説明

情報記録媒体及び秘匿情報検知装置

【課題】表面に回折格子を有する微小な回折格子要素を配した基板の表面平滑性が悪い場合でも、確実に真贋判定を行うことが可能であると共に、より一層高度な偽造防止効果を備えた情報記録媒体を提供すること。
【解決手段】本発明の情報記録媒体は、回折格子を有する微小な複数の回折格子要素11が基板表面に配置されており、光源39から照射された照明光36が回折格子要素11で回折してなる回折光37の全部または一部が、所定領域38に入射するように格子間隔および格子角度が設定されていると共に、少なくとも2個の回折格子要素11の組み合わせからなる回折格子要素群31からの回折光37の全部または一部が所定領域38に入射した場合、所定領域38における再生情報和が、所定の秘匿情報として現出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、回折格子を用いて記録されたような、肉眼で認知できない秘匿情報を保持する情報記録媒体と、この情報記録媒体に記録された秘匿情報を検知する秘匿情報検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、平面状の基板上に、表面に回折格子を有する微小な回折格子要素(ドット)を画素として複数個配置することにより得られる回折格子パターンを有する、ディスプレイなどの情報記録媒体が多く使用されてきている。
【0003】
この内、2光束干渉による回折格子パターンを有する情報記録媒体は、2光束干渉による微小な干渉縞(以下、回折格子と称す)を、そのピッチ、方向、および光強度を変化させて感光性フィルムに次々と露光して得られる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
より具体的には、この回折格子パターンは、複数の微小な回折格子要素に分割されていると共に、各回折格子要素の回折格子におけるピッチ、空間周波数、さらには各回折格子要素の並べ方を適宜変化させ、さらに回折格子要素表面の回折格子の方向を各回折格子要素毎に変化させてなる。
【0005】
さらに、回折格子パターンを有する情報記録媒体としては、例えば電子ビーム露光装置を用い、コンピュータの制御により、平面状の基板が載置されたXYステージを移動させ、基板の表面に微小な複数個の回折格子要素を絵柄状に記録・配置することにより得られる、所定絵柄の回折格子パターンが形成された情報記録媒体も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
ところで、このような回折格子を有する情報記録媒体の真贋を検証機を用いて判定する方法としては、例えば、微小な回折格子要素の配列中に記録してあるパターン情報の部分へレーザー光等を照射して回折光を得、それをセンサーで読み取り、記録し、それに基づき真贋の判定を行う方法が採用されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
また、肉眼では観察できないパターン、もしくは識別できないパターンとして情報を記録しておき、レーザー光を用いた読取装置などを用いてその情報を読み取って真贋判定を行う方法も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平5−72406号公報
【特許文献2】米国特許第5058992号公報
【特許文献3】特開平5−50788号公報
【特許文献4】特開平10−10956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような方法で真贋の判定を行う場合、以下のような問題がある。
【0009】
すなわち、このような方法で真贋の判定を行う場合、判定対象となる情報記録媒体の回折格子パターンが転写箔を利用した転写によって紙上に形成されたような場合には、転写する紙の平坦性が悪いため、転写箔が紙表面の凹凸に沿って曲げられ、転写箔における回折格子の凹凸状態やパターンが忠実に紙上に転写・再現されず、ひいては判定時に正しい再生像を得ることが出来なくなってしまい、情報を明確に読み取ることが困難となるという問題がある。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、表面に回折格子を有する微小な回折格子要素を配した基板の表面平滑性が悪い場合でも、確実に真贋判定を行うことが可能であると共に、所定の秘匿情報を記録した領域を判別することが困難であって、より一層高度な偽造防止効果を奏し、ディスプレイとしての可視性の向上、ならびにデザインの自由度の増加を実現することが可能な情報記録媒体、及び情報記録媒体に記録された秘匿情報を検地する秘匿情報検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0012】
すなわち、請求項1の発明は、回折格子を有する微小な複数の回折格子要素が基板表面に配置されており、回折格子要素の最大辺の長さが0.15mm以下であり、光源から照射された照明光が回折格子要素で回折してなる回折光の全部または一部が、空間上の所定領域に入射するように格子間隔および格子角度が設定されていると共に、少なくとも2個の回折格子要素の組み合わせからなる回折格子要素群からの回折光の全部または一部が所定領域に入射した場合、所定領域における再生情報和が、所定の秘匿情報として現出するようにした情報記録媒体である。
【0013】
従って、請求項1の発明の情報記録媒体においては、以上のような手段を講じることにより、基板表面の表面平滑性が悪い場合であっても、確実に秘匿情報を読み取ることができると共に、所定の秘匿情報を記録した領域を判別することが困難な情報記録媒体を提供することが可能となる。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の発明の情報記録媒体において、回折格子要素の平面形状が正方形又は方形であり、正方形の一辺、又は方形の長辺の長さが0.15mm以下である。
【0015】
従って、請求項2の発明の情報記録媒体においては、以上のような手段を講じることにより、所定の秘匿情報を記録した領域を判別することがより一層困難となり、より一層高度な偽造防止効果を奏し、ディスプレイとしての可視性の向上、ならびにデザインの自由度の増加に資することが可能となる。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1の発明の情報記録媒体において、回折格子要素の平面形状が円形又は楕円形であり、円形の直径、又は楕円形の長径が0.15mm以下である。
【0017】
従って、請求項3の発明の情報記録媒体においては、以上のような手段を講じることにより、所定の秘匿情報を記録した領域を判別することがより一層困難となり、より一層高度な偽造防止効果を奏し、ディスプレイとしての可視性の向上、ならびにデザインの自由度の増加に資することが可能となる。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1の発明の情報記録媒体において、回折格子要素の平面形状が正方形であり、一辺の長さが0.05mm以下であり、回折格子要素群の一辺の長さが1mm以下である。
【0019】
従って、請求項4の発明の情報記録媒体においては、以上のような手段を講じることにより、所定の秘匿情報を記録した領域を目視によって判別することがより一層困難となり、また、通常のレーザー光を用いた回折格子の描画方法での作製は困難となり、電子線描画装置などが必要となり、より一層高度な偽造防止効果を実現することが可能となる。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のうち何れか1項の発明の情報記録媒体において、回折格子要素群の全体が可視画像を表現している。
【0021】
従って、請求項5の発明の情報記録媒体においては、例えば、秘匿情報を保持していない回折格子要素の中に、秘匿情報を保持する回折格子要素を混在することにより、これら秘匿情報を保持する回折格子要素の存否及びその位置を隠したため、偽造を一層困難にすることが可能となる。
【0022】
請求項6の発明は、回折格子を有する微小な複数の回折格子要素が基板表面に配置されており、光が照射されると、この光が回折格子要素で回折してなる回折光の全部または一部が、空間上の所定領域に入射するように格子間隔および格子角度が設定されていると共に、少なくとも2個の回折格子要素の組み合わせからなる回折格子要素群からの回折光の全部または一部が所定領域に入射した場合、所定領域における再生情報和が、所定の秘匿情報として現出する情報記録媒体から、秘匿情報を検出する装置である。この装置は、光源と読取手段とを備えており、光源は、情報記録媒体に光を照射し、読取手段は、回折光を検知する検知機能と、検知機能によって検知された回折光に基づいて、最大辺の長さが0.15mm以下の回折格子要素を読み取ることが可能な分解能とを備えている。
【0023】
従って、請求項6の発明の秘匿情報検知装置においては、以上のような手段を講じることにより、最大辺の長さが0.15mm以下の回折格子要素により構成される情報記録媒体の秘匿情報であっても安定して読み取ることが可能となる。
【0024】
請求項7の発明は、請求項6の発明の秘匿情報検知装置において、読取手段は、秘匿情報を含む回折格子要素群のうち最小辺の長さが1mm以上の大きさの回折格子要素群から、秘匿情報を読み取ることが可能な能力を備えている。
【0025】
従って、請求項7の発明の秘匿情報検知装置においては、以上のような手段を講じることにより、最小辺の長さが1mm以上の回折格子要素の群により構成される情報記録媒体の秘匿情報であっても安定して読み取ることが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、表面に回折格子を有する微小な回折格子要素を配した基板の表面平滑性が悪い場合でも、確実に真贋判定を行うことが可能であると共に、所定の秘匿情報を記録した領域を判別することが困難であって、より一層高度な偽造防止効果を奏し、ディスプレイとしての可視性の向上、ならびにデザインの自由度の増加を実現することが可能な情報記録媒体、及び情報記録媒体の秘匿情報検知装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施の形態に係る情報記録媒体の構成例を示す平面図である。すなわち、本実施の形態に係る情報記録媒体10は、微小な複数の回折格子要素11が基板表面(図示せず)に配置されてなる。
【0029】
また、各回折格子要素11は、図2の平面図に示すように、規則的に配置された複数の回折格子Kを有し、平面形状は正方形又は方形をしており、正方形の一辺、又は方形の長辺の長さHは0.15mm以下(例えば、0.05mm)である。なお、各回折格子要素11の平面形状は正方形又は方形に限らず、円形又は楕円形でも良い。この場合、円形の直径、又は楕円形の長径は、例えば0.15mm以下である。
【0030】
そして、情報記録媒体10は、図3に示すように、中空で円形の拡散面を持った光源39から照射された照明光36が回折格子要素11で回折してなる回折光37の全部または一部が、空間上の所定領域38に入射するように、図2に示すように格子間隔hおよび格子角度θが設定されている。
【0031】
さらに、情報記録媒体10は、少なくとも2個の回折格子要素11の組み合わせからなる回折格子要素群31からの回折光37の全部または一部が所定領域38に入射した場合、所定領域38における再生情報和が、所定の秘匿情報として現出するようにしている。
【0032】
次に、このような情報記録媒体10における回折格子Kの作製方法を、図4を用いて説明する。
【0033】
図4における回折格子Kは、レーザー光L1と、レーザー光L2との2つの光束を干渉することで得られる干渉縞を、感光材料に記録して作製する。
【0034】
ここで、回折格子Kの干渉縞Sの方向は、レーザー光L1とレーザー光L2の入射する方向で決定され、互いに隣接する干渉縞S同士の間隔は、レーザー光L1とレーザー光L2の交差する角度により決定される。
【0035】
レーザー光L1とレーザー光L2は、レーザー光線をレンズ等の縮小光学系を用いて縮小しているため、直径φの大きさに縮小され、その形状は元のレーザー光線Lと同等の円形となる。
【0036】
2つのレーザー光L1,L2同士を縮小して干渉縞Sを作製する場合には、直径φの大きさとしては0.15mm程度が限界となり、それより小さい直径φの回折格子Kを作製することは困難である。
【0037】
図5は、回折格子要素群21を構成する複数の回折格子要素の配列例を示す平面図である。
【0038】
ここで、回折格子要素群21は、2種類の回折格子角度からなる、縦6個、横6個の36個の回折格子要素24が基板表面に配置され、秘匿情報を保持する回折格子要素からなる情報記録要素22と、秘匿情報を保持することのない回折格子要素からなる情報隠蔽要素23により構成される。
【0039】
また、回折格子要素24の形状は直径φの円形状であり、直径φを0.15mmとすると、回折格子要素群21は0.9mm角の大きさとなる。一般に、通常の観察距離から肉眼で観察した場合には、0.15mmという大きさは、分離可能な限界であることから、この回折格子要素群21は0.9mm角の大きさの1個の回折格子として観察され、情報記録要素22と、情報隠蔽要素23とは肉眼では観察することができない。
【0040】
ここで記録する秘匿情報は、情報記録要素22の回折格子角度と同じ回折格子角度を持った回折格子要素の空間的配置で表現されるパターンである。
【0041】
なお、秘匿情報の一部としては、例えば二値データの一部である「1」または「0」などの信号であり、秘匿情報の全部とは、例えば、前記「1」または「0」の信号を組み合わせて構成され、意味を持つ情報とする。
【0042】
つまり、情報隠蔽要素23の回折格子は情報記録要素22の回折格子とは異なる回折格子角度に設定されていることから、情報記録要素22とは異なる領域へ回折光が射出するようになり、情報記録要素22が配置してある部分には、「1」を割り当てると、情報隠蔽要素23の配置してある部分には「0」を割り当てたデータとなる。
【0043】
ところで、回折格子要素群21で秘匿情報を記録してない回折格子要素は、情報隠蔽要素23の回折格子角度と同じ角度のものを配置しているが、情報記録要素22の回折格子角度以外の回折格子角度であれば、情報隠蔽要素23として配置することも可能である。
【0044】
また、情報隠蔽要素23としては、回折格子を持たない領域のみの要素として配置することも可能であるが、すべての要素を回折格子を持たない要素としてしまうと、この要素群を拡大観察したのみで回折格子の有り無しにより、秘匿情報を読取ることができてしまうため、少なくとも情報記録要素22の回折格子以外の回折格子角度の回折格子を配置することが望ましい。
【0045】
図6は、回折格子要素群41を構成する回折格子要素の別の配列例を示す平面図である。
【0046】
ここで、回折格子要素群41は、3種類の回折格子角度からなる、縦6個、横6個の36個の回折格子要素が基板表面に配置され、秘匿情報を保持する回折格子要素からなる情報記録要素42、情報記録要素44と、秘匿情報を保持することのない回折格子要素からなる情報隠蔽要素43により構成される。
【0047】
また、回折格子要素の形状は辺Hを一辺とする正方形であり、この回折格子要素の辺Hを0.05mmとすると、回折格子要素群41は0.3mm角の大きさとなり、この個々の回折格子要素は、肉眼では全く観察することができず、特定の検知装置を利用しなければ読み取ることができず、この回折格子要素群は0.3mm角の大きさの1個の回折格子として観察される。
【0048】
ところで、回折格子要素の一辺Hを0.05mmとする場合には、レーザー光による干渉縞では作製することができないことから、電子線描画装置により感光材料に電子線で回折格子の縞を直接描画することで、回折格子要素を得る。
【0049】
また、電子線描画装置ではさらに小さい寸法の回折格子要素の作製も可能ではあるが、回折格子要素を極端に小さくした場合には、読取装置の分解能をより小さくする必要があり、拡大率を大きくすることから、読取装置による画像読み取り時の振動の問題や、読み取り位置を探す場合などが難しくなる恐れがある。
【0050】
ところで、回折格子要素群41における、情報記録要素と情報隠蔽要素の配列は、各々の要素が交互に規則正しく並んだ状態であるが、この配列に限られたものではなく、予め決められた規則、方法により秘匿情報を空間的配列に変換するようにして配置されたものとする。
【0051】
また、この秘匿情報を記録した回折格子要素群41の周囲にも同様な回折格子要素からなる回折格子群を配置し、その回折格子要素には秘匿情報を保持しないようにすることで、秘匿情報を保持することのない回折格子要素群の中に、秘匿情報を保持する回折格子要素群を混在させ、これら秘匿情報を保持する回折格子要素の存否及びその位置を隠し、回折格子要素群の全体が可視画像を表現するようにすることによって、その偽造をより困難とすることができる。
【0052】
次に、本発明の実施の形態に係る秘匿情報検知装置について説明する。
【0053】
図7は、本発明の実施の形態に係る秘匿情報検知装置の原理を示す説明図である。本発明の実施の形態に係る秘匿情報検知装置は、中空で円形の拡散面を持った光源39と、読取装置40とを備えている。光源39は、回折格子要素群31を含む情報記録媒体10に照明光36を照射する。読取装置40は、照明光36が、回折格子要素群31で回折してなる回折光37を検知する検知機能と、検知機能によって検知された回折光37に基づいて、最大辺の長さHが0.15mm以下の回折格子要素32〜34を読み取ることが可能な分解能とを備えている。また、最小辺の長さが1mm以上の大きさの読取領域から、秘匿情報を読み取ることが可能な能力も備えている。なお、ここでは、回折格子要素として、方形の回折格子要素を用いて説明している。
【0054】
すなわち、図7では、回折格子要素群31は、回折格子要素32、回折格子要素33、回折格子要素34の3種類の回折格子により構成され、回折格子要素群31に中空で円形の拡散面をもった光源39により照明光を照射する際に、照明光源マスク35を円形の照明光に設け、部分的に選択した照明光36を照射するようにしている。
【0055】
そして、照明光36は回折格子要素32により回折した回折光37として所定領域38の近傍に回折されるように回折格子要素32の回折格子間隔hと、回折格子角度θ(図2参照)が設定されている。
【0056】
また、回折格子要素34からの回折光37も同様に所定領域38の近傍に回折されるように回折格子要素34の回折格子間隔hと、回折格子角度θが設定されている。
【0057】
ところで、回折格子要素33の回折格子間隔hと、回折格子角度θは、照明光源マスク35によって回折光37が射出しないように設定され、所定領域38の近傍には回折しないように設定する。
【0058】
これにより、回折格子要素32と回折格子要素34は秘匿情報を記録した情報記録要素となり、回折格子要素33は回折格子ではあるが、秘匿情報を保持しない情報隠蔽要素となる。
【0059】
次に、所定領域38の近傍に読取装置40を設け、所定領域38の近傍に回折してくる回折光37を画像として読み取る。そして、その読み取り画像から情報記録要素の配列パターンを画像処理すること等によって秘匿情報を検出する。
【0060】
ところで、図7に示すように、中空で円形の拡散面をもった照明光36を照射する光源39及び照明光源マスク35を用いず、回折光37が所定領域38の近傍に回折するような照明位置に点状の光源を設けた場合、基板の表面平滑性が悪いと、回折光37の射出角度にばらつきが発生するため、回折光37が所定領域38から外に出てしまう場合がある。
【0061】
この場合には、点状の光源ではなく、面積を持った拡散光源に変更することで、基板の表面平滑性が悪い場合でも、回折光37の射出範囲に拡がりが発生し、所定領域38に回折光37を導くことができ、秘匿情報の読み取りが可能となる。
【0062】
次に、本発明の実施の形態に係る情報記録媒体の製造方法について説明する。本発明の実施の形態に係る情報記録媒体は公知の方法で製造することが可能である。
【0063】
すなわち、まず、原盤を製造する。原盤は、基材上にレジストを塗布し、このレジスト層を多数の領域に区分して、その領域ごとにレジスト層表面に回折格子の凹凸を設ける。この凹凸は、周知のレーザー光による二光束干渉法または電子線描画法によって可能である。
【0064】
二光束干渉法による場合には前記レジストとしてフォトレジストを使用し、電子線描画法による場合にはEBレジストを使用する必要がある。なお、この凹凸は、情報記録媒体の回折格子を構成するものであるから、予めその反射回折方向を設計する必要がある。
【0065】
そして、得られた原盤から、その表面の凹凸を反転する工程を繰り返し、実用版を製造する。この実用版は、前記原盤の凹凸を正確に反映したものである。
【0066】
一方、転写箔基材上に剥離層及び保護層をこの順に塗布する。転写箔基材としては、例えば、ポリエステルフィルムなどのプラスティックフィルムが使用できる。
【0067】
また、剥離層としては、シリコーン樹脂が使用できる。保護層としては、透明性の高い樹脂が好ましく、例えば、アクリル系樹脂が使用できる。
【0068】
そして、前記実用版を熱圧して、その表面の凹凸を保護層表面に転写する。次に、この凹凸表面に光反射層を形成する。
【0069】
光反射層としては、アルミニウムや銅などの金属が使用できる。また、前記保護層と屈折率の異なる透明材料を使用することも可能である。このような透明材料としては、酸化チタン、硫化亜鉛などが例示できる。これら光反射層は、真空蒸着やスパッタリングなどの真空成膜法によって設けることが望ましい。
【0070】
なお、保護層表面に光反射層を設けた後、この光反射層表面に前記実用版を熱圧することで、凹凸を転写することも可能である。
【0071】
次に、この光反射層表面に接着層を塗布して、転写箔を得ることができる。そして、この転写箔を前記基板に重ね、接着層、光反射層及び保護層を転写し、転写箔基材と剥離層とを剥離除去して、情報記録媒体を得ることができる。
【0072】
上述したように、本実施の形態に係る情報記録媒体においては、上記のような作用により、基板表面の表面平滑性が悪い場合であっても、確実に秘匿情報を読み取ることができると共に、所定の秘匿情報を記録した領域を判別することを困難にすることが可能となる。
【0073】
また、本実施の形態に係る秘匿情報検知装置においては、上記のような作用により、本実施の形態に係る情報記録媒体のように、秘匿情報を記録した領域を判別することが困難な情報記録媒体からであっても、秘匿情報を安定して読み取ることが可能となる。
【0074】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態に係る情報記録媒体の構成例を示す平面図。
【図2】回折格子要素の一例を示す平面図。
【図3】本発明の実施の形態に係る情報記録媒体における光の回折を説明するための図。
【図4】本発明の実施の形態に係る情報記録媒体における回折格子の作製方法を説明するための概念図。
【図5】回折格子要素群を構成する複数の回折格子要素の配列例を示す平面図。
【図6】回折格子要素群を構成する複数の回折格子要素の別の配列例を示す平面図。
【図7】本発明の実施の形態に係る秘匿情報検知装置の構成例を示す概念図。
【符号の説明】
【0076】
K…回折格子、h…格子間隔、θ…格子角度、L…レーザー光、S…干渉縞、10…情報記録媒体、11…回折格子要素、21…回折格子要素群、22…情報記録要素、23…情報隠蔽要素、24…回折格子要素、31…回折格子要素群、32…回折格子要素、33…回折格子要素、34…回折格子要素、35…照明光源マスク、36…照明光、37…回折光、38…所定領域、39…光源、40…読取装置、41…回折格子要素群、42…情報記録要素、43…情報隠蔽要素、44…情報記録要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折格子を有する微小な複数の回折格子要素が基板表面に配置されており、前記回折格子要素の最大辺の長さが0.15mm以下であり、光源から照射された照明光が前記回折格子要素で回折してなる回折光の全部または一部が、空間上の所定領域に入射するように格子間隔および格子角度が設定されていると共に、少なくとも2個の回折格子要素の組み合わせからなる回折格子要素群からの前記回折光の全部または一部が前記所定領域に入射した場合、前記所定領域における再生情報和が、所定の秘匿情報として現出するようにした情報記録媒体。
【請求項2】
前記回折格子要素の平面形状が正方形又は方形であり、正方形の一辺、又は方形の長辺の長さが0.15mm以下である請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記回折格子要素の平面形状が円形又は楕円形であり、円形の直径、又は楕円形の長径が0.15mm以下である請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記回折格子要素の平面形状が正方形であり、一辺の長さが0.05mm以下であり、前記回折格子要素群の一辺の長さが1mm以下である請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記回折格子要素群の全体が可視画像を表現している請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項6】
回折格子を有する微小な複数の回折格子要素が基板表面に配置されており、光が照射されると、この光が前記回折格子要素で回折してなる回折光の全部または一部が、空間上の所定領域に入射するように格子間隔および格子角度が設定されていると共に、少なくとも2個の回折格子要素の組み合わせからなる回折格子要素群からの前記回折光の全部または一部が前記所定領域に入射した場合、前記所定領域における再生情報和が、所定の秘匿情報として現出する情報記録媒体から、前記秘匿情報を検出する装置であって、
前記情報記録媒体に前記光を照射する光源と、
前記回折光を検知する検知機能と、前記検知機能によって検知された回折光に基づいて、最大辺の長さが0.15mm以下の回折格子要素を読み取ることが可能な分解能とを備えた読取手段と
を備えた秘匿情報検知装置。
【請求項7】
前記読取手段は、前記秘匿情報を含む回折格子要素群のうち、最小辺の長さが1mm以上の大きさの回折格子要素群から、秘匿情報を読み取ることが可能な能力を備えた請求項6に記載の秘匿情報検知装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−296759(P2007−296759A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127076(P2006−127076)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】