説明

感熱記録体

【課題】本発明は、特に耐光性や耐熱性に優れ、記録感度が高く、ドット再現性に優れた効果を有する感熱記録体を提供するものである。
【解決手段】支持体上に、少なくともロイコ染料と呈色剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体において、感熱記録層の全固形分に対して、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを18〜32質量%、並びに1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、及び1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタンから選ばれる少なくとも1種を1〜10質量%含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロイコ染料と呈色剤との発色反応を利用した感熱記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
ロイコ染料と呈色剤との発色反応を利用し、熱により記録像を得るようにした感熱記録体はよく知られている。このような感熱記録体は比較的安価であり、また記録機器がコンパクトで且つその保守も容易なため、ファクシミリや各種計算機等のアウトプット、科学計測機器のプリンター等の記録媒体としてだけでなくPOSラベル、ATM、CAD、ハンディーターミナル、各種チケット用紙等の各種プリンターの記録媒体として広範囲に使用されている。
【0003】
例えば、宝くじや馬券等の当選すれば高額な金券となるようなものや各種チケット用紙は、太陽光や蛍光灯等で長時間晒された時にも変色し難い耐光性、夏場の高温になった車内に置かれても地肌がかぶらない耐熱性、更に二次元コードのような細かいドットを再現できるような高画質が求められている。更に、遊園地やイベント会場等の入場口ではチケットの発券速度が遅いと長蛇の列が出来易いため、短時間で発券できるように高い記録感度も求められている。
【0004】
感熱記録体に使用している、ロイコ染料は、紫外線により分解し、印字部分の退色や白紙部分の黄変が起こり易いため、紫外線吸収剤を配合して紫外線をカットする方法がよく用いられている。その中でもベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は紫外線吸収能が優れているため特に用いられているが、とりわけ2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールは比較的安価であり、増感効果も認められるため、よく用いられている(特許文献1〜9参照)。
しかしながら、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを用いるだけでは二次元コードのような細かいドットを再現するには不十分であった。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−307981号公報
【特許文献2】特開平4−216993号広報
【特許文献3】特開平5−8545号公報
【特許文献4】特開平9−202049号公報
【特許文献5】特開平10−264531号公報
【特許文献6】特開2002−154272号公報
【特許文献7】特開2003−63148号公報
【特許文献8】特開2003−112481号公報
【特許文献9】特開2005−262819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、特に耐光性や耐熱性に優れ、記録感度が高くドット再現性に優れた感熱記録体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために次の知見を得た。
項1:支持体上に、少なくともロイコ染料と呈色剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体において、感熱記録層の全固形分に対して、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを18〜32質量%、並びに1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、及び1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタンから選ばれる少なくとも1種を1〜10質量%含有することを特徴とする感熱記録体。
項2:前記ロイコ染料が3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、及び3−(N−エチル−N−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオランから選ばれる少なくとも1種である上記項1に記載の感熱記録体。
項3:前記ロイコ染料を、感熱記録層の全固形分に対して3〜17質量%含有する上記項1または2に記載の感熱記録体。
項4:前記1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、及び1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタンから選ばれる少なくとも1種と2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールの組み合わせ、または2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールと前記ロイコ染料の組み合わせ、または2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールと前記ロイコ染料と1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、及び1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタンから選ばれる少なくとも1種との組み合わせを、水溶性分散剤の存在下に湿式混合粉砕して得られた混合分散物として用いる上記項1〜3のいずれか1項に記載の感熱記録体。
項5:前記混合分散物の平均粒子径が0.1〜1.0μmの範囲にある上記項4に記載の感熱記録体。
項6:前記水溶性分散剤として、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを、感熱記録層の全固形分に対して0.2〜2.0質量%含有する上記項4または5に記載の感熱記録体。
項7:前記呈色剤として3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを、感熱記録層の全固形分に対して13〜27質量%含有する上記項1〜6のいずれか1項に記載の感熱記録体。
項8:更に、感熱記録層中に4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンを、感熱記録層の全固形分に対して0.3〜7質量%含有する上記項1〜7のいずれか1項に記載の感熱記録体。
項9:感熱記録層中に顔料として、粒子径3nm以上30nm未満の無定形シリカ一次粒子が凝集してなる平均粒子直径30〜900nmの二次粒子を、感熱記録層の全固形分に対して1〜35質量%含有する上記項1〜8のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の感熱記録体は、特に耐光性や耐熱性に優れ、記録感度が高く、ドット再現性に優れた効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、支持体上に、少なくともロイコ染料と呈色剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体において、前記感熱記録層の全固形分に対して2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを18〜32質量%、並びに1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、及び1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタンから選ばれる少なくとも1種を1〜10質量%含有するものである。本発明の感熱記録層は、上記に加えて、各種公知の接着剤、ロイコ染料、呈色剤を含み、必要に応じて、顔料、各種助剤等が使用できる。
【0010】
紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系等の有機系紫外線吸収剤や酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の無機系紫外線吸収剤がある。その中でも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は紫外線吸収能に優れ比較的安価であるため、感熱記録体の分野ではよく用いられている。
【0011】
その中でも、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の中では比較的増感効果が認められ、増感剤としてもよく用いられているが、比較的高融点のため記録感度が低い欠点を有している。
【0012】
一方、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、及び1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタンは比較的融点が低く、ロイコ染料との親和性が高いため増感効果が高く、ファックスや各種プリンター用紙等、耐熱性が求められない高感度の感熱記録紙によく使用されている。
【0013】
本発明者らは鋭意検討の結果、感熱記録層の全固形分に対して2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを18〜32質量%、並びに1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、及び1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタンから選ばれる少なくとも1種を1〜10質量%の割合に配合することにより、耐光性、耐熱性及び記録感度のバランスが最も優れていることを見出し本発明に至った。
【0014】
2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールの含有量は、感熱記録層の全固形分に対して18〜32質量%程度の範囲が好ましく、より好ましくは20〜30質量%程度である。18質量%未満であると耐光性が低下する恐れがある。また、32質量%を超えると記録感度が低下する恐れがある。
【0015】
1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、及び1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタンから選ばれる少なくとも1種の含有量は、感熱記録層の全固形分に対して1〜10質量%程度の範囲が好ましく、より好ましくは2〜8質量%程度である。1質量%未満であると記録感度が低下する恐れがあり、10質量%を超えると耐熱性が低下する恐れがある。なかでも、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンは、耐熱性と記録感度に優れ、好ましく用いられる材料である。
【0016】
また、本発明の効果を阻害しない範囲において他の増感剤を併用することができる。増感剤の具体例として例えば、ステアリン酸アミド、ステアリン酸メチレンビスアミド、ステアリン酸エチレンビスアミド、4−ベンジルビフェニル、p−トリルビフェニルエーテル、ジ(p−メトキシフェノキシエチル)エーテル、1,2−ジ(4−メトキシフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−クロロフェノキシ)エタン、1−(4−メトキシフェノキシ)−2−(3−メチルフェノキシ)エタン、2−ナフチルベンジルエーテル、1−(2−ナフチルオキシ)−2−フェノキシエタン、1,3−ジ(ナフチルオキシ)プロパン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ジ−p−メチルベンジル、シュウ酸ジ−p−クロルベンジル、テレフタル酸ジブチル、テレフタル酸ジベンジル等が挙げられる。
【0017】
ロイコ染料としては、単独または2種以上混合することができるが、例えば、トリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系、インドリルフタリド系等のロイコ染料が好ましく用いられる。ロイコ染料の具体例として例えば、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、クリスタルバイオレットラクトン、3−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o,p−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−N−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−(p−トルイジノ)フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチルフルオラン、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−(N−エチル−N−ヘキシルアミノ)−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン、及び3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド等が挙げられる。
【0018】
その中でも、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、及び3−(N−エチル−N−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオランは好ましく用いられ、とりわけ3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランは耐熱性と記録感度のバランスが特に優れており、好ましく用いられる。
【0019】
ロイコ染料の含有量は、感熱記録層の全固形分に対して3〜17質量%程度の範囲であり、より好ましくは7〜15質量%程度である。3〜17質量%程度の範囲であれば、発色感度と耐熱性が良好な感熱記録体が得られる。
【0020】
1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、及び1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタンから選ばれる少なくとも1種、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、及びロイコ染料は別々にポリビニルアルコール等の水溶性分散剤を用いて粉砕することが出来るが、特に前記化合物を同時に水溶性分散剤の存在下に湿式混合分散すると、平均粒子径が細かくなり易く、記録感度が向上するためより好ましい。
【0021】
前記混合分散物の平均粒子径は0.1〜1.0μm程度が好ましく、より好ましくは0.2〜0.8μm程度である。0.1〜1.0μm程度の範囲であれば、分散効率が良好であり、優れた画質の感熱記録体が得られる。
【0022】
また、水溶性分散剤として、完全鹸化ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコール、スルホン変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。特にヒドロキシプロピルメチルセルロースは微粒子化に優れ、少量の添加量で分散が可能であるため、より好ましく用いられる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量は、感熱記録層の全固形分に対して0.2〜2.0質量%程度が好ましく、特に0.3〜1.7質量%程度がより好ましい。
【0023】
呈色剤としては、単独または2種以上併用することができる。呈色剤の具体例として例えば、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−アリルオキシジフェニルスルホン、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−メチルジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,4−ビス〔α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン等のフェノール性化合物、N−p−トリルスルホニル−N’−フェニルウレア、4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルメタン、4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン、N−p−トリルスルホニル−N’−p−ブトキシフエニルウレア等の分子内にスルホニル基とウレイド基を有する化合物、4−〔2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸亜鉛、4−〔3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸亜鉛、5−〔p−(2−p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸等の芳香族カルボン酸の亜鉛塩等が挙げられる。
【0024】
特に、3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンは記録感度に優れるため、特に好ましく用いられる。3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの含有量は、感熱記録層の全固形分に対して13〜27質量%程度が好ましく、特に15〜25質量%程度がより好ましい。
【0025】
また、4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンは、油や可塑剤等に対する保存性が良好なため、好ましく用いられる。4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンの含有量は、感熱記録層の全固形分に対して0.3〜7質量%程度含有することが好ましい。
【0026】
4,4’-ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンは、予め塩基性無機顔料と同一液体中において、50〜90℃程度、好ましくは60〜80℃程度の温度範囲で加熱処理された分散液として感熱記録層用塗液に配合することによって、感熱記録層用塗液の塗工及び乾燥後、感熱記録体としての余計な発色(地肌カブリ)が生じるのを抑制し、耐熱性も向上するため好ましい。処理時間は、加熱温度により適宜調整されるが、一般に2〜24時間加熱処理することが好ましい。加熱処理される前の分散液は、4,4’-ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンを所定の粒子径に分散してから塩基性無機顔料を混合して得ることもできるし、各々を混ぜ合わせてから所定の粒子径に分散して得ることもできる。
【0027】
塩基性無機顔料としては、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、チタニウム化合物、及びタルクからなる群れから選ばれる少なくとも1種が用いられるが、なかでもケイ酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、タルクが塗料の安定性や塗工適性の面からも好ましく使用される。
【0028】
塩基性無機顔料の使用量は、特に限定されないが、4,4’-ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンに対して、0.5〜20質量%程度、好ましくは1〜10質量%程度である。
【0029】
その他、感熱記録層中には、通常の感熱記録体に使用される公知の顔料を添加することも可能である。顔料の具体例として、例えばカオリン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、焼成カオリン、無定形シリカ、酸化チタン、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、コロイダルシリカ、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、プラスティックピグメント等が挙げられる。
【0030】
本発明の感熱記録層において、顔料として粒子径3nm以上30nm未満の無定形シリカ一次粒子が凝集してなる平均粒子直径30〜900nmの二次粒子を用いると、サーマルヘッドでの印字の際に溶融した感熱記録体の溶融成分が、素早く、且つ多量に吸収されることで、スティッキングが抑制される。しかも、粒子径を制御することにより、スクラッチが起き難く、また透明性が高いため記録感度が向上する利点があり、特に好ましく用いられる。
【0031】
本発明で使用する、粒子径3nm以上30nm未満の無定形シリカ一次粒子が凝集してなる平均粒子直径30〜900nmの二次粒子の製造方法は、特に限定されないが、例えば、一般市販の合成無定形シリカ等の塊状原料や、例えば、珪酸ナトリウムと鉱酸との中和反応等の、液相での化学反応(沈降法、ゲル法)によって得られた沈殿物を機械的手段で粉砕する方法や、金属アルコキシドの加水分解によるゾル−ゲル法、気相での高温加水分解等の方法によって得ることができる。機械的手段としては、超音波、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体撹拌ミル、ジェットミル、サンドグラインダー、メディアレス微粒化装置等が挙げられる。機械的粉砕をする場合は、水中で粉砕して、シリカ水分散液とするのが好ましい。
【0032】
本発明で使用する無定形シリカ一次粒子の粒子径は、3nm以上30nm未満、特に3〜29nm程度、好ましくは5〜27nm程度、より好ましくは7〜25nm程度である。
【0033】
ここで、一次粒子の粒子径Dpは、下記計算式から算出できる。
Asp(m/g)=SA×n (1)
上記式(1)において、Aspは比表面積を示し、SAは一次粒子1つの表面積を示し、nは1g当りの一次粒子の個数を示す。
Dp(nm)=3000/Asp (2)
上記式(2)において、Dpは一次粒子の粒子径を示し、Aspは比表面積を示す。
上記式(2)は、シリカの形状を真球と仮定し、且つシリカの密度d=2(g/cm)として導出されたものである。
より詳しくは、該導出法は次の通りである。即ち、比表面積Aspは表面積/(体積×密度)で算出される。ここで、密度の単位をg/cmとする。一次粒子の形状を真球と仮定し、その直径をDp(nm)とすると、当該一次粒子の表面積は4π(Dp/2)であり、体積は(1/3)×4π(Dp/2)であるから、比表面積Asp=6/(Dp×d)となる。ここで、シリカの密度を、シリカの一般的な値に基づき、d=2(g/cm)と仮定すると、Asp(m/g)=6/(Dp×10−9×2×10)=3000/Dpとなる。従って、一次粒子の粒子径Dp(nm)=3000/Asp、即ち、上記式(2)で算出される。
【0034】
比表面積は、無定形シリカの質量当りの表面積であり、上記の式(2)からもわかるようにその値が大きいほど一次粒子径が小さくなる。一次粒子径が小さくなると、一次粒子から形成される細孔が小さくなり、毛管圧が高くなる。従って感熱記録体の溶融成分が速やかに吸収され、スティッキングが抑制されるものと考えられる。また一次粒子から形成される二次粒子も複雑となり、溶融成分を十分吸収できる容量が確保できる。しかし一次粒子径が3nm未満であると、おそらく、形成される細孔が小さすぎて感熱記録体の溶融成分が吸収されず、スティッキングが発生する恐れがある。また30nmを超えると、おそらく毛管圧が低下し、感熱記録体の溶融成分が速やかに吸収されないためか、スティッキングが発生する恐れがある。
なお、上記「溶融成分」は、感熱記録層中の成分が感熱記録時に溶融して形成された溶融物を指し、感熱記録層上に印刷部が存在する場合は、更に、該印刷部を形成している印刷インクが溶融して形成された溶融物をも指す。
【0035】
ここで、無定形シリカの比表面積は、微細顔料(即ち、本発明で使用する無定型シリカ)を105℃にて乾燥し、得られた粉体試料の窒素吸脱着等温線を、比表面積測定装置(Coulter社製のSA3100型)を用いて、200℃で2時間真空脱気した後、測定し、リファレンス定容法に基づくガス吸着・脱着方法により算出したものである(B.E.T比表面積)。
【0036】
以上より、本発明で使用する無定型シリカの一次粒子の粒径は、上記比表面積測定装置(Coulter社製のSA3100型)で実測した比表面積の値を用いて、上記式(2)により、算出されたものである。
【0037】
また、二次粒子の平均粒子直径は30〜900nm、好ましくは40〜700nm、より好ましくは50〜500nm、特に50〜450nmである。平均粒子直径が30nm未満であると形成される細孔の容積が小さすぎて感熱記録体の溶融成分が吸収できず、スティッキングが発生する恐れがある。また、900nmを超えると透明性が低下するため、記録感度が低下し、しかも塗工層の強度が低下する恐れがある。
【0038】
ここで、二次粒子の平均粒子直径とは、前記方法により得られたシリカの水分散液を固形分濃度5質量%に調整し、ホモミキサーにて5000rpmで30分間撹拌分散した直後に分散液を親水性処理したポリエステルフィルム上に乾燥後の重量が3g/m程度になるように塗工、乾燥してサンプルとし、電子顕微鏡(SEMとTEM)で観察し、1万〜40万倍の電子顕微鏡写真を撮り、電子顕微鏡写真の5cm四方中の二次粒子のマーチン径を測定して平均したものである(「微粒子ハンドブック」、朝倉書店、p52、1991年参照)。
なお、上記ホモミキサーでの撹拌分散は、単に測定の精度を上げるために均一分散させるために行うものであり、ホモミキサーでの撹拌分散の前後で二次粒子のサイズが変化することは実質上ないと考えられている。
【0039】
感熱記録層中の無定形シリカ二次粒子の含有量は、感熱記録層の全固形分に対して1〜35質量%程度含有することが好ましく、より好ましくは1.5〜30質量%程度である。1質量%未満では、所望の効果が得られ難く、35質量%を超えると、溶剤等の吸収性が非常に高くなり、溶剤に対するバリア性が低下してしまう。
【0040】
その他、感熱記録層中には、本発明の所望の効果を損なわない限りにおいて、感熱記録体の感熱記録層に従来から使用されている公知の他の顔料を添加することも可能である。かかる他の顔料としては、例えばカオリン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、焼成カオリン、酸化チタン、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、コロイダルシリカ、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、プラスティックピグメント等が挙げられる。また、珪酸マグネシウムも使用できる。その中でも、塩基性顔料が好ましく、特に炭酸マグネシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム及び水酸化アルミニウムからなる群から選ばれる顔料、並びに珪酸マグネシウムは、地肌カブリを抑制したり、スクラッチによる不要な発色を改良する効果があるため、好ましく用いられる。
【0041】
前記塩基性顔料を使用する場合、その添加量としては、感熱記録層の全固形分に対して1〜18質量%程度であり、より好ましくは5〜15質量%程度である。1〜18質量%の範囲内であれば、地肌カブリの抑制効果やスクラッチ改良効果が高く、記録感度も良好である。
【0042】
また、上記塩基性顔料はこの分野で使用されているものであれば、特に限定されないが、一般には、平均粒子径が0.1〜5μm程度、特に0.1〜3μm程度であるのが好ましい。ここで、塩基性顔料の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(商品名:SALD2000、島津製作所社製)による50%値である。
【0043】
感熱記録層に使用される接着剤としては、例えば、種々の分子量のポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、澱粉及びその誘導体、メトキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、及びエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸3元共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、及びカゼイン等の水溶性高分子材料、並びにポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びスチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体等の疎水性重合体のラテックス等が挙げられ、1種類または2種類以上で併用することも可能である。
【0044】
感熱記録層中の接着剤、特にポリビニルアルコールの含有量は、感熱記録層の全固形分に対して3〜20質量%程度含有することが好ましく、より好ましくは3〜18質量%程度である。3〜20質量%の範囲であれば、感熱記録層の強度も問題なく、記録感度の低下の恐れもない。
【0045】
その他、各種助剤としては、滑剤(例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、ポリオレフィン樹脂エマルジョン等)、消泡剤、濡れ剤、防腐剤、蛍光増白剤、分散剤、増粘剤、着色剤、帯電防止剤、架橋剤等、公知のものを用いることができる。
【0046】
感熱記録層用塗液は、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、及び1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタンから選ばれる少なくとも1種、ロイコ染料、呈色剤、各種公知の接着剤を含み、必要に応じて、顔料、各種助剤等を水に溶解または分散したものを混合して用いる。
【0047】
感熱記録層用塗液の塗布方法としては、特に限定されず、例えば、エアナイフコーティング、バリバーブレードコーティング、ピュアブレードコーティング、グラビアコーティング、ロッドブレードコーティング、ショートドウェルコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、ダイコーティング等の従来公知の塗布方法がいずれも採用できる。
【0048】
本発明の感熱記録体に用いられる支持体としては、紙、表面に顔料、ラテックス等を塗工したコーテッド紙、ポリオレフィン系樹脂から作られた複層構造の合成紙、プラスチックフィルム、或いはこれらの複合体シート等から選ぶことができる。
【0049】
本発明によれば、必要に応じ、支持体と感熱記録層との間に、記録感度及び記録走行性をより高めるために、下塗層を設けることもできる。
下塗層は、吸油量が70ml/100g以上、特に80〜150ml/100g程度の吸油性顔料、有機中空粒子及び熱膨張性粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種、並びに接着剤を主成分とする下塗層用塗液を支持体上に塗布乾燥して形成される。ここで、上記吸油量はJIS K 5101−2004の方法に従い、求められる値である。
【0050】
上記吸油性顔料としては、各種のものが使用できるが、具体例としては、焼成クレー、焼成カオリン、無定形シリカ、軽質炭酸カルシウム、タルク等の無機顔料が挙げられる。これら吸油性顔料の平均粒子径[レーザ回折式粒度分布測定装置(商品名:SALD2000、島津製作所社製)による50%値]は0.01〜5μm程度、特に0.02〜3μm程度であるのが好ましい。
吸油性顔料の使用量は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗層の全固形分に対して2〜95質量%程度、特に5〜90質量%程度であるのが好ましい。
【0051】
また、有機中空粒子としては、従来公知のもの、例えば、膜材がアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等からなる中空率が50〜99%程度の粒子が例示できる。ここで中空率は(d/D)×100で求められる値である。該式中、dは有機中空粒子の内径を示し、Dは有機中空粒子の外径を示す。有機中空粒子の平均粒子径[レーザ回折式粒度分布測定装置(商品名:SALD2000、島津製作所社製)による50%値]は0.5〜10μm程度、特に1〜3μm程度であるのが好ましい。
上記有機中空粒子の使用量は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗層の全固形分に対して2〜90質量%程度、特に5〜70質量%程度であるのが好ましい。
なお、上記吸油性無機顔料を有機中空粒子と併用する場合、吸油性無機顔料と有機中空粒子とは上記使用量範囲で使用し、且つ吸油性無機顔料と有機中空粒子の合計量が、下塗層の全固形分に対して5〜90質量%程度、特に10〜80質量%程度であるのが好ましい。
【0052】
熱膨張性粒子としては、各種のものが使用できるが、具体例としては、低沸点炭化水素をインサイト重合法により、塩化ビニリデン、アクリロニトリル等の共重合物でマイクロカプセル化した熱膨張性微粒子等が挙げられる。低沸点炭化水素としては、例えば、エタン、プロパン等が挙げられる。
熱膨張性粒子の使用量は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗層の全固形分に対して1〜80質量%程度、特に10〜70質量%程度であることが好ましい。
【0053】
接着剤としては、前記感熱記録層に使用される接着剤が適宜使用し得るが、特に澱粉−酢酸ビニルグラフト共重合体、各種ポリビニルアルコール、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスが好ましい。
各種ポリビニルアルコールとしては、完全鹸化ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
上記接着剤の使用割合は広い範囲で選択できるが、一般には下塗層の全固形分に対して5〜30質量%程度、特に10〜25質量%程度であることが好ましい。
【0054】
その他、各種助剤として、滑剤、消泡剤、濡れ剤、防腐剤、蛍光増白剤、分散剤、増粘剤、着色剤、帯電防止剤、架橋剤等、公知のものを用いることができる。
【0055】
下塗層の塗布量は、乾燥重量で3〜20g/m程度、好ましくは5〜12g/m程度とするのが好ましい。
下塗層用塗液の塗布方法としては、特に限定されず、例えば、エアナイフコーティング、バリバーブレードコーティング、ピュアブレードコーティング、グラビアコーティング、ロッドブレードコーティング、ショートドウェルコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング等の従来公知の塗布方法がいずれも採用できる。
【0056】
また、本発明の感熱記録体は、保護層を有しないものであってもよいが、必要に応じて、感熱記録層上に保護層を設けることもできる。保護層を構成する成分は公知の顔料、接着剤、各種助剤等を用いることができる。
【0057】
保護層に使用する顔料としては、例えば、無定形シリカ、カオリン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、焼成カオリン、酸化チタン、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、コロイダルシリカ、合成層状雲母、尿素−ホルマリン樹脂フィラー等のプラスティックピグメント等が挙げられる。
【0058】
また、保護層に使用する接着剤として、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、アクリル樹脂、澱粉及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、ゼラチン、カゼイン等が挙げられる。
なかでも、顔料とのバインダー効果、可塑剤や油等の溶剤に対する記録部の保存性に特に優れていることから、ポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールが好ましく、とりわけアセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール等の各種変性ポリビニルアルコールがより好ましく用いられる。
【0059】
これら変性ポリビニルアルコールの中で、一般に、重合度が500〜5000程度、特に700〜4500程度のアセトアセチル変性ポリビニルアルコール、及び重合度が500〜3000程度、特に700〜3000程度のジアセトン変性ポリビニルアルコールが好ましく使用される。
【0060】
その他、保護層中に公知の助剤、例えば、滑剤、消泡剤、濡れ剤、防腐剤、蛍光増白剤、分散剤、増粘剤、着色剤、帯電防止剤、架橋剤等の各種助剤を適宜添加してもよい。
【実施例】
【0061】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。また、例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
また、実施例や比較例で使用したシリカの平均粒子径は以下の方法で測定した。
二次粒子の平均粒子直径
5%シリカ分散液をホモミキサーにて5000rpmで30分間撹拌分散した直後に、分散液をフィルム上に乾燥後の重量が3g/m程度となるように塗工、乾燥してサンプルとし、電子顕微鏡(SEMとTEM)で観察し、1万〜40万倍の電子顕微鏡写真を撮り、得られた電子顕微鏡写真の5cm四方中の二次粒子のマーチン径を測定して平均したものである。
なお、シリカ分散液に使用した市販シリカの「平均二次粒子径」は、特に断らない限り、メーカーのカタログ記載値を記載している。
また、シリカ分散液に関して、「一次粒子の粒子径」は、比表面積の値を用いて前記式(2)に従って算出した値である。また、粉砕分散後のシリカ分散液に関して、「二次粒子の平均粒子直径」は、上記<二次粒子の平均粒子直径>の項に記載の方法に従って測定した値である。
粒子径はレーザ回折式粒度分布測定装置(商品名:SALD2000、島津製作所社製による50%値を測定した。
なお、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタンはDME、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールはベンゾトリアゾールと省略する。
【0062】
実施例1
・ロイコ染料分散液(A液)の調製
3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン10部、メチルセルロースの5%水溶液5部、及び水7.8部からなる組成物をサンドミルで3回通すことにより、平均粒子径が0.5μmになるまで粉砕してA液を得た。
【0063】
・DME分散液(B液)の調製
DME10部、メチルセルロースの5%水溶液5部、及び水7.8部からなる組成物をサンドミルで3回通すことにより、平均粒子径が1.0μmになるまで粉砕してB液を得た。
【0064】
・ベンゾトリアゾール分散液(C液)の調製
ベンゾトリアゾール10部、メチルセルロースの5%水溶液5部、及び水7.8部からなる組成物をサンドミルで5回通すことにより、平均粒子径が1.5μmになるまで粉砕してC液を得た。
【0065】
・呈色剤分散液(D液)の調製
3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン10部、メチルセルロースの5%水溶液5部、及び水5.5部からなる組成物をサンドミルで平均粒子径が1.5μmとなるまで粉砕してD液を得た。
【0066】
・呈色剤分散液(E液)の調製
2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン10部、メチルセルロースの5%水溶液5部、及び水5.5部からなる組成物をサンドミルで平均粒子径が1.5μmとなるまで粉砕してE液を得た。
【0067】
・呈色剤分散液(F液)の調製
4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン10部、ケイ酸マグネシウム0.5部、メチルセルロースの5%水溶液5部、及び水15部からなる組成物をサンドミルで平均粒子径が0.5μmとなるまで粉砕した。更に該分散液を70℃で4時間加熱処理を行い、F液を得た。
【0068】
・下塗層用塗液の調製
焼成カオリン(商品名:アンシレックス、エンゲルハード社製)85部を水320部に分散して得られた分散物に、スチレン−ブタジエン共重合物エマルジョン(固形分濃度50%)40部と酸化澱粉の10%水溶液50部を混合攪拌して、下塗層用塗液を得た。
【0069】
・感熱記録層用塗液の調製
A液10部、B液5部、C液25部、D液18部、シリカ分散液(商品名:サイロジェット703A、平均二次粒子径300nm、二次粒子の平均粒子直径300nm、一次粒子の粒子径11nm、固形分濃度20%、比表面積280m/g、グレースデビソン社製)18部、50%の軽質炭酸カルシウム分散液10.8部、及びアセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセファイマーZ−200、日本合成化学工業社製)の10%水溶液67.5部、及び蛍光染料1部からなる組成物を混合撹拌して感熱記録層用塗液を得た。
【0070】
・保護層用塗液の調製
アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセファイマーZ−200、重合度:1000、日本合成化学工業社製)の10%水溶液100部、アクリル樹脂(商品名:バリアスターOT−1035−1、固形分濃度25%、三井化学社製)40部、40%水酸化アルミニウム分散液40部、及びステアリン酸亜鉛の30%分散液2部からなる組成物を混合攪拌して保護層用塗液を得た。
【0071】
・感熱記録体の作製
48g/mの原紙の片面上に、乾燥後の塗布量が9.0g/mになるように下塗層用塗液を塗布乾燥し、下塗層上に乾燥後の塗布量が4.5g/mとなるように感熱記録層用塗液を塗布乾燥した。更に感熱記録層上に乾燥後の塗布量が2.0g/mとなるように保護層用塗液を塗布乾燥した。その後スーパーカレンダーによって平滑化処理し、その表面の平滑度が王研式平滑度計で1000〜4000秒程度の感熱記録体を得た。
【0072】
実施例2
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、A液10部、B液5部、及びC液25部の代わりに、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン10部、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン5部、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール25部、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの5%水溶液20部、及び水31.1部からなる組成物をサンドミルで5回通して得られた平均粒子径が0.5μmの混合分散物40部を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0073】
実施例3
実施例2の感熱記録層用塗液の調製において、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン10部、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール25部の代わりに、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン5.5部、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール29.5部を用いて平均粒子径が0.6μmになるまで粉砕した混合分散物を用いた以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0074】
実施例4
実施例2の感熱記録層用塗液の調製において、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン10部、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール25部の代わりに、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン14.5部、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール20.5部を用いて平均粒子径が0.5μmになるまで粉砕した混合分散物を用いた以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0075】
実施例5
実施例2の感熱記録層用塗液の調製において、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン5部、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール25部の代わりに、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン8部、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール22部を用いて平均粒子径が0.5μmになるまで粉砕した混合分散物を用いた以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0076】
実施例6
実施例2の感熱記録層用塗液の調製において、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン5部、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール25部の代わりに、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン2部、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール28部を用いて平均粒子径が0.7μmになるまで粉砕した混合分散物を用いた以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0077】
実施例7
実施例2の感熱記録層用塗液の調製において、D液18部の代わりにE液18部を用いた以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0078】
実施例8
実施例2の感熱記録層用塗液の調製において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの5%水溶液20部代わりに、スルホン変性ポリビニルアルコール(商品名:L−3266、日本合成社製)の5%水溶液20部を用いた以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0079】
実施例9
実施例2の感熱記録層用塗液の調製において、シリカ分散液(商品名:サイロジェット703A、前出)18部、50%の軽質炭酸カルシウム分散液10.8部の代わりに、50%の軽質炭酸カルシウム分散液14.4部を用いた以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0080】
実施例10
実施例2の感熱記録層用塗液の調製において、シリカ分散液(商品名:サイロジェット703A、前出)18部の代わりに、シリカ(商品名:ミズカシルP−526、平均二次粒子径3300nm、平均一次粒子径24nm、比表面積125m/g、水沢化学社製)の20%分散液18部を用いた以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0081】
実施例11
実施例2の感熱記録層用塗液の調製において、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン10部の代わりに3−ジ(n−ブチル)アミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン10部を用いて平均粒子径が0.5μmになるまで粉砕した混合分散物を用いた以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0082】
実施例12
実施例2の感熱記録層用塗液の調製において、F液を4.6部添加した以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0083】
比較例1
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、A液10部、B液5部、及びC液25部の代わりに、A液7.05部、B液0.5部、及びC液35部を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0084】
比較例2
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、B液5部、及びC液25部の代わりに、B液12.5部、及びC液15部を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0085】
かくして得られた14種類の感熱記録体について以下の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0086】
・記録濃度
感熱評価機(商品名:バーラベ300、サトー社製)を用いて、印字速度4インチ、印字エネルギー0.20mJ/dotで各感熱記録体をベタ発色させ、記録部の濃度をマクベス濃度計(商品名:RD−914、マクベス社製)のビジュアルモードで測定した。
【0087】
・ドット再現性
感熱評価機(商品名:バーラベ300、サトー社製)を用いて、印字速度4インチ、印字エネルギー0.20mJ/dotで各感熱記録体をベタ発色させ、記録部の発色性を目視観察し、以下のように評価した。
A:記録部に白いドット抜けがなく、問題なし
B:記録部に極僅かに白いドット抜けが見られたが、実用上問題なし
C:記録部に白いドット抜けが多数見られ、問題あり。
【0088】
・耐熱性
各感熱記録体を80℃の乾燥機に24時間放置後、白紙部分の濃度をマクベス濃度計(商品名:RD−914、マクベス社製)のビジュアルモードで測定した。
【0089】
・耐光性
各感熱記録体をキセノンウエザーメーター(スガ試験機社製)(条件:63℃、40%)内で、24時間放置し、記録部及び白紙部の濃度をマクベス濃度計(商品名:RD−914、マクベス社製)のビジュアルモードで測定した。
【0090】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、少なくともロイコ染料と呈色剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体において、感熱記録層の全固形分に対して、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを18〜32質量%、並びに1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、及び1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタンから選ばれる少なくとも1種を1〜10質量%含有することを特徴とする感熱記録体。
【請求項2】
前記ロイコ染料が3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、及び3−(N−エチル−N−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオランから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記ロイコ染料を、感熱記録層の全固形分に対して3〜17質量%含有する請求項1または2に記載の感熱記録体。
【請求項4】
前記1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、及び1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタンから選ばれる少なくとも1種と2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールの組み合わせ、または2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールと前記ロイコ染料の組み合わせ、または2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールと前記ロイコ染料と1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、及び1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタンから選ばれる少なくとも1種との組み合わせを、水溶性分散剤の存在下に湿式混合粉砕して得られた混合分散物として用いる請求項1〜3のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【請求項5】
前記混合分散物の平均粒子径が0.1〜1.0μmの範囲にある請求項4に記載の感熱記録体。
【請求項6】
前記水溶性分散剤として、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを、感熱記録層の全固形分に対して0.2〜2.0質量%含有する請求項4または5に記載の感熱記録体。
【請求項7】
前記呈色剤として3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを、感熱記録層の全固形分に対して13〜27質量%含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【請求項8】
更に、感熱記録層中に4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンを、感熱記録層の全固形分に対して0.3〜7質量%含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【請求項9】
感熱記録層中に顔料として、粒子径3nm以上30nm未満の無定形シリカ一次粒子が凝集してなる平均粒子直径30〜900nmの二次粒子を、感熱記録層の全固形分に対して1〜35質量%含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の感熱記録体。

【公開番号】特開2008−37090(P2008−37090A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80392(P2007−80392)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】