説明

情報読取装置

【課題】 複数の読取操作キーを備えた情報読取装置において、有効な手振れ対策を実施して、読取性能を向上させる。
【解決手段】 本発明の情報読取装置1は、照明手段により照明された情報コードの反射光を受光して受光信号を出力するセンサを備え、このセンサからの受光信号に基づいて情報コードを光学的に読み取るように構成されたものであって、本体2の複数の部位に、複数の読取操作キー5、8を設けると共に、これら複数の読取操作キー5、8の操作特性に応じた手振れ対策を実施するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーコードや2次元コード等の情報コードを光学的に読み取るように構成された情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の情報読取装置においては、情報コードを読み取るときに、トリガーキー(読取操作キー)を押すときの操作に伴う手振れの影響によって読み取りができなくなることがあった。このため、従来の情報読取装置では、手振れの影響を少なくするために、スキャン時間またはシャッター時間(即ち、露光時間)を短くするように制限していた。この場合、露光時間の制限値は、情報読取装置毎に1つ設定されていた。
【0003】
尚、ビデオカメラやデジタルカメラの手振れ対策としては、特許文献1、2に記載された構成が知られている。
【特許文献1】特開2000−147586号公報
【特許文献2】特開2000−341577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、情報読取装置の中には、装置の本体の複数の部位に、複数のトリガーキーを配設したものがある。このような構成の情報読取装置の場合、トリガーキーの配設位置により、本体の持ち方や、トリガーキーの操作方法(押し方)等が異なるため、手振れも異なる。このため、複数のトリガーキーを備えた情報読取装置の場合、上述したように、手振れ対策の方式や制限値が1つであると、適切な設定による手振れの対策を実行できず、適切な読み取りができなくなることがあった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、装置本体に複数の読取操作キーを備えた構成であっても、手振れを有効に抑制することができて、読取性能を向上させ得る情報読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の情報読取装置は、情報コードからの反射光を受光して前記情報コードを光学的に読み取るように構成されたものにおいて、装置本体の複数の部位に設けられた複数の読取操作キーと、前記複数の読取操作キーの操作特性に応じて手振れの影響を軽減する手振れ軽減手段とを備えるところに特徴を有する。
【0007】
上記構成によれば、手振れ軽減手段により複数の読取操作キーの操作特性に応じて手振れの影響を軽減するように構成したので、複数の読取操作キーを備えた構成であっても、手振れを有効に軽減することができて、読取性能を向上させ得る。
【0008】
また、上記構成の場合、前記情報コードからの反射光を受光して受光信号を出力するセンサを備え、前記手振れ軽減手段は、前記複数の読取操作キーのうち、他の読取操作キーよりも大きな手振れが生ずる読取操作キーが操作された場合に、前記他の読取操作キーが操作された場合よりも短く前記センサの露光時間を設定するセンサ制御手段であることが好ましい。
【0009】
更に、前記情報コードを照明する照明手段を備え、前記手振れ軽減手段は、前記複数の読取操作キーのうち、他の読取操作キーよりも大きな手振れが生ずる読取操作キーが操作された場合に、前記他の読取操作キーが操作された場合よりも明るい照度で前記照明手段を照明させる照明制御手段であることが良い構成である。
【0010】
更にまた、前記情報コードからの反射光を受光して受光信号を出力するセンサを備え、前記手振れ抑制手段は、前記複数の読取操作キーのうち、他の読取操作キーよりも大きな手振れが生ずる読取操作キーが操作された場合に、前記他の読取操作キーが操作された場合よりも短く前記センサの露光時間を設定するセンサ制御手段であることが好ましい構成である。
【0011】
また、前記照明手段は発光素子であり、前記照明制御手段は、前記発光素子の許容電流値まで明るく照明させることがより一層良い構成である。
また、前記照明制御手段は、前記センサ制御手段により前記センサの露光時間が設定された後、設定された前記露光時間に応じて前記照明手段の照度を設定するように構成されていることが好ましい。
【0012】
更に、前記センサからの受光信号を増幅する信号増幅回路を備え、前記手振れ軽減手段は、前記複数の読取操作キーのうち、他の読取操作キーよりも大きな手振れが生ずる読取操作キーが操作された場合に、前記他の読取操作キーが操作された場合よりも大きく前記信号増幅回路のゲインを設定する増幅回路制御手段であることが良い構成である。
【0013】
更にまた、前記増幅回路制御手段は、前記センサ制御手段により前記センサの露光時間が設定された後、設定された前記露光時間に応じて前記増幅回路のゲインを設定するように構成されていることがより一層好ましい。
【0014】
また、前記情報コードを照明する照明手段と、前記センサからの受光信号を増幅する信号増幅回路とを備え、前記手振れ軽減手段は、前記複数の読取操作キーのうち、他の読取操作キーよりも大きな手振れが生ずる読取操作キーが操作された場合に、前記他の読取操作キーが操作された場合よりも明るい照度で前記照明手段を照明させる照明制御手段、および前記複数の読取操作キーのうち、他の読取操作キーよりも大きな手振れが生ずる読取操作キーが操作された場合に、前記他の読取操作キーが操作された場合よりも大きく前記信号増幅回路のゲインを設定する増幅回路制御手段を有するように構成されていることが好ましい。
【0015】
更に、前記照明制御手段および前記増幅回路制御手段は、少なくとも前記センサ制御手段により前記センサの露光時間が設定された後、設定された前記露光時間に応じて前記照明手段の照度および前記増幅回路のゲインを設定するように構成されている良い。
【0016】
また、前記複数の読取操作キーのうち、いずれの読取操作キーが操作されたかを検出する読取操作キー検出手段を備え、前記センサ制御手段は、前記読取操作キー検出手段の検出結果に基づいて前記複数の読取操作キーの各々に設定された露光時間に設定するように構成されていることがより一層良い構成である。
【0017】
更に、前記複数の読取操作キーのうち、いずれの読取操作キーが操作されたかを検出する読取操作キー検出手段を備え、前記センサ制御手段および前記照明制御手段は、前記読取操作キー検出手段の検出結果に基づいて前記複数の読取操作キーの各々に設定された露光時間および照度に設定するように構成されていることも好ましい構成である。
【0018】
更にまた、前記複数の読取操作キーのうち、いずれの読取操作キーが操作されたかを検出する読取操作キー検出手段を備え、前記センサ制御手段および前記増幅回路制御手段は、前記読取操作キー検出手段の検出結果に基づいて前記複数の読取操作キーの各々に設定された露光時間および前記増幅回路のゲインに設定するように構成されていることも良い構成である。
【0019】
また、前記複数の読取操作キーのうち、いずれの読取操作キーが操作されたかを検出する読取操作キー検出手段を備え、前記センサ制御手段、前記照明制御手段および前記増幅回路制御手段は、前記読取操作キー検出手段の検出結果に基づいて前記複数の読取操作キーの各々に設定された露光時間、照度および前記増幅回路のゲインに設定するように構成されていることもより一層好ましい。
【0020】
また、前記センサは複数の受光画素により構成されており、前記センサ制御手段は、前記情報コードの最小モジュール幅に対する前記センサの受光画素数により算出された露光時間を上限値として制御することが好ましい構成である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明をバーコードリーダに適用した第1の実施例について、図1及び図2を参照しながら説明する。まず、図1(a)は本実施例のバーコードリーダ(情報読取装置)1の上面図、図1(b)は上記バーコードリーダ1の側面図である。これら図1(a)、(b)に示すように、バーコードリーダ1は、ガンタイプのバーコードリーダであり、その装置本体2は、本体主部3と、この本体主部3の下面部から下方へ向けて突設されたグリップ部4とから構成されている。
【0022】
グリップ部4は、ユーザー(操作者)が手で握る部分であり、このグリップ部4の上部の図1(b)中の左端部にトリガーキー(読取操作キー)5が配設されている。このトリガーキー5は、バーコードリーダ1の読取動作を開始させるためのスイッチであり、ユーザーがオン操作(押し込み操作)している間、読取動作が続けられるように構成されている。
【0023】
本体主部3は、全体として細長のほぼ矩形箱状に構成されており、その図1中左端面部には、透明部材からなる矩形状の読取口(図示しない)が設けられている。本体主部3の上面部における図1中のほぼ左半部には、例えばLCDからなるディスプレイ6が配設され、ほぼ右半部には、種々のキーを有するキー操作部7が配設されている。また、ディスプレイ6の表面には、タッチパネル6aが設けられている。
【0024】
この構成の場合、キー操作部7の中の設定された1つまたは複数のキーを、トリガーキー(読取操作キー)として使用(設定)することができるように構成されている。そして、タッチパネル6aも、トリガーキー(読取操作キー)として使用することができるように構成されている。尚、キー操作部7の中のキーまたはタッチパネル6aを、トリガーキーとして使用するか、否かは、ユーザーの設定操作により設定可能なように構成されている。
【0025】
また、本体主部3の図1(a)中の上下の側面部における図1(a)中の左右方向のほぼ中間部には、トリガーキー(読取操作キー)8、8が配設されている。
一方、バーコードリーダ1の電気的構成について、図2のブロック図を参照して説明する。この図2に示すように、バーコードリーダ1は、CPU9、ROM10、RAM11、I/O回路12、CCDセンサ13、信号増幅回路14、A/D変換回路15、ディスプレイ6、キー操作部7、トリガーキー5、8、及び、タッチパネル6a等を備えて構成されている。
【0026】
CPU9は、バーコードリーダ1の動作全般を制御する機能を有している。CCDセンサ13は、例えば1次元タイプのCCDセンサで構成されており、このCCDセンサ13と結像レンズ16と照明用LED(照明手段)17等で光学系ユニット18が構成されている。上記照明用LED17は、CPU9によりI/O回路12を介して駆動制御されるように構成されている。
【0027】
この構成の場合、CPU9は、照明用LED17に与える電力(例えば電流)の大きさを調整することにより、照明用LED17の光量を増減調整できるように構成されている。尚、照明用LED17の前方には、図示しない投光レンズを設けることが好ましい。更に、照明用LED17を複数設けても良い。
【0028】
上記構成においては、照明用LED17から発光された光は、読取口を通って、紙や物品等に印刷されたバーコード(情報コード)19に照射されて、これを照明するように構成されている。バーコード19からの反射光は、読取口を通り、結像レンズ16を介することにより、CCDセンサ13上に結像されるように構成されている。
【0029】
そして、CCDセンサ13はバーコード19の反射光を受光して受光信号を出力し、この受光信号は、信号増幅回路14で増幅された後、A/D変換回路15を介してデジタル信号(データ信号)に変換され、このデータ信号はCPU9へ与えられるように構成されている。CPU9は、上記データ信号に基づいて前記バーコード19をデコードすることにより、バーコード19を光学的に読み取るように構成されている。そして、デコード結果(デコードデータ)は、I/O回路12を介して通信部及び通信ケーブル(いずれも図示しない)等を通り、図示しない外部の機器(ホスト装置)へ送信されるように構成されている。尚、デコードデータは、ディスプレイ6にも表示されるようになっている。
【0030】
また、CPU9は、トリガーキー5、8からの各キー信号を受けて、トリガーキー5、8がオン操作されたか否かを各別に判断可能なように構成されている。この場合、トリガーキーには、専用のトリガーキー5、8だけでなく、キー操作部7の中の所定のキーをトリガーキーとして設定した場合と、タッチパネル6aをトリガーキーとして設定した場合とが含まれている。
【0031】
そして、本実施例においては、上記複数のトリガーキーの操作特性に応じた手振れ対策が実施されている。具体的には、グリップ部4のトリガーキー5を押すときは、グリップ部4を握るため、左右方向のぶれのみとなり、手振れは少ない。したがって、手振れ対策も軽度のもので良い。これに対して、本体主部3の両側面部のトリガーキー8、8を押すときは、本体2の上方からトリガーキー8、8に親指と人指し指を当てると共に、本体2を手で握る。このときは、グリップ部4を握るときよりも、手振れが大きくなり、したがって、手振れ対策も重くする必要がある。
【0032】
また、本実施例では、具体的な手振れ対策の1つとして、照明用LED17に供給する電力(例えば電流i)を大きくして、照明用LED17から明るい照明光を照射させる、即ち、照明光量を多くしている。また、他の手振れ対策の1つとして、CCDセンサ13のスキャン時間またはシャッタ時間、即ち、露光時間tを短くするようにしている。更に、他の手振れ対策の1つとして、信号増幅回路14のゲインGを大きくするようにしている。
【0033】
そして、上記実施例においては、手振れが大きいほど、照明光量(電流i)を大きくし、露光時間tを小さくし、ゲインGを大きくするように制御する構成となっている。この制御は、CPU9により実行されるように構成されている。この場合、CPU9は、手振れ軽減手段、照明制御手段、センサ制御手段、増幅回路制御手段としての各機能を有している。
【0034】
ここで、手振れの影響を軽減するために、照明光量(照度、電流i)、露光時間t、ゲインGを調整する制御(CPU9による手振れ軽減制御)の一例について、図3のフローチャートを参照して説明する。尚、図3においては、複数のトリガーキーの中の例えばトリガーキー8を操作したときの制御を説明している。
【0035】
まず、トリガーキー8を操作していないときに、ステップS1にて「NO」へ進み、電流i、露光時間t、ゲインGに、それぞれ予め決めた初期値i0、t0、G0を設定しておく(ステップS2)。この状態で、ユーザーがトリガーキー8を押下操作すると、ステップS1にて「YES」へ進み、ステップS3へ進み、ここで、露光時間t(即ち、t0)を設定値βだけ小さくする処理、即ち、t=t−βの演算を実行してから、読み取り処理を実行する。
【0036】
続いて、ステップS4へ進み、手振れが発生したか否かを判断する(読み取ったデータに基づいて手振れ判断を行う)。そして、手振れが発生していないと判断されたときには、ステップS4にて「NO」へ進み、手振れ軽減制御を終了する。これに対して、手振れが発生していると判断されたときには、ステップS4にて「YES」へ進み、ステップS5へ進み、ゲインG(即ち、G0)を設定値γだけ大きくする処理、即ち、G=G+γの演算を実行してから、読み取り処理を実行する。
【0037】
そして、ステップS6へ進み、手振れが発生したか否かを判断する。そして、手振れが発生していないと判断されたときには、ステップSにて「NO」へ進み、手振れ軽減制御を終了する。これに対して、手振れが発生していると判断されたときには、ステップS6にて「YES」へ進み、ステップS7へ進み、電流i(即ち、i0)を設定値αだけ大きくする処理、即ち、i=i+αの演算を実行してから、読み取り処理を実行する。
【0038】
続いて、ステップS8へ進み、手振れが発生したか否かを判断する。そして、手振れが発生していないと判断されたときには、ステップS8にて「NO」へ進み、手振れ軽減制御を終了する。これに対して、手振れが発生していると判断されたときには、ステップS8て「YES」へ進み、ステップS1へ戻り、以下、手振れが発生しなくなるまで、上述した制御(S1〜S8)を繰り返すように構成されている。この構成の場合、電流i(照明光量、照度)、露光時間t、ゲインGは徐々に変わっていく。
【0039】
また、他のトリガーキーについても、それぞれ同様にして手振れ軽減制御が実行されるように構成されている。そして、このような手振れ軽減制御が実行されることにより、次の各制御が実現されている。即ち、複数の読取操作キーのうち、他の読取操作キーよりも大きな手振れが生ずる読取操作キーが操作された場合に、他の読取操作キーが操作された場合よりも短くCCDセンサ13の露光時間を設定する制御が実現されている。そして、複数の読取操作キーのうち、他の読取操作キーよりも大きな手振れが生ずる読取操作キーが操作された場合に、他の読取操作キーが操作された場合よりも明るい照度で照明用LED17を照明させる制御が実現されている。更に、複数の読取操作キーのうち、他の読取操作キーよりも大きな手振れが生ずる読取操作キーが操作された場合に、他の読取操作キーが操作された場合よりも大きく信号増幅回路14のゲインを設定する制御が実現されている。
【0040】
尚、電流i、露光時間t、ゲインGの各初期値i0、t0、G0や各設定値α、β、γの具体値については、複数のトリガーキー毎に適宜変えるように設定しても良い。
このような構成の本実施例によれば、複数の読取操作キー5、8等を備えたバーコードリーダ1において、各読取操作キー5、8等の操作特性に応じて手振れの影響を軽減するように構成したので、複数の読取操作キー5、8等を備えた構成であっても、手振れの影響を有効に軽減することができて、読取性能を向上させることができる。特に、本実施例では、手振れが大きい操作特性を有するトリガーキーが操作された場合に、照明光量を増大(明るい照度で照明)させたり、露光時間t(シャッタ時間)を短くしたり、また、ゲインGを大きくしたりするように設定する手触れ対策を実行することから、手振れを効果的に軽減できて、手振れによる読み取り不良を低減することができる。
【0041】
尚、上記実施例において、照明用LED17の照度を明るくするに際して、最大明るさ(最大電流i)の制限を設けることが好ましい。この最大電流iの制限は、バーコードリーダ1全体の消費電流と照明用LED17(発光素子)に流すことができる許容電流値とに基づいて決めることができる。この場合、全体の消費電流が許せば、照明用LED17の許容電流値まで明るく照明させることが好ましい。また、信号増幅回路14のゲインGを大きくするに際しても、最大ゲインGの制限を設けることが好ましい。
【0042】
更に、照明用LED17の照度を明るくする制御と、信号増幅回路14のゲインGを大きくする制御を同時に実行するように構成しても良いし、また、何れか一方を優先するように制御しても良い。例えば、照度を明るくする制御を優先し、最大明るさに達した後は、ゲインGを大きくする制御を実行するようにしても良い。また、ゲインGを大きくする制御を優先し、最大ゲインに達した後は、照度を明るくする制御を実行するようにしても良い。そして、これらの制御の中から、システム的に有利なものを適宜選択すれば良い。
【0043】
更に、上記実施例においては、露光時間tを短くする制御(センサ制御)を最優先に実行するように構成したが、これに限られるものではなく、他の制御(ゲイン制御や明るさ(照度)制御)を優先的に実行するように構成しても良いし、各制御を平行して実行するように構成しても良い。
【0044】
また、上記実施例において、露光時間tを手振れが起きない範囲で大きくすることは、SN改善になるので、できるだけ露光時間tを大きくしたいことから、露光時間tの最大値の制限を設定することが好ましい。そして、露光時間tの最大値を設定するに際しては、情報コードの最小モジュール幅に対するCCDセンサ13の割り当て画素数から算出して設定する方法がある。以下、この設定方法について、図4を参照して説明する。
【0045】
図4には、バーコード(バーコードラベル)21と、CCDセンサ13と、結像レンズ16との位置関係が示されている。この図4に示すように、バーコード21の最小モジュール幅をWとし、バーコード21と結像レンズ16との距離をLとし、CCDセンサ13の1画素あたりの角度をθ0とし、手振れによる振れ角度をωとし、露光時間をtとする。
【0046】
上記構成において、手振れによるバーコードラベル21面における振れ距離d1は、次の(1)式で求められる。
d1≒L*ω*t (1)
また、バーコード21の最小モジュール幅をWは、次の(2)式で求められる。
【0047】
W≒n*L*θ0 (2)
ただし、nは最小モジュールあたりのCCDセンサ13の割り当て画素数である。
また、手振れによる読取り条件は、手振れによる移動距離が最小モジュール以内とする。更に、手振れに伴う実験検証による補正係数αを考慮して、次の(3)式が成立する。
【0048】
W≧d1*α (3)
従って、露光時間tは、次の(4)式となる。
t≦(n*θ0)÷(ω*α) (4)
この(4)式において、CCDセンサ13の1画素あたりの角度θ0は、光学設計値から固有の定数で既にわかっている値である。そして、読取り条件の補正係数αは、実験による値であるが、固有の定数となる。
【0049】
また、トリガーキーの押す位置に依存する手振れによる角速度ωは、予め測定することができるから、押すキーの位置による固有の定数になる。更に、最小モジュールあたりのCCDセンサ13の画素割り当てnは、CPUにより容易にわかるため、露光時間tの最大値を求めることができる。これにより、露光時間tの最大値の制限を、バーコードの最小モジュール幅に対するCCDセンサの割り当て画素数により算出できることがわかる。
【0050】
そして、上述したようにして求めた露光時間tの最大値(上限値)の制限下で、露光時間tの最適値制御を実行すれば良い。このように構成すれば、SNが改善されると共に、手振れを抑制でき、読み取り性能を向上させることができる。
【0051】
尚、上記実施例においては、電流i(照明光量)、露光時間t、ゲインGを徐々に変動させていくように制御する構成としたが、これに限られるものではなく、複数のトリガーキー毎に、電流i(照明光量)、露光時間t、ゲインGの各値を固定的に設定するように構成しても良い。この場合、実験等に基づいて各値(固定値)を設定すれば良い。
【0052】
そして、このように構成した場合、バーコード19を読み取るために、ユーザーがバーコードリーダ1のトリガーキー5、8等の中の1つを操作すると、バーコードリーダ1のCPU9は複数のトリガーキーの中のどのキーが操作されたかを判断し、この判断したトリガーキー(押されたトリガーキー)に対応する電流i(照明光量、照度)、露光時間t、ゲインGの各値を設定し、これら設定した条件でバーコード19の読み取り処理を実行すれば良い。この構成の場合、CPU9は、読取操作キー検出手段としての機能を有している。尚、上記構成において、電流i(照明光量、照度)、露光時間t、ゲインGの各値を設定するに際しては、3つを全て設定しても良いし、3つの中のいづれか1つを設定しても良いし、3つの中の2つを適宜選択して組み合わせて設定しても良い。
【0053】
また、上記実施例においては、本発明をガンタイプのバーコードリーダ1に適用したが、これに代えて、通常タイプ(即ち、グリップ部4がないタイプ)のバーコードリーダ、例えば、図5において第2の実施例として示すバーコードリーダ20に適用することが好ましい構成である。
【0054】
更にまた、上記実施例においては、本発明をバーコードリーダ1に適用したが、これに限られるものではなく、2次元コード(例えばQRコード等)を読み取る2次元コードリーダに適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施例を示すもので、(a)はバーコードリーダの上面図、(b)はバーコードリーダの側面図
【図2】ブロック図
【図3】フローチャート
【図4】バーコードとCCDセンサと結像レンズとの位置関係を示す図
【図5】本発明の第2の実施例を示す図1(b)相当図
【符号の説明】
【0056】
図面中、1はバーコードリーダ(情報読取装置)、2は装置本体、3は本体主部、4はグリップ部、5はトリガーキー(読取操作キー)、6はディスプレイ、6aはタッチパネル、7はキー操作部、8はトリガーキー(読取操作キー)、9はCPU(手振れ軽減手段、照明制御手段、センサ制御手段、増幅回路制御手段、読取操作キー検出手段)、13はCCDセンサ、14は信号増幅回路、17は照明用LED(照明手段)、19はバーコード、20はバーコードリーダ(情報読取装置)を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報コードからの反射光を受光して前記情報コードを光学的に読み取るように構成された情報読取装置において、
装置本体の複数の部位に設けられた複数の読取操作キーと、
前記複数の読取操作キーの操作特性に応じて手振れの影響を軽減する手振れ軽減手段と、を備えることを特徴とする情報読取装置。
【請求項2】
前記情報コードからの反射光を受光して受光信号を出力するセンサを備え、
さらに、前記手振れ軽減手段は、前記複数の読取操作キーのうち、他の読取操作キーよりも大きな手振れが生ずる読取操作キーが操作された場合に、前記他の読取操作キーが操作された場合よりも短く前記センサの露光時間を設定するセンサ制御手段であることを特徴とする請求項1記載の情報読取装置。
【請求項3】
前記情報コードを照明する照明手段を備え、
さらに、前記手振れ軽減手段は、前記複数の読取操作キーのうち、他の読取操作キーよりも大きな手振れが生ずる読取操作キーが操作された場合に、前記他の読取操作キーが操作された場合よりも明るい照度で前記照明手段を照明させる照明制御手段であることを特徴とする請求項2記載の情報読取装置。
【請求項4】
前記照明手段は発光素子であり、前記照明制御手段は、前記発光素子の許容電流値まで明るく照明させることを特徴とする請求項3記載の情報読取装置。
【請求項5】
前記照明制御手段は、前記センサ制御手段により前記センサの露光時間が設定された後、設定された前記露光時間に応じて前記照明手段の照度を設定することを特徴とする請求項3記載の情報読取装置。
【請求項6】
前記センサからの受光信号を増幅する信号増幅回路を備え、
さらに、前記手振れ軽減手段は、前記複数の読取操作キーのうち、他の読取操作キーよりも大きな手振れが生ずる読取操作キーが操作された場合に、前記他の読取操作キーが操作された場合よりも大きく前記信号増幅回路のゲインを設定する増幅回路制御手段であることを特徴とする請求項2記載の情報読取装置。
【請求項7】
前記増幅回路制御手段は、前記センサ制御手段により前記センサの露光時間が設定された後、設定された前記露光時間に応じて前記増幅回路のゲインを設定することを特徴とする請求項6記載の情報読取装置。
【請求項8】
前記情報コードを照明する照明手段と、
前記センサからの受光信号を増幅する信号増幅回路と、を備え、
さらに、前記手振れ軽減手段は、
前記複数の読取操作キーのうち、他の読取操作キーよりも大きな手振れが生ずる読取操作キーが操作された場合に、前記他の読取操作キーが操作された場合よりも明るい照度で前記照明手段を照明させる照明制御手段、
および前記複数の読取操作キーのうち、他の読取操作キーよりも大きな手振れが生ずる読取操作キーが操作された場合に、前記他の読取操作キーが操作された場合よりも大きく前記信号増幅回路のゲインを設定する増幅回路制御手段、
を有することを特徴とする請求項2記載の情報読取装置。
【請求項9】
前記照明制御手段および前記増幅回路制御手段は、少なくとも前記センサ制御手段により前記センサの露光時間が設定された後、設定された前記露光時間に応じて前記照明手段の照度および前記増幅回路のゲインを設定することを特徴とする請求項8記載の情報読取装置。
【請求項10】
前記複数の読取操作キーのうち、いずれの読取操作キーが操作されたかを検出する読取操作キー検出手段を備え、
前記センサ制御手段は、前記読取操作キー検出手段の検出結果に基づいて前記複数の読取操作キーの各々に設定された露光時間に設定することを特徴とする請求項2記載の情報読取装置。
【請求項11】
前記複数の読取操作キーのうち、いずれの読取操作キーが操作されたかを検出する読取操作キー検出手段を備え、
前記センサ制御手段および前記照明制御手段は、前記読取操作キー検出手段の検出結果に基づいて前記複数の読取操作キーの各々に設定された露光時間および照度に設定することを特徴とする請求項3記載の情報読取装置。
【請求項12】
前記複数の読取操作キーのうち、いずれの読取操作キーが操作されたかを検出する読取操作キー検出手段を備え、
前記センサ制御手段および前記増幅回路制御手段は、前記読取操作キー検出手段の検出結果に基づいて前記複数の読取操作キーの各々に設定された露光時間および前記増幅回路のゲインに設定することを特徴とする請求項6記載の情報読取装置。
【請求項13】
前記複数の読取操作キーのうち、いずれの読取操作キーが操作されたかを検出する読取操作キー検出手段を備え、
前記センサ制御手段、前記照明制御手段および前記増幅回路制御手段は、前記読取操作キー検出手段の検出結果に基づいて前記複数の読取操作キーの各々に設定された露光時間、照度および前記増幅回路のゲインに設定することを特徴とする請求項8記載の情報読取装置。
【請求項14】
前記センサは複数の受光画素により構成されており、前記センサ制御手段は、前記情報コードの最小モジュール幅に対する前記センサの受光画素数により算出された露光時間を上限値として制御することを特徴とする請求項2または請求項3または請求項6または請求項8記載の情報読取装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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