説明

情報記録再生装置、及びそれに用いられるキャップ

【課題】記録媒体の上側に媒体回転部があり、記録媒体を偏芯することなく媒体回転部に確実にチャッキングできる、安価な機構を提供する。
【解決手段】本発明による情報記録再生装置におけるチャッキング部材(クランプとキャップ)のキャップに、従来のテーパードコーンと同様の機能を発揮することのできる位置決め機構(可倒式部材)を設けている。従来はこのテーパードコーンはクランプ部材に設けられていることが多いが、本発明は、特に情報記録媒体の上方から情報の読み取りを実行するものであるため、クランプ部材をテーパードコーン状に構成することは困難であり、キャップの方に位置決め機構を設けるようにしたのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録再生装置、及びそれに用いられるキャップに関し、例えば、情報記録媒体の装着時の偏芯を防止する機構を備えた情報記録再生装置、及びそれに用いられるキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ用情報のみならず、音声や静止画像、動画像などの情報を保存するための記録媒体として光情報記録媒体が実用化されている。例えば非特許文献1に示されるように、1.2mm厚の光ディスクを3mm厚のトレイに入れ、それを複数段重ねたディスクカートリッジ(ディスクの変形を防ぐ全周受けトレイ式マガジン)が製品化されている。このように、光情報記録媒体は更なる高密度化や高速転送化に向け開発が進められているが、同時に記録再生を行うドライブ装置の将来的な形としての薄型化や小型化、あるいは媒体収納時の軽量小型化等を見据えると、光情報記録媒体自体の厚みはより薄いほうが望ましい。そして、その実現を狙って厚さ0.3mm以下の薄型情報記録媒体の開発が進められている。この薄型情報記録媒体は、薄いトレイに搭載し、さらにそれを複数枚積層してカートリッジの内部に納める。このようにトレイに搭載された薄型情報記録媒体は、記録再生装置に装着して固定される。固定する部材としては例えばクランパ部材を含むチャッキング機構がある。例えば、特許文献1に記載のチャッキング機構では、情報記録媒体(光ディスク)を固定するディスク回転部が凸形の形状に構成され、先端にテーパーが設けられている。この凸形に情報記録媒体のセンター穴が挿入され凹形のクランパで情報記録媒体が固定される。なお、回転部の凸形には、磁石が埋め込まれており、鉄片の埋め込まれたクランパを磁気吸引力で吸引して記録媒体とクランパ部材を回転部に固定する構成をなしている。
【0003】
【非特許文献1】http://www.jvc-victor.co.jp/pro/library/product/mc-9200/option.html「ディスクの変形を防ぐ全周受けトレイ式マガジン」
【特許文献1】特開2000−207862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のクランパを、トレイに載った情報記録媒体の上側に媒体回転部があり下側にクランパが配置されたA面記録再生装置に適用した場合、情報記録媒体をクランパに載せて媒体回転部まで移動し、固定するためクランパに載せた情報記録媒体が位置ずれを起こして正確に固定することが困難である。より詳細にこの問題を説明すると、以下の通りである。
【0005】
即ち、情報記録媒体を記録再生させる装置内部において、まず、カートリッジから情報記録媒体を取り出すべく内部のトレイを引き出す。そして、そのトレイの上方に位置した情報の記録再生用ヘッドに情報記録媒体を取り付けるために、引き出されたトレイの下方に配置されたキャップが上昇し、その上昇途中で情報記録媒体を載せる。さらにキャップが上昇を続けて情報記録再生用ヘッドに突き当たり、キャップを介して情報記録媒体をヘッドに押し付けて取り付ける。多くの場合は、情報記録媒体の記録再生用ヘッドのクランプ部分が雄(凸)であり、一方それに対応するキャップの部分が雌(凹)である。このため、チャッキング動作を行うとき、キャップに載せられただけの情報記録媒体は、そのキャップ上において位置が定まらず、中心位置がずれたそのまま情報記録媒体に押し付けられる場合もある。すると、記録再生用ヘッドのクランプ凸部分に情報記録媒体の中心穴が衝突してかじりが生じ、その結果、クランプ動作ができない場合がある。また、クランプが出来たとしても、ずれた装置で取り付けられているために、その状態で記録再生を行うべく回転を始めると、偏芯によって振動が生じ、また、記録再生用の光ビームスポットが、偏芯が大きいために追従が困難になり、ついには脱輪してしまったりするなどの問題が生じてしまう。そうなると、ずれた情報記録媒体を元の位置に戻すのは困難で、記録再生装置にセンサーとアクチュエータを多数組み合わせた複雑なロボットアームを組み込んで、情報記録媒体の異常位置を検出したら、その複雑な機構を用いて修復させるなどの手段を取るしかない。このような手段を設けることは装置自体のコストアップにつながり、好ましくない。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、記録媒体の上側に媒体回転部があり、記録媒体を偏芯することなく媒体回転部に確実にチャッキングできる、安価な機構を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明による情報記録再生装置におけるチャッキング部材(クランプとキャップ)のキャップに、従来のテーパードコーンと同様の機能を発揮することのできる位置決め機構(可倒式部材)を設けている。従来はこのテーパードコーンはクランプ部材に設けられていることが多いが、本発明は、特に情報記録媒体の上方から情報の読み取りを実行するものであるため、クランプ部材をテーパードコーン状に構成することは困難であり、キャップの方に位置決め機構を設けるようにしたのである。
【0008】
すなわち、本発明による情報記録再生装置は、カートリッジに収納されたトレイに搭載された情報記録媒体に対して情報の記録及び/又は再生を行う情報記録再生装置であって、カートリッジから前記トレイを引き出す、トレイ引き出し手段と、引き出されたトレイの上方に位置し、情報記録媒体を取り付けるためのクランプ部と、引き出されたトレイの下方に配置され、情報記録媒体を載置して昇降可能なキャップと、情報記録媒体の上方から情報の記録及び/又は再生を実行するための情報読み取り手段と、を備える。そして、キャップは、情報記録媒体を載置したときに位置決めするための位置決め手段を含み、その上昇途中に情報記録媒体を載せ、さらに上昇を続けてクランプ部と嵌合し、情報記録媒体をチャッキングする。なお、クランプ部は雄部材で構成され、キャップは雌部材で構成されている。
【0009】
そして、位置決め手段は、情報記録媒体の装着用穴に挿入され、キャップにおける媒体の載置位置に情報記録媒体を誘導する。また、位置決め手段は、クランプ部の押下により倒れる複数の可倒式部材で構成され、クランプとキャップが嵌合するときには、可倒式部材はキャップのベース部材の収納スペースに収納される。
【0010】
本発明によるキャップは、情報記録再生装置に情報記録媒体をチャッキングするためのキャップであって、ベース部材と、ベース部材の中心近傍に設けられた複数の可倒式部材と、を備える。そして、複数の可倒式部材が情報記録媒体の中心穴を貫通した場合、キャップの中心位置に対する情報記録媒体の中心位置が符合するようになっている。
【0011】
複数の可倒式部材は、チャッキング前、前記キャップの中心位置に向かって傾斜し、テーパードコーンと同様の機能を有するように構成される。また、ベース部材には収納スペースが設けられており、複数の可倒式部材は、チャッキング時には、収納スペースに収納される。
【0012】
また、本発明によるキャップは、情報記録再生装置に情報記録媒体をチャッキングするためのキャップであって、ハウジング部材と、ハウジング部材の収納された一体型調芯部材と、を備える。そして、一体型調芯部材は、放射状に延設された複数の延設部位を有し
、情報記録媒体の中心穴を貫通した場合、キャップの中心位置に対する情報記録媒体の中心位置が符合する。また、一体型調芯部材は、チャッキング前は各延設部位によって山形形状(テーパーコーン形状)をなし、チャッキング後はハウジング内でクランパによって潰されて収容される。
【0013】
さらなる本発明の特徴は、以下本発明を実施するための最良の形態および添付図面によって明らかになるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のチャッキング機構によれば、記録媒体の上側に媒体回転部があり、記録媒体を偏芯することなく媒体回転部に確実にチャッキングでき、しかもその機構は非常に安価に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、本実施形態は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明を限定するものではないことに注意すべきである。また、各図において共通の構成については同一の参照番号が付されている。
【0016】
<第1の実施形態>
(1)カートリッジ及び薄型情報記録媒体用トレイの構成
図1は、カバー付きディスクトレイ1と薄型情報記録媒体用カートリッジ16を示している。薄型情報記録媒体用カートリッジ16には、薄型情報記録媒体(例えば、厚さ300μm以下で、可撓性のある光フレキシブルディスク)13がトレイ1に搭載され、媒体13をそれぞれ搭載した複数のトレイ1が収容されている。この薄型情報記録媒体用カートリッジ16は、情報記録再生装置に装着される。そして、一枚一枚薄型情報記録媒体13が取り出されて情報の記録再生動作に供される。また、カートリッジ16の側面部には、情報記録再生装置に対する位置合わせを行い、装着ズレを防止するための係合溝17が設けられている。ただし、位置をあわせて固定するための機構は今この限りではなく、記載はしないが、円筒形のピンやテーパー状突起などを利用したものでもよい。
【0017】
カバー付トレイ1は、薄型のシート(例えば、PET材)で構成されたカバー11を有している。そして、そのカバー11は、トレイ1の後端部15で一定の幅を持って固定(例えば、糊付け)されている。また、カバー付トレイ1の4隅には、トレイに搭載された薄型情報記録媒体を持ち上げるための機構の4つの爪部が入り込み、薄型情報記録媒体13の裏面を下から保持できるようにする貫通孔12(図2参照)も受けられている。この場合、薄型情報記録媒体13をトレイ1から浮上するなどして引き離してホールドさせ、トレイ1をカートリッジ16に退避させたのち、キャップを上昇させる(具体的動作については後述する)。また、トレイ1の前端部には、トレイ挿抜部材(例えば、図9に示される部材)がフックし、カートリッジ16に対してトレイ1を挿抜可能にするためのフック孔14が設けられている。
【0018】
なお、図2Aに示されるように、トレイ1の4隅に貫通孔12を設けるようにしたのは、トレイ1の中央に穴が設けられておらず、キャップ部材が上昇して薄型情報記録媒体13をクランプ部材にチャックする構成となっていないからである。従って、図2Bに示されるように、トレイ1の中央にキャップ通過用孔18(直径は後記するキャップの直径よりも大きい)が設けられている場合には、4隅の貫通孔12を設けなくても例えば両面の薄型情報記録媒体の表面に対して記録再生を実行することが可能となる。
【0019】
(2)情報記録再生ユニットの概略構成
図3は、情報記録再生ユニットの簡略した構成を示しており、特に、両面記録再生用の
薄型情報記録媒体の表面に対して情報記録/再生動作を実行する構成に関わるものである。
【0020】
図3において、カートリッジ16の係合溝17に情報記録再生ユニット30の係合部31が嵌ることにより、カートリッジ16が情報記録再生ユニット30に固定され、記録再生を行うための配置状態になる。また、情報記録媒体再生ユニット30は、その上面部に、情報の記録や再生を行う光ヘッド33と、薄型情報記録媒体13をチャッキングして回転させるためのクランプ部32とを搭載している。また、図3には示されていないが、後述の昇降可能なキャップ部が搭載されている。薄型情報記録媒体13は、クランプ部32とキャップ部とによって挟まれて固定されることによって、回転しても脱落しないようになっている。さらに、光ヘッド33にはレーザーで情報記録媒体の情報を読み書きするピックアップレンズユニットが搭載されている。なお、キャップ部が大きいと、媒体回転時に回転による遠心力によってキャップ部が外れてしまう危険性がある。よって、クランプ部は小さく、キャップ部は薄く、軽い方が好ましい。
【0021】
一方、図2Bのトレイを用いる場合の情報記録再生ユニットの別の形態は、図9に示されるような構成を採ることができる。図9は、トレイ1から薄型情報記録媒体13がキャップ51(図5で説明)ごと上昇する様子を示している。情報記録再生ユニットには引き出し台91が設けられており、さらに、引き出し台91には押さえ板バネ92が設けられている。カートリッジ16から引き出されたトレイ1は、このトレイ引き出し台91の上を擦らせて引き出され、引ききりの位置まで引かれて板ばね92に挟まれて固定される。そして、キャップ51がトレイ1の穴を潜って上昇し、上部に位置する記録再生用ヘッドのクランプ部32へとクランプされ、薄型情報記録媒体13がチャッキングされる。
【0022】
(3)チャッキング機構の構成
図4は、媒体回転機構及び光ヘッドが媒体の下側に設けられ、媒体の下側から情報を読み取る構成と同じ考えを採った場合の、情報記録再生ユニット30におけるチャッキング機構の概略構成を示す図である。図4に示されるように、クランプ部32は雄部材により、キャップ41は雌部材によって構成されている。
【0023】
図4A及びBは、正常にチャッキングできたときの状態を示す図である。図4Aにおいて、薄型情報記録媒体13を載置してキャップ41が上昇し、キャップ41の凸部411とクランプ部32の凹部321とが嵌合する。凹部321は磁性を持つので、金属製のクランプ部材32とキャップ41は磁力によって固定される。図4A及びBの場合には、クランプ部32とキャップ41と薄型情報記録培媒体13のそれぞれの中心線が一致するので偏芯がなく、正常にチャッキングされている。
【0024】
一方、図4Cに示されるように、キャップ41上に載置された薄型情報記録媒体13の中心線がずれていると、偏芯したままの状態でチャッキングされてしまう。今回のように情報記録再生装ユニットを逆にして使用する場合、多くは、図4Cのように薄型情報記録媒体は位置がずれたままキャップに載ってしまう。すると、そのままチャッキングしようとした場合、図に示すように情報記録媒体がクランプ部分に噛み込んでしまったりする。そのため、正常なチャッキングをすることが困難になる。なお、記録再生装置が正常な姿勢(逆にしない姿勢)で用いられる場合にはこのような問題は生じない。その理由は、情報記録媒体のチャッキング時、前記キャップよりも先に情報記録媒体の中心穴がクランプ部32の雄(凸)部に嵌合するため、その凸部の中心出し効果によって、情報記録媒体の中心が決まるためである。
【0025】
(i)そこで、本発明の第1の実施形態では、図5に示されるような構造を有する改良型キャップ51を導入する。図5Aは、キャップ51を上から見た図であり、図5Bはキャ
ップ51を側面から見た図であり、図5Cは図5Aのa−a’のおける断面図である。図5に示されるように、改良型キャップ51は、凹型のベース部材511と、ベース部材に取り付けられた可倒式部材512(図5では4つ設けられているが4つに限られるものではない)と、ベース部材中心に設けられた磁性凸部514と、で構成されている。可倒式部材512は、ベース部材511にバネ部材513によって回転可能なように軸支されている。従って、可倒式部材512がクランプ部32によって上から押下されると、ベース部材511の底面まで倒れ、クランプ部32の押下がなくなると、バネ部材513の反発力により立ち上がって図5B及びCに示される状態に戻る。また、図5Bに示されるように、立ち上がった状態の4つの可倒式部材512はそれぞれ内側に傾斜しているので、外縁部が丁度テーパーコーンと同様の作用を有することになる。つまり、傾斜した4つの可倒式部材512によって薄型情報記録媒体13が誘導されて偏芯が無いように位置決めされる。その様子を示したのが図6A及びBである。
【0026】
図6Aに示されるように、薄型情報記録媒体13がトレイ1から取り出され、キャップ51上に載置される。このとき、4つの可倒式部材512が薄型情報記録媒体13の中心穴に入り、同媒体13をベース部材の媒体載置面515まで誘導する。これによって薄型情報記録媒体13の偏芯が無くなる。そして、薄型情報記録媒体13を載置したキャップ51はクランプ部32と嵌合するまで上昇する(図6A参照)。可倒式部材512はクランプ部32による押下によって倒れ、また、磁性を有する凸部514と凹部321とが磁力によって固定される(図6B参照)。このような構成を有する改良型キャップ51を用いれば、チャッキング時に薄型情報記録媒体13の位置ずれによる偏芯が発生するのを防止することができる。また、チャッキング時には可倒式部材512は倒れてベース部材511内の収納スペースに収納されるので、情報記録再生ユニット30の機能を損ねることはない。
【0027】
(ii)キャップの変形例
図5D及びEは、図5A乃至Cで示されるキャップ51の変形例を示す図である。図5Dは板バネタイプの可倒式部材522を持つキャップを示し、図5Eは線バネタイプで、同様な効果を持つ可倒式部材532を持つキャップを示している。このように、バネ材の一端をキャップ本体に固定し、対する一端を、前記した中心に向かって傾斜する可倒式部材として兼ねることで、キャップ51における可倒部材512とそれを押圧方向に反力を生じさせるバネ部材513の2つの部品を設ける必要が無くなり、部品点数を減らすことが出来る。なお、線バネタイプの可倒部材532には、板バネタイプの可倒式部材522と同様に押圧への反力を生じさせるために巻き部533を設けている。また、図示はしないが、巻き部を設けない形態もありうる。
【0028】
(4)薄型情報記録媒体のローディングシーケンス
図7及び8は、薄型情報記録媒体13のローディングシーケンスを説明するための図である。図7は両面記録用薄型情報記録媒体の表面の記録再生の場合に関係し、図8は裏面の記録再生の場合に関係する。
【0029】
表面記録再生の場合(図7)は、まず、カートリッジ16が表面用の記録再生ユニット30にセットされ、カートリッジ16から所望のトレイ1が引き出される(図7A)。次に、媒体持ち上げ機構72を構成する4つの爪部がトレイ1の貫通孔12に入り込み、媒体持ち上げ機構72は薄型情報記録媒体13を下から保持し、その状態で上昇する(図7B)。薄型情報記録媒体13が上昇すると、トレイ1はカートリッジ16内に収納される(図7C)。トレイ1がカートリッジ16内に退避すると、媒体持ち上げ機構72が降下し、薄型情報記録媒体13をキャップ51上に載置する(図7D)。そして、キャップ51が上昇し、クランプ部32と嵌合して薄型情報記録媒体13がチャッキングされる。チャッキング後、クランプ部32とキャップ51の回転に伴って薄型情報記録媒体13も回転し、光ピックアップ33によって情報の記録又は再生が実行される(図7E)。
【0030】
裏面記録再生の場合(図8)は、まず、カートリッジ16が裏面用の記録再生ユニット71のある場所まで移動する(図8A)。そして、カートリッジ16が裏面用の記録再生ユニット71にセットされ、カートリッジ16から所望のトレイ1が引き出される(図8B)。次に、媒体持ち上げ機構72を構成する4つの爪部がトレイ1の貫通孔12に入り込み、媒体持ち上げ機構72は薄型情報記録媒体13を下から保持し、その状態で上昇する(図8C)。薄型情報記録媒体13が上昇すると、トレイ1はカートリッジ16内に収納される(図8D)。トレイ1がカートリッジ16内に退避すると、媒体持ち上げ機構72が降下し、薄型情報記録媒体13を例えばテーパーコーン形状のクランプ部83上に載置する(図8E)。そして、キャップが薄型情報記録媒体13の中心部に被せられ、クランプ部83と嵌合して薄型情報記録媒体13がチャッキングされる。チャッキング後、クランプ部83とキャップの回転に伴って薄型情報記録媒体13も回転し、光ピックアップ81によって情報の記録又は再生が実行される(図8F)。
【0031】
<第2の実施形態>
図10及び11は、第2の実施形態によるチャッキング機構を説明するための図である。図10は、キャップ部100における一体型調芯部材101の構成を示す。一体型調芯部材101は、第1の実施形態における可倒部材51乃至53の作用を有するものである。また、図11は、チャッキングのシーケンスを時系列に示している。
【0032】
図10に示されるように、一体型調芯部材101は、中心に向かい傾斜した複数の可倒式部材512、522及び532と同様に、中心穴102が形成された頂面部から放射状に延設された部位(延設部位)103が中心(頂面部)を盛り上げる形態で折り曲げられ、かつ、バネ特性を備えている。そして、盛り上がった中心部分に押圧がかかると、中心が押し潰され、その結果、前述の可倒式部材512、522及び532と同様の効果を発揮することができる。この一体型調芯部材101がキャップハウジング104に装填されることにより、キャップ部100が構成される。なお、延設部位103の数は3つ以上であることが望ましいが、3つよりも4つの方が安定性の点では優れている。また、一体型調芯部材101は、リン青銅や非磁性のSUSで構成され、厚さは100μm程度が好ましい。
【0033】
チャッキング動作時は、まず薄型情報記録媒体13がキャップ部100の上方に配置されると、キャップ部100が上昇する(図11A)。さらにキャップ部100が上昇すると、一体型調芯部材101が薄型情報記録媒体13の中心穴を貫通し、薄型情報記録媒体13がキャップ部のハウジング104の天面部106に載置される(図11B)。チャッキング前、一体型調芯部材101はテーパーコーン状になっているので、薄型情報記録媒体13の位置決めが可能となっている。
【0034】
薄型情報記録媒体13を載置した状態でキャップ部100がさらに上昇すると、クランプ部32が一体型調芯部材101を押し込む(図11C)。そのままクランプ部32が一体型調芯部材101を押し続けることにより、一体型調芯部材101は所定の反発力を持ったまま潰れ、キャップ部100の凸部105とクランプ部32の凹部321とが互いに嵌合し、磁力によって固定される(図11D)。キャップ部100とクランプ部32が嵌合した場合、図11Dに示されるように、一体型調芯部材101は潰れるが、キャップハウジング104との間に隙間107が形成される。このような隙間(遊び)により、クランプ部32の凹部321及び/又はキャップ部100の凸部105に持たせた磁力をそれ程強力にする必要はない。遊びがあるので、発生する一体型調芯部材101の反発力が強くないからである。よって、キャップ部100とクランプ部32とは外しやすくなる。また、一体型調芯部材101の延設部位を4つ以上とすることにより、キャップハウジング104の中で遊びがあったとしても安定して一体型調芯部材101を収容することができ、よってチャッキングの安定性を確保できるようになる。
【0035】
なお、キャップ部100とクランプ部32との嵌合が外れると、一体型調芯部材101はその反発力により元の形状(断面が山形形状或いはテーパーコーン形状)に復元される。
【0036】
このように、第2の実施形態では、一体型調芯部材101を用いているので、第1の実施形態のキャップ部51乃至53と比べて、部品点数が少なく、かつバネの固定も必要がないので、キャップ部の組立がより容易である。
【0037】
<まとめ>
本実施形態では、チャッキング部材(クランプとキャップ)を構成するキャップに、従来のテーパードコーンと同様の機能を発揮することのできる位置決め機構(可倒式部材)を設けている。従来はこのテーパードコーンはクランプ部材に設けられていることが多いが、本実施形態は、特に情報記録媒体の上方から情報の読み取りを実行するものであるため、クランプ部材をテーパードコーン状に構成することは困難であり、キャップの方に位置決め機構を設けるようにしたのである。このようにすることにより、キャップの中心位置と情報記録媒体の中心位置とが符合し、記録再生用ヘッドに偏芯無くチャッキングすることができるようになる。
【0038】
また、雌部材であるキャップに可倒式部材を設けるという単純な構成で薄型情報記録媒体の偏芯を防止することができるので、安価に実現でき、量産にも向いている。また、構成が単純なので、部品点数も少なく耐久性に優れるキャップを実現できる。
【0039】
可倒式部材の代わりに、キャップがハウジング部材の収納された一体型調芯部材を備えるようにしても良い。この場合、一体型調芯部材は、放射状に延設された複数の延設部位を有し、薄型情報記録媒体の中心穴を貫通した場合、キャップの中心位置に対する情報記録媒体の中心位置が符合する。また、一体型調芯部材は、チャッキング前は各延設部位によって山形形状(テーパーコーン形状)をなし、チャッキング後はハウジング内でクランパによって潰されて収容される。このようにすることにより、安定的なチャッキングを部品手数少なく、安価に実現することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】情報記録媒体が多数入ったカートリッジを示す図である。
【図2】カバー付トレイの詳細構成を示す図である。
【図3】情報記録再生ユニットの概略構成を示す図である。
【図4】クランプとキャップの構成、及びその問題点を示す図である。
【図5】本発明による改良型キャップの構成を示す図である。
【図6】本発明による改良型キャップとクランプ部とのチャッキングの様子を示す図である。
【図7】情報記録媒体をローディングし、媒体の上方から読み取りをする場合の様子を示す図である。
【図8】情報記録媒体をローディングし、媒体の下方から読み取りをする場合の様子を示す図である。
【図9】図2Bのトレイを用いる場合の情報記録再生ユニットの概略構成を示す図である。
【図10】第2の実施形態によるキャプ部の一体型調芯部材の概略構成を示す図である。
【図11】第2の実施形態によるキャップ部を用いた場合のチャッキングシーケンスを示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1・・・カバー付きトレイ
13・・・薄型情報記録媒体
16・・・カートリッジ
32・・・クランプ部
51,52,53・・・改良型キャップ
512・・・可倒式部材
100・・・キャップ部(第2の実施形態)
101・・・一体型調芯部材
107・・・隙間(遊び)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートリッジに収納されたトレイに搭載された情報記録媒体に対して情報の記録及び/又は再生を行う情報記録再生装置であって、
前記カートリッジから前記トレイを引き出す、トレイ引き出し手段と、
前記引き出されたトレイの上方に位置し、前記情報記録媒体を取り付けるためのクランプ部と、
前記引き出されたトレイの下方に配置され、前記情報記録媒体を載置して昇降可能なキャップと、
前記情報記録媒体の上方から情報の記録及び/又は再生を実行するための情報読み取り手段と、を備え、
前記キャップは、前記情報記録媒体を載置したときに位置決めするための位置決め手段を含み、
前記キャップは、その上昇途中に前記情報記録媒体を載せ、さらに上昇を続けて前記クランプ部と嵌合し、前記情報記録媒体をチャッキングすることを特徴とする情報記録再生装置。
【請求項2】
前記クランプ部は雄部材で構成され、前記キャップは雌部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の情報記録再生装置。
【請求項3】
前記位置決め手段は、前記情報記録媒体の装着用穴に挿入され、前記キャップにおける媒体の載置位置に前記情報記録媒体を誘導することを特徴とする請求項1又は2に記載の情報記録再生装置。
【請求項4】
前記位置決め手段は、前記クランプ部の押下により倒れる複数の可倒式部材で構成され、前記クランプと前記キャップが嵌合するときには、前記可倒式部材は前記キャップのベース部材の収納スペースに収納されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の情報記録再生装置。
【請求項5】
前記位置決め手段は、前記クランプ部の押下により倒れる一体型の調芯部材で構成され、前記クランプと前記キャップが嵌合するときには、前記一体型の調芯部材は反発力を持って潰れ、前記キャップのハウジング部材に収納されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の情報記録再生装置。
【請求項6】
情報記録再生装置に情報記録媒体をチャッキングするためのキャップであって、
ベース部材と、
前記ベース部材の中心近傍に設けられた複数の可倒式部材と、を備え、
前記複数の可倒式部材が前記情報記録媒体の中心穴を貫通した場合、前記キャップの中心位置に対する前記情報記録媒体の中心位置が符合することを特徴としたキャップ。
【請求項7】
前記複数の可倒式部材は、チャッキング前、前記キャップの中心位置に向かって傾斜していることを特徴とする請求項6に記載のキャップ。
【請求項8】
前記ベース部材には収納スペースが設けられており、
前記複数の可倒式部材は、チャッキング時には、前記収納スペースに収納されることを特徴とする請求項6又は7に記載のキャップ。
【請求項9】
情報記録再生装置に情報記録媒体をチャッキングするためのキャップであって、
ハウジング部材と、
前記ハウジング部材の収納された一体型調芯部材と、を備え、
前記一体型調芯部材は、放射状に延設された複数の延設部位を有し、前記情報記録媒体の中心穴を貫通した場合、前記キャップの中心位置に対する前記情報記録媒体の中心位置が符合することを特徴としたキャップ。
【請求項10】
前記一体型調芯部材は、チャッキング前は各延設部位によって山形形状をなし、チャッキング後は前記ハウジング内でクランパによって潰されて収容されることを特徴とする請求項9に記載のキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−59459(P2009−59459A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296913(P2007−296913)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】