説明

感光性樹脂組成物

【課題】高感度かつ解像性に優れ、良好な耐エッチング性及び硬化膜柔軟性を有する感光性樹脂組成物及び積層体の提供。
【解決手段】(A)アルカリ可溶性高分子:10〜90質量%、(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物:5〜70質量%、及び(C)光重合開始剤:0.01〜20質量%、を含有する感光性樹脂組成物であって、該(A)アルカリ可溶性高分子が、酸当量100〜600、及び重量平均分子量5000〜500000を有し、該(A)アルカリ可溶性高分子が、特定構造のスチレン系化合物を特定量含む単量体成分の重合生成物であり、該(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物が特定構造のビスフェノール系化合物を含む、感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、感光性樹脂積層体、及びレジストパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン、携帯電話等の電子機器には、部品として又は半導体等の実装用としてプリント配線板等が用いられる。プリント配線板等の製造用レジストとしては、従来、支持フィルム上に感光性樹脂層を積層し、さらに該感光性樹脂層上に必要に応じて保護フィルムを積層してなる感光性樹脂積層体、いわゆるドライフィルムレジスト(以下、DFと呼ぶこともある)が用いられている。
【0003】
ここで用いられる感光性樹脂層としては、現在、現像液として弱アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像型のものが一般的である。DFを用いてプリント配線板等を作製するには、保護フィルムが有る場合には、まず保護フィルムを剥離した後、銅張積層板又はフレキシブル基板等の永久回路作製用基板上にラミネーター等を用いDFをラミネートし、配線パターンマスクフィルム等を通し露光を行う。次に必要に応じて支持フィルムを剥離し、現像液により未硬化部分(ネガ型では未露光部分)の感光性樹脂層を溶解、若しくは分散除去し、基板上に硬化レジストパターン(以下、単にレジストパターンと呼ぶこともある)を形成させる。
【0004】
レジストパターン形成後、回路を形成させるプロセスは、大きく2つの方法に分かれる。第一の方法は、レジストパターンによって覆われていない基板表面(例えば銅張積層板の銅面)をエッチング除去した後、レジストパターン部分を現像液よりも強いアルカリ水溶液で除去する方法(エッチング法)である。第二の方法は上記のような基板表面(例えば銅面)に銅、半田、ニッケル及び錫等のメッキ処理を行った後、同様にレジストパターン部分の除去、さらに現れた基板表面(例えば銅張積層板の銅面)をエッチングする方法(メッキ法)である。エッチングには塩化第二銅、塩化第二鉄、銅アンモニア錯体溶液等が用いられる。
【0005】
ところで、近年のプリント配線板においては、配線の高密度化に伴い、DFには高解像性の要求が増してきている。
【0006】
そして、解像性を向上させる試みとして、特許文献1には、支持体と、該支持体上に感光層を有してなり、該感光層が、バインダー、重合性化合物、光重合開始剤、ヘテロ縮環系化合物、重合禁止剤、発色剤、及び有機溶剤を含み、バインダーの酸価が、50〜400mgKOH/gであり、かつ、質量平均分子量が、10,000〜100,000であり、重合性化合物が、ウレタン基を有する化合物及びアリール基を有する化合物の少なくともいずれかを含有し、有機溶剤が、ケトン類、アルコール類、及びエーテル類から選択される少なくとも1種であり、かつ、残存量が0.5質量%以下であることを特徴とするパターン形成材料を用いる技術が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、カルボキシル基含有量が酸当量で100〜600であり、スチレン誘導体を共重合成分として50質量%以上含有し、かつ、重量平均分子量が5000〜500000であるバインダー用樹脂を光重合性樹脂組成物の総和に対し、10〜90質量%、光重合性不飽和化合物を光重合性樹脂組成物の総和に対し、5〜70質量%、光重合開始剤を光重合性樹脂組成物の総和に対し、0.01〜20質量%を含有してなる光重合性樹脂組成物であって、該光重合性不飽和化合物が、ビスフェノールA骨格を有する化合物、及び、トリメチロールプロパン骨格を有する化合物の群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有することを特徴とする光重合性樹脂組成物を用いる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−79128号公報
【特許文献2】特開2010−277051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載された技術はいずれも解像性を満足するものではなく、なお改良の余地を有するものであった。
【0010】
従って、本発明は、解像度に優れた感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を有する感光性樹脂積層体、及び該感光性樹脂組成物を用いたレジストパターンの形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究し実験を重ねた結果、以下の技術的手段によりかかる課題を解決することができることを見出した。
【0012】
すなわち、以下の通りである。
[1] 感光性樹脂組成物の総量基準で、
(A)アルカリ可溶性高分子:10〜90質量%、
(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物:5〜70質量%、及び
(C)光重合開始剤:0.01〜20質量%、
を含有する感光性樹脂組成物であって、
該(A)アルカリ可溶性高分子が、酸当量100〜600、及び重量平均分子量5000〜500000を有し、
該(A)アルカリ可溶性高分子が、下記一般式(I):
【化1】

{式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、そしてR2は水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、又は炭素数1〜12のハロアルキル基を表す。}
で表される化合物を45質量%以上含有する単量体成分の重合生成物であり、
該(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の総量に対し、下記一般式(II):
【化2】

{式中、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、X1及びX2はそれぞれ独立に、1〜20のエチレンオキシド単位及び0〜20のプロピレンオキシド単位がランダム又はブロックで繰り返されかつ酸素側で芳香核に結合している2価構造を表し、X1が有するエチレンオキシド単位とX2が有するエチレンオキシド単位との合計数が2〜20であり、そしてX1が有するプロピレンオキシド単位とX2が有するプロピレンオキシド単位との合計数が0〜20である。}
で表される化合物が60〜95質量%を構成している、感光性樹脂組成物。
[2] 上記(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、下記一般式(III):
【化3】

{式中、R5は水素原子又はメチル基を表し、R6は炭素数1〜15のアルキル基又はハロゲン原子を表し、X3は、0〜15のエチレンオキシド単位及び0〜15のプロピレンオキシド単位がランダム又はブロックで繰り返されかつ酸素側で芳香核に結合している2価構造を表し、そしてX3が有するエチレンオキシド単位とプロピレンオキシド単位との合計数が2〜15である。}
で表される化合物を含有する、上記[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3] 上記(C)光重合開始剤としてアクリジン化合物を含有する、上記[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4] 上記一般式(II)において、X1が有するエチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位並びにX2が有するエチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位の合計数が4〜16である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[5] 上記[1]〜[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を支持体上に積層してなる、感光性樹脂積層体。
[6] 上記[1]〜[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を基板上に積層するラミネート工程、
該感光性樹脂組成物を露光する露光工程、及び
該露光後の感光性樹脂組成物を現像する現像工程、
を含む、レジストパターンの形成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、解像度に優れた感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を有する感光性樹脂積層体、及び該感光性樹脂組成物を用いたレジストパターンの形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0015】
<感光性樹脂組成物>
本発明の一態様は、
感光性樹脂組成物の総量基準で、
(A)アルカリ可溶性高分子:10〜90質量%、
(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物:5〜70質量%、及び
(C)光重合開始剤:0.01〜20質量%、
を含有する感光性樹脂組成物であって、
該(A)アルカリ可溶性高分子が、酸当量100〜600、及び重量平均分子量5000〜500000を有し、
該(A)アルカリ可溶性高分子が、下記一般式(I):
【化4】

{式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、そしてR2は水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、又は炭素数1〜12のハロアルキル基を表す。}
で表される化合物を45質量%以上含有する単量体成分の重合生成物であり、
該(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の総量に対し、下記一般式(II):
【化5】

{式中、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、X1及びX2はそれぞれ独立に、1〜20のエチレンオキシド単位及び0〜20のプロピレンオキシド単位がランダム又はブロックで繰り返されかつ酸素側で芳香核に結合している2価構造を表し、X1が有するエチレンオキシド単位とX2が有するエチレンオキシド単位との合計数が2〜20であり、そしてX1が有するプロピレンオキシド単位とX2が有するプロピレンオキシド単位との合計数が0〜20である。}
で表される化合物が60〜95質量%を構成している、感光性樹脂組成物を提供する。。以下、各成分を順に説明する。
【0016】
[(A)アルカリ可溶性高分子]
(A)アルカリ可溶性高分子は、酸当量100〜600を有する。該酸当量は好ましくは250〜450である。本開示において、酸当量とは、その中に1当量のカルボキシル基を有する重合体の質量(グラム)を意味する。すなわち、(A)アルカリ可溶性高分子は、所定量のカルボキシル基を有する。(A)アルカリ可溶性高分子中のカルボキシル基は、感光性樹脂組成物にアルカリ水溶液に対する現像性及び剥離性を与えるために必要である。酸当量は、現像耐性、解像性及び密着性の観点から100以上であり、現像性及び剥離性の観点から600以下である。酸当量は、電位差滴定法により評価される。
【0017】
(A)アルカリ可溶性高分子の重量平均分子量は、5000〜500000である。(A)アルカリ可溶性高分子の重量平均分子量は、解像性の観点から500000以下であり、エッジフューズの観点から5000以上である。解像性に優れた感光性樹脂組成物を得るという本発明の効果をさらに良好に発揮するためには、(A)アルカリ可溶性高分子の重量平均分子量は、5000〜200000であることが好ましく、より好ましくは5000〜100000である。(A)アルカリ可溶性高分子の分散度(分子量分布と呼ぶこともある)は、典型的には1〜6程度、好ましくは1〜4である。分散度は下記式の重量平均分子量と数平均分子量との比で表される。
(分散度)=(重量平均分子量)/(数平均分子量)
上記の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用い、ポリスチレン換算により測定される値である。
【0018】
(A)アルカリ可溶性高分子は、下記一般式(I):
【化6】

{式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、そしてR2は水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、又は炭素数1〜12のハロアルキル基を表す。}
で表される化合物を45質量%以上含有する単量体成分の重合生成物である。このような(A)アルカリ可溶性高分子を用いることにより、現像後の解像性に優れる感光性樹脂組成物を得ることができる。上記一般式(I)で表される化合物としては、1種又は2種以上を使用できる。(A)アルカリ可溶性高分子を重合するための単量体成分が含有する、上記一般式(I)で表される化合物の割合は、好ましくは50質量%以上である。また、上記割合は、現像性の観点から80質量%以下であることが好ましい。
【0019】
上記一般式(I)中、式中、R1は水素原子又はメチル基である。R2は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、又は炭素数1〜12のハロアルキル基を表す。R2は、解像性の観点から、好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基である。
【0020】
(A)アルカリ可溶性高分子を重合するための単量体成分は、上記一般式(I)で表される化合物に加え、下記の第一の単量体からなる群から選択される少なくとも1種の単量体を共重合として含むことが好ましい。特に、上記一般式(I)で表される化合物がカルボキシル基を有さない場合には、第一の単量体を用いることが必要である。単量体成分中の第一の単量体の含有割合は、(A)アルカリ可溶性高分子に所望される酸当量によって決められる。また、下記第二の単量体を必要に応じて共重合してもよい。
【0021】
第一の単量体は、分子中に重合性不飽和基を1個有するカルボン酸、又は該カルボン酸の無水物若しくは半エステルである。例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸半エステル等が挙げられる。
【0022】
第二の単量体は、非酸性で、分子中に重合性不飽和基を1個有する化合物である。該化合物は、感光性樹脂組成物の現像性、エッチング工程及びめっき工程での耐性、及び硬化膜の可とう性等の種々の特性を良好にするように選択できる。該化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート;フェニル基を有するビニル化合物(例えば、スチレン);メトキシベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート等のベンジル(メタ)アクリレートの芳香環にアルコシキ基、ハロゲン、アルキル基等が置換した化合物等を用いることができる。
【0023】
(A)アルカリ可溶性高分子は、上記一般式(I)で表される化合物と、必要に応じて上記第一の単量体と、必要に応じて上記第二の単量体との混合物を、アセトン、メチルエチルケトン、又はイソプロパノール等の溶剤で希釈した溶液に、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を適量添加し、加熱攪拌することにより合成することが好ましい。混合物の一部を反応液に滴下しながら合成を行う場合もある。反応終了後、さらに溶剤を加えて、所望の濃度に調整する場合もある。合成手段としては、上記のような溶液重合以外に、塊状重合、懸濁重合、又は乳化重合を用いてもよい。
【0024】
(A)アルカリ可溶性高分子の、感光性樹脂組成物全体に対する割合は、10〜90質量%の範囲であり、好ましくは30〜70質量%である。露光及び現像によって形成されるレジストパターンが、レジストとしての特性、例えば、テンティング、エッチング及び各種めっき工程における十分な耐性等を有するという観点から、上記割合としては20質量%以上90質量%以下が好ましい。また、感光性樹脂組成物は、上記一般式(I)で表される単量体を含む単量体成分の重合生成物であるアルカリ可溶性高分子に加え、追加のアルカリ可溶性高分子を含有してもよい。追加のアルカリ可溶性高分子としては、例えばメタアクリル酸、メチルメタアクリレート、ブチルメタアクリレートを単量体成分として含む重合生成物等が挙げられる。
【0025】
[(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物]
(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、必須成分として、下記一般式(II):
【化7】

{式中、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、X1及びX2はそれぞれ独立に、1〜20のエチレンオキシド単位及び0〜20のプロピレンオキシド単位がランダム又はブロックで繰り返されかつ酸素側で芳香核に結合している2価構造を表し、X1が有するエチレンオキシド単位とX2が有するエチレンオキシド単位との合計数が2〜20であり、そしてX1が有するプロピレンオキシド単位とX2が有するプロピレンオキシド単位との合計数が0〜20である。}
で表される化合物を、(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の総量基準で60〜95質量%含有する。
【0026】
1及びX2のそれぞれにおいて、エチレンオキシド単位の数は解像性の観点から1〜20であり、好ましくは2〜15である。プロピレンオキシド単位の数は解像性の観点から0〜20であり、好ましくは0〜10である。
1中のエチレンオキシド単位とX2中のエチレンオキシド単位との合計数は解像性の観点から2〜20であり、好ましくは4〜16である。そしてX1中のプロピレンオキシド単位とX2中のプロピレンオキシド単位との合計数は解像度の観点から0〜20であり、好ましくは0〜10である。
【0027】
1が有するエチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位並びにX2が有するエチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位の合計数は、硬化膜の柔軟性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、解像性の観点から、好ましくは40以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは16以下である。上記合計数は、特に好ましくは4〜16である。
【0028】
1及びX2のそれぞれは、エチレンオキシド単位およびプロピレンオキシド単位からなるランダム又はブロックの構造を有する。なおブロックの場合、エチレンオキシド単位およびプロピレンオキシド単位のいずれが芳香核側(すなわちビスフェノール側)であってもよい。
【0029】
上記一般式(II)で表される化合物としては、1種又は2種以上を使用できる。(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の総量に対し、上記一般式(II)で表される化合物の構成割合は60〜95質量%である。該割合は、耐エッチング性を得るという観点から、60質量%以上であり、現像凝集性の観点から95質量%以下である。該割合の好ましい範囲は65〜92質量%であり、より好ましい範囲は70〜90質量%である。
【0030】
上記一般式(II)で表される化合物の具体例としては、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均2モルのエチレンオキシドを付加したエチレングリコールのジメタクリレート、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均5モルのエチレンオキシドを付加したエチレングリコールのジメタクリレート、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均6モルのエチレンオキシドと平均2モルのプロピレンオキシドを付加したアルキレングリコールのジメタクリレート、ビスフェノールAの両端に平均15モルのエチレンオキシドと平均2モルのプロピレンオキシドを付加したアルキレングリコールのジメタクリレートが挙げられる。
【0031】
好ましい態様において、感光性樹脂組成物は、(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、下記一般式(III):
【化8】

{式中、R5は水素原子又はメチル基を表し、R6は炭素数1〜15のアルキル基又はハロゲン原子を表し、X3は、0〜15のエチレンオキシド単位及び0〜15のプロピレンオキシド単位がランダム又はブロックで繰り返されかつ酸素側で芳香核に結合している2価構造を表し、そしてX3が有するエチレンオキシド単位とプロピレンオキシド単位との合計数が2〜15である。}
で表される化合物を含有する。
【0032】
上記一般式(III)中、R6は現像凝集性の観点から炭素数1〜15のアルキル基又はハロゲン原子であり、好ましくは炭素数5〜10のアルキル基である。
【0033】
上記一般式(III)で表される化合物は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの繰り返し単位を有する。X3中のエチレンオキシド単位の数は、解像度の観点から0〜15であり、好ましくは0〜10である。また、X3中のプロピレンオキシド単位の数は、現像凝集性の観点から0〜15であり、好ましくは0〜5である。X3中のエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの繰り返し単位の合計数が2〜15であれば、これら繰り返し単位の配列は、ランダムでもブロックでもよい。ブロックの場合、いずれの繰り返し単位が芳香核側にあってもよい。
【0034】
上記一般式(III)で表される化合物は、アルキル置換又はハロゲン置換のフェノールに、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又は炭素数4〜6のアルキレンオキシドを公知の方法により付加した変性モノオールと、アクリル酸又はメタクリル酸とのエステル化反応により得ることができる。上記一般式(III)で表される化合物としては、例えばフェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、4−ノルマルオクチルフェノキシペンタプロピレングリコール(メタ)アクリレート、4−ノルマルオクチルフェノキシペンタエチレングリコールトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、4−ノルマルノニルフェノキシテトラプロピレングリコールテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、4−ノルマルノニルフェノキシペンタプロピレングリコールトリ(テトラメチレングリコール)(メタ)アクリレート、フェノキシペンタエチレングリコールテトラ(テトラメチレングリコール)(メタ)アクリレート、フェノキシテトラプロピレングリコールジ(ヘキサメチレングリコール)(メタ)アクリレート、ノルマルオクチルフェノキシテトラエチレングリコールトリ(ヘキサメチレングリコール)(メタ)アクリレート、ノルマルオクチルフェノキシテトラエチレングリコールテトラプロピレングリコールジ(テトラメチレングリコール)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
上記一般式(III)で表される化合物のさらなる例としては、ノルマルノニルフェノキシヘプタエチレングリコールジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノルマルノニルフェノキシノナエチレングリコールトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノルマルオクチルフェノキシヘキサエチレングリコールトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノルマルノニルフェノキシペンタエチレングリコールペンタプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコールトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
上記一般式(III)で表される化合物としては、1種又は2種以上を使用できる。上記一般式(III)で表される化合物の配合量は、感光性樹脂組成物の総量基準で2〜20質量%であることが好ましい。該配合量は、硬化膜柔軟性を得るという観点から、2質量%以上が好ましく、解像性の観点から、20質量%以下が好ましい。該配合量のより好ましい範囲は2〜15質量%であり、さらに好ましい範囲は3〜12質量%である。
【0037】
本実施の形態においては、(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、上記一般式(II)で表される化合物及び上記一般式(III)で表される化合物以外に、例えば下記に示す光重合可能なエチレン性不飽和化合物を使用できる。具体的には、ポリブチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ポリプロピレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ポリエチレングリコ−ル(メタ)アクリレ−ト、2−ジ(P−ヒドロキシフェニル)プロパン(メタ)アクリレ−ト、グリセロ−ルトリ(メタ)アクリレ−ト、トリメチロールトリ(メタ)アクリレ−ト、ポリオキシプロピルトリメチロ−ルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト、ポリオキシエチルトリメチロ−ルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルペンタ(メタ)アクリレ−ト、トリメチルプロパントリグリシジルエ−テルトリ(メタ)アクリレ−ト、フェノキシポリエチレングリコ−ル(メタ)アクリレ−ト、ヘキサメチレンジイソシアネートとノナプロピレングリコールモノメタクリレートとのウレタン化物等のウレタン基を含有する多官能基(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エステル化合物の多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種類以上併用しても構わない。
【0038】
(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の配合量は、感光性樹脂組成物全体の5〜70質量%である。該配合量は、感度、解像性、及び密着性の観点から、5質量%以上であり、コールドフロー、及び硬化レジストの剥離遅延を抑えるという観点から、70質量%以下である。該配合量は、好ましくは25〜50質量%である。
【0039】
[(C)光重合開始剤]
(C)光重合開始剤は、感光性樹脂の分野において光重合開始剤として当業者に一般に知られているもの全般を包含する。感度の観点から、2,4,5,−トリアリールイミダゾール二量体又はアクリジン化合物は好ましい。具体的には、2−(o―クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o―クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o―フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o―メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p―メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;等が挙げられる。特に好ましくは、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン化合物である。本実施の形態において、(C)光重合開始剤としてN−アリールアミノ酸を含有することは、感度の観点から好ましい。N−アリールアミノ酸の例としては、N−フェニルグリシン、N−メチル−N−フェニルグリシン、N−エチル−N−フェニルグリシン等が挙げられる。中でも、N−フェニルグリシンが特に好ましい。
【0040】
さらに、(C)光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラ―ケトン)、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノホルノフェニル)―ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンジルメチルケタール等のベンジル誘導体;クマリン系化合物;4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン;等が挙げられる。
【0041】
(C)光重合開始剤は1種類を単独で使用しても2種類以上併用しても構わない。(C)光重合開始剤の配合量は感光性樹脂組成物全体の0.01〜20質量%である。該配合量は、充分な感度を得るという観点から、0.01質量%以上である。また該配合量は、レジスト底面にまで光を充分に透過させ、良好な解像性を得るという観点から、20質量%以下である。該配合量の好ましい範囲は0.1〜20質量%であり、より好ましい範囲は0.5〜10質量%である。
【0042】
[その他の成分]
感光性樹脂組成物には、上記(A)〜(C)の成分に加え、必要に応じて、例えば変色剤、染料、ハロゲン化合物、ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾール類、カルボキシベンゾトリアゾール類、可塑剤等の添加剤を含有させることができる。
【0043】
変色剤としては、ロイコ染料、フルオラン染料等を例示できる。変色剤の使用は、露光部分が発色することによる視認性の点で好ましい。また、検査機等が露光のための位置合わせマーカーを読み取る場合、露光部と未露光部とのコントラストが大きい方が位置を認識しやすく有利である。
【0044】
ロイコ染料としては、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)メタン[ロイコクリスタルバイオレット]、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)フェニルメタン[ロイコマラカイトグリーン]等が挙げられる。とりわけ、コントラストが良好となる観点から、ロイコ染料としては、ロイコクリスタルバイオレットを用いることが好ましい。感光性樹脂組成物中のロイコ染料の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましい。当該含有量は、露光部分と未露光部分とのコントラストの観点から、0.1質量%以上が好ましく、保存安定性を維持するという観点から10質量%以下が好ましい。
【0045】
染料としては、例えば、フクシン、フタロシアニングリーン、オーラミン塩基、パラマジエンタ、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン(保土ヶ谷化学(株)製 アイゼン(登録商標) MALACHITE GREEN)、ベイシックブルー20、ダイアモンドグリーン(保土ヶ谷化学(株)製 アイゼン(登録商標) DIAMOND GREEN GH)等が挙げられる。感光性樹脂組成物中の染料の含有量は、0.001〜1質量%であることが好ましい。該含有量は、取扱い性向上という観点から、0.001質量%以上であることが好ましく、保存安定性を維持するという観点から、1質量%以下であることが好ましい。
【0046】
また、感光性樹脂組成物中にロイコ染料と下記ハロゲン化合物とを組み合わせて用いることは、密着性及びコントラストの観点から、好ましい態様である。
【0047】
ハロゲン化合物としては、例えば、臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンジル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルフォン、四臭化炭素、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリクロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(p−クロロフェニル)エタン、クロル化トリアジン化合物等が挙げられる。密着性の観点から、とりわけトリブロモメチルフェニルスルフォンが好ましい。感光性樹脂組成物中のハロゲン化合物の含有量は、解像度の観点から0.01〜3質量%であることが好ましい。
【0048】
また、感光性樹脂組成物の熱安定性及び保存安定性を向上させるために、感光性樹脂組成物は、ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾール類、及びカルボキシベンゾトリアゾール類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに含有してもよい。
【0049】
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、塩化第一銅、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、ジフェニルニトロソアミン等が挙げられる。
【0050】
ベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−クロロ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−トリルトリアゾール、ビス(N−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0051】
カルボキシベンゾトリアゾ−ル類としては、例えば、4−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾ−ル、5−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾ−ル、N−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾ−ル、N−(N,N−ジ−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾ−ル、N−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾ−ル等が挙げられる。
【0052】
感光性樹脂組成物全体に対する、ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾ−ル類、及びカルボキシベンゾトリアゾ−ル類の合計含有量は、感光性樹脂組成物全体に対し、好ましくは0.01〜3質量%であり、より好ましくは0.05〜1質量%である。該含有量は、感光性樹脂組成物に保存安定性を付与するという観点から、0.01質量%以上が好ましく、感度を維持し染料の脱色を抑える観点から、3質量%以下が好ましい。
【0053】
可塑剤としては、例えば、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル類、o−トルエンスルホン酸アミド、p−トルエンスルホン酸アミド、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリ−n−プロピル、アセチルクエン酸トリ−n−ブチル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコ−ルアルキルエ−テル、ポリプロプレンレングリコ−ルアルキルエ−テル等が挙げられる。
【0054】
感光性樹脂組成物全体に対する可塑剤の含有量は、好ましくは、1〜50質量%、より好ましくは1〜30質量%である。該含有量は、現像時間の遅延を抑え、硬化膜に柔軟性を付与するという観点から、1質量%以上が好ましく、硬化不足及びコールドフローを抑えるという観点から、50質量%以下が好ましい。
【0055】
感光性樹脂組成物は、必要に応じて、該感光性樹脂組成物を溶解する溶剤を添加してなる感光性樹脂組成物調合液として各種用途に適用できる。溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)に代表されるケトン類;メタノール、エタノール及びイソプロパノールに代表されるアルコール類;等が挙げられる。当該溶剤は、例えば支持フィルム上に塗布する際等、適用時の感光性樹脂組成物調合液の粘度が25℃で500〜4000mPa・sとなるように、感光性樹脂組成物に添加することが好ましい。
【0056】
[感光性樹脂組成物の特性]
感光性樹脂組成物の感度の指標として、ストーファー21段ステップタブレットを用いたときの、感光性樹脂層の厚みの95%以上の厚みの硬化レジスト膜の最高残膜段数は、3段以上7段以下であり、より好ましくは5段以上7段以下である。なお上記の最高残膜段数は下記の方法を用いた評価による値である。感光性樹脂組成物からなる層(以下、感光性樹脂層ともいう)に対し、露光装置(主波長405±5nm)により、ストーファー21段タブレットをマスクとして、15mJ/cm2の露光量で感光性樹脂組成物を露光する。露光後、未硬化部分が現像液に完全に溶解するのに要する最も少ない時間である最小現像時間の2倍の時間で、30℃の1質量%Na2CO3水溶液のスプレーによる現像を行う。得られた硬化レジストパターンの最高残膜段数を評価する。
【0057】
感光性樹脂組成物の解像度の指標として、正常な硬化レジストラインを形成できる最小マスク幅は、好ましくは22μm以下、より好ましくは18μm以下である。なお上記の最小マスク幅は下記の方法を用いた評価による値である。感光性樹脂層に対し、露光部と未露光部との幅が1:1の比率であるラインパターンを、描画データを用いて15mJ/cm2の露光量で露光する。上述した最小現像時間の2倍の時間現像し、硬化レジストパターンの倒れや硬化レジスト同士のくっつきがなく、正常に形成されている最小マスク幅を評価する。
【0058】
感光性樹脂組成物から得られる硬化膜の柔軟性の指標として、硬化レジスト膜の伸度は、好ましくは25%以上、より好ましくは50%以上である。なお上記の硬化膜の伸度は下記の方法を用いた評価による値である。感光性樹脂層を描画データを用いて、最も優れた解像度を発現する露光量で露光する。次に、上述の最小現像時間の2倍の時間現像して、硬化レジストを得る。幅5mm×長さ40mmの硬化レジストサンプルを、引っ張り試験機にて100mm/分の速度で長さ方向に引っ張り、硬化レジストの伸度を測定する。
【0059】
<感光性樹脂積層体>
本発明の別の態様は、上述した本発明に係る感光性樹脂組成物を支持体上に積層してなる、感光性樹脂積層体を提供する。感光性樹脂積層体は、必要により、感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層の支持体形成側とは反対側の表面に保護層をさらに有してもよい。
【0060】
支持体は、典型的には支持フィルムである。支持フィルムとしては、露光光源から放射される光を透過する透明なものが望ましい。このような支持フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、セルロース誘導体フィルム等が挙げられる。これらのフィルムとしては、必要に応じて延伸されたものも使用可能である。支持フィルムは、ヘーズ5以下のものであることが好ましい。支持フィルムの厚みは、薄い方が画像形成性及び経済性の面で有利であるが、強度を維持するために10〜30μmのものが好ましく用いられる。
【0061】
感光性樹脂積層体に用いられる保護層の重要な特性は、感光性樹脂層との密着力について支持フィルムよりも保護層の方が充分小さく、容易に剥離できることである。例えば、ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムが保護層として好ましく使用できる。また、例えば特開昭59−202457号公報に示された剥離性の優れたフィルムを用いることもできる。保護層の膜厚は10〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。感光性樹脂積層体における感光性樹脂層の厚みは、用途において異なるが、好ましくは5〜100μm、より好ましくは7〜60μmであり、薄いほど解像度は向上し、また厚いほど膜強度が向上する。さらに、高いテント性を必要としないエッチング用途には、感光性樹脂積層体における感光性樹脂層の厚みは、10〜20μmが好ましい。この場合の厚みは、耐エッチング性の観点から10μm以上が好ましく、解像性の観点から20μm以下が好ましい。
【0062】
次に、感光性樹脂積層体の作製方法の例について説明する。支持フィルム(支持体として)、感光性樹脂層、及び必要により保護層を順次積層し感光性樹脂積層体を作製する方法としては、公知の方法を採用することができる。例えば、感光性樹脂層を形成するために用いる感光性樹脂組成物を、これを溶解する溶剤と混ぜ合わせ均一な調合液にする。次に、支持フィルム上にバーコーター又はロールコーターを用いて該調合液を塗布し、次いで乾燥して、支持フィルム上に感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を積層する。次いで必要により、感光性樹脂層上に保護層をラミネートする。以上のようにして、感光性樹脂積層体を作製することができる。
【0063】
<レジストパターンの形成方法>
本発明の別の態様は、上述した本発明に係る感光性樹脂組成物を基板上に積層するラミネート工程、該感光性樹脂組成物を露光する露光工程、及び該露光後の感光性樹脂組成物を現像する現像工程、を含む、レジストパターンの形成方法を提供する。形成されるレジストパターンは、例えばプリント配線板における配線パターン等であることができる。以下、支持体、感光性樹脂層、及び保護層からなる感光性樹脂積層体を用いる場合を例に、各工程についてさらに説明する。
【0064】
ラミネート工程では、保護層を剥がしながら、銅張積層板、フレキシブル基板等の基板上に、例えばホットロールラミネーターを用いて感光性樹脂層を密着させる。
【0065】
露光工程では、所望のパターン(プリント配線板の製造においては配線パターン)を有するマスクフィルムを支持体上に密着させ、活性光源を用いて感光性樹脂層を露光する。又は、マスクフィルムを用いず、所望のパターン(例えば配線パターン)にて直接描画によって露光してもよい。
【0066】
現像工程では、露光後、感光性樹脂層上の支持体を剥離し、続いてアルカリ水溶液を現像液として用いて未露光部を現像除去してレジストパターンを基板上に形成する。アルカリ水溶液としては、Na2CO3又はK2CO3の水溶液を用いる。アルカリ水溶液は、感光性樹脂層の特性に合わせて適宜選択されるが、約0.2〜2質量%の濃度、約20〜40℃のNa2CO3水溶液が一般的である。
【0067】
上記の各工程を経てレジストパターンを得ることができる。なお場合により、さらに約100〜300℃の加熱工程を行うこともできる。この加熱工程を実施することにより、耐薬品性向上が可能となる。加熱には熱風、赤外線、又は遠赤外線の方式の加熱炉を用いることができる。
【0068】
以上のようにしてレジストパターンを形成した後、さらに以下のエッチング工程及び剥離工程を経てプリント配線板を作製できる。
エッチング工程では、上記で形成されたレジストパターンの上から基板(例えば銅張積層板)にエッチング液を吹き付けて、レジストパターンによって覆われていない基板表面(例えば銅面)をエッチングする。エッチング工程は、酸性エッチング、アルカリエッチング等、使用する感光性樹脂組成物に適した方法で行なわれる。
剥離工程では、上記のエッチング工程後、レジストパターンを現像液よりも強いアルカリ性を有する水溶液により基板から剥離する。剥離用のアルカリ水溶液について特に制限はないが、濃度約2〜5質量%、温度約40〜70℃のNaOH又はKOHの水溶液が一般に用いられる。剥離液に、少量の水溶性溶媒を加えることもできる。
【0069】
本実施の形態の感光性樹脂組成物及び感光性樹脂積層体は、プリント配線板、フレキシブル基板、リードフレーム基板、COF(チップオンフィルム)用基板、半導体パッケージ用基板、液晶用透明電極、液晶用TFT用配線、PDP(プラズマディスプレイパネル)用電極等の導体パターンの製造に好適である。
【0070】
なお、上述した各種パラメータについては特に断りの無い限り、後述の実施例における測定方法に準じて測定される。
【実施例】
【0071】
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明するが、本実施の形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の物性は以下の方法により測定した。
【0072】
<アルカリ可溶性高分子の酸当量>
平沼産業(株)製平沼自動滴定装置(COM−555)を使用し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて電位差滴定法を用いた。
【0073】
<アルカリ可溶性高分子の重量平均分子量、数平均分子量、及び分子量分布>
日本分光(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(ポンプ:GullIver、PU−1580型、カラム:昭和電工(株)製Shodex(登録商標)(KF−807、KF−806M、KF−806M、KF−802.5)4本直列、移動層溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン標準サンプル(昭和電工(株)製Shodex STANDARD SM−105 Polystyrene)による検量線使用)により求めた。
【0074】
<感度評価>
まず、35μm圧延銅箔を積層した0.4mm厚の銅張積層板を薬液処理(菱江化学(株)製、CPE−900(登録商標)を使用)し、10質量%H2SO4で基板表面を洗浄した。
【0075】
次に、感光性樹脂積層体のポリエチレンフィルムを剥がしながら、60℃に予熱した銅張積層板に、ホットロールラミネーター(旭化成(株)製、AL−700)により、ロール温度105℃で、感光性樹脂層をラミネートした。エアー圧は0.35MPaとし、ラミネート速度は1.5m/minとした。
【0076】
次に、直接描画式露光装置(日立ビアメカニクス(株)製、DI露光機DE−1DH、光源:GaN青紫ダイオード、主波長405±5nm)により、ストーファー21段ステップタブレットをマスクとして15mJ/cm2の露光量で感光性樹脂層を露光した。
【0077】
更に、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した後、アルカリ現像機(フジ機工製、ドライフィルム用現像機)を用いて30℃の1質量%Na2CO3水溶液を所定時間スプレーし、感光性樹脂層の未露光部分を最小現像時間の2倍の時間で溶解除去した。この際、未露光部分の感光性樹脂層が完全に溶解するのに要する最も少ない時間を最小現像時間とした。実際の現像時間は最小現像時間の2倍とし、硬化レジストパターンを得た。
現像後の残膜限界段数を以下の基準によりランク分けした:
○:最高残膜段数が5段以上7段未満;
△:最高残膜段数が3段以上5段未満;
×:最高残膜段数が3段未満。
【0078】
<解像性評価>
感度評価手順と同様に基板整面及びラミネートを行い、露光部と未露光部との幅が1:1の比率のラインパターンを、描画データを用いて15mJ/cm2の露光量で露光した。その後、最小現像時間の2倍の現像時間で現像し、硬化レジストラインが正常に形成されている最小マスク幅を解像度の値とし、解像性を下記のようにランク分けした:
○:解像度の値が18μm以下;
△:解像度の値が18μmを超え、22μm以下;
×:解像度の値が22μmを超える。
【0079】
<耐エッチング性評価>
解像性評価手順により得られた、パターニングされた基板を、塩銅エッチング装置(東京化工機(株)製、塩銅エッチング装置)を用いて塩化第二銅濃度250g/L、塩酸濃度3mol/Lである、50℃の塩化第二銅エッチング液を所定時間スプレーし、銅張積層板上の、レジストパターンにより被覆されていない部分の銅箔を溶解除去した。
硬化レジストを水酸化ナトリウム水溶液にて剥離除去して得られた導体パターンを光学顕微鏡にて観察し、かかる観察結果に基づき、以下のようにランク分けした:
○:導体パターンが直線的に形成されており、エッチング液の染み込みが見られない;
△:導体パターンが直線的に形成されているが、エッチング液の染み込みが見られる;
×:導体パターンが直線的に形成されておらず、ガタツキが見られる。
【0080】
<硬化膜柔軟性評価>
感光性樹脂積層体を5mm×40mmの長方形の描画データを用いて露光した。さらに最小現像時間の2倍の時間で現像し、硬化レジストを得た。作製した幅5mm×長さ40mmの硬化レジストを引っ張り試験機(オリエンテック(株)製、RTM−500)にて100mm/minの速度にて長さ方向に引っ張り、その際の硬化レジストの伸度に基づき、以下のようにランク分けした:
○:硬化レジストの伸度が20mm以上;
△:硬化レジストの伸度が10mm以上で、20mm未満;
×:硬化レジストの伸度が10mm未満。
【0081】
<凝集性>
感光性樹脂積層体中の厚み15μm、及び2.0m2の感光層を、200mlの1質量%Na2CO3水溶液に溶解させ、循環式スプレー装置を用いてスプレー圧0.1MPaで3時間スプレーを行なった。その後、現像液を1日静置し、凝集物の発生を観察した。凝集物が多量に発生するとスプレー装置の底面及び側面に粉状物又は油状物が観察される。現像液凝集性が良好な組成物においては、上記のような凝集物が全く発生しない。凝集性を、凝集物の発生状態に基づき、以下のようにランク分けした:
○:凝集物が全く発生しない;
△:スプレー装置の底部又は側面の一部に凝集物が見られる;
×:スプレー装置全体に凝集物が見られる。
【0082】
[実施例1〜8、比較例1〜3]
表1〜2に示す組成(但し、各成分の数字は固形分としての配合量(質量部)を示す)の感光性樹脂組成物及び溶剤をよく攪拌、混合して感光性樹脂組成物調合液とし、支持体として16μm厚のポリエチレンテレフタラートフィルム(三菱化学ポリエステルフィムル(株)製、R130−16)の表面にバーコーターを用いて均一に塗布し、95℃の乾燥機中で2分間乾燥して感光性樹脂層を形成した。感光性樹脂層の厚みは20μmであった。
【0083】
次いで、感光性樹脂層のポリエチレンテレフタラートフィルム積層側と反対側の表面上に、保護層として19μm厚のポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製、GF−818)を張り合わせて感光性樹脂積層体を得た。得られた感光性樹脂積層体につき、各種評価を行った。結果を表1に併記する。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
表1及び2の結果から、以下の内容が読み取れる。
まず、実施例と比較例との対比により、本実施形態の感光性樹脂組成物を用いれば、高解像性を発現できることが分かる。次に、実施例1〜5、7、8と実施例6との対比により、(C)光重合開始剤としてアクリジン化合物を用いることで感度を向上させることができることが分かる。
【0087】
次に、実施例1〜6、8と実施例7との対比により、(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、一般式(II)で表される化合物であってエチレンオキシド単位とプロピレンオキシド単位との合計数が4〜16である化合物を用いることにより、耐エッチング性を向上できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の感光性樹脂組成物及び感光性樹脂積層体は、プリント配線板、フレキシブル基板、リードフレーム基板、COF(チップオンフィルム)用基板、半導体パッケージ用基板、液晶用透明電極、液晶用TFT用配線、PDP(プラズマディスプレイパネル)用電極等の導体パターンの製造に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性樹脂組成物の総量基準で、
(A)アルカリ可溶性高分子:10〜90質量%、
(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物:5〜70質量%、及び
(C)光重合開始剤:0.01〜20質量%、
を含有する感光性樹脂組成物であって、
該(A)アルカリ可溶性高分子が、酸当量100〜600、及び重量平均分子量5000〜500000を有し、
該(A)アルカリ可溶性高分子が、下記一般式(I):
【化1】

{式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、そしてR2は水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、又は炭素数1〜12のハロアルキル基を表す。}
で表される化合物を45質量%以上含有する単量体成分の重合生成物であり、
該(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の総量に対し、下記一般式(II):
【化2】

{式中、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、X1及びX2はそれぞれ独立に、1〜20のエチレンオキシド単位及び0〜20のプロピレンオキシド単位がランダム又はブロックで繰り返されかつ酸素側で芳香核に結合している2価構造を表し、X1が有するエチレンオキシド単位とX2が有するエチレンオキシド単位との合計数が2〜20であり、そしてX1が有するプロピレンオキシド単位とX2が有するプロピレンオキシド単位との合計数が0〜20である。}
で表される化合物が60〜95質量%を構成している、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、下記一般式(III):
【化3】

{式中、R5は水素原子又はメチル基を表し、R6は炭素数1〜15のアルキル基又はハロゲン原子を表し、X3は、0〜15のエチレンオキシド単位及び0〜15のプロピレンオキシド単位がランダム又はブロックで繰り返されかつ酸素側で芳香核に結合している2価構造を表し、そしてX3が有するエチレンオキシド単位とプロピレンオキシド単位との合計数が2〜15である。}
で表される化合物を含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)光重合開始剤としてアクリジン化合物を含有する、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記一般式(II)において、X1が有するエチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位並びにX2が有するエチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位の合計数が4〜16である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を支持体上に積層してなる、感光性樹脂積層体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に積層するラミネート工程、
該感光性樹脂組成物を露光する露光工程、及び
該露光後の感光性樹脂組成物を現像する現像工程、
を含む、レジストパターンの形成方法。

【公開番号】特開2013−61556(P2013−61556A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200863(P2011−200863)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】