説明

感光体組立体、感光体部材、およびフランジ

【課題】基体に対してフランジを比較的強固に固定できるとともに、感光体部材からフランジを比較的容易に取り外すことができる感光体組立体を提供する。
【解決手段】円筒状の基体10と、基体10の外周面上に設けられた感光層20と、基体10の端部に挿入されたフランジ40と、基体10にフランジ40を固定している複数のピン部材50とを備えた感光体組立体1であって、基体10は、内周面に、端部から軸方向の中央部に向けて延在した基体側溝部15を複数有し、フランジ40は、外周面に、基体側溝部15に対応したフランジ側溝部45を複数有し、複数のピン部材50は、それぞれ対応する基体側溝部15とフランジ側溝部45との内面同士による間隙に少なくとも一部が挿入されているとともに、基体10の中心軸の内周面への投影線に対する軸の傾き方向がいずれも同じ複数のピン部材50で構成される第1のピン部材群50Aを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体組立体、感光体部材、およびフランジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、主に複写機及びレーザービームプリンター等の分野において広く利用されており、高解像度/高階調性・高複写/プリント速度等が求められている。
【0003】
かかる画像形成装置に用いられる電子写真感光体組立体は、通常、アルミニウム等からなる円筒状の基体と、この基体の外周面上に設けられた感光層と、基体の軸方向に沿った端部に挿入されたフランジとを備えて構成されている。
【0004】
例えば下記特許文献1には、外周面に感光層が設けられた基体の端部に、フランジが圧入されることで、基体とフランジとが固定された感光体組立体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−338310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、環境問題への関心の高まりから、例えばアルミニウムからなる基体の再利用が求められることが多くなっている。基体は比較的単純な円筒形状であり、例えば感光層が使用可能限界を超えて摩耗した感光体組立体であっても、基体のみをそのまま部材として取り出すことができれば、この基体に新たに感光層を成膜することで、そのまま再度感光体組立体として利用することができる。
【0007】
円筒体にインロー部などが形成されただけの基体に対して、フランジ部は、感光体組立体が装着される画像形成装置の種類に応じて、種類毎に特殊な形状・構造をもっている。このため、元のフランジが装着されたままの状態では、異なる画像形成装置用途に感光体を再利用することは困難である。このように、感光体組立体を再利用するためには、感光体組立体から、基体を破壊することなくフランジを取り外すことが必要である。
【0008】
しかしながら、基体表面に成膜されて残留した感光層は、薬品や研磨工程等で比較的除去し易いが、特許文献1に記載されたような、基体に圧入固定されたフランジは、基体を破壊しない限り取り外しが困難である。従来の感光体組立体は、再利用することが困難であるという課題があった。また、取り外しを容易にするために、基体の内径とフランジ外形との寸法の差を大きくするとともに、係止部材等を用いて基体とフランジとを係止する構成も提案されているが、フランジには中心軸周りの回転力が印加されるため、この回転力によって係止部材にかかる係止力が緩み、フランジと基体との相対位置関係が比較的ずれ易いといった課題もあった。
【0009】
本発明は、かかる課題を解決することを目的になされてものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、円筒状の基体と、該基体の外周面上に設けられた感光層と、前記基体の端部に挿入されたフランジと、前記基体に前記フランジを固定し
ている複数のピン部材とを備えた感光体組立体であって、前記基体は、内周面に、前記端部から軸方向の中央部に向けて延在した基体側溝部を複数有し、前記フランジは、外周面に、前記基体側溝部に対応したフランジ側溝部を複数有し、複数の前記ピン部材は、それぞれ対応する前記基体側溝部と前記フランジ側溝部との内面同士による間隙に少なくとも一部が挿入されているとともに、前記基体の中心軸の前記内周面への投影線に対する軸の傾き方向がいずれも同じ複数の前記ピン部材で構成される第1のピン部材群を含むことを特徴とする感光体組立体を提供する。
【0011】
また、円筒状の基体と、該基体の外周面上に設けられた感光層とを備えた感光体部材であって、前記基体は、内周面に、端部から軸方向の中央部に向けて延在した基体側溝部を複数有し、複数の該基体側溝部は、前記基体の中心軸の前記内周面への投影線に対する延在方向の傾き方向がいずれも同じ複数の前記基体側溝部で構成される第1の基体側溝部群を含むことを特徴とする感光体部材を、併せて提供する。
【0012】
また、円筒状の基体と、該基体の外周面上に設けられた感光層とを備える感光体部材の前記基体の端部に挿入されるフランジであって、外周面に、中心軸方向の一方端から前記端部に挿入される他方端側に向けて延在したフランジ側溝部を複数有し、複数の前記フランジ側溝部は、前記フランジの中心軸の前記外周面への投影線に対する延在方向の傾き方向がいずれも同じ複数の前記フランジ側溝部で構成される第1のフランジ側溝部群を含むことを特徴とするフランジを、併せて提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の感光体組立体、感光体部材、およびフランジによれば、感光体組立体において、基体に対してフランジを比較的強固に固定できるとともに、感光体部材からフランジを比較的容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の感光体組立体を備えて構成された画像形成装置の一実施形態の構成を示す概略断面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置が備える複数の画像形成ユニットの1つについて説明する概略断面図である。
【図3】図2に示す画像形成ユニットが備える光源(LED)の近傍を拡大して示す概略断面図である。
【図4】図1に示す画像形成装置が備える、本発明の感光体組立体の一実施形態の構成について説明する図であり、(a)は感光体組立体の中心軸に沿った断面図であり、(b)は感光体組立体を中心軸に沿って切断した際の断面面図である。
【図5】(a)は、感光体組立体の一部について、基体の中心軸の側から見た図であり、(b)は、感光体組立体の一部を、基体の端部の側から見た概略斜視図である。
【図6】(a)および(b)は、感光体組立体の他の実施形態について説明する概略断面図であり、(a)は本発明の感光体部材の一実施形態を備えて構成された感光体組立体の他の実施形態を示す概略断面図であり、(b)は本発明のフランジの一実施形態を備えて構成された感光体組立体の他の実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳しく説明する。但し、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りはこの発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0016】
図1は、本発明の感光体組立体1を備えて構成された画像形成装置の一実施形態である画像形成装置100の構成を示す概略断面図である。また、図2は、画像形成装置100
が備える複数の画像形成ユニットの1つである、画像形成ユニット101aについて説明する概略断面図である。図3は、画像形成ユニット101aが備える光源(LED)130の近傍を拡大して示す概略断面図である。
【0017】
なお、図2では、画像形成ユニット101aのみについて説明しているが、その他の画像形成ユニット101b〜101cも、101aと同様の構成を有している。
【0018】
図1及び図2において示すように、画像形成装置100は、複数の画像形成ユニット101a〜101d、画像処理手段(スクリーン処理部)110、記録媒体搬送手段112、定着手段113、を備えて構成されている。
【0019】
かかる画像形成装置100は、例えば、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の4色に対応した画像形成ユニット101a〜101dを備える、タンデム式カラープリンタの例である。
【0020】
図2において画像形成ユニット101aに関して示すように、各画像形成ユニット101a〜101dはそれぞれ、現像装置120、電子写真感光体1、現像ローラ122、転写ローラ123、クリーナー125、126、帯電器127、現像器128、光源(LED)130を備えている。
【0021】
また、図3において示すように、光源130としてのLEDヘッドは、ロッドレンズアレイ131、LEDアレイ132、ドライバIC133、回路基板134等を備えている。
【0022】
光源130から出射される露光光の波長については特に限定されず、例えば685nmをピーク波長とする露光光を用いればよい。露光光の波長については特に限定されない。
【0023】
光源130が備える回路基板134は、画像処理手段110と接続されている。回路基板134は、画像処理手段110から送信されたスクリーン画像データを変換して、ドライバIC13に送信する。ドライバIC133では、LEDアレイ132の各LEDを画像データに応じたタイミングで発光させるための駆動信号が生成され、各LEDアレイ132に送られる。これにより、各画像形成ユニット101a〜101dが備える感光体121に、各色成分に対応するスクリーン画像データの潜像が形成される。
【0024】
図4および図5は、本発明の感光体組立体の一実施形態である感光体組立体1の構成について説明する図である。図4(a)は感光体組立体1の中心軸Oに沿った断面図であり、図4(b)は感光体組立体1を中心軸Oに沿って切断した際の側面図である。また、図5(a)は、感光体組立体の一部について、中心軸Oの側から見た図であり、図5(b)は、感光体組立体1の一部を、基体10の端部の側から見た概略斜視図である。感光体組立体1は、例えばアルミニウムを主成分とする円筒状の基体10と、基体10の外周面上に設けられた感光層20とを備えた感光体部材11と、基体10の軸方向に沿った端部に挿入されたフランジ40と、を備えている。
【0025】
フランジ40は、図4に示すように、例えば中心軸近傍に、画像形成装置における駆動部材が装着されるための開口41を備えている。図4(a)に示すように、基体10は、端部近傍にいわゆるインロー部12を備え、このインロー部12にフランジ40が挿入されている。インロー部12における基体10の内径に対し、フランジ部40の外径は、若干小さく設定されている。フランジ40は、画像形成装置100に感光体組立体1を装着した状態で、画像形成装置100から回転駆動力が伝えられる部材であり、例えばアルミニウム等の金属材料やプラスチック等の樹脂材料からなる。
【0026】
本実施形態では、基体10が、インロー部12の内周面に、基体10の中心軸Oに沿った端から中心軸Oに沿った中央部の側に向けて延在した基体側溝部15を複数有している。また、フランジ40は、外周面に、軸方向Oに沿った端から軸方向Oに沿った中央部の側に向けて延在した、基体側溝部15に対応するフランジ側溝部45を複数有している。
【0027】
感光体組立体1では、対応する一対の基体側溝部15とフランジ側溝部45との、各溝部の内面同士の間隙に少なくとも一部が挿入された、基体10とフランジ40とを固定するための、複数の長尺状のピン部材50をさらに備えている。
【0028】
ピン部材50は、例えばSUS等からなる長軸状の部材で、本実施形態では、各溝部の間隙に挿入された部分の少なくとも一部が、外周面に突条部を備えた雄ネジ状とされている。ピン部材50としては、SUS製のビス部材など、公知の部材を用いることができる。
【0029】
本実施形態では、ピン部材50の雄ねじ状の部分が雌ねじ状の上記間隙に締結されている。より具体的には、基体側溝部15およびフランジ側溝部45は、いずれも内面に凹凸を備え、基体側溝部15の凹凸とフランジ側溝部45の凹凸とで周面の少なくとも一部が規定された雌ネジ状部に、ピン部材50の雄ネジ状部分が締結されている。このように、ピン部材50が雄ネジ状部分を備え、雌ネジ状である各溝部の間隙に締結されているので、ピン部材50は各溝部の間隙から比較的容易に取り外しことができる。また、ピン部材50の挿入量もピン部材50の回転によって比較的容易に調整することで、基体に対するフランジの保持力も調整することができる。ピン部材については、雄ネジ状であることに限定されないが、取り外しの容易性や保持力の調整のし易さの点で、雄ネジ状または雌ネジ状であることが好ましいといえる。
【0030】
ピン部材50が挿入されることで、基体10の基体側溝部15の内面と、フランジ40のフランジ側溝部45の内面とに、ピン部材50からの押圧力がかかる。ピン部材50は複数の各溝部に対応して複数個設けられており、締結された各ピン部材50からの押圧力が拮抗している。各ピン部材50からの、この拮抗した押圧力によって基体10とフランジ40との相対位置が固定されている。
【0031】
ピン部材50は、基体10の中心軸Oの内周面への投影線Sに対する、ピン部材50の長軸Lのずれ方向がいずれも同じ複数のピン部材50aからなる、第1のピン部材群50Aを含んでいる。ピン部材50の長軸とは、ピン部材の長手方向に沿った中心軸である。
【0032】
基体10の中心軸Oの内周面への投影線Sに対して、複数のピン部材50の長軸Lが同じ方向にずれているので、中心軸Oを中心とした回転力が、画像形成装置1からフランジ40に対して入力された場合であっても、この回転力に対してピン部材50が抜け難くされている。例えば、図4(b)に示す矢印X方向の力がフランジ40に入力された場合、第1のピン部材群50Aを構成する複数のピン部材50aには、この回転力が入力されたフランジ40によって、基体10により強く押し込まれるような力がかかる。このような第1のピン部材群50Aを備える感光体組立体1は、特定の回転方向の力がフランジ40に印加された場合であっても、ピン部材50が緩み難く、基体10とフランジ40との微妙な回転ずれが少なくされている。このため、感光体組立体1を備えた画像形成装置では、フランジ40の回転に対する、基体10の回転のずれの程度が小さく、比較的高い質の画像を形成することができる。
【0033】
また、感光体組立体1では、第1のピン部材群50Aを構成するピン部材50aのうち、少なくとも1つのピン部材50aの、中心軸Oを対称軸とした対称位置に、第1のピン
部材群50Aを構成する他の1つのピン部材50aが配置されている。中心軸Oを中心とした対象位置に、同じずれ方向のピン部材50aを備えるので、上記押圧力が半径方向に沿って均等にかかることになり、押圧力のバランスの乱れによる、基体10とフランジとの相対位置ずれが良好に抑制される。
【0034】
また、第1のピン部材群を構成するピン部材50aが挿入されている、基体側溝部15とフランジ側溝部45との間隙の開口の中心位置Laから、中心軸Oへ下ろした複数の垂線Vのうち、隣り合う2つの垂線Vの間のなす角が、いずれも等しくされている。ここで、基体側溝部15とフランジ側溝部45との間隙の開口とは、基体側溝部15とフランジ側溝部45の、基体10の端部における開口のことを指す。開口の中心位置Laとは、この開口を備える基体側溝部15の底面の中心線と、溝部の開口面との交点を指す。
【0035】
図4(b)に示すように、中心軸Oに沿った側面視において、複数のピン部材50aの配置位置は、中心軸Oに関して回転対称の関係にある。例えば、図4(b)に示す例では、隣り合う複数の垂線Vのなす角がいずれも90度の、4回対称の関係にある。このような回転対称の関係にあることで、フランジ40に回転力が印加された場合、ピン部材50にかかる力が周面に沿って均等に分散され、特定のピン部材50に集中して力がかかることが抑制されている。
【0036】
また、本実施形態では、第1のピン部材群50Aのみでなく、長軸Lのずれ方向が、第1のピン部材群50Aにおけるずれ方向と逆である、複数のピン部材50bからなる第2のピン部材群50Bを含んでいる。第1のピン部材群50Aのみでなく、ずれ方向が異なっている第2のピン部材群50Bを含んでいるので、各ピン部材50aおよび50bにかかる力、および各ピン部材50aおよび50bから基体10やフランジ40にかかる力は、基体10やフランジ40の周方向に沿って比較的均一に分散されている。また、フランジ40に、図4(b)に示すX方向と逆方向の回転力が加わった場合も、第2のピン部材群50Bを構成するピン部材50bによって、フランジ40と基体10との位置ずれが抑制されている。
【0037】
画像形成装置1においては、画像形成中のドラムの回転方向は決まっており、この画像形成中のドラムの回転によって緩み難い方向に、上記長軸Lのずれ方向が規定されていることが好ましい。しかしながら、画像形成装置1では、画像形成中のみでなく、その他の各種メンテナンス中であっても、感光体組立体は回転駆動されることがあり、画像形成プロセス中の回転方向とは反対の方向に回転するよう、フランジ40に回転駆動力が印加される場合がある。第1のピン部材群50Aのみでなく、第2のピン部材群50Bを併せて備えることで、一方向のみでなく逆方向に感光体組立体が回転する場合であっても、基体10とフランジ40とが緩み難くなっている。
【0038】
また、第1のピン部材50aにおいても、第2のピン部材50bにおいても、上記垂線Vと、長軸Lとが、略垂直となっている。これにより、各ピン部材50は、断面が曲率をもつ基体10に対して、ピン部材50の根元部分に比べて、ピン部材50の先端部分がより深く基体10に挿入されている。すなわち、ピン部材50の中心軸Lの、基体10の内周面からの深さは、ピン部材50の先端部分に近づくにつれて、より深くなっている。感光体組立体1では、ピン部材50の先端が基体10に強い力で締め付けられており、ピン部材50が緩み難い。
【0039】
上述の実施形態では、円筒状の基体10とフランジ40との双方に、溝部(基体側溝部15とフランジ側溝部45)を有する構成について説明している。溝部については、基体とフランジとの双方が有することに限定されない。
【0040】
図6(a)および(b)は、感光体組立体の他の実施形態について説明する概略断面図であり、(a)は本発明の感光体部材の一実施形態を備えて構成された感光体組立体を示し、(b)は本発明のフランジの一実施形態を備えて構成された感光体組立体を示している。図6(a)および(b)では、図4(a)に示す構成に対応する構成については、図4(a)と同一の符号を用いて示している。
【0041】
図6(a)に示す例では、基体10の内周面に、基体10の端部から軸方向の中央部に向けて延在した基体側溝部15を有しているが、フランジの外周面には溝部を備えていない。このように、基体10に基体側溝部15を備えているだけでも、ピン部材50によって上記押圧力が充分に発現されることで、図4に示す上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。また、図6(b)に示す例では、フランジ40の外周面に、フランジ40の端部から軸方向の中央部に向けて延在したフランジ側溝部45を有しているが、基体10の外周面には溝部を備えていない。このように、フランジ40にフランジ側溝部45を備えているだけでも、ピン部材50によって上記押圧力が充分に発現されることで、図4に示す上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0042】
すなわち、上述の基体側溝部15を備える基体10を備える感光体部材11を用いることで、例えば外周面が筒状で、溝部等を有さない公知の各種フランジ部材を用いた場合でも、ピン部材を用いて基体10とフランジとを固定することができる。このような基体10を備える感光体部材は、異なる種類のフランジを容易に着脱することができ、繰り返しの再利用に適しているといえる。また同様に、上述のフランジ側溝部45を備えるフランジ40を用いることで、例えば基体の内周面が単純な筒状で溝部等を有さない公知の感光体を用いた場合でも、ピン部材を用いてフランジ40と感光体部材の基体とを固定することができる。このようなフランジ40は、異なる種類の基体に対して容易に着脱されることができ、繰り返しの再利用に適しているといえる。
【0043】
感光層20について説明しておくと、感光層20は、基体10上に形成されたアモルファスシリコンを主成分とする光導電層と、この光導電層14上に形成された中間層と、中間層上に形成された表面層と、を備えている。基体10の構成材料としては特に制限されるものではないが、Al、SUS、Zn、Cu、Fe、Ti、Ni、Cr、Ta、Sn、Au、Ag等の金属材料や、それらの合金材料から構成することが好ましい。また、樹脂やガラス・セラミック等の電気絶縁体の表面に、上述した金属やITOやSnOなどの透明導電性材料を蒸着して、導電処理した材料も用いることができる。Al合金を用いると、低コストとなり、しかも、軽量化でき、その上、後述する光導電層や電荷注入阻止層との密着性が高くなって信頼性が向上するという点で好適である。
【0044】
感光層の各層は、上述のようにアモルファスシリコン(a−Si)などのアモルファスシリコン系材料(以下、a−Si系材料と称する場合がある)により形成される。これらのa−Si系材料による層は、たとえば、グロー放電分解法、各種スパッタリング法、各種蒸着法、ECR法、光CVD法、触媒CVD法、及び反応性蒸着法などにより成膜形成し、その成膜形成に当たってダングリングボンド終端用に水素(H)やハロゲン元素(FやCl)を、膜全体を100原子%としたときに、1〜40原子%の範囲で含有させることにより形成することができる。
【0045】
光導電層(第1の層)は、少なくともSiを含むアモルファスシリコン系材料を主成分とし、光導電性材料から構成されている。したがって、アモルファスシリコン系材料以外に、例えば、水素原子及びハロゲン原子からなる群から少なくとも1つ選択された元素を含有することが好ましい。すなわち、このような原子を添加することにより、光導電層における電荷移動度を、所定範囲に正確に制御することができるためである。
【0046】
また、前述の電荷注入阻止層同様、必要に応じてa−Siに、C、N、O等を加えた合金のa−Si系材料を用いたり、13族元素や15族元素を含有させて導電性や光導電率などの電気的特性及び光学的バンドギャップなどを調整することもできる。
【0047】
さらに、光導電層については、a−Si系材料に微結晶シリコン(μc−Si)を含んでいてもよく、このμc−Siを含ませた場合には、暗導電率・光導電率を高めることができるので、光導電層の設計自由度が増すといった利点がある。このようなμc−Siは、先に説明した成膜方法を採用し、その成膜条件を変えることにより形成することができる。
【0048】
たとえば、グロー放電分解法では、導電性基体の温度及び高周波電力を高めに設定し、希釈ガスとしての水素流量を増すことによって形成できる。また、μc−Siを含む光導電層においても、先に説明したのと同様な不純物元素を添加してもよい。
【0049】
光導電層の膜厚は1〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。光導電層の膜厚を1〜100μmの範囲内の値とすると、光導電性を維持し、比較的均一な厚さに形成したりすることができる。光導電層の膜厚を1〜100μmの範囲内の値とすることがより好ましく、8〜20μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0050】
中間層は、アモルファスシリコン系材料と、炭素原子と、水素原子とを含有したa−SiC:Hを含むことが好ましい。このような中間層とすることにより、後述する表面層との相乗効果によって、解像度に優れるとともに、ヒータレスシステムを採用した場合であっても、像流れが少ないa−Si感光体を得ることができるためである。
【0051】
中間層は、アモルファスシリコンカーバイド(a−SiC)以外に、種々の材料を用いることができる。例えば、a−Si系材料として、アモルファスシリコンナイトライド(a−SiN)、アモルファスシリコンオキサイド(a−SiO)、アモルファスシリコンオキシカーバイド(a−SiCO)、アモルファスシリコンオキシナイトライド(a−SiNO)などの高抵抗材料を用いてもよい。a−SiN膜、a−SiO膜、a−SiCo膜、a−SiNO膜等の膜を用いた場合でも、各層における材料の組成比等を調整することで、中間層における屈折率の大きさや分布を制御することができる。かかる組成比の分布等は、各層の成膜時におけう原料比率(ガス圧の比率など)を調整することで、比較的容易に制御することができる。
【0052】
これらは、a−Siと同様の薄膜形成手段により成膜し、その成膜形成に当たっては、ダングリングボンド終端用、もしくは硬度あるいは抵抗値調整用として水素やハロゲン(F、Cl)を、膜中にシリコン原子と炭素原子の総数に対して、1〜160原子%含有させるとよい。
【0053】
表面層は、膜厚を100nm以上、1.0μm未満とすることが好ましい。表面層18の膜厚を100nm以上、1.0μm未満とすることで、感度の低下や残留電位の発生を抑制し、濃度低下やカブリなどの印字品質を高く維持することができる。また、長期にわたって感光体を使用した場合であっても、所定の画像品質を維持するために、表面層の膜厚としては1.0μm未満とすることが好ましい。
【0054】
表面層は、中間層と同様、アモルファスシリコンカーバイド(a−SiC)以外に、種々の材料を用いて形成することができる。例えば、a−Si系材料として、アモルファスシリコンナイトライド(a−SiN)、アモルファスシリコンオキサイド(a−SiO)、アモルファスシリコンオキシカーバイド(a−SiCO)、アモルファスシリコンオキシナイトライド(a−SiNO)などの高抵抗材料を用いてもよい。
【0055】
これらは、a−Siと同様の薄膜形成手段により成膜し、その成膜に当たっては、ダングリングボンド終端用、もしくは硬度あるいは抵抗値調整用として水素やハロゲン(F、Cl)を膜中に1〜60原子%含有させるとよい。
【0056】
また、本実施形態では、感光層の材質として、Siを主成分とする、アモルファスSiを主成分とする層を挙げているが、感光層としては、いわゆるOPCなど、有機材料を主成分とする層を用いてもよい。
【0057】
以上、本発明について、実施形態を参照して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、発明の範囲において種々変更してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 感光体組立体
10 基体
11 感光体部材
12 インロー部
15 基体側溝部
20 感光層
40 フランジ
45 フランジ側溝部
50a、50b ピン部材
50A 第1のピン部材群
50B 第2のピン部材群
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の基体と、該基体の外周面上に設けられた感光層と、前記基体の端部に挿入されたフランジと、前記基体に前記フランジを固定している複数のピン部材とを備えた感光体組立体であって、
前記基体は、内周面に、前記端部から軸方向の中央部に向けて延在した基体側溝部を複数有し、
前記フランジは、外周面に、前記基体側溝部に対応したフランジ側溝部を複数有し、
複数の前記ピン部材は、それぞれ対応する前記基体側溝部と前記フランジ側溝部との内面同士による間隙に少なくとも一部が挿入されているとともに、前記基体の中心軸の前記内周面への投影線に対する軸の傾き方向がいずれも同じ複数の前記ピン部材で構成される第1のピン部材群を含むことを特徴とする感光体組立体。
【請求項2】
前記第1のピン部材群を構成する少なくとも1つの前記ピン部材に対して、前記基体の前記中心軸を対称軸とした対称位置に、前記第1のピン部材群を構成する他の1つのピン部材が配置されていることを特徴とする請求項1記載の感光体組立体。
【請求項3】
前記基体の軸方向に沿った側面視において、
複数の前記第1ピン部材の配置位置が、前記基体の前記中心軸に関して回転対象の関係にあることを特徴とする請求項1または2記載の感光体組立体。
【請求項4】
複数の前記ピン部材は、
軸の傾き方向が前記第1のピン部材群における傾き方向と逆である複数の前記ピン部材で構成される第2のピン部材群を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光体組立体。
【請求項5】
前記ピン部材が挿入されている前記間隙の開口から前記基体の前記中心軸へ下ろした垂線と、前記ピン部材の軸とが、直交していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感光体組立体。
【請求項6】
前記ピン部材は、前記間隙に挿入されている部分の少なくとも一部が雄ねじ状であり、前記間隙は、雌ねじ状であって、前記ピン部材の雄ねじ状の部分が雌ねじ状の前記間隙に締結されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感光体組立体。
【請求項7】
円筒状の基体と、該基体の外周面上に設けられた感光層とを備えた感光体部材であって、
前記基体は、内周面に、端部から軸方向の中央部に向けて延在した基体側溝部を複数有し、
複数の該基体側溝部は、前記基体の中心軸の前記内周面への投影線に対する延在方向の傾き方向がいずれも同じ複数の前記基体側溝部で構成される第1の基体側溝部群を含むことを特徴とする感光体部材。
【請求項8】
円筒状の基体と、該基体の外周面上に設けられた感光層とを備える感光体部材の前記基体の端部に挿入されるフランジであって、
外周面に、中心軸方向の一方端から前記端部に挿入される他方端側に向けて延在したフランジ側溝部を複数有し、
複数の前記フランジ側溝部は、前記フランジの中心軸の前記外周面への投影線に対する延在方向の傾き方向がいずれも同じ複数の前記フランジ側溝部で構成される第1のフランジ側溝部群を含むことを特徴とするフランジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−177731(P2012−177731A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39336(P2011−39336)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】