説明

感圧接着剤

【課題】経時的な接着力の低下が少なく、加熱後の接着力の保持率が高い情報担持シート用の感圧接着剤を提供する。
【解決手段】共役ジエン(a)及びホモポリマーのガラス転移温度が105〜205℃であるモノエチレン性化合物(b)を構成単量体とするブロック共重合体(A)と、(A)に対して非親和性を示す微粒子状充填剤(B)を含有する、情報担持シート用の感圧接着剤であって、前記共役ジエン(a)がブタジエン、イソプレン、クロロプレン及び1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエンからなる群から選ばれる1種以上であり、前記モノエチレン性化合物(b)がα−及び/又はβ−アルキル置換単環芳香族モノエチレン性化合物であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感圧接着剤に関する。さらに詳しくは、情報担持シート用の感圧接着剤及び得られる情報担持シートに関する。
【背景技術】
【0002】
親展性をもつ隠蔽ハガキに代表される情報担持シートは、例えば、個人的用件、プリント情報又は印刷情報等の各種情報が記載されたハガキを折り畳み、重ね合わせ部分を接着して、該情報を隠蔽した後、郵送し、受取人が重ね合わせ部分を再び剥離して隠蔽情報を読み取ることができるシートである。上記情報担持シートは、通常は、重ね合わせ部分には感圧接着剤が使用されている。これらの感圧接着剤としては、従来、接着剤基剤となる樹脂成分と、該基剤に対して非親和性を示す微粒子状充填剤からなる感圧接着剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
上記接着剤基剤となる樹脂成分としては、天然ゴムラテックスあるいはその変性物が、塗工表面の粘着性が少なく、かつ接着性に優れていることから広く使用されている。しかしながら、天然ゴムラテックスは酸素、紫外線及びオゾン等の影響でゴム成分が経時的に劣化するという欠点を有しており、このような経時的な劣化を避けるため、芳香環含有ビニル化合物を含む単量体からなる合成ゴムラテックスを用いることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、上記の芳香族含有ビニル化合物系ゴムラテックスを用いた感圧接着剤では、紙等の基体シートに感圧接着剤を塗工した後、その表面に情報を印刷機で印刷する工程中に、何らかの原因で印刷機が停止するというトラブルが発生した場合、トラブルを解除して印刷を再開しても、でき上がった情報担持シートの重ね合わせ部分の感圧接着性が大きく低下してしまうという問題点があった。
本願発明者らは、上記の、重ね合わせ部分の感圧接着性が大きく低下してしまうという問題点の原因について検討した結果、印刷機が停止している時に情報担持シートに熱が蓄積し、その熱により、接着剤表面のモルフォロジーが変化することが接着性を低下させている1つの要因であることを見い出した。
【0003】
【特許文献1】特開平4−59395号公報
【特許文献2】特開2006−299256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、樹脂成分が、酸素、紫外線及びオゾン等の影響で劣化することがなく、しかも、一時的に熱がかかっても接着性が殆ど低下することのない、熱安定性に優れた、情報担持シート用の感圧接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題点を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、共役ジエン(a)及びホモポリマーのガラス転移温度が105〜205℃であるモノエチレン性化合物(b)を構成単量体とするブロック共重合体(A)と、(A)に対して非親和性を示す微粒子状充填剤(B)を含有する、情報担持シート用の感圧接着剤、並びに前記感圧接着剤から形成されてなる感圧接着剤層を、基体シートの少なくとも片面の少なくとも一部に有する情報担持シートである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の感圧接着剤又はそれを用いた情報担持シートは、下記の効果を奏する。
(1)熱安定性に優れ、加熱前後で接着力の保持率が高い。
(2)酸素、紫外線及びオゾン等の影響で劣化することが少ない。
(3)従来の情報担持シート用感圧接着剤と同等以上の接着力、耐ブロッキング性及び印刷適性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を更に詳しく説明する。本発明におけるブロック共重合体(A)[以下において、単に(A)と表記することがある]を構成する単量体のうちの1つである共役ジエン(a)[以下において、単に(a)と表記することがある]としては、炭素数4〜8の、例えばブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3−ヘキサジエン及び2,4−ヘキサジエン並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち作業性及び耐熱接着性の観点から好ましいのはブタジエン、イソプレン及びクロロプレン、さらに好ましいのはブタジエン及びイソプレンである。なお、本発明において「耐熱接着性」とは、前記課題等でも記述したように、印刷機が停止している時の熱の蓄積等によって影響される、情報担持シートの接着性のことをいう。
【0008】
ホモポリマーのガラス転移温度が105〜205℃であるモノエチレン性化合物(b)[以下において、モノエチレン性化合物(b)又は単に(b)と表記する場合がある]としては、単環芳香族化合物(炭素数9〜13、例えばα−メチルスチレン(ホモポリマーのTg=112℃)、β−メチルスチレン(ホモポリマーのTg=114℃)、α,β−ジメチルスチレン(ホモポリマーのTg=116℃)、β,β’−ジメチルスチレン(ホモポリマーのTg=107℃)、β,γ−ジメチルスチレン(ホモポリマーのTg=107℃)、ポリ−4−t−ブチルスチレン(ホモポリマーのTg=111℃)、トリメチルスチレン、α−又はβ−ヒドロキシスチレン(ホモポリマーのTg=133℃、111℃)、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち、作業性及び耐熱接着性の観点から好ましいのは単環芳香族化合物、さらに好ましいのはα−及び/又はβ−アルキル置換単環芳香族モノエチレン性化合物、特に好ましいのはα−メチルスチレン及びβ−メチルスチレンである。
【0009】
前記ブロック共重合体(A)を構成する、共役ジエン(a)とモノエチレン性化合物(b)
の重量比は、耐ブロッキング性及び接着力の観点から好ましくは(a):(b)が10:90〜70:30、さらに好ましくは20:80〜60:40である。ここにおいて、ブロッキング性とは、本来、一定以上の圧力(通常1MPa以上)で圧接したときにのみ接着すべき感圧接着剤の塗工面同士又は感圧接着剤の塗工面と非塗工面が、圧接しない状態で接触又は微圧(通常0.5MPa以下。以下同じ。)で圧接した場合に接着してしまう現象を意味する。
【0010】
ブロック共重合体(A)の数平均分子量[以下、Mnと略記。測定はポリスチレンを標準としたゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]は、耐ブロッキング性及び耐熱接着性の観点から好ましくは10,000〜3,000,000、さらに好ましくは20,000〜2,000,000、特に好ましくは30,000〜1,000,000である。
【0011】
ブロック共重合体(A)の構造は直鎖構造及び/又は分岐構造であり、分岐構造は星型又は櫛形構造であってもよい。
【0012】
ブロック共重合体の具体例としては、α−又はβ−メチルスチレン/ブタジエンブロック共重合体、α−又はβ−メチルスチレン/イソプレンブロック共重体、α−又はβ−メチルスチレン/ブタジエン/α−又はβ−メチルスチレンブロック共重合体、α−又はβ−メチルスチレン/イソプレン/α−又はβ−メチルスチレンブロック共重合、α−又はβ−メチルスチレン/イソプレン/ブタジエン/α−又はβ−メチルスチレンブロック共重合体、α−メチルスチレン/(エチレン/プロピレン)/α−メチルスチレンブロック共重合体、α−又はβ−メチルスチレン/エチレン/(エチレン/プロピレン)/α−又はβ−メチルスチレンブロック共重合体、α−又はβ−メチルスチレン/ブタジエン/(エチレン/プロピレン)/α−又はβ−メチルスチレンブロック共重合体、α−又はβ−メチルスチレン/イソプレン/(エチレン/プロピレン)/α−又はβ−メチルスチレンブロック共重合体等が挙げられる。ここにおいてブロック共重合体の表記は存在する各ブロックの種類を示すものであって、各ブロック間の結合順序及び結合位置を限定するものではない。なお、(エチレン/プロピレン)はエチレンとプロピレンのランダム共重合部分を表す。
これらのうち塗工面の接着力と粘着力のバランスの観点から好ましいのは直鎖構造のもの、さらに好ましいのは直鎖構造の、α−又はβ−メチルスチレン/ブタジエン/α−又はβ−メチルスチレンブロック共重合体、α−又はβ−メチルスチレン/イソプレン/α−又はβ−メチルスチレンブロック共重合体、α−又はβ−メチルスチレン/イソプレン/ブタジエン/α−又はβ−メチルスチレンブロック共重合体、α−又はβ−メチルスチレン/(エチレン/プロピレン)/α−又はβ−メチルスチレンブロック共重合体及びα−又はβ−メチルスチレン/エチレン/(エチレン/プロピレン)/α−又はβ−メチルスチレンブロック共重合体並びにこれらの2種以上の混合物である。
【0013】
ブロック共重合体(A)の製造方法としては特に制限されず、通常の方法で製造することができる。例えば、アニオン重合又はカチオン重合等のイオン重合法、シングルサイト重合法又はラジカル重合法等のいずれの方法でもよい。アニオン重合法による場合は、アルキルリチウム化合物等を重合開始剤として、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の重合反応に不活性な有機溶媒中で、共役ジエン(a)及びモノエチレン性化合物(b)を逐次重合させてブロック共重合体(P)を得ることが可能である。
【0014】
本発明の情報担持シート用の感圧接着剤は、前記(A)に対して非親和性を示す微粒子状充填剤(B)[以下において、単に(B)と表記することがある]を必須成分として含有してなる。ここで、「(A)に対して非親和性を示す」とは、本発明の感圧接着剤が情報担持シート上に塗布されて乾燥された状態で、(B)がその形状を保持したままであって(A)と均一には相溶しないことをいう。
【0015】
(B)としては、例えば、シリカ、デンプン(コーンスターチ等)、合成ゼオライト、微球状(メタ)アクリル樹脂、微球状ポリエチレン、球状アルミナ、ガラス粉末、シラスバルーン、活性白土、酸化チタン及び酸化亜鉛並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち、(A)に対する非親和性と充分な耐ブロッキング性が実現できるとの観点から好ましいのはシリカ及びデンプンである。
【0016】
(B)の形状としては、球状、針状、鱗片状及び不定形状等が挙げられ、接着剤層の透明性を阻害しないとの観点から球状のものが好ましい。
(B)の平均粒子径(メジアン径)(μm)は、耐ブロッキング性と耐熱接着性の観点から好ましくは0.01〜35、さらに好ましくは0.5〜30である。
【0017】
(B)の使用量は、用途、(A)の分子構造及びMn、並びに(A)中の(b)のブロックの含有量等によって異なるが、(A)の重量に基づいて耐ブロッキング性と耐熱接着性の観点から好ましくは20〜300%(以下において、特に限定しない限り、%は重量%を表す)、さらに好ましくは30〜250%、特に好ましくは40〜200%である。
【0018】
本発明の感圧接着剤には、さらに必要により粘着付与樹脂(C)を含有させてもよい。(C)としては、種々の樹脂、例えば、「接着の技術」20,(2),13(2000)に記載のものが使用できる。
(C)の具体例としては、ロジン、ロジン誘導体樹脂(Mn200〜1,000の、重合ロジン、ロジンエステル、これらのフェノール変性物及び不飽和酸変性物)、テルペン樹脂[Mn300〜1200の、α−ピネン、β−ピネン及びリモネン等の(共)重合体並びにこれらのフェノール変性物]、クマロン樹脂、石油樹脂[Mn300〜1,200の、C5留分、C9留分、C5/C9留分及びジシクロペンタジエン等の(共)重合体]、キシレン樹脂(Mn300〜3,000のキシレンホルムアルデヒド樹脂)、フェノール樹脂(Mn300〜3,000のフェノールホルムアルデヒド樹脂)、ケトン樹脂(Mn300〜3,000のメチルシクロヘキサノン−ホルムアルデヒド縮合物)、これらの樹脂の水素化物及びこれらの混合物が挙げられる。
上記(C)のうち、熱安定性、臭気及び色相の観点から好ましいのは、ロジン、ロジン誘導体樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、これらの水素化物及びこれらの混合物である。
【0019】
(C)の含有量は、用途、(A)の分子構造及びMn、並びに(A)中の(b)のブロックの含有量等によって異なるが、(A)の重量に基づいて好ましくは150%以下、耐熱接着性と耐ブロッキング性の観点からさらに好ましくは1〜100%、特に好ましくは2〜80%である。
【0020】
本発明の感圧接着剤には、さらに必要により前記(A)及び(C)以外の熱可塑性樹脂(D)を含有させてもよい。該熱可塑性樹脂(D)としては、例えばゴム(D1)、汎用樹脂(D2)、エンジニアリングプラスチック(D3)、特殊エンジニアリングプラスチック(D4)、及び本発明における、共役ジエン(a)とホモポリマーのTgが105℃未満のモノエチレン性化合物を構成単量体とするブロック共重合体(D5)等が挙げられる。
【0021】
熱可塑性樹脂(D)のうち、ゴム(D1)としては、液状(例えばラテックス)であっても固体状であってもよく、天然ゴム、合成ゴム及びこれらの変性物が挙げられる。天然ゴム及びその変性物としては、天然生ゴム、天然ゴムの加硫物及びこれらの(メタ)アクリル酸変性物、(メタ)アクリル酸エステル変性物、スチレン変性物並びに(メタ)アクリロニトリル変性物等が挙げられる。合成ゴム及びその変性物としては、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、多硫化物系ゴム、含珪素系ゴム、含フッ素系ゴム、ウレタン系ゴム、含リン系ゴム及びその他の合成ゴム並びにそれらの変性物が挙げられる。
【0022】
汎用樹脂(D2)としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等)、ビニルモノマー重合体[ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル(共)重合体、ポリビニルアルコール及びビニルピロリドン(共)重合体等]、(メタ)アクリロイル基含有重合体[(メタ)アクリル酸(共)重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(共)重合体、(メタ)アクリルアミド(共)重合体及びアルキル(メタ)アクリルアミド(共)重合体等]、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等)、合成タンパク、天然樹脂(カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、大豆タンパク、カゼイン、ゼラチン及びアルギン酸ナトリウム等)等が挙げられる。
【0023】
エンジニアリングプラスチック(D3)としては、ポリアセタール、ナイロン、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、メチルペンテンポリマー及びビニルアルコール共重合体等が挙げられる。
【0024】
特殊エンジニアリングプラスチック(D4)としては、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、芳香族ポリアミド及びフッ素樹脂等が挙げられる。
【0025】
共役ジエン(a)とホモポリマーのTgが105℃未満のモノエチレン性化合物を構成単量体とするブロック共重合体(D5)としては、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合、スチレン/イソプレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/(エチレン/プロピレン)/スチレンブロック共重合体、スチレン/エチレン/(エチレン/プロピレン)/スチレンブロック共重合体(スチレン/ブタジエン/(エチレン/プロピレン)/スチレンブロック共重合体及びスチレン/イソプレン/(エチレン/プロピレン)/スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0026】
(D)のMnは耐ブロッキング性と耐熱接着性の観点から好ましくは2,000〜3,000,000、さらに好ましくは3,000〜2,000,000である。
【0027】
(D)の含有量は、用途、(A)の分子構造及びMn、(A)中の(b)のブロックの含有量等によって異なるが、(A)の重量に基づいて耐ブロッキング性と経時的な接着力の安定性の観点から好ましくは0〜100%、さらに好ましくは5〜80%、特に好ましくは10〜50%である。
【0028】
本発明の感圧接着剤には、さらに必要により可塑剤(E)を含有させてもよい。(E)としては、例えば「接着の技術」20,(2),21(2000)に記載の可塑剤等が使用できる。具体的には、プロセスオイル[重量平均分子量(以下、Mwと略記。測定はポリスチレンを標準としたGPC法による)300〜10,000のパラフィン、ナフテン及び芳香環含有プロセスオイル]、常温(20〜25℃)で液状を呈する樹脂(Mw300〜10,000の液状ポリブテン、液状ポリブタジエン及び液状ポリイソプレン)、該液状を呈する樹脂の水素化体、天然又は合成ワックス(Mw300〜30,000のパラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックス、Mw1,000〜30,000の低分子量ポリオレフィンワックス)、及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
これらのうち耐熱接着性及び経時的な接着力の安定性に優れた組成物が得られるとの観点から好ましいのはプロセスオイル、さらに好ましいのはパラフィンプロセスオイル、ナフテンプロセスオイル及びこれらの併用である。
(E)の含有量は、用途、(A)の分子構造及びMn、並びに(A)中の(b)の含有量等によって異なるが、(A)の重量に基づいて、耐ブロッキング性と耐熱接着性の観点から好ましくは0〜50%、さらに好ましくは1〜30%である。
【0029】
本発明の感圧接着剤が水性分散体である場合には、水性分散体を製造する工程で使用される乳化剤(F)を含有していてもよい。
乳化剤(F)としては、通常の非イオン性、アニオン性、カチオン性及び両性界面活性剤が使用でき、好ましいのは非イオン性及びアニオン性界面活性剤並びにこれらの併用である。
乳化剤(F)の含有量は、(A)の重量に基づいて、耐ブロッキング性と耐熱接着性の観点から、好ましくは0〜10%、さらに好ましくは0〜5%である。
【0030】
本発明の感圧接着剤には、さらに必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の添加剤(G)を添加してもよい。(G)としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、染料、香料、帯電防止剤、抗菌剤、防かび剤、難燃剤及び湿潤剤が挙げられる。その他の添加剤(G)の具体例としては、特開2006−299256号公報に記載のものが使用できる。(G)の合計の含有量は、(A)の重量に基づいて、耐ブロッキング性と耐熱接着性の観点から好ましくは0〜30%、さらに好ましくは0〜50%である。
【0031】
本発明の感圧接着剤における前記(A)及び(B)〜(G)の好ましい含有割合(%:全体が100%)は、耐ブロッキング性と接着力の観点から、(A)/(B)/(C)/(D)/(E)/(F)/(G)が、好ましくは(20〜60)/(20〜50)/(0〜30)/(0〜30)/(0〜30)/(0〜20)/(0〜20) 、さらに好ましくは(30〜55)/(20〜40)/(15〜30)/(0〜15)/(0〜25)/(0〜20)/(0〜15)、特に好ましくは(40〜50)/(30〜40)/(20〜30)/(0〜10)/(0〜10)/(0〜20)/(0〜10)である。
【0032】
本発明の感圧接着剤の形態としては、前記の各成分からなる塊状物、さらに有機溶剤を含む溶液状及び水性分散媒を含む水性分散体のいずれであってもよいが、作業性及び環境への配慮の観点から、好ましいのは水性分散体である。
【0033】
水性分散体である場合の水性媒体としては、水、親水性有機媒体及びこれらの混合媒体が挙げられる。親水性有機媒体としては、アルコール(メタノール、エタノール及びイソプロパノール等)、ケトン(アセトン及びメチルエチルケトン等)及びカルボン酸エステル(酢酸エチル等)が挙げられる。混合媒体の場合の水の割合は80%以上が好ましい。
また、水性分散体における水性媒体の含有量は感圧接着剤の重量100%のうちの80%以下が好ましく、さらに好ましくは60%以下であり、(A)〜(G)の含有量は好ましくは20%以上、さらに好ましくは40%以上である。
【0034】
本発明の感圧接着剤の製造方法としては、前記の(A)及び(B)並びに必要により含まれる(C)〜(G)を、いずれの順序で混合してもよいが、作業性の観点から好ましいのは、予めブロック共重合体(A)を含有する接着剤基剤を製造しておいて、該接着剤基剤と(B)を混合する方法である。
【0035】
本発明の感圧接着剤が水性分散体である場合の製造方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
(1):まず(A)の水性分散体及び必要により(C)〜(G)を含む接着剤基剤を製造し、これと(B)を混合する方法。
(2):まず、(C)〜(G)のうちのいずれか1種以上の水性分散体を製造し、これに(A)又は(A)の水性分散体を混合して水性分散体状の接着剤基剤を製造し、これに(B)を混合する方法。
(3):(A)及び必要により含まれる(C)〜(G)の全てを、水性分散媒と混合して乳化し、水性分散体状の接着剤基剤を製造し、これに(B)を混合する方法。
(1)〜(3)のうち作業性の観点から好ましいのは、(1)の方法である。
【0036】
前記製造方法(1)〜(2)における(A)の水性分散体、(2)における(C)〜(G)の水性分散体、並びに(3)における(A)〜(G)の水性分散体の製造方法としては、転相乳化法、機械的強制乳化法、高圧乳化法、ペースト法及び同時乳化法等が挙げられる。これらのうち保存安定性及び製造の容易さの観点から好ましいのは転相乳化法、機械的強制乳化法及び高圧乳化法、さらに好ましいのは乳化剤(F)を用いたこれらの乳化法である。なお、水性分散体の製造において、乳化をし易くするために乳化工程の途中で疎水性溶媒を使用(最終的には留去される)してもよく、そのような疎水性溶媒としては、トルエン及びキシレン等が挙げられる。乳化剤(F)としては、前述の通常の界面活性剤が挙げられる。乳化工程における乳化剤(F)の使用量は、被乳化物の重量に基づいて、好ましくは0〜30%、さらに好ましくは5〜28%である。
【0037】
本発明の情報担持シートは、本発明の感圧接着剤から形成されてなる感圧接着剤層を、基体シートの少なくとも片面の少なくとも一部に有するものである。
該情報担持シートは、例えば塗工機(グラビアコーター、エアナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、カーテンコーター又はチャンプレックスコーター等)を用いて、一層あるいは多層に分けて基体シートに塗布し、ドライヤー等で加熱乾燥することによって得られる。また、形成された接着層は、加圧ローラにて約0.1〜1MPaで加圧することにより、耐ブロッキング性をさらに向上させることができる。
基体シートとしては、通常の紙(上質紙及び普通紙等)の他に、合成紙並びにポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン及び塩化ビニル等の合成フィルムを用いることもできる。これらの合成フィルムを基体シートとして用いる場合には、合成フィルムの表面をマット処理又はコロナ処理等の表面処理を施すのが接着力の観点から好ましい。
本発明の感圧接着剤の基体シート面への塗布量(乾燥後、単位はg/m2)は、耐熱接着性の観点から好ましい下限は1、さらに好ましくは3、特に好ましくは5、剥離性及び透明性の観点から好ましい上限は30、さらに好ましくは20、特に好ましくは15である。
【0038】
本発明の情報担持シートは、5MPaの圧力下120±3℃で15分間加熱された前後の剥離強度の保持率が80%以上、好ましくは90%以上である。剥離強度の測定は、JIS Z0237に従い、常温(23℃、60%RH)で行うことができる。
【0039】
本発明の情報担持シートは、三つ折りハガキ、二つ折りハガキ、一部折り畳みタイプのハガキ、あるいは別体同士の重ね合わせハガキ等、各種の重ね合わせの形で、一時的には接着するが、必要に応じて容易に剥離できる見開き面を有する、親展性を持つ隠蔽ハガキ
、印刷用紙、複写用紙、伝票(宅配便等)及び帳票等に好適に利用できる。該情報担持シートは、一旦剥離した場合には微圧での圧接では再接着することがないものである。
【0040】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において、部は重量部、%は重量%を示す。
【0041】
製造例1[ブロック共重合体(A−1)の製造]
オートクレーブ中を充分に窒素置換した後、α−メチルスチレン118部、シクロヘキサン179部、ヘキサン20部及びテトラヒドロフラン4部を仕込んだ。さらにsec−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液7.6mL(sec−ブチルリチウムとして9.9ミリモル部)を仕込み、−11℃で4時間重合を行った。重合開始4時間後のポリα−メチルスチレンのMnをGPCにより測定したところ、11,000であり、α−メチルスチレンの重合転化率は90%であった。次に、イソプレン9.9部を加え30分間攪拌したのち、10℃まで昇温しシクロヘキサン300部を加えて重合溶液を希釈した。続いて重合溶液450.2gを抜き取り、さらにシクロヘキサン800部を加えた。次に、イソプレン348部を加え、50℃で2時間重合を行った後、少量の脱気したメタノールを加えて重合を完結させた。得られた重合溶液を水で十分に洗浄したのち、有機層をアセトン/メタノール混合溶媒に注いでブロック共重合体を沈殿させた。得られたブロック共重合体をメタノールで十分に洗浄し、0.1部の酸化防止剤[「Irganox1010」(チバ・スペシャリティーズ・ケミカル製)]を添加し、60℃で真空乾燥してブロック共重合体(A−1)を得た。(A−1)のMnは448,000であった。
【0042】
製造例2[ブロック共重合体(A−2)の製造]
製造例1と同様にしてポリα−メチルスチレンを製造した後、1,3−ブタジエン10部を加えて30分間攪拌したのち、10℃まで昇温しシクロヘキサン109部を加えて重合溶液を希釈した。続いて重合溶液317部を抜き取り、さらにシクロヘキサン524部を加えた。次に、1,3−ブタジエン128部を加え、50℃で2時間重合を行った。その後、製造例1と同様にして精製し、酸化防止剤を添加し、60℃で真空乾燥してブロック共重合体(A−2)を得た。(A−2)のMnは120,000であった。
【0043】
以下の実施例又は比較例で使用した市販品は以下のものである。
比較のブロック共重合体:
「SIS5200P」[JSR(株)製、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、スチレン含有量15%]
微粒子状充填剤(B):
「ニップシールE220A」[東ソー・シリカ(株)製、シリカ粉末、平均粒子径(メジアン径)1.5μm]
「コーンスターチ」[日本コーンスターチ(株)製、平均粒子径(メジアン径)25μm]
粘着付与樹脂(C):
「アルコンP−100」[荒川化学(株)製、脂環式飽和炭化水素樹脂]
熱可塑性樹脂(D):
「レヂテックスMG−25」[レヂテックス(株)製、変性天然ゴムラテックス、天然ゴム/メチルメタクリレート重量比=75/25、固形分濃度55%]
「ポリシックEM−102」[三洋化成工業(株)製、アクリル共重合体エマルション、固形分濃度56%]
「ニューポールPE−64」[三洋化成工業(株)製、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、Mw3,000]
乳化剤(F):
「イオネットMG−150」[三洋化成工業(株)製、スチレン化クミルフェノールのエチレンオキサイド25モル付加物]
【0044】
<実施例1>
万能混練機に、ブロック共重合体(A−1)27.5部、粘着付与樹脂(C)としての「アルコンP−100」13.8部、熱可塑性樹脂(D)としての「ニューポールPE−64」6.9部、乳化剤(F)としての「イオネットMG−150」6.8部及びトルエン83部を仕込み、90℃で撹拌して溶融した後、65〜70℃に保ち、撹拌しながら水を10分間隔で27.5部ずつ、合計165部投入し予備乳化を行った。得られた予備乳化物を高圧乳化機[T.K.ホモミクサーMARKII、特殊機化工業(株)製]により30MPaの圧力下、150℃で高圧乳化して乳化物を得た。次いで全てのトルエン及び過剰の水を減圧下に留去することにより、水以外の成分が55%の水性分散体100部を得て、これを接着剤基剤(K−1)とした。さらに、(K−1)100部に対して微粒子状充填剤(B)としての「ニップシールE220A」を25部及び「コーンスターチ」を30部並びに水を100部加えて、自転公転式高速混錬脱泡機[「あわとり錬太郎」シンキー(株)製]を使用して攪拌して混合し、本発明の感圧接着剤(X−1)を得た。
【0045】
実施例2〜8、比較例1〜3
表1に記載の成分を表1に記載の部数使用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2〜8及び比較例1〜3の感圧接着剤を得た。
【0046】
感圧接着剤の性能試験
実施例及び比較例で得られた感圧接着剤を、A4サイズの上質紙に、乾燥後の塗布量が8g/m2となるようにバーコーターを用いて塗工し、循風乾燥機を用いて105℃で2分間乾燥させて情報担持シートを作成した。これらの情報担持シートを用いて、以下の性能試験を実施した。結果を表1に示す。
【0047】
<性能試験方法>
(1)接着性
情報担持シートの塗工面同士を重ね合わせ、5MPaの圧力で2秒間圧着し、幅25mm、長さ100mmに裁断して測定試料を得た。この測定試料を用いて、引張試験機で300mm/分の引張速度でT字剥離試験を行い、剥離強度を測定した(測定法はJIS K6854−3に準ずる)。
(2)耐ブロッキング性
情報担持シートの塗工面と非塗工面を重ね合わせ、50℃の恒温乾燥機中で0.1MPaの加圧下で16時間静置した後解圧し、その後23℃、65%RHで3時間静置し、手で剥離してブロッキングの状態を以下の基準に従って評価した。
○:剥離時に抵抗が少なく、容易に剥離できる。
×:剥離時に抵抗が大きく、剥離が困難または上質紙が破れる。
(3)耐老化性
情報担持シートの塗工面に紫外線(光源:15W紫外線ランプ4本、照射距離:20cm)を照射した後、塗工面同士を5MPaの圧力で加圧しても接着しなくなるまでの照射時間を測定し、以下の通り評価した。
◎:72時間以上照射しても接着する。
○:24時間以上72時間未満の照射で接着しなくなる。
×:24時間未満の照射時間で接着しなくなる。
(4)印刷適性
情報担持シートの塗工面にレーザープリンター[「LASER SHOT LBP−1710」、キヤノン(株)製]を用いて文字、罫線等を印刷し、印刷状態を以下の通り判定した。
○:文字、罫線等が鮮明に印刷される。
×:文字、罫線等がかすれたり不鮮明な印刷となる。
(5)耐熱接着性
情報担持シートの塗工面を120±3℃で15分間加熱し、加熱後の塗工面同士を重ね合わせ幅25mm、長さ100mmに裁断した後、5MPaの圧力で2秒間圧着し、幅25mm、長さ100mmに裁断して測定試料を得た。この測定試料を用いて、引張試験機で300mm/分の引張速度でT字剥離試験を行い、加熱後の剥離強度を測定した(測定法はJIS K6854−3に準ずる)。さらに、前記(1)の試験で得られた剥離強度(加熱前の剥離強度)から、下記式によって加熱後の剥離強度保持率(%)を算出し、耐熱接着性を評価した。
加熱後の剥離強度保持率(%)=(加熱後の剥離強度/加熱前の剥離強度)×100
○:加熱後の剥離強度保持率が加熱前の80%以上。
△:加熱後の剥離強度保持率が加熱前の60%以上80%未満。
×:加熱後の剥離強度保持率が加熱前の60%未満。
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の感圧接着剤及び情報担持シートは、親展性を持つ隠蔽ハガキ、印刷用紙、複写用紙、伝票(宅配便等)及び帳票に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン(a)及びホモポリマーのガラス転移温度が105〜205℃であるモノエチレン性化合物(b)を構成単量体とするブロック共重合体(A)と、(A)に対して非親和性を示す微粒子状充填剤(B)を含有する、情報担持シート用の感圧接着剤。
【請求項2】
前記共役ジエン(a)が、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3−ヘキサジエン及び2,4−ヘキサジエンからなる群から選ばれる1種以上であり、前記モノエチレン性化合物(b)がα−及び/又はβ−アルキル置換単環芳香族モノエチレン性化合物である請求項1記載の感圧接着剤。
【請求項3】
さらに、粘着付与樹脂(C)を含有してなる請求項1又は2記載の感圧接着剤。
【請求項4】
さらに、熱可塑性樹脂(D)を含有してなる請求項1〜3のいずれか記載の感圧接着剤。
【請求項5】
共役ジエン(a)及びホモポリマーのガラス転移温度が105〜205℃であるモノエチレン性化合物(b)を構成単量体とするブロック共重合体(A)の水性分散体を含む接着剤基剤と、(A)に対して非親和性を示す微粒子状充填剤(B)を混合して得られる、情報担持シート用の感圧接着剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の感圧接着剤から形成されてなる感圧接着剤層を、基体シートの少なくとも片面の少なくとも一部に有する情報担持シート。
【請求項7】
120±3℃で15分間加熱された前後の剥離強度の保持率が80%以上である請求項6記載の情報担持シート。
【請求項8】
情報担持シートが、親展性をもつ隠蔽ハガキ用である請求項6又は7記載の情報担持シート。

【公開番号】特開2010−24333(P2010−24333A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186625(P2008−186625)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】