っている。従って、システム領域の検査は比較的緩い。
上記のことから、ユーザ領域とシステム領域とは工場での品質確認程度が異なるという状況にある。そこで、システム領域の信頼性を向上させるために、記録密度を下げて記録するようにしている。記録密度を下げることにより、データ読み出し時のエラーが起きないようにする効果がある。また、システム領域については、トラック間隔もユーザ領域と比較して大きくしてあり、隣のトラックの書き込み処理の影響を受けにくいようにしてある。そのため、システム領域においては、多重にデータを書き込みし、読み出し時には、多重に書き込みしたセクタのデータのいずれかが読めるという手段で信頼性を高める方式が採用されている。上述したように、主に二つの理由からシステム情報に関しては多重書き込み処理を行って記録する方法が採用されている。
【0016】
図16は、本発明者が検討した、システム情報のディスクへの書き込み時間が長くなることの問題を説明する図である。
本発明者の検討によれば、近年のディスク装置の性能向上に伴い、システム情報のディスクへの書き込み時間が、ディスク装置の上位装置からのアクセス時間に影響するようになってきた。特に、ノートPC(Personal Computer )のスタンバイ(standby) 時間への影響が顕著である。ディスク装置が、モータ停止指示のタイミングなどで、メモリ上で更新していたシステム情報をディスク装置が備えるディスクのシステム領域へ記録する処理を行う(図16の#1、#2)。そして、ディスク装置が、システム情報をシステム領域に記録した後、モータを停止し、処理を完了する(図16の#3、#4)。
【0017】
上記システム情報のシステム領域への記録時間が長くなると、ディスク装置の上位装置側にとって、モータの停止時間が長くなる。最近のノートPCでは、スタンバイ/復帰(standby /resume)時間の長短がPCの品質を見る上で重要な要素となっており、モータの停止時間の短縮が求められている。
【0018】
本発明者の検討によれば、一般に、システム情報が記録されているシステム領域は、多重に書き込みするように構成されている。例えば、ディスク装置が、ディスク装置のログデータを各ヘッド毎に4多重に書き込みしながら、各ヘッドに書き込みしている。従って、例えば4本のヘッドを備えるディスク装置では、16多重の書き込み動作となってしまうので、システム情報の書き込みについて16周〜32周程度の書き込み時間を要してしまう。その結果、ディスク装置の上位装置から見ると、モータ停止時の応答が大幅に遅れるという問題が生ずる。
【0019】
以下に説明する、開示の情報記憶装置によれば、システム情報の書き換えに関する信頼性を確保しつつ、システム情報の記憶媒体への書き込み時間を短縮することができる。
【0020】
図1及び図2は、開示の情報記憶装置の、本実施形態における構成例を示す図である。
開示の情報記憶装置は、例えば、磁気ディスク装置、光ディスク装置、光磁気ディスク装置である。開示の情報記憶装置として、磁気ディスク装置1を例にとって説明する。
磁気ディスク装置1は、図2に示すように、上位装置であるホストコンピュータ2とホストIF(InterFace )27を介して接続されている。磁気ディスク装置1は、ホストコンピュータ2からホストIF27を介して要求された処理を実行する。また、磁気ディスク装置1は、情報が記憶される記憶媒体である磁気ディスク25上のシステム情報の書き換え制御を行う。
【0021】
図1に示すように、磁気ディスク装置1は、ホストIF制御部11、バッファ制御部12、バッファメモリ13、不揮発性メモリ14、フォーマット制御部15、リードチャネル16、ヘッドIC17、MPU(Micro Processing Unit )18、メモリ19、プログラムメモリ20、サーボ制御部21、VCM(Voice Coil Motor)22、SPM(Spindle Motor )23、ヘッド24、バス26を備える。
ホストIF制御部11は、ホストIF27を介したホストコンピュータ2との通信を媒介する。具体的には、ホストIF制御部11は、ホストコンピュータ2から磁気ディスク25へのライトデータのライト要求を受信し、ライト要求をMPU18に送信する。また、ホストIF制御部11は、バッファ制御部12に対してライトデータを送信する。また、ホストIF制御部11は、ホストコンピュータ2から磁気ディスク25からのデータのリード要求を受けて、リード要求をMPU18に送信する。また、ホストIF制御部11は、ヘッド24によって読み出されたリードデータをホストコンピュータ2に返す。具体的には、ホストIF制御部11は、バッファ制御部12から送信されたリードデータをホストコンピュータ2に返す。
【0022】
バッファ制御部12は、バッファメモリ13からのライトデータ、リードデータの書き込み処理、バッファメモリ13からのライトデータ、リードデータの読み出し処理を制御する。具体的には、バッファ制御部12は、ホストIF制御部11からライトデータを受けて、ライトデータをバッファメモリ13に一時的に記憶する。また、バッファ制御部12は、所定のタイミングで、バッファメモリ13からライトデータを読み出して、フォーマット制御部15に送信する。また、バッファ制御部12は、フォーマット制御部15からリードデータを受けて、リードデータをバッファメモリ13に一時的に記憶する。また、バッファ制御部12は、所定のタイミングで、バッファメモリからリードデータを読み出して、リードデータをホストIF制御部11に送信する。
バッファメモリ13には、ライトデータ、リードデータが一時的に記憶される。不揮発性メモリ14には、バッファ制御部12の処理に必要なプログラムが予め記憶されている。
【0023】
フォーマット制御部15は、ライトデータを磁気ディスク25への書き込み用のフォーマットにして、バッファ制御部12に送信する。また、フォーマット制御部15は、リードチャネル16から送信されるリードデータを受信し、このリードデータをホストコンピュータ2への送信用のフォーマットにして、リードチャネル16に送信する。
リードチャネル16は、フォーマット制御部15から送信されたライトデータを符号化する。また、リードチャネル16は、ヘッドIC17がヘッド24を介して磁気ディスク25から読み出したリードデータを復号してフォーマット制御部15に送信する。
ヘッドIC(Integrated Circuit)17は、リードチャネル16によって符号化されたライトデータを、ヘッド24を介して磁気ディスク25に書き込む。また、ヘッドIC17は、ヘッド24を介してリードデータを磁気ディスク25から読み出す。
【0024】
MPU18は、磁気ディスク装置1全体を制御する。例えば、MPU18は、ホストIF制御部11からライト要求を受けると、バッファ制御部12、フォーマット制御部15、リードチャネル16、ヘッドIC17に指示して、ライトデータを磁気ディスク25に書き込ませる。また、MPU18は、ホスト制御部11からリード要求を受けると、ヘッドIC17に指示して、磁気ディスク25からリードデータを読み出させる。
本実施形態に特有の動作として、MPU18は、磁気ディスク25へのシステム情報の書き換え制御を行う。具体的には、MPU18は、磁気ディスク25上において、欠陥管理を実行する領域に所定のシステム情報を書き込む。以下の説明では、欠陥管理をデフェクト管理と記述する。
【0025】
デフェクト管理とは、磁気ディスク25上のセクタに欠陥が生じた場合に、欠陥セクタにLBA(Logical Block Address:論理ブロックアドレス ) を割り当てずに、予め決められた他のセクタに該LBAを割り当てることである。デフェクト管理を実行する領域のうち、上記所定のシステム情報が書き込まれる領域を新規システム領域という。
【0026】
図3は、新規システム領域を説明する図である。
例えば、図3中の点線で囲った部分が、磁気ディスク装置1がデフェクト管理を実行する領域であるとすると、MPU18は、デフェクト管理を実行する領域の一部を新規システム領域とし、この新規システム領域に所定のシステム情報を書き込むようにする。
【0027】
MPU18は、例えば、ユーザ環境で更新される可能性のあるシステム情報である統計情報を新規システム領域に書き込む。統計情報は、例えばSMARTコマンドに関するデータとリライト情報である。また、MPU18は、新規システム領域において欠陥が検出されたかを判断し、欠陥が検出されたと判断した場合に、セクタスリップ処理を実行する。セクタスリップ処理とは、欠陥セクタへのLBAすなわちアドレス情報の割り当てをせずに、欠陥セクタへのLBAの割り当てを飛ばして、欠陥セクタの次のセクタから順次LBAを割り当てる処理である。セクタスリップ処理は、本実施形態における、上述したデフェクト管理の具体的な処理である。すなわち、MPU18は、システム情報のうち、リライト情報等ユーザ環境で更新され得るデータを、多重書き込みすることなく、新規システム領域に割り当てて書き込む。そして、MPU18は、新規システム領域において欠陥セクタが発生した場合に、磁気ディスク25上の多重書き込み領域に保存されている欠陥セクタ管理テーブルを用いて、セクタスリップ処理を実行する。欠陥セクタ管理テーブルには、LBAを割り当てないセクタとして予め定められたセクタである初期欠陥セクタが登録される。初期欠陥セクタは、LBAを割り当てないセクタとして予め定められたセクタである。
【0028】
図4は、欠陥セクタ管理テーブルの例を示す図である。
図4に示す欠陥セクタ管理テーブルには、CYLINDERとHDとSCTとが登録される。CYLINDERはシリンダの識別情報、HDはヘッド24の識別情報、SCTは、セクタの識別情報である。MPU18は、図4に示す欠陥セクタ管理テーブルに、新規システム領域内のリザーブセクタを、予め初期欠陥セクタとして登録しておく。リザーブセクタはシステム情報の種類毎に設けられている。
なお、MPU18は、システム情報のうち、新規システム領域に書き込むシステム情報以外のシステム情報については、多重書き込み領域に多重書き込みする。MPU18が、新規システム領域に所定のシステム情報を書き込むことにより、システム情報の書き込みに要する時間を大幅に短縮することができる。
【0029】
メモリ19には、MPU18の処理の実行状態を示す情報が記憶される。
プログラムメモリ20には、MPU18の処理に必要なプログラムが予め記憶されている
サーボ制御部21は、VCM22、SPM23を制御する。VCM22は、ヘッド24の位置決め制御を行う。SPM23は、磁気ディスク25の回転制御を行う。ヘット24は、磁気ディスク25にライトデータを書き込む。また、ヘッド24は、磁気ディスク25からリードデータを読み出す。磁気ディスク25には、データが記憶される。バス26は、磁気ディスク装置1内のデータバス(例えば、コモンバス)である。
【0030】
図5は、デフェクト管理を実行する領域へのLBAの割り当て例を示す図である。
図5中、新LBA0乃至新LBAN−1が、新規システム領域に割り当てられるLBAであり、LBA0乃至LBAMAXが、ユーザ領域に割り当てられるLBAである。リザーブは、後述するセクタスリップ処理の際に用いられるリザーブセクタを示す。
【0031】
図6は、デフェクト管理を実行する領域のLBAの管理を説明する図である。
MPU18は、実際には、図6に示すように、デフェクト管理を実行する領域のLBAを通し番号で管理する。すなわち、MPU18は、図6に示すように、内部で管理するLBAであるILBA(Internal LBA)を用いて、図5中に示す新LBA0乃至LBAMAXをILBA0乃至LBAN+MAXとして管理する。MPU18は、例えば、ホストコンピュータ2から読み書き対象のLBAとして通知されたLBAXを、内部的にILBAX+Nに変換して読み書き処理を行う。
【0032】
図7は、新規システム領域へのシステム情報の書き込み例を説明する図である。
本実施形態の磁気ディスク装置1は、新規システム領域に書き込むシステム情報を、システム情報の種類毎に同じタイミングで全面的に書き換える。そこで、MPU18は、新規システム領域において、同じタイミングで書き換えられるシステム情報の種類毎に、1トラック当たりのセクタ数、又はそれ以上のセクタ数分の間隔を空けることで、トラック間の干渉を防ぎ、新規システム領域自体でのデータ劣化問題を回避するようにする。具体的には、MPU18は、それぞれの種類のシステム情報を記録する箇所の前後のセクタを、少なくとも1トラック当たりのセクタ数分、セクタスリップ処理する。
【0033】
例えば、MPU18は、図7に示す磁気ディスク25の外側のトラックから内側のトラックに向けて第1のシステム情報を書き込む。図7中の矢印で示す部分が、第1のシステム情報が書き込まれた最終セクタを示す。MPU18は、最終セクタから図7中の白く塗りつぶした領域分のセクタを未使用とした上で、図7中の点線の楕円で示す部分に対応するセクタから、第1のシステム情報とは種類が異なる第2のシステム情報を書き込んでいく。すなわち、MPU18は、新規システム領域において、第1のシステム情報を書き込んだ領域から少なくとも1トラック当たりのセクタ数分の領域を未使用とした上で、該未使用とした領域と隣り合う領域から第1のシステム情報と種類が異なる第2のシステム情報を書き込む制御手段としての機能を有する。
【0034】
磁気ディスク25上の新規システム領域において、第1のシステム情報を書き込む予め決められた領域と、第2のシステム情報を書き込む予め決められた領域との間に、少なくとも1トラック当たりのセクタ数分の物理的な空隙を予め設けるようにしてもよい。
【0035】
なお、前述したシステム情報の種類毎に間隔を設けるためにセクタスリップ処理を行うようにすれば、上記新規システム領域において物理的な空隙を予め設ける場合と比べて、新規システム領域の使用効率を向上させることができる。
【0036】
次に、新規システム領域で新たに欠陥セクタが発生した場合の処理について説明する。欠陥セクタの回避処理としては、セクタの交代処理が行われるのが一般的である。
しかし、新規システム領域においてセクタの交代処理を実行するようにすると、センタの交代処理が複数回発生した場合に、次第に新規システム領域への書き込み時間が延びていくという問題がある。交代セクタへのアクセスをするたびに一つの交代当たり1回転〜2回転分の時間を要するからである。そこで、システム情報が、種類毎に全面書き換えがなされるという特徴に着目し、本実施形態においては、MPU18は、欠陥セクタが発生したかを判断し、欠陥セクタが発生したと判断した場合に、セクタスリップ処理を実行する。具体的には、MPU18は、各システム情報毎に、セクタスリップ処理用のリザーブ領域を割り当て、システム情報の更新時にリザーブ領域を使用するようにする。これによって、通常の交代処理においては必要であった交代セクタへのアクセスがなくなるため、処理時間の増加などの悪影響を防ぐことができる。
【0037】
図8は、開示の情報記憶装置が実行するセクタスリップ処理を説明する図である。本実施形態では、MPU18が、前述した図4に示す欠陥セクタ管理テーブルに、新規システム領域内のリザーブセクタを、予め初期欠陥セクタとして登録しておく。
【0038】
図8(A)は、ある種類のシステム情報が書き込まれている各々のセクタに割り当てられたLBAと、このシステム情報に対応して設けられたリザーブセクタを示す。図8(A)に示すN乃至N+Mが、このシステム情報が書き込まれている各々のセクタに割り当てられたLBAである。また、RSV1乃至RSV5は、このシステム情報に対応して設けられたリザーブセクタである。RSV1、RSV2、RSV3、RSV4、RSV5は、それぞれ、図7(A)に示す欠陥セクタ管理テーブルにおける、第1番目、第2番目、第3番目、第4番目、第5番目のエントリに対応する。
【0039】
ここで、MPU18が、例えば、図8(B)の#1に示すように、N+3というLBAが割り当てられていた左から4番目のセクタに欠陥が生じたことを検出すると、MPU18は、システム情報の更新処理を実行する。具体的には、MPU18は、前述した図4に示す欠陥セクタ管理テーブルからRSV1のエントリを削除する。そして、MPU18は、図9の第1番目のエントリに示すように、欠陥が生じたセクタ(図8(C)中のDefect1)の情報を欠陥セクタ管理テーブルに登録する。
【0040】
図9は、図8を参照して上述したセクタスリップ処理後の欠陥セクタ管理テーブルを示す図である。
【0041】
図8及び図9を参照して前述したセクタスリップ処理によれば、セクタスリップ処理を新規システム領域内だけで実行することができる。
【0042】
一般的に、ユーザ環境下では、ディスク装置が、欠陥が発生したセクタに対してセクタスリップ処理を実施することは困難である。なぜなら、ディスク装置は、ユーザ環境下におけるセクタスリップ処理においては、スリップしたセクタのデータを後続のセクタに書き写さなければならないので、後続のセクタから最期のセクタまで、各々のセクタのデータを読み出した上で、セクタをずらしながら、読み出したデータを書き写さなければならないからである。その結果、ユーザ環境下では、後続のセクタ数が多いほど多くの時間を必要としてしまう。
【0043】
本実施形態における新規システム領域においては、ユーザ領域のユーザデータと異なり、それぞれのシステム情報が一括して更新されるので、それぞれのシステム情報毎にスリップ領域を持たせることで、読み出し処理を行わずにセクタスリップさせて書き込みすることができる。その結果、以降のシステム情報の更新においても、交代セクタへのアクセスによって生じるオーバヘッド時間の増大という懸念がないというメリットがある。
【0044】
また、本実施形態では、処理時間を極力短くするために、新規システム領域を、磁気ディスク25の最アウタ領域に配置するようにしてもよい。最アウタ領域は、例えば、磁気ディスクの最も外側にある、ゾーン0の領域である。本実施形態において、新規システム領域を最アウタ領域に配置することによって、システム情報の書き込みに要するトラック本数が少なくて済む。また、新規システム領域を最アウタ領域に配置するようにすれば、新規システム領域はOS(Operating System )が格納されている領域に近くなる。その結果、システム情報の書き込みタイミングにおける、ユーザデータへのシーク動作等にかかる時間を含むアクセス時間も短時間となる。
【0045】
図10は、システム情報の書き換え処理フローの例を示す図である。
まず、MPU18が、磁気ディスク25に対する書き込み(Write)/読み出し(Read)処理を行う(ステップS1)。次に、MPU18が、磁気ディスク装置1内の統計情報を取得する(ステップS2)。続いて、MPU18が、統計情報を磁気ディスク25に保存するタイミングであるかを判断する(ステップS3)。ステップS3においては、MPU18は、例えば図2に示すホストコンピュータ2からコマンドが来なくなった場合に、統計情報を磁気ディスク25に保存するタイミングであると判断する。MPU18が、統計情報を磁気ディスク25に保存するタイミングでないと判断した場合は(ステップS3のNo)、上記ステップS1に戻る。MPU18が、統計情報を磁気ディスク25に保存するタイミングであると判断した場合(ステップS3のYes)、MPU18が、この統計情報をシステム情報として磁気ディスク25の新規システム領域に書き込む(ステップS4)。
【0046】
図11は、図10のステップS4におけるシステム情報の書き込み処理の例を説明する図である。
まず、MPU18が、システム情報を磁気ディスク25の新規システム領域に書き込む(ステップS11)。MPU18が、システム情報の書き込みエラーが発生したかを判断する(ステップS12)。MPU18が、システム情報の書き込みエラーが発生していないと判断した場合には(ステップS12のNo)、処理を終了する。MPU18が、システム情報の書き込みエラーが発生したと判断した場合には(ステップS12のYes)、MPU18が、所定の条件に従って、セクタスリップ処理を行うかを判断する(ステップS13)。MPU18が、セクタスリップ処理を行わないと判断した場合は(ステップS13のNo)、エラー終了する(ステップS15)。MPU18が、セクタスリップ処理を行うと判断した場合は(ステップS13のYes)、MPU18がセクタスリップ処理を行って(ステップS14)、上記ステップS11に戻る。
【0047】
図12は、図10のステップS4におけるシステム情報の書き込み処理の他の例を説明する図である。
まず、MPU18が、システム情報を磁気ディスク25の新規システム領域に書き込む(ステップS21)。MPU18が、システム情報の書き込みエラーが発生したかを判断する(ステップS22)。MPU18が、システム情報の書き込みエラーが発生したと判断した場合には(ステップS22のYes)、ステップS25に進む。MPU18が、システム情報の書き込みエラーが発生していないと判断した場合には(ステップS22のNo)、MPU18が、上記ステップS21においてシステム情報を書き込んだ箇所を読み出す(ステップS23)。
【0048】
MPU18が、読み出しエラーが発生したかを判断する(ステップS24)。MPU18が、読み出しエラーが発生していないと判断した場合には(ステップS24のNo)、処理を終了する。MPU18が、読み出しエラーが発生したと判断した場合には(ステップS24のYes)、MPU18が、所定の条件に従って、セクタスリップ処理を行うかを判断する(ステップS25)。MPU18が、セクタスリップ処理を行わないと判断した場合は(ステップS25のNo)、エラー終了する(ステップS27)。MPU18が、セクタスリップ処理を行うと判断した場合は(ステップS25のYes)、MPU18がセクタスリップ処理を行って(ステップS26)、上記ステップS21に戻る。
【0049】
図13は、図11のステップS14又は図12のステップS26におけるセクタスリップ処理の詳細を説明する図である。
まず、MPU18が、セクタスリップ処理が必要となった欠陥セクタを含むシステム情報に対応するリザーブセクタを欠陥セクタ管理テーブル上で検索する(ステップS31)。次に、MPU18が、欠陥セクタ管理テーブルにおける上記検索されたリザーブセクタに対応するエントリを、欠陥セクタの情報で上書きする(ステップS32)。そして、MPU18が、欠陥セクタ管理テーブルの情報を磁気ディスク25の多重書き込み領域に保存して(ステップS33)、処理を終了する。
【符号の説明】
【0050】
1 磁気ディスク装置
2 ホストコンピュータ
11 ホストIF制御部
12 バッファ制御部
13 バッファメモリ
14 不揮発性メモリ
15 フォーマット制御部
16 リードチャネル
17 ヘッドIC
18 MPU
19 メモリ
20 プログラムメモリ
21 サーボ制御部
22 VCM
23 SPM
24 ヘッド
25 磁気ディスク
26 バス
27 ホストIF

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶媒体へのシステム情報の書き換え制御を行う情報記憶装置であって、
前記記憶媒体上において欠陥管理を実行する領域に所定のシステム情報を書き込む制御手段を備え、
前記制御手段が、前記所定のシステム情報が書き込まれる領域において欠陥セクタが検出された場合に、該欠陥セクタへのアドレス情報の割り当てをせずに、該欠陥セクタの次のセクタから順次アドレス情報を割り当てるセクタスリップ処理を実行する
ことを特徴とする情報記憶装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記所定のシステム情報が書き込まれる領域において、第1のシステム情報を書き込んだ領域から少なくとも1トラック当たりのセクタ数分の領域を未使用とした上で、該未使用とした領域と隣り合う領域から前記第1のシステム情報と種類が異なる第2のシステム情報を書き込む
ことを特徴とする請求項1記載の情報記憶装置。
【請求項3】
前記所定のシステム情報が書き込まれる領域において、第1のシステム情報を書き込む予め決められた領域と、前記第1のシステム情報と種類が異なる第2のシステム情報を書き込む予め決められた領域との間に、少なくとも1トラック当たりのセクタ数分の物理的な空隙が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の情報記憶装置。
【請求項4】
前記制御手段が、前記所定のシステム情報が書き込まれる領域とユーザ領域との間が少なくとも1トラック当たりのセクタ数分空くように制御する
ことを特徴とする請求項1記載の情報記憶装置。
【請求項5】
前記記憶媒体上の最アウタ領域に、前記所定のシステム情報が書き込まれる領域が設けられる
ことを特徴とする請求項1記載の情報記憶装置。
【請求項6】
記憶媒体へのシステム情報の書き換え制御を行う方法であって、
情報記憶装置が、前記記憶媒体上において欠陥管理を実行する領域に所定のシステム情報を書き込み、
前記情報記憶装置が、前記所定のシステム情報が書き込まれる領域において欠陥セクタが検出された場合に、該欠陥セクタへのアドレス情報の割り当てをせずに、該欠陥セクタの次のセクタから順次アドレス情報を割り当てるセクタスリップ処理を実行する
ことを特徴とするシステム情報の書き換え制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−238296(P2010−238296A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84173(P2009−84173)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】