説明

情報記録用紙及びその製造方法

【課題】電子写真方式の複写機やレーザービームプリンターにおける印字後の加熱カールが少なく、走行性が良好であり、放置後のカールが少なく、また、インクジェットプリンターにおける印字後のコックリングやブリーディングが少なく、印字品質が良好であり、且つ嵩高で剛度(コシ)が良好な情報記録用紙およびその製造方法を提供する。
【解決手段】パルプの繊維間結合を阻害する作用を持つ有機化合物を含有する情報記録用紙を、金属ロールと弾性樹脂製のエンドレスベルトを有するシューロールを備えたシューカレンダーで処理することを特徴とする情報記録用紙及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真転写適性、インクジェット記録適性等に優れた情報記録用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報記録用紙は、電子写真方式、インクジェット記録方式、熱転写方式などで印字される。
【0003】
電子写真方式においては、文字や画像は感光体表面に暗所中にてコロナ放電により電荷を貯蔵した後、原稿に対応した光像を照射し形成された電荷潜像に逆極性のトナーを選択的に付着させ、付着トナーを記録媒体である紙面に転写した後に圧力ロール/加熱ロール間での熱圧力定着の工程を経て紙面上に記録保持される。
【0004】
トナー定着時に必要な加熱ロールの温度は通常180℃であるため、紙の内部にある水分は急激に加熱蒸発する。紙はこの水分変化に伴い収縮しカールを生じるが、カールの程度が大きくなると複写機やプリンター内での走行トラブルが発生しやすく、ソーターでの集積性が悪化すると同時に後工程での作業性にも問題が生じる。近年は、複写機の小型化やフロントローディング給紙、あるいは両面コピーの多用などにより紙の走行経路が複雑になっており、わずかなカールが走行上のトラブルとなるケースが増加している。また、電子写真方式によって大量に印字を行うレーザービームプリンターの普及が著しく、高速にて1000枚以上のプリントを連続で行うため、これまで以上にカールの小さい紙が要求されている。
【0005】
さらに、電子写真方式の複写装置の小型化やフロントローディング給紙化、あるいは両面コピーの多用などによる紙の走行経路が複雑化や、また近年における印字速度の高速化等により、紙に適度な剛度(コシ)がないと走行性に不都合をきたし、紙走行中にジャミング等が発生する可能性が増加している。
【0006】
また、インクジェット記録方式においては、個々の機構によりインクノズルからインクの微小滴を吐出し、記録用紙上に付着させることにより、ドットを形成し紙面上に記録保持される。インクジェット記録方式では、平滑であり、コックリングやブリーディング等を起こさない紙が、要求されている。
【0007】
これまで、電子写真方式でのトナー定着後のカールを抑制するために、寸法安定性を考慮したパルプ原料ろ水度の調整やドライヤー差圧調整・ドライヤー上下シリンダーの通気止めなどが採用されているが、高速印字後のカールを制御するには十分でなく、また、短繊維の低減により平衡水分を低下させる方法(特許文献1参照)や、湿度を変えた際の紙の水分変化における表裏の収縮差を調整する方法(特許文献2参照)、紙を厚さ方向に多層分割した際の表面最外層の灰分量と裏面最外層の灰分量の差などを規定したもの(特許文献3参照)、オントップワイヤー式抄紙機での表面からの脱水量などを規定したもの(特許文献4参照)、紙表裏の離解濾水度差や微細繊維量差を規定したもの(特許文献5参照)等が知られているが、これらのいずれの方法も、特に高速印字後のカールや古紙パルプ高配合時のしわの発生を十分に防止することができない場合があった。また、インクジェット記録方式についてドットの広がりやにじみ等の印字画質の低下を改善するために、原紙にスチレンアクリル系のサイズ剤と水溶性高分子を含んだ溶液を塗布することで、インクの滲みやインクの均一性を有するインクジェット記録用紙(特許文献6、7参照)が知られているが、必ずしも十分な効果が得られない場合があった。
【0008】
情報記録用紙としては、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物を抄紙の際に、パルプに添加する記録用紙により、電子写真適性及びインクジェット記録適性の良好な記録用紙が開示されている(特許文献8参照)。しかしながら、ブリーディングなどのインクの滲み等の問題で品質上、十分満足できるものはなかった。
【0009】
また、上質紙の製法において、紙基体に、加熱された金属ロールと弾性ロールとから成るソフトカレンダー処理装置における金属ロールの温度が150〜250℃、線圧が80〜250kg/cmの条件下で処理することによって、ある程度、剛度の低下が少なく、嵩の高い用紙が得られる旨が開示されている。しかしながら、近年における電子写真方式複写装置の走行経路の複雑化や、印字速度の高速化による要求品質の向上のため、この方法によっても、満足する、嵩高、剛度を有した情報記録用紙は得られない。また、その他のカレンダー処理として、金属ロールと弾性樹脂製のエンドレスベルトを有するシューカレンダーを用いることが知られている(特許文献9)が、この手法では、嵩高で剛度を満足し、印字適性の良好な情報記録用紙を得ることは、不十分であった。
【特許文献1】特開平4−5662号公報
【特許文献2】特開平3−236062号公報
【特許文献3】特開平7−295280号公報
【特許文献4】特開平7−209897号公報
【特許文献5】特開平6−110243号公報
【特許文献6】特開平10−142829号公報
【特許文献7】特開平8−216505号公報
【特許文献8】特開2000−313167号公報
【特許文献9】特開2001−314941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のような状況に鑑み、本発明の課題は、電子写真方式の複写機やレーザービームプリンターにおける印字後の加熱カールが少なく、走行性が良好であり、放置後のカールが少なく、また、インクジェットプリンターにおける印字後のコックリングやブリーディングが少なく、印字品質が良好であり、且つ嵩高で剛度(コシ)が良好な情報記録用紙およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の欠点を解決すべく鋭意検討した結果、パルプの繊維間結合を阻害する作用を持つ有機化合物を含有した情報記録用紙を、金属ロールと弾性樹脂製のエンドレスベルトを有するシューロールを備えたシューカレンダーで処理することにより、電子写真方式の複写機やレーザービームプリンターにおける印字後の加熱カールが少なく、走行性が良好で、放置後の吸湿によるカールが少なく、インクジェットプリンターにおける印字後のコックリングやブリーディングが少なく、印字品質を良好にすることができ、且つ嵩高で剛度(コシ)が高い情報記録用紙を得ることにより、本発明を成すに至った。また、本発明の情報記録用紙は、パルプの繊維間結合を阻害する作用を持つ有機化合物を含有する情報記録用紙を、金属ロールと弾性樹脂製のエンドレスベルトを有するシューロールを備えたシューカレンダーで金属ロール温度60〜300℃、カレンダー線圧50〜350kN/mの条件下で処理する製造方法により得ることができる。
【0012】
本発明では、繊維間結合を阻害する作用を持つ有機化合物を含有した情報記録用紙を、金属ロールと弾性樹脂製のエンドレスベルトを有するシューロールを備えたシューカレンダーで処理することが重要である。シューカレンダーは従来のカレンダーよりもニップ幅が広く、従来カレンダー処理品と同平滑度となるように処理を行った場合、紙にかかる圧力が分散され、紙層を極力潰すことなく処理を行うことができる。本発明においては、特定の低密度の情報記録用紙にシューカレンダー処理することにより、処理前の密度を極力維持することができ、同坪量で比較した場合の紙厚が厚くなり、ひいては剛度の向上、カールの抑制、インクジェット記録時のコックリングやブリーディングの抑制に効果があると考えられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、電子写真方式などの複写機やレーザービームプリンターにおける印字後の加熱カールが少なく、走行性が良好であり、放置後のカールが少なく、また、インクジェットプリンターにおけるコックリングやブリーディングが少なく、印字品質が良好であり、且つ嵩高で剛度(こわさ)が良好な情報記録用紙を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明においては、特定の有機化合物を含有する低密度の情報記録用紙に、更に特定のカレンダー処理を施して情報記録用紙を得るものである。
【0015】
本発明の情報記録用紙は、抄紙用パルプを主体として構成され、その抄紙用パルプとしてはLBKP、NBKP,LBSP、NBSP、TMP、CTMP、BCTMP、GP、RGP等の各種木材バージンパルプの他に、新聞古紙、雑誌古紙、上質古紙等の各種古紙パルプ、さらにはケナフ、バガス、竹等の非木材繊維があげられ、必要に応じて単独または併用して用いることができる。本発明においては、紙の寸法安定性、剛度、インクのにじみ等が悪化する古紙パルプをパルプ重量当たり10重量%含有する場合、本発明の効果がより発揮される。
【0016】
本発明においては、パルプの繊維間結合を阻害する作用を持つ有機化合物である界面活性剤等の嵩高剤(低密度化剤)を使用することにより、低密度な情報記録用紙を得ることができる。パルプの繊維間結合を阻害する作用を持つ有機化合物(以下、結合阻害剤と略称する)とは、疎水基と親水基を持つ化合物で、最近、製紙用で紙の嵩高化のために上市された低密度化剤(あるいは嵩高剤)は本発明の結合阻害剤として適しており、例えば、WO98/03730号公報、特開平11−200284号公報、特開平11−350380号公報、特開2003−96694号、特開2003−96695号公報等に示される化合物が挙げられる。具体的には、高級アルコールのエチレンおよび/又はプロピレンオキサイド付加物、多価アルコール型非イオン型界面活性剤、高級脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物のエチレンオキサイド付加物、あるいは脂肪酸ポリアミドアミン、脂肪酸モノアミド等の脂肪酸アミド化合物、ポリアルキレンポリアミン・脂肪酸・エピクロロヒドリン縮合物等を使用することができ、これらを単独あるいは2種以上併用することができる。好ましくは多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物、脂肪酸ポリアミドアミン、脂肪酸ジアミドアミン、脂肪酸モノアミド等の脂肪酸アミド化合物、ポリアルキレンポリアミン・脂肪酸・エピクロロヒドリン縮合物である。販売されている薬品としては、BASF社のスルゾールVL、Bayer社のバイボリュームPリキッド、花王(株)のKB−08T、08W、KB110、115、三晶(株)のリアクトペイク、星光PMC(株)のPT−205、日本油脂(株)のDZ2220、DU3605、荒川化学(株)のR21001といった薬品があり、単独あるいは2種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明の情報記録用紙は、加熱収縮率や湿潤時の伸長率をより抑制し、電子写真用適性と共にインクジェット記録適性をより良好にするために、パルプの繊維間結合阻害剤を、パルプに対して0.02〜2.0重量%含有することが望ましい。この範囲の含有量により加熱時の収縮率の低下がより抑えられ、収縮率の表裏差が主原因となって発生する加熱カールは小さくなり、浸水時の伸長率が低下すると、紙中水分の上昇が原因で発生する吸湿波打ちが小さくなって、コピーやプリント後のしわの発生が少なくなる。
【0018】
本発明の情報記録用紙に内添する填料は特に限定されるものではなく、公知の填料の中から適宜選択して使用することができる。その填料としては、タルク、カオリン、イライト、クレー、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、二酸化チタン等をあげることができる。本発明においては製造コストの観点からタルク、カオリン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムを単独または併用して用いることが特に好ましく、その使用量は通常、紙中填料率で3〜20重量%程度である。
【0019】
さらに、本発明の情報記録用紙は、パルプの繊維間結合を阻害する作用を持つ有機化合物以外に必要に応じて、硫酸バンド、サイズ剤、紙力増強剤、導電剤、歩留まり向上剤、着色剤、染料、消泡剤等を含有してもよい。
【0020】
本発明に使用する抄紙機は、現在、一般的に使われている通常の抄紙機、例えば長網型抄紙機、及びハイブリッドフォーマーやギャップフォーマー等のツインワイヤー型抄紙機が使用できるが、最も有効なのは原料スラリーを上下より脱水を行うために表裏差の組成差が小さいツインワイヤー型抄紙機を使用することが好ましい。
【0021】
本発明においては、さらに、表面強度やサイズ性向上の目的で、水溶性高分子を主成分とする表面処理剤の塗布を行っても良い。水溶性高分子としては、エステル化澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、カチオン化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、カゼイン等の表面処理剤として通常使用されるものを単独、あるいはこれらの混合物を使用することができる。また、表面処理剤の中には、水溶性高分子の他に耐水化、表面強度向上を目的とした紙力増強剤やサイズ性付与を目的とした外添サイズ剤を添加することができる。また必要に応じて、例えばスチレン−アクリル樹脂、イソブチレン−無水マレイン酸樹脂、アクリルエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、ポリエステルエマルジョン、スチレン−ブタジエンラテックス、アクリルニトリルブタジエンラテックス等の水分散性樹脂や、さらに消泡剤、pH調整剤、色相を調整する為の染料や有色顔料、蛍光染料等を本発明の効果を損なわない範囲内で適宜併用することが可能である。また、電子写真方式よって良好な画像を得るためには、用紙の電気抵抗値を調整するために通常塩化ナトリウム等の導電剤を使用することが好ましく、特に用紙焼却時の塩素化合物発生量削減するためには、非塩素系無機化合物であることが望ましい。非塩素系無機化合物の導電剤の種類としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、燐酸二水素ナトリウム、燐酸水素二ナトリウム、及び燐酸三ナトリウム等の非塩素系アルカリ金属塩を単独又は併用して使用することがインクジェット記録におけるインク発色性の観点から特に好ましい。
【0022】
表面処理剤を塗布する方法は、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ブレードメタリングコーター、ロッドメタリングコーター、ビルブレードコーター等の塗工機によって塗布することができる。
【0023】
以上のように抄紙された情報記録用紙は、少なくともシューカレンダーで処理を行う。ここで言うシューカレンダーとは、例えば特許第2800908号に示された回転可能な金属ロールと弾性樹脂製のエンドレスベルトを有するシューロールを備えたカレンダーのことを指す。
【0024】
シューロールは、弾性樹脂製のエンドレスベルトを有し、更に必要に応じてその他の部材を有する。なお、シューロールにはエンドレスベルトの他に、加圧ユニット、及び潤滑剤を循環させる循環システムを備える。
【0025】
弾性樹脂製のエンドレスベルトは、例えば、厚手の布等を支持体とし、該支持体状に弾性樹脂を被覆して形成することができる。弾性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリイミドアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエーテル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独でも併用してもよい。これらエンドレスベルトの硬度はJIS K 6253に定められた方法で、80°〜98°が好ましい。また、表面粗さは、1.50μm以下が好ましい。
【0026】
これらのシューロールに対応する金属ロールとしては、表面の平滑な円筒状または円柱状のロールであり、その内部に加熱手段を有するものであれば、既知の金属ロールを適宜選択して使用できる。但し、表面平滑粗さは平滑なほど好ましく、0.30μm以下が好ましい。また、金属ロール温度は60℃〜300℃が好ましく、より好ましくは80℃〜220℃、更に好ましくは150〜220℃である。
【0027】
本発明において、金属ロールとシューロールにより形成されるニップ幅は、40mm〜300mmが好ましい。ニップ幅がこれより狭い場合、基紙がニップ部を通過する時間が短くなり、カレンダー効果が低くなり、これより広い場合、ニップ圧が低くなり、カレンダー効果が低くなり好ましくない。
【0028】
さらに、カレンダー線圧は、50〜350kN/m、より好ましくは100〜300kN/m、更に好ましくは100〜200kN/mとすることで、所望の密度、平滑度を得ることができる。また、処理するニップ数は、1ニップ以上行えばよいが好ましくは、2〜4ニップである。また、通紙速度が1000m/分を超える高速でも本発明の効果を有することができる。
本発明においては、例えば抄紙機エンドに設置されている通常の金属ロールのみから成るカレンダーに代えて、シューカレンダーを設置し、抄紙機上でオンラインで処理しても良いし、一旦、抄紙機でカレンダー処理しない巻取紙を、オフラインのシューカレンダーで処理しても良い。
本発明の情報記録用紙は、30〜200g/mの坪量が好ましく、より好ましくは30〜80g/m、更に好ましくは、40〜65g/mで効果を有するものである。
【0029】
本発明の情報記録用紙は、0.40〜0.75g/cmの密度が好ましく、より好ましくは0.50〜0.65g/cmである。密度がこれよりも低い場合、コピー機内のソーター収容枚数が低下し、これよりも高い場合、剛度(コシ)が低下し、ジャミング等が発生する可能性があるので好ましくない。
【0030】
本発明の情報記録用紙は、40〜80秒の平滑度(王研平滑度)が好ましい。平滑度がこれより低い場合、インクジェット記録方式において、ドットの広がりや滲みが発生し易く、これよりも高い場合、用紙の走行中に滑り等が発生する可能性があるので好ましくない。
【0031】
本発明は、電子写真用転写紙、インクジェット記録用紙、熱転写用紙あるいはそれらの共用紙などとして優れた効果を発揮するものである。本発明の用紙は、その上に顔料と接着剤を含有する塗工層を設ける原紙としても使用することもできる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、もちろんこれらの例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部および%は、それぞれ重量部、重量%を示す。
[評価項目]
(1)密度
JIS P 8118に基づいて測定した。
(2)王研平滑度
JAPAN TAPPI No.5に基づいて測定した。
(3)剛度
JIS P 8143に基づいて測定し、評価を1(劣)〜5(優)の5段階評価で行った。
(4)電子写真用記録適性
情報記録用紙の印字後カールについては、富士ゼロックス製複写機:DocuTech6135(135枚/分 A4ヨコ)を用い、1000枚を連続印刷して、走行性を評価した。ジャミング(紙詰まり)及び重送の発生した回数をトラブル回数とした。また、しわが入った用紙の枚数をしわ数とした。コピー後カール高さ(H)は、最初の20枚のカールを吊りカール法によって求めた。
(5)インクジェット記録適性
キヤノン製のインクジェット記録装置:PIXUS 990iを用いて4色印刷を行い、コックリング、ブリーディングの目視評価を1(劣)〜5(優)の5段階評価で行った。
[実施例1]
製紙用原料パルプとして、濾水度450mlのLBKP100部を用い、添加薬品としてカチオン澱粉、硫酸バンド、炭酸カルシウム、中性ロジンを、それぞれパルプ重量に対して、0.5%、1.0%、6.0%、0.6%添加し、パルプの結合阻害剤である荒川化学株式会社製R21001を0.3%添加したスラリーを調製し、シムフォーマR型抄紙機にて950m/分の速度で抄紙し、酸化デンプンを5.0%、表面サイズ剤を0.15%、導電剤として硫酸ナトリウム0.3%、炭酸ナトリウム0.1%をそれぞれ配合したサイズプレス液を両面に塗布・乾燥して固形分で1.0g/m2設け、坪量64g/m2の未カレンダー処理紙を得た。次に、未カレンダー処理紙を、ニップ幅50mmのシューカレンダーにおいて、金属ロール温度200℃、カレンダー線圧100kN/m、表裏1ニップずつの2ニップ、通紙速度1200m/分でカレンダー処理を行い情報記録用紙を得た。
[実施例2]
実施例1において、荒川化学株式会社製R21001を0.3%の代わりに0.6%に変更したこと以外は実施例1と同様に情報記録用紙を得た。
[実施例3]
実施例1において、荒川化学株式会社製R21001の代わりに星光PMC株式会社製PT203に変更したこと以外は、実施例1と同様に情報記録用紙を得た。
[実施例4]
実施例1において、荒川化学株式会社製R21001を0.3%の代わりに、星光PMC株式会社製PT203を0.6%に変更したこと以外は、実施例1と同様に情報記録用紙を得た。
[実施例5]
実施例1において、荒川科学株式会社製R21001の代わりに花王株式会社製KB−115に変更したこと以外は、実施例1と同様に情報記録用紙を得た。
[実施例6]
実施例1において、荒川科学株式会社製R21001の代わりに星光PMC株式会社製PT−205に変更したこと以外は、実施例1と同様に情報記録用紙を得た。
[比較例1]
実施例1において、乾燥後のカレンダー処理をシューカレンダーの代わりに、金属ロール表面温度100℃、通紙速度1200m/分、線圧100kN/m、カレンダーニップ数2ニップの条件で高温ソフトニップカレンダー処理を行った以外は、実施例1と同様に情報記録用紙を得た。
[比較例2]
実施例1において、パルプの繊維間結合を阻害する作用を持つ有機化合物である荒川化学株式会社製R21001を配合しないこと以外は、実施例1と同様に情報記録用紙を得た。
表1に結果を示した。
【0033】
【表1】

【0034】
表1の結果から、実施例1〜6で得られた情報記録用紙は、結合阻害剤を配合し、シューカレンダー処理をすることにより密度上昇を抑えて嵩と剛度(コシ)を維持しながら、平滑性が良好で、コピー適性、インクジェット適性に優れた情報記録用紙が得られた。一方、比較例1は、シューカレンダーの代わりに高温ソフトニップカレンダー処理に変更しており、密度が高く、剛度(コシ)が低くなり、コピー適性、インクジェット適性に劣る。比較例2は、結合阻害剤を配合していないため、高密度であり、コピー適性、インクジェット適性に劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプの繊維間結合を阻害する作用を持つ有機化合物を含有する情報記録用紙を、金属ロールと弾性樹脂製のエンドレスベルトを有するシューロールを備えたシューカレンダーで処理することを特徴とする情報記録用紙。
【請求項2】
パルプの繊維間結合を阻害する作用を持つ有機化合物を含有する情報記録用紙を、金属ロールと弾性樹脂製のエンドレスベルトを有するシューロールを備えたシューカレンダーで金属ロール温度60〜300℃、カレンダー線圧50〜350kN/mの条件下で処理することを特徴とする情報記録用紙の製造方法。

【公開番号】特開2006−283208(P2006−283208A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−102062(P2005−102062)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】