説明

感光性ハロゲン化銀乳剤の有機溶媒分散物の製造方法、銀塩熱現像感光材料および銀塩熱現像感光材料の画像形成方法

【課題】低カブリで高感度、且つ画像耐光性、銀色調に優れた銀塩熱現像感光材料、該銀塩熱現像感光材料に用いられる感光性ハロゲン化銀乳剤の有機溶媒分散物の製造方法、及び該銀塩熱現像感光材料を用いた画像形成方法を提供する。
【解決手段】支持体の少なくとも一方の面に感光性ハロゲン化銀、非感光性脂肪酸銀、還元剤及びバインダーを含む画像形成層を有する銀塩熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀は調製時にゼラチンの代わりに下記一般式(1)及び(2)で表されるモノマーを構成単位として有する共重合体を使用することを特徴とする銀塩熱現像感光材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性ハロゲン化銀乳剤の有機溶媒分散物の製造方法、銀塩熱現像感光材料及びそれを用いた画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療、印刷製版の分野では、画像形成材料の湿式処理に伴う廃液が作業性の上で問題となっており、近年では環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザ・イメージャーにより効率的な露光が可能で、高解像度で鮮明な黒色画像を形成することができる銀塩熱現像感光材料に関する技術が注目されている。
【0003】
この技術として、支持体上に脂肪酸銀、感光性ハロゲン化銀粒子、還元剤及びバインダーを含有する銀塩熱現像感光材料(例えば、特許文献1参照。)が知られている。
【0004】
しかし、銀塩熱現像感光材料は現像に関わる素材がすべて銀塩熱現像感光材料に内蔵されているため、湿式処理用感光材料に比べて銀塩熱現像感光材料の現像前の保存性が著しく悪いという欠点があった。
【0005】
銀塩熱現像感光材料において、親水性の感光性ハロゲン化銀粒子を有機溶媒系の画像形成層塗布液に分散することは困難であり、ゼラチンによる凝集が容易に起こる。このため、銀塩熱現像感光材料で得られる銀画像の最高濃度が目的レベルを達成するのに、感材の面積あたりの銀量を大量に使用する必要がある。省銀によるコストダウン及び環境保全のため、感光性ハロゲン化銀粒子の有機溶媒中の分散方法の改良が求められている。
【0006】
銀塩熱現像感光材料の感光性ハロゲン化銀粒子は、熱現像後も残留するので熱現像後の耐光性(画像保存)が必要とされる。また、熱現像前の露光では現像反応(銀イオン還元剤による銀イオンの還元反応)の触媒として機能し得る潜像を該ハロゲン化銀粒子の表面に形成し、熱現像過程経過後の露光では該ハロゲン化銀粒子の表面より内部に多くの潜像を形成するようになることにより、表面における潜像形成が抑制されるハロゲン化銀粒子であることが好ましい。なお、このように熱現像処理前後で潜像形成機能が変化するハロゲン化銀粒子(熱変換内部潜像型ハロゲン化銀粒子)は従来知られていなかった。
【0007】
一般に、感光性ハロゲン化銀粒子が露光されるとハロゲン化銀粒子自身、または感光性ハロゲン化銀粒子表面上に吸着している分光増感色素が光励起されて、自由に移動できる電子を生じるが、この電子はハロゲン化銀粒子表面に存在する電子トラップ(感光中心)または当該粒子の内部にある電子トラップに競争的にトラップ(捕獲)される。従って、電子トラップとして有効な化学増感中心(化学増感核)やドーパント等がハロゲン化銀粒子内部より表面に多く、且つ適当数ある場合には表面に優先的に潜像が形成され、現像可能となる。逆に、電子トラップとして有効な化学増感中心(化学増感核)やドーパント等がハロゲン化銀粒子表面より内部に多く、且つ適当数ある場合には内部に優先的に潜像が形成され、現像が困難となる。換言すると、前者の場合は内部より表面の感度が高く、後者の場合は内部より表面の感度が低いと言える(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、これら多くの文献に開示されてはいるが、いずれも銀塩熱現像感光材料に適したものではなかった。
【0008】
一方、発色現像薬とカプラーを含有した、臭化銀あるいはヨウ塩臭化銀を銀源とする、熱現像感光材料も知られている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、ハロゲン化銀による光散乱と吸収のために膜の濁りおよび不透明性が増加するため、実施例に記載されているようにかぶりが0.58〜1.2と極めて高くなってしまう。従って、得られる画像は一次原稿であって、直接観察し得る画像ではなく、これをもとにデジタル化して、さらに画像処理を施してかぶりを低減しかつ階調と色調を調整した再処理画像を得て始めて観察し得る画像となるものである(例えば、特許文献6参照)。
【0009】
また、還元可能な銀塩を利用した熱画像形成システムが記載されている(例えば、特許文献1参照)。特に、銀塩熱現像感光材料は、一般に触媒活性量の光触媒(例えば、ハロゲン化銀)、還元剤、還元可能な銀塩(例えば、還元可能な脂肪酸銀)、必要により銀の色調を制御する色調剤をバインダーのマトリックス中に分散した画像形成層を有している。銀塩熱現像感光材料は画像露光後、高温(例えば、80℃以上)に加熱し、還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。そのため、黒色の銀画像は露光領域に形成されることが多くの文献に開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
これらの銀塩熱現像感光材料に用いる還元可能な銀塩としては、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)及び還元剤の存在下で、80℃あるいはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩が従来用いられている。このような非感光性の還元可能な銀塩については、多数記載されている(例えば、特許文献3参照)。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が用いられ、例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、これらの混合物などを挙げることができる。また、スルホン酸の銀塩、テトラゾール誘導体の銀錯体、トリアゾール誘導体の銀錯体、メタクリル酸/スチレン共重合ポリマーの銀塩が開示されている。ジカルボン酸化合直鎖アルキルモノカルボン酸銀と直鎖アルキルジカルボン酸とを併用する例が開示されている。しかしながら、これらの従来技術においては、ジカルボン酸などの多価カルボン酸を画質や保存性を改良するための添加剤として使用しており、銀イオン供給源としてジカルボン酸などの多価カルボン酸を使用した銀塩熱現像感光材料は従来知られていない。
【0011】
また、露光後高温(例えば、80℃以上)に加熱した場合に、還元可能な銀源(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光で発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の還元可能な銀塩の反応によって生成した銀は黒色画像を提供し、これは非露光領域と対照をなし、画像の形成がなされる。また、現像後の画像耐光性改良のために、沃化銀(AgI)を用いた銀塩熱現像感光材料が開示されているが(例えば、特許文献4参照)、しかしながら、いずれも十分な感度・カブリレベルを達成できているものではない。
【0012】
そこで、高感度で、カブリが低く、現像後の耐光性(濃度変動、色調変動)、且つ露光前保存性(カブリの上昇、感度変動)に優れ、環境面・省エネ面で有利な銀塩熱現像感光材料を提供する技術が望まれていた。
【0013】
また、これらの銀塩熱現像感光材料の設計には、従来の現像液により現像する感光材料とは異なる熱現像特有の配慮が必要である。特に熱現像時には、通常80〜140℃の熱がかかるため、従来とは異なった設計が必要となる。
【0014】
熱現像処理時の条件によっては、銀塩熱現像感光材料と熱現像処理装置の搬送ローラーや処理部材との間の滑り性が変化し、搬送不良や濃度むらが発生していたため、これらを解決するための技術が切望されていた。特に医療用感光材料において、濃度むらは生体各部位の撮影にて病巣の誤診につながるため、画像の欠陥、すり傷や付着物等がない銀塩熱現像感光材料が強く求められていた。しかしながら、マット剤に係る問題、擦り傷、感材どうしの接着等について、その改良を意図した技術が知られているが十分とは言えない。
【特許文献1】米国特許第3,152,904号明細書
【特許文献2】米国特許第2,910,377号明細書
【特許文献3】特開平6−130543号公報
【特許文献4】特開2003−091052号公報
【特許文献5】特開2001−312026号公報
【特許文献6】特開2003−215764号公報
【非特許文献1】日本写真学会編、写真工学の基礎(銀塩写真編)、コロナ社(1979)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、低カブリで高感度、且つ画像耐光性、銀色調に優れた銀塩熱現像感光材料を提供すること、該銀塩熱現像感光材料に用いられる感光性ハロゲン化銀乳剤の有機溶媒分散物の製造方法を提供すること、及び該銀塩熱現像感光材料を用いた画像形成方法を提供すること、にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0017】
1.支持体の少なくとも一方の面に感光性ハロゲン化銀、非感光性脂肪酸銀、還元剤及びバインダーを含む画像形成層を有する銀塩熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀は調製時にゼラチンの代わりに下記一般式(1)で表されるモノマー及び下記一般式(2)で表されるモノマーを構成単位として有する共重合体を使用することを特徴とする銀塩熱現像感光材料。
【0018】
【化1】

【0019】
(一般式(1)において、Raは水素原子又はアルキル基を表し、R11は水素原子又は置換基を表す。一般式(2)において、Rbは水素原子又はアルキル基を表し、R21は水素原子又は置換基を表し、R22は水素原子又は置換基を表す。)
2.前記感光性ハロゲン化銀は、18族周期表の6族から11族の遷移金属、及び下記一般式(C−1)または(C−2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種、を含有することを特徴とする1記載の銀塩熱現像感光材料。
【0020】
【化2】

【0021】
(一般式(C−1)において、Z、Z及びZはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−OR、−NR(R)、−SR10、−SeR11、ハロゲン原子または水素原子を表す。R、R10及びR11はそれぞれ脂肪族基、芳香族基、複素環基、水素原子またはカチオンを表し、R及びRはそれぞれ脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表す。また、ZとZ、ZとZ、ZとZが環を形成してもよい。Chalcogenは硫黄原子、セレン原子またはテルル原子を表す。)
(一般式(C−2)において、Z及びZはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、−NR(R)、−ORまたは−SRを表す。R、R、R及びRはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アルキル基、アラルキル基、アリール基または複素環基を表す。但し、R及びRは水素原子またはアシル基であってもよい。また、ZとZが環を形成してもよい。Chalcogenは硫黄原子、セレン原子またはテルル原子を表す。)
3.感光性ハロゲン化銀乳剤を、下記一般式(1)で表されるモノマー及び一般式(2)で表されるモノマーを構成単位として有する共重合体を用いて有機溶媒に分散することを特徴とする感光性ハロゲン化銀乳剤の有機溶媒分散物の製造方法。
【0022】
【化3】

【0023】
(一般式(1)において、Raは水素原子又はアルキル基を表し、R11は水素原子又は置換基を表す。一般式(2)において、Rbは水素原子又はアルキル基を表し、R21は水素原子又は置換基を表し、R22は水素原子又は置換基を表す。)
4.前記感光性ハロゲン化銀は、前記一般式(1)で表されるモノマー及び一般式(2)で表されるモノマーを構成単位として有する共重合体を含有する有機溶媒の存在下で化学増感を施されることを特徴とする1または2に記載の銀塩熱現像感光材料。
【0024】
5.前記1、2または4に記載の銀塩熱現像感光材料を、25mm/秒以上120mm/秒以下で搬送しながら熱現像することを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【0025】
6.前記1、2または4に記載の銀塩熱現像感光材料を、レーザ光で露光することを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【0026】
7.前記1、2または4に記載の銀塩熱現像感光材料について画像形成をする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法であって、(a)該銀塩熱現像感光材料を1対のX線増感スクリーンの間に設置することにより像形成用組立体を得る工程、(b)該組立体とX線源との間に被検体を配置する工程、(c)該被検体にエネルギーレベルが25〜125kVpの範囲にあるX線を照射する工程、(d)該銀塩熱現像感光材料を該組立体から取り出す工程、(e)取り出した該銀塩熱現像感光材料を80〜150℃の範囲の温度で加熱する工程を含んでなることを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、低カブリで高感度、且つ画像耐光性、銀色調に優れた銀塩熱現像感光材料を提供すること、該銀塩熱現像感光材料に用いられる感光性ハロゲン化銀乳剤の有機溶媒分散物の製造方法を提供すること、及び該銀塩熱現像感光材料を用いた画像形成方法を提供すること、ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0029】
以下、本発明を実施するための最良の形態である、銀塩熱現像感光材料で用いる感光性ハロゲン化銀、有機脂肪酸銀、還元剤、バインダー、架橋剤を初めとする各種添加剤、塗布技術、露光・現像条件について順次、詳細に説明する。
【0030】
《本発明に係わる共重合体》
先ず本発明に係わるゼラチンと親和性の高い両親媒性を有する共重合体について説明する。
【0031】
本発明に係わる共重合体は、前記一般式(1)で表されるモノマー及び前記一般式(2)で表されるモノマーを構成単位として有する共重合体である。
【0032】
前記一般式(1)において、Raは水素原子又はアルキル基を表し、R11は水素原子又は置換基を表す。
【0033】
また、一般式(2)において、Rbは水素原子又はアルキル基を表し、R21は水素原子又は置換基を表し、R22は水素原子又は置換基を表す。
【0034】
Ra及びRbで表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。Ra及びRbとして好ましくは、水素原子又はメチル基である。
【0035】
11で表される置換基の具体例としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、ラウリル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、アシル基、また、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等を挙げることができる。
【0036】
11として好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、また、置換エチレンオキシ基また置換プロピレンオキシ基である。
【0037】
また、R11で表される炭素数1〜30のアルキル基としてより好ましくは、炭素数6から30のアルキル基、更に好ましくは炭素数10から30のアルキル基である。
【0038】
また、R11で表される置換エチレンオキシ基また置換プロピレンオキシ基としては、より好ましくは−(CHCHO)−(CHCH(CH)O)31で表される基である。
【0039】
ここで、mは1から300までの整数を表し、nは0から300までの整数を表す。またR31は水素原子又は置換基を表す。R31として好ましくは、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、より好ましいのは、水素原子、メチル基、エチル基である。
【0040】
又、前記一般式(2)において、R21及びR22で表される置換基の具体例としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、芳香族基(例えば、フェニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)等を挙げることができる。これらの基は更に上記の基により置換されていてもよい。
【0041】
21及びR22としては、好ましくは、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、また炭素数1〜8のアシル置換アルキル基が好ましく、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等のアルキル基、また、1,1−メチル−2−アセチルエチル基、2−アセチルブチル基、アセチルメチル基、また、1,1−メチル−2−ベンゾイルエチル基等のアシル置換アルキル基である。
【0042】
前記一般式(1)で表されるモノマーとしては、下記の市販のモノマーから選択して用いることもできる。
【0043】
一般式(1)において、R11が炭素数炭素数6から30のアルキル基である好ましいアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が好ましく入手可能である。
【0044】
また、一般式(1)のうち、置換エチレンオキシ基また置換プロピレンオキシ基を有する(ポリオキシアルキレン)アクリレート及びメタクリレートとしては、市販のヒドロキシポリ(オキシアルキレン)材料、例えば商品名“プルロニック”[Pluronic(旭電化工業(株)製)]、アデカポリエーテル(旭電化工業(株)製)、カルボワックス[Carbowax(グリコ・プロダクス)]、トリトン[Toriton(ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas製))]およびP.E.G(第一工業製薬(株)製)として販売されているものを、公知の方法でアクリル酸、メタクリル酸、アクリルクロリド、メタクリルクロリドまたは無水アクリル酸等と反応させることによって製造できる。
【0045】
また、上市されているものとして、日本油脂株式会社製のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとして、ブレンマーPE−90、ブレンマーPE−200、ブレンマーPE−350、ブレンマーAE−90、ブレンマーAE−200、ブレンマーAE−400、ブレンマーPP−1000、ブレンマーPP−500、ブレンマーPP−800、ブレンマーAP−150、ブレンマーAP−400、ブレンマーAP−550、ブレンマーAP−800、ブレンマー50PEP−300、ブレンマー70PEP−350B、ブレンマーAEPシリーズ、ブレンマー55PET−400、ブレンマー30PET−800、ブレンマー55PET−800、ブレンマーAETシリーズ、ブレンマー30PPT−800、ブレンマー50PPT−800、ブレンマー70PPT−800、ブレンマーAPTシリーズ、ブレンマー10PPB−500B、ブレンマー10APB−500Bなどがあげられる。同様に日本油脂株式会社製のアルキル末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとして、ブレンマーPME−100、ブレンマーPME−200、ブレンマーPME−400、ブレンマーPME−1000、ブレンマーPME−4000、ブレンマーAME−400、ブレンマー50POEP−800B、ブレンマー50AOEP−800B、ブレンマーPLE−200、ブレンマーALE−200、ブレンマーALE−800、ブレンマーPSE−400、ブレンマーPSE−1300、ブレンマーASEPシリーズ、ブレンマーPKEPシリーズ、ブレンマーAKEPシリーズ、ブレンマーANE−300、ブレンマーANE−1300、ブレンマーPNEPシリーズ、ブレンマーPNPEシリーズ、ブレンマー43ANEP−500、ブレンマー70ANEP−550、ブレンマーLMA、ブレンマーSLMA、ブレンマーCMA、ブレンマーSMA、ブレンマーVMA、ブレンマーVMA−70,ブレンマーB−12など、また共栄社化学株式会社製ライトエステルMC、ライトエステル130MA、ライトエステル041MA、ライトアクリレートBO−A、ライトアクリレートEC−A、ライトアクリレートMTG−A、ライトアクリレート130A、ライトアクリレートDPM−A、ライトアクリレートP−200A、ライトアクリレートNP−4EA、ライトアクリレートNP−8EAなどが挙げられ、これらの中から選択し用いることもできる。
【0046】
また、前記一般式(2)で表されるモノマーとして、上市されているものとしては、興人株式会社製のN,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジイソプロピルアクリルアミド等が挙げられ、また、前記一般式(2)で表されるモノマーとしては、協和醗酵工業株式会社製のダイアセトンアクリルアミドなどが挙げられ、本発明に係わる共重合体は、これらの中からモノマーを選択して製造に用いることができる。
【0047】
銀塩熱現像感光材料の画像形成層塗布液のバインダー中において、本発明に係る共重合体は、0.1質量%以上、20質量%以下の範囲で含有されていることが好ましい。0.1質量%以上であると分散状態が良く本発明の効果が得られ好ましい。また、20質量%以下であると熱現像性が良く、同じく、高感度で、高カバリングパワーの熱現像感光材料が得られるという本発明の効果が奏され好ましい。
【0048】
《感光性ハロゲン化銀》
本発明に係る感光性ハロゲン化銀乳剤を調製時に、ゼラチンの代わりに本発明に係る上記一般式(1)で表されるモノマー及び一般式(2)で表されるモノマーを構成単位として有する共重合体を使用することが特徴である。
【0049】
本発明に係る共重合体の重合度、分子量は異なってもよいが、ハロゲン化銀粒子調製時に本発明に係る共重合体(固形分換算)を0.4質量%以上10質量%以下含有することが好ましい。0.4質量%以上であると、粒子間の距離が保つことができ、ハロゲン化銀が凝集せず、分散性に好ましい。また、10質量%以下であると、ハロゲンイオンや銀イオンの水溶液を添加している間、本発明に係る共重合体が固体として析出することがなく、反応釜の攪拌不良が起こらないため、粒子の単分散性にも好ましい。
【0050】
脱塩工程において、ハロゲン化銀の粒径に応じて、本発明に係る共重合体を追加添加することができる。ハロゲン化銀が大きい粒子の場合には沈降に必要な本発明に係る共重合体の量が少なくてよく、粒径が小さい粒子の場合には必要な量が増える。該共重合体を析出するように水を添加して、ハロゲン化銀粒子を該共重合体と一緒に沈降させることができる。そして、脱塩及び水洗後に親水性の高い溶媒を用いることにより該共重合体を溶解させ、ハロゲン化銀粒子を再分散させることができる。
【0051】
本発明に係る共重合体を溶解する有機溶媒としては、水溶性で水と自由に混合するものが好ましく、例えば、メタノール、アルコール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、エチレングリコール等のジオール類、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられるが、水との親和性から、また低沸点であり、他の溶媒への置換が容易であることなどから、好ましいのはメタノール、アルコールである。
【0052】
最終的な油性の系として、前記の親水性の高い溶媒として好ましいプロトン系溶媒よりもさらに、油性の系でもよく、例えば溶解性パラメータで18.5〜21.0[(MPa)1/2](J.Brandrup,E.H.Immergut ‘POLYMER HANDBOOK’ Third Edition JOHN WILEY & SONS)の範囲にある、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル等、非プロトン性の溶媒系を用いることができる。溶媒置換は、蒸留により親水性の高い溶媒を濃縮し除去しつつ、新しい油性系溶媒を添加してゆくことで、またこの操作を繰り返し行うことで必要な程度に置換することができる。
【0053】
また、本発明の調製条件(pH、pAg、温度)は目的の粒子によって異なるが、従来のゼラチン中の調製と同じく、特に制限はない。調製温度は使用する共重合体を溶ける溶媒の物性や反応設備によるが、特に制限はない。
【0054】
以上のように、本発明に係わる共重合体を用いることにより調製した有機溶媒中分散したハロゲン化銀乳剤は、そのまま銀塩熱現像感光材料の有機溶媒系塗布液に添加することができる。従来のハロゲン化銀乳剤はゼラチンを含有しているため、そのまま有機溶媒系塗布液に添加すると、ハロゲン化銀粒子同士の凝集が起こりやすい。また、ゼラチンが水分を吸収しやすく、銀塩熱現像感光材料の保存性を劣化させる懸念があった。本発明はゼラチンを使用しないためこの問題を克服し得たものである。本発明に係る共重合体で分散したハロゲン化銀乳剤を用いることによって、塗布液中においても、塗布乾燥過程における膜中(媒体中)においても、ハロゲン化銀粒子が凝集することなく、分散状態が維持できる。従って高カバリングパワーの熱現像感光材料が得られる。
【0055】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、熱現像前は表面潜像型で、熱現像後に内部潜像型へ変換するハロゲン化銀粒子であることが特に好ましい。該ハロゲン化銀粒子は、粒子成長時にホールトラップ効果の微小な硫化銀や銀核や金属などを内部にドープすることで得られる。該ハロゲン化銀粒子は現像熱により、内部にドープされた微小核が凝集して、強い電子トラップ効果へ変換するので熱現像後に内部潜像型へと変換する。
【0056】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀粒子は、還元増感、カルコゲン増感、貴金属増感、所謂化学増感をハロゲン化銀粒子成長時に施して得ることができる。特に好ましくはハロゲン化銀粒子のコア部分に施すことである。本発明において、粒子のコア部分とは、粒子1つの銀量の0.1〜99%までの体積を指す。好ましくは0.1〜50%である。
【0057】
一般的に還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素の他に、例えば、塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、粒子形成中のpHを6.5以上、10.0以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。
【0058】
本発明においては、前記一般式(C−1)または(C−2)で表されるカルコゲン放出化合物を使用することが好ましい。本発明に係るハロゲン化銀粒子のコア部分を成長するときのpHは4.0〜10.0である。好ましくはpH5.5〜8.0下でカルコゲン化銀の生成を施すことである。一般式(C−1)または(C−2)のカルコゲン放出化合物が、pHによってカルコゲン化銀の生成をコントロールができるため、ハロゲン化銀粒子の表面に大きいかぶり核の生成が抑制される。
【0059】
前記一般式(C−1)において、Z、Z及びZはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−OR、−NR(R)、−SR10、−SeR11、ハロゲン原子または水素原子を表す。R、R10及びR11はそれぞれ脂肪族基、芳香族基、複素環基、水素原子またはカチオンを表し、R及びRはそれぞれ脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表す。また、ZとZ、ZとZ、ZとZが環を形成してもよい。Chalcogenは硫黄、セレン、テルルを表す。
【0060】
前記一般式(C−2)において、Z及びZはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、−NR(R)、−ORまたは−SRを表す。R、R、R及びRはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アルキル基、アラルキル基、アリール基または複素環基を表す。但し、R及びRは水素原子またはアシル基であってもよい。また、ZとZが環を形成してもよい。Chalcogenは硫黄、セレン、テルルを表す。
【0061】
以下に、一般式(C−1)または(C−2)で表される化合物の具体例を示す。
【0062】
【化4】

【0063】
【化5】

【0064】
【化6】

【0065】
【化7】

【0066】
一般式(C−1)または(C−2)で表されるカルコゲン化合物は、水あるいは適当な有機溶媒、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
【0067】
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。更に固体分散法として知られている方法によって、一般式(C−1)または(C−2)で表されるカルコゲン化合物の粉末を水または有機溶媒の中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散し用いることもできる。
【0068】
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、平板状粒子、八面体、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができるが、本発明においては、特に平板状粒子、立方体状粒子、八面体が好ましい。平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比(アスペクト比=主平面の円相当直径/厚み)は好ましくは2/1〜100/1、より好ましくは3/1〜50/1がよい。
【0069】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀の全投影面積の10%以上がアスペクト比2以上の平板状粒子であることが好ましい。このことにより、高感度、高CP化、鮮鋭性が優れる効果が奏されて好ましい。より好ましくは感光性ハロゲン化銀粒子の全投影面積の50%以上、さらに好ましくは全投影面積の70%以上、最も好ましくは全投影面積の80%以上が、アスペクト比2以上の平板状粒子である。
【0070】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀粒子においては、電子トラップ性ドーパントをハロゲン化銀粒子の内部に含有させることが感度及び画像保存性上好ましい。なお、熱現像前の画像形成のための露光の際には、正孔(ホール)トラップとして機能し、熱現像時に変質し、熱現像後においては電子トラップとして機能することができるドーパントハロゲン化銀粒子が特に好ましい。
【0071】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀粒子乳剤の塗布試料を光導電測定する際、本発明に係る熱変換内部潜像型ハロゲン化銀粒子の熱現像後の光導電度(信号の大きさ)が、熱現像前の80%以下に低下する。好ましくは50%以下に低下する。更に好ましくは25%以下に低下することである。光導電度が低下する現象は電子トラップ効果へ変換したことを示す意味である。
【0072】
ここで用いられる電子トラップ性ドーパントとは、ハロゲン化銀を構成する銀及びハロゲン以外の元素または化合物であって、当該ドーパント自身が自由電子をトラップ(捕獲)できる性質を有するまたは当該ドーパントがハロゲン化銀粒子内に含有されることで電子トラップ性の格子欠陥等の部位が生じるものをいう。例えば、銀以外の金属イオンまたは硫黄、セレン、テルルのようなカルコゲン(酸素族元素)または窒素原子などを含む無機化合物または有機化合物、またはその錯体等が挙げられる。
【0073】
金属イオンまたはその塩もしくは錯体としては、鉛イオン、ビスマスイオン、金イオン等または臭化鉛、硝酸鉛、炭酸鉛、硫酸鉛、硝酸ビスマス、塩化ビスマス、三塩化ビスマス、炭酸ビスマス、ビスマス酸ナトリウム、塩化金酸、酢酸鉛、ステアリン酸鉛、酢酸ビスマス等を挙げることができる。
【0074】
硫黄、セレン、テルルのようなカルコゲンを含む化合物としては、写真業界において、一般にカルコゲン増感剤として知られているカルコゲン放出性の種々の化合物を使用することができる。また、カルコゲンまたは窒素原子を含有する有機物としては、ヘテロ環式化合物が好ましい。例えば、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、インドレニン、テトラザインデンであり、好ましくはイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、テトラザインデンである。
【0075】
なお、上記のヘテロ環式化合物は置換基を有していてもよく、置換基として好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基である。
【0076】
または、銀塩熱現像感光材料とした後に、本発明に係る電子トラップ性ドーパントの効果を評価する場合の方法は、例えば、本発明の銀塩熱現像感光材料を露光前に通常の熱現像と同じ条件で加熱して、その後に一定時間(例えば、30秒間)、紫外〜可視光で光学楔を通して露光し、固有感度を評価する。更に同一の処理条件で非本発明のハロゲン化銀粒子乳剤(本発明のドーパントを含まない粒子乳剤)を使用した銀塩熱現像感光材料の固有感度と比較することにより評価できる。即ち、本発明に係るドーパントを含有するハロゲン化銀粒子乳剤を含む前者の試料の固有感度は、当該ドーパントを含まない後者の試料の固有感度に比較して低くなっていることである。前者の固有感度は後者の固有感度の1/5以下、好ましくは1/10以下、更に好ましくは、1/20以下である。
【0077】
なお、本発明に用いられるハロゲン化銀粒子には、上記のドーパントのように電子トラップ性ドーパントとして機能するように、あるいはホールトラップ性ドーパントとして機能するように18族周期表の6族から11族に属する遷移金属のイオンを当該金属の酸化状態を配位子(リガンド)等により化学的に調整して含有させてもよい。上記の遷移金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Ptが更に好ましい。
【0078】
本発明において、上記の各種ドーパントについては、1種類でも同種あるいは異種の化合物もしくは錯体を2種以上併用してもよい。但し、少なくとも1種は、熱現像後の露光の際に、電子トラップ性ドーパントとして機能することが必要である。これらのドーパントはどのような化学的形態でもハロゲン化銀粒子内に導入してもよい。
【0079】
ドーパントの好ましい含有率は、銀1モルに対し1×10−9〜1×10モルの範囲が好ましく、1×10−8〜1×10−1モルの範囲がより好ましい。更に、1×10−6〜1×10−1モルが好ましい。但し、最適量はドーパントの種類、ハロゲン化銀粒子の粒径、形状等、その他環境条件等に依存するのでこれらの条件に応じてドーパント添加条件の最適化の検討をすることが好ましい。
【0080】
本発明においては、遷移金属錯体または錯体イオンとしては、下記一般式で表されるものが好ましい。
【0081】
一般式〔ML
式中、Mは18族元素周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子を表し、mは0、1−、2−、3−または4−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲンイオン(例えば、弗素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン)、シアナイド、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つまたは二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、また異なっていてもよい。
【0082】
これらの金属のイオンまたは錯体イオンを提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。添加に際しては、数回に分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、例えば、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等の各公報に記載されている様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。
【0083】
これらの金属化合物は、水あるいは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば、金属化合物粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液または水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、あるいは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、あるいはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオンまたは錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。
【0084】
特に、金属化合物の粉末の水溶液、もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。粒子表面に添加する時には、粒子形成直後、物理熟成時途中、もしくは終了時または化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0085】
なお、非金属性ドーパントも上記の金属性ドーパントと同様の方法によってハロゲン化銀内部に導入することができる。
【0086】
本発明の銀塩熱現像感光材料において、上記のドーパントが電子トラップ性を有するか否かについては、次のように写真業界において従来一般的に用いられている方法で評価することができる。即ち、上記のドーパントまたはその分解物がハロゲン化銀粒子内にドープされたハロゲン化銀粒子からなるハロゲン化銀乳剤を、マイクロ波光導電測定法等により、ドーパントを含有していないハロゲン化銀粒子乳剤を基準として光導電の減少度を測定することにより評価できる。または、当該ハロゲン化銀粒子の内部感度と表面感度の比較実験によってもできる。
【0087】
または、銀塩熱現像感光材料とした後に、本発明に係る電子トラップ性ドーパントの効果を評価する場合の方法は、例えば、当該銀塩熱現像感光材料を露光前に通常の実用的熱現像条件と同じ条件で加熱して、その後に一定時間(例えば、30秒間)、紫外〜可視光または分光増感した範囲の光で光学楔を通して露光し、更に同一の熱現像条件で熱現像して得られる特性曲線(センシトメトリーカーブ)に基づき得られる感度を当該電子トラップ性ドーパント含まないハロゲン化銀粒子乳剤を使用した銀塩熱現像感光材料の感度と比較することにより評価できる。
【0088】
即ち、本発明に係るドーパントを含有するハロゲン化銀粒子乳剤を含む前者の試料の感度は、当該ドーパントを含まない後者の試料の感度に比較して低くなっていることの確認が必要である。
【0089】
なお、当該材料に一定時間(例えば、30秒間)、紫外〜可視光または分光増感した範囲の光で光学楔を通して露光した後に、通常の熱現像条件で熱現像をしたときに得られる特性曲線に基づき得られる当該試料の感度に対して露光前に通常の熱現像条件と同じ条件で加熱して、その後に上記と同一の一定時間、及び一定の露光を施し、更に通常の熱現像条件で熱現像して得られる特性曲線に基づき得られる感度が1/5以下、好ましくは1/10以下、更に好ましくは、1/20以下であることが好ましい。
【0090】
感光性ハロゲン化銀は光センサーとして機能するものであり、画像形成後の白濁を低く抑える為、また良好な画質を得るために粒子サイズが小さいことが好ましい。平均粒子サイズで0.08μm以下、好ましくは0.01〜0.08μm、特に0.02〜0.06μmが好ましい。この小サイズの粒子の含有率は70%以上であることが好ましい。一方、感度や階調調整のためには、やや大きい粒子が好ましい。平均粒子サイズは0.1μm以下、好ましくは0.03〜0.1μm、特に0.04〜0.08μmが好ましい。この大サイズの粒子の含有率は30%以下であることが好ましい。
【0091】
感光性ハロゲン化銀の量は、銀塩熱現像感光材料としては後述の非感光性脂肪酸銀に対して銀比率で2〜30モル%が好ましく、更に好ましくは5〜20モル%の間である。
【0092】
本発明の銀塩熱現像感光材料中のハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上、例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるものを併用してもよい。
【0093】
別々に調製した感光性ハロゲン化銀と非感光性脂肪酸銀の混合方法及び混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と脂肪酸銀を高速攪拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法が使用できる。また、本発明に係るハロゲン化銀分散乳剤を直接に有機溶媒に添加できるので、塗布直前までのどの工程に有機溶媒の塗布液に添加、分散することもできる。
【0094】
(非感光性脂肪酸銀)
本発明において、非感光性脂肪酸銀は還元可能な銀源であり、有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、特に、この中でも長鎖の(炭素数10〜30、好ましくは15〜25)脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環化合物の銀塩が好ましい。配位子が銀イオンに対する総安定度常数として4.0〜10.0の値を持つようなリサーチ・ディスクロージャーの17029及び29963に記載された有機または無機の錯体も好ましい。これら、好適な銀塩の例としては以下のものが挙げられる。
【0095】
有機酸の銀塩、例えば、没食子酸、蓚酸、ベヘン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩。銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩、例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等の銀塩。アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀塩または錯体、例えば、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等)とヒドロキシ置換酸類(サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸等)の反応生成物の銀塩または錯体。チオン類の銀塩または錯体、例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン、3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン等の銀塩または錯体。イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール及び1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンズトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体または塩。サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩、及びメルカプチド類の銀塩。
【0096】
これらの中、好ましい銀塩としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀及びステアリン酸銀が挙げられる。本発明においては、脂肪酸銀が2種以上混合されることが現像性を上げ、高濃度、高コントラストの銀画像を形成する上で好ましく、例えば、2種以上の有機酸混合物に銀イオン溶液を混合して調製することが好ましい。
【0097】
脂肪酸銀化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号公報に記載される様なコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウム等)を調製した後に、コントロールドダブルジェット法により、前記ソープと硝酸銀などを混合して脂肪酸銀の結晶を調製する。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよい。
【0098】
本発明に係る脂肪酸銀は種々の形状において使用できるが、平板状の粒子が好ましい。特に、アスペクト比3以上の平板状脂肪酸銀粒子であり、且つ最大面積を有する2枚のほぼ平行に相対する面(主平面)の形状異方性を小さくして、画像形成層中での充填を行うため、主平面方向から計測される該平板状脂肪酸銀粒子の針状比率の平均値が、1.1以上、10.0未満である粒子が好ましい。更に好ましい針状比率は1.1以上、5.0未満である。
【0099】
本発明において、アスペクト比3以上の平板状脂肪酸銀粒子であるとは、前記平板状脂肪酸銀粒子が全脂肪酸銀粒子の50個数%以上を占めることを言う。更に、本発明に係る脂肪酸銀はアスペクト比3以上の平板状粒子が全粒子の個数の60%以上を占めることが好ましく、更に好ましくは70%以上(個数)であり、特に好ましくは80%以上(個数)である。
【0100】
平板状脂肪酸銀粒子のアスペクト比は、好ましくは3〜20であり、更に好ましくは3〜10である。その理由としては、アスペクト比が低すぎると脂肪酸銀粒子が最密化され易くなり、またアスペクト比が余りに高い場合には脂肪酸銀粒子同士が重なり易く、またくっついた状態で分散され易くなるので光散乱等が起き易くなり、その結果として銀塩熱現像感光材料の透明感の低下をもたらすので、上記範囲が好ましいと考えている。
【0101】
前記の形状を有する脂肪酸銀粒子を得る方法としては特に限定されないが、有機酸アルカリ金属塩ソープ形成時の混合状態、及び前記ソープに硝酸銀を添加する際の混合状態などを良好に保つことや、ソープと反応する硝酸銀の割合を最適にすることなどが有効である。
【0102】
平板状脂肪酸銀粒子は、必要に応じてバインダーや界面活性剤等と共に予備分散した後、メディア分散機または高圧ホモジナイザ等で分散粉砕することが好ましい。上記予備分散には、アンカー型、プロペラ型等の一般的攪拌機や高速回転遠心放射型攪拌機(ディゾルバ)、高速回転剪断型撹拌機(ホモミキサ)を使用することができる。
【0103】
また、上記メディア分散機としては、ボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミルなどの転動ミルや、媒体攪拌ミルであるビーズミル、アトライター、その他バスケットミル等を用いることが可能であり、高圧ホモジナイザとしては、壁、プラグなどに衝突するタイプ、液を複数に分けてから高速で液同士を衝突させるタイプ、細いオリフィスを通過させるタイプ等、様々なタイプを用いることができる。
【0104】
メディア分散時に使用されるセラミックスビーズに用いられるセラミックスとしては、例えば、Al、BaTiO、SrTiO、MgO、ZrO、BeO、Cr、SiO、SiO−Al、Cr−MgO、MgO−CaO、MgO−C、MgO−Al(スピネル)、SiC、TiO、KO、NaO、BaO、PbO、B、SrTiO(チタン酸ストロンチウム)、BeAl、YAl12、ZrO−Y(立方晶ジルコニア)、3BeO−Al−6SiO(合成エメラルド)、C(合成ダイヤモンド)、SiO−nHO、チッカ珪素、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ等が好ましい。分散時におけるビーズや分散機との摩擦による不純物生成が少ない等の理由から、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ(これらジルコニアを含有するセラミックスを、以下ジルコニアと略す)が特に好ましく用いられる。
【0105】
平板状脂肪酸銀粒子を分散する際に用いられる装置類において、該脂肪酸銀粒子が接触する部材の材質としてジルコニア、アルミナ、窒化珪素、窒化硼素などのセラミックス類またはダイヤモンドを用いることが好ましく、中でもジルコニアを用いることが好ましい。
【0106】
上記分散を行う際、バインダー濃度は有機銀質量の0.1〜10%添加することが好ましく、予備分散から本分散を通して液温が45℃を上回らないことが好ましい。また、本分散の好ましい運転条件としては、例えば高圧ホモジナイザを分散手段として用いる場合には、29.42〜98.06MPa、運転回数は2回以上が好ましい条件として挙げられる。また、メディア分散機を分散手段として用いる場合は、周速が6〜13m/秒が好ましい条件として挙げられる。
【0107】
このような特徴を有する感光性乳剤を調製する条件としては、特に限定されないが、脂肪酸アルカリ金属塩ソープ形成時の混合状態及び/または前記ソープに硝酸銀を添加する際の混合状態などを良好に保つことや、ソープと反応する硝酸銀の割合を最適にすること、分散粉砕にはメディア分散機または高圧ホモジナイザなどで分散すること、その際バインダー濃度は脂肪酸銀量の0.1〜10質量%添加すること、乾燥から本分散終了までの温度が45℃を上回らないこと等に加えて、調液時にはディゾルバーを使用し周速2.0m/秒以上で攪拌することなどが好ましい条件として挙げられる。
【0108】
上記のような特定の投影面積値を有する有機銀粒子の投影面積や全投影面積にしめる割合などは、上記アスペクト比3以上の平板状粒子の平均厚さを求める個所で記載したと同様に、TEMを用いた方法により有機銀に相当する個所を抽出する。この際に、凝集した有機銀は一つの粒子と見なして処理し、各粒子の面積を求める。同様にして、少なくとも1,000個、好ましくは2,000個の粒子について面積を求め、それぞれについて、A:0.025μm未満、B:0.025μm以上、0.2μm未満、C:0.2μm以上の3群に分類する。
【0109】
本発明の銀塩熱現像感光材料は、A群に属する粒子の面積の合計が測定された全粒子の面積の70%以上であり、且つC群に属する粒子の面積の合計が測定された全粒子の面積の10%以下を満たすものが好ましい。
【0110】
上記手順で計測を行う際には、予め標準試料を用いて、1画素当たりの長さ補正(スケール補正)及び計測系の2次元歪みの補正を十分に行うことが好ましい。
【0111】
脂肪酸銀粒子は単分散粒子であることが好ましく、好ましい単分散度としては1〜30%であり、この範囲の単分散粒子にすることにより、濃度の高い画像が得られる。ここでいう単分散度とは下記式で定義される。
【0112】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
脂肪酸銀の平均粒径は0.01〜0.2μmが好ましく、更に好ましくは0.02〜0.15μmであり、平均粒径(円相当径)とは電子顕微鏡で観察される個々の粒子像と等しい面積を有する円の直径を表す。
【0113】
銀塩熱現像感光材料の失透を防ぐためには、ハロゲン化銀及び脂肪酸銀の総量は、銀量に換算して1m当たり0.5〜2.2gであることが好ましい。この範囲にすることで硬調な画像が得られる。
【0114】
(現像剤)
本発明に係る還元剤は感光性層中で、銀イオンを還元し得るものであり、現像剤ともいう。還元剤としては、下記一般式(RD1)で表される化合物が挙げられる。
【0115】
【化8】

【0116】
〔式中、Xはカルコゲン原子又はCHRを表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基又は複素環基を表す。Rはアルキル基を表し、同一でも異なってもよいが、少なくとも一方は2級又は3級のアルキル基である。Rは水素原子又はベンゼン環に置換可能な基を表す。Rはベンゼン環上に置換可能な基を表し、m及びnは各々0〜2の整数を表す。〕
本発明においては、銀イオンの還元剤として、特に、還元剤の少なくとも1種が前記一般式(RD1)で表される化合物を単独又は他の異なる化学構造を有する還元剤と併せて用いる。
【0117】
本発明においては、熱現像特性を制御するために前記一般式(RD1)で表される化合物と下記一般式(RD2)で表される化合物とを併用することもできる。
【0118】
【化9】

【0119】
〔式中、Xはカルコゲン原子又はCHRを表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。Rはアルキル基を表し、同一でも異なってもよいが、2級又は3級のアルキル基であることはない。Rは水素原子又はベンゼン環に置換可能な基を表す。Rはベンゼン環上に置換可能な基を表し、m及びnは各々前記一般式(RD1)のm及びnと同義の整数を表す。〕
その併用比率としては、[(RD1a)の化合物の質量]:[一般式(RD2)の化合物の質量]が5:95〜45:55であることが好ましく、より好ましくは10:90〜40:60である。
【0120】
一般式(RD1)中、Xはカルコゲン原子又はCHRを表す。カルコゲン原子としては、硫黄、セレン、テルルであり、好ましくは硫黄原子である。CHRにおけるRは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等であり、アルキル基としては置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ヘプチル等、アルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル、ヘキセニル、ヘキサジエニル、エテニル−2−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ペンテニル、1−メチル−3−ブテニル等、アリール基としてはベンゼン環、ナフタレン環等、複素環基としてはチオフェン、フラン、イミダゾール、ピラゾール、ピロール等の各基である。
【0121】
これらの基は更に置換基を有していてもよく、置換基として具体的には、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、i−ペンチル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル、シクロヘプチル等)、アルケニル基(エテニル−2−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ペンテニル、1−メチル−3−ブテニル等)、シクロアルケニル基(1−シクロアルケニル、2−シクロアルケニル基等)、アルキニル基(エチニル、1−プロピニル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ等)、アルキルカルボニルオキシ基(アセチルオキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、トリフルオロメチルチオ等)、アシル基(アセチル基、ベンゾイル基)、カルボキシル基、アルキルカルボニルアミノ基(アセチルアミノ等)、ウレイド基(メチルアミノカルボニルアミノ等)、アルキルスルホニルアミノ基(メタンスルホニルアミノ等)、アルキルスルホニル基(メタンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−モルホリノカルボニル等)、スルファモイル基(スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、モルホリノスルファモイル等)、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アルキルスルホンアミド基(メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド等)、アルキルアミノ基(アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ等)、スルホ基、ホスホノ基、サルファイト基、スルフィノ基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(メタンスルホニルアミノカルボニル、エタンスルホニルアミノカルボニル等)、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(アセトアミドスルホニル、メトキシアセトアミドスルホニル等)、アルキニルアミノカルボニル基(アセトアミドカルボニル、メトキシアセトアミドカルボニル等)、アルキルスルフィニルアミノカルボニル基(メタンスルフィニルアミノカルボニル、エタンスルフィニルアミノカルボニル等)等が挙げられる。又、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。特に好ましい置換基はアルキル基である。
【0122】
はアルキル基を表し、少なくとも一方は2級又は3級のアルキル基である。アルキル基としては置換又は無置換の炭素数1〜20のものが好ましく、具体的にはメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、t−ブチル、t−ペンチル、t−アミル、t−オクチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、1−メチルシクロヘキシル、1−メチルシクロプロピル等の基が挙げられる。
【0123】
アルキル基の置換基は特に限定されないが、例えば、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ハロゲン原子等が挙げられる。又、(R及び(Rと飽和環を形成してもよい。Rは好ましくは何れも2級又は3級のアルキル基であり、炭素数2〜20が好ましい。より好ましくは3級アルキル基であり、更に好ましくはt−ブチル、t−アミル、t−ペンチル、1−メチルシクロヘキシルであり、最も好ましくはt−ブチル、t−アミルである。
【0124】
はヒドロキシル基を置換基として有する炭素数3〜20のアルキル基、または脱保護されることによりヒドロキシル基を形成しうる基を置換基として有する炭素数3〜20のアルキル基を表すが、好ましくは、Rはヒドロキシル基を置換基として有する炭素数3〜10のアルキル基、または脱保護されることによりヒドロキシル基を形成しうる基を置換基として有する炭素数3〜10のアルキル基である。アルキル基の炭素数をこの範囲とすると、画像が硬調化することがなく、平均階調が1.8〜6.0の範囲内の診断に適した画像をうることができる点で好ましい。Rは特に好ましくは、ヒドロキシル基を置換基として有する炭素数3〜5のアルキル基である。Rとしては例えば、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、5−ヒドロキシペンチル等が挙げられる。これらの基は更に置換基を有していてもよく、置換基としては前記Rで挙げた置換基を用いることができる。
【0125】
脱保護されて水酸基を形成しうる基として好ましくは酸および/または熱の作用により脱保護して水酸基を形成する基が挙げられる。
【0126】
具体的には、エーテル基(メトキシ基、tert−ブトキシ基、アリルオキシ基、ベンジルオキシ基、トリフェニルメトキシ基、トリメチルシリルオキシ基等)、ヘミアセタール基(テトラヒドロピラニルオキシ基等)、エステル基(アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−ニトロベンゾイルオキシ基、ホルミルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基等)、カルボナート基(エトキシカルボニルオキシ基、フェノキシカルボニルオキシ基、tert−ブチルオキシカルボニルオキシ基等)、スルホナート基(p−トルエンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基等)、カルバモイルオキシ基(フェニルカルバモイルオキシ基等)、チオカルボニルオキシ基(ベンジルチオカルボニルオキシ基等)、硝酸エステル基、スルフェナート基(2,4−ジニトロベンゼンスルフェニルオキシ基等)が挙げられる。
【0127】
は最も好ましくはヒドロキシル基又はそのプレカーサー基を有する炭素数3〜5の第1級アルキル基であり、例えば3−ヒドロキシプロピルである。R及びRの最も好ましい組合せは、Rが第3級アルキル基(t−ブチル、t−アミル、t−ペンチル、1−メチルシクロヘキシル等)であり、Rがヒドロキシル基又はそのプレカーサー基を有する炭素数3〜10の第1級アルキル基(3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル等)である。複数のR、Rは同じでも異なっていてもよい。
【0128】
は水素原子又はベンゼン環上に置換可能な基を表すが、具体的には炭素数1〜25のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル等)、ハロゲン化アルキル基(トリフルオロメチル、パーフルオロオクチル等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル、シクロペンチル等)、アルキニル基(プロパルギル等)、グリシジル基、アクリレート基、メタクリレート基、アリール基(フェニル等)、複素環基(ピリジル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、フリル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、セレナゾリル、スリホラニル、ピペリジニル、ピラゾリル、テトラゾリル等)、ハロゲン原子(塩素、臭素、沃素、フッ素)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ペンチルオキシ、シクロペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ等)、アリールオキシ基(フェノキシ等)、アルコキシカルボニル基(メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェニルオキシカルボニル等)、スルホンアミド基(メタンスルホンアミド、エタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、ヘキサンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド等)、スルファモイル基(アミノスルホニル、メチルアミノスルホニル、ジメチルアミノスルホニル、ブチルアミノスルホニル、ヘキシルアミノスルホニル、シクロヘキシルアミノスルホニル、フェニルアミノスルホニル、2−ピリジルアミノスルホニル等)、ウレタン基(メチルウレイド、エチルウレイド、ペンチルウレイド、シクロヘキシルウレイド、フェニルウレイド、2−ピリジルウレイド等)、アシル基(アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ヘキサノイル、シクロヘキサノイル、ベンゾイル、ピリジノイル等)、カルバモイル基(アミノカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノカルボニル、プロピルアミノカルボニル、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル、フェニルアミノカルボニル、2−ピリジルアミノカルボニル)、アミド基(アセトアミド、プロピオンアミド、ブタンアミド、ヘキサンアミド、ベンズアミド等)、スルホニル基(メチルスルホニル、エチルスルホニル、ブチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル、フェニルスルホニル、2−ピリジルスルホニル等)、アミノ基(アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、アニリノ、2−ピリジルアミノ等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、オキザモイル基等を挙げることができる。又、これらの基は更にこれらの基で置換されてもよい。n及びmは0〜2の整数を表すが、最も好ましくはn、m共に0の場合である。
【0129】
又、RはR、Rと飽和環を形成してもよい。Rは好ましくは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。複数のRは同じでも異なっていても良い。
【0130】
一般式(RD2)中、RはRと同様の基であり、RはRと同様の基である。Rはアルキル基を表し、同一でも異なってもよいが、2級又は3級のアルキル基であることはない。
【0131】
は水素原子又はベンゼン環に置換可能な基を表す。ベンゼン環に置換可能な基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、スルホニル基、アルキルスルホニル基、スルフィニル基、シアノ基、複素環基等が挙げられる。
【0132】
として好ましくは、メチル、エチル、i−プロピル、t−ブチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル等が挙げられる。更に好ましくはメチル、3−ヒドロキシプロピルである。アルキル基としては置換又は無置換の炭素数1〜20のものが好ましく、具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチル等の基が挙げられる。アルキル基の置換基は特に限定されないが、例えば、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0133】
又、Rは(R及び(Rと飽和環を形成してもよい。Rは、好ましくはメチルである。一般式(RD2)で表される化合物のうちでも好ましく用いられる化合物は欧州特許第1,278,101号明細書に記載の一般式(S)、一般式(T)を満足する化合物であり、具体的にはp21〜p28に記載の(1−24)、(1−28)〜(1−54)、(1−56)〜(1−75)の化合物があげられる。
【0134】
以下に、一般式(RD1)、一般式(RD2)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0135】
【化10】

【0136】
【化11】

【0137】
【化12】

【0138】
【化13】

【0139】
これら一般式(RD1)、一般式(RD2)で表されるビスフェノール化合物は、従来公知の方法により容易に合成することができる。
【0140】
本発明において、併用することができる還元剤としては、例えば、米国特許3,770,448号、同3,773,512号、同3,593,863号の各明細書、RD17029号及び29963号、特開平11−119372号、特開2002−62616号の各公報等に記載されている還元剤が挙げられる。
【0141】
前記一般式(RD1)で表される化合物を初めとする還元剤の使用量は、好ましくは銀1モル当たり1×10−2〜10モル、特に好ましくは1×10−2〜1.5モルである。
【0142】
(バインダー)
本発明の銀塩熱現像感光材料に使用するバインダーは透明または半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、澱粉、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリビニルアセタール類(ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等)、ポリエステル類、ポリウレタン類、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリエポキシド類、ポリカーボネート類、ポリビニルアセテート、セルロースエステル類、ポリアミド類がある。これらは親水性でも非親水性でもよい。またはSBRラテックス、NBRラテックスなどを加えてもよい。
【0143】
本発明に係るバインダーのガラス転移温度(Tg)は70℃以上90℃以下であることが好ましい。
【0144】
銀塩熱現像感光材料の画像形成層に好ましいバインダーは、ポリビニルアセタール類であり、特に好ましいバインダーはポリビニルブチラールである。また、上塗り層や下塗り層、特に保護層やバックコート層等の非画像形成層においては、よりガラス転移温度の高いポリマーであるセルロースエステル類、特にトリアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが好ましい。なお、必要に応じて上記バインダーは2種以上を組み合わせて用い得る。
【0145】
本発明に好ましく用いられるバインダーとして、下記ポリビニルアセタールが挙げられる。
【0146】
【表1】

【0147】
このようなバインダーは、バインダーとして機能するのに効果的な範囲で用いられる。効果的な範囲は当業者が容易に決定し得る。例えば、画像形成層において少なくとも脂肪酸銀を保持する場合の指標としては、バインダーと脂肪酸銀との割合は15:1〜1:2、特に8:1〜1:1の範囲が好ましい。即ち、画像形成層のバインダー量が1.5〜6g/mであることが好ましく、更に好ましくは1.7〜5g/mである。1.5g/m未満では未露光部の濃度が大幅に上昇し、使用に耐えない場合がある。
【0148】
(架橋剤)
架橋剤としては、従来、通常の写真感光材料用として使用されている種々の架橋剤、例えば、特開昭50−96216号公報に記載されているアルデヒド系、エポキシ系、エチレンイミン系、ビニルスルホン系、スルホン酸エステル系、アクリロイル系、カルボジイミド系、シラン化合物系架橋剤を用い得るが、好ましいのはイソシアネート系化合物、シラン化合物、エポキシ化合物または酸無水物である。これらの化合物については、特開2001−249428号公報に詳述される。
【0149】
本発明の銀塩熱現像感光材料には、色調剤を添加することが好ましい。好適な色調剤の例はリサーチ・ディスクロージャーの17029号に開示されており、具体的には以下のものを挙げることができる。
【0150】
イミド類(フタルイミド等);環状イミド類、ピラゾリン−5−オン類及びキナゾリノン類(スクシンイミド、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリン及び2,4−チアゾリジンジオン等);ナフタールイミド類(N−ヒドロキシ−1,8−ナフタールイミド等);コバルト錯体(コバルトのヘキサミントリフルオロアセテート等);メルカプタン類(3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール等);N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド類(N−(ジメチルアミノメチル)フタルイミド等);ブロックされたピラゾール類、イソチウロニウム誘導体、及びある種の光漂白剤の組合せ(N,N′−ヘキサメチレン(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジオキサオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)と2−(トリブロモメチルスルホニル)ベンゾチアゾールの組合せ);メロシアニン染料(3−エチル−5−((3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン(ベンゾチアゾリニリデン))−1−メチルエチリデン)−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン等);フタラジノン、フタラジノン誘導体またはこれらの誘導体の金属塩(4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノンとスルフィン酸誘導体の組合せ(6−クロロフタラジノン+ベンゼンスルフィン酸ナトリウムまたは8−メチルフタラジノン+p−トリスルホン酸ナトリウム);フタラジン+フタル酸の組合せ;フタラジン(フタラジンの付加物を含む)とマレイン酸無水物、及びフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸またはo−フェニレン酸誘導体及びその無水物(フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸無水物)から選択される少なくとも一つ化合物との組合せ;キナゾリンジオン類、ベンズオキサジン、ナルトキサジン誘導体;ベンズオキサジン−2,4−ジオン類(1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン等);ピリミジン類及び不斉−トリアジン類(2,4−ジヒドロキシピリミジン等)、及びテトラアザペンタレン誘導体(3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン等)等を挙げることができ、特に好ましい色調剤はフタラゾンまたはフタラジンである。
【0151】
(層構成)
本発明の銀塩熱現像感光材料は、支持体上に少なくとも1層の画像形成層を有している。支持体の上に画像形成層のみを形成してもよいが、画像形成層の上に少なくとも1層の非画像形成層を形成することが好ましい。画像形成層を通過する光の量、または波長分布を制御するため、画像形成層と同一側または反対側にフィルター層を形成してもよいし、画像形成層に直接、本発明に係る染料や公知の顔料等を含有させてもよい。画像形成層は複数層にしてもよく、階調の調節のため感度の異なる構成、例えば、高感層/低感層または低感層/高感層にしてもよい。
【0152】
各種の添加剤は、画像形成層、非画像形成層またはその他の形成層のいずれに添加してもよい。本発明の銀塩熱現像感光材料には、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、被覆助剤等を用いてもよい。
【0153】
(塗布方法)
本発明の銀塩熱現像感光材料は、上述した各構成層の素材を溶媒に溶解または分散させた塗布液を調製し、それら塗布液を複数同時に重層塗布した後、加熱処理を行って形成されることが好ましい。ここで「複数同時に重層塗布」とは、各構成層(例えば画像形成層、保護層)の塗布液を調製し、これを支持体へ塗布する際に各層個別に塗布、乾燥の繰り返しをするのではなく、同時に重層塗布を行い乾燥する工程も同時に行える状態で各構成層を形成しうることを意味する。即ち、下層中の全溶剤の残存量が70質量%以下となる前に、上層を設けることである。
【0154】
各構成層を複数同時に重層塗布する方法には特に制限はなく、例えば、バーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法、エクストルージョン塗布法などの公知の方法を用いることができる。これらの内、より好ましくはエクストルージョン塗布法と呼ばれる前計量タイプの塗布方式である。該エクストルージョン塗布法は、スライド塗布方式のようにスライド面での揮発がないため、精密塗布、有機溶媒塗布に適している。この塗布方法は画像形成層を有する側について述べたが、バックコート層を設ける際、下引きとともに塗布する場合についても同様である。
【0155】
(包装材料)
本発明の銀塩熱現像感光材料は、使用される前の保存時に写真性能の変質を防ぐため、あるいはロール状態の製品形態の場合にはカール状の巻き癖が付くのを防ぐために、酸素透過率及び/または水分透過率の低い包装材料で密閉包装するのが好ましい。
【0156】
酸素透過率は25℃で50ml/atm/m・day以下であることが好ましく、より好ましくは10ml/atm/m・day以下であり、更に好ましくは1.0ml/atm/m・day以下である(但し、1atmは1.01325Paである。)。水分透過率は10g/atm/m・day以下であることが好ましく、より好ましくは5g/atm/m・day以下であり、更に好ましくは1g/atm/m・day以下である(但し、1atmは1.01325Paである。)。酸素透過率及び/または水分透過率の低い包装材料の具体例としては、例えば、特開平8−254793号、特開2000−206653号の各公報に記載されているものを利用することができる。
【0157】
(その他の利用できる技術)
本発明の銀塩熱現像感光材料に用いることのできる技術としては、欧州特許第803,764A1号、同883,022A1号の各明細書、国際公開第98/36322号パンフレット、特開昭56−62648号、同58−62644号、特開平9−43766、同9−281637、同9−297367号、同9−304869号、同9−311405号、同9−329865号、同10−10669号、同10−62899号、同10−69023号、同10−186568号、同10−90823号、同10−171063号、同10−186565号、同10−186567号、同10−186569号〜同10−186572号、同10−197974号、同10−197982号、同10−197983号、同10−197985号〜同10−197987号、同10−207001号、同10−207004号、同10−221807号、同10−282601号、同10−288823号、同10−288824号、同10−307365号、同10−312038号、同10−339934号、同11−7100号、同11−15105号、同11−24200号、同11−24201号、同11−30832号、同11−84574号、同11−65021号、同11−109547号、同11−125880号、同11−129629号、同11−133536号〜同11−133539号、同11−133542号、同11−133543号、同11−223898号、同11−352627号、同11−305377号、同11−305378号、同11−305384号、同11−305380号、同11−316435号、同11−327076号、同11−338096号、同11−338098号、同11−338099号、同11−343420号、特開2001−200414号、同2001−234635号、同2002−20699号、同2001−275471号、同2001−275461号、2000−313204号、同2001−292844号、同2000−324888号、同2001−293864号、同2001−348546号の各公報が挙げられる。
【0158】
多色カラー銀塩熱現像感光材料の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また米国特許第4,708,928号明細書に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。
【0159】
多色カラー銀塩熱現像感光材料の場合、各画像形成層は、一般に米国特許第4,460,681号明細書に記載されているように、各画像形成層の間に官能性もしくは非官能性のバリアー層を使用することにより互いに区別されて保持される。
【0160】
《画像形成方法》
本発明の銀塩熱現像感光材料は、支持体の片面にのみ画像形成層を有する片面型であっても、両面に画像形成層を有する両面型であってもよい。
【0161】
(両面型銀塩熱現像感光材料)
本発明の銀塩熱現像感光材料は、X線増感スクリーンを用いてX線画像を記録する画像形成方法に好ましく用いることができる。
【0162】
これらの銀塩熱現像感光材料を用いて画像形成する工程は以下の工程よりなる。
(a)該銀塩熱現像感光材料を1対のX線増感スクリーンの間に設置することにより像形成用組立体を得る工程
(b)該組立体とX線源との間に被検体を配置する工程
(c)該被検体にエネルギーレベルが25〜125kVpの範囲にあるX線を照射する工程
(d)該銀塩熱現像感光材料を該組立体から取り出す工程
(e)取り出した該銀塩熱現像感光材料を80〜150℃の範囲の温度で加熱する工程。
【0163】
本発明における組立体において使用する銀塩熱現像感光材料は、X線によって階段露光し、熱現像して得られる画像が光学濃度(D)及び露光量(logE)の座標軸単位長の等しい直交座標上の特性曲線において、最小濃度(Dmin)+濃度0.25の点と最小濃度(Dmin)+濃度2.0の点とで作る平均ガンマ(γ)が3.0〜4.0である特性曲線を有するように調整されていることが好ましい。
【0164】
本発明に係るX線撮影系において、このような特性曲線を有する銀塩熱現像感光材料を用いると脚部が非常に延びていて、且つ中濃度部ではガンマの高いといった優れた写真特性のX線画像が得られる。この写真特性により、X線透過量の少ない縦隔部、心陰影等の低濃度域の描写性が良好になり、且つX線透過量の多い肺野部の画像においても視覚し易い濃度となり、またコントラストも良好になるとの利点がある。
【0165】
上記のような好ましい特性曲線を有する銀塩熱現像感光材料は、例えば、両側の画像形成層のそれぞれを互いに異なった感度を持つ二層以上のハロゲン化銀乳剤層から構成するような方法で容易に製造することができる。特に、上層には高感度の乳剤を用い、下層には低感度で硬調な写真特性を有する乳剤を用いて、画像形成層を形成することが好ましい。このような二層からなる画像形成層を用いる場合における各層間のハロゲン化銀乳剤の感度差は1.5倍以上20倍以下、好ましくは2倍以上15倍以下である。なお、それぞれの層の形成に用いられる乳剤の量の比率は、用いられる乳剤の感度差及びカバリングパワーにより異なる。一般には、感度差が大きい程高感度側の乳剤の使用比率を下げる。例えば、感度差が2倍であるときの好ましい各乳剤の使用比率は、カバリングパワーがほぼ等しい場合には、銀量換算で高感度乳剤対低感度乳剤として1:20以上1:50以下の範囲の値となるように調整される。
【0166】
クロスオーバーカット(両面感光材料)とアンチハレーション(片面感光材料)の技術としては、特開平2−68539号公報、第13頁左下欄1行目から同第14頁左下欄9行目に記載の染料もしくは染料と媒染剤を用いることができる。
【0167】
次に、本発明に係る蛍光増感紙(X線増感スクリーン、放射線増感スクリーン)について説明する。放射線増感スクリーンは、基本構造として、支持体とその片面に形成された蛍光体層とからなる。蛍光体層は、蛍光体が結合剤(バインダー)中に分散されてなる層である。なお、この蛍光体層の支持体とは反対側の表面(支持体に面していない側の表面)には、一般に透明な保護膜が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。
【0168】
本発明において、好ましい蛍光体としては以下に示すものが挙げられる。タングステン酸塩系蛍光体(CaWO、MgWO、CaWO:Pb等)、テルビウム賦活希土類酸硫化物系蛍光体(YS:Tb、GdS:Tb、LaS:Tb、(Y、Gd)S:Tb、(Y、Gd)OS:Tb、Tm等)、テルビウム賦活希土類燐酸塩系蛍光体(YPO:Tb、GdPO:Tb、LaPO:Tb等)、テルビウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Tb、LaOBr:Tb、Tm、LaOCl:Tb、LaOCl:Tb、Tm、LaOBr:Tb、GdOBr:Tb、GdOCl:Tb等)、ツリウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Tm、LaOCl:Tm等)、硫酸バリウム系蛍光体〔BaSO:Pb、BaSO:Eu2+、(Ba、Sr)SO:Eu2+等〕、2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属燐酸塩系蛍光体〔(BaPO:Eu2+、(BaPO:Eu2+等〕、2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体(BaFCl:Eu2+、BaFBr:Eu2+、BaFCl:Eu2+、Tb、BaFBr:Eu2+、Tb、BaF・BaCl・KCl:Eu2+、(Ba、Mg)F・BaCl・KCl:Eu2+等)、沃化物系蛍光体(CsI:Na、CsI:Tl、NaI、KI:Tl等)、硫化物系蛍光体(ZnS:Ag(Zn、Cd)S:Ag、(Zn、Cd)S:Cu、(Zn、Cd)S:Cu、Al等)、燐酸ハフニウム系蛍光体(HfP:Cu等)、YTaO及びそれに発光中心として各種の賦活剤を加えたもの。但し、本発明に用いられる蛍光体はこれらに限定されるものではなく、放射線の照射によって可視または近紫外領域の発光を示す蛍光体であれば使用できる。
【0169】
本発明で用いる蛍光増感紙は、傾斜粒径構造で蛍光体を充填することが好ましい。特に表面保護層側に大粒径の蛍光体粒子を塗布し、支持体側に小粒径の蛍光体粒子を塗布することが好ましく、小粒径のものは0.5〜2.0μmで、大粒径のものは10〜30μmの範囲が好ましい。
【0170】
(片面型銀塩熱現像感光材料)
本発明における片面型銀塩熱現像感光材料は、特に乳房撮影用X線感光材料として用いるのが好ましい。本目的に用いられる片面型銀塩熱現像感光材料は、得られる画像のコントラストを適切な範囲に設計することが重要である。
【0171】
乳房撮影用X線感光材料としての好ましい構成要件に関しては、特開平5−45807号、同10−62881号、同10−54900号、同11−109564号の各公報記載を参考にすることができる。
【0172】
(紫外蛍光スクリーンとの組合せ)
本発明の銀塩熱現像感光材料を用いた画像形成方法としては、好ましくは400nm以下に主ピークを持つ蛍光体との組み合わせで画像形成する方法を用いることができる。更に好ましくは380nm以下に主ピークを持つ蛍光体と組み合わせて画像形成する方法が良い。両面感材、片面感材のいずれでも組立て体として用いることができる。400nm以下に主発光ピークであるスクリーンは特開平6−11804号公報、国際公開第93/01521号パンフレットに記載のスクリーンなどが使われるがこれに限られるものではない。紫外線のクロスオーバーカット(両面感光材料)とアンチハレーション(片面感光材料)の技術としては、特開平8−76307号公報に記載の技術を用いることができる。紫外線吸収染料としては、特開2001−144030号公報に記載の染料は特に好ましい。
【0173】
《レーザ露光条件》
銀塩熱現像感光材料の露光は、該写真材料に付与した感色性に対し適切な光源を用いることが望ましい。例えば、該写真材料を赤外光に感じ得るものとした場合は、赤外光域ならば如何なる光源にも適用可能であるが、レーザパワーがハイパワーであることや、写真材料を透明にできる等の点から、赤外半導体レーザ(780〜820nm)または青レーザ(400nm付近)がより好ましく用いられる。
【0174】
露光はレーザ走査露光により行うことが好ましいが、その露光方法には種々の方法が採用できる。例えば、第1の好ましい方法として、写真材料の露光面と走査レーザ光の為す角が実質的に垂直になることがないレーザ走査露光機を用いる方法が挙げられる。ここで、「実質的に垂直になることがない」とは、レーザ走査中に最も垂直に近い角度として好ましくは55〜88度、より好ましくは60〜86度、更に好ましくは65〜84度、最も好ましくは70〜82度であることを言う。
【0175】
レーザ光が、写真材料に走査される時の露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方がレーザ入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。なお、ビームスポット直径の下限は10μmである。このようなレーザ走査露光を行うことにより、干渉縞様ムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減少できる。
【0176】
また、第2の方法として、露光は縦マルチである走査レーザ光を発するレーザ走査露光機を用いて行うことも好ましい。縦単一モードの走査レーザ光に比べて干渉縞様ムラの発生等の画質劣化が減少する。縦マルチ化するには、合波による、戻り光を利用する、高周波重畳をかける、等の方法がよい。
【0177】
なお、縦マルチとは露光波長が単一でないことを意味し、通常、露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常、60nm程度である。
【0178】
更に、第3の態様としては2本以上のレーザを用いて、走査露光により画像を形成することも好ましい。
【0179】
このような複数本のレーザを利用した画像記録方法としては、高解像度化、高速化の要求から1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むレーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段で使用されている技術であり、例えば、特開昭60−166916号公報等により知られている。これは、光源ユニットから放射されたレーザ光をポリゴンミラーで偏向走査し、fθレンズ等を介して感光体上に結像する方法であり、レーザイメージャ等と原理的に同じレーザ走査光学装置である。
【0180】
レーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段における感光体上へのレーザ光の結像は、1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むという用途から、一つのレーザ光の結像位置から1ライン分ずらして次のレーザ光が結像されている。具体的には、二つの光ビームは互いに副走査方向に像面上で数10μmオーダーの間隔で近接しており、印字密度が400dpi(dpiとは1インチ、即ち2.54cm当たりのドット数を表す)で2ビームの副走査方向ピッチは63.5μm、600dpiで42.3μmである。
【0181】
このような、副走査方向に解像度分ずらした方法とは異なり、本発明では同一の場所に2本以上のレーザで入射角を変え露光面に集光させ画像形成することも好ましい。この際の、通常の1本のレーザ(波長λnm)で書き込む場合の露光面での露光エネルギーがEである場合に、露光に使用するN本のレーザが同一波長(波長λnm)、同一露光エネルギー(En)とした場合、0.9×E≦En×N≦1.1×Eの範囲にするのが好ましい。このようにすることにより、露光面ではエネルギーは確保されるが、それぞれのレーザ光の画像形成層への反射は、レーザの露光エネルギーが低いため低減され、ひいては干渉縞の発生が抑えられる。
【0182】
なお、上述では複数本のレーザの波長をλと同一のものを使用したが、波長の異なるものを用いてもよい。この場合、λnmに対して(λ−30)<λ1、λ2、・・・・・λn≦(λ+30)の範囲にするのが好ましい。
【0183】
なお、上述した第1、第2、第3の態様の画像記録方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られている。ルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;He−Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、COレーザ、COレーザ、He−Cdレーザ、Nレーザ、エキシマーレーザ等の気体レーザ;InGaPレーザ、AlGaAsレーザ、GaAsPレーザ、InGaAsレーザ、InAsPレーザ、CdSnPレーザ、GaSbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できるが、これらの中でもメンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザを用いるのが好ましい。なお、レーザ・イメージャやレーザ・イメージセッタで使用されるレーザにおいて、銀塩熱現像感光材料に走査される時の該材料露光面でのビームスポット径は、一般に短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は銀塩熱現像感光材料固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、写真材料毎に最適な値に設定することができる。
【0184】
《現像条件》
銀塩熱現像感光材料の現像条件は使用する機器、装置、あるいは手段に依存して変化するが、典型的には適した高温において像様に露光した写材料を加熱することを伴う。露光後に得られた潜像は、中程度の高温(約80〜150℃、好ましくは約100〜130℃)で十分な時間(本発明は、5〜20秒の速さの迅速現像処理が好ましい)、写真材料を加熱することにより現像する。
【0185】
加熱温度が80℃未満では短時間に十分な画像濃度が得られず、また150℃を超えるような高温ではバインダーが溶融し、ローラへの転写など画像そのものだけでなく搬送性や、現像機等へも悪影響を及ぼす。加熱することで脂肪酸銀(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により銀画像を生成する。この反応過程は外部からの水等、処理液の一切の供給なしに進行する。
【0186】
加熱する機器、装置、手段は、ホットプレート、アイロン、ホットローラ、炭素または白色チタン等を用いた熱発生器として典型的な加熱手段で行ってよい。より好ましくは、保護層の設けられた銀塩熱現像感光材料は保護層を有する側の面を加熱手段と接触させ加熱処理するのが均一な加熱を行う上で、また熱効率、作業性の点などから好ましく、該面をヒートローラに接触させながら搬送し加熱処理して現像することが好ましい。
【0187】
なお、現像時の本発明の銀塩熱現像感光材料の搬送速度は25mm/秒以上であることが好ましい。好ましくは25〜120mm/秒、更に好ましくは50〜100mm/秒である。搬送速度が上記範囲内であることにより本発明の試料は迅速処理ができながら、低かぶり高感度を得られ、かつ現像ムラのない高画質の画像を得られて好ましい。
【実施例】
【0188】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0189】
実施例1
《共重合体Aの合成》
窒素雰囲気下、ポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ重合開始剤VPE−0201(和光純薬工業(株)製)2.0g及びラウリルアクリレート12.0g、ジメチルアクリルアミド26.0gを酢酸エチル141.8gに溶解し、60℃で8時間加熱を行った後、更に8時間加熱還流を行った。反応液から酢酸エチル81.8gを留去した後、反応液に純水480mlを加え、室温で1時間攪拌し、30分間静置後、上澄みを除いた。次に、純水400mlを加え、室温で1時間攪拌を行い、30分間静置後、上澄みを除く操作を2回繰り返し行った。残渣を50℃に加温し、減圧条件下で、留出物が無くなるまで濃縮を行った。残渣にメチルエチルケトン800mlを加えて溶解し、60℃で減圧濃縮を行った後、メタノール400mlに溶解し、更に減圧濃縮を行った。残渣をメタノール204gに溶解することにより、目的とするポリマー溶液の共重合体Aのメタノール液(固形分15.0質量%)を得た。GPC測定による重量平均分子量(Mw)は600,000(Mw/Mn=6.0)であった。
【0190】
《感光性ハロゲン化銀乳剤Em−Aの調製》
(A1)
上記共重合体Aのメタノール液(固形分15.0質量%) 536.5g
メタノールで5429mlに仕上げる
(B1)
0.67モル/L硝酸銀水溶液 2635ml
(C1)
臭化カリウム 61.86g
沃化カリウム 1.76g
水で660mlに仕上げる
(D1)
臭化カリウム 185.82g
沃化カリウム 5.29g
ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム(1%水溶液) 1.1ml
ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム 0.075g
水で1982mlに仕上げる
(E1)
0.4モル/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
特公昭58−58288号公報に示される混合撹拌機を用いて溶液(A1)に溶液(B1)の1/4量及び溶液(C1)全量を温度25℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し核形成を行った。1分間経過後、溶液(B1)の3/4量及び溶液(D1)の液を14分15秒間かけて同時混合法により添加した。5分間撹拌した後、共重合体Aのメタノール液(固形分15.0質量%)を1252g添加した。更に5分間攪拌した後、水を加えハロゲン化銀粒子を沈降させ、脱塩、水洗した。この操作を3回繰り返した後、残渣にメタノールを加え37℃に昇温し、120分再分散した。最後に銀量1モル当たり1687gになるようにメタノールを添加した。共重合体Aに分散した感光性ハロゲン化銀乳剤Em−Aのメタノール液を得た。
【0191】
Em−Aは平均粒子サイズ44nm(一辺長)、粒子サイズの変動係数15%、〔100〕面比率93%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。
【0192】
Em−Aをメタノールで薄めて走査型顕微鏡によって観察した結果を図1に示す。図1に示すように従来ゼラチンで調製したハロゲン化銀粒子と同じく、本発明の方法で、即ち、調製時にゼラチンの代わりに本発明に係る共重合体を使用して調製、分散した感光性ハロゲン化銀は凝集がなく単分散性の高い乳剤が得られた。
【0193】
実施例2
《共重合体B〜Kの合成》
0.5リットルの四つ口セパラブルフラスコに滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置及び還流冷却管を付し、メチルエチルケトン(MEK)30g、及び一般式(1)で表されるモノマー合計が0.35モルとなるように表2に記載の組成割合で77℃に加熱した。さらに表2に記載の、一般式(2)で表されるモノマーをメチルエチルケトン43gに溶解した液をフラスコ中に2時間かけて滴下した。その後1時間かけて還流状態になった時点から、油溶性の重合開始剤ラウリルパーオキサイド0.17gをメチルエチルケトン20gに溶解した液をフラスコ中に2時間かけて滴下し、同温度にて更に3時間反応させた。その後メチルハイドロキノン0.33gをメチルエチルケトン143gに溶解し添加した。この液を60℃で減圧濃縮を行った後、メタノールを添加し、更に減圧濃縮を行った。濃縮液にメタノールを添加することにより、実施例1と同じようにそれぞれ固形分15.0質量%の共重合体B〜K溶液を得た。
【0194】
《感光性ハロゲン化銀乳剤Em−B〜Kの調製》
共重合体Aの代わりに表2に示したように共重合体B〜Kを用いた、他は実施例1と同じ調製方法で感光性ハロゲン化銀乳剤を調製した。但し、ハロゲン化銀粒子の核形成後、表2に示したように一般式(C−1)及び一般式(C−2)で表される化合物のメチルエチルケトン溶液を添加し10分攪拌する作業を追加した。
【0195】
実施例1と同様にメタノール液中に分散した立方体感光性ハロゲン化銀を含む感光性ハロゲン化銀乳剤Em−B〜Kを表2に示したように調製した。各ハロゲン化銀粒子の大きさはEm−Aとほぼ同じであった。
【0196】
画像形成層にさらに分散しやすくするため、調製したハロゲン化銀乳剤Em−B〜K中のメタノールをメチルエチルケトンに置換する。即ち、Em−B〜Kのメタノール液162.4gにメチルエチルケトン325.2gを添加して、30分間36℃で再分散した。その後、ロータリーエバポレーターにて減圧蒸留で溶液を除去し、それぞれ容量を1/3に濃縮した。この操作を2回繰り返した。「感光性ハロゲン化銀乳剤の有機溶媒分散物Em−B〜K」として、各173.3gのMEK分散液を得た。減圧蒸留後の液を18℃で30分間再分散した。
【0197】
《比較の脂肪酸銀粉末の調製》
5470mlの純水に、ベヘン酸52.3g、アラキジン酸27.1g、ステアリン酸17.45g及びパルミチン酸0.9gを80℃で溶解した。次いで、高速で攪拌しながら1.5モル/Lの水酸化カリウム水溶液540.2mlを添加し、濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して有機酸カリウム溶液を得た。該有機酸カリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、銀として0.076モル相当の上記ハロゲン化銀乳剤Em−Aと同じ一辺長44nmのゼラチン中で調製した比較のハロゲン化銀乳剤Em−L、及び純水450mlを添加し、5分間高速で攪拌した。次に1モル/Lの硝酸銀溶液760.6mlを2分間かけて添加し、さらに10分間高速で攪拌した後、濾過により水溶性塩類を除去した。その後、濾液の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、濾過を繰り返し、遠心脱水を行った後、質量の減少がなくなるまで窒素気流下で加熱乾燥を行った。比較の脂肪酸銀の粉末を得た。
【0198】
《本発明の脂肪酸銀粉末の調製》
上記比較の脂肪酸銀粉末と同じ方法で調製するが、ただし、ハロゲン化銀を添加しないで、本発明の脂肪酸銀粉末を得た。
【0199】
《脂肪酸銀分散液の調製》
ポリビニルブチラール粉末(Monsanto社:Butvar B−79)14.57gをメチルエチルケトン(MEK)1457gに溶解し、ディゾルバー型ホモジナイザーにて攪拌しながら、500gの上記の各々の脂肪酸銀粉末を徐々に添加して十分に混合した。その後、1mm径のジルコニアビーズ(東レ社製)を80%充填したメディア型分散機(Gettzmann社製)にて周速13m、ミル内滞留時間0.5分間にて分散を行って、比較と本発明の脂肪酸銀分散液を各々調製した。
【0200】
〔画像形成層塗布液の調製〕
(赤外増感色素液の調製)
0.090gの赤外増感色素−1、1.9gの2−クロロ安息香酸、10.8gの色素安定剤−2、0.1gの5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、240gのMEKに溶解し、赤外増感色素液とした。
【0201】
(還元剤液の調製)
15.0gの還元剤−Aと0.33gの還元剤−B、10.9gの還元剤−C、2.39gの4−メチルフタル酸、0.045gの赤外染料1をMEK205gに溶解し還元剤液とした。
【0202】
《比較の画像形成層塗布液の調製》
前記比較の脂肪酸銀分散液を、50g及びMEK40gを攪拌しながら13℃に保温し、かぶり抑制剤−1の1%メタノール溶液を0.3g添加した。30分後、赤外増感色素液を1.2×10−4モル/Agモル相当添加して1時間30分間攪拌した。その後、バインダー樹脂としてポリビニルアセタール樹脂(化合物P−1、Tg=75℃)を12.45g添加して30分攪拌した後、テトラクロロフタル酸(13%MEK溶液)1.1g添加して15分間攪拌した。塗布直前にデスモジュールN3300(モーベイ社製:脂肪酸イソシアネート)の22%MEK溶液2.23g、還元剤液30.4gを添加した。かぶり抑制剤−2の7%MEK溶液を6.5g、フタラジンの12.74%MEK溶液を3.34g、添加した。攪拌することにより比較の画像形成層塗布液(試料2−11)を得た。
【0203】
《本発明の画像形成層塗布液の調製》
比較の画像形成層塗布液の調製の場合について、比較の脂肪酸銀分散液の代わりに同量の前記本発明のハロゲン化銀を含有しない脂肪酸銀分散液を用い、かぶり抑制剤−1を添加する前20分に前記各「感光性ハロゲン化銀乳剤の有機溶媒分散物Em−B〜J」を10.4g添加した他は同様にして、本発明の画像形成層塗布液(試料No.2−1〜2−9)をそれぞれ得た。
【0204】
比較のため非本発明の共重合体で調製したEm−Kについても同様にして試料No.2−10を得た。
【0205】
〔表面保護層塗布液の調製〕
MEKを865g攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製、CAB171−15)を96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製、パラロイドA−21)を4.5g、ベンゾトリアゾールを1.5g、F系活性剤(旭硝子社製、サーフロンKH40)を1.0g添加し溶解した。次に、下記マット剤分散液30gを添加して攪拌し、酸化防止剤の化合物Oを0.045g/mになるように添加し、表面保護層塗布液を調製した。
【0206】
(マット剤分散液の調製)
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製:CAB171−15)7.5gをMEK42.5gに溶解し、その中に、炭酸カルシウム(Speciality Minerals社製:Super−Pflex200)5gを添加し、ディゾルバー型ホモジナイザーにて8000rpmで30分間分散し、マット剤分散液を得た。
【0207】
〔バック面塗布液の調製〕
MEK830gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(EastmanChemical社製、CAB381−20)84.2g、ポリエステル樹脂(Bostic社製、VitelPE2200B)4.5gを添加し溶解した。溶解した液に、バック面の塗布試料における赤外染料1の吸収極大の吸光度(abs)が0.3となるように添加し、さらにメタノール43.2gに溶解したフッ素系活性剤(旭硝子社製、サーフロンKH40)4.5gとフッ素系活性剤(大日本インク社製、メガファッグF120K)2.3gを添加して、溶解するまで十分に攪拌を行った。最後に、MEKに1質量%の濃度でディゾルバー型ホモジナイザーにて分散したシリカ(W.R.Grace社製、シロイド64X6000)を75g添加、攪拌し、バック面塗布液を調製した。
【0208】
《支持体の作製》
濃度0.170に青色着色したポリエチレンテレフタレートフィルムベース(厚み175μm)の両面に、0.15kV・A・min/mのコロナ放電処理を施した。その一方の面に、下記の下引塗布液Aを用いて下引層aを乾燥膜厚が0.2μmになるように塗設した。更に、もう一方の面に下記の下引塗布液Bを用いて下引層bを乾燥膜厚が0.1μmとなるように塗設した。その後、複数のロール群から成るフィルム搬送装置を有する熱処理式オーブンの中で、130℃で15分の熱処理を行った。
【0209】
[下引塗布液A]
ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート(30/20/25/25%比)の共重合体ラテックス液(固形分30%)270g、界面活性剤(UL−1)0.6g及びメチルセルロース0.5gを混合した。更に、シリカ粒子(富士シリシア社製:サイロイド350)1.3gを水100gに添加し、超音波分散機(ALEX Corporation社製:Ultrasonic Generator、周波数25kHz、600W)にて30分間分散処理した分散液を加え、最後に水で1000mlに仕上げて下引塗布液Aとした。
【0210】
[下引塗布液B]
下記コロイド状酸化錫分散液37.5g、ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート(20/30/25/25%比)の共重合体ラテックス液(固形分30%)3.7g、ブチルアクリレート/スチレン/グリシジルメタクリレート(40/20/40%比)の共重合体ラテックス液(固形分30%)14.8gと界面活性剤(UL−1)0.1gを混合し、水で1000mlに仕上げて下引塗布液Bとした。
【0211】
[コロイド状酸化錫分散液の調製]
塩化第2錫水和物65gを、水/エタノール混合溶液2000mlに溶解して均一溶液を調製した。次いで、これを煮沸し、共沈殿物を得た。生成した沈殿物をデカンテーションにより取り出し、蒸留水にて数回水洗した。沈殿物を洗浄した蒸留水中に硝酸銀を滴下し、塩素イオンの反応がないことを確認後、洗浄した沈殿物に蒸留水を添加して全量を2000mlとした。更に、30%アンモニア水を40ml添加し、水溶液を加温して容量が470mlになるまで濃縮し、コロイド状酸化錫分散液を調製した。
【0212】
上記にて用いた化合物の構造を以下にまとめて示す。
【0213】
【化14】

【0214】
《銀塩熱現像感光材料の作製》
上記下引き済み支持体の両面に、表2に記載の組み合わせで画像形成層面側、及びバック層面側を塗布・乾燥して銀塩熱現像感光材料(試料2−1〜2−11)を作製する。
【0215】
(画像形成層面側の塗布)
前記調製した各画像形成層塗布液及び各表面保護層塗布液を用いて、支持体側から画像形成層及び表面保護層を、それぞれ押出しコーターを用いて同時重層塗布・乾燥を行った。乾燥温度は100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。表面保護層は乾燥膜厚として1.5μmになる様に行った。
【0216】
(バック面側の塗布)
上記調製したバック面塗布液を、それぞれ乾燥膜厚が3μmになるように、押出しコーターを用いて塗布・乾燥を行った。乾燥温度は100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。
【0217】
《試料の包装》
外側〜ナイロン15μm/AL7μm(防湿層)/ポリエチレン20μ/カーボンブラック+ポリエチレン30μm(遮光層)〜内側・感剤側
〔評価〕
上記作製した銀塩熱現像感光材料(試料2−1〜2−11)について、以下の方法にて特性評価を行った。
【0218】
(写真性能の評価)
各試料を半切サイズに加工した後、コニカミノルタエムジー社製レーザイメージャーDrypro752を用いて、試料の一部が露光されながら、同時に既に露光がなされた試料の一部分が現像開始されるように改造した。露光は785nmの半導体レーザで像様露光を施した。なお、露光においては試料の露光面と露光レーザ光の角度は80度とした。また、試料毎条件:レーザ強度16mWで30.64mm/秒で搬送し露光した。なお、高周波重畳を縦マルチモードで出力した。熱現像処理はヒートドラムを用いて均一加熱を行い、熱現像処理条件126℃、8秒で行った。このようにして得られた熱現像処理済み試料の濃度を、光学濃度計(コニカミノルタフォトイメージング社製:PD−82)で測定し、濃度Dと露光量Log(1/E)からなる特性曲線を作成し、最小濃度(Dmin)、最大濃度(Dmax)、感度を測定した。なお、感度は最小濃度より1.0高い濃度を与える露光量の逆数の対数と定義した。なお、試料2−11の感度を100とする相対感度を表3に示した。
【0219】
(画像耐光性)
上記の方法で熱現像処理をした各試料を、更に37℃、55%RHの室内で、3日間光源台上、蛍光灯下に放置した前後での最小濃度部分(Dmin)の光学濃度を測定し、下式に従い最小濃度(Dmin)の変動(ΔDmin)を求め、これを画像耐光性の尺度とし、試料1のそれを100とした相対値で表示した。
【0220】
ΔDmin=(蛍光灯曝射後のDmin)−(蛍光灯曝射前のDmin
なお、使用した光源台上の温度、照度、は45℃、8000ルックス、であった。
【0221】
(銀色調)
作製した銀画像について目視評価を行い、下記の基準に従って銀色調の判定を行った。
◎:診断に最適な銀色調である
○:診断に支障のない銀色調である
△:診断に問題ない程度である
×:実用上許容範囲外である
(生保存性)
試料を40℃、相対湿度80%RHで1週間レーザイメージャーの機内に劣化保存した後、露光・現像して得られた感度を評価した。この感度を劣化保存処理前の試料の結果と比べ、感度低下幅の小さいものが生保存性に優れる。試料2−11の感度差を100とした結果を表3に示した。
【0222】
【表2】

【0223】
一般式(1)で表されるモノマー
PME−400:ブレンマーPME−400(メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、日本油脂製)
PSE−400:ブレンマーPSE−400(ステアロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、日本油脂製)
SMA:ブレンマーSMA(ステアリルメタクリレート、日本油脂製)
VMA:ブレンマーVMA(ベヘニルメタクリレート、日本油脂製)
CMA:ブレンマーCMA(セチルメタクリレート、日本油脂製)
一般式(2)で表されるモノマー
DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド(興人製)
NIPAM:N−イソプロピルアクリルアミド(興人製)
DAAM:ダイアセトンアクリルアミド(協和発酵製)
【0224】
【表3】

【0225】
表3より、本発明に係る試料は、高感度、低カブリであり、且つ、銀色調や耐光性に優れていることが分かった。なお、本発明の試料は最高濃度が高く、かつ感材の階調γが2.5〜4.0の範囲にあり、医療用銀塩熱現像感光材料として適性を有していることを確認した。
【0226】
実施例3
実施例2の試料を用いて蛍光スクリーンで露光し写真性能を評価したところ、本発明の化合物を用いる試料は、高感度で、かつ優れた鮮鋭性をもたらし、現像処理後の画像耐光性評価でもかぶり上昇も小さく、実施例2と同様に好ましい結果であった。
【図面の簡単な説明】
【0227】
【図1】実施例1で調製した感光性ハロゲン化銀乳剤Em−Aをメタノールで薄めて走査型顕微鏡によって観察した結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の少なくとも一方の面に感光性ハロゲン化銀、非感光性脂肪酸銀、還元剤及びバインダーを含む画像形成層を有する銀塩熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀は調製時にゼラチンの代わりに下記一般式(1)で表されるモノマー及び下記一般式(2)で表されるモノマーを構成単位として有する共重合体を使用することを特徴とする銀塩熱現像感光材料。
【化1】

(一般式(1)において、Raは水素原子又はアルキル基を表し、R11は水素原子又は置換基を表す。一般式(2)において、Rbは水素原子又はアルキル基を表し、R21は水素原子又は置換基を表し、R22は水素原子又は置換基を表す。)
【請求項2】
前記感光性ハロゲン化銀は、18族周期表の6族から11族の遷移金属、及び下記一般式(C−1)または(C−2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種、を含有することを特徴とする請求項1記載の銀塩熱現像感光材料。
【化2】

(一般式(C−1)において、Z、Z及びZはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−OR、−NR(R)、−SR10、−SeR11、ハロゲン原子または水素原子を表す。R、R10及びR11はそれぞれ脂肪族基、芳香族基、複素環基、水素原子またはカチオンを表し、R及びRはそれぞれ脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表す。また、ZとZ、ZとZ、ZとZが環を形成してもよい。Chalcogenは硫黄原子、セレン原子またはテルル原子を表す。)
(一般式(C−2)において、Z及びZはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、−NR(R)、−ORまたは−SRを表す。R、R、R及びRはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アルキル基、アラルキル基、アリール基または複素環基を表す。但し、R及びRは水素原子またはアシル基であってもよい。また、ZとZが環を形成してもよい。Chalcogenは硫黄原子、セレン原子またはテルル原子を表す。)
【請求項3】
感光性ハロゲン化銀乳剤を、下記一般式(1)で表されるモノマー及び一般式(2)で表されるモノマーを構成単位として有する共重合体を用いて有機溶媒に分散することを特徴とする感光性ハロゲン化銀乳剤の有機溶媒分散物の製造方法。
【化3】

(一般式(1)において、Raは水素原子又はアルキル基を表し、R11は水素原子又は置換基を表す。一般式(2)において、Rbは水素原子又はアルキル基を表し、R21は水素原子又は置換基を表し、R22は水素原子又は置換基を表す。)
【請求項4】
前記感光性ハロゲン化銀は、前記一般式(1)で表されるモノマー及び一般式(2)で表されるモノマーを構成単位として有する共重合体を含有する有機溶媒の存在下で化学増感を施されることを特徴とする請求項1または2に記載の銀塩熱現像感光材料。
【請求項5】
請求項1、2または4に記載の銀塩熱現像感光材料を、25mm/秒以上120mm/秒以下で搬送しながら熱現像することを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【請求項6】
請求項1、2または4に記載の銀塩熱現像感光材料を、レーザ光で露光することを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【請求項7】
請求項1、2または4に記載の銀塩熱現像感光材料について画像形成をする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法であって、(a)該銀塩熱現像感光材料を1対のX線増感スクリーンの間に設置することにより像形成用組立体を得る工程、(b)該組立体とX線源との間に被検体を配置する工程、(c)該被検体にエネルギーレベルが25〜125kVpの範囲にあるX線を照射する工程、(d)該銀塩熱現像感光材料を該組立体から取り出す工程、(e)取り出した該銀塩熱現像感光材料を80〜150℃の範囲の温度で加熱する工程を含んでなることを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−294431(P2009−294431A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147835(P2008−147835)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】