説明

感熱凝固性ラテックスの製造方法

【課題】 感熱凝固剤を添加されていても、貯蔵安定性が良好で、優れた感熱凝固性を示すラテックスの製造方法を提供すること。
【解決手段】 アニオン性乳化剤(A)としてアルキルベンゼンスルフォネート(A1)、ジフェニルエーテルジスルフォネート(A2)または脂肪酸金属塩(A3)を使用し、ジエン系不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体混合物を、該単量体混合物100重量部に対して固形分が2.5重量部以上のシードラテックス(B)の存在下で、シード乳化重合してラテックス(I)を得、冷却した後、感熱凝固剤(II)を加える感熱凝固性ラテックスの製造方法で、かつ、アニオン乳化剤(A)とシードラテックス(B)の固形分重量比(B/A)が、(A1)使用では7〜13、(A2)使用では1.2〜2.0、(A3)使用では1.5〜5となる範囲で用いる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、感熱凝固性と貯蔵安定性に優れる感熱凝固性ラテックスの製造方法に関するもので、さらに詳細には、アニオン性乳化剤と特定量のシードラテックスの存在下でジエン系不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体をシード乳化重合に際して、特定のアニオン性乳化剤をシードラテックスに対して特定の固形分重量比で用いてラテックスを得、冷却した後、感熱凝固剤を添加する、感熱凝固性と貯蔵安定性に優れる、感熱凝固性ラテックスの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、水性組成物を用いた塗工または含浸分野においては、乾燥時の皮膜成形が困難であった。例えば、カーペットのバッキング分野においては、ブリスターの発生、紙、繊維等への含浸分野においては、マイグレーションによる不均一化、自動車の制振、チッピング塗料においては、フクレ等の問題が発生していた。
【0003】現在まで、上記問題点を解決できる添加剤は無く、澱粉、金属塩、ノニオン系界面活性剤、シリコン(ポリオルガノシロキサン)系感熱凝固剤等を複数併用していた。しかし、これらを添加した系は、粘度の経時変化が大きく、貯蔵安定性の悪いものであった。また、澱粉においては、腐敗が付きものであった。
【0004】
【発明の解決しようとする課題】上述したように、添加剤に依存した従来方法では、貯蔵安定性が悪く、感熱凝固性と貯蔵安定性の鼬ごっこであった。しかし、現在のところ、優れた感熱性と貯蔵安定性を両立できるラテックス組成等は、見い出されてはいない。従って、抜本的に解決するためには、ラテックス組成を見直し、感熱性の発現し易い条件を見つける必要がある。
【0005】本発明の課題は、ポリオルガノシロキサン等の感熱凝固剤を添加した場合においても、貯蔵安定性が良好で、優れた感熱凝固性を示すラテックスの製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意研究した結果、アニオン性乳化剤(A)として下記特定の乳化剤(A1)、(A2)または(A3)を用い、ジエン系不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体混合物を、該エチレン性不飽和単量体混合物に対して固形分重量が特定量以上となる量のシードラテックス(B)の存在下で、シード乳化重合するに際して、特定の乳化剤(A1)、(A2)または(A3)を、シードラテックス(B)に対して下記特定の固形分重量比でそれぞれ用いてラテックス(I)を得、冷却した後、感熱凝固剤(II)を添加すると、感熱凝固性と貯蔵安定性に優れる感熱凝固性ラテックスが得られること等見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】すなわち、本発明は、アニオン性乳化剤(A)としてアルキルベンゼンスルフォネート(A1)、ジフェニルエーテルジスルフォネート(A2)または脂肪酸金属塩(A3)を使用し、ジエン系不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体混合物を、該エチレン性不飽和単量体混合物100重量部に対して固形分重量が2.5重量部以上となる量のシードラテックス(B)の存在下で、シード乳化重合してラテックス(I)を得、冷却した後、感熱凝固剤(II)を加える感熱凝固性ラテックスの製造方法であって、かつ、該シード乳化重合に際して、アニオン乳化剤(A)とシードラテックス(B)とを、その固形分重量比(B/A)が、アルキルベンゼンスルフォネート(A1)使用の場合では7〜13、ジフェニルエーテルジスルフォネート(A2)使用の場合では1.2〜2.0、脂肪酸金属塩(A3)使用の場合では1.5〜5となる範囲でそれぞれ用いることを特徴とする、感熱凝固性ラテックスの製造方法、を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の感熱凝固性ラテックスの製造方法では、まず、アニオン性乳化剤(A)とシードラテックス(B)の固形分重量比(B/A)が、アニオン性乳化剤(A)としてアルキルベンゼンスルフォネート(A1)使用の場合では7〜13、ジフェニルエーテルジスルフォネート(A2)使用の場合では1.2〜2.0、脂肪酸金属塩(A3)使用の場合では1.5〜5となる範囲でそれぞれ用い、これらアニオン性乳化剤(A)とシードラテックス(B)の存在下で、ジエン系不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体混合物をシード乳化重合してラテックス(I)を得るものである。
【0009】このシード乳化重合方法としては、特に限定されないが、例えば、アニオン性乳化剤(A)、シードラテックス(B)、ジエン系不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体混合物と共に、更に必要に応じて、連鎖移動剤、重合開始剤、重合禁止剤、各種電解質、pH調製剤等を併用してシード乳化重合する方法が挙げられる。このシード乳化重合に際しては、得られるラテックス(I)のゲル分率が50〜100重量%となるまで重合させることが好ましく、なかでもゲル分率が70〜100重量%となるまで重合させることが特に好ましい。また、このラテックス(I)のゲル分率の調製は、連鎖移動剤の添加により調製することが好ましい。
【0010】尚、上記ラテックス(I)におけるゲル分率とは、2cm(縦)×2cm(横)×0.5cm(厚み)のラテックスフィルムを作成し、トルエン/メチルエチルケトン:60/40(重量比)の混合溶媒中に25℃で24時間浸漬して、フィルムの不溶分を完全乾燥させたときの重量を不溶分重量として、下記の式により算出した値(重量%)である。
ゲル分率(重量%)=(不溶分重量/元のフィルム重量)×100
【0011】本発明で用いるアニオン性乳化剤(A)としては、ドデシルベンゼンスルフォン酸ソーダ等のアルキルベンゼンスルフォネート(A1);ジフェニルエーテルジスルフォネート(A2);または、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ヒマシ油カリウム塩等の脂肪酸金属塩(A3)が挙げられ、なかでもアルキルベンゼンスルフォン酸ソーダ(A1)、ジフェニルエーテルジスルフォン酸ソーダ(A2)が好ましい。
【0012】これらアニオン性乳化剤(A)は、アニオン性乳化剤(A)としてアルキルベンゼンスルフォネート(A1)を使用したの場合、シードラテックス(B)との固形分重量比(B/A)が7〜13となる範囲で使用することが必要であり、なかでも8〜12となる範囲で使用することが好ましい。また、アニオン性乳化剤(A)としてジフェニルエーテルジスルフォネート(A2)を使用したの場合、該固形分重量比(B/A)が1.2〜2.0となる範囲で使用することが必要であり、なかでも1.4〜1.8となる範囲で使用することが好ましい。更に、アニオン性乳化剤(A)として脂肪酸金属塩(A3)を使用したの場合、該固形分重量比(B/A)が1.5〜5となる範囲で使用することが必要であり、なかでも2〜4となる範囲で使用することが好ましい。これらアニオン性乳化剤(A)を、アニオン性乳化剤(A)とシードラテックス(B)との固形分重量比(B/A)が上記を外れる範囲で使用した場合には、感熱凝固性が著しく低下するため、いずれも好ましくない。
【0013】また、本発明で用いるシードラテックス(B)としては、例えば、スチレン−ブタジエン系ラテックス、メタアクリル酸メチル−ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系ラテックス、クロロプレン、イソプレン、ポリブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン、ポリエチレンエマルジョン、ポリスチレンエマルジョン、ポリエステルエマルジョン等が挙げられ、なかでもスチレン−ブタジエン系ラテックス、メタアクリル酸メチル−ブタジエン系ラテックスが好ましい。
【0014】上記シードラテックス(B)の使用量は、ジエン系不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体混合物100重量部に対して、シードラテックス(B)の固形分重量が2.5重量部以上となる量であることが必須であり、なかでも、2.5〜100重量部なる量であることが好ましく、3〜50重量部なる量であることが特に好ましい。シードラテックス(B)の使用量が、該不飽和単量体混合物100重量部に対して2.5重量部未満では、貯蔵安定性の良好な感熱凝固性ラテックスは得られず、好ましくない。
【0015】本発明においてラテックス(I)を合成する際に用いるジエン系不飽和単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどが挙げられるが、これらの内、1,3−ブタジエンが好ましい。その使用量は、特に限定されないが、シード乳化重合に用いるジエン系不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体混合物100重量部に対して、通常5〜90重量部、好ましくは20〜80重量部の範囲である。
【0016】また、上記ジエン系不飽和単量体と共に用いる該ジエン系不飽和単量体以外のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、イタコン酸、そのハーフエステル、フマル酸、そのハーフエステル、マレイン酸、そのハーフエステル、メタアクリル酸、アクリル酸等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体;スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルトルエン、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルヒドロキシエチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート等の非架橋性のエチレン性不飽和単量体が挙げられる。更に、エチレン性不飽和単量体としては、ラテックス(I)のシード乳化重合に際して内部架橋剤となりうる架橋性のエチレン性不飽和単量体を使用することもでき、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、グリシジルメタクリレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0017】上記ジエン系不飽和単量体以外のエチレン性不飽和単量体の使用量は、特に限定されないが、シード乳化重合に用いるジエン系不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体混合物100重量部に対して、通常10〜95重量部、好ましくは20〜80重量部の範囲であり、なかでも、これらジエン系不飽和単量体以外のエチレン性不飽和単量体が、上記カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体と上記非架橋性のエチレン性不飽和単量体と、更に必要により上記架橋性のエチレン性不飽和単量体とを含有してなるものであって、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体の使用量が0.5〜5重量部の範囲であることが、貯蔵安定性と感熱凝固性に優れるラテックスが得られることから好ましい。また、上記架橋性のエチレン性不飽和単量体を使用する場合の使用量は、通常0.5〜10重量部の範囲である。
【0018】ラテックス(I)のシード乳化重合に際して使用することができる重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩系開始剤、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物、過酸化水素等を挙げることができる。重合開始剤の使用量は、ジエン系不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体100重量部に対して、通常0.03〜2.5重量部となる範囲であり、なかでも0.05〜1.0重量部となる範囲が好ましい。
【0019】また、ラテックス(I)のシード乳化重合に際しては、乳化重合を促進させるために、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、グルコース、ホルムアルデヒド、L−アスコルビン酸、ナトリウムスルホキシレート等の還元剤、グリシン、アラニン、エチレンジアミン四酢酸アンモニウム塩等のキレート剤を併用することもできる。
【0020】ラテックス(I)のシード乳化重合に際しては、前記したようにゲル分率を50〜100重量%に調製することが好ましいが、このためにシード乳化重合時に連鎖移動剤、重合停止剤等を適宜使用して、分子量や重合率を調整することができる。更に、冷却による反応中断によりゲル分率の調製を行っても良い。
【0021】連鎖移動剤としては、各種のものが使用でき、特に限定されないが、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−トデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類、ターピノーレン、t−テルピネン、α−メチルスチレンダイマー、エチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンスルフィド、アミノフェニルスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。連鎖移動剤の使用量は、各連鎖移動剤の移動定数により異なる。例えば、t−ドデシルメルカプタンを例に挙げると、ジエン系不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体混合物100重量部に対して、通常0〜1.0重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%である。
【0022】また、重合停止剤としては、例えば、ハイドロキノン(フェノール)系、アミン系、硫黄系、硫酸ヒドロキシルアミン、アンモニア、苛性ソーダ、苛性カリ等が挙げられ、またその他重合停止効果のあるものが使用でき、更にこれらを併用しても良い。その使用量は重合禁止剤の種類および単量体との反応性比により異なる。
【0023】本発明の感熱凝固性ラテックスの製造方法では、シード乳化重合してラテックス(I)を得た後、得られたラテックス(I)を、好ましくは、これに添加する感熱凝固剤(II)の感熱温度未満、例えば30℃未満、好ましくは10〜30℃となるまで冷却し、次いで感熱凝固剤(II)を添加する。感熱凝固剤(II)の添加方法としては、特に限定はなく、通常は冷却後のラテックス(I)に感熱凝固剤(II)を加えて攪拌するだけでよい。
【0024】感熱凝固剤(II)としては、特に限定はなく、例えば、ポリオルガノシロキサン系感熱凝固剤、ノニオン界面活性剤系感熱凝固剤、メチルセルロース系感熱凝固剤、塩化アンモニウム等の有機塩系感熱凝固剤、硝酸ナトリウム等の金属塩系感熱凝固剤、酸化亜鉛等の金属酸化物系感熱凝固剤等が挙げられ、なかでもポリオルガノシロキサン系感熱凝固剤が好ましい。ポリオルガノシロキサン系感熱凝固剤としては、例えば、ポリエチレンオキサイド変性メチルポリシロキサン、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド変性メチルポリシロキサン等のポリアルキレンオキサイド変性メチルポリシロキサンが挙げられる。
【0025】これら感熱凝固剤(II)の感熱温度(曇点)としては、感熱凝固剤(II)を加えて得られる感熱凝固性ラテックスの感熱温度が、感熱凝固剤(II)自体の感熱温度よりも通常5〜10℃程度高くなること、感熱凝固性ラテックスの感熱凝固温度としては、40〜95℃であること好ましく、なかでも50〜90℃であることが特に好ましいことを考慮して、30〜90℃であること好ましく、なかでも40〜85℃であることが特に好ましい。
【0026】感熱凝固剤(II)の使用量は、ラテックス(I)の固形分100重量部に対して、通常0.05〜1.0重量部となる範囲であり、なかでも0.08〜0.5重量部となる範囲が好ましい。
【0027】このような本発明の製造方法で得られた感熱凝固性ラテックスは、ゲル化の温度幅が狭く、シャープな感熱性を示し、また貯蔵安定性も良好である。また、この感熱凝固性ラテックスは、アニオン性乳化剤(A)とシードラテックス(B)との固形分重量比(B/A)が前記した範囲の値を満足する関係であれば、アニオン性乳化剤(A)とシードラテックス(B)の使用量の大小に関係なく優れた感熱性を発現するが、シードラテックス(B)の固形分重量が、ジエン系不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体100重量部に対して2.5重量部以上となる量で、大きい程、経時増粘が無く、貯蔵安定性良好である。更に、起泡剤を後添した場合でも、感熱凝固性ラテックスの固形分100重量部に対して2重量部以下程度の添加量であれば、同様の感熱性を示す。
【0028】また、この感熱凝固性ラテックスには、その使用目的に応じて、例えば、下記のような各種添加剤等を加えることができる。
【0029】感熱凝固性ラテックスに加えることができる添加剤としては、例えば、無機顔料、有機顔料等の着色剤、キレート剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、圧縮回復剤、消泡剤、殺菌剤、防腐剤、湿潤剤、エポキシ系を除く架橋剤、酸化亜鉛・硫黄・加硫促進剤等の加硫剤、タック防止剤、起泡剤、整泡剤、浸透剤、撥水・撥油剤・ブロッキング防止剤、難燃剤、充填剤、増粘剤等を挙げることができる。かかる添加剤の選択、添加量、添加順序等は、ラテックス組成物の製造条件、作業性、安定性、更に加工適性、塗布量等を考慮して、適宜に決定されれば良い。但し、起泡剤、整泡剤、湿潤剤等の界面活性剤系添加剤は、感熱凝固性を阻害するため、なるべく少量の添加にすべきである。
【0030】
【実施例】以下に実施例、比較例を挙げて本発明を説明するが、例中における部及び%は特に断らない限り、重量基準である。
【0031】実施例1〜12および比較例1〜6蒸留水110部、スチレン48部、ブタジエン50部およびイタコン酸2部と共に、第1表または第2表に示す量のアニオン乳化剤(A)およびシードラテックス(B)として第1表または第2表に示す量のスチレン−ブタジエン系ラテックス〔大日本インキ化学工業(株)製ラックスターDS−801、固形分含有率50%〕を、オートクレー部内に仕込み、60℃に昇温後、過硫酸アンモニウム0.3部を仕込みで10時間反応を行った。反応終了後、30℃以下まで冷却し、アンモニアを加えてpHを8.5〜9.0に調整した。更に、ポリオルガノシロキサン系感熱凝固剤F−474〔信越化学(株)製ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド変性メチルポリシロキサン〕0.2部を加えて攪拌し、感熱凝固性ラテックスを得た。
【0032】得られたラテックス各100mlを密閉された100mlのガラス瓶に充填し、40℃で7日間放置した後、増粘や凝固等の変化の有無を観察して貯蔵安定性を評価した。
【0033】また、得られたラテックス各100mlを200mlのビーカーに移し、95℃に保持した湯浴中で薬サジを用いて手で撹拌しながら加温し、撹拌中に急激な増粘を手に感じた温度(増粘開始温度)と、完全に凝固するまでの温度(感熱凝固温度)を測定した。これらの結果を第1表および第2表に示す。
【0034】
【表1】


【0035】
【表2】


【0036】
【表3】


【0037】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、ポリオルガノシロキサン等の感熱凝固剤を添加した場合においても、貯蔵安定性が良好で、優れた感熱凝固性を示すラテックスを提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 アニオン性乳化剤(A)としてアルキルベンゼンスルフォネート(A1)、ジフェニルエーテルジスルフォネート(A2)または脂肪酸金属塩(A3)を使用し、ジエン系不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体混合物を、該エチレン性不飽和単量体混合物100重量部に対して固形分重量が2.5重量部以上となる量のシードラテックス(B)の存在下で、シード乳化重合してラテックス(I)を得、冷却した後、感熱凝固剤(II)を加える感熱凝固性ラテックスの製造方法であって、かつ、該シード乳化重合に際して、アニオン乳化剤(A)とシードラテックス(B)とを、その固形分重量比(B/A)が、アルキルベンゼンスルフォネート(A1)使用の場合では7〜13、ジフェニルエーテルジスルフォネート(A2)使用の場合では1.2〜2.0、脂肪酸金属塩(A3)使用の場合では1.5〜5となる範囲でそれぞれ用いることを特徴とする、感熱凝固性ラテックスの製造方法。
【請求項2】 感熱凝固剤(II)が、ポリオルガノシロキサン系感熱凝固剤である、請求項1記載の感熱凝固性ラテックスの製造方法。
【請求項3】 感熱凝固剤(II)として30〜90℃の感熱温度を有するポリオルガノシロキサン系感熱凝固剤を、シード乳化重合して得られたラテックス(I)の固形分100重量部に対して0.05〜1.0重量部となる範囲で該ラテックス(I)に加える、請求項1記載の感熱凝固性ラテックスの製造方法。
【請求項4】 アニオン乳化剤(A)とシードラテックス(B)とを、その固形分重量比(B/A)が、アルキルベンゼンスルフォネート(A1)使用の場合では8〜12、ジフェニルエーテルジスルフォネート(A2)使用の場合では1.4〜1.8、脂肪酸金属塩(A3)使用の場合では2〜4となる範囲でそれぞれ用いて、エチレン性不飽和単量体混合物100重量部に対して固形分重量が2.5〜100重量部のシードラテックス(B)の存在下で、シード乳化重合する、請求項1、2または3記載の感熱凝固性ラテックスの製造方法。
【請求項5】 エチレン性不飽和単量体混合物100重量部に対して固形分重量が3〜50重量部のシードラテックス(B)の存在下で、シード乳化重合する、請求項1〜4のいずれか1項記載の感熱凝固性ラテックスの製造方法。
【請求項6】 ラテックス(I)のゲル分率が50〜100重量%になるまでシード乳化重合する、請求項1〜5のいずれか1項記載の感熱凝固性ラテックスの製造方法。

【公開番号】特開2002−284958(P2002−284958A)
【公開日】平成14年10月3日(2002.10.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−89929(P2001−89929)
【出願日】平成13年3月27日(2001.3.27)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】