説明

感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、それを用いた感活性光線性又は感放射線性膜及びパターン形成方法

【課題】露光光源として電子線、X線又はEUV光を用いるリソグラフィーにおいて、高解像性であり、且つ、ラフネス特性及びパターン形状が良好な感放射線性樹脂組成物の提供。
【解決手段】活性光線又は放射線の照射により分解して酸アニオンを発生するイオン性構造部位を備えた繰り返し単位(A)と、プロトンアクセプター基を有する繰り返し単位(B)と、酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する繰り返し単位(C)を含み、且つ、繰返し単位(A)として、下記一般式(I)〜(III)で表される少なくとも1つの繰返し単位を有する樹脂(P)を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超LSI、高容量マイクロチップ、インプリント用モールド構造体などの製造プロセスで行われるリソグラフィプロセスや、その他のフォトファブリケーションプロセスに好適に用いられる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、それを用いた感活性光線性又は感放射線性膜及びパターン形成方法に関する。更に詳しくは、本発明は、上記プロセスに好ましく適用される電子線、X線又はEUV光用ポジ型レジスト組成物、並びに、及びそれを用いたレジスト膜及びパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィーによる微細加工は、近年、集積回路の高集積化に伴い、数十ナノメートルオーダーの超微細パターン形成が要求されるようになってきている。この要求に伴い、露光波長もg線からi線に、更にKrFエキシマレーザー光に、というように短波長化の傾向が見られる。更には、現在では、エキシマレーザー光以外にも、電子線やX線、あるいはEUV光を用いたリソグラフィーも開発が進んでいる。
【0003】
また、レジスト組成物による微細加工は、直接に集積回路の製造に用いられるだけでなく、近年ではいわゆるインプリント用モールド構造体の作製等にも適用されている(例えば、特許文献1、2、及び非特許文献1を参照)。
【0004】
特にX線やEUV光を用いるリソグラフィーは、次世代若しくは次々世代のパターン形成技術として位置付けられ、高感度、高解像性のポジ型レジストが望まれている。特にウェハー処理時間の短縮化のために高感度化は非常に重要な課題であるが、高感度化を追求しようとすると、解像力の低下のみならず、ラインエッジラフネスの悪化が起こり、これらの特性を同時に満足するレジストの開発が強く望まれている。ここで、ラインエッジラフネスとは、レジストのパターンと基板界面のエッジがレジストの特性に起因して、ライン方向と垂直な方向に不規則に変動するために、パターンを真上から見たときにエッジが凹凸に見えることを言う。特に超微細領域ではラインエッジラフネスは極めて重要な改良課題となっている。高感度と、高解像性、良好なパターン形状、良好なラインエッジラフネスはトレードオフの関係にあり、これを如何にして同時に満足させるかが非常に重要である。
【0005】
このような問題を解決する一つの方法として、ポリマー主鎖又は側鎖に、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する構造部位(以下、「光酸発生基」)を有する樹脂の使用が検討されている(例えば、特許文献3〜10及び非特許文献2を参照)。
【0006】
その中で、例えば、特許文献8や非特許文献2にはヒドロキシスチレン、アダマンチル基含有アクリレート及び光酸発生基含有アクリレートの3元共重合体が記載されている。
【0007】
また、特許文献9は、高解像性、疎密依存性、露光マージンを向上させるべく、高エネルギー線又は熱に感応し、側鎖のフッ素含有末端にスルホン酸を生じる繰り返し単位を含有する樹脂を含有するレジスト組成物を開示している。
【0008】
また、特許文献6は、側鎖に光酸発生基を有する繰り返し単位として、スルホニウムカチオン構造を有する繰り返し単位を含む樹脂と、活性光線又は放射線の照射により、スルホン酸、ビス(アルキルスルホニル)アミド又はトリス(アルキルスルホニル)メチンを発生する化合物とを含有するレジスト組成物を開示している。
【0009】
しかし、特に、電子線、X線又はEUV光を用いるリソグラフィーにおいて、感度、解像性、パターン形状、及び、ラインエッジラフネスの更なる改善が求められているのが実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−158287号公報
【特許文献2】特開2008−162101号公報
【特許文献3】特開平9−325497号公報
【特許文献4】特開平10−221852号公報
【特許文献5】特開2007−197718号公報
【特許文献6】国際公開第06/121096号
【特許文献7】特開2009−93137号公報
【特許文献8】米国特許出願公開第2007/117043号明細書
【特許文献9】特開2008−133448号公報
【特許文献10】特開2006−259509号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ナノインプリントの基礎と技術開発・応用展開−ナノインプリントの基板技術と最新の技術展開―編集:平井義彦 フロンティア出版(2006年6月発行)
【非特許文献2】Proc. of SPIE Vol.6923,692312,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記背景技術に鑑み、特に露光光源として電子線、X線又はEUV光を用いるリソグラフィーにおいて、ピッチ幅が狭くても感度変動が起こりにくく、高解像性であり、且つ、ラフネス特性及びパターン形状が良好なパターン形成を可能とする感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、それを用いた感活性光線性又は感放射線性膜及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、下記に示す本発明を完成するに至った。
【0014】
〔1〕 活性光線又は放射線の照射により分解して酸アニオンを発生するイオン性構造部位を備えた繰り返し単位(A)と、プロトンアクセプター基を有する繰り返し単位(B)と、酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する繰り返し単位(C)を含み、且つ、繰返し単位(A)として、下記一般式(I)〜(III)で表される少なくとも1つの繰返し単位を有する樹脂(P)を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

【0015】
一般式(I)〜(III)中、
は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。
【0016】
は−COOR11、又は−CON(R12)(R13)を表す。R11、R12及びR13は、各々独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。R12とR13は結合して窒素原子とともに環を形成してもよい。
【0017】
、X及びXは、それぞれ独立して単結合または2価の連結基を表す。
【0018】
、A及びAはそれぞれ独立して、フッ素原子を含まない2価の連結基を表す。
【0019】
はオニウムカチオンを表す。
【0020】
〔2〕 前記A、A及びAが、炭素原子および水素原子のみからなるアルキレン基またはアリーレン基である〔1〕に記載の組成物。
【0021】
〔3〕 前記A、A及びAが、無置換のフェニレン基である〔1〕又は〔2〕に記載の組成物。
【0022】
〔4〕 繰返し単位(B)が有する前記プロトンアクセプター部位が、アミン、アニリン、または含窒素複素環構造である〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の組成物。
【0023】
〔5〕 酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する繰り返し単位(C)が、下記一般式(V)又は一般式(VI)で表される繰り返し単位である、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の組成物。
【化2】

【0024】
一般式(V)中、
51、R52及びR53は、各々独立に、水素原子、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。R52はLと結合して環を形成していてもよく、その場合のR52はアルキレン基を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表し、R52と環を形成する場合には3価の連結基を表す。
54はアルキル基を表し、R55及びR56は、各々独立に、水素原子、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基又は1価の芳香環基を表す。但し、R55とR56が同時に水素原子であることはない。R55及びR56は互いに結合して環を形成してもよい。
【0025】
一般式(VI)中、
61、R62及びR63は、各々独立に、水素原子もしくはアルキル基を表す。
【0026】
Arは、2価の芳香環基を表す。
Yは、複数存在する場合は各々独立に、酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を表す。
mは、1〜4の整数を表す。
【0027】
〔6〕 繰り返し単位(C)が一般式(VI)で表される繰り返し単位であり、かつ−O−Y基がアセタール構造を形成する基である〔5〕に記載の組成物。
【0028】
〔7〕 繰返し単位(A)が一般式(I)で表される繰返し単位である〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の組成物。
【0029】
〔8〕 X、X及びXが、単結合、もしくは、アリーレン基、アルキレン基、シクロアルキレン基、−O−、−SO−、−CO−、−NR21−、またはこれらを組み合わせた2価の連結基を表す〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の組成物。ここで、R21はアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表す。
【0030】
〔9〕 前記Zがスルホニウムカチオンである〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の組成物。
【0031】
〔10〕 繰返し単位(B)が有する前記プロトンアクセプター部位が、含窒素複素環構造である〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載の組成物。
【0032】
〔11〕 樹脂(P)が、更に、下記一般式(IV)で表される繰り返し単位(D)を有する、〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の組成物。
【化3】

【0033】
一般式(IV)中、
41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。またR42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42はアルキレン基を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
Arは、2価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には3価の芳香環基を表す。
nは、1〜4の整数を表す。
【0034】
〔12〕 〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の組成物を用いて形成された感活性光線性又は感放射線性膜。
〔13〕 〔12〕に記載の感活性光線性又は感放射線性膜を露光すること、露光した膜を現像することを含むパターン形成方法。
〔14〕 露光光源が電子線、X線又はEUV光である〔13〕に記載のパターン形成方法。
【0035】
〔15〕 〔13〕又は〔14〕に記載のパターン形成方法を含む半導体デバイスの製造方法。
〔16〕 〔15〕に記載の方法により製造された半導体デバイス。
【0036】
本発明は、更に、下記構成であることが好ましい。
〔17〕 電子線、X線又はEUV光により露光される、上記〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔18〕 露光光源として、電子線、X線又はEUV光が用いられる、上記〔13〕に記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、特に露光光源として電子線、X線又はEUV光を用いるリソグラフィーにおいて、高感度、高解像性、良好な形状、及び、良好なラインエッジラフネスを同時に満足する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、それを用いた感活性光線性又は感放射線性膜及びパターン形成方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも含有するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも含有するものである。
【0039】
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、軟X線、電子線等を意味する。また、本発明において光とは、活性光線又は放射線を意味する。
【0040】
また、本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、EUV光などによる露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
【0041】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、活性光線又は放射線の照射により分解して樹脂の側鎖に酸アニオンを発生するイオン性構造部位を備えた、後述する一般式(I)〜(III)の少なくともいずれかで表される繰り返し単位(A)と、プロトンアクセプター部位を有する繰り返し単位(B)と、酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する繰り返し単位(C)を含む樹脂(P)を含有する。これにより、高感度、高解像性、良好な形状、及び、優れたラインエッジラフネスを同時に満足することが可能となる。
【0042】
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、例えばポジ型の組成物であり、典型的にはポジ型のレジスト組成物である。以下、この組成物の構成を説明する。
【0043】
[1]樹脂(P)
〔繰り返し単位(A)〕
繰り返し単位(A)は、活性光線又は放射線の照射により分解して樹脂の側鎖に酸アニオンを発生するイオン性構造部位を備えた繰り返し単位であり、下記一般式(I)〜(III)のいずれかで表される繰返し単位である。
【化4】

【0044】
一般式(I)〜(III)中、
は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。
は−COOR11、又は−CON(R12)(R13)を表す。R11、R12及びR13は、各々独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。R12とR13は結合して窒素原子とともに環を形成してもよい。
、X及びXは、それぞれ独立して単結合または2価の連結基を表す。
、A及びAはそれぞれ独立して、フッ素原子を含まない2価の連結基を表す。
はオニウムカチオンを表す。
【0045】
一般式(I)〜(III)について詳細に説明する。
一般式(I)において、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。Rがアルキル基である場合は、直鎖状、分岐上のいずれでもよく、炭素数は1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。Rがシクロアルキル基である場合は、5員環もしくは6員環であることが好ましい。炭素数は3〜10が好ましく、5〜8がより好ましい。Rがアルコキシメチル基である場合は、炭素数1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、メトキシメチル基であることが特に好ましい。ハロゲン原子である場合は、フッ素、塩素、臭素のいずれかであることが好ましい。
【0046】
の具体的な基としては、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基であることが好ましく、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基であることがより好ましく、水素原子またはメチル基であることが特に好ましい。
【0047】
一般式(II)において、Rは−COOR11、又は−CON(R12)(R13)を表す。R11、R12及びR13は、各々独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。R11、R12及びR13がアルキル基、シクロアルキル基である場合の好ましい例は、R、Rとして先に説明したアルキル基、シクロアルキル基と同様である。アルケニル基としては、炭素数2〜10が好ましく、2〜6がより好ましく、エテニル、プロペニル基などが挙げられる。アリール基である場合は炭素数6〜12が好ましく、6〜10がより好ましく、フェニル基、ナフチル基、p−メトキフェニル基などが挙げられる。アラルキル基である場合は、炭素数7〜12が好ましく、7〜10がより好ましく、具体的にはベンジル基、2−フェニルエチル基などが挙げられる。R12とR13は結合して窒素原子とともに環を形成してもよく、この場合は5員環または6員環であることが好ましい。形成する含窒素環は芳香族でも非芳香族でもよく、例えばピペリジン環、ピロリジン環、ピロール環などが挙げられる。Rはカルボキシル基またはアルコキシカルボニル基であることが好ましい。
【0048】
、X及びXは、上述の通り、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、アリーレン基、アルキレン基、シクロアルキレン基、−O−、−SO−、−CO−、−NR21−、またはこれらを組み合わせた2価の連結基が挙げられる。X、X及びXが2価の連結基である場合、総炭素数が20以下のものが好ましい。ここで、R21は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表す。R21としてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基の好ましい例はR又はRと同様である。
【0049】
〜Xのアルキレン基としては、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、及びドデカニレン基等の炭素数1〜12のものが挙げられる。
【0050】
〜Xのシクロアルキレン基としては、好ましくは、シクロペンチレン基及びシクロヘキシレン基等の炭素数5〜8のものが挙げられる。
〜Xのアリーレンとしては、好ましくは、フェニレン基及びナフチレン基等の炭素数6〜14のものが挙げられる。
【0051】
これらアルキレン基、シクロアルキレン基及びアリーレン基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基が挙げられる。
【0052】
〜Aは、上述したように、それぞれ独立して、フッ素原子を含まない2価の連結基を表す。
〜Aがフッ素原子を含む場合、フッ素原子は強い電子求引性基であるため、発生するスルホン酸の酸の強度が上がり過ぎ、ネガ化(発生した酸により樹脂の一部が架橋反応を起こし溶解性が低下する現象)を引き起こし、感度、解像力、ラインエッジラフネスなどに悪影響を及ぼすことがある。この傾向は、一般式(C)に含有され、−OY基として表される酸分解性基がアセタールである場合にとくに問題となる。従って、A〜Aにより表される2価の連結基は、F原子のほかにも、強い電子求引性基を有さないことが好ましく、炭素原子および水素原子のみからなることがより好ましい。
【0053】
2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基等が挙げられる。
アルキレン基としては、炭素数1〜6であることが好ましく、具体的には例えば、メチレン、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。
【0054】
アリーレン基としては、炭素数6〜10であることが好ましく、具体的には例えば、フェニレン、ナフチレンなどが挙げられる。
【0055】
シクロアルキレン基としては、炭素数3〜8であることが好ましく、具体的には例えば、シクロペンチレン、シクロへキシレン基などが挙げられる。
【0056】
2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基であることが好ましく、アリーレン基であることがより好ましく、無置換のフェニレン基であることが更に好ましい。
【0057】
なお、本明細書において「強い電子求引性基」とは、A〜Aが、例えば、アルキレンである場合、アリーレンである場合ともに「ハメットのσm値が+0.2以上の基」と定義する。
【0058】
により表わされるオニウムカチオンとしては、スルホニウムカチオンあるいはヨードニウムカリオンが好ましく、一態様において、スルホニウムカチオンであることがより好ましい。Zにより表わされるスルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオンは、例えば、下記一般式(ZI)あるいは(ZII)で表される構造が好ましい。
【化5】

【0059】
上記一般式(ZI)において、R201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。R201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
【0060】
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造(縮合環を含む)を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)等を挙げることができる。
【0061】
201、R202及びR203としての有機基としては、例えば、一般式(ZI)で表わされる基の好ましい基として以下に説明する(ZI−1)、(ZI−2)、(ZI−3)で表される基における対応する基を挙げることができる。
【0062】
(ZI−1)基は、上記一般式(ZI)におけるR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウムをカチオンとする基である。
【0063】
201〜R203の全てがアリール基でもよいし、R201〜R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基又は1価の脂肪族炭化水素環基でもよい。
【0064】
例えば、トリアリールスルホニウム、ジアリールアルキルスルホニウム、アリールジアルキルスルホニウム、ジアリールシクロアルキルスルホニウム、アリールジシクロアルキルスルホニウムに相当する基を挙げることができる。
【0065】
アリールスルホニウムにおけるアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。アリール基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン等の構造が挙げられる。
【0066】
アリールスルホニウムが2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
【0067】
アリールスルホニウムが必要に応じて有しているアルキル基又は1価の脂肪族炭化水素環基は、炭素数1〜15の直鎖又は分岐アルキル基及び炭素数3〜15の1価の脂肪族炭化水素環基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0068】
201〜R203のアリール基、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、1価の脂肪族炭化水素環基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数3〜12の1価の脂肪族炭化水素環基、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基は、3つのR201〜R203のうちのいずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0069】
(ZI−1)で表わされる基の一態様として、下記一般式(ZI−1A)で表される構造が挙げられる。
【化6】

【0070】
一般式(ZI−1A)中、
1a〜R13aは、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、R1a〜R13aのうち少なくとも1つはアルコール性水酸基を含む置換基であることが好ましい。
Zaは、単結合又は2価の連結基である。
アルコール性水酸基とは、鎖状又は環状アルキル基の炭素原子に結合した水酸基を表す。
【0071】
1a〜R13aがアルコール性水酸基を含む置換基である場合、R1a〜R13aは、−W−Yで表される。ただし、Yは、水酸基で置換された鎖状又は環状アルキル基であり、Wは、単結合又は2価の連結基である。
【0072】
Yの鎖状又は環状アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボニル基、ボロニル基等を挙げることができ、好ましくはエチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基であり、更に好ましくはエチル基、プロピル基、イソプロピル基である。Yは、特に好ましくは−CHCHOH構造を含有する。
【0073】
Wとして好ましくは単結合、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基における任意の水素原子を単結合で置き換えた二価の基であり、更に好ましくは単結合、アシルオキシ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基における任意の水素原子を単結合で置き換えた二価の基である。
【0074】
1a〜R13aがアルコール性水酸基を含む置換基である場合、含まれる炭素数は好ましくは2〜10個であり、更に好ましくは2〜6個であり、特に好ましくは2〜4個である。
【0075】
1a〜R13aとしてのアルコール性水酸基を含む置換基は、アルコール性水酸基を2つ以上有しても良い。R1a〜R13aとしてのアルコール性水酸基を含む置換基の有するアルコール性水酸基の数としては1個から6個であり、好ましくは1個から3個であり、更に好ましくは1個である。
【0076】
一般式(ZI−1A)で表される化合物に含まれるアルコール性水酸基の数は、R1a〜R13aすべてあわせて1個から10個であり、好ましくは1個から6個であり、更に好ましくは1個から3個である。
【0077】
1a〜R13aがアルコール性水酸基を含有しない場合、R1a〜R13aは、好ましくは水素原子又はハロゲン原子、アルキル基(1価の脂肪族炭化水素環基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、シリル基、ウレイド基である。
【0078】
1a〜R13aがアルコール性水酸基を含有しない場合、R1a〜R13aは、更に好ましくは水素原子又はハロゲン原子、アルキル基(1価の脂肪族炭化水素環基を含む)、シアノ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、スルファモイル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基である。
【0079】
更に、R1a〜R13aがアルコール性水酸基を含有しない場合、R1a〜R13aは、特に好ましくは水素原子又はアルキル基(1価の脂肪族炭化水素環基を含む)、ハロゲン原子、アルコキシ基である。
【0080】
また、R1a〜R13aのうちの隣接する2つが、共同して環(芳香族、又は非芳香族の炭化水素環、又は複素環。これらは、更に組み合わされて多環縮合環を形成することができる。例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、フェナジン環、が挙げられる。)を形成することもできる。
【0081】
一般式(ZI−1A)中、R1a〜R13aのうち少なくとも1つはアルコール性水酸基を含み、好ましくは、R〜R13のうち少なくとも1つがアルコール性水酸基を含む。
【0082】
Zaは、単結合又は2価の連結基を表し、2価の連結基としては例えば、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルアミノ基、スルホニルアミド基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、ジスルフィド基、アシル基、アルキルスルホニル基、−CH=CH−、−C≡C−、アミノカルボニルアミノ基、アミノスルホニルアミノ基、等であり、置換基を有しても良い。これらの置換基としては上のR1a〜R13aに示した置換基と同様である。Zaとして好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、−CH=CH−、−C≡C−、アミノカルボニルアミノ基、アミノスルホニルアミノ基など電子求引性を持たない置換基であり、更に好ましくは単結合、エーテル基、チオエーテル基であり、特に好ましくは単結合である。
【0083】
次に、(ZI−2)基について説明する。
(ZI−2)基は、一般式(ZI)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す基である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
【0084】
201〜R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基、アリル基、ビニル基であり、更に好ましくは直鎖又は分岐の2−オキソアルキル基、2−オキソ脂肪族炭化水素環基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖又は分岐2−オキソ脂肪族炭化水素環基である。
【0085】
201〜R203のアルキル基及び脂肪族炭化水素環基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチルル基、ノルボニル基)を挙げることができる。アルキル基として、より好ましくは2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基を挙げることができる。脂肪族炭化水素環基として、より好ましくは、2−オキソ脂肪族炭化水素環基基を挙げることができる。
【0086】
2−オキソアルキル基は、直鎖又は分岐のいずれであってもよく、好ましくは、上記のアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
2−オキソ脂肪族炭化水素環基は、好ましくは、上記の脂肪族炭化水素環基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
【0087】
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
【0088】
201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0089】
次に、(ZI−3)基について説明する。
(ZI−3)基とは、以下の一般式(ZI−3)で表される基であり、フェナシルスルフォニウム構造を有する基である。
【化7】

【0090】
一般式(ZI−3)に於いて、R1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基又は1価の脂肪族炭化水素環基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基、アリル基又はビニル基を表す。
【0091】
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRとRは、それぞれ結合して環構造を形成しても良く、この環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。R1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRとRが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。
【0092】
1c〜R7cとしてのアルキル基は、直鎖又は分岐のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜20個のアルキル基、好ましくは炭素数1〜12個の直鎖及び分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐プロピル基、直鎖又は分岐ブチル基、直鎖又は分岐ペンチル基)を挙げることができる。
【0093】
また、R1c〜R7cとしての1価の脂肪族炭化水素環基としては、単環型あるいは多環型のいずれであってもよく、例えば炭素数3〜8個の1価の脂肪族炭化水素環基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
【0094】
1c〜R5cとしてのアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、直鎖又は分岐ペントキシ基)、炭素数3〜8の環状アルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)を挙げることができる。
【0095】
好ましくは、R1c〜R5cの内のいずれかが直鎖又は分岐アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基又は直鎖、分岐若しくは環状アルコキシ基であり、更に好ましくは、R1c〜R5cの炭素数の和が2〜15である。これにより、より溶剤溶解性が向上し、保存時にパーティクルの発生が抑制される。
【0096】
及びRとしてのアルキル基及び1価の脂肪族炭化水素環基は、R1c〜R7cにおけると同様のアルキル基及び1価の脂肪族炭化水素環基を挙げることができ、2−オキソアルキル基、2−オキソ脂肪族炭化水素環基、アルコキシカルボニルメチル基がより好ましい。
【0097】
2−オキソアルキル基及び2−オキソ脂肪族炭化水素環基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基及び脂肪族炭化水素環基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基については、R1c〜R5cにおけると同様のアルコキシ基を挙げることができる。
【0098】
及びRは、好ましくは炭素数4個以上のアルキル基又は1価の脂肪族炭化水素環基であり、より好ましくは6個以上、更に好ましくは8個以上のアルキル基又は1価の脂肪族炭化水素環基である。
【0099】
次に、一般式(ZII)について説明する。
前記一般式(ZII)中、R204及びR205は、各々独立に、アリール基、アルキル基又は1価の脂肪族炭化水素環基を表す。
【0100】
204及びR205のアリール基、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基の具体例としては、前述の(ZI−1)基で挙げたアリール基、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基と同様のものを挙げることができる。
【0101】
204及びR205のアリール基、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。R204及びR205のアリール基、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、1価の脂肪族炭化水素環基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
【0102】
一般式(I)、一般式(II)、及び、一般式(III)の繰り返し単位について、活性光線又は放射線の照射によりZにより表されるカチオンが脱離して生成するスルホン酸単位として、以下に例示する。
【化8】

【0103】
一般式(I)、一般式(II)、及び、一般式(III)中のZにより表されるオニウムカチオンの具体例を以下に示す。
【化9】

【0104】
【化10】

【0105】
【化11】

【0106】
繰り返し単位(A)の含有率は、樹脂(P)中の全繰り返し単位に対して、3〜20モル%の範囲が好ましく、より好ましくは5〜15モル%の範囲であり、更に好ましくは8〜12モル%の範囲である。
【0107】
〔繰り返し単位(B)〕
繰り返し単位(B)は、プロトンアクセプター基を側鎖に有する繰り返し単位である。
【0108】
プロトンアクセプター基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基或いは孤立電子対を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基や、π共役の寄与が少ない孤立電子対をもった窒素原子を有する官能基を挙げることができる。これらのうち、π共役の寄与が少ない孤立電子対をもった窒素原子を有する官能基が特に好ましい。π共役の寄与が少ない孤立電子対を有する窒素原子としては、例えば、下記一般式に示す部分構造を有する窒素原子を挙げることができる。
【化12】

【0109】
このような窒素原子を有する構造としては、好ましくは三級アミン、二級アミン、一級アミン、含窒素複素環構造(ピリジン、イミダゾール、ピラジン、アニリン構造など)を挙げることができ、含窒素複素環構造が特に好ましい。
【0110】
樹脂(P)が繰り返し単位(B)を含有することにより、プロトンアクセプター基が樹脂(P)の側鎖に担持されるため、特に、感度と解像性とが優れる。これは、活性光線又は放射線の照射により発生する酸(以下、「発生酸」という。)とアミンの拡散が抑えられることによって露光部の酸濃度が相対的に増加し、更に露光部と未露光部での脱保護コントラストが大きくなったためであると推察される。
【0111】
また、発生酸とアミンの拡散が抑制されることにより、ラインエッジラフネスも改善され、更に、アミンの偏在が抑制されるため、パターン形状がT−topやテーパー形状となることを抑制することが可能となる。またT−top形状となった場合は基板との面積が小さくなりパターン倒れによる解像度低下を引きおこすため、本発明の樹脂(P)は密着性向上による解像性向上効果を有する。
【0112】
繰り返し単位(B)が有するプロトンアクセプター基は含窒素複素環基であることが好ましい。含窒素複素環基は脂肪族環であっても芳香族環あってもよい。また、この含窒素複素環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。また、窒素原子を複数含んでいてもよく、更に、窒素原子以外のヘテロ原子(例えば、酸素原子、硫黄原子等)を含んでいてもよい。
【0113】
具体的な含窒素複素環基としては、ピリジン、ピロール、イミダゾール、ピリミジン、ピラゾ−ル、ピラジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、イミダゾリン等が挙げられる。中でも、ピリジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾ−ル、プリンが好ましく、ピリジン、イミダゾールが特に好ましい。
【0114】
繰り返し単位(B)は、一態様において、ポリマー主鎖に下記一般式(B1)で表される部分構造が結合した繰り返し単位であり得る。
【化13】

【0115】
一般式(B1)中、
Nを含む環構造は、含窒素複素環基を表す。
は、単結合又は連結基を表す。
*は、樹脂(P)の主鎖との結合部位を表す。
【0116】
一般式(B1)中の含窒素複素環基は、先に述べた含窒素複素環基と同義であり、同様の具体例が挙げられる。
により表される2価の連結基としては、上述した一般式(I)〜(III)中のX〜Xとしての2価の連結基と同様の具体例が挙げられる。
繰り返し単位(B)の具体例としては以下のようなものが挙げられる。
【化14】

【0117】
【化15】

【0118】
本発明の樹脂(P)中における繰り返し単位(B)の含有率は、全繰り返し単位に対して、0.1〜30モル%の範囲が好ましく、0.5〜5モル%の範囲がより好ましく、1〜4モル%の範囲が特に好ましい。
【0119】
〔繰り返し単位(C)〕
樹脂(P)は、酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基(以下、「酸分解性基」という。)を含む繰り返し単位(C)を含有する。
【0120】
アルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボキシル基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
【0121】
好ましいアルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボキシル基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホン酸基が挙げられる。
【0122】
酸分解性基として好ましい基は、これらのアルカリ可溶性基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
【0123】
酸で脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R01)(R02)(OR39)、−C(=O)−O−C(R36)(R37)(R38)、−C(R01)(R02)−C(=O)−O−C(R36)(R37)(R38)、−CH(R36)(Ar)等を挙げることができる。
【0124】
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基、1価の芳香環基、アルキレン基と1価の芳香環基を組み合わせた基又はアルケニル基表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
【0125】
01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基、1価の芳香環基、アルキレン基と1価の芳香環基を組み合わせた基又はアルケニル基を表す。
【0126】
Arは、1価の芳香環基を表す。
【0127】
36〜R39、R01及びR02のアルキル基は、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、へキシル基、オクチル基等を挙げることができる。
【0128】
36〜R39、R01及びR02の1価の脂肪族炭化水素環基は、単環型でも、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3〜8の脂肪族炭化水素環基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基等を挙げることができる。多環型としては、炭素数6〜20の脂肪族炭化水素環基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、アンドロスタニル基等を挙げることができる。なお、脂肪族炭化水素環基中の炭素原子の一部が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0129】
36〜R39、R01及びR02及びArの1価の芳香環基は、炭素数6〜10の1価の芳香環基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等のヘテロ環を含む2価の芳香環基を挙げることができる。
【0130】
36〜R39、R01及びR02のアルキレン基と1価の芳香環基を組み合わせた基としては、炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
【0131】
36〜R39、R01及びR02のアルケニル基は、炭素数2〜8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロへキセニル基等を挙げることができる。
【0132】
36とR37とが、互いに結合して形成する環は、単環型でも、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3〜8の脂肪族炭化水素環構造が好ましく、例えば、シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロへキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造等を挙げることができる。多環型としては、炭素数6〜20の脂肪族炭化水素環構造が好ましく、例えば、アダマンタン構造、ノルボルナン構造、ジシクロペンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等を挙げることができる。なお、脂肪族炭化水素環構造中の炭素原子の一部が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0133】
36〜R39、R01、R02、及びArとしての上記各基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等を挙げることができ、置換基の炭素数は8以下が好ましい。
【0134】
繰り返し単位(C)は、一態様において、下記一般式(V)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【化16】

【0135】
一般式(V)中、
51、R52、R53は、各々独立に、水素原子、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
【0136】
は、単結合又は2価の連結基を表す。
54はアルキル基を表し、R55及びR56は、各々独立に、水素原子、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基又は1価の芳香環基を表す。但し、R55とR56が同時に水素原子であることはない。R55及びR56は互いに結合して環を形成してもよい。
【0137】
一般式(V)において、R52はLと結合して環(好ましくは、5員若しくは6員環)を形成していてもよく、その場合のR52はアルキレン基を表わし、Lは3価の連結基を表す。
55及びR56は互いに結合して環を形成してもよい。
一般式(V)について、更に詳細に説明する。
一般式(V)におけるR51〜R53のアルキル基としては、好ましくは置換基を有していてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基など炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基、特に好ましくは炭素数3以下のアルキル基が挙げられる。
【0138】
アルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R51〜R53におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
【0139】
1価の脂肪族炭化水素環基としては、単環型でも、多環型でもよい1価の脂肪族炭化水素環基が挙げられる。好ましくは置換基を有していても良いシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基のような炭素数3〜8個で単環型の1価の脂肪族炭化水素環基が挙げられる。
【0140】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が特に好ましい。
【0141】
上記各基における好ましい置換基としては、例えば、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等を挙げることができ、置換基の炭素数は8以下が好ましい。
【0142】
またR52がアルキレン基を表す場合、アルキレン基としては、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8のアルキレン基が挙げられる。炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜2のアルキレン基が特に好ましい。
【0143】
式(V)におけるR51、R53としては、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子がより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基(−CF)、ヒドロキシメチル基(−CH−OH)、クロロメチル基(−CH−Cl)、フッ素原子(F)が特に好ましい。R52としては、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルキレン基(Qと環を形成)がより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基(−CF)、ヒドロキシメチル基(−CH−OH)、クロロメチル基(−CH−Cl)、フッ素原子(F)、メチレン基(Lと環を形成)、エチレン基(Lと環を形成)が特に好ましい。
【0144】
で表される2価の連結基としては、アルキレン基、2価の芳香環基、−COO−L−、−O−L−、これらの2つ以上を組み合わせて形成される基等が挙げられる。ここで、Lはアルキレン基、2価の脂肪族炭化水素環基、2価の芳香環基、アルキレン基と2価の芳香環基を組み合わせた基を表し、フッ素原子などの置換基で更に置換されていてもよい。
【0145】
は、単結合、−COO−L−(Lは炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、メチレン基、プロピレン基がより好ましい。)又は2価の芳香環基で表される基が好ましい。
【0146】
54、R55、R56のアルキル基としては炭素数1〜20のものが好ましく、より好ましくは炭素数1〜10のものであり、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが特に好ましい。
【0147】
55、56で表される1価の脂肪族炭化水素環基としては、炭素数3〜20のものが好ましく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環性のものであってもよいし、ノルボニル基、アダマンチル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、等の多環性のものであってもよい。
【0148】
55、56で表されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、又は、フルオレン基等の炭素数6〜20のものが好ましく、炭素数6〜15のものがより好ましい。R55,R56はともにアルキル基であるか、あるいは一方が水素原子でもう一方がアリール基であることが好ましい。
【0149】
一般式(V)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの合成方法としては、一般的な重合性基含有エステルの合成法を適用することが可能であり、特に限定されることはない。
【0150】
以下に、一般式(V)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化17】

【0151】
【化18】

【0152】
【化19】

【0153】
【化20】

【0154】
【化21】

【0155】
中でも、下記に示す繰り返し単位がより好ましい。
【化22】

【0156】
また、繰り返し単位(C)は、他の態様において、下記一般式(VI)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【化23】

【0157】
一般式(VI)中、
61、R62、R63は、各々独立に、水素原子もしくはアルキル基を表す。
Arは、2価の芳香環基を表す。
Yは、複数存在する場合は各々独立に、酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を表す。
mは、1〜4の整数を表す。
【0158】
一般式(VI)について、更に詳細に説明する。
61〜R63がアルキル基である場合、直鎖状、分岐上いずれでもよく、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜6であることがより好ましく、メチル基であることがとくに好ましい。
Arは置換基を有していてもよい2価の芳香環基を表し、該芳香環としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環のいずれかが好ましく、ベンゼン環であることが特に好ましい。Arが置換基を有する場合、具体的にはアルキル基、アルコキシ基、分岐状アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、アリール基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、チオフェンカルボニルオキシ基、チオフェンメチルカルボニルオキシ基、および、ピロリドン残基等のヘテロ環残基があげられる。Arとして最も好ましくは、無置換のフェニレン基である。
【0159】
酸分解性基Yの例としては、前記したように−C(R36)(R37)(R38)、−C(R01)(R02)(OR39)、−C(=O)−O−C(R36)(R37)(R38)、−C(R01)(R02)−C(=O)−O−C(R36)(R37)(R38)、−CH(R36)(Ar)等を挙げることができる。式(VI)の酸分解性基としてはこの中で−C(R01)(R02)(OR39)であること、すなわち酸分解性基がアセタール構造であることが好ましい。
以下に一般式(VI)で表される繰返し単位の具体例を挙げるが、これらに限定されない。
【化24】

【0160】
本発明における樹脂(P)に含まれる繰り返し単位(C)としては、式(V)または(VI)で表される単位が1種以上含まれることが好ましく、式(VI)で表されかつ−O−Y基がアセタール構造を形成する基である繰返し単位が1種以上含まれることが特に好ましい。アセタール構造を有する場合はパターンの倒れを引き起こしにくい傾向にあるため、解像性の観点で有利である。
【0161】
本発明の樹脂(P)中における繰り返し単位(C)の含有率は、全繰り返し単位に対して、3〜90モル%の範囲が好ましく、15〜75モル%の範囲がより好ましく、30〜70モル%の範囲が特に好ましい。
また、樹脂(P)中の繰り返し単位(A)と繰り返し単位(C)との比率(繰り返し単位(A)のモル数/繰り返し単位(C)のモル数)は、0.04〜1.0が好ましく、0.05〜0.9がより好ましく、0.06〜0.8が特に好ましい。
【0162】
本発明の樹脂(P)は、前記繰り返し単位(A)、繰り返し単位(B)及び繰り返し単位(C)とは異なる、芳香環基を有する繰り返し単位を有していることが好ましい。そのような芳香環基を有する繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(VII)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【化25】

【0163】
式中、R41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。R42はQと結合して環(好ましくは5員又は6員環)を形成していてもよく、その場合のR42はアルキレン基を表す。
は単結合又は2価の連結基を表す。
Qは芳香環基を含有する基を表す。
【0164】
一般式(VII)について更に詳細に説明する。
【0165】
式(VII)におけるR41、R42、R43のアルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基、ハロゲン原子及びアルコキシカルボニル基の具体例としては、前記一般式(V)のR51、R52及びR53において説明した具体例と同様のものを挙げることができる。
【0166】
またR42がアルキレン基を表す場合、アルキレン基としては、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8のアルキレン基が挙げられる。炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜2のアルキレン基が特に好ましい。
【0167】
式(VII)におけるR41、R43としては、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子がより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基(−CF)、ヒドロキシメチル基(−CH−OH)、クロロメチル基(−CH−Cl)、フッ素原子(C)が特に好ましい。R42としては、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルキレン基(Qと環を形成)がより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基(−CF)、ヒドロキシメチル基(−CH−OH)、クロロメチル基(−CH−Cl)、フッ素原子(C)、メチレン基(Qと環を形成)、エチレン基(Qと環を形成)が特に好ましい。
【0168】
で表される2価の連結基の具体例としては、後述する一般式(IV)中のXで例示する基と同様の基が挙げられる。
【0169】
一般式(VII)において、Qは好ましくは炭素数1〜20の置換又は無置換の芳香族基である。Qで表される芳香族基としては例えば以下のものが挙げられる。
【0170】
フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、トリフェニレニル基、ナフタセニル基、ビフェニル基、ピロリニル基、フラニル基、チオフェニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェンニル基、イソベンゾフラニル基、キノリジル基、キノリニル基、フタラジル基、ナフチリジル基、キノキサリル基、キノキサゾリル基、イソキノリニル基、カルバゾリル基、アクリジル基、フェナントロリル基、チアントレニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチリル基、フェノチアジル基、フェナジル基。これらの中で、好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましいものとしては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントリル基であり、更に好ましくはフェニル基である。
【0171】
一般式(VII)は、一形態において、R41、R42及びR43が水素原子であることが好ましく、下記一般式(VII−1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【化26】

【0172】
Qは芳香環基を含有する基を表す。
一般式(VII)で表される繰り返し単位としては、下記一般式(IV)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(D)」ともいう)より好ましい。
【化27】

【0173】
ここで、R41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。またR42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42はアルキレン基を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
Arは、2価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には3価の芳香環基を表す。
nは、1〜4の整数を表す。
【0174】
式(IV)におけるR41、R42、R43のアルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基、ハロゲン原子、及びアルコキシカルボニル基及びこれらの基が有し得る置換基の具体例としては、一般式(VII)における各基と同様の具体例が挙げられる。
【0175】
で表される2価の連結基としては、例えば、−COO−、−CONH−、−OCO−、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−NH−、アルキレン基、シクロアルキレン基及びアルケニレン基が挙げられる。中でも、−COO−、−CONH−、−OCO−、−CO−、−S−、−SO−又は−SO−が好ましく、−COO−、−CONH−、−SO−又は−SO−がより好ましい。
【0176】
Arで表される2価の芳香環基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基などの炭素数6〜18のアリーレン基、あるいは、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、チアジアゾール、チアゾール等のヘテロ環を含む2価の芳香環基を好ましい例として挙げることができる。
【0177】
上記各基における好ましい置換基としては、上述した繰り返し単位(A)としての一般式(I)においてR11〜R13で挙げたアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0178】
Arとしては、置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリーレン基がより好ましく、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基が特に好ましい。
【0179】
一般式(VII)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの合成方法としては、特に限定されることはないが、例えばJ.Med.Chem., vol.34(5), 1675−1692(1991)、同vol.35(25), 4665−4675(1992)、J.Org.Chem. vol.45(18), 3657−3664(1980)、Adv.Synth.Catal. vol.349(1−2), 152−156(2007)、J.Org.Chem. vol.28, 1921−1922(1963)、Synth.Commun. vol.28(15), 2677−2682(1989)及びこれらに引用されている文献等に記載の重合性炭素−炭素二重結合含有芳香族化合物の合成法を参考に合成することができる。
【0180】
以下に、一般式(VII)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。式中、aは0〜2の整数表す。
【化28】

【0181】
【化29】

【0182】
樹脂(P)中の一般式(VII)で表される繰り返し単位含有率は、全繰り返し単位に対して、5〜90モル%の範囲が好ましく、より好ましくは10〜80モル%の範囲であり、更に好ましくは20〜70モル%の範囲である。一般式(VII)で表される繰り返し単位は1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよいが、少なくとも一般式(IV)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0183】
本発明において、一般式(VII)で表される繰り返し単位の含有率(モル%)は、前記繰り返し単位(C)の含有率と同等又はそれ以上であることが好ましい。
【0184】
〔繰り返し単位(E)〕
樹脂(P)は、更に、アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位(E)を有していてもよい。
【0185】
アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基としては、ラクトン構造、フェニルエステル構造などが挙げられる。
【0186】
繰り返し単位(E)としては、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位がより好ましい。
【化30】

【0187】
一般式(AII)中、
Rbは、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよいアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を表す。
【0188】
Rbのアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。Rbのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。Rbとして、好ましくは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基であり、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0189】
Abは、単結合、アルキレン基、単環又は多環の脂肪族炭化水素環構造を有する2価の連結基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、又はこれらを組み合わせた2価の連結基を表す。好ましくは、単結合、−Ab−CO−で表される2価の連結基である。
【0190】
Abは、直鎖又は分岐アルキレン基、単環又は多環の脂肪族炭化水素環基であり、好ましくはメチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基である。
【0191】
Vは、アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を表す。好ましくはエステル結合を有する基であり、中でもラクトン構造を有する基がより好ましい。
【0192】
ラクトン構造を有する基としては、ラクトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−17)のいずれかで表されるラクトン構造を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−13)、(LC1−14)、(LC1−17)である。
【化31】

【0193】
ラクトン構造部分は、置換基(Rb)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7の1価の脂肪族炭化水素環基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、酸分解性基である。nは、0〜4の整数を表す。nが2以上の時、複数存在する置換基(Rb)は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在する置換基(Rb)同士が結合して環を形成してもよい。
【0194】
ラクトン基を有する繰り返し単位は、通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体を混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90%以上のものが好ましく、より好ましくは95%以上である。
【0195】
樹脂(P)中の繰り返し単位(E)の含有率は、全繰り返し単位に対して、0〜80モル%の範囲で含有することが好ましく、より好ましくは1〜60モル%の範囲であり、更に好ましくは2〜40モル%の範囲である。繰り返し単位(E)は1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。特定のラクトン構造を用いることでラインエッジラフネス、現像欠陥が良好になる。
【0196】
以下に、繰り返し単位(E)の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。式中、Rxは、H,CH,CHOH,又はCFを表す。
【化32】

【0197】
【化33】

【0198】
本発明の樹脂(P)の形態としては、ランダム型、ブロック型、クシ型、スター型のいずれの形態でもよい。
【0199】
樹脂(P)は、例えば、各構造に対応する不飽和モノマーのラジカル、カチオン、又はアニオン重合により合成することができる。また各構造の前駆体に相当する不飽和モノマーを用いて重合した後に、高分子反応を行うことにより目的とする樹脂を得ることも可能である。
【0200】
例えば、一般的合成方法としては、不飽和モノマー及び重合開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤に不飽和モノマーと重合開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。
【0201】
重合に使用される溶媒としては、例えば、後述の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を調製する際に使用することができる溶剤等を挙げることができ、より好ましくは本発明の組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
【0202】
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル結合、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。必要に応じて連鎖移動剤(例えば、アルキルメルカプタンなど)の存在下で重合を行ってもよい。
【0203】
反応の濃度は5〜70質量%であり、好ましくは10〜50質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、更に好ましくは40〜100℃である。
【0204】
反応時間は、通常1〜48時間であり、好ましくは1〜24時間、更に好ましくは1〜12時間である。
【0205】
反応終了後、室温まで放冷し、精製する。精製は、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。たとえば、上記樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒(貧溶媒)を、該反応溶液の10倍以下の体積量、好ましくは10〜5倍の体積量で、接触させることにより樹脂を固体として析出させる。
【0206】
ポリマー溶液からの沈殿又は再沈殿操作の際に用いる溶媒(沈殿又は再沈殿溶媒)としては、該ポリマーの貧溶媒であればよく、ポリマーの種類に応じて、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、エーテル、ケトン、エステル、カーボネート、アルコール、カルボン酸、水、これらの溶媒を含む混合溶媒等の中から適宜選択して使用できる。これらの中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくともアルコール(特に、メタノールなど)又は水を含む溶媒が好ましい。
【0207】
沈殿又は再沈殿溶媒の使用量は、効率や収率等を考慮して適宜選択できるが、一般には、ポリマー溶液100質量部に対して、100〜10000質量部、好ましくは200〜2000質量部、更に好ましくは300〜1000質量部である。
【0208】
沈殿又は再沈殿する際の温度としては、効率や操作性を考慮して適宜選択できるが、通常0〜50℃程度、好ましくは室温付近(例えば20〜35℃程度)である。沈殿又は再沈殿操作は、攪拌槽などの慣用の混合容器を用い、バッチ式、連続式等の公知の方法により行うことができる。
【0209】
沈殿又は再沈殿したポリマーは、通常、濾過、遠心分離等の慣用の固液分離に付し、乾燥して使用に供される。濾過は、耐溶剤性の濾材を用い、好ましくは加圧下で行われる。乾燥は、常圧又は減圧下(好ましくは減圧下)、30〜100℃程度、好ましくは30〜50℃程度の温度で行われる。
【0210】
なお、一度、樹脂を析出させて、分離した後に、再び溶媒に溶解させ、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒と接触させてもよい。即ち、上記ラジカル重合反応終了後、該ポリマーが難溶あるいは不溶の溶媒を接触させ、樹脂を析出させ(工程a)、樹脂を溶液から分離し(工程b)、改めて溶媒に溶解させ樹脂溶液Aを調製(工程c)、その後、該樹脂溶液Aに、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒を、樹脂溶液Aの10倍未満の体積量(好ましくは5倍以下の体積量)で、接触させることにより樹脂固体を析出させ(工程d)、析出した樹脂を分離する(工程e)ことを含む方法でもよい。
【0211】
本発明に係わる樹脂(P)の分子量は、特に制限されないが、重量平均分子量が1000〜100000の範囲であることが好ましく、1500〜60000の範囲であることがより好ましく、2000〜30000の範囲であることが特に好ましい。ここで、樹脂の重量平均分子量は、GPC(キャリア:THFあるいはN−メチル−2−ピロリドン(NMP))によって測定したポリスチレン換算分子量を示す。
【0212】
また分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.00〜5.00、より好ましくは1.03〜3.50であり、更に好ましくは、1.05〜2.50である。
【0213】
また本発明に係わる樹脂の性能を向上させる目的で、耐ドライエッチング性を著しく損なわない範囲で、更に他の重合性モノマー由来の繰り返し単位を有していても良い。 その他の重合性モノマー由来の繰り返し単位の樹脂中含有量としては、全繰り返し単位に対して、一般的に50モル%以下、好ましくは30モル%以下である。使用することができるその他の重合性モノマーとしては、以下に示すものが含まれる。例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類、クロトン酸エステル類などから選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物である。
【0214】
具体的には、(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−t−オクチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルなどが挙げられる。
【0215】
(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、炭素原子数1〜10のもの、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、ヒドロキシエチル基、ベンジル基などがある。)、N−アリール(メタ)アクリルアミド(アリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、ニトロフェニル基、ナフチル基、シアノフェニル基、ヒドロキシフェニル基、カルボキシフェニル基などがある。)、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としてはR、炭素原子数1〜10のもの、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、イソブチル基、エチルヘキシル基、シクロヘキシル基などがある。)、N,N−アリール(メタ)アクリルアミド(アリール基としては、例えばフェニル基などがある。)、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0216】
アリル化合物としては、例えば、アリルエステル類(例えば、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリルなど)、アリルオキシエタノールなどが挙げられる。
ビニルエーテル類としては、例えば、アルキルビニルエーテル(例えば、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテルなど)、ビニルアリールエーテル(例えばビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロルフェニルエーテル、ビニル−2,4−ジクロルフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテルなど)が挙げられる。
【0217】
ビニルエステル類としては、例えば、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニルジクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシレート、安息香酸ビニル、サルチル酸ビニル、クロル安息香酸ビニル、テトラクロル安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニルなどが挙げられる。
【0218】
クロトン酸エステル類としては、例えば、クロトン酸アルキル(例えば、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、グリセリンモノクロトネートなど)が挙げられる。
【0219】
イタコン酸ジアルキル類としては、例えば、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0220】
マレイン酸あるいはフマール酸のジアルキルエステル類としては、例えば、ジメチルマレレート、ジブチルフマレートなどが挙げられる。
【0221】
その他にも、無水マレイン酸、マレイミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイロニトリル等をあげることができる。また一般に前記本発明にかかわる繰り返し単位と共重合可能である付加重合性不飽和化合物であれば、特に制限されず用いることができる。
【0222】
本発明の樹脂(P)は、1種類単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。樹脂(P)の含有率は、本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の全固形分を基準にして、30〜99.99質量%が好ましく、50〜99.97質量%がより好ましく、70〜99.95質量%が特に好ましい。
【0223】
樹脂(P)の好ましい具体例としては、例えば、前記一般式(I)〜(III)で表される繰り返し単位の具体例から選択される1種以上の繰り返し単位(A)/前記一般式(IV)で表される繰り返し単位の具体例から選択される1種以上の繰り返し単位(D)/前記一般式(V)〜(VI)で表される繰り返し単位の具体例から選択される1種以上の繰り返し単位(E)を有する樹脂、前記一般式(I)〜(III)で表される繰り返し単位の具体例から選択される1種以上の繰り返し単位(A)/前記一般式(IV)で表される繰り返し単位の具体例から選択される1種以上の繰り返し単位(D)/前記一般式(V)〜(VI)で表される繰り返し単位の具体例から選択される1種以上の繰り返し単位(E)/前記一般式(AII)で表される繰り返し単位の具体例から選択される1種以上の繰り返し単位(E)を有する樹脂を挙げることができる。
【0224】
樹脂(P)のより好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化34】

【0225】
【化35】

【0226】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物には、後述するように、上述した樹脂(P)と共に、樹脂(P)以外の酸の作用により分解してアルカリ水溶液に対する溶解速度が増大する樹脂(以下、「酸分解性樹脂」ともいう。)を更に含有させてもよい。
【0227】
(光酸発生剤)
本発明に係る組成物は、従来の低分子光酸発生剤を更に含んでいてもよい。
光酸発生剤は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物である。光酸発生剤としては、例えば、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、光消色剤、光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物、及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0228】
これらの例としては、スルホニウム塩及びヨードニウム塩等のオニウム塩、並びに、ビス(アルキルスルホニルジアゾメタン)等のジアゾジスルホン化合物が挙げられる。本願においては、カチオン部位がスルホニウム塩及びヨードニウム塩等のオニウム塩であり、発生する酸が有機スルホン酸であるものが好ましい。
光酸発生剤の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【化36】

【0229】
【化37】

【0230】
【化38】

【0231】
【化39】

【0232】
また、本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物には、必要に応じて更に、塩基性化合物、酸の作用により分解してアルカリ水溶液に対する溶解速度が増大する樹脂、、界面活性剤、酸分解性溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、及び現像液に対する溶解促進性化合物、プロトンアクセプター基を有する化合物等を含有させることができる。
【0233】
[2]塩基性化合物
本願発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、さらに塩基性化合物を含有していてもよい。
塩基性化合物は、含窒素有機塩基性化合物であることが好ましい。
【0234】
使用可能な塩基性化合物は特に限定されないが、例えば以下の(1)〜(4)に分類される化合物が好ましく用いられる。
【0235】
(1)下記一般式(BS−1)で表される化合物
【化40】

【0236】
一般式(BS−1)中、
Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基(直鎖又は分岐)、1価の脂肪族炭化水素環基(単環又は多環)、1価の芳香環基、アルキレン基と1価の芳香環基とを組み合わせた基の何れかを表す。但し、三つのRの全てが水素原子とはならない。
【0237】
Rとしてのアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1〜20、好ましくは1〜12である。
【0238】
Rとしての1価の脂肪族炭化水素環基の炭素数は特に限定されないが、通常3〜20、好ましくは5〜15である。
【0239】
Rとしての1価の芳香環基の炭素数は特に限定されないが、通常6〜20、好ましくは6〜10である。具体的にはフェニル基やナフチル基などのアリール基が挙げられる。
【0240】
Rとしてのアルキレン基と1価の芳香環基とを組み合わせた基の炭素数は特に限定されないが、通常7〜20、好ましくは7〜11である。具体的にはベンジル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0241】
Rとしてのアルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基、1価の芳香環基又はアルキレン基と1価の芳香環基とを組み合わせた基は、水素原子が置換基により置換されていてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基、1価の芳香環基、アルキレン基と1価の芳香環基とを組み合わせた基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0242】
一般式(BS−1)で表される化合物は、3つのRの1つのみが水素原子、あるいは全てのRが水素原子でないことが好ましい。
【0243】
一般式(BS−1)の化合物の具体例としては、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリイソデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、メチルジオクタデシルアミン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、2,4,6−トリ(t−ブチル)アニリンなどが挙げられる。
【0244】
また、一般式(BS−1)において、少なくとも1つのRが、ヒドロキシル基で置換されたアルキル基である化合物が、好ましい態様の1つとして挙げられる。具体的化合物としては、トリエタノールアミン、N,N−ジヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
【0245】
また、Rとしてのアルキル基は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン鎖が形成されていてもよい。オキシアルキレン鎖としては−CHCHO−が好ましい。具体的例としては、トリス(メトキシエトキシエチル)アミンや、US6040112号明細書のカラム3、60行目以降に例示の化合物などが挙げられる。
【0246】
(2)含窒素複素環構造を有する化合物
複素環構造としては、芳香族性を有していてもいなくてもよい。また、窒素原子を複数有していてもよく、更に、窒素以外のヘテロ原子を含有していてもよい。具体的には、イミダゾール構造を有する化合物(2−フェニルベンゾイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾールなど)、ピペリジン構造を有する化合物(N−ヒドロキシエチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートなど)、ピリジン構造を有する化合物(4−ジメチルアミノピリジンなど)、アンチピリン構造を有する化合物(アンチピリン、ヒドロキシアンチピリンなど)が挙げられる。
【0247】
また、環構造を2つ以上有する化合物も好適に用いられる。具体的には1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−ウンデカ−7−エンなどが挙げられる。
【0248】
(3)フェノキシ基を有するアミン化合物
フェノキシ基を有するアミン化合物とは、アミン化合物のアルキル基の窒素原子と反対側の末端にフェノキシ基を有するものである。フェノキシ基は、例えば、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、アラルキル基、アシロキシ基、アリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0249】
より好ましくは、フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン鎖を有する化合物である。1分子中のオキシアルキレン鎖の数は、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン鎖の中でも−CHCHO−が好まし
い。
【0250】
具体例としては、2−[2−{2―(2,2―ジメトキシ−フェノキシエトキシ)エチル}−ビス−(2−メトキシエチル)]−アミンや、米国特許出願公開第2007/0224539号明細書の段落[0066]に例示されている化合物(C1−1)〜(C3−3)などが挙げられる。
【0251】
(4)アンモニウム塩
アンモニウム塩も適宜用いられる。好ましくはヒドロキシド又はカルボキシレートである。より具体的にはテトラブチルアンモニウムヒドロキシドに代表されるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
【0252】
その他、特開2002−363146号公報の実施例で合成されている化合物、特開2007−298569号公報の段落0108に記載の化合物なども使用可能である。
【0253】
塩基性化合物は、単独であるいは2種以上併用して用いられる。
塩基性化合物の使用量は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0254】
光酸発生剤/塩基性化合物のモル比は、2.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。このモル比としてより好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。
[3]樹脂(P)以外の酸分解性樹脂
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、酸分解性樹脂として、樹脂(P)以外の酸分解性樹脂(以下、単に「酸分解性樹脂」という。)を更に含有していてもよい。
【0255】
酸分解性樹脂は、樹脂の主鎖又は側鎖、或いは、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(酸分解性基)を有する樹脂である。この内、酸分解性基を側鎖に有する樹脂がより好ましい。
【0256】
酸分解性樹脂は、欧州特許254853号明細書、特開平2−25850号公報、同3−223860号公報、同4−251259号公報等に開示されているように、アルカリ可溶性樹脂に酸で分解し得る基の前駆体を反応させる、若しくは、酸で分解し得る基の結合したアルカリ可溶性樹脂モノマーを種々のモノマーと共重合して得ることができる。
【0257】
酸分解性基としては、例えば、−COOH基、−OH基などのアルカリ可溶性基を有する樹脂において、アルカリ可溶性基の水素原子を酸の作用により脱離する基で置換した基が好ましい。
【0258】
酸分解性基として具体的には、前述した本発明の樹脂で説明した酸分解性基(例えば、樹脂(P)における繰り返し単位(C)として説明した酸分解性基)と同様の基を好ましい例として挙げることができる。
【0259】
前記アルカリ可溶性基を有する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリ(o−ヒドロキシスチレン)、ポリ(m−ヒドロキシスチレン)、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)及びこれらの共重合体、水素化ポリ(ヒドロキシスチレン)、下記構造で表される置換基を有するポリ(ヒドロキシスチレン)類、及びフェノール性水酸基を有する樹脂、スチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、α−メチルスチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、水素化ノボラック樹脂等のヒドロキシスチレン構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂、(メタ)アクリル酸、ノルボルネンカルボン酸などのカルボキシル基を有する繰り返し単位を含有するアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。
【化41】

【0260】
これらアルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解速度は、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)で測定(23℃)して170Å/秒以上が好ましい。特に好ましくは330Å/秒以上である。
【0261】
酸で分解し得る基の含有率は、樹脂中の酸で分解し得る基を有する繰り返し単位の数(X)と酸で脱離する基で保護されていないアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の数(Y)をもって、X/(X+Y)で表される。含有率は、好ましくは0.01〜0.7、より好ましくは0.05〜0.50、更に好ましくは0.05〜0.40である。
【0262】
酸分解性樹脂の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、50,000以下が好ましく、より好ましくは1,000〜20000、特に好ましくは、1,000〜10,000である。
【0263】
酸分解性樹脂の分散度(Mw/Mn)は、1.0〜3.0が好ましく、より好ましくは1.05〜2.0であり、更に好ましくは1.1〜1.7である。
酸分解性樹脂は、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0264】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、樹脂(P)を除く酸分解性樹脂を含有してもしなくても良いが、含有する場合、樹脂(P)を除く酸分解性樹脂の組成物中の配合量は、組成物の全固形分中0.1〜70質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜50質量%、更により好ましくは0.1〜30質量%である。
【0265】
本発明に係る組成物はさらに、活性光線または放射線の照射により酸を発生する繰返し単位と、酸の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基を含有する繰返しをともに有する樹脂を用いてもよい。このような樹脂として好ましく用いられるものの例としては、特開平9−325497、特開2009−93137号公報、特開2010−85971号公報、特開2011−256856号公報などに挙げられた樹脂が挙げられる。
【0266】
[4]溶剤
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、溶剤を含有することが好ましい。このような溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4〜10)、環を含有しても良いモノケトン化合物(好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤を挙げることができる。
【0267】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA;別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが好ましく挙げられる。
【0268】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME;別名1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルを好ましく挙げられる。
【0269】
乳酸アルキルエステルとしては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルを好ましく挙げられる。
【0270】
アルコキシプロピオン酸アルキルとしては、例えば、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチルを好ましく挙げられる。
【0271】
環状ラクトンとしては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−オクタノイックラクトン、α−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンが好ましく挙げられる。
【0272】
環を含有しても良いモノケトン化合物としては、例えば、2−ブタノン、3−メチルブタノン、ピナコロン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−メチル−2−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−メチル−3−ペンタノン、4,4−ジメチル−2−ペンタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2,2,4,4−テトラメチル−3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、5−メチル−3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−メチル−3−ヘプタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、5−ノナノン、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、5−ヘキセン−2−オン、3−ペンテン−2−オン、シクロペンタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2,2−ジメチルシクロペンタノン、2,4,4−トリメチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、4−エチルシクロヘキサノン、2,2−ジメチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、2,2,6−トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロヘプタノン、3−メチルシクロヘプタノンが好ましく挙げられる。
【0273】
アルキレンカーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートが好ましく挙げられる。
【0274】
アルコキシ酢酸アルキルとしては、例えば、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、酢酸−3−メトキシ−3−メチルブチル、酢酸−1−メトキシ−2−プロピルが好ましく挙げられる。
【0275】
ピルビン酸アルキルとしては、例えば、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピルが好ましく挙げられる。
【0276】
好ましく使用できる溶剤としては、2−ヘプタノン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、プロピレンカーボネートが挙げられる。特に好ましい溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
【0277】
本発明に於いては、上記溶剤を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0278】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、常圧(760mmHg)で、沸点が150℃以下の溶媒を含有することが好ましい。
上記溶媒を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、常圧で、沸点が150℃を越える溶媒を併用してもよい。本発明の組成物に於いては、沸点が150℃以下の溶媒の含有量が溶媒全量に対して50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましい。特に好ましくは70質量%〜100質量%である。
【0279】
沸点が150℃以下の溶媒は、沸点が50〜150℃が好ましく、沸点が80〜150℃がより好ましい。
【0280】
沸点が150℃以下の溶媒は、好ましくは有機溶剤であり、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン、環を含有しても良いモノケトン化合物、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤から選択することができる。
【0281】
例えば、以下に示すような溶剤から、常圧で、沸点が150℃以下の溶媒を選択し、単独又は2種以上、更には、常圧で、沸点が150℃を越える溶剤を併用して用いることができる。
【0282】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA;1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)(b.p.=146℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(b.p.=164−165℃)、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート(b.p.=173−174℃/740mmHg)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(b.p.=143℃)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(b.p.=156℃)、が好ましく挙げられる。
【0283】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME;1−メトキシ−2−プロパノール)(b.p.=119℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(b.p.=130−131℃)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(b.p.=148℃)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(b.p.=169−170℃)、エチレングリコールモノメチルエーテル(b.p.=124−125℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(b.p.=134−135℃)、を好ましく挙げられる。
【0284】
乳酸アルキルエステルとしては、例えば、乳酸メチル(b.p.=145℃)、乳酸エチル(b.p.=154℃)、乳酸プロピル(b.p.=169−172℃)、乳酸ブチル(b.p.=185−187℃)を好ましく挙げられる。
【0285】
アルコキシプロピオン酸アルキルとしては、例えば、3−エトキシプロピオン酸エチル(b.p.=169−170℃)、3−エトキシプロピオン酸メチル(b.p.=138−141℃)、3−メトキシプロピオン酸エチル(b.p.=156−158℃)を好ましく挙げられる。
【0286】
環状ラクトンとしては、例えば、β−プロピオラクトン(b.p.=162℃)、β−ブチロラクトン(b.p.=71−73℃/29mmHg)、γ−ブチロラクトン(b.p.=204−205℃)、α−メチル−γ−ブチロラクトン(b.p.=78−81℃/10mmHg)、β−メチル−γ−ブチロラクトン(b.p.=87−88℃/10mmHg)、γ−バレロラクトン(b.p.=82−85℃/10mmHg)、γ−カプロラクトン(b.p.=219℃)、γ−オクタノイックラクトン(b.p.=234℃)、α−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン(b.p.=133℃/10mmHg)が好ましく挙げられる。
【0287】
環を含有しても良いモノケトン化合物としては、例えば、2−ブタノン(b.p.=80℃)、3−メチルブタノン(b.p.=94−95℃)、ピナコロン(b.p.=106℃)、2−ペンタノン(b.p.=101−105℃)、3−ペンタノン(b.p.=102℃)、3−メチル−2−ペンタノン(b.p.=118℃)、4−メチル−2−ペンタノン(b.p.=117−118℃)、2−メチル−3−ペンタノン(b.p.=113℃)、4,4−ジメチル−2−ペンタノン(b.p.=125−130℃)、2,4−ジメチル−3−ペンタノン(b.p.=124℃)、2,2,4,4−テトラメチル−3−ペンタノン(b.p.=152−153℃)、2−ヘキサノン(b.p.=127℃)、3−ヘキサノン(b.p.=123℃)、5−メチル−2−ヘキサノン(b.p.=145℃)、2−ヘプタノン(b.p.=149−150℃)、3−ヘプタノン(b.p.=146−148℃)、4−ヘプタノン(b.p.=145℃)、2−メチル−3−ヘプタノン(b.p.=158−160℃)、5−メチル−3−ヘプタノン(b.p.=161−162℃)、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン(b.p.=165−170℃)、2−オクタノン(b.p.=173℃)、3−オクタノン(b.p.=167−168℃)、2−ノナノン(b.p.=192℃/743mmHg)、3−ノナノン(b.p.=187−188℃)、5−ノナノン(b.p.=186−187℃)、2−デカノン(b.p.=211℃)、3−デカノン(b.p.=204−205℃)、4−デカノン(b.p.=206−207℃)、5−ヘキセン−2−オン(b.p.=128−129℃)、3−ペンテン−2−オン(b.p.=121−124℃)、シクロペンタノン(b.p.=130−131℃)、2−メチルシクロペンタノン(b.p.=139℃)、3−メチルシクロペンタノン(b.p.=145℃)、2,2−ジメチルシクロペンタノン(b.p.=143−145℃)、2,4,4−トリメチルシクロペンタノン(b.p.=160℃)、シクロヘキサノン(b.p.=157℃)、3−メチルシクロヘキサノン(b.p.=169−170℃)、4−メチルシクロヘキサノン(b.p.=169−171℃)、4−エチルシクロヘキサノン(b.p.=192−194℃)、2,2−ジメチルシクロヘキサノン(b.p.=169−170℃)、2,6−ジメチルシクロヘキサノン(b.p.=174−176℃)、2,2,6−トリメチルシクロヘキサノン(b.p.=178−179℃)、シクロヘプタノン(b.p.=179℃)、2−メチルシクロヘプタノン(b.p.=182−185℃)、3−メチルシクロヘプタノン(b.p.=100℃/40mmHg)が好ましく挙げられる。
【0288】
アルキレンカーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート(b.p.=240℃)、ビニレンカーボネート(b.p.=162℃)、エチレンカーボネート(b.p.=243−244℃/740mmHg)、ブチレンカーボネート(b.p.=88/0.8mmHg℃)が好ましく挙げられる。
【0289】
アルコキシ酢酸アルキルとしては、例えば、酢酸−2−メトキシエチル(b.p.=145℃)、酢酸−2−エトキシエチル(b.p.=155−156℃)、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル(b.p.=219℃)、酢酸−1−メトキシ−2−プロピル(b.p.=145−146℃)が好ましく挙げられる。
【0290】
ピルビン酸アルキルとしては、例えば、ピルビン酸メチル(b.p.=134−137℃)、ピルビン酸エチル(b.p.=144℃)、ピルビン酸プロピル(b.p.=166℃)が好ましく挙げられる。
【0291】
好ましく使用できる溶剤としては、2−ヘプタノン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、プロピレンカーボネートが挙げられるが、アウトガス低減の観点から2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル等、常圧での沸点が150℃以下の溶媒が特に好ましい。
【0292】
本発明の組成物全量中における溶剤(沸点が150℃以上のものも、そうでないものも全て含む)の使用量は、所望の膜厚等に応じて適宜調整可能であるが、一般的には組成物の全固形分濃度が0.5〜30質量%、好ましくは1.0〜20質量%、より好ましくは1.5〜10質量%となるように調製される。
【0293】
[5]界面活性剤
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、更に界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤が好ましい。
【0294】
これらに該当する界面活性剤としては、大日本インキ化学工業(株)製のメガファックF177、メガファックR08、OMNOVA社製のPF656、PF6320、トロイケミカル(株)製のトロイゾルS−366、住友スリーエム(株)製のフロラードFC430、信越化学工業(株)製のポリシロキサンポリマーKP−341などが挙げられる。
【0295】
また、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。より具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類などが挙げられる。
【0296】
その他、公知の界面活性剤が適宜使用可能である。使用可能な界面活性剤としては、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0273]以降に記載の界面活性剤が挙げられる。
【0297】
界面活性剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の使用量は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分に対し、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.001〜1質量%である。
【0298】
[6]酸分解性溶解阻止化合物
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、酸の作用により分解してアルカリ現像液中への溶解速度が増大する、分子量3000以下の溶解阻止化合物(以下、「溶解阻止化合物」ともいう)を含有することができる。
【0299】
溶解阻止化合物としては、Proceeding of SPIE,2724, 355 (1996)に記載されている酸分解性基を含むコール酸誘導体の様な、酸分解性基を含有する脂環族又は脂肪族化合物が好ましい。酸分解性基、脂環式構造としては、前記酸分解性樹脂のところで説明したものと同様のものが挙げられる。
【0300】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を、電子線又はEUV光で照射する場合には、フェノール化合物のフェノール性水酸基を酸分解基で置換した構造を含有するものが好ましい。フェノール化合物としてはフェノール骨格を1〜9個含有するものが好ましく、更に好ましくは2〜6個含有するものである。
【0301】
本発明における溶解阻止化合物の分子量は、3000以下であり、好ましくは300〜3000、更に好ましくは500〜2500である。
【0302】
[7]その他の成分
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、染料を含有してもよい。好適な染料としては油性染料及び塩基性染料がある。
【0303】
露光による酸発生効率を向上させるため、更に、下記に挙げるような光増感剤を添加することができる。
【0304】
本発明で使用できる現像液に対する溶解促進性化合物は、フェノール性OH基を2個以上、又はカルボキシ基を1個以上有する分子量1,000以下の低分子化合物である。カルボキシ基を有する場合は脂環族又は脂肪族化合物が好ましい。このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号、特開平2−28531号、米国特許第4916210号、欧州特許第219294号に記載のものを挙げることができる。
【0305】
また、特開2006−208781号公報や、特開2007−286574号公報等に記載の、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物も、本願組成物に対して好適に用いることができる。
【0306】
[8]パターン形成方法
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、基板など支持体上に塗布され、膜を形成する。このレジスト膜の膜厚は、0.02〜0.1μmが好ましい。
基板上に塗布する方法としては、スピン塗布が好ましく、その回転数は1000〜3000rpmが好ましい。
【0307】
例えば、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を、精密集積回路素子、フォトマスク、インプリント用モールドなどの製造に使用されるような基板(例:シリコン、シリコン/二酸化シリコン被覆、窒化シリコン、Cr層を有する石英基板など)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法により塗布、乾燥し、膜を形成する。なお、予め公知の反射防止膜を塗設することもできる。
【0308】
当該膜に、活性光線性又は放射線、好ましくは電子線(EB)、X線又はEUV光を照射し、好ましくはベーク(加熱)を行い、現像する。これにより良好なパターンを得ることができる。
【0309】

現像工程では、通常、アルカリ現像液を用いる。本発明の組成物のアルカリ現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。
【0310】
更に、上記アルカリ現像液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
【0311】
なお、本発明の組成物を適用して、インプリント用モールド構造体を作製する場合の詳細については、例えば、ナノインプリントの基礎と技術開発・応用展開―ナノインプリントの基板技術と最新の技術展開―編集:平井義彦 フロンティア出版(2006年6月発行)、特許第4109085号公報や、特開2008−162101号公報などを参照されたい。
【実施例】
【0312】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
〔合成例1:樹脂(A−1)〕
先に挙げた樹脂(A−1)を、下記のスキームに従って合成した。
【化42】

【0313】
<モノマー(2)の合成>
酢酸エチル80質量部に、p−ヒドロキシスチレン10質量部、p−トルエンスルホン酸・ピリジン塩0.01質量部を室温で溶解させた。この液を攪拌させながら、2−シクロヘキシルエチルビニルエーテルを13.1質量部と酢酸エチル20質量部の混合液を室温で滴下した。滴下後、更に室温で24時間反応させた。反応液にトリエチルアミンを加えて塩基性にし、イオン交換水で洗浄した後、有機層を濃縮し、ヘキサン/酢酸エチルでカラムクロマトグラフィー精製することにより、モノマー(2)を14.7質量部得た。
【0314】
<モノマー(3)の合成>
トリフェニルスルホニウムブロミド50質量部をメタノール50質量部に溶解させた。この液に、4−スチレンスルホン酸ナトリウム30質量部とメタノール50質量部とイオン交換水130質量部の混合液を室温で攪拌下、滴下した。イオン交換水とクロロホルムを加えて抽出・洗浄を行った。有機層を濃縮後、析出した固体をヘキサン/酢酸エチル中でリスラリー、ろ過することで、モノマー(3)を48質量部得た。
【0315】
<樹脂(A−1)の合成>
13.94gの化合物(1)(50.0%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)と、8.23gの化合物(2)と、4.47gの化合物(3)と、0.21gの化合物(4)と、2.30gの重合開始剤V−601(和光純薬工業(株)製)とを、16.88gのプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)に溶解させた。反応容器中に5.96gのPGMEを入れ、窒素ガス雰囲気下、85℃の系中に2時間かけて滴下した。反応溶液を4時間に亘って加熱撹拌した後、これを室温まで放冷した。
【0316】
上記反応溶液を、47gのアセトンを加えることにより希釈した。希釈した溶液を1000gのヘキサン/酢酸エチル=8/2中に滴下し、ポリマーを沈殿させ、ろ過した。250gのヘキサン/酢酸エチル=8/2を用いて、ろ過した固体のかけ洗いを行なった。得られた固体を80gのアセトンに溶解させ、1000gのメタノール/蒸留水=1/9中に滴下し、ポリマーを沈殿させ、ろ過した。250gのメタノール/蒸留水=1/9を用いて、ろ過した固体のかけ洗いを行なった。その後、洗浄後の固体を減圧乾燥に供して、6.56gの樹脂A−1を得た。
【0317】
〔その他の樹脂(A−2)〜(A−10)、(a’−1)及び(a’−2)〕
先に挙げた樹脂(A−2)〜(A−10)と、対照用として後掲に示す樹脂(a’−1)及び(a’−2)を、合成例1で述べたのと同様にして合成した。また、これら樹脂について、合成例1で述べたのと同様にして重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)を測定した。その結果を組成比と共に下表に示す。
【表1】

【0318】
〔1〕レジスト評価(EB露光)
<化学増幅ポジ型レジストの作製>
実施例1
下に示した成分を(各成分量は全固形分を基準とする質量%)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/プロピレングリコールモノメチルエーテル=40/60(質量比)の混合溶剤に溶解させ、固形分濃度1.8質量%の溶液を調製した。
【0319】
(実施例1)
樹脂A−1 99.99質量%
メガファックF177(大日本インキ化学工業(株)製、フッ素系) 0.01質量%
(実施例2〜10)
樹脂A−1を下表に示す樹脂に変更した以外は同様にして他のレジスト組成物を調製した。
【0320】
〔対照〕
比較例1及び2
対照のため、下に示した成分を(各成分量は全固形分を基準とする質量%)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/プロピレングリコールモノメチルエーテル=40/60(質量比)の混合溶剤に溶解させ、固形分濃度1.8質量%の溶液を調製した。
【0321】
(比較例1)
樹脂(a’−1) 64.99質量%
PAG1 33質量%
化合物N−1 2質量%
メガファックF177(大日本インキ化学工業(株)製、フッ素系) 0.01質量%
(比較例2)
比較例1に対し、樹脂(a’−1)及び化合物N−1を、各々、樹脂(a’−2)及び化合物N−2に変更した以外は同様にして比較例2を調製した。
【化43】

【0322】
上記で得た溶液を0.1μmのポアサイズを有するポリテトラフルオロエチレンフィルターによりろ過して、化学増幅ポジ型レジスト組成物(ポジ型レジスト溶液)を調製した。
【0323】
調製した化学増幅ポジ型レジスト組成物を、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上にスピンコーターを用いて均一に塗布し、120℃で90秒間ホットプレート上で加熱乾燥を行い、膜厚50nmのポジ型レジスト膜を形成させた。
【0324】
<パターン形成>
このポジ型レジスト膜を、電子ビームを用いて、露光量を0〜55μC/cmの範囲で1.0μC/cmずつ変えながら露光を行った。照射後直ぐに110℃で90秒間ホットプレート上で加熱した。更に濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液を用いて23℃で60秒間現像し、30秒間純水にてリンスした後、乾燥し、ラインアンドスペースパターンを形成し、得られたパターンを下記方法で評価した。
【0325】
<レジスト評価>
〔感度〕
得られたパターンの線幅を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて観察した。100nmライン(ライン:スペース=1:1)を解像する時の最小照射エネルギーを感度とした。
【0326】
〔解像力〕
上記の感度を示す照射量における限界解像力(ラインとスペースが分離解像)を解像力とした。解像力の値が小さい程、解像性に優れていることを意味する。
【0327】
〔パターン形状〕
上記の感度を示す照射量における100nmラインパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4300)を用いて観察し、T−top形状の評価を行った。より具体的には、ラインパターンの断面形状において、“パターンの表面から深さ方向に10nmまでの領域におけるライン幅の最大値をL1”、“パターンの表面から深さ方向へ向けて10nmの地点から、同深さ方向へ向けて50nmの地点までの領域におけるライン幅の最小値をL2”としたときの、L1/L2で表される値をT−top率として求めた。T−top率が1に近い程、パターン形状が優れていることを意味する。
【0328】
〔ラインエッジラフネス(LER)〕
上記の感度を示す照射量のラインパターンを走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて観察した。25nmのライン(ライン:スペース=1:1)のラフネスをラインエッジラフネスとした。
結果を下記表2に示した。
【表2】

【0329】
表2から分かるように、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、露光光源として電子線を用いた場合に、高感度、高解像性、良好なパターン形状、及び、優れたラインエッジラフネスを同時に満足できる。
【0330】
〔2〕レジスト評価(EUV露光)
上掲の実施例1〜10及び比較例1〜2の組成物に対し、固形分濃度を2.0質量%に変更した以外は同様にして、各々、実施例11〜20及び比較例3〜4のポジ型レジスト溶液を得た。
【0331】
ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に、スピンコータを用いて、上記のポジ型レジスト溶液を塗布した。これを、100℃で90秒間に亘ってホットプレート上で加熱乾燥させ、平均膜厚が50nmのレジスト膜を得た。
【0332】
〔パターン形成〕
このレジスト膜に対し、EUV露光装置を用いてEUV光を照射した。照射後直ぐに、100℃で90秒間に亘ってホットプレート上にて加熱した。その後、濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液を用いて、23℃で60秒間現像し、30秒間純水を用いてリンスした後、乾燥させた。これにより、ラインアンドスペースパターン(ライン:スペース=1:1)を形成した。
【0333】
(感度)
まず、得られたラインアンドスペースパターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4800)を用いて観察した。そして、100nmの線幅のラインを解像する際の最小照射エネルギーを求め、この値を「感度(mJ/cm)」とした。
【0334】
(パターン形状)
上記の感度を示す照射量における100nmラインパターン(ライン:スペース=1:1)の断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4800)を用いて観察した。そして、その形状を評価した。
【0335】
(解像力評価)
上記の感度を示す照射量における限界解像力(ラインとスペースとが分離解像する最小線幅)を限界解像力とした。
【0336】
〔ラインエッジラフネス(LER)〕
上記の感度を示す照射量のラインパターンを走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて観察した。25nmのライン(ライン:スペース=1:1)のラフネスをラインエッジラフネスとした。
これらの評価結果を、下記表3に示す。
【表3】

【0337】
表3から分かるように、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、露光光源としてEUV光を用いた場合に、高感度、高解像性、良好なパターン形状、及び、優れたラインエッジラフネスを同時に満足できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性光線又は放射線の照射により分解して酸アニオンを発生するイオン性構造部位を備えた繰り返し単位(A)と、プロトンアクセプター基を有する繰り返し単位(B)と、酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する繰り返し単位(C)を含み、且つ、繰返し単位(A)として、下記一般式(I)〜(III)で表される少なくとも1つの繰返し単位を有する樹脂(P)を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

一般式(I)〜(III)中、
は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。
は−COOR11、又は−CON(R12)(R13)を表す。R11、R12及びR13は、各々独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。R12とR13は結合して窒素原子とともに環を形成してもよい。
、X及びXは、それぞれ独立して単結合または2価の連結基を表す。
、A及びAはそれぞれ独立して、フッ素原子を含まない2価の連結基を表す。
はオニウムカチオンを表す。
【請求項2】
前記A、A及びAが、炭素原子および水素原子のみからなるアルキレン基またはアリーレン基である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記A、A及びAが、無置換のフェニレン基である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
繰返し単位(B)が有する前記プロトンアクセプター部位が、アミン、アニリン、または含窒素複素環構造である請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する繰り返し単位(C)が、下記一般式(V)又は一般式(VI)で表される繰り返し単位である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【化2】

一般式(V)中、
51、R52及びR53は、各々独立に、水素原子、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。R52はLと結合して環を形成していてもよく、その場合のR52はアルキレン基を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表し、R52と環を形成する場合には3価の連結基を表す。
54はアルキル基を表し、R55及びR56は、各々独立に、水素原子、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基又は1価の芳香環基を表す。但し、R55とR56が同時に水素原子であることはない。R55及びR56は互いに結合して環を形成してもよい。
一般式(VI)中、
61、R62及びR63は、各々独立に、水素原子もしくはアルキル基を表す。
Arは、2価の芳香環基を表す。
Yは、複数存在する場合は各々独立に、酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を表す。
mは、1〜4の整数を表す。
【請求項6】
繰り返し単位(C)が一般式(VI)で表される繰り返し単位であり、かつ−O−Y基がアセタール構造を形成する基である請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
繰返し単位(A)が一般式(I)で表される繰返し単位である請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
、X及びXが、単結合、もしくは、アリーレン基、アルキレン基、シクロアルキレン基、−O−、−SO−、−CO−、−NR21−、またはこれらを組み合わせた2価の連結基を表す請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。ここで、R21はアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表す。
【請求項9】
前記Zがスルホニウムカチオンである請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
繰返し単位(B)が有する前記プロトンアクセプター部位が、含窒素複素環構造である請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
樹脂(P)が、更に、下記一般式(IV)で表される繰り返し単位(D)を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【化3】

一般式(IV)中、
41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。またR42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42はアルキレン基を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
Arは、2価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には3価の芳香環基を表す。
nは、1〜4の整数を表す。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物を用いて形成された感活性光線性又は感放射線性膜。
【請求項13】
請求項12に記載の感活性光線性又は感放射線性膜を露光すること、露光した膜を現像することを含むパターン形成方法。
【請求項14】
露光光源が電子線、X線又はEUV光である請求項13に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のパターン形成方法を含む半導体デバイスの製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法により製造された半導体デバイス。

【公開番号】特開2013−15573(P2013−15573A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146475(P2011−146475)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】