説明

感光性平版印刷版材料用現像液

【課題】自動現像機により平版印刷版材料を比較的多量に処理しても、処理能力に優れ、現像タンク内ローラに汚れを生じ難い平版印刷版材料用現像液を提供する。
【解決手段】アルミニウム支持体上に感光性樹脂組成物から成る感光層を有する感光性平版印刷版材料を画像露光後、現像液で現像処理し、更に水洗処理して平版印刷版を作製する平版印刷版の作製方法に用いる現像液であって、該現像液が下記一般式Iで示される構造の界面活性剤を含有することを特徴とする感光性平版印刷版材料用現像液。
【化1】


〔式中、R1及びR2は各々、炭素原子数8〜20のアルキル基を表し、Xは単結合又は炭素原子数1〜20の有機連結基を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性平版印刷版材料用現像液に関し、特に自動現像機での現像に好適な感光性平版印刷版材料(以下、平版印刷版材料と略記)用現像液に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷の分野、特に比較的耐刷力を要求される分野において、従来より、アルミニウム支持体上に光重合型感光層を有する平版印刷版材料が用いられている。この平版印刷版材料は、通常、自動現像機(以下、自現機と略記)により現像処理されるが、この自現機の現像液タンク内のローラは、自現機の乾燥部の熱と風により乾燥し、現像液が固化・析出する傾向がある。この傾向は、珪酸を含有する現像液において顕著である。
【0003】
そこで、現像液に界面活性剤を添加し表面張力を下げることで、ローラへの過剰な現像液滴の付着を抑制することが考えられる。
【0004】
界面活性剤を含有する現像液は多数の特許で紹介されている(例えば特許文献1参照)が、自現機でのランニング処理による感光層成分の溶解や、水起因のカルシウム、マグネシウムの影響により、界面活性剤が消費され、表面張力の低下が劣化してしまう問題があった。それ故、ランニング処理によって消費され難く、少量でも良好な表面張力低下能を有する界面活性剤が求められている。
【特許文献1】特開2005−300636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、自動現像機により平版印刷版材料を比較的多量に処理しても、処理能力に優れ、現像タンク内ローラに汚れを生じ難い平版印刷版材料用現像液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
1.
アルミニウム支持体上に感光性樹脂組成物から成る感光層を有する感光性平版印刷版材料を画像露光後、現像液で現像処理し、更に水洗処理して平版印刷版を作製する平版印刷版の作製方法に用いる現像液であって、該現像液が下記一般式Iで示される構造の界面活性剤を含有することを特徴とする感光性平版印刷版材料用現像液。
【0007】
【化1】

【0008】
〔式中、R1及びR2は各々、炭素原子数8〜20のアルキル基を表し、Xは単結合又は炭素原子数1〜20の有機連結基を表す。〕
2.
前記現像液が下記構造の化合物を含有することを特徴とする前記1項記載の感光性平版印刷版材料用現像液。
【0009】
【化2】

【0010】
3.
前記現像液が更にポリオキシエチレンナフチルエーテル又はポリオキシエチレンナフチルエーテル硫酸エステル塩を含有することを特徴とする前記1又は2項記載の感光性平版印刷版材料用現像液。
【発明の効果】
【0011】
本発明の平版印刷版材料用現像液を用いることにより、自動現像機現像部のローラ汚れを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
まず、本発明に係る現像液に用いる界面活性剤について述べる。この界面活性剤は、一般式Iに示すように1鎖1親水基型の界面活性剤2分子が単結合もしくは有機連結基で連結された構造を有するジカルボン酸であり、1鎖1親水基型の界面活性剤より優れた界面活性を示す。即ち、同様のHLB(親水性親油性バランス)を有する脂肪酸石鹸(例えばラウリン酸ナトリウム)と比べて1/2,000程度のcmc(臨界ミセル濃度)を示す他、0℃より低いクラフト点、脂肪酸石鹸の3倍もの耐硬水性を示す。この様な特性が、自動現像機により平版印刷版材料を多量に処理しても、自動現像機現像部のローラ汚れを防止するものと推察される。
【0014】
1及びR2で表される炭素原子数8〜20のアルキル基は直鎖でも分岐してもよく、又、同じでも異なってもよいが、好ましくは炭素原子数10〜15の直鎖アルキル基で、かつR1=R2の場合である。
【0015】
Xで表される炭素原子数1〜20の有機連結基としては、具体的に−(CH2n−(n=1〜8)、−CONH−、−NHCONH−及び、これらの組合せ等が考えられる。この有機連結基は、−OHや−COOH等の親水性置換基を有してもよい。これら連結基の中でも単結合が好ましい。
【0016】
この系列の界面活性剤は、中京油脂社よりジェミニ型界面活性剤としてジェミサーフα102,α142,α182等を入手できる。これ等の中でも、特に請求項2に示す構造の化合物(α,α′−ビス(カルボキシメチル)琥珀酸ジラウリル)が好ましい。
【0017】
現像液中に含まれるジェミニ型界面活性剤の含有量は0.1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。
【0018】
本発明においては、上記ジェミニ型界面活性剤の他に請求項3に示すポリオキシエチレンナフチルエーテル又はポリオキシエチレンナフチルエーテル硫酸エステル塩を併用することが好ましい。これにより、本発明の効果をより発揮できる。
【0019】
現像液中に含まれるポリオキシエチレンナフチルエーテル又はポリオキシエチレンナフチルエーテル硫酸エステル塩の含有量は0.001〜0.5質量%が好ましく、0.001〜0.05質量%が特に好ましい。
【0020】
(その他の添加剤)
本発明の現像液には、現像性能を高めるために前記の他に以下のような添加剤を加えることができる。例えば特開昭58−75152号記載の塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム等の中性塩、特開昭59−121336号記載の[Co(NH3)]6Cl3等の錯体、特開昭56−142258号記載のビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドとアクリル酸ナトリウムの共重合体等の両性高分子電解質、特開昭59−75255号記載のSi、Ti等を含む有機金属界面活性剤、特開昭59−84241号記載の有機硼素化合物等が挙げられる。本発明に用いられる現像液及び補充液には、更に必要に応じて防腐剤、着色剤、増粘剤、消泡剤及び硬水軟化剤などを含有させることもできる。
【0021】
〈平版印刷版材料〉
以下、本発明の現像液で処理される平版印刷版材料について概説する。該平版印刷版材料は、アルミニウム支持体上に、光重合開始剤、高分子結合材及び重合可能な、エチレン性不飽和結合含有化合物を含有する光重合性感光性層を有する。
【0022】
(光重合開始剤)
本発明に係る光重合開始剤は、画像露光により、重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物の重合を開始し得る化合物であり、好ましく使用できるものは、チタノセン化合物、モノアルキルトリアリールボレート化合物、鉄アレーン錯体化合物、トリハロアルキル化合物などが挙げられる。
【0023】
チタノセン化合物としては、特開昭63−41483号、特開平2−291号に記載される化合物等が挙げられる。
【0024】
モノアルキルトリアリールボレート化合物としては、特開昭62−150242、特開昭62−143044に記載される化合物等が挙げられる。
【0025】
鉄アレーン錯体化合物としては、
トリハロアルキル化合物としては、
その他に任意の光重合開始剤の併用が可能である。例えばJ.コーサー(J.Kosar)著「ライト・センシテイブ・システムズ」第5章に記載されるようなカルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ並びにジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられる。更に具体的な化合物は英国特許1,459,563号に開示されている。
【0026】
(高分子結合剤)
高分子結合材としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、その他の天然樹脂等が使用できる。又、これらを2種以上併用しても構わない。
【0027】
好ましくはアクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、(a)カルボキシル基含有モノマー、(b)メタクリル酸アルキルエステル、またはアクリル酸アルキルエステルの共重合体であることが好ましい。
【0028】
(重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物)
重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物は、分子内に、重合可能な、エチレン性不飽和結合を有する化合物であり、一般的なラジカル重合性のモノマー類、紫外線硬化樹脂に一般的に用いられる分子内に付加重合可能なエチレン性二重結合を複数有する多官能モノマー類や、多官能オリゴマー類を用いることができる。
(光で酸化し得る基を含む重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物)
光重合性感光性層に用いられる重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物は、少なくとも一つの、光で酸化し得る基を含む付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物であることが好ましい。
【0029】
特に好ましいのは、少なくとも一つの光酸化性基と少なくとも一つのウレタン基とを分子中に含む、付加重合性化合物である。適当な光酸化性基としては、特に複素環の構成員となってもよいチオ基、チオエーテル基、ウレイド基、アミノ基及びエノール基である。それらの基の例としては、トリエタノールアミノ基、トリフェニルアミノ基、チオウレイド基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、アセチルアセトニル残基、N−フェニルグリシン残基及びアスコルビン酸残基である。好ましいものは3級アミノ基、チオエーテル基を含む付加重合性化合物である。
【0030】
光酸化性基を含む化合物の例は、ヨーロッパ特許出願公開287,818号、同353,389号、同364,735号に記載されている。そこに記載されている化合物の中で好ましいものは、第3級アミノ基に加えてウレイド基及び/又はウレタン基をも含むものである。
【0031】
又、少なくとも一つの光酸化性基と少なくとも一つのウレタン基を有する化合物としては、特開昭63−260909号、特許2669849号、特開平6−35189号、特開2001−125255号に記載のものが挙げられる。
【0032】
(色材)
光重合性感光層は、必要に応じ画像露光光を吸収する色材を含有してもよい。色材としては、例えばシアニン、フタロシアニン、メロシアニン、ポルフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、クマリン誘導体、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体等、ケトアルコールボレート錯体が挙げられ、更に欧州特許568,993号、米国特許4,508,811号、同5,227,227号、特開2001−125255、特開平11−271969号等に記載の化合物が挙げられる。
【0033】
(アルミニウム支持体)
アルミニウム支持体は、アルミニウム板が使用され、この場合、純アルミニウム板及びアルミニウム合金板等であっても構わない。
【0034】
支持体のアルミニウム合金としては、種々のものが使用でき、例えば珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金が用いられる。又、アルミニウム支持体は、保水性付与のため、表面を粗面化したものが用いられる。
【0035】
粗面化(砂目立て処理)するに先立って表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。又、脱脂処理には、NaOH等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理にNaOH等のアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。脱脂処理にNaOH等のアルカリ水溶液を用いた場合、支持体の表面にはスマットが生成するので、この場合には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、あるいは、それらの混酸に浸漬しデスマット処理を施すことが好ましい。粗面化の方法としては、例えば機械的方法、電解によりエッチングする方法が挙げられる。
【0036】
用いられる機械的粗面化法は特に限定されるものではないが、ブラシ研磨法、ホーニング研磨法が好ましい。
【0037】
電気化学的粗面化法も特に限定されるものではないが、酸性電解液中で電気化学的に粗面化を行う方法が好ましい。
【0038】
上記の電気化学的粗面化法で粗面化した後、表面のアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。
【0039】
表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。又、アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸あるいはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0040】
機械的粗面化処理法、電気化学的粗面化法はそれぞれ単独で用いて粗面化してもよいし、又機械的粗面化処理法に次いで電気化学的粗面化法を行って粗面化してもよい。
【0041】
粗面化処理の次には、陽極酸化処理を行うことができる。本発明において用いることができる陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。陽極酸化処理を行うことにより、支持体上には酸化皮膜が形成される。
【0042】
陽極酸化処理された支持体は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。これら封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、珪酸ナトリウム処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等公知の方法を用いて行うことができる。
【0043】
更に、これらの処理を行った後に、親水化処理を施すことが好ましい。親水化処理は特に限定されないが、水溶性の樹脂、例えばポリビニルホスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体及び共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(硼酸亜鉛など)もしくは黄色染料、アミン塩等を下塗りしたものが使用できる。更に、特開平5−304358号に開示されるようなラジカルによって付加反応を起し得る官能基を共有結合させたゾル−ゲル処理基板も用いられる。
【0044】
好適なのは、ポリビニルホスホン酸で支持体表面を親水化処理を行うことである。処理としては、塗布式、スプレー式、ディップ式等限定されないが、設備を安価にするにはディップ式が好適である。ディップ式の場合には、ポリビニルホスホン酸を0.05〜3質量%の水溶液で処理することが好ましい。処理温度は20〜90℃、処理時間は10〜180秒が好ましい。処理後、過剰に積層したポリビニルホスホン酸を除去するため、スキージ処理または水洗処理を行うことが好ましい。更に乾燥処理を行うことが好ましい。乾燥温度としては、20〜95℃が好ましい。
【0045】
得られるアルミニウム支持体の感光層側の表面の算術平均粗さ(Ra)は0.4〜0.6μmが好ましく、粗面化処理での塩酸濃度、電流密度、電気量の組合せで制御することが出来る。
【0046】
(画像露光)
平版印刷版材料を画像露光する光源としては、例えばレーザー、発光ダイオード、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク燈、メタルハライドランプ、タングステンランプ、高圧水銀ランプ、無電極光源等が挙げられる。
【0047】
一括露光する場合には、光重合性感光層上に、所望の露光画像のネガパターンを遮光性材料で形成したマスク材料を重ね合わせ、露光すればよい。
【0048】
発光ダイオードアレイ等のアレイ型光源を使用する場合や、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、タングステンランプ等の光源を、液晶、PLZT等の光学的シャッター材料で露光制御する場合には、画像信号に応じたデジタル露光をすることが可能であり好ましい。この場合は、マスク材料を使用せず、直接書込みを行うことができる。
【0049】
レーザー露光の場合には、光をビーム状に絞り画像データに応じた走査露光が可能なので、マスク材料を使用せず、直接書込みを行うのに適している。又、レーザーを光源として用いる場合には、露光面積を微小サイズに絞ることが容易であり、高解像度の画像形成が可能となる。
【0050】
レーザーの走査方法としては、円筒外面走査、円筒内面走査、平面走査などがある。円筒外面走査では、記録材料を外面に巻き付けたドラムを回転させながらレーザー露光を行い、ドラムの回転を主走査としレーザー光の移動を副走査とする。円筒内面走査では、ドラムの内面に記録材料を固定し、レーザービームを内側から照射し、光学系の一部又は全部を回転させることにより円周方向に主走査を行い、光学系の一部又は全部をドラムの軸に平行に直線移動させることにより軸方向に副走査を行う。平面走査では、ポリゴンミラーやガルバノミラーとfθレンズ等を組み合わせてレーザー光の主走査を行い、記録媒体の移動により副走査を行う。円筒外面走査及び円筒内面走査の方が光学系の精度を高め易く、高密度記録には適している。
【0051】
(自動現像機)
本発明では、自動現像機を用いて平版印刷版材料を現像処理する方法が、本発明の効果が有効であり、好ましい態様である。
【0052】
自動現像機は、好ましくは現像浴に自動的に補充液を必要量補充する機構が付与されており、好ましくは一定量を超える現像液は、排出する機構が付与されており、好ましくは現像浴に自動的に水を必要量補充する機構が付与されており、好ましくは、通版を検知する機構が付与されており、好ましくは通版の検知を基に版の処理面積を推定する機構が付与されており、好ましくは通版の検知及び/又は処理面積の推定を基に補充しようとする補充液及び/又は水の補充量及び/又は補充タイミングを制御する機構が付与されており、好ましくは現像液の温度を制御する機構が付与されており、好ましくは現像液のpH及び/又は電導度を検知する機構が付与されており、好ましくは現像液のpH及び/又は電導度を基に補充しようとする補充液及び/又は水の補充量及び/又は補充タイミングを制御する機構が付与されている。
【0053】
自動現像機は、現像工程の前に前処理液に版を浸漬させる前処理部を有してもよい。この前処理部は、好ましくは版面に前処理液をスプレーする機構が付与されており、好ましくは前処理液の温度を25〜55℃の任意の温度に制御する機構が付与されており、好ましくは版面をローラー状のブラシにより擦る機構が付与されている。又、この前処理液としては、水などが用いられる。
【0054】
(後処理)
現像処理された版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を主成分とするフィニッシャーや保護ガム液で後処理を施された後、印刷に供せられる。これらの後処理は、一般に現像部と後処理部とからなる自動現像機を用いて行われる。
【0055】
後処理液は、スプレーノズルから吹き付ける方法、処理液が満たされた処理槽中を浸漬搬送する方法が用いられる。又、現像後一定量の少量の水洗水を版面に供給して水洗し、その廃液を現像液原液の希釈水として再利用する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて、それぞれの補充液を補充しながら処理することができる。又、実質的に未使用の後処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。このような処理によって得られた平版印刷版は、オフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0056】
上記製版方法において、オーバーコート層を有する平版印刷版材料の場合には、現像前水洗水で処理する工程を含む製版方法が好ましい態様である。
【0057】
(印刷)
感光性平版印刷版材料は、本発明の製版方法により処理された後、印刷に供せられる。
【0058】
印刷は、一般的な平版印刷機を用いて行うことができる。
【0059】
近年、印刷業界においても環境保全が叫ばれ、印刷インキにおいては、石油系の揮発性有機化合物(VOC)を使用しないインキが開発されその普及が進みつつあるが、本発明の効果は、このような環境対応の印刷インキを使用した場合に特に顕著である。環境対応の印刷インキとしては大日本インキ化学工業社製の大豆油インキ“ナチュラリス100”、東洋インキ社製のVOCゼロインキ“TKハイエコーNV”、東京インキ社製のプロセスインキ“ソイセルボ”等が挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明の実施態様は、これ等に限定されない。尚、特に断りない限り、実施例における「部」は「質量部」を「%」は「質量%」を表す。
【0061】
〈バインダーの合成〉
窒素気流下の三ツ口フラスコに、メタクリル酸12部、メタクリル酸メチル70部、アクリロニトリル8部、メタクリル酸エチル10部、エタノール500部及びα、α′−アゾビス−i−ブチロニトリル3部を入れ、窒素気流中、80℃のオイルバスで6時間反応させた。その後、トリエチルアンモニウムクロリド3部とグリシジルメタクリレート2部を加えて3時間反応させ、アクリル系共重合体1を得た。GPCを用いて測定した質量平均分子量は約50,000、DSC(示差熱分析法)を用いて測定したガラス転移温度(Tg)は約85℃であった。
【0062】
〈支持体の作製〉
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050,調質H16)を65℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、1分間の脱脂処理を行った後、水洗した。この脱脂アルミニウム板を、25℃に保たれた10%塩酸水溶液中に1分間浸漬して中和した後、水洗した。次いで、このアルミニウム板を、0.3%硝酸水溶液中で、25℃、電流密度100A/dm2の条件下に交流電流により60秒間、電解粗面化を行った後、60℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液中で10秒間のデスマット処理を行った。デスマット処理を行った粗面化アルミニウム板を、15%硫酸溶液中で、25℃、電流密度10A/dm2、電圧15Vの条件下に1分間陽極酸化処理を行い、更に3%硅酸ナトリウムで90℃で封孔処理を行って支持体を作製した。
【0063】
この時、支持体表面の中心線平均粗さ(Ra)は0.65μmであった。
【0064】
〈支持体への下引き〉
上記支持体上に、下記組成の下引層塗工液を乾燥時0.1g/m2になるようワイヤーバーで塗布し、90℃で1分間乾燥し、更に110℃で3分間の加熱処理を行って、下引き済み支持体を得た。
(下引層塗工液)
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 1部
メチルエチルケトン 80部
シクロヘキサノン 19部
〈平版印刷版材料の作製〉
上記下引き済み支持体上に、下記組成の感光層塗工液を乾燥時1.4g/m2になるようワイヤーバーで塗布し、95℃で1.5分間乾燥した。その後、更に該感光層上に、下記組成のオーバーコート層塗工液を乾燥時2.0g/m2になるようアプリケーターで塗布し、75℃で1.5分間乾燥し、支持体上に感光層、オーバーコート層を有する平版印刷版材料を作製した。
(感光層塗工液)
アクリル系共重合体1(前出,Mw≒5万) 35.0部
分光増感色素1 2.0部
分光増感色素2 2.0部
IRGACURE 784(チバスペシャリティケミカルズ製) 4.0部
EO変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌル酸(アロニクスM−315:東亞合成社製) 35.0部
ポリテトラメチレングリコールジアクリレート(PTMGA−250:共栄社化学社製) 10.0部
多官能ウレタンアクリレート(U−15HA:新中村化学工業社製) 5.0部
フタロシアニン顔料(MHI454:御国色素社製) 6.0部
2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(スミライザーGS:住友3M社製) 0.5部
弗素系界面活性剤(FC−431;住友スリーエム社製) 0.5部
メチルエチルケトン 80部
シクロペンタノン 820部
(オーバーコート層塗工液)
ポリビニルアルコール(GL−03:日本合成化学社製) 89部
水溶性ポリアミド(P−70:東レ社製) 10部
界面活性剤(F142D:大日本インキ工業社製) 0.5部
水 900部
【0065】
【化3】

【0066】
〈現像液の調製〉
上記平版印刷版材料を現像処理する現像液を調製した。
(現像液処方1)
珪酸カリウム水溶液(SiO2 26%,K2O 13.5%) 10.0g
化合物A 20.0g
エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩 0.2g
ポリオキシエチレン(13)ナフチルエーテル 40.0g
水酸化カリウム 下記pHになる量
水を加えて全量を1Lに仕上げる(pH=12.3)
(現像補充液処方1)
珪酸カリウム水溶液(SiO2 26%,K2O 13.5%) 10.0g
化合物A 20.0g
エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩 0.2g
ポリオキシエチレン(13)ナフチルエーテル 40.0g
水酸化カリウム 下記pHになる量
水を加えて全量を1Lに仕上げる(pH=12.7)
(現像液処方2)
現像液処方1の化合物Aを同質量の化合物Bに代えた以外は同様にして、現像液2を調製した。
(現像補充液処方2)
現像補充液処方1の化合物Aを同質量の化合物Bに代えた以外は同様にして、現像補充液2を調製した。
(現像液処方3)
現像液処方1の化合物Aを同質量の化合物C(比較)に代えた以外は同様にして、現像液3を調製した。
(現像補充液処方3)
現像補充液処方1の化合物Aを同質量の化合物C(比較)に代えた以外は同様にして、現像補充液3を調製した。
(現像液処方4)
珪酸カリウム水溶液(SiO2 26%,K2O 13.5%) 30.0g
エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩 0.2g
ポリオキシエチレン(13)ナフチルエーテル 40.0g
水酸化カリウム 下記pHになる量
水を加えて全量を1Lに仕上げる(pH=12.3)
(現像補充液処方4)
珪酸カリウム水溶液(SiO2 26%,K2O 13.5%) 10.0g
エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩 0.2g
ポリオキシエチレン(13)ナフチルエーテル 40.0g
水酸化カリウム 下記pHになる量
水を加えて全量を1Lに仕上げる(pH=12.7)
(現像液処方1a,2a,3a)
現像液処方1,2,3よりポリオキシエチレン(13)ナフチルエーテルを除いた以外は同様にして、現像液1a,2a,3aを調製した。
(現像補充液処方1a,2a,3a)
現像補充液処方1,2,3よりポリオキシエチレン(13)ナフチルエーテルを除いた以外は同様にして、現像補充液1a,2a,3aを調製した。
【0067】
【化4】

【0068】
ガム液[フィニッシャー液]処方は以下の通りである。
(1L水溶液処方)
白色デキストリン 5.0%
ヒドロキシプロピルエーテル化澱粉 10.0%
アラビアガム 1.0%
燐酸第1アンモニウム 0.1%
ジラウリル琥珀酸ナトリウム 0.15%
ポリオキシエチレンナフチルエーテル 0.5%
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのブロック共重合体(EO比50mol%,分子量5,000) 0.3%
エチレングリコール 1.0%
エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム 0.005%
1,2−ベンゾイソチアゾリンー3−オン 0.005%
〈画像形成〉
408nm、30mW出力のレーザーを備えた光源を備えたプレートセッター(タイガーキャット:ECRM社製)CTP露光装置を用いて1,200dpi(dpi=1インチ即ち2.54cm当たりのドット数)の解像度で画像露光(露光パターンは、100%画像部と100lpi,50%のスクウェアドットを使用)を行った。
【0069】
次いで、プレヒート部、プレ水洗部、現像部(浴槽内の現像液22L)、アルカリ水溶液処理部(浴槽内のアルカリ水溶液15L)、水洗部、フィニッシャー液処理部、乾燥部の順に、各処理部を備えたCTP自動現像機(Raptor 85HW polymer;Glunz and Jensen社製)で、画像部、非画像部の面積比率が、2:8になるよう現像を2週間かけて300m2実施した。現像部には約60ml/m2となるように現像補充液を補充した。
【0070】
現像後、現像部入口のローラ汚れの度合いを目視評価した。
【0071】
《ローラ汚れ》
◎:ローラへの固着物が全くない
○:ローラへの固着物が殆どない
△:ローラへの固着物が目視で確認できるが、ローラを外して水洗しながらスポンジで擦ると固着物を除去できる
×:ローラへの固着物が目視で確認でき、ローラを外して水洗しながらスポンジで擦っても固着物は除去できない。
【0072】
【表1】

【0073】
本発明の現像液を用いることで、現像タンク内ローラの汚れを大幅に防止できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム支持体上に感光性樹脂組成物から成る感光層を有する感光性平版印刷版材料を画像露光後、現像液で現像処理し、更に水洗処理して平版印刷版を作製する平版印刷版の作製方法に用いる現像液であって、該現像液が下記一般式Iで示される構造の界面活性剤を含有することを特徴とする感光性平版印刷版材料用現像液。
【化1】

〔式中、R1及びR2は各々、炭素原子数8〜20のアルキル基を表し、Xは単結合又は炭素原子数1〜20の有機連結基を表す。〕
【請求項2】
前記現像液が下記構造の化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の感光性平版印刷版材料用現像液。
【化2】

【請求項3】
前記現像液が更にポリオキシエチレンナフチルエーテル又はポリオキシエチレンナフチルエーテル硫酸エステル塩を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の感光性平版印刷版材料用現像液。

【公開番号】特開2009−103783(P2009−103783A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273491(P2007−273491)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】