説明

感温性粘着剤

【課題】高い耐熱性を有する感温性粘着剤を提供することである。
【解決手段】側鎖結晶性ポリマーを含有し、該側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度で粘着力を発現する感温性粘着剤であって、前記側鎖結晶性ポリマーが、ガラス転移温度(Tg)110〜190℃の単独重合体を形成し得る高Tgモノマーと、側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーとの共重合体からなるようにした。前記高Tgモノマーは、4−tert−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートおよびイソボルニルメタクリレートから選ばれる少なくとも1種が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定温度で粘着力を発現する感温性粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、粘着力を熱により可逆的に制御できる感温性粘着剤がある(例えば、特許文献1参照)。該感温性粘着剤は、側鎖結晶性ポリマーを含有しており、該側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度にまで加熱処理をすると、前記側鎖結晶性ポリマーが流動性を示すことによって粘着力が発現する。
【0003】
感温性粘着剤は、例えばテープの形態で半導体の製造等に使用され、工程によっては、高温雰囲気下(例えば150℃以上、特に200℃近傍)においても部品を固定できる耐熱性が要求される。ところが、この耐熱性の要求に対して、特許文献1に記載されているような従来の感温性粘着剤では、十分に対応できていなのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−251923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、高い耐熱性を有する感温性粘着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を見出した。すなわち、従来の感温性粘着剤は、150℃において貯蔵弾性率G’が大きく低下しており、これに伴って凝集力が低下し、耐熱性が不足していたものと推察される。
【0007】
本発明者らは、この知見に基づき、鋭意研究を重ねた。その結果、側鎖結晶性ポリマーが、ガラス転移温度(Tg)110〜190℃の単独重合体を形成し得る高Tgモノマーを、側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーに加え、重合反応を行い得られる共重合体からなる場合には、150℃における貯蔵弾性率G’が低下するのを抑制することができ、高い耐熱性が得られるという新たな事実を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の感温性粘着テープは、以下の構成からなる。
(1)側鎖結晶性ポリマーを含有し、該側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度で粘着力を発現する感温性粘着剤であって、前記側鎖結晶性ポリマーが、ガラス転移温度(Tg)110〜190℃の単独重合体を形成し得る高Tgモノマーと、側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーとの共重合体からなることを特徴とする感温性粘着剤。
(2)前記高Tgモノマーは、4−tert−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートおよびイソボルニルメタクリレートから選ばれる少なくとも1種である前記(1)記載の感温性粘着剤。
(3)側鎖結晶性ポリマーを構成する前記他のモノマーは、炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートと、炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートおよび極性モノマーから選ばれる少なくとも1種である前記(1)または(2)記載の感温性粘着剤。
(4)前記側鎖結晶性ポリマーは、前記高Tgモノマーと、側鎖結晶性ポリマーを構成する前記他のモノマーとを、重量比で10:90〜40:60の割合で重合させた共重合体からなる前記(1)〜(3)のいずれかに記載の感温性粘着剤。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の感温性粘着剤からなる粘着剤層を、基材フィルムの片面または両面に設けたことを特徴とする感温性粘着テープ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い耐熱性を示すことができるので、高温雰囲気下で部品を加工中に何らかの応力(例えば外的応力、固定部材・部品等の熱的変形による応力等)を受けたとしても剥離することはなく、部品を確実に固定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の感温性粘着剤は、側鎖結晶性ポリマーを含有する。該側鎖結晶性ポリマーは、融点未満の温度で結晶化し、かつ融点以上の温度で相転移して流動性を示す。すなわち、前記側鎖結晶性ポリマーは、温度変化に対応して結晶状態と流動状態とを可逆的に起こす。本発明の感温性粘着剤は、前記融点以上の温度で側鎖結晶性ポリマーが流動性を示した際に粘着力が発現する割合で、前記側鎖結晶性ポリマーを含有する。これにより、部品等を固定する際には、感温性粘着剤を前記側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度に加熱すれば、前記側鎖結晶性ポリマーが流動性を示すことによって粘着力が発現する。また、部品から剥離する際には、感温性粘着剤を前記側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度に冷却すれば、前記側鎖結晶性ポリマーが結晶化することによって粘着力が低下する。
【0011】
前記融点とは、ある平衡プロセスにより、最初は秩序ある配列に整合されていた重合体の特定部分が無秩序状態となる温度を意味し、示差熱走査熱量計(DSC)により10℃/分の測定条件で測定して得られる値である。前記融点としては0℃以上、好ましくは10〜40℃であるのがよい。前記融点を所定の値とするには、側鎖結晶性ポリマーの組成等を変えることによって任意に行うことができる。
【0012】
前記側鎖結晶性ポリマーは、ガラス転移温度(Tg)110〜190℃の単独重合体を形成し得る高Tgモノマーと、側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーとの共重合体からなる。
【0013】
前記高Tgモノマーとしては、例えば4−tert−ブチルシクロヘキシルメタクリレート(単独重合体Tg:150〜178℃)、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート(単独重合体Tg:120〜175℃)、イソボルニルメタクリレート(単独重合体Tg:180℃)等の炭素数6〜15の環状脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレートが挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
側鎖結晶性ポリマーを構成する前記他のモノマーとしては、炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートと、炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートおよび極性モノマーから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0015】
前記炭素数16以上の直鎖状アルキル基を側鎖とする(メタ)アクリレートとしては、例えばセチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の炭素数16〜22の線状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられ、前記炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、前記極性モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有エチレン不飽和単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有するエチレン不飽和単量体等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
前記側鎖結晶性ポリマーの組成としては、前記高Tgモノマーと、側鎖結晶性ポリマーを構成する前記他のモノマーとを、重量比で10:90〜40:60の割合で重合させた共重合体が好ましく、前記高Tgモノマー10〜40重量部と、前記炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート60〜70重量部と、前記炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレート0〜10重量部と、前記極性モノマー0〜10重量部とを重合させた共重合体がより好ましい。
【0017】
重合方法としては、特に限定されるものではなく、例えば溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が採用可能である。例えば溶液重合法を採用する場合には、前記で例示したモノマーを溶剤に混合し、40〜90℃程度で2〜10時間程度攪拌することによって前記モノマーを重合させることができる。
【0018】
前記側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量は100,000以上、好ましくは300,000〜800,000であるのがよい。前記重量平均分子量があまり小さいと、感温性粘着剤を部品から取外す際には、該粘着剤が部品上に残る、いわゆる糊残りが多くなるおそれがある。また、前記重量平均分子量があまり大きいと、側鎖結晶性ポリマーが融点以上の温度に加温されても流動性を示し難くなるので、粘着力が発現し難くなる。前記重量平均分子量は、側鎖結晶性ポリマーをゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0019】
本発明の感温性粘着剤の使用形態としては、特に限定されるものではなく、例えば前記共重合体を所定の溶剤に加えた共重合体溶液を被着体に直接塗布して乾燥するようにしてもよく、あるいはシリコンやフッ素等で離型処理を施した基材フィルムの表面に塗布し加熱乾燥させ、使用時に前記基材フィルムから剥離してフィルム状ないしシート状の形態で用いることができる。また、本発明の感温性粘着剤からなる粘着剤層を、基材フィルムの片面または両面に設ければ、感温性粘着テープとして使用することができる。
【0020】
前記基材フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンポリプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂フィルムが挙げられる。また、該フィルムは、単層体またはこれらの複層体からなるものであってもよく、厚さは、通常、25〜250μm程度である。感温性粘着テープに使用する場合の基材フィルムの表面には、粘着剤層に対する密着性を向上させるため、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、ブラスト処理、ケミカルエッチング処理、プライマー処理等の表面処理を施してもよい。
【0021】
前記共重合体溶液には、架橋剤、タッキファイヤー、可塑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤等の各種の添加剤を添加することができる。
【0022】
特に、耐熱性や凝集力を向上させる上で、前記共重合体溶液に架橋剤を添加して架橋反応させるのが好ましい。前記架橋剤としては、例えばイソシアネート化合物、アジリジン化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。前記架橋剤の添加量としては、前記共重合体溶液の固形分の総量に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%であるのがよい。前記架橋反応は、通常、前記共重合体溶液を25〜100℃程度に加熱して行う。
【0023】
前記塗布は、一般的にナイフコーター、ロールコーター、カレンダーコーター、コンマコーター等により行うことができる。また、塗工厚みや材料の粘度によっては、グラビアコーター、ロッドコーター等により行うこともできる。フィルム状ないしシート状の使用形態である感温性粘着剤の厚さ、および感温性粘着テープにおける前記粘着剤層の厚さは、いずれも5〜60μm、好ましくは10〜60μm、より好ましくは10〜40μmであるのがよい。
【0024】
次に、本発明の感温性粘着テープの一使用例について、半導体の製造を例に挙げて説明する。まず、基材フィルムの両面に粘着剤層を設けた本発明の感温性粘着テープを介して、フレキシブル基盤と台座とを位置合わせする。このとき、側鎖結晶性ポリマーの融点は、室温よりも高いのが好ましい。これにより、前記粘着剤層が室温では粘着力を発現していないため、誤ってテープ同士が貼りつくことがなく、また位置を誤った場合でも手直しが容易である。
【0025】
位置合わせをした後、雰囲気温度あるいは台座温度をヒータ等の加熱手段を用いて側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度にまで加熱する。これにより、前記側鎖結晶性ポリマーが流動性を示すことによって粘着力が発現し、感温性粘着テープを介して基盤が台座上に固定される。
【0026】
固定後、基盤上に半導体層を作製する。この半導体層作製中には、雰囲気温度が200℃近傍になるものの、前記感温性粘着テープは、150℃における粘着剤層の貯蔵弾性率G’が低下するのを抑制することができるので、高い耐熱性を示すことができる。
【0027】
具体的には、150℃における粘着剤層の貯蔵弾性率G’を6×103Pa以上、好ましくは6×103〜1×105Paに維持することができる。これにより、粘着剤層の凝集力が低下するのを抑制することができ、高い耐熱性を示すことができる。したがって、前記感温性粘着テープは、半導体層作製中に外的応力や、基盤の熱的変形による応力を受けたとしても剥離することはなく、基盤を台座上に固定し続けることができる。
【0028】
150℃における貯蔵弾性率G’を所定の値とするには、前記高Tgモノマーの組成、割合等を変えることによって任意に行うことができる。前記貯蔵弾性率は、後述するように、動的粘弾性測定装置を用いて測定し得られる値である。
【0029】
半導体層を作製した後、雰囲気温度あるいは台座温度をガス等の冷却手段を用いて前記側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度にまで冷却し、粘着力を低下させる。最後に基盤を台座から剥離して、半導体を得る。
【0030】
なお、上記では本発明の感温性粘着剤および感温性粘着テープを半導体の製造に使用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば液晶、積層セラミックインダクター、抵抗器、フェライト、センサー素子、サーミスタ、バリスタ、セラミック電子部品等のように、高い耐熱性が要求される分野において、好適に用いることができる。
【0031】
以下、合成例および実施例を挙げて本発明の感温性粘着剤を詳細に説明するが、本発明は以下の合成例および実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明で「部」は重量部を意味する。
【0032】
<合成例1>
まず、ベヘニルメタクリレート(日油社製の「ブレンマーVMA−70」)65部、4−tert−ブチルシクロヘキシルメタクリレート(日油社製の「ブレンマーTBCHMA」)30部、およびメタクリル酸(三菱ガス化学社製の「GE−100」)5部の割合で、それぞれ酢酸エチル100部に加えて混合した。ついで、重合開始剤(日油社製の「パーブチルND」)をモノマーの総量に対して固形分換算で0.5重量%添加し、55℃で6時間攪拌して、これらのモノマーを重合させた(溶液重合法)。得られた共重合体について、融点、ピーク面積および重量平均分子量を測定した。各測定方法を以下に示すと共に、その結果を表1に示す。
【0033】
(融点・ピーク面積)
DSCで10℃/分の測定条件で測定した。なお、重合体がピーク面積(cal/g)を有していると、該重合体は、融点未満の温度で結晶化し、かつ融点以上の温度で相転移して流動性を示すことを意味する。
【0034】
(重量平均分子量)
GPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した。
【0035】
<合成例2>
前記4−tert−ブチルシクロヘキシルメタクリレートに代えて、イソボルニルメタクリレート(共栄社化学社製の「ライトエステルIB−X」)を用いた以外は、前記合成例1と同様にして各モノマーを重合させた。得られた共重合体について、前記合成例1と同様にして、融点、ピーク面積および重量平均分子量を測定した。その結果を表1に示す。
【0036】
<合成例3>
前記4−tert−ブチルシクロヘキシルメタクリレートに代えて、ジシクロペンタニルメタクリレート(日立化成工業社製の「FA−513M」)を用いた以外は、前記合成例1と同様にして各モノマーを重合させた。得られた共重合体について、前記合成例1と同様にして、融点、ピーク面積および重量平均分子量を測定した。その結果を表1に示す。
【0037】
<比較合成例1>
モノマー組成をステアリルアクリレート(日油社製)15部、セチルアクリレート(日油社製)30部、メチルアクリレート(日本触媒社製)50部、およびアクリル酸5部にした以外は、前記合成例1と同様にして各モノマーを重合させた。得られた共重合体について、前記合成例1と同様にして、融点、ピーク面積および重量平均分子量を測定した。その結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【実施例1】
【0039】
<感温性粘着テープの作製>
まず、前記合成例1で得られた共重合体溶液を、固形分が25重量%となるよう酢酸エチルで希釈した。ついで、酢酸エチルで希釈した共重合体溶液の固形分の総量に対して0.1重量%の割合でアジリジン化合物(日本触媒社製の「ケミタイトPZ−33」)を添加した。
【0040】
この共重合体溶液を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に塗布して100℃で10分間乾燥させ、厚さ20μmの粘着剤層が形成された感温性粘着テープを作製した。
【0041】
<評価>
得られた感温性粘着テープについて、貯蔵弾性率G’と、180°剥離強度とを評価した。各評価方法を以下に示すと共に、その結果を表2に示す。
【0042】
(貯蔵弾性率G’)
前記ガラス転移温度(Tg)の測定と同様にして、動的粘弾性測定装置「DMS 6100」を用いて40℃および150℃における粘着剤層の貯蔵弾性率G’を測定した。
【0043】
(180°剥離強度)
得られた感温性粘着テープについて、150℃の雰囲気温度におけるステンレス鋼に対する180°剥離強度(JIS Z0237準拠)を測定した。具体的には、150℃の雰囲気温度において、感温性粘着テープの粘着剤層が形成された面をステンレス鋼板に貼着し、ロードセルを用いて300mm/分の速度で前記感温性粘着テープを180°剥離した。その際、破壊状態を目視にて評価した。表2中、「界面破壊」は、粘着剤層とステンレス鋼板との間で剥離したことを示し、「凝集破壊」は、粘着剤層が破壊されたことを示す。
【実施例2】
【0044】
前記合成例1で得られた共重合体溶液に代えて、前記合成例2で得られた共重合体溶液を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、厚さ20μmの粘着剤層が形成された感温性粘着テープを作製した。得られた感温性粘着テープについて、前記実施例1と同様にして貯蔵弾性率G’と、180°剥離強度とを測定した。その結果を表2に示す。
【実施例3】
【0045】
前記合成例1で得られた共重合体溶液に代えて、前記合成例3で得られた共重合体溶液を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、厚さ20μmの粘着剤層が形成された感温性粘着テープを作製した。得られた感温性粘着テープについて、前記実施例1と同様にして貯蔵弾性率G’と、180°剥離強度とを測定した。その結果を表2に示す。
【0046】
[比較例1]
前記合成例1で得られた共重合体溶液に代えて、前記比較合成例1で得られた共重合体溶液を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、厚さ20μmの粘着剤層が形成された感温性粘着テープを作製した。得られた感温性粘着テープについて、前記実施例1と同様にして貯蔵弾性率G’と、180°剥離強度とを測定した。その結果を表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
表2から明らかなように、実施例1〜3は、150℃における貯蔵弾性率G’が6×103Pa以上であり、150℃の雰囲気温度における180°剥離強度が界面破壊である。これらの結果から、実施例1〜3は粘着剤層が高い凝集力を示しており、耐熱性に優れているのがわかる。
【0049】
これに対し、高Tgモノマーを配合していない比較例1は、150℃における貯蔵弾性率G’が5.03×103Paと低く、150℃の雰囲気温度における180°剥離強度が凝集破壊である。したがって、比較例1は、実施例1〜3よりも粘着剤層の凝集力は低く、耐熱性に劣る結果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖結晶性ポリマーを含有し、該側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度で粘着力を発現する感温性粘着剤であって、
前記側鎖結晶性ポリマーが、ガラス転移温度(Tg)110〜190℃の単独重合体を形成し得る高Tgモノマーと、側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーとの共重合体からなることを特徴とする感温性粘着剤。
【請求項2】
前記高Tgモノマーは、4−tert−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートおよびイソボルニルメタクリレートから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の感温性粘着剤。
【請求項3】
側鎖結晶性ポリマーを構成する前記他のモノマーは、
炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートと、
炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートおよび極性モノマーから選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載の感温性粘着剤。
【請求項4】
前記側鎖結晶性ポリマーは、前記高Tgモノマーと、側鎖結晶性ポリマーを構成する前記他のモノマーとを、重量比で10:90〜40:60の割合で重合させた共重合体からなる請求項1〜3のいずれかに記載の感温性粘着剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の感温性粘着剤からなる粘着剤層を、基材フィルムの片面または両面に設けたことを特徴とする感温性粘着テープ。

【公開番号】特開2010−202809(P2010−202809A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51293(P2009−51293)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】