説明

感熱性粘着ラベル発行装置および感熱性粘着ラベル発行方法

【課題】感熱性粘着ラベル発行装置の小型軽量化に寄与し、発行する粘着ラベルの長さに制約がなく、ラベル発行に要する時間を長くせず制御を簡略化可能にする。
【解決手段】記録部2で感熱性粘着シート4の記録可能層に記録を行ないつつ、印字用プラテンローラ6により感熱性粘着シート4を搬送し、記録が行われた感熱性粘着シート4の感熱性粘着剤層を、熱活性化部3で加熱して熱活性化させ粘着性を発現させるとともに、熱活性化用プラテンローラ8により感熱性粘着シート4を搬送する。感熱性粘着シート4の感熱性粘着剤層を熱活性化させる最中に、熱活性化用プラテンローラ8による感熱性粘着シート4の搬送を続行しつつ、印字用プラテンローラ6の作動を停止させて感熱性粘着シート4の記録部2に位置する部分への搬送力供給を停止することによって、感熱性粘着シート4に張力を発生させてそれを切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感熱性粘着ラベル発行装置および感熱性粘着ラベル発行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な物品に貼り付け可能な粘着ラベルを発行するために、感熱性粘着シートの一方の面に設けられた感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させることにより粘着性を発現させる方法がある。また、感熱性粘着シートの他方の面に記録可能層を設けておき、この記録可能層を部分的に発色させることにより、表面に文字や記号や図柄等が記録された粘着ラベルを得ることができる。
【0003】
特許文献1には、一方の面に感熱性粘着剤層を有し他方の面に記録可能層である感熱性発色層を有する感熱性粘着シートから粘着ラベルを発行する方法が開示されている。その方法によると、感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる手段と、感熱性発色層を加熱して記録する手段を、いずれも、サーマルプリンタに広く採用されている公知のサーマルヘッドによって構成している。そして、最初に印字用サーマルヘッド(記録手段)によって感熱性発色層に記録を行い、その後に熱活性化用サーマルヘッド(熱活性化手段)によって感熱性粘着剤層に粘着性を発現させている。この場合、記録手段のみならず熱活性化手段としても公知のサーマルヘッドを用いることによって、部分的に粘着性を発現させることが容易にでき、粘着部分と非粘着部分とを比較的自由に混在させることができる。また、記録手段および熱活性化手段として、構成の異なる2種類の加熱手段を用いる場合に比べて、部品の共通化による製造コストの低減が可能である。なお、仮に熱活性化の後に記録を行う構成にした場合には、既に粘着性が発現した感熱性粘着シートに対して記録を行うことになるため、記録手段に付属する搬送部材や支持部材(搬送ローラやプラテンローラなど)に感熱性粘着シートが貼り付くおそれがあるなど、取り扱いが極めて煩雑になるため好ましくない。
【0004】
また、特許文献1の方法では、搬送機構の簡素化や製造コストの低減のために、長尺の連続紙状の感熱性粘着シートをその都度切断することによって所望の長さの粘着ラベルを発行している。この場合、感熱性粘着ラベル発行装置に切断機構(カッター)を設けておく必要がある。この切断機構は、記録手段と熱活性化手段の間に配置される。
【0005】
仮に、切断機構を記録手段の前に配置すると、実質的に単票紙(枚葉紙)を用いる場合と同様に、切断されたシートを記録手段まで送り込むための搬送ローラやモータなどの搬送機構が必要になり、連続紙を用いることによる構成の簡略化や製造コストの低減などの効果が得られなくなる。また、仮に、切断機構を熱活性化手段の後に配置すると、切断後に残った感熱性粘着シートを、切断機構から記録手段まで巻き戻し(バックフィード)しなければならない。その場合、切断を行う度の巻き戻し量が大きく、記録手段および熱活性化手段は、1枚の粘着ラベルを発行する度に感熱性粘着シートが2回通過する(1往復)することになる。このように感熱性粘着シートの動きに無駄が大きくて動作効率が悪く、また、感熱性粘着シートが頻繁に通過する記録手段および熱活性化手段のスループットや耐久性が低下するおそれがある。さらに、切断後の残りの感熱性粘着シートの先端部分は、熱活性化手段を一度通過しているため既に熱活性化されている可能性が高い。このように先端部分が熱活性化されて粘着性が発現した感熱性粘着シートを記録手段まで巻き戻し、改めて記録および熱活性化を行うため、ジャミングなどの搬送不良を生じたり、搬送が精度良く行えないことに起因して記録品質が低下するなどの不具合が生じ易い。このような不具合を防ぐために、熱活性化手段の動作を早めに停止して、切断後の残りの感熱性粘着シートの先端部分が熱活性化されないようにすると、逆に粘着ラベルの後端部の熱活性化が不十分で、粘着性に乏しく、剥げ易い粘着ラベルになってしまう可能性がある。
【0006】
以上のような理由から、特許文献1をはじめとする従来の感熱性粘着ラベル発行装置では、記録手段と熱活性化手段の間に切断機構が配置されている。一般的な切断機構であるカッターは、感熱性粘着シートの搬送路を挟んで固定刃と可動刃が対向して位置し、可動刃が感熱性粘着シートに当接してから固定刃まで移動することにより、可動刃と固定刃によって感熱性粘着シートを挟んで切断する構成である。このような構成であるため、切断時には感熱性粘着シートが静止していなければならない。もしも切断作業中に感熱性粘着シートが移動しようとすると、可動刃に接する部分が引き擦られて、良好な切断を実現できない可能性が高い。従って、感熱性粘着シートの切断時には搬送を一旦停止している。
【0007】
感熱性粘着シートの一部が熱活性化手段に接している状態で、その感熱性粘着シートが切断のために一旦停止すると、感熱性粘着シートの感熱性粘着剤層の同一個所が熱活性化手段の発熱部に接したまま保持される。その結果、感熱性粘着剤が熱活性化手段に強く貼り付いてしまう。それから感熱性粘着シートの搬送を再開すると、搬送ローラが空回りしてしまい、ジャミングなどの搬送不良が生じる。また、感熱性粘着シートを熱活性化手段から引き剥がせたとしても、感熱性粘着剤の一部が熱活性化手段に貼り付いて感熱性粘着シートから脱落してしまう可能性がある。その場合、発行された粘着ラベルの粘着性が不十分になるとともに、熱活性化手段の表面に貼り付いて残留した感熱性粘着剤は、後続の感熱性粘着シートにさらに付着し易くなる。すなわち、感熱性粘着剤が熱活性化手段の表面に付着することによって、それ以降は感熱性粘着剤の付着および堆積量が加速度的に増大し、正常な搬送の妨げになる。
【0008】
また、感熱性粘着剤層の同一個所が熱活性化手段の作動または余熱によって加熱され続けると、熱活性化手段には直接接触していない感熱性発色層にまで熱が伝わって、意図しない発色を生じてしまう可能性がある。その場合、記録手段によって形成された記録内容が損なわれてしまう。
【0009】
そこで、特許文献2に記載の方法では、感熱性粘着シートの切断前に、切断機構と熱活性化手段の間で感熱性粘着シートに弛みを生じさせている。この弛みが存在することによって、切断機構による切断時に切断機構に対向する位置で感熱性粘着シートの搬送を一時停止させた時であっても、少なくとも弛みが解消するまでの期間は、熱活性化手段の発熱部に接する位置の感熱性粘着シートの搬送を停止させないで済む。感熱性粘着シートの同一個所が熱活性化手段の発熱部に長時間接することがないため、感熱性粘着シートの熱活性化手段への貼り付きや意図しない発色が防止できる。このような感熱性粘着シートの弛みは、記録手段に付属する搬送機構(ローラ)と熱活性化手段に付属する搬送機構(ローラ)との間に速度差が生じるように両搬送機構の動作を制御することによって形成可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3623084号公報
【特許文献2】特許第4064707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記した特許文献2に記載の方法によると、感熱性粘着シートの切断のために感熱性粘着シートの一部が熱活性化手段の発熱部に接したまま停止させられることによる感熱性粘着剤の熱活性化手段への貼り付きや感熱性発色層の意図しない発色を抑制できる。しかし、以下に述べる幾つかの問題点が生じる。
【0012】
特許文献2の方法では、切断機構と熱活性化手段の間に感熱性粘着シートを弛ませるための空間が必要であり、特に、感熱性粘着シートの搬送方向のみならずそれに直交する方向(高さ方向)に大きな空間が必要であるので、装置の小型化の妨げとなる。
【0013】
また、特許文献2の方法では、発行する粘着ラベルの長さに一定の制約が生じる。仮に、発行する粘着ラベルの搬送方向の長さが、感熱性粘着シートの弛みを生じさせるための空間(前記したように比較的大きな空間)よりも短い場合には、切断後の感熱性粘着シートが熱活性化手段までたどり着けない。これを解決するためには、別の搬送機構などを設けて構成を複雑化する必要がある。
【0014】
特許文献2の方法では、2つの搬送機構の速度差を生じさせて弛みを形成するために、記録および熱活性化には直接関与しない作業時間が必要になるので、粘着ラベルの発行に要する時間が長くなる。さらに、2つの搬送機構の速度差を生じさせて適切な大きさの弛みを形成するために、比較的複雑な制御が必要である。
【0015】
また、切断機構が、感熱性粘着シートの搬送方向に直交する方向に移動する可動刃とその駆動機構を有しているため、装置の大型化および重量化を招き、切断動作時に騒音を生じるという問題がある。
【0016】
そこで、本発明の目的は、前記した種々の問題を解決し、装置の小型化および軽量化に寄与し、発行する粘着ラベルの長さに制約がなく、粘着ラベルの発行に要する時間を長くすることがなく、制御を簡略化できる、感熱性粘着ラベルの発行装置および発行方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、一方の面に感熱性粘着剤層が設けられ他方の面に記録可能層が設けられた感熱性粘着シートから粘着ラベルを発行する感熱性粘着ラベル発行装置において、感熱性粘着シートを搬送するための搬送機構を有するとともに記録可能層に記録を行う記録部と、感熱性粘着シートの搬送方向に関して記録部の下流側に位置し、感熱性粘着シートを搬送するための搬送機構を有するとともに感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる熱活性化部と、記録部の搬送機構と熱活性化部の搬送機構の動作を制御する制御装置とを有し、制御装置は、熱活性化部の搬送機構を作動させて感熱性粘着シートの熱活性化部に位置する部分に搬送力を供給すると同時に、記録部の搬送機構の作動を停止させて感熱性粘着シートの記録部に位置する部分への搬送力供給を停止することによって、感熱性粘着シートを切断するための張力を感熱性粘着シートに発生させることができることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、一方の面に感熱性粘着剤層が設けられ他方の面に記録可能層が設けられた感熱性粘着シートから粘着ラベルを発行する感熱性粘着ラベル発行方法において、記録部にて感熱性粘着シートの記録可能層に記録を行ないつつ、記録部の搬送機構を作動させて感熱性粘着シートを搬送し、記録部により記録可能層に記録が行われた感熱性粘着シートの感熱性粘着剤層を、熱活性化部にて加熱して熱活性化させ、粘着性を発現させるとともに、熱活性化部の搬送機構を作動させて感熱性粘着シートを搬送し、熱活性化部により感熱性粘着シートの感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる最中に、熱活性化部の搬送機構による感熱性粘着シートの搬送を続行しつつ、記録部の搬送機構の作動を停止させて感熱性粘着シートの記録部に位置する部分への搬送力供給を停止することによって、感熱性粘着シートに張力を発生させて感熱性粘着シートを切断することをもう1つの特徴とする。
【0019】
より詳しくは、感熱性粘着シートの切断すべき部分が、記録部と熱活性化部の間に設けられたガイド部材の、感熱性粘着シートの搬送路に向けて突出する凸状部分に対向した時点で、記録部の搬送機構の作動を停止させて、感熱性粘着シートに張力を発生させて感熱性粘着シートを切断する。さらに、感熱性粘着シートに設けられたミシン目が、ガイド部材の凸状部分に対向した時点で、記録部の搬送機構の作動を停止させて、感熱性粘着シートに張力を発生させて感熱性粘着シートを切断するようにするとよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、記録部の搬送機構と熱活性化部の搬送機構とを利用して感熱性粘着シートに張力を発生させてその感熱性粘着シートを切断することができる。従って、カッター等の切断機構が不要になり、感熱性粘着ラベル発行装置の小型化および軽量化が可能である。また、カッター等の切断機構を用いないため、切断部分において感熱性粘着シートの搬送を一旦停止する必要がなく、それによって感熱性粘着シートの熱活性化部への貼り付きなどの問題を回避できる。従って、感熱性粘着シートに弛みを生じさせるなどの工夫を施す必要がなく、制御の複雑化や発行に要する時間の長期化を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態の感熱性粘着ラベル発行装置による感熱性粘着ラベル発行方法における、記録部によって感熱性粘着シートに記録している状態を示す概略図である。
【図2】図1に示す状態に続いて、記録部による感熱性粘着シートへの記録を続行しつつ感熱性粘着シートを記録部から下流側へ搬送している状態を示す概略図である。
【図3】図2に示す状態に続いて、感熱性粘着シートを熱活性化部まで搬送している状態を示す概略図である。
【図4】図3に示す状態に続いて、熱活性化部によって感熱性粘着シートに粘着性を発現させつつ感熱性粘着シートをさらに搬送している状態を示す概略図である。
【図5】図4に示す状態に続いて、熱活性化部による感熱性粘着シートの粘着性の発現を続行させつつ、感熱性粘着シートに張力を発生させている状態を示す概略図である。
【図6】図5に示す状態に続いて、熱活性化部による感熱性粘着シートの粘着性の発現を続行させつつ、感熱性粘着シートを張力によって切断した状態を示す概略図である。
【図7】図6に示す状態に続いて、熱活性化部による感熱性粘着シートの粘着性の発現を続行させつつ、切断した感熱性粘着シートをさらに搬送するとともに、切断した後の残りの感熱性粘着シートを巻き戻している状態を示す概略図である。
【図8】図7に示す状態に続いて、粘着ラベルの発行と、切断した後の残りの感熱性粘着シートの巻き戻しが完了した状態を示す概略図である。
【図9】本発明の一実施形態の感熱性粘着ラベル発行装置の制御装置の具体的な構成を示すブロック図である。
【図10】(a)は本発明の一実施形態の感熱性粘着ラベル発行装置のガイド部材の正面図、(b)はその側面図、(c)はA−A線断面図、(d)はB−B線断面図である。
【図11】(a)はガイド部材の他の例の正面図、(b)はその側面図、(c)はA’−A’線断面図、(d)はB’−B’線断面図である。
【図12】本発明の粘着ラベル発行に用いられる感熱性粘着シートの要部を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明の感熱性粘着ラベル発行装置の要部を示す概略図である。本実施形態の感熱性粘着ラベル発行装置は、主に、ロール体収容部1と、記録部2と、熱活性化部3を有している。
【0024】
ロール体収容部1は、連続紙状の感熱性粘着シート4からなるロール体4aを収容する部分であり、図示しないがロール体4aを保持する保持部材を有している。感熱性粘着シート4は、詳述しないが、シート状基材の一方の面に、加熱されて熱活性化すると粘着性を発現する感熱性粘着剤層が設けられ、他方の面に、加熱されると発色する感熱性発色層(記録可能層)が設けられたものである。
【0025】
記録部2は、記録手段である印字用サーマルヘッド5と、搬送機構である印字用プラテンローラ6を有している。印字用サーマルヘッド5は、供給される感熱性粘着シート4の感熱性発色層に当接する位置に配置されており、印字用プラテンローラ6は印字用サーマルヘッド5に対向する位置にある。印字用サーマルヘッド5は、独立して駆動される多数の発熱体からなる発熱部を有するものであり、各発熱体が適宜のタイミングで選択的に駆動されることにより、任意の文字や記号や図柄等を感熱性発色層に記録することができる。印字用プラテンローラ6は、回転することにより感熱性粘着シート4に搬送力を付与するとともに、記録時に感熱性粘着シート4を印字用サーマルヘッド5に圧接させる働きをする。
【0026】
熱活性化部3は、熱活性化手段である熱活性化用サーマルヘッド7と、搬送機構である熱活性化用プラテンローラ8と、熱活性化された粘着ラベルの後端部を熱活性化用サーマルヘッドから離れさせるための排出ローラ12および排出ガイド13を有している。熱活性化用プラテンローラ8と排出ローラ12は同一の駆動源(図9に示す第2ステッピングローラ17)から動力を得ており、それらの作動のタイミングは同期しており作動時の搬送量は一致している。熱活性化用サーマルヘッド7は、前記した記録部2の印字用サーマルヘッド5と同一構成であり、供給される感熱性粘着シート4の感熱性粘着剤層に当接する位置に配置されている。この熱活性化用サーマルヘッド7は、各発熱体が適宜のタイミングで選択的に駆動されることにより、感熱性粘着剤層のうちの所望の部分のみを加熱して熱活性化させて粘着性を発現させ、1枚のラベルにおいて粘着部分と非粘着部分とを比較的自由に混在させることができる。熱活性化用プラテンローラ8は熱活性化用サーマルヘッド7に対向する位置にあり、印字用プラテンローラ6と同様に、回転することにより感熱性粘着シート4に搬送力を付与するとともに、熱活性化時に感熱性粘着シート4を熱活性化用サーマルヘッド7に圧接させる働きをする。記録手段と熱活性化手段が同一構成のサーマルヘッド5,7であるため、それぞれ異なる構成の加熱手段を設ける場合に比べて、制御の簡略化と製造コストの低減が図れる。また、排出ローラ12は、感熱性粘着シート4の、粘着性が発現した熱活性面(感熱性粘着剤層)に接触してそれを搬送するものであり、表面に非粘着加工が施されている。
【0027】
模式的に図示されている本実施形態の制御装置9は、主に、記録部2の印字用サーマルヘッド5および印字用プラテンローラ6と、熱活性化部3の熱活性化用サーマルヘッド7、熱活性化用プラテンローラ8、および排出ローラ12の動作を制御するものである。具体的には、制御部9は、図9に示すように、印字用サーマルヘッド5を駆動するための印字用サーマルヘッド駆動部14と、熱活性化用サーマルヘッド7を駆動するための熱活性化用サーマルヘッド駆動部15と、印字用プラテンローラ6を駆動するための第1ステッピングローラ16と、熱活性化用プラテンローラ8と排出ローラ12を駆動するための第2ステッピングローラ17を有している。さらに、これらの各駆動手段14〜17にインターフェース(I/F)18を介して接続され、各駆動手段14〜17を制御する中央処理装置(CPU)19が設けられている。また、CPU19による処理のために用いられるリード・オンリー・メモリ(ROM)20およびランダム・アクセス・メモリ(RAM)21と、粘着ラベルの発行状況等を使用者に表示するための表示部22と、表示部22に表示された発行状況等を見ながら使用者が操作して感熱性粘着ラベル発行装置全体の動作を指示するための操作部23が設けられている。
【0028】
本実施形態では、記録部2と熱活性化部3の間に、従来のような切断機構(例えば固定刃と可動刃とからなるカッター)は設けられていない。ただし、1対のガイド部材10,11が配置されている。下側のガイド部材11には、凸状部分である尖端部11aが形成されている。
【0029】
記録部2の印字用サーマルヘッド5と印字用プラテンローラ6の間のニップ部と、1対のガイド部材10,11の間の隙間と、熱活性化部3の熱活性化用サーマルヘッド7と熱活性化用プラテンローラ8の間のニップ部とによって、粘着ラベルとなる感熱性粘着シート4の搬送路が構成されている。なお、ここでは、感熱性粘着シート4が所定の長さに切断され、かつ粘着力が発現させられたものを、粘着ラベルと称している。粘着ラベルは、粘着面(感熱性粘着剤層が存在する面)と反対側の面が、文字や記号や図柄等の記録面(感熱性発色層が存在する面)になっている。
【0030】
この感熱性粘着ラベル発行装置を用いた感熱性粘着ラベル発行方法について説明する。まず、ロール体収容部1に収容されているロール体4aから感熱性粘着シート4を引き出して、記録部2に供給する(図1参照)。具体的には、感熱性発色層が印字用サーマルヘッド5側に向いた状態で感熱性粘着シート4を記録部2に供給する。そして、制御装置9に駆動制御された印字用プラテンローラ6の回転によって感熱性粘着シート4を図面右方から左方に向けて搬送するとともに、制御装置9によって印字用サーマルヘッド5が駆動されて、感熱性粘着シート4の感熱性発色層を加熱して発色させ、任意の文字や記号や図柄等を記録する(図2参照)。こうして感熱性発色層に記録された感熱性粘着シート4は、ガイド部材10,11の間の隙間を通って熱活性化部1に供給される(図3参照)。なお、記録部2の印字用サーマルヘッド5は、粘着ラベル1枚分の記録が完了したら作動停止して待機する。一方、印字用プラテンローラ6は回転して感熱性粘着シート4の搬送を続ける。
【0031】
感熱性粘着剤層が熱活性化用サーマルヘッド7側に向いた状態で、感熱性粘着シート4が熱活性化部3に供給されてくると、熱活性化用プラテンローラ8および排出ローラ12の回転によって感熱性粘着シート4を図面右方から左方に向けて搬送するとともに、熱活性化用サーマルヘッド7が駆動されて感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる(図4参照)。熱活性化した感熱性粘着剤層には粘着性が発現する。
【0032】
このような感熱性粘着シート4の熱活性化の途中で、感熱性粘着シート4の切断すべき個所、すなわち、感熱性粘着シート4の、先端からの距離が発行すべき粘着ラベルの長さと一致する個所が、ガイド部材11の尖端部11aと対向する位置に来る。その時点で、制御装置9の駆動制御により、熱活性化部3の熱活性化用サーマルヘッド7は感熱性粘着シート4の感熱性粘着材層の熱活性化を続行し熱活性化用プラテンローラ8および排出ローラ12は回転し続ける一方、記録部2の印字用プラテンローラ6は回転を停止する。そうすると、感熱性粘着シート4の先端側は前方への搬送力を受け続けつつ、後側は記録部2の印字用サーマルヘッド5と印字用プラテンローラ6に挟まれた状態で、搬送力を与えられることなく保持される(図5参照)。そうすると、感熱性粘着シート4は、概ねガイド部材11の尖端部11aを境として、先端側が前方への搬送力を受け、後側が静止した状態に保持されようとする。すなわち、感熱性粘着シート4には、熱活性化用プラテンローラ8による搬送力を受ける先端側と、印字用サーマルヘッド5と印字用プラテンローラ6により静止させられようとする(搬送力供給が停止された)後側との間に強い張力(テンション)がかかる。その結果、ガイド部材11の尖端部11aを起点として、感熱性粘着シート4は前後に引き裂かれる(図6参照)。
【0033】
このようにして感熱性粘着シート4が切断された後も、熱活性化部3の熱活性化用サーマルヘッド7による熱活性化と熱活性化用プラテンローラ8および排出ローラ12による搬送は続けられ、切断された感熱性粘着シート4の後端部まで熱活性化される。このようにして、所定の長さであって、片面(感熱性発色層)に所望の記録が施され、その反対側の面(感熱性粘着剤層)に全面的または部分的に粘着性が発現させられた粘着ラベルが完成する。
【0034】
一方、制御装置9の駆動制御により記録部2の印字用プラテンローラ5は逆回転させられ、それによって、切断された後の残りの感熱性粘着シート4が巻き戻される(図7参照)。そして、熱活性化部3では、切断された感熱性粘着シート(粘着ラベル)4の所望の熱活性化(粘着性発現)が完了したら、制御装置9が熱活性化用サーマルヘッド7の作動を停止させる。そして、熱活性化用プラテンローラ8と排出ローラ12の作動は継続し、粘着ラベルの後端部を熱活性化用サーマルヘッド7から離れさせるためまで粘着ラベルを搬送した後に、熱活性化用プラテンローラ8と排出ローラ12の作動は停止させられる。この時、粘着ラベルの後端部は排出ローラ12と排出ガイド13の間の隙間に位置し、粘着ラベル自体のこしによりこの隙間に保持される。こうして、完成した粘着ラベルは、熱活性化用サーマルヘッド7に接触せず離れた状態で、前部が感熱性粘着ラベル発行装置の外部に突出するとともに後端部が排出ローラ12と排出ガイド13に挟まれて、使用者が感熱性粘着ラベル発行装置の外部から容易に取り出せるように保持される。
【0035】
記録部2では、切断された後の残りの感熱性粘着シート4の先端が、印字用サーマルヘッド5に対向する記録開始位置に到達したら、制御装置9が印字用プラテンローラ6の作動を停止させ、粘着ラベルを印字用サーマルヘッド5と印字用プラテンローラ6で挟んで保持した状態にする(図8参照)。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によると、従来のカッターのような切断機構は存在しないにもかかわらず、制御装置9による記録部2の印字用プラテンローラ6と熱活性化部3の熱活性化用プラテンローラ8の駆動制御によって、感熱性粘着シート4を切断することができる。従来から存在する記録部2と熱活性化部3の搬送機構であるプラテンローラ6,8を利用して感熱性粘着シート4の切断することにして、カッターを不要にしたため、構成が簡単になっている。また、従来、刃(特に2つの刃)を有するカッターによって感熱性粘着シートを切断する場合には感熱性粘着シートを一旦静止させる必要があったが、本実施形態ではカッターを用いない切断を行うため、切断部において感熱性粘着シートを静止させる必要がない。従って、特許文献2のように、切断部にて感熱性粘着シートを一旦静止させた際の不具合を解決するために感熱性粘着シートの弛みを形成する必要はない。弛みを形成するために必要であった大きな空間や複雑な制御は全て不要になり、装置の小型化や制御の簡略化が可能になる。さらに、感熱性粘着シートの弛みを形成するための時間が不要であるため、作業効率が向上する。また、本発明ではカッターが存在しないことも、装置の小型化や軽量化に寄与する。
【0037】
制御装置9は、前記したように印字用プラテンローラ6の駆動用の第1ステッピングモータ16(図9参照)を含んでいる。例えば、感熱性粘着シートの搬送路の一部に設けられているセンサ(図示せず)が感熱性粘着シート4の先端を検出した時点から、感熱性粘着シート4の切断すべき個所がガイド部材11の尖端部11aに対向する位置に到達するまでの搬送量を求める。そして、印字用プラテンローラ6の駆動用の第1ステッピングモータ16によってその搬送量を正確に実現した瞬間に、第1ステッピングモータ16が作動停止する。それによって、感熱性粘着シート4の切断すべき個所がガイド部材11の尖端部11aに正確に対向する時点で感熱性粘着シート4に張力を発生させることができ、高精度の切断が可能になる。また、熱活性化部3において、感熱性粘着シート4の先端から十分に熱活性化できるように、熱活性化部3の熱活性化用サーマルヘッド7の作動開始のタイミングを定めるためや、切断後の巻き戻し(バックフィード)によって、切断された後の残りの感熱性粘着シート4の先端を記録開始位置に正確に配置するためにも、制御装置9が印字用プラテンローラ6の駆動用の第1ステッピングモータ16を含んでいることが効果的である。
【0038】
なお、本発明では、ガイド部材10,11は必ずしも必要ではないが、前記した実施形態のように尖端部11aを有するガイド部材11を設けることが好ましい。さらに、感熱性粘着シート4の先端が尖端部11aを滞りなく通過できるように、尖端部11aに対向する位置を頂点として屈曲した形状のガイド部材10を設けることが好ましい。
【0039】
前記した実施形態では、凸状部分である尖端部11aの形状は、図10(a)〜(d)に示すように、中央部の頂点から長手方向にはなだらかな直線状に下降し、幅方向には急峻に下降する傾斜形状であるが、それに限定されるわけではない。例えば、図11(a)〜(d)に示すように、凸状部分として、中央部の頂点から全方向に放射状になだらかな直線状に下降する傾斜形状の尖端部11bを有していてもよい。このように、尖端部の傾斜形状は直線的な傾斜であっても曲線的な傾斜であってもよく、また、その傾斜角度はなだらかであっても急峻であってもよい。ガイド部材11は、図10,11に示すように比較的複雑な3次元形状を有し、なおかつ感熱性粘着シート4と擦れて磨耗しやすいため、成形しやすく耐摩耗性のよい合成樹脂(例えばポリカーボネートなどの熱可塑性硬質樹脂)により成形することが好ましい。
【0040】
さらに、図12に示すように、感熱性粘着シート4には、切断すべき個所に予めミシン目4bが形成されていることが好ましい。前記したガイド部材11の尖端部11a,11bと、感熱性粘着シート4のミシン目4bの両方を利用して、ミシン目4bが、ガイド部材11の尖端部11a,11bに対向した時点で印字用プラテンローラ6の作動(回転)を停止させることにより、本発明による感熱性粘着シート4の切断がより容易に行える。図12に示す感熱性粘着シート4のミシン目4bは、図10,11のガイド部材11に対応するものであり、尖端部11a,11bと当接する部分には他よりも大きな切り欠き4b’が設けられており、尖端部11a,11bを起点とした切断が起こり易くなっている。このように、ガイド部材11の尖端部11a,11bに対応したミシン目4bが設けられていることが好ましい。
【0041】
なお、ガイド部材10は、記録部2から来た感熱性粘着シート4を、熱活性化部3の熱活性化用サーマルヘッド7と熱活性化用プラテンローラ8の間のニップ部に正確に供給するためのものであり、少なくとも熱活性化部3に近接する個所において、ガイド部材10とガイド部材11の間の間隔が狭く(例えば1〜2mm程度に)なっている。
【符号の説明】
【0042】
1 ロール体収容部
2 記録部
3 熱活性化部
4 感熱性粘着シート
4a ロール体
4b ミシン目
4b’ 大きな切り欠き
5 印字用サーマルヘッド(記録手段)
6 印字用プラテンローラ(記録部の搬送機構)
7 熱活性化用サーマルヘッド(熱活性化手段)
8 熱活性化用プラテンローラ(熱活性化部の搬送機構)
9 制御装置
10,11 ガイド部材
11a,11b 尖端部(凸状部分)
12 排出ローラ
13 排出ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に感熱性粘着剤層が設けられ他方の面に記録可能層が設けられた感熱性粘着シートから粘着ラベルを発行する感熱性粘着ラベル発行装置において、
前記感熱性粘着シートを搬送するための搬送機構を有するとともに前記記録可能層に記録を行う記録部と、前記感熱性粘着シートの搬送方向に関して前記記録部の下流側に位置し、前記感熱性粘着シートを搬送するための搬送機構を有するとともに前記感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる熱活性化部と、前記記録部の前記搬送機構と前記熱活性化部の前記搬送機構の動作を制御する制御装置とを有し、
前記制御装置は、前記熱活性化部の前記搬送機構を作動させて前記感熱性粘着シートの前記熱活性化部に位置する部分に搬送力を供給すると同時に、前記記録部の前記搬送機構の作動を停止させて前記感熱性粘着シートの前記記録部に位置する部分への搬送力供給を停止することによって、前記感熱性粘着シートを切断するための張力を該感熱性粘着シートに発生させることができる、
ことを特徴とする感熱性粘着ラベル発行装置。
【請求項2】
前記記録部と前記熱活性化部の間にガイド部材が設けられており、
前記ガイド部材は、前記感熱性粘着シートの搬送路に向けて突出する凸状部分を有し、
前記制御装置は、前記感熱性粘着シートの切断すべき部分が前記ガイド部材の前記凸状部分に対向して位置する状態で、前記記録部の前記搬送機構の作動を停止させる
請求項1に記載の感熱性粘着ラベル発行装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記感熱性粘着シートに設けられたミシン目が前記ガイド部材の前記凸状部分に対向して位置する状態で、前記記録部の前記搬送機構の作動を停止させる
請求項2に記載の感熱性粘着ラベル発行装置。
【請求項4】
一方の面に感熱性粘着剤層が設けられ他方の面に記録可能層が設けられた感熱性粘着シートから粘着ラベルを発行する感熱性粘着ラベル発行方法において、
記録部にて前記感熱性粘着シートの前記記録可能層に記録を行ないつつ、該記録部の搬送機構を作動させて前記感熱性粘着シートを搬送し、
前記記録部により前記記録可能層に記録が行われた前記感熱性粘着シートの前記感熱性粘着剤層を、熱活性化部にて加熱して熱活性化させ、粘着性を発現させるとともに、該熱活性化部の搬送機構を作動させて前記感熱性粘着シートを搬送し、
前記熱活性化部により前記感熱性粘着シートの前記感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる最中に、前記熱活性化部の前記搬送機構による前記感熱性粘着シートの搬送を続行しつつ、前記記録部の前記搬送機構の作動を停止させて前記感熱性粘着シートの前記記録部に位置する部分への搬送力供給を停止することによって、前記感熱性粘着シートに張力を発生させて該感熱性粘着シートを切断する
ことを特徴とする感熱性粘着ラベル発行方法。
【請求項5】
前記感熱性粘着シートの切断すべき部分が、前記記録部と前記熱活性化部の間に設けられたガイド部材の、前記感熱性粘着シートの搬送路に向けて突出する凸状部分に対向した時点で、前記記録部の前記搬送機構の作動を停止させて、前記感熱性粘着シートに張力を発生させて該感熱性粘着シートを切断する
請求項4に記載の感熱性粘着ラベル発行方法。
【請求項6】
前記感熱性粘着シートに設けられたミシン目が、前記ガイド部材の前記凸状部分に対向した時点で、前記記録部の前記搬送機構の作動を停止させて、前記感熱性粘着シートに張力を発生させて該感熱性粘着シートを切断する
請求項5に記載の感熱性粘着ラベル発行方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−221664(P2010−221664A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74416(P2009−74416)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】