説明

情報通信装置

【課題】電話網からの着信およびデータ通信と、情報機器とのデータ通信とが競合した場合のデータの不整合や破壊を防止し、両者の並行処理を実現することを課題とする。
【解決手段】電話網を介した通信を行う第1通信部と、情報機器とデータ通信を行う第2通信部と、前記第1通信部と前記第2通信部によって通信される情報を記憶する記憶部と、第1通信部による通信と第2通信部による通信とを並行して実行されるように制御する制御部とを備え、前記記憶部に、前記第1通信部を介して受信された情報を格納する第1の記憶領域と、前記第2通信部を介して通信される情報を格納する前記第1の記憶領域とは異なる第2の記憶領域とを設けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報通信装置に関し、特に、パソコン等の情報機器とのデータ通信と、有線又は無線の電話網を介した通話およびデータ通信とが可能な情報通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話は、電話網を介して他の携帯電話や一般加入電話回線に接続された電話機と通話する機能の他に、他の携帯電話と電子メール等の送受信を行うデータ通信機能を有する。
また、通話やデータ通信を行うために、いわゆる電話をかけるための発信機能や、他の電話機からの着信を検出する着信検出機能を有し、電子メール等の受信データを内部メモリに格納するメモリ機能を有している。
【0003】
さらに、携帯電話の中には、USBケーブルを接続するコネクタを備え、パソコン等の情報機器とUSBケーブルで接続し、受信した電子メール等をパソコンに転送したり、パソコンから電話帳などの設定データや送信すべきデータを受け取り内部メモリに格納する機能を有するものもある(たとえば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の携帯電話機では、USBケーブルを介してパソコンに接続されると、その携帯電話機はそのパソコンの外部記憶装置として利用される。
【特許文献1】特開2002−359694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のものでは、USBケーブルでパソコンと接続した状態では、パソコンとの間でデータ通信は可能であるが、電話網を介した通話やデータ通信はできない。すなわち発信機能や着信機能は停止されており、携帯電話機はパソコンの外部記憶装置としてのみ動作が可能である。
したがって、USBケーブルが接続された状態の携帯電話に着信があってもその着信は拒絶され、携帯電話の所有者が、着信があったことを知ることはできなかった。逆に言えば、その所有者に緊急の電話をかけたい者が発信をしても、その所有者の携帯電話がUSBケーブル接続状態である場合は、その発信は受けつけられず、通話できない状態となっていた。
【0005】
また、従来の携帯電話に電話網から通話による着信があった場合には、着信履歴の更新等をするために、その携帯電話の内部メモリが書き換えられ、電話網から電子メール等の受信があった場合も、その受信データの保存のために内部メモリが書き換えられる。
ここで、携帯電話がパソコン等の外部記憶装置として利用される場合には、内部メモリは一般にFATのようなファイルシステム構造で管理される。しかし外部記憶装置として利用した後に、電話網からの着信を単に受けつけるようにしただけでは、着信時の内部メモリの書き換えが生じるために、パソコンによって格納されていたデータの不整合や破壊が起こる場合もある。
すなわち、同じ記憶領域に対してデータの上書きによる破壊が起こる可能性がある。
【0006】
図10に、パソコンから内部メモリに書き込まれたデータの不整合や破壊が生じた場合の説明図を示す。
図10(a)は、USBケーブルで接続する前において、携帯電話の内部メモリに記憶されたデータの一部分を示している。
図10(b)は、USBケーブルが接続され、パソコンでのテキスト編集によりパソコン上のデータの一部分が変更された状態を示している。
【0007】
このような状態で、その後着信があり、着信履歴が更新されたとすると、携帯電話の内部メモリでは、図10(c)のように、1行目と2行目のデータ(1 9月13日 15:00,T本 090−1357−1357)が追加される。
さらにその後、パソコンから編集されたデータの保存命令が実行されると、携帯電話の内部メモリは、図10(d)の3つの状態のいずれかとなり、データの不都合が生じる場合がある。
図10(d)の(I)は、着信履歴が消去された場合を示しており、(II)は記憶されるべき編集データの一部に不整合が生じた場合を示しており、(III)は、内部メモリのデータが完全に破壊されて読み出せなくなってしまった場合を示している。
【0008】
パソコンとのデータ通信と、電話網からの着信時のデータ通信とを同時間帯に並行して行うためには、パソコンから書き込まれるデータを記憶する領域と、電話網からの着信時に書き込まれるデータを記憶する領域を完全に分けて携帯電話の内部メモリを管理することが必要となる。しかし、相手先の電話番号など両者のデータ通信で共有されるデータについては完全に分離して管理することは難しく、意図しない書き換えや破壊が起こらないように注意する必要がある。
【0009】
そこで、この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであり、電話網を介した通話およびデータ通信と、パソコン等の情報機器とのデータ通信とが同時間帯に並行して行えるようにし、あるいは両方のデータ通信が競合してもデータの不整合が起こらないようにした情報通信装置を提供することを課題する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、電話網を介した通信を行う第1通信部と、情報機器とデータ通信を行う第2通信部と、前記第1通信部と前記第2通信部によって通信される情報を記憶する記憶部と、第1通信部による通信と第2通信部による通信とを並行して実行されるように制御する制御部とを備え、前記記憶部に、前記第1通信部を介して受信された情報を格納する第1の記憶領域と、前記第2通信部を介して通信される情報を格納する前記第1の記憶領域とは異なる第2の記憶領域とを設けることを特徴とする情報通信装置を提供するものである。
【0011】
これによれば、外部記憶装置としての使用中に、着信を受理することができ、ユーザの利便性を向上でき、またデータ破壊が生じることがないので、ユーザは安心して情報機器とつないでデータ通信中でも着信による通話やデータ受信が可能となる。
【0012】
また、前記第1の記憶領域に格納されている第1通信部を介して受信された前記情報を、前記情報機器との通信が終了した後に、前記第2の記憶領域へ書き込むことを特徴とする情報通信装置を提供するものである。
【0013】
また、前記情報機器と接続するためのインタフェース部を備え、
前記インタフェース部が、USB接続,ワイヤレスLAN接続またはBluetooth接続の少なくとも一つを実現する機構を備えてもよい。
また、表示部をさらに備え、表示部が前記第1通信部を介した通信と前記第2通信部を介した通信とが同時間帯に並行して行われている場合に、両方の通信が行われていることを区別して表示するようにしてもよい。
【0014】
さらに、前記表示部は、前記第1通信部を介した通信が行われていることを表す第1表示部と、前記第2通信部を介した通信が行われていることを表す第2表示部とからなるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、電話網を介した第1のデータ通信と、情報機器との第2のデータ通信とを同時間帯に並行して実行させるように制御しているので、外部記憶装置としての利用と着信による通話およびデータ受信が競合しても両者に不都合が生じないようにすることができる。
また、第1データ通信と第2データ通信とで利用されるそれぞれの情報の記憶領域を分け、第1データ通信で受信された第1受信データは、情報機器との第2データ通信で利用される第2受信データとは異なる第1データ記憶領域に保存されるので、ユーザが特別な設定や操作をすることなく、データの不整合や破壊を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図に示す実施例に基づいて本発明を詳述する。なお、本発明はこれによって限定されるものではない。
<この発明の情報通信装置の構成>
図1に、この発明の情報通信装置の一実施例の構成ブロック図を示す。
この発明の情報通信装置1は、主として、入力部2,表示部3,記憶部4,制御部5,通信制御部6,RF通信部7,WLAN通信部8,Bluetooth通信部9,USB通信部10とから構成される。
情報通信装置1は、家庭内に固定設置されるタイプの装置でもよいが、パソコン等の情報機器41の外部記憶装置として利用するので、携帯可能な小型軽量の端末として構成することが好ましい。たとえば、従来の携帯電話やPDA程度の大きさの携帯端末とすることが好ましい。
【0017】
入力部2は、設定データや電子メールなどの文字,図形,記号の入力,発信,着信,データの送受信などの機能選択や指示入力を行うものであり、キーボード,テンキー,専用機能キーの他、ペンやトラックボールなどのポインティングデバイスを用いることができる。
表示部3は、各種設定データや送受信メールなどの情報を表示するためのものであり、LCDやEL表示などを用いることができる。
【0018】
記憶部4は、この情報通信端末で利用する各種情報や、プログラムを格納する部分であり、ROM,RAM,フラッシュメモリなどの半導体記憶素子やメモリカードなどが用いられる。
また、上記各種情報としては、データ電話網20を介したデータ通信や通話で利用される情報(送受信データ,設定データ,送信履歴情報,着信履歴情報,アドレス帳,留守番データ,ダウンロードデータなど)や、情報機器41などとの通信に利用される情報(文書,画像,音声などのマルチメディア情報など)などがあり、これらの情報は、不揮発性の書き換え可能なメモリに記憶される。
【0019】
また、記憶部4は、電話網20を介して送受信される情報を記憶する領域(以下、第1データ記憶領域14と呼ぶ)と、主としてWLAN通信部8,Bluetooth通信部9およびUSB通信部10を介して送受信される情報を記憶する領域(以下、第2データ記憶領域15と呼ぶ)を有するものとする。
ただし、第2データ記憶領域15には、電話網20を介して受信され、情報機器41等とのデータ通信でも利用されるデータが記憶される。
【0020】
また、プログラムは、ROM等の読み出し専用のメモリに予め記憶して提供される場合の他、メモリICカードのような小型記憶媒体に格納して提供される。あるいは、各種通信部(7,8,9,10)を介して、外部のサーバ等から記憶部4へダウンロードすることにより提供するようにしてもよい。
【0021】
RF通信部7は、無線通信で電話網20と通信を行う部分であり、たとえば、携帯電話やPHSなどの規格を満たした通信手順を実行する部分である。
RF通信部7を介して、電話網20に接続されたRF端末31との間で、データ通信や通話が行われる。
電話網20は現在利用されているあらゆる有線ネットワークや無線ネットワークを意味し、一般加入電話,ISDN,ADSL,FTTH,IP電話,インターネットなどがあげられる。
また、この実施例では、情報通信装置1は携帯性を有するものとして説明するのでRF通信機能を有するが、家庭内等で固定設置して使用する場合には、有線タイプの電話網20に接続する有線通信機能を備えてもよい。
【0022】
また、RF通信部7が電話網20と通信するための手順は、特殊なプロトコルを用いる必要はなく、たとえば携帯電話やPHSとの通信で利用されているプロトコルと互換性のあるプロトコルを用いればよい。
さらに、RF通信部7を介した電話機能の発着信処理は、携帯電話やPHSで利用されているのと同様の手順および回路構成で実現することができる。
RF端末31とは、一般加入電話回線やISDNに接続された電話機,無線通信を行う携帯電話,PHSなどを意味する。
【0023】
WLAN通信部8は、ワイヤレスLAN規格の無線通信により、WLAN端末32と通信を行う部分である。
Bluetooth通信部9は、Bluetooth規格の無線通信により、Bluetooth端末33と通信を行う部分である。
WLAN通信部8もBluetooth通信部9も、それぞれの規格で定められたプロトコルで無線信号を送受信する。
【0024】
WLAN端末32やBluetooth端末33は、それぞれの規格で通信可能な機能を有する端末であり、専用端末のほか、パソコン等にそれぞれの規格に適合したアダプタを取り付けることにより通信できるようにした情報機器も含む。
USB通信部10は、パソコン等の情報機器41とUSBケーブルを介して通信する部分である。
【0025】
USB通信部10は、いわゆるUSBケーブルを接続するコネクタを備え、このコネクタにUSBケーブルが接続されたことを検出し、その検出信号を、通信制御部6へ送信し、USBケーブルに接続された情報機器41との間で、USB規格に適合したデジタル信号を、所定のプロトコルに基づいて送受信する。
後述する実施例では、記憶部4が情報機器41の外部記憶装置として機能できるように、このUSB通信部10を介したデータ通信が行われる。
【0026】
なお、以下の実施例では、情報機器41と接続する有線通信は、USBケーブルを用いるものとするが、その他の有線ケーブルを用いてもよい。たとえば、SCSIケーブル,IEEE1394ケーブルあるいはRS232Cシリアルケーブルなど市販のあらゆる有線ケーブルを用いてもよく、SCSI通信部,IEEE1394通信部などを設けてUSB通信以外のプロトコルで通信するようにしてもよい。
また、図1では、WLAN通信部8と、Bluetooth通信部9と、USB通信部10を3つとも備えたものを示しているが、この3つの通信部をすべて備える必要はなく、少なくともいずれか一つを備えればよい。
また、図1では、情報機器41はUSB通信部10に接続される形態を示しているが、これに限るものではなく、他の複数の通信接続形態(WLAN通信,Bluetooth通信,SCSI通信など)を有していてもよい。
【0027】
通信制御部6は、主としてRF通信部7を介したデータ通信と、その他の通信部(8,9,10)を介したデータ通信との切換制御等を行う部分である。
たとえば、後述するようにRF通信部7を介したデータ通信と、USB通信部10を介したデータ通信とが同時間帯で競合した場合に、両通信を並行して行えるようにする通信制御や、RF通信部7を介したデータ通信を優先し、USB通信部10を介した通信を中断および再開する通信制御や、USB通信部10を介したデータ通信を優先しRF制御部7を介したデータ通信を禁止する通信制御をする。
通信制御部6は、各通信部(7,8,9,10)を介した通信のための物理的な接続や論理的な接続の有無を検出する接続検出部や、3つの通信部(8,9,10)とRF通信部7との送受信信号を切り替えるための信号切替部や、上記した通信制御のうちどれを実行するかを決めるモード切替部などを備えることが好ましい。
【0028】
制御部5は、上記のような入力部2をはじめとする各機能要素部を制御する部分であり、主として、CPU,ROM,RAM,タイマー,I/Oインタフェース,割り込み制御部などを備えたマイクロコンピュータにより実現される。各機能要素部の動作は、ROM等に記憶されたプログラムに基づいてCPUがハードウェアを動作させることにより実現される。
【0029】
また、制御部5は、着信検出機能を有し、電話網20からの着信があったことを検出した場合には、割込み制御により、着信処理を実行する。たとえば、情報機器の外部記憶装置として動作中に、他の電話機からの通話目的の着信があった場合には、その着信を検出すると、割込み処理が発生し、通話ができるように図示しないスピーカやマイクをRF通信部7と信号のやり取りができるようにする。
あるいは、電話網20から電子メールの送信目的の着信があった場合には、その着信を検出すると、割込み処理により、電子メールを受信して記憶部4に格納する。
【0030】
情報機器41がUSBケーブルを介してこの発明の情報通信装置1に接続された場合、その接続されたことを検出し、その後、記憶部4が情報機器41の外部記憶装置として機能し、USB通信部を介して情報機器41との間でデータ通信ができるように、外部記憶装置機能を実現する通信プログラムPG1が起動される。
【0031】
図2に、この発明の情報通信装置に、USBケーブルが接続されたときの概略フローを示す。まず、ステップS1において、USBケーブルが接続されたか否か、チェックする。接続されたことが検出されれば、外部記憶装置としての機能を起動させる(ステップS2)。
また、プログラムPG1が動作中に、電話網20から着信があった場合には、着信が検出された後CPUに対する割込み処理が起動され、その着信に基づいた処理(たとえば、メール受信処理)が実行される。
これによれば、情報機器41との間でデータ通信中でも割込み処理により電話網からの着信に対する処理をリアルタイムに実行できるので、ユーザへの着信をいつでも受理することができる。
【0032】
次に、USB通信部10に設けられるUSBコネクタに、USBケーブルが接続されたことを検出する処理について説明する。
図3に、USBケーブルの物理的な接続を検出する実施例の説明図を示す。ここでは、USBケーブルを介して、この発明の情報通信装置1とパソコン(情報機器41)とが接続された状態を示している。USBケーブルの配線は4芯あり、2本の電源用ライン(V=5V,GND)と、2本のデータライン(D+,D−)とからなる。USBケーブルが接続される場合、4本のラインがそれぞれ同じ意味を持つ端子に接続される。
【0033】
このとき、V=5Vのラインが接続された端子にパソコン41側から+5Vの電圧がこの発明の情報通信装置1に供給される。そこで、このV=5Vのラインに接続された端子の電圧を監視する回路を通信制御部に設け、+5Vの電圧の有無を検出する。
ここで+5Vの電圧が検出されれば、USBケーブルが接続されたと判断し、そうでない場合はUSBケーブルが接続されていないと判断する。この+5Vの電圧の検出信号は、通信制御部6を介して、制御部5のCPUに割込み信号として与えられる。
【0034】
図4に、USBケーブルが接続されたことをソフトウェア的に検出する処理のフローチャートを示す。
まず、ステップS11において、V=5Vのラインの+5Vが検出されると、それに対応した割込み信号が制御部5に与えられる。
次に、ステップS12において、制御部内に設けられた割込みコントローラ(INTC)に、上記割込み信号が与えられると、INTCは、CPUにコネクタ部へ何かが接続されたという割込み信号を伝える。
【0035】
ステップS13において、CPUは、割込みコントローラからの信号を受信すると、ステップS14において、その割込がどの割込みなのかを判別する。割込みがUSB接続によるものであると認識した場合には、ステップS15へ進み、USBドライバおよびUSBケーブルを介して通信ができるように、所定のアプリケーションプログラムをロードする。
【0036】
次に、ステップS16において、パソコン側から送受信可能を意味するコマンドが送られてくるのをチェックする。コマンドが送信されてきた場合には、ステップS17において、D+ラインまたはD−ラインのどちらかをプルアップし、USBのスピード選択とともに、パソコン側にUSB通信のための論理的接続が完了したことを伝える。
以上の処理が完了すると、情報通信装置1とパソコン41とが、USBケーブルを介してデータ通信できる状態となる。
【0037】
図5に、この発明において、2つのデータ通信を並行して行う場合の一実施例のフローチャートを示す。
図5(a)は、USBケーブルを介したパソコンとのデータ通信処理のフローチャートである。
図5(b)は、割込み処理により行われる電話網を介したデータ通信のフローチャートである。
図6に、記憶部4の内部構成の概略説明図を示す。
図6において、記憶部4は、大きく2つの領域(DataA,DataB)に分けられている。DataAの領域は、着信時に受信したデータを一時的に書き込む領域(第1データ記憶領域14)であり、DataBの領域は、パソコンとのデータ通信で送受信されるデータの記憶領域(第2データ記憶領域15)である。
【0038】
DataBの領域は、パソコン等の外部の情報機器41からアクセスできるようなファイルシステム構造を有しているものとする。たとえば、図示したようなFAT構造でフォーマットされているものとする。
このように、DataBの領域をFAT構造でデータを記憶することにより、パソコン等からこの領域にデータを書き込むことができ、この領域に記憶されたデータを読み出すことが可能となる。
【0039】
一方、DataAの領域は、パソコン等の外部の情報機器41からは読めない構造で、データを記憶するものとする。これにより、DataAの領域に書き込まれたデータは、パソコン等からアクセスすることはできず、パソコンからの意図しない書込み命令によって書き換えられることはないようにすることができる。すなわち、図6(a)に示したように、着信によって受信した電子メール等のデータ(DataT)をDataAの領域に書き込むようにすれば、図6(a)の状態で、DataBの領域に、パソコンからのデータの読み出しや書き込み処理が行われていたとしても、着信により書き込まれたデータ(DataT)は、破壊されることはない。
【0040】
また、図6(b)に示すように、パソコンとのデータ通信が終了した場合、たとえば、USBケーブルがはずされた場合、着信による受信データ(DAtaT)を、DataA領域からDataB領域の所定の位置に書込む。
たとえば、受信データ(DataT)が電子メールの場合、DataBの中で予め定められた電子メール格納領域に書き込めばよい。
パソコンとのデータ通信が終了した後に、DataB領域に書き込むようにしているので、パソコンとのデータ通信と競合することはなく、同一領域に同時アクセスすることが防止され、データの不整合や破壊が起こることはない。
【0041】
DataB領域に書き込まれたDataTは、その後、パソコンからアクセスすることができ、必要に応じてパソコンへ転送することができる。ここで、DataAの領域に一時保存されたDataTは、そのまま消去しなくてもよいが、DataB領域へ書き込んだ後は必要に応じて消去してもよい。
このようなデータ通信処理を、図5のフローに基づいて説明する。
【0042】
図5(a)において、USBケーブルを介してパソコンとの間でデータ通信が行われているとする(ステップS31)。すなわち、DataB領域に対する読出しや書込みが行われているものとする。
ステップS32において、全データの転送が完了したか否かチェックする。全データの転送が完了していない場合は、そのままデータ転送を継続する。
【0043】
全データの転送が完了した場合、ステップS33へ進み、図5(b)の着信割込み処理が実行されていないかどうかチェックする。
着信割込み処理が実行されていない場合は、そのままデータ処理を終了する。一方、着信割込み処理が実行されていた場合は、ステップS34へ進み着信割込み処理が終了したか否かをチェックする。着信割込み処理が終了した場合は、ステップS35へ進み、着信割込み処理でDataA領域に書き込まれたデータ(DataT)がある場合は、DataTをDataB領域にコピーする。
すなわち、パソコンとのデータ通信が行われていない状態で、DataA領域に書き込まれたデータを、パソコンがアクセス可能なDataB領域にコピーする。
【0044】
一方、図5(b)に示した着信割込み処理は、図5(a)の処理とは全く無関係に割込み信号が検出されるごとに実行される。
すなわち、割込み処理が起動されると、ステップS41において、着信後RF通信部7を介して電話網20とデータ通信ができるように、信号切替等の処理が行われ、ステップS42において、電話網20から送られてきたデータ(DataT)を受信し、記憶部4のDataAの領域に書き込み、割込み処理を終了する。
【0045】
以上のような2つの処理をリアルタイムで並行して実行することにより、パソコンとのデータ通信中の着信によるデータ受信をすることができ、パソコンとのデータ通信が完了した状態でデータ(DataT)をDataB領域に書き込むようにしているので、DataB領域に記憶されたデータの不整合や破壊を防止できる。
【0046】
図7に、USBケーブルを取りはずした場合のフローチャートを示す。
ステップS21において、現在USBケーブルが接続されていると認識した状態で、USBケーブルの物理的接続がなくなった否かチェックする。すなわち、USBケーブルの+5V端子の電源供給がなくなったか否かチェックする。電源供給がなくなった場合、ステップS22へ進み、外部記憶装置機能(プログラム)を停止させる。
これにより、パソコンとのデータ通信が完全に終了する。
【0047】
図8に、パソコンとのデータ通信と、電話網からの着信とを並行して行う場合の表示部の画面表示例を示す。
図8(a)は、USBケーブルが接続されていない状態で、着信あるいは発信もしていない状態の画面表示例である。いわゆる、待ち受け画面である。
図8(b)は、USBケーブルが接続された状態で、まだパソコンとデータ通信をしていない状態の画面表示例である。USBケーブルが接続されたことを示すために、「USB」などの表示を行う。
図8(c)は、USBケーブルが接続され、着信はなく、パソコンとの間でデータ転送が実際に行われている状態の画面表示例である。パソコンとの間のデータ転送中を示すために、「通信中」の文言あるいは、それを表すイラストなどを表示する。
図8(d)は、USBケーブルが接続された状態であって、パソコンとの間のデータ転送は行われていないが、電話網からの着信があった場合の画面表示例である。電話網から送られてきた送信先の情報や、イラストなどで着信があったことを知らせる。
図8(e)は、USBケーブルが接続された状態で、パソコンとの間のデータ転送が行われているときに、同時間帯に着信があり、通話中の場合の画面表示例である。電話網との通話中およびパソコンとの間のデータ転送中を表すために、(c)と(d)を同時に表示する。
このような画面表示をすることにより、ユーザに、現在の通信状態を明確に知らせることができる。
【0048】
図1に示すように、Bluetooth通信部9を介して、Bluetoothによる無線通信機能を有するBluetooth端末33とデータ通信し、情報通信装置1をこの端末33の外部記憶装置として使用することができる。
この場合は、USBケーブルのような有線接続を検出することはできないが、この装置1とBluetooth端末33とが通信可能な距離まで近づいたとき、互いに所定のプロトコルの接続制御処理を行い、データ通信できるようにすればよい。
【0049】
また、ユーザが両装置を近くに置いて使用する場合は、この発明の情報通信装置1の特定のキー操作をすることにより、接続制御処理を実行させ、Bluetooth端末33の外部記憶装置として動作するようにしてもよい。
また、Bluetooth端末の外部記憶装置として利用する場合は、図8の「USB」の表示の代わりに、「BT」などというような表示をすればよい。
【0050】
このBluetooth通信によれば、この発明の装置1とBluetooth端末33とをケーブルで接続する操作をする必要はなく、通信可能な範囲に両者を置くだけでよい。あるいは、この発明の装置1を通話目的で手に持って通話中でも、有線ケーブルがないために、携帯電話と同様の操作性で通話と、Bluetooth端末33とのデータ通信とが可能である。
【0051】
また、図1に示すように、WLAN通信部8を介してWLANに接続されたWLAN端末32とデータ通信し、情報通信装置1をこの端末32の外部記憶装置として使用することもできる。この場合、この情報通信装置1では、通信制御部6によって通信ラインにWLAN通信部8を接続するように切りかえ、ネットワーク名やIPアドレスを設定し、WLAN端末32では、アドホック接続でWLAN設定をオンにする。
この場合も、Bluetooth通信と同様に無線通信によるデータ通信をするので、両装置(1,32)とが通信可能な範囲内に入った場合に、外部記憶装置として利用できるようにしてもよく、また、ユーザが両装置を近くに置いた状態で特定のキー操作をすることにより、外部記憶装置としてのデータ通信が行われるようにしてもよい。また、WLANによる通信中は、図8に示したものと同様に「WLAN」などのような表示をすればよい。
【0052】
図9に、LEDを用いたパソコンとの間のデータ通信状態の表示例についての説明図を示す。
図9では、装置の右上にLEDを設けている。
図9(a)は、LED消灯状態を示しており、この場合は、USBケーブルが接続されていない状態を示している。
図9(b)は、LED点灯状態を示しており、この場合は、USBケーブルが接続され、パソコンとのデータ通信が可能状態であることを示している。
図9(c)は、LED点滅状態を示しており、USBケーブルを介したデータ転送中であることを示している。
電話網からの着信状態については、待ち受け時には図8(a)、着信時には図8(c)の画面のように表示部に表示する。すなわち、LEDと表示部によって、パソコンとの間のデータ通信状態、電話網からの着信状態の組み合わさった状態をそれぞれの表示状態で表す。
このようなデータ通信中等を示す表示は一実施例であり、これに限るものではなく、他の表示や音声による報知をしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の情報通信装置の一実施例の構成ブロック図である。
【図2】この発明の実施例のUSBケーブルが接続された場合のフローチャートである。
【図3】USBケーブルの物理的な接続を検出する実施例の説明図である。
【図4】USBケーブルが接続されたことをソフトウェア的に検出するフローチャートである。
【図5】この発明の実施例の2つのデータ通信を並行して行う場合のフローチャートである。
【図6】この発明の記憶部の内部構成の概略説明図である。
【図7】USBケーブルを取りはずした場合のフローチャートである。
【図8】この発明の実施例の表示部の画面表示例である。
【図9】この発明の実施例のLED表示の説明図である。
【図10】従来のデータ通信におけるデータの不整合と破壊状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0054】
1 情報通信装置
2 入力部
3 表示部
4 記憶部
5 制御部
6 通信制御部
7 RF通信部
8 WLAN通信部
9 Bluetooth通信部
10 USB通信部
14 第1データ記憶領域
15 第2データ記憶領域
20 電話網
31 RF端末
32 WLAN端末
33 Bluetooth端末
41 情報機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話網を介した通信を行う第1通信部と、
情報機器とデータ通信を行う第2通信部と、
前記第1通信部と前記第2通信部によって通信される情報を記憶する記憶部と、
第1通信部による通信と第2通信部による通信とを並行して実行されるように制御する制御部とを備え、
前記記憶部に、前記第1通信部を介して受信された情報を格納する第1の記憶領域と、前記第2通信部を介して通信される情報を格納する前記第1の記憶領域とは異なる第2の記憶領域とを設けることを特徴とする情報通信装置。
【請求項2】
前記第1の記憶領域に格納されている第1通信部を介して受信された前記情報を、前記情報機器との通信が終了した後に、前記第2の記憶領域へ書き込むことを特徴とする請求項1の情報通信装置。
【請求項3】
前記情報機器と接続するためのインタフェース部を備え、
前記インタフェース部が、USB接続,ワイヤレスLAN接続またはBluetooth接続の少なくとも一つを実現する機構からなることを特徴とする請求項1の情報通信装置。
【請求項4】
表示部をさらに備え、表示部が前記第1通信部を介した通信と前記第2通信部を介したデータ通信とが並行して行われている場合に、両方の通信が行われていることを区別して表示することを特徴とする請求項1の情報通信装置。
【請求項5】
前記表示部は、前記第1通信部を介した通信が行われていることを表す第1表示部と、前記第2通信部を介した通信が行われていることを表す第2表示部とからなることを特徴とする請求項4の情報通信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−197482(P2006−197482A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9167(P2005−9167)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】