説明

感圧スイッチ装置及び感圧スイッチ装置の製造方法

【課題】耐久性、耐油性に優れ、酸化しやすいゴムにより密閉容器を形成しても密閉容器内の圧力低下を防止できる感圧スイッチ装置を提供する。
【解決手段】本発明の感圧スイッチ装置は、密閉容器2と、密閉容器の互いに対向する内面に互いに間隔を隔てて対向するよう設けられた一対の電極3;4とを備え、密閉容器2に加わる圧力によって電極3と電極4とが接触可能に形成された感圧スイッチ装置1において、密閉容器2がジエン系ゴム又はエチレンプロピレンゴムにより形成され、密閉容器2内に窒素ガス10(不活性ガス)が充填されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性、耐油性に優れ、酸化しやすいゴムにより密閉容器を形成しても密閉容器内の圧力低下を防止可能な感圧スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉容器内に、密閉容器に加わる圧力によって導通接触するとともに密閉容器への圧力が除去されることで互いに離れる電極を備えた感圧スイッチ装置として以下のようなものが知られている。
シース(密閉容器)の密閉空間内に不活性ガスのような加圧流体を充填して密閉空間内の流体圧を外気圧よりも高く設定した感圧スイッチ装置(例えば、特許文献1参照)。
シリコンゴムにより形成された密閉容器の密閉空間内に不活性ガスが充填された感圧スイッチ装置(例えば、特許文献2参照)。
密閉容器の密閉空間内に、密閉空間内の導電面を形成する導電性物質に対して不活性の窒素ガスを封入した感圧スイッチ装置(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2001−60423号公報
【特許文献2】特表平11−505959号公報
【特許文献3】特開平10−199368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の感圧スイッチ装置は、不活性ガスが密閉容器の密閉空間内に充填された構成を備えるので、電極の酸化被膜形成を防止できるととともに、密閉容器の内面の酸化を防止できる。
しかしながら、特許文献1の感圧スイッチ装置の密閉容器は、シリコン、塩ビ、ゴムなどを用いて形成されるので、ゴムの種類によっては、耐久性、耐油性に劣る。また、特許文献2の感圧スイッチ装置においても、密閉容器がシリコンゴムにより形成されているので、耐久性、耐油性に劣る。さらに、特許文献3の感圧スイッチ装置では、密閉容器の材質が不明である。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、耐久性、耐油性に優れ、酸化しやすいゴムにより密閉容器を形成しても密閉容器内の圧力低下を防止できる感圧スイッチ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の感圧スイッチ装置は、密閉容器と、密閉容器の互いに対向する内面に互いに間隔を隔てて対向するよう設けられた一対の電極とを備え、密閉容器に加わる圧力によって電極と電極とが接触可能に形成された感圧スイッチ装置において、密閉容器がジエン系ゴム又はエチレンプロピレンゴムにより形成され、密閉容器内に不活性ガスが充填されたことを特徴とする。
密閉容器がニトリル−ブタジエンゴムにより形成されたことも特徴とする。
不活性ガスが窒素ガスであることも特徴とする。
本発明の感圧スイッチ装置の製造方法は、密閉容器内の空気を不活性ガスに置換することによって、密閉容器内に不活性ガスを充填したことも特徴とする。
密閉容器内の空気を不活性ガスに置換する際に、空気の入った密閉容器に密閉容器の内外に貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔に筒棒を差し込み、この筒棒に真空ポンプを繋いで密閉容器内を減圧した後に筒棒に不活性ガスのボンベを繋いで密閉容器内に不活性ガスを注入する操作を複数回に分けて行うことによって、密閉容器内に不活性ガスを充填したことも特徴とする。
不活性ガス雰囲気下で密閉容器を成形したことも特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の感圧スイッチ装置によれば、密閉容器がジエン系ゴムにより形成され、密閉容器内に不活性ガスが充填された構成を備えたので、耐久性、耐油性に優れ、酸化しやすいゴムにより密閉容器を形成しても密閉容器内の圧力低下を防止できる。
密閉容器がニトリル−ブタジエンゴムにより形成されたので、耐久性、耐油性に優れる。
不活性ガスとして窒素ガスを使用したので、コストを低減できる。
本発明の感圧スイッチ装置の製造方法は、密閉容器内の空気を不活性ガスに置換することによって、密閉容器内に不活性ガスを充填したので、密閉容器を容易に製造できる。
筒棒に真空ポンプを繋いで密閉容器内を減圧した後に筒棒に不活性ガスのボンベを繋いで密閉容器内に不活性ガスを注入する操作を複数回に分けて行うことによって、密閉容器内に不活性ガスを充填したので、電極を変形させることなく、高品質の密閉容器を容易に製造できる。
不活性ガス雰囲気下で密閉容器を成形したので、電極の酸化被膜形成防止効果、及び、密閉容器内の内部圧力低下防止効果のより高い感圧スイッチ装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1及び図2は最良の形態を示し、図1は感圧スイッチ装置の断面を示し、図2は感圧スイッチ装置の外観を示す。感圧スイッチ装置は、例えば、ロボットや機械装置周辺の危険エリアに作業者等が立ち入ったことを検知するために、ロボットや機械装置周辺に敷設されている。
【0007】
図1及び図2を参照し、感圧スイッチ装置の構造を説明する。感圧スイッチ装置1は、密閉容器2、電極3;4、絶縁体5を備える。密閉容器2は、ジエン系ゴムとしてのニトリル−ブタジエンゴム(NBR)により形成される。密閉容器2は、表ゴム6、裏ゴム7、縁ゴム8を備える。表ゴム6と裏ゴム7とが、同じ大きさの矩形シート状に形成される。縁ゴム8は、表ゴム6や裏ゴム7の矩形の辺縁部に対応した矩形リング状に形成される。縁ゴム8が、互いに対向するよう配置された表ゴム6の矩形の辺縁部と裏ゴム7の矩形の辺縁部との間を密閉状態に塞ぐように表ゴム6の辺縁部と裏ゴム7の矩形の辺縁部とに接着剤や加硫により接着されたことによって、密閉容器2が形成される。シート状(面状)の電極3が表ゴム6の内面に取り付けられ、シート状の電極4が裏ゴム7の内面に取り付けられる。これら表裏で一対の電極3;4は、金属板としての亜鉛めっき鋼板により形成される。複数の絶縁体5が、互いに間隔を隔てて点在するように一方の電極4の内面に固定して設けられることによって、複数の絶縁体5及び後述の不活性ガス10が、一方の電極4の内面と他方の電極3の内面との対向間隔を一定間隔に保持する。
【0008】
密閉容器2内には、不活性ガスとしての窒素ガス10が充填される。窒素ガス10の充填方法としては、密閉容器2に密閉容器2の外部と内部とに通じる図外の貫通孔を形成し、この貫通孔に図外の筒棒(中空針)を差し込み、この筒棒に図外の真空ポンプを接続し、真空ポンプを駆動して密閉容器2内を減圧してから窒素ガスを充填する。すなわち、密閉容器2内を真空にした場合に1気圧の圧力が密閉容器2に加わって電極3;4が変形してしまうことを防止するために、密閉容器2内を1/3気圧程度減圧して窒素ガス10を注入する操作を複数回行うことによって密閉容器2内の空気を窒素ガス10に置換する。
【0009】
例えば、空気の入った密閉容器2の縁ゴム8に直径1mmの貫通孔を形成しておき、筒の直径1.2mmのコック(開閉栓)付きの筒棒を貫通孔に差し込んで、圧力計を備えた真空ポンプと筒棒とをホースで繋ぎ、密閉容器2内を400mmHgまで減圧する。次にコックを止めて、窒素ボンベと筒棒とをホースで繋ぎ、密閉容器2内に760mmHgまで窒素を入れる。この動作を5回以上繰り返し、密閉容器2内の酸素濃度は1%以下となる。このようにして窒素で密閉容器2内を常圧(大気圧)に戻し、硬度の高い弾性体にシアノアクリレート系接着剤を塗布して貫通孔にを差し込んで貫通孔を塞ぐことで、密閉容器2内の空気が窒素ガス10に置換された感圧スイッチ装置1を製造できる。このように密閉容器2内の空気を窒素ガスに置換して密閉容器2内に窒素ガスを充填したことによって、電極3;4を変形させることなく、高品質の密閉容器2を容易に製造できる。
【0010】
各電極3;4にはそれぞれリード線11;12が接続され、各リード線11;12が図外の制御装置に接続される。よって、密閉容器2に加えられた圧力で電極3;4同士が互いに接触すると、電極3;4間に電流が流れたことを制御装置が検出して、制御装置がロボットや機械装置を停止させる。密閉容器2への圧力が除去されればニトリル−ブタジエンゴムの弾性により密閉容器2が元の状態に瞬時に復元して電極3;4間が離れる。
【0011】
最良の形態によれば、密閉容器2を、耐久性、耐油性に優れ、酸化しやすいニトリル−ブタジエンゴムにより形成したので、耐久性、耐油性に優れるとともに、密閉容器2内に窒素ガス10が充填されたので、亜鉛めっき鋼板により形成された電極3;4の酸化被膜形成を防止でき、しかも、密閉容器2を形成するニトリル−ブタジエンゴムの内面の酸化を防止できる。つまり、密閉容器2の内面の酸化を防止できるために、酸素と密閉容器2の内面のゴムとが反応して密閉容器2内の内部圧力を低下させてしまうことを防止でき、一対の電極3;4同士が互いに接触したままの誤作動状態となるようなことを防止できて、性能維持期間の長い、所謂メンテナンスフリーな感圧スイッチ装置1を得ることできる。特に、密閉容器2をニトリル−ブタジエンゴムで形成した場合は、密閉容器2内が空気であるとニトリル−ブタジエンゴムが酸化しやすく、酸素とニトリル−ブタジエンゴムとが反応して密閉容器2内の内部圧力が早期に低下して一対の電極3;4同士が互いに接触したままの誤作動状態となってしまうので、頻繁にメンテナンスを行って密閉容器2内に空気を充填しなければならなくなるが、最良の形態によれば、密閉容器2を酸化しやすいニトリル−ブタジエンゴムにより形成した場合に密閉容器2内に窒素ガス10を充填した構成によって、内部圧力低下の要因となるニトリル−ブタジエンゴムを用いて密閉容器2内の内部圧力低下防止効果の高い感圧スイッチ装置1を得ることが可能となった。
【0012】
また、最良の形態によれば、不活性ガスとしてコストの安い窒素ガスを使用したので、感圧スイッチ装置のコストを低減できる。
【0013】
尚、窒素雰囲気下で密閉容器2を製造すれば、密閉容器2内の窒素ガス濃度を100%とできるので、電極3;4の酸化被膜形成防止効果、及び、密閉容器2内の内部圧力低下防止効果のより高い感圧スイッチ装置1を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
密閉容器2を形成するジエン系ゴムとして、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などを用いてもよい。
密閉容器2を形成するゴムとして、非ジエン系ゴムであるエチレンプロピレンゴム(EPM)を用いてもよい。
不活性ガスとして、アルゴンガス、ネオンガスなどを用いてもよい。
絶縁体5を備えずに不活性ガス10による圧力によって電極3;4の間隔が維持された構成の密閉容器2を備えた感圧スイッチ装置としてもよい。
本発明の構成は、特許文献2に開示されたダイヤフラムを備えた構成の感圧スイッチ装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】感圧スイッチ装置の断面図(最良の形態)。
【図2】感圧スイッチ装置の斜視図(最良の形態)。
【符号の説明】
【0016】
1 感圧スイッチ装置、2 密閉容器、3;4 電極、10 窒素ガス(不活性ガス)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器と、密閉容器の互いに対向する内面に互いに間隔を隔てて対向するよう設けられた一対の電極とを備え、密閉容器に加わる圧力によって電極と電極とが接触可能に形成された感圧スイッチ装置において、密閉容器がジエン系ゴム又はエチレンプロピレンゴムにより形成され、密閉容器内に不活性ガスが充填されたことを特徴とする感圧スイッチ装置。
【請求項2】
密閉容器がニトリル−ブタジエンゴムにより形成されたことを特徴とする請求項1に記載の感圧スイッチ装置。
【請求項3】
不活性ガスが窒素ガスであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の感圧スイッチ装置。
【請求項4】
密閉容器内の空気を不活性ガスに置換することによって、密閉容器内に不活性ガスを充填したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の感圧スイッチ装置の製造方法。
【請求項5】
密閉容器内の空気を不活性ガスに置換する際に、空気の入った密閉容器に密閉容器の内外に貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔に筒棒を差し込み、この筒棒に真空ポンプを繋いで密閉容器内を減圧した後に筒棒に不活性ガスのボンベを繋いで密閉容器内に不活性ガスを注入する操作を複数回に分けて行うことによって、密閉容器内に不活性ガスを充填したことを特徴とする請求項4に記載の感圧スイッチ装置の製造方法。
【請求項6】
不活性ガス雰囲気下で密閉容器を成形したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の感圧スイッチ装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−204896(P2008−204896A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42009(P2007−42009)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】