説明

感熱記録媒体及びそれを用いた画像処理方法

【課題】光照射による画像濃度の低下の少ない耐光性に優れた感熱記録媒体、特に長時間光に曝されても十分な消去性を有し、かつ記録及び消去を繰返しても感熱記録媒体表面の外観を損なうことのない、耐光性及び繰返し耐久性に優れた感熱記録媒体及び該感熱記録媒体を用いた画像処理方法の提供。
【解決手段】支持体と、該支持体の一の面上に、特定波長の光を吸収して熱に変換する光熱変換材料を含有する層を少なくとも有し、前記光熱変換材料を含有する層を構成する樹脂が架橋状態にあり、前記光熱変換材料を含有する層における支持体を有する側と反対側の面上に、25℃で80%RHにおける酸素透過度が0.5ml/(m・24hr・atm)以下である酸素遮断層を有する感熱記録媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な耐光性を有する感熱記録媒体、及び該感熱記録媒体を用いた画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在まで、感熱記録媒体(以下、「熱可逆記録媒体」、「記録媒体」、又は「媒体」と称することがある)への画像記録及び画像消去は、加熱源を記録媒体に接触させて該媒体を加熱する接触式で行われている。該加熱源としては、通常、画像記録にはサーマルヘッドが用いられ、画像消去には熱ローラ、セラミックヒータなどが用いられている。
このような接触式の記録方法は、熱可逆記録媒体がフィルム、紙等のフレキシブルなものである場合には、プラテンなどによって記録媒体を加熱源に均一に押し当てることにより、均一な画像記録及び画像消去を行うことができ、かつ従来の感熱紙用のプリンターの部品を転用することによって画像記録装置及び画像消去装置を安価に製造することができるという利点があった。
しかし、熱可逆記録媒体が、特許文献1及び特許文献2に記載されているようなRF−IDタグなどを内蔵している場合には、熱可逆記録媒体の厚みが厚くなりフレキシブル性が低下して加熱源を均一に押し当てるためには高い圧力が必要となる。また、熱可逆記録媒体の表面に凹凸が生じると、サーマルヘッド等を用いて画像記録及び画像消去することが困難になる。更に、RF−IDタグが非接触で離れたところから記憶情報の読み取り及び書き換えが行われるのに対して、熱可逆記録媒体についても離れた位置から画像を書き換えたいという要望が生じてきている。
【0003】
そこで、熱可逆記録媒体の表面に凹凸が生じた場合や、離れたところから記録媒体に対して画像の記録及び消去を行う方法として、非接触方式のレーザを用いた記録方法が提案されている(特許文献3参照)。
また、レーザによる画像形成及び消去を行う方法として、ロイコ染料と可逆性顕色剤、種々の光熱変換材料を組み合わせて、近赤外レーザ光により記録する方法が提案されている(特許文献4及び5参照)。
しかし、前記ロイコ染料は屋外などで長時間太陽光に曝されると、光と酸素により分解し、熱可逆記録媒体の地肌が褐色に着色するという問題がある。また、前記熱可逆記録媒体に画像を形成させた後、酸素存在下で長時間太陽光に曝されると、画像濃度が低下したり、画像を消去しようとしても完全に消去できなくなってしまう問題がある。更に、前記特許文献4及び特許文献5に記載の近赤外吸収領域に吸収を有する有機色素を光熱変換材料として用いた場合、前記有機色素は一般的に光に対する耐久性が低く前記有機色素が分解することにより近赤外領域の吸収が低下していき、記録感度及び消去感度が著しく低下するという問題がある。
【0004】
この問題を改良するため、熱可逆記録媒体に紫外線吸収層や酸素遮断層を設ける工夫が試みられている(特許文献6及び7参照)。
また、熱可逆記録層を20℃で60%RHにおける酸素透過度が6ml/(m・24hr・atm)のPETフィルムと20℃で60%RHにおける酸素透過度が0.2ml/(m・24hr・atm)のエチレンビニルアルコール共重合樹脂フィルムで挟み込むことが提案されている(特許文献8参照)。しかし、この提案のエチレンビニルアルコール共重合樹脂フィルムは、湿度の影響を受けやすく、夏場の屋外のような高湿度環境下では吸湿して酸素透過度が大きくなり、十分に酸素を遮断できなくなり、耐光性が不十分でまだ完全に消去できるレベルではない。
更に、前記特許文献8のように、光熱変換材料が接着層などの耐熱性が低い樹脂中に存在する熱可逆記録媒体を用いて、レーザによる画像形成及び消去を繰返し行うと、光熱変換材料が含有される層が繰返し高温に加熱されるため、光熱変換材料の周囲の樹脂成分や光熱変換材料自体が熱分解してガス化する場合があり、酸素遮断層が設けてあるために、発生したガスが抜けずに熱可逆記録媒体表面に気泡が生じて外観を損なうという実用上重要な問題がある。この問題点は、前記特許文献8には記載されておらず、本発明者らが初めて知見したものである。かかる点から、更なる熱可逆記録媒体の耐光性及び繰返し耐久性に関する改良が望まれているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、光照射による画像濃度の低下の少ない耐光性に優れた感熱記録媒体、特に長時間光に曝されても十分な消去性を有し、かつ記録及び消去を繰返しても感熱記録媒体表面の外観を損なうことのない、耐光性及び繰返し耐久性に優れた感熱記録媒体及び該感熱記録媒体を用いた画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 支持体と、該支持体の一の面上に、特定波長の光を吸収して熱に変換する光熱変換材料を含有する層を少なくとも有する感熱記録媒体において、
前記光熱変換材料を含有する層を構成する樹脂が架橋状態にあり、
前記光熱変換材料を含有する層における支持体を有する側と反対側の面上に、25℃で80%RHにおける酸素透過度が0.5ml/(m・24hr・atm)以下である酸素遮断層を有することを特徴とする感熱記録媒体である。
<2> 感熱記録媒体が、熱可逆記録媒体である前記<1>に記載の感熱記録媒体である。
<3> 光熱変換材料を含有する層が熱可逆記録層であり、該熱可逆記録層がロイコ染料及び可逆性顕色剤を含有し、熱により色調が可逆的に変化する前記<2>に記載の感熱記録媒体である。
<4> 光熱変換材料を含有する層が光熱変換層であり、該光熱変換層と、ロイコ染料及び可逆性顕色剤を含有し、熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録層が積層されている前記<2>に記載の感熱記録媒体である。
<5> 光熱変換材料を含有する層が光熱変換層であり、該光熱変換層の両面に熱可逆記録層を有する前記<4>に記載の感熱記録媒体である。
<6> 光熱変換材料を含有する層が光熱変換層であり、該光熱変換層と熱可逆記録層の間に中間層を有する前記<4>に記載の感熱記録媒体である。
<7> 更に酸素遮断層を、支持体と熱可逆記録層の間、及び支持体の熱可逆記録層を有する側と反対側の面上の少なくともいずれかに有する前記<3>から<6>のいずれかに記載の感熱記録媒体である。
<8> 酸素遮断層の25℃で80%RHにおける酸素透過度が0.1ml/(m・24hr・atm)以下である前記<1>から<7>のいずれかに記載の感熱記録媒体である。
<9> 酸素遮断層の25℃で80%RHにおける酸素透過度が0.05ml/(m・24hr・atm)以下である前記<1>から<8>のいずれかに記載の感熱記録媒体である。
<10> 酸素遮断層が、無機蒸着フィルムである前記<1>から<9>のいずれかに記載の感熱記録媒体である。
<11> 無機蒸着フィルムが、シリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムである前記<10>に記載の感熱記録媒体である。
<12> 無機蒸着フィルムが、2層以上の積層体からなる前記<10>から<11>のいずれかに記載の感熱記録媒体である。
<13> 熱可逆記録層における支持体を有する側と反対側の面上に紫外線吸収層を有する前記<3>から<12>のいずれかに記載の感熱記録媒体である。
<14> 紫外線吸収層が、紫外線吸収構造を持つポリマーを含有する前記<13>に記載の感熱記録媒体である。
<15> 前記<1>から<14>のいずれかに記載の感熱記録媒体に対しレーザ光を照射して加熱することにより該感熱記録媒体に画像を記録する画像記録工程、及び、前記感熱記録媒体に対しレーザ光を照射して加熱することにより該感熱記録媒体に記録された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含むことを特徴とする画像処理方法である。
<16> 感熱記録媒体が、熱可逆記録媒体である前記<15>に記載の画像処理方法である。
<17> 照射するレーザ光の波長が600nm〜1,200nmである前記<15>から<16>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<18> 照射するレーザ光がYAGレーザ光、ファイバーレーザ光、及び半導体レーザ光の少なくともいずれかである前記<15>から<17>のいずれかに記載の画像処理方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、光照射による画像濃度の低下の少ない耐光性に優れた感熱記録媒体、特に長時間光に曝されても十分な消去性を有し、かつ記録及び消去を繰返しても感熱記録媒体表面の外観を損なうことのない、耐光性及び繰返し耐久性に優れた感熱記録媒体及び該感熱記録媒体を用いた画像処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】図1Aは、支持体上に光熱変換材料を含有する熱可逆記録層を設け、該熱可逆記録層上に第1の酸素遮断層を設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図1B】図1Bは、図1Aの熱可逆記録層と第1の酸素遮断層の間に紫外線吸収層を設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図1C】図1Cは、図1Bの支持体と光熱変換材料を含有する熱可逆記録層の間に第2の酸素遮断層を設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図1D】図1Dは、図1Bの支持体における熱可逆記録層を有する側と反対側面に第2の酸素遮断層を設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図1E】図1Eは、図1Cの第1の酸素遮断層と紫外線吸収層の順序を逆にした記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図1F】図1Fは、図1Dの第1の酸素遮断層と紫外線吸収層の順序を逆にした記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図2A】図2Aは、支持体上の光熱変換材料を含有しない記録層上に光熱変換層を設け、該光熱変換層上に第1の酸素遮断層を設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図2B】図2Bは、図2Aの光熱変換層と第1の酸素遮断層の間に紫外線吸収層を設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図2C】図2Cは、図2Bの支持体と熱可逆記録層の間に第2の酸素遮断層を設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図2D】図2Dは、図2Bの支持体における熱可逆記録層を有する側と反対側面に第2の酸素遮断層を設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図2E】図2Eは、図2Cの第1の酸素遮断層と紫外線吸収層の順序を逆にした記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図2F】図2Fは、図2Dの第1の酸素遮断層と紫外線吸収層の順序を逆にした記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図3A】図3Aは、支持体上の光熱変換材料を含有しない第2の熱可逆記録層上に光熱変換材料を含有する光熱変換層を設け、該光熱変換層上に更に光熱変換材料を含有しない第1の熱可逆記録層を設け、該第1の熱可逆記録層上に第1の酸素遮断層を設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図3B】図3Bは、図3Aの光熱変換層上の第1の熱可逆記録層と第1の酸素遮断層の間に紫外線吸収層を設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図3C】図3Cは、図3Bの支持体と第2の熱可逆記録層の間に第2の酸素遮断層を設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図3D】図3Dは、図3Bの支持体における熱可逆記録層を有する側と反対側面に第2の酸素遮断層を設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図3E】図3Eは、図3Cの第1の酸素遮断層と紫外線吸収層の順序を逆にした記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図3F】図3Fは、図3Dの第1の酸素遮断層と紫外線吸収層の順序を逆にした記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図4A】図4Aは、図2Aの熱可逆記録層と光熱変換層の間に中間層を設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図4B】図4Bは、図4Aの光熱変換層と第1の酸素遮断層の間に紫外線吸収層を設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図4C】図4Cは、図4Bの支持体と熱可逆記録層の間に第2の酸素遮断層を設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図4D】図4Dは、図4Bの支持体における熱可逆記録層を有する側と反対側面に第2の酸素遮断層を設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図4E】図4Eは、図4Cの第1の酸素遮断層と紫外線吸収層の順序を逆にした記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図4F】図4Fは、図4Dの第1の酸素遮断層と紫外線吸収層の順序を逆にした記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図5A】図5Aは、図3Aの第1の熱可逆記録層と光熱変換層の間に第1の中間層、第2の熱可逆記録層と光熱変換層の間に第2の中間層、それぞれを設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図5B】図5Bは、図5Aの第1の中間層上の第1の熱可逆記録層と第1の酸素遮断層の間に紫外線吸収層を設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図5C】図5Cは、図5Bの支持体と第2の熱可逆記録層の間に第2の酸素遮断層を設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図5D】図5Dは、図5Bの支持体における熱可逆記録層を有する側と反対側面に第2の酸素遮断層を設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図5E】図5Eは、図5Cの第1の酸素遮断層と紫外線吸収層の順序を逆にした記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図5F】図5Fは、図5Dの第1の酸素遮断層と紫外線吸収層の順序を逆にした記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図6】図6は、図1Aの熱可逆記録媒体において、酸素遮断層上に保護層を設けた記録媒体の層構成の一例を示す図である。
【図7A】図7Aは、記録媒体の発色−消色特性を示すグラフである。
【図7B】図7Bは、記録媒体の発色−消色変化のメカニズムを表す概略説明図である。
【図8】図8は、本発明の画像処理方法に用いられる画像処理装置の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(感熱記録媒体)
本発明の感熱記録媒体は、支持体と、該支持体の一方の面上に、特定波長の光を吸収して熱に変換する光熱変換材料を含有する層を少なくとも有し、酸素遮断層、紫外線吸収層、中間層、保護層、更に必要に応じてアンダーコート層、バック層、接着層、粘着層、着色層、空気層、光反射層等のその他の層を有してなる。これら各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
本発明の感熱記録媒体においては、画像記録を1回のみ行う態様、画像記録及び画像消去を繰り返して行う態様のいずれも区別なく行うことができる。
前記感熱記録媒体としては、画像記録及び画像消去を繰り返して使用可能な熱可逆記録媒体であることが好ましい。
ここで、前記光熱変換材料を含有する層とは、前記熱可逆記録層に光熱変換材料が含有されている場合は熱可逆記録層を意味し、前記光熱変換層に光熱変換材料が含有されている場合は光熱変換層を意味し、前記熱可逆記録層及び前記光熱変換層のいずれにも光熱変換材料が含有されている場合には熱可逆記録層及び光熱変換層を意味する。
【0010】
本発明においては、酸素透過度が0.5ml/(m・24hr・atm)以下である酸素遮断層を設けるとともに、前記光熱変換材料を含有する層を構成する樹脂が架橋状態にあることを特徴とする。
前記光熱変換材料を含有する層を構成する樹脂が架橋状態にあることにより、理由は定かではないが、レーザによる画像形成及び消去の繰返しにより、光熱変換材料を含有する層が繰返し高温に加熱されても、光熱変換材料の周囲の樹脂成分や光熱変換材料自体の熱分解を抑えることができるようになり、ガスの発生を抑えることができる。その結果、25℃で80%RHにおける酸素透過度が0.5ml/(m・24hr・atm)以下の酸素遮断層を設けていても記録媒体表面に気泡が生じることがなくなる。
【0011】
<酸素遮断層>
前記酸素遮断層は、25℃で80%RHにおける酸素透過度が0.5ml/(m・24hr・atm)以下であり、0.1ml/(m・24hr・atm)以下が好ましく、0.05ml/(m・24hr・atm)以下がより好ましい。前記酸素透過度が、0.5ml/(m・24hr・atm)を超えると、十分に酸素を遮断することができず、耐光性が不十分で、完全に消去できなくなることがある。
なお、酸素透過度は環境の温湿度に依存することから、25℃で80%RHという条件だけでなく、30℃で80%RH、又は35℃で80%RHのような高温高湿の条件下でも酸素透過度が低いことが好ましい。
【0012】
ここで、前記酸素透過度の測定は、例えば、JIS K7126B法(等圧法)、ATSMD3985に準じた測定方法が挙げられる。測定装置としては、例えば酸素透過度測定装置OX−TRAN2/21、OX−TRAN2/61(MOCON社製)、Model8001(SYSTECH社製)などが挙げられる。
【0013】
前記酸素遮断性の材料としては、一般にはポリビニルアルコールやエチレン−ポリビニルアルコール共重合体が用いられる。しかし、これらの材料は親水性であるために、湿度が低い状態では優れた酸素遮断性を示すが、周囲の湿度が高くなると吸水して酸素遮断性が著しく低下するため、湿度が高い夏場に屋外で使用する場合には、十分な酸素遮断性を得ることができなくなる。例えば、エチレン含有率が32mol%のエチレン−ポリビニルアルコール共重合体では、20℃で60%RHにおける酸素透過度が0.3ml/(m・24hr・atm)〜0.5ml/(m・24hr・atm)であるが、20℃で80%RHにおける酸素透過度は1.1ml/(m・24hr・atm)〜1.5ml/(m・24hr・atm)と変化する。また、酸素遮断性は周囲の温度が高くなると相対湿度が同じでも絶対湿度が高くなることから温度が高くなると低下する。
【0014】
本発明に用いられる25℃で80%RHにおける酸素透過度が0.5ml/(m・24hr・atm)以下の酸素遮断層としては、シリカ、アルミナ等の無機酸化物の蒸着層、あるいはPETやナイロン等の高分子フィルム上に無機酸化物を蒸着したシリカ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、シリカ/アルミナ蒸着フィルムなどの無機蒸着フィルムが挙げられる。これらの中でも、安価で、酸素遮断性が高く、温度や湿度に対する影響が少ないシリカ蒸着フィルムが特に好ましい。また、前記無機蒸着フィルムの基材としては、蒸着適性、酸素遮断性の安定性、耐熱性などの点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0015】
前記熱可逆記録層の支持体側とは反対側の前記酸素遮断層と前記熱可逆記録層の間には、後述する光熱変換層、紫外線吸収層、中間層、保護層、接着層、粘着層などの他の層を有していてもよい。
【0016】
前記酸素遮断層は、熱可逆記録層の支持体を有する側と反対側の面上に設けられ、更に支持体と熱可逆記録層の間、及び支持体の熱可逆記録層を有する側と反対側の面上の少なくともいずれかに設けることが好ましい。
前記酸素遮断層は、前記熱可逆記録層の支持体を有する側と反対側の面上だけでなく、前記熱可逆記録層の支持体側にも設け、前記熱可逆記録層を前記酸素遮断層で挟み込むように設けることにより、より効果的に酸素を遮断することができる。前記熱可逆記録層の支持体側の前記酸素遮断層は、前記支持体と前記熱可逆記録層の間、あるいは前記支持体の前記熱可逆記録層とは反対面に設けることができる。
また、前記熱可逆記録層の支持体を有する側と反対側の面の前記酸素遮断層と前記熱可逆記録層の間には、後述する光熱変換層、紫外線吸収層、中間層、保護層、接着層、粘着層など他の層を有していてもよい。これにより、熱可逆記録層への酸素侵入をより効果的に防ぐことができ、ロイコ染料の光分解を抑えることができるようになる。
また、前記熱可逆記録層の支持体側の酸素遮断層と前記熱可逆記録層の支持体側とは反対側の酸素遮断層は同じものであっても異なっていてもよい。
【0017】
前記酸素遮断層の形成方法は、特に制限はなく、従来公知の方法で形成することができ、例えば通常のコーティング法及びラミネート法等を挙げることができる。また、前記酸素遮断層として無機蒸着層のみを形成する場合は、蒸着方法として、PVD法やCVD法等が挙げられる。
前記酸素遮断層の厚みは、酸素透過性によって異なるが、0.005μm〜1,000μmが好ましく、0.007μm〜500μmがより好ましい。前記厚みが、1,000μmを超えると、透明性が低下したり、記録感度が低下することがある。
また、前記酸素遮断層として無機蒸着フィルムを用いる場合、無機蒸着層部分の厚みは、5nm〜100nm(50Å〜1,000Å)が好ましく、7nm〜80nm(70Å〜800Å)がより好ましい。前記厚みが、5nm(50Å)未満であると、酸素遮断が不完全となることがあり、100nm(1,000Å)を超えると、透明性が低下したり、着色したりすることがある。
【0018】
前記酸素遮断層と下層の間に、接着層又は粘着層を設けてもよい。前記接着層又は粘着層の形成方法は、特に制限なく、通常のコーティング法及びラミネート法等を挙げることができる。
前記接着層又は粘着層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1μm〜5μmが好ましい。
前記接着層又は粘着層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢ビニル系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
また、前記接着層又は粘着層の材料はホットメルトタイプでもよい。
【0019】
本発明においては、無機蒸着フィルムを2層以上積層することにより、更に酸素遮断性を向上させることができる。無機蒸着フィルムを積層する場合には、前記接着層、又は粘着層を用いて貼り合せることができる。
【0020】
ここで、本発明の感熱記録媒体の各種の層構造のものを図面に基づいて説明する。
図1Aは、支持体1上に光熱変換材料を含有する熱可逆記録層2を設け、該熱可逆記録層上に第1の酸素遮断層3aを設けたものである。
図1Bは、図1Aの熱可逆記録層2と第1の酸素遮断層3aの間に紫外線吸収層4を設けたものであり、これにより更に耐光性が向上する。
図1Cは、図1Bの支持体1と光熱変換材料を含有する熱可逆記録層2の間に第2の酸素遮断層3bを設けたものであり、これにより更に酸素を遮断できる。
図1Dは、図1Bの支持体1における熱可逆記録層2を有する側と反対側面に第2の酸素遮断層3bを設けたものであり、これにより酸素をより遮断し、かつ熱可逆記録媒体のカールの発生も防止できる。
図1Eは、図1Cの第1の酸素遮断層3aと紫外線吸収層4の順序を逆にしたものであり、これにより第1の酸素遮断層3aの光劣化を抑えることができる。
図1Fは、図1Dの第1の酸素遮断層3aと紫外線吸収層4の順序を逆にしたものであり、これにより第1の酸素遮断層3aの光劣化を抑えることができる。
【0021】
図2Aは、支持体1上の光熱変換材料を含有しない熱可逆記録層2上に光熱変換材料を含有する光熱変換層5を設け、該光熱変換層5上に第1の酸素遮断層3aを設けたものであり、これにより光熱変換材料とロイコ染料の混合を抑えることができ、光熱変換材料の耐光性が向上する。
図2Bは、図2Aの光熱変換層5と第1の酸素遮断層3aの間に紫外線吸収層4を設けたものであり、これにより更に耐光性が向上する。
図2Cは、図2Bの支持体1と熱可逆記録層2の間に第2の酸素遮断層3bを設けたものであり、これにより更に酸素を遮断できる。
図2Dは、図2Bの支持体1における熱可逆記録層2を有する側と反対側面に第2の酸素遮断層3bを設けたものであり、これにより酸素をより遮断し、かつ熱可逆記録媒体のカールの発生も防止できる。
図2Eは、図2Cの第1の酸素遮断層3aと紫外線吸収層4の順序を逆にしたものであり、これにより第1の酸素遮断層3aの光劣化を抑えることができる。
図2Fは、図2Dの第1の酸素遮断層3aと紫外線吸収層4の順序を逆にしたものであり、これにより第1の酸素遮断層3aの光劣化を抑えることができる。
なお、図2A〜図2Fにおいて、熱可逆記録層2と光熱変換層5を設ける順序は逆でもよい。
【0022】
図3Aは、支持体1上の光熱変換材料を含有しない第2の熱可逆記録層2b上に光熱変換材料を含有する光熱変換層5を設け、該光熱変換層上に更に光熱変換材料を含有しない第1の熱可逆記録層2aを設け、該第1の熱可逆記録層上に第1の酸素遮断層3aを設けたものであり、これにより光熱変換層5で発生する熱を効率よく利用でき、良好な記録感度が得られる。
図3Bは、図3Aの光熱変換層5上の第1の熱可逆記録層2aと第1の酸素遮断層3aの間に紫外線吸収層4を設けたものであり、これにより更に耐光性が向上する。
図3Cは、図3Bの支持体1と第2の熱可逆記録層2bの間に第2の酸素遮断層を設けたものであり、これにより更に酸素を遮断できる。
図3Dは、図3Bの支持体1における熱可逆記録層を有する側と反対側面に第2の酸素遮断層3bを設けたものであり、これにより酸素をより遮断し、かつ記録媒体のカールの発生も防止できる。
図3Eは、図3Cの第1の酸素遮断層3aと紫外線吸収層4の順序を逆にしたものであり、これにより第1の酸素遮断層3aの光劣化を抑えることができる。
図3Fは、図3Dの第1の酸素遮断層3aと紫外線吸収層4の順序を逆にしたものであり、これにより第1の酸素遮断層3aの光劣化を抑えることができる。
【0023】
図4Aは、図2Aの熱可逆記録層2と光熱変換層5の間に中間層6を設けたものであり、これにより記録と消去の繰返しによる光熱変換材料とロイコ染料の混合を抑えることができ、光熱変換材料の耐光性が向上する。
図4Bは、図4Aの光熱変換層5と第1の酸素遮断層3aの間に紫外線吸収層4を設けたものであり、これにより更に耐光性が向上する。
図4Cは、図4Bの支持体1と熱可逆記録層2の間に第2の酸素遮断層3bを設けたものであり、これにより更に酸素を遮断できる。
図4Dは、図4Bの支持体1における熱可逆記録層2を有する側と反対側面に第2の酸素遮断層3bを設けたものであり、これにより酸素をより遮断し、かつ記録媒体のカールの発生も防止できる。
図4Eは、図4Cの第1の酸素遮断層3aと紫外線吸収層4の順序を逆にしたものであり、これにより第1の酸素遮断層3aの光劣化を抑えることができる。
図4Fは、図4Dの第1の酸素遮断層3aと紫外線吸収層4の順序を逆にしたものであり、これにより第1に酸素遮断層3aの光劣化を抑えることができる。
なお、図4A〜図4Fにおいて熱可逆記録層2と光熱変換層5を設ける順序は逆でもよい。
【0024】
図5Aは、図3Aの第1の熱可逆記録層2aと光熱変換層5の間に第1の中間層6a、第2の熱可逆記録層2bと光熱変換層5の間に第2の中間層6bを、それぞれを設けたものであり、これにより記録と消去の繰返しによる光熱変換材料とロイコ染料の混合を抑えることができ、光熱変換材料の耐光性が向上し、かつ光熱変換層5で発生する熱を効率よく利用でき、良好な記録感度が得られる。
図5Bは、図5Aの第1の中間層6a上の第1の熱可逆記録層2aと第1の酸素遮断層3aの間に紫外線吸収層4を設けたものであり、これにより更に耐光性が向上する。
図5Cは、図5Bの支持体1と第2の熱可逆記録層2bの間に第2の酸素遮断層3bを設けたものであり、これにより更に酸素を遮断できる。
図5Dは、図5Bの支持体1における熱可逆記録層を有する側と反対側面に第2の酸素遮断層3bを設けたものであり、これにより酸素をより遮断し、かつ記録媒体のカールも防止できる。
図5Eは、図5Cの第1の酸素遮断層3aと紫外線吸収層4の順序を逆にしたものであり、これにより第1の酸素遮断層3aの光劣化を抑えることができる。
図5Fは、図5Dの第1の酸素遮断層3aと紫外線吸収層4の順序を逆にしたものであり、これにより第1の酸素遮断層3aの光劣化を抑えることができる。
【0025】
図6は、支持体1上に光熱変換材料を含有する熱可逆記録層2と、酸素遮断層3と、保護層7とをこの順に設けたものである。保護層7は、この構成に限らず、熱可逆記録層、光熱変換層、紫外線吸収層、酸素遮断層などを保護するために全ての構成に適用可能である。また、これらの層の間に接着性を向上させる等の目的で接着層等の上記以外の層を設けることもできる。
【0026】
<支持体>
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記記録媒体の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0027】
前記支持体の材料としては、例えば、無機材料、有機材料などが挙げられる。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO、金属などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、紙、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、合成紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のフィルムなどが挙げられる。
前記無機材料及び前記有機材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、有機材料が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0028】
前記支持体には、塗布層の接着性を向上させることを目的として、コロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理、易接着処理、帯電防止処理、などを行うことにより表面改質するのが好ましい。
また、前記支持体に、酸化チタン等の白色顔料などを添加することにより、白色にするのが好ましい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm〜2,000μmが好ましく、50μm〜1,000μmがより好ましい。
【0029】
<熱可逆記録層>
前記熱可逆記録層は、電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である顕色剤を含む熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録層であり、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
前記熱により色調が可逆的に変化する電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である可逆性顕色剤は、温度変化により目に見える変化を可逆的に生じる現象を発現可能な材料であり、加熱温度及び加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態とに変化可能である。
【0030】
前記ロイコ染料は、それ自体無色又は淡色の染料前駆体である。該ロイコ染料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、チオフェルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物が好適に挙げられる。これらの中でも、発消色特性、色彩、保存性等に優れる点で、フルオラン系又はフタリド系のロイコ染料が特に好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、異なる色調に発色する層を積層することにより、マルチカラー、フルカラーに対応させることもできる。
【0031】
前記可逆性顕色剤としては、熱を因子として発消色を可逆的に行うことができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造(例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基等)、及び、(2)分子間の凝集力を制御する構造(例えば、長鎖炭化水素基が連結した構造)、から選択される構造を分子内に1つ以上有する化合物が好適に挙げられる。なお、連結部分にはヘテロ原子を含む2価以上の連結基を介していてもよく、また、長鎖炭化水素基中にも、同様の連結基及び芳香族基の少なくともいずれかが含まれていてもよい。
前記(1)ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造としては、フェノールが特に好ましい。
前記(2)分子間の凝集力を制御する構造としては、炭素数8以上の長鎖炭化水素基が好ましく、該炭素数は11以上がより好ましく、また炭素数の上限としては、40以下が好ましく、30以下がより好ましい。
【0032】
前記可逆性顕色剤の中でも、下記一般式(1)で表されるフェノール化合物が好ましく、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物がより好ましい。
【化1】

【化2】

前記一般式(1)及び(2)中、Rは、単結合又は炭素数1〜24の脂肪族炭化水素基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭素数2以上の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。Rは、炭素数1〜35の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、6〜35が好ましく、8〜35がより好ましい。これらの脂肪族炭化水素基は、1種単独で有していてもよいし、2種以上を併用して有していてもよい。
前記R、前記R、及び前記Rの炭素数の和としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下限としては、8以上が好ましく、11以上がより好ましく、上限としては、40以下が好ましく、35以下がより好ましい。
前記炭素数の和が、8未満であると、発色の安定性や消色性が低下することがある。
前記脂肪族炭化水素基は、直鎖であってもよいし、分枝鎖であってもよく、不飽和結合を有していてもよいが、直鎖であるのが好ましい。また、前記炭化水素基に結合する置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。
X及びYは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、N原子又はO原子を含む2価の基を表し、具体例としては、酸素原子、アミド基、尿素基、ジアシルヒドラジン基、シュウ酸ジアミド基、アシル尿素基等が挙げられる。これらの中でも、アミド基、尿素基が好ましい。nは、0〜1の整数を示す。
【0033】
前記電子受容性化合物(顕色剤)は、消色促進剤として分子中に−NHCO−基、−OCONH−基を少なくとも一つ以上有する化合物を併用することにより、消色状態を形成する過程において消色促進剤と顕色剤の間に分子間相互作用が誘起され、発消色特性が向上するので好ましい。
前記消色促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0034】
前記熱可逆記録層には、バインダー樹脂、更に必要に応じて熱可逆記録層の塗布特性や発色消色特性を改善したり、制御するための各種添加剤を用いることができる。これらの添加剤としては、例えば、界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、光安定化剤、発色安定化剤、消色促進剤、可塑剤などが挙げられる。
【0035】
前記バインダー樹脂としては、支持体上に熱可逆記録層を結着することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、従来から公知の樹脂の中から1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、また前記記録層中に光熱変換材料を含有させる場合は、繰返し時の加熱による光熱変換材料の周囲の樹脂成分や光熱変換材料自体の熱分解によるガス化を防止するため、熱、紫外線、電子線などによって架橋可能な樹脂が好ましく用いられ、特にイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた樹脂が好適である。
前記バインダー樹脂としては、例えば、水酸基やカルボキシル基等の架橋剤と反応する基を持つ樹脂、又は水酸基やカルボキシル基等を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂などが挙げられる。このような樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が特に好ましい。
【0036】
前記バインダー樹脂において、水酸基価は、十分な塗膜強度が得られ、有機溶剤への溶解性が良好である50mgKOH/g〜400mgKOH/gのものが好ましく、100mgKOH/g〜350mgKOH/gのものがより好ましい。前記水酸基価が50mgKOH/gを下回った場合、十分な塗膜強度を得ることができず、繰り返し印字消去を行うと記録媒体の劣化がおきやすくなったり、光熱変換材料の周囲の樹脂成分や光熱変換材料自体が熱分解してガスが発生しやすくなる。一方で400mgKOH/gを超える場合は完全に膜を架橋することができず、未架橋成分が発色系に悪影響を与えるために好ましくない。また、有機溶剤に対する溶解性が低下し、完全に有機溶剤に溶解できない場合がある。
【0037】
前記熱可逆記録層中における前記発色剤とバインダー樹脂との混合割合(質量比)は、発色剤1に対して0.1〜10が好ましい。バインダー樹脂が少なすぎると、前記熱可逆記録層の熱強度が不足することがあり、一方、バインダー樹脂が多すぎると、発色濃度が低下して問題となることがある。
【0038】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート類、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アミン類、エポキシ化合物、等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート類が好ましく、イソシアネート基を複数持つポリイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0039】
前記架橋剤のバインダー樹脂に対する添加量は、バインダー樹脂中に含まれる活性基の数に対する架橋剤の官能基の比は0.01〜5が好ましい。これ以下では熱強度が不足してしまい、また、これ以上添加すると発色及び消色特性に悪影響を及ぼす。更に、架橋促進剤としてこの種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。
【0040】
前記熱架橋した場合の樹脂のゲル分率は、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。前記ゲル分率が30%未満であると、架橋状態が十分でなく耐久性に劣ることがある。
【0041】
前記バインダー樹脂が架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法としては、例えば、MEKやTHF等の溶解性の高い溶剤中に塗膜を浸すことによって区別することができる。即ち、非架橋状態にあるバインダー樹脂は、溶剤中に該樹脂が溶け出し溶質中には残らなくなる。
【0042】
前記熱可逆記録層におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画像の記録を容易にする観点から、界面活性剤、可塑剤などが挙げられる。
【0043】
前記熱可逆記録層用塗液に用いられる溶剤、塗液の分散装置、塗工方法、乾燥・架橋方法等は公知の方法を用いることができる。
なお、熱可逆記録層用塗布液は前記分散装置を用いて各材料を溶剤中に分散してもよいし、各々単独で溶剤中に分散して混ぜ合わせてもよい。更に加熱溶解して急冷又は徐冷によって析出させてもよい。
【0044】
前記熱可逆記録層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)前記樹脂、及び前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物を溶剤中に溶解乃至分散させた熱可逆記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶剤を蒸発させてシート状等にするのと同時に又はその後に架橋する方法、(2)前記樹脂のみを溶解した溶剤に前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物を分散させた熱可逆記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶剤を蒸発させてシート状等にすると同時に又はその後に架橋する方法、(3)溶剤を用いず、前記樹脂と前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物とを加熱溶融して互いに混合し、この溶融混合物をシート状等に成形して冷却した後に架橋する方法、などが好適に挙げられる。なお、これらにおいて、前記支持体を用いることなく、シート状の記録媒体として成形することもできる。
【0045】
前記(1)又は(2)において用いる溶剤としては、前記樹脂及び前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物の種類等によって異なり一概には規定することはできないが、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。
なお、前記電子受容性化合物は、前記熱可逆記録層中では粒子状に分散して存在している。
【0046】
前記熱可逆記録層用塗布液には、コーティング材料用としての高度な性能を発現させる目的で、各種顔料、消泡剤、分散剤、スリップ剤、防腐剤等を添加してもよい。
前記熱可逆記録層の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ロール状で連続して、又はシート状に裁断した支持体を搬送し、該支持体上に、例えば、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工等公知の方法で塗布する。
【0047】
前記熱可逆記録層用塗布液の乾燥条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温〜140℃の温度で、10秒間〜10分間程度、などが挙げられる。
前記熱可逆記録層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1μm〜20μmが好ましく、3μm〜15μmがより好ましい。前記熱可逆記録層の厚みが薄すぎると発色濃度が低くなるため画像のコントラストが低くなることがあり、一方、厚すぎると層内での熱分布が大きくなり、発色温度に達せず発色しない部分が発生し、希望とする発色濃度を得ることができなくなることがある。
前記熱可逆記録層として第1の熱可逆記録層と第2の熱可逆記録層を設ける場合には、第1の熱可逆記録層と第2の熱可逆記録層の合計厚みが上記熱可逆記録層の厚みとなり、前記第1の熱可逆記録層の厚みは、0.1μm〜15μmであることが好ましい。前記第2の熱可逆記録層の厚みは、0.1μm〜15μmであることが好ましい。
【0048】
前記熱可逆記録層に添加される光熱変換材料は、無機系材料と有機系材料とに大別できる。
前記無機系材料としては、例えば、カーボンブラックやGe、Bi、In、Te、Se、Cr等の金属又は半金属及びそれを含む化合物が挙げられ、これらは、真空蒸着法や粒子状の材料を樹脂等で接着して層状に形成される。
前記有機系材料としては、吸収すべき光波長に応じて各種の染料を適宜用いることができるが、光源として半導体レーザを用いる場合には、600nm〜1,200nm付近に吸収ピークを有する近赤外吸収色素が用いられる。具体的には、シアニン色素、キノン系色素、インドナフトールのキノリン誘導体、フェニレンジアミン系ニッケル錯体、フタロシアニン系色素などが挙げられる。繰返し画像処理を行うためには、耐熱性に優れた光熱変換材料を選択するのが好ましく、この点からフタロシアニン系色素が特に好ましい。
前記近赤外吸収色素は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。その添加量は1mg/m〜200mg/mの範囲が好ましく、5mg/m〜100mg/mの範囲がより好ましい。この量より少ないと、十分な画像濃度が得られず、この量より多いと、前記光熱変換材料は可視領域に若干の吸収を有していることから地肌着色が大きくなり、画像のコントラストが低下する。
【0049】
<光熱変換層>
本発明において、前記熱可逆記録層がロイコ染料及び可逆性顕色剤を含有する場合、光熱変換材料を前記熱可逆記録層中に添加すると、ロイコ染料との相互作用により光熱変換材料の耐光性が低下する場合があるため、その場合は前記熱可逆記録層に隣接して光熱変換層を設けることが好ましい。前記光熱変換層は、少なくとも前記光熱変換材料とバインダー樹脂を含有してなる。
【0050】
前記光熱変換層に用いられるバインダー樹脂としては、繰り返し時の耐久性の向上及び繰返し時の加熱による光熱変換材料の周囲の樹脂成分や光熱変換材料自体の熱分解によるガス化を防止するため、熱、紫外線、電子線などによって架橋可能な樹脂が好ましく用いられ、前記熱可逆記録層で用いられた架橋可能なバインダー樹脂と同様なものを好適に用いることができる。前記架橋可能なバインダー樹脂としては、例えば、水酸基やカルボキシル基等の架橋剤と反応する基を持つ樹脂、又は水酸基やカルボキシル基等を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂などが挙げられる。このような樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、等が挙げられる。これらの中でも、前記記録層との接着性の観点から、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が特に好ましい。特にイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱架橋樹脂が好ましい。
前記バインダー樹脂において、水酸基価は、十分な塗膜強度が得られ、有機溶剤への溶解性が良好である50mgKOH/g〜400mgKOH/gのものであることが好ましく、100mgKOH/g〜350mgKOH/gのものがより好ましい。前記水酸基価が50mgKOH/gを下回った場合、十分な塗膜強度を得ることができず、繰り返し印字消去を行うと記録媒体の劣化がおきやすくなったり、光熱変換材料の周囲の樹脂成分や光熱変換材料自体が熱分解してガスが発生しやすくなる。一方で400mgKOH/gを超える場合は完全に膜を架橋することができず、未架橋成分が発色系に悪影響を与えるために好ましくない。また、有機溶剤に対する溶解性が低下し、完全に有機溶剤に溶解できない場合がある。
【0051】
前記光熱変換層中における前記光熱変換材料とバインダー樹脂との混合割合(質量比)は、光熱変換材料による地肌の着色が少なく、記録感度が良好で、かつ十分な塗膜強度が得られることから、光熱変換材料0.1に対して0.1〜100が好ましい。バインダー樹脂が少なすぎると、前記光熱変換層の熱強度が不足することがあり、一方、バインダー樹脂が多すぎると、記録感度が低下して問題となることがある。
【0052】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート類、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アミン類、エポキシ化合物、等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート類が好ましく、イソシアネート基を複数持つポリイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0053】
前記架橋剤のバインダー樹脂に対する添加量は、バインダー樹脂中に含まれる活性基の数に対する架橋剤の官能基の比は0.1〜5が好ましい。これ以下では熱強度が不足したり、光熱変換材料の周囲の樹脂成分や光熱変換材料自体の熱分解によりガスが発生しやすくなり、また、これ以上添加すると架橋反応に時間がかかり、ブロッキングなどの悪影響を及ぼすことがある。
更に、架橋促進剤としてこの種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。
【0054】
前記熱架橋した場合の樹脂のゲル分率は、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。
【0055】
前記バインダー樹脂が架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法としては、前記記録層と同様に、例えば、塗膜を溶解性の高い溶剤中に浸すことによって区別することができる。
【0056】
前記光熱変換層におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、従来公知の各種添加剤、顔料等を添加してもよい。
前記光熱変換層用塗液に用いられる溶剤、塗液の分散装置、塗工方法、乾燥・架橋方法等は公知の方法を用いることができる。
前記光熱変換層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜30μmが好ましく、0.5μm〜20μmがより好ましい。
【0057】
また、前記光熱変換層を設ける場合は前記熱可逆記録層の片側に設けることもできるが、記録感度向上の点から、前記光熱変換層の両側に前記熱可逆記録層が積層されていることが好ましい。前記光熱変換層を前記熱可逆記録層で挟み込む構成にすることにより、光熱変換層で発生した熱を効率よく利用することが可能となり、記録感度が向上し、前記記録層中に光熱変換材料を含有させた時と同程度の記録感度が得られるようになる。この時の記録層の厚みは目的に応じて適宜選択することができ、両側ともに同じ厚みでもよいし、異なっていてもよいが、光熱変換層に対して支持体側の熱可逆記録層より支持体の反対側の熱可逆記録層が厚い方が記録感度の点で好ましい。
【0058】
<中間層>
本発明においては、前記光熱変換層を設ける場合、前記光熱変換層の塗布、あるいは前記熱可逆記録層の塗布による前記光熱変換材料と前記ロイコ染料の混合、及び画像記録、消去の繰返しによる前記光熱変換材料の前記熱可逆記録層への移行、あるいは前記ロイコ染料の前記光熱変換層への移行を防止する目的で、前記光熱変換層と前記熱可逆記録層の間に中間層を設けることが好ましく、これによって前記光熱変換材料と前記ロイコ染料との相互作用による耐光性低下が改善できる。
前記中間層は、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、滑剤等のその他の成分を含有してなる。
前記中間層に用いられるバインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、前記熱可逆記録層あるいは前記光熱変換層で用いられるバインダー樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂を用いることができるが、中でも繰り返し時の耐久性の向上のため、熱、紫外線、電子線などによって架橋可能な樹脂、もしくは溶剤可溶な高耐熱性樹脂が好ましく用いられ、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの中でも、前記記録層及び前記光熱変換層との接着性の観点から、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が特に好ましい。
【0059】
前記中間層の厚みは、0.1μm〜20μmが好ましく、0.2μm〜5μmがより好ましい。前記中間層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、中間層の塗工方法、中間層の乾燥・架橋方法等は、公知の方法を用いることができる。
【0060】
<紫外線吸収層>
本発明においては、前記記録層中のロイコ染料又は前記記録媒体中の光熱変換材料の紫外線による分解を防止する目的で、前記熱可逆記録層の支持体を有する側と反対側面上に紫外線吸収層を設けることが好ましく、これによって前記記録媒体の耐光性が改善できる。
【0061】
前記紫外線吸収層は、少なくとも紫外線吸収剤を含有し、更に必要に応じて、バインダー樹脂、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0062】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記熱可逆記録層のバインダー樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。該樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
【0063】
前記紫外線吸収剤としては、有機系及び無機系化合物のいずれでも用いることができる。
また、紫外線吸収構造を持つポリマー(以下、「紫外線吸収ポリマー」と称することもある)を用いることが長期保存での紫外線吸収性能の安定性の点からより好ましい。
ここで、前記紫外線吸収構造を持つポリマーとは、紫外線吸収構造(例えば、紫外線吸収性基)を分子中に有するポリマーを意味する。該紫外線吸収構造としては、例えば、サリシレート構造、シアノアクリレート構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造などが挙げられ、これらの中でも、ロイコ染料の光劣化の原因である340〜400nmの紫外線を吸収することからベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造が特に好ましい。
前記紫外線吸収ポリマーは架橋されていることが好ましい。従って紫外線吸収ポリマーとしては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基等のような、架橋剤と反応する基を有しているものを用いることが好ましく、特に水酸基を有しているポリマーが好ましい。該紫外線吸収構造を持つポリマー含有層の強度を向上させるためには該ポリマーの水酸基価が10mgKOH/g以上のポリマーを用いると十分な塗膜強度が得られ、より好ましくは30mgKOH/g以上であり、更に好ましくは40mgKOH/g以上である。十分な塗膜強度を持たせることで繰り返し消去印字を行っても記録媒体の劣化が抑えることができる。
【0064】
前記紫外線吸収層の厚みは、0.1μm〜30μmが好ましく、0.5μm〜20μmがより好ましい。前記紫外線吸収層の塗液に用いられる溶剤、塗液の分散装置、塗工方法、乾燥・架橋方法等は、公知の方法を用いることができる。
【0065】
<保護層>
本発明の感熱記録媒体においては、前記感熱記録媒体あるいは前記感熱記録媒体を構成する各層を保護する目的で前記感熱記録媒体の最表面に保護層を設けることができる。該保護層は、1層以上に形成してもよい。
【0066】
前記保護層は、バインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて無機フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記UV硬化性樹脂は、架橋後非常に硬い膜を形成することができ、表面の物理的な接触によるダメージやレーザ加熱による媒体変形を抑止することができるため、繰り返し耐久性に優れた記録媒体が得られる。
また、前記熱硬化性樹脂は、前記UV硬化性樹脂にはやや劣るが同様に表面を硬くすることができ、繰り返し耐久性に優れる。
前記UV硬化性樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ビニル系、不飽和ポリエステル系のオリゴマーや各種単官能、多官能のアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、エチレン誘導体、アリル化合物等のモノマーが挙げられる。これらの中でも、4官能以上の多官能性のモノマー又はオリゴマーが特に好ましい。これらのモノマー又はオリゴマーを2種類以上混合することで樹脂膜の硬さ、収縮度、柔軟性、塗膜強度等を適宜調節することができる。
また、前記モノマー又はオリゴマーを紫外線を用いて架橋させるためには、光重合開始剤、光重合促進剤を用いる必要がある。
前記光重合開始剤又は光重合促進剤の添加量は、前記保護層の樹脂成分の全質量に対し0.1質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましい。
【0067】
前記紫外線硬化樹脂を架橋させるための紫外線照射は、公知の紫外線照射装置を用いて行うことができ、該装置としては、例えば、光源、灯具、電源、冷却装置、搬送装置等を備えたものが挙げられる。
前記光源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、カリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプなどが挙げられる。該光源の波長は、前記記録媒体用組成物に添加されている光重合開始剤及び光重合促進剤の紫外線吸収波長に応じて適宜選択することができる。
前記紫外線照射の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂を架橋するために必要な照射エネルギーに応じてランプ出力、搬送速度等を決めればよい。
【0068】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、前記記録層で用いられたバインダー樹脂と同様なものを好適に用いることができる。更に前記紫外線吸収構造を持つポリマーを用いてもよい。
前記保護層の樹脂は架橋されていることが好ましく、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基等のような、架橋剤と反応する基を有しているものを用いることが好ましく、特に水酸基を有しているポリマーが好ましい。
前記架橋剤としては例えば、前記熱可逆記録層で用いられた架橋剤と同様なものを好適に用いることができる。
【0069】
前記無機フィラーの粒径としては、例えば、0.01μm〜10.0μmが好ましく、0.05μm〜8.0μmがより好ましい。前記無機フィラーの添加量としては、前記樹脂1質量部に対し、0.001質量部〜2質量部が好ましく、0.005質量部〜1質量部がより好ましい。
前記保護層には、添加剤として従来公知の界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤、離型剤、滑剤等を含有していてもよい。
前記保護層の塗液に用いられる溶剤、塗液の分散装置、塗工方法、乾燥方法等は公知の方法を用いることができる。紫外線硬化樹脂を用いた場合には塗布して乾燥を行った紫外線照射による架橋工程が必要となるが、紫外線照射装置、光源、照射条件については前記の通りである。
前記保護層の厚みは、0.1μm〜100μmが好ましく、0.5μm〜50μmがより好ましい。
【0070】
<アンダー層>
本発明においては、印加した熱を有効に利用し高感度化するため、又は支持体と酸素遮断層あるいは熱可逆記録層との接着性の改善や支持体への記録層材料の浸透防止を目的として、前記熱可逆記録層と前記支持体の間あるいは前記酸素遮断層と前記支持体の間にアンダー層を設けてもよい。
前記アンダー層は、少なくとも中空粒子を含有してなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0071】
前記中空粒子としては、中空部が粒子内に一つ存在する単一中空粒子、中空部が粒子内に多数存在する多中空粒子、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
前記中空粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱可塑性樹脂などが好適に挙げられる。前記中空粒子は、適宜製造したものであってもよいし、市販品であってもよい。該市販品としては、例えば、マイクロスフェアーR−300(松本油脂株式会社製);ローペイクHP1055、ローペイクHP433J(いずれも、日本ゼオン株式会社製);SX866(JSR株式会社製)などが挙げられる。
【0073】
前記中空粒子の前記アンダー層における添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10質量%〜80質量%が好ましい。
前記バインダー樹脂としては、前記熱可逆記録層と同様の樹脂など従来公知の樹脂を用いることができる。
前記アンダー層には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、カオリン、タルクなどの無機フィラー及び各種有機フィラーの少なくともいずれかを含有させることができる。
なお、前記アンダー層には、その他、滑剤、界面活性剤、分散剤などを含有させることもできる。
前記アンダー層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1μm〜50μmが好ましく、2μm〜40μmがより好まし、12μm〜30μmが更に好ましい。
【0074】
<バック層>
本発明においては、前記記録媒体のカールや帯電防止、搬送性の向上のために支持体の熱可逆記録層を設ける面と反対側にバック層を設けてもよい。
前記バック層は、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、導電性フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0075】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、等が挙げられ、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記紫外線硬化樹脂、前記熱硬化性樹脂、前記フィラー、前記導電性フィラー、及び前記滑剤については、前記熱可逆記録層、前記保護層、前記又は紫外線吸収層で用いられたものと同様なものを好適に用いることができる。
【0076】
<接着層又は粘着層>
本発明においては、支持体の熱可逆記録層を設ける面と反対側に接着層又は粘着層を設けて熱可逆記録ラベルとすることができる。前記接着層又は粘着層の材料は一般的に使われているものが使用可能である。
【0077】
前記接着層又は粘着層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢ビ系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0078】
前記接着層又は粘着層の材料は、ホットメルトタイプでもよい。剥離紙を用いてもよいし、無剥離紙タイプでもよい。このように接着層又は粘着層を設けることにより、熱可逆記録層の塗布が困難な磁気ストライプ付塩化ビニルカードなどの厚手の基板の全面若しくは一部に貼ることができる。これにより磁気に記憶された情報の一部を表示することができる等、この媒体の利便性が向上する。このような接着層又は粘着層を設けた熱可逆記録ラベルは、ICカード、光カード等の厚手カードにも適用できる。
【0079】
前記記録媒体には、前記支持体と前記熱可逆記録層との間に視認性を向上させる目的で、着色層を設けてもよい。前記着色層は、着色剤及び樹脂バインダーを含有する溶液、又は分散液を対象面に塗布し、乾燥するか、あるいは単に着色シートを貼り合せることにより形成することができる。
【0080】
前記記録媒体には、カラー印刷層を設けることもできる。前記カラー印刷層における着色剤としては、従来のフルカラー印刷に使用されるカラーインク中に含まれる各種の染料及び顔料等が挙げられ、前記樹脂バインダーとしては各種の熱可塑性、熱硬化性、紫外線硬化性又は電子線硬化性樹脂等が挙げられる。該カラー印刷層の厚みとしては、印刷色濃度に対して適宜変更されるため、所望の印刷色濃度に合わせて選択することができる。
【0081】
前記記録媒体は、非可逆性記録層を併用しても構わない。この場合、それぞれの熱可逆記録層の発色色調は同じでも異なってもよい。また、本発明の感熱記録媒体の記録層と同一面の一部もしくは全面、又は/もしくは反対面の一部分に、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷、又はインクジェットプリンター、熱転写プリンター、昇華型プリンターなどによって任意の絵柄などを施した着色層を設けてもよく、更に着色層上の一部分もしくは全面に硬化性樹脂を主成分とするOPニス層を設けてもよい。前記任意の絵柄としては、文字、模様、図柄、写真、赤外線で検知する情報などが挙げられる。また、単純に構成する各層のいずれかに染料や顔料を添加して着色することもできる。
【0082】
更に、前記記録媒体には、セキュリティのためにホログラムを設けることもできる。また、意匠性付与のためにレリーフ状、インタリヨ状に凹凸を付けて人物像や社章、シンボルマーク等のデザインを設けることもできる。
前記記録媒体は、その用途に応じて所望の形状に加工することができ、例えば、カード状、タグ状、ラベル状、シート状、ロール状などに加工される。また、カード状に加工されたものについてはプリペイドカード、ポイントカード、更にはクレジットカードなどへの応用が挙げられる。カードサイズよりも小さなタグ状のサイズでは値札等に利用できる。また、カードサイズよりも大きなタグ状のサイズでは工程管理や出荷指示書、チケット等に使用できる。ラベル状のものは貼り付けることができるために、様々な大きさに加工され、繰り返し使用する台車や容器、箱、コンテナ等に貼り付けて工程管理、物品管理等に使用することができる。また、カードサイズよりも大きなシートサイズでは印字する範囲が広くなるため一般文書や工程管理用の指示書等に使用することができる。
【0083】
<画像記録及び画像消去メカニズム>
前記画像記録及び画像消去メカニズムは、温度に依存して色調が可逆的に変化する態様であり、前記熱可逆記録層において、ロイコ染料及び可逆性顕色剤(以下、「顕色剤」と称することがある)を樹脂中に含んでなり、前記色調が、透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する。
【0084】
図7Aに、前記樹脂中に前記ロイコ染料及び前記顕色剤を含んでなる熱可逆記録層を有する熱可逆記録媒体について、その温度−発色濃度変化曲線の一例を示し、図7Bに、透明状態と発色状態とが熱により可逆的に変化する前記熱可逆記録媒体の発消色メカニズムを示す。
まず、初め消色状態(A)にある前記記録層を昇温していくと、溶融温度T1にて、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが溶融混合し、発色が生じ溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると、発色状態のまま室温に下げることができ、発色状態が安定化されて固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られたかどうかは、溶融状態からの降温速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が生じ、初期と同じ消色状態(A)、あるいは急冷による発色状態(C)よりも相対的に濃度の低い状態となる。
一方、発色状態(C)から再び昇温していくと、発色温度よりも低い温度T2にて消色が生じ(DからE)、この状態から降温すると、初期と同じ消色状態(A)に戻る。
溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態では、前記ロイコ染料と前記顕色剤との溶融混合物(前記発色混合物)が結晶化して発色を保持した状態であり、この構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は、両者が相分離した状態である。この状態は、少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり、結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分離して安定化した状態であると考えられる。多くの場合、このように、両者が相分離して前記顕色剤が結晶化することにより、より完全な消色が生じる。
なお、図7Aに示す、溶融状態から徐冷による消色、及び発色状態からの昇温による消色はいずれもT2で凝集構造が変化し、相分離や前記顕色剤の結晶化が生じている。
更に、図7Aにおいて、前記記録層を溶融温度T1以上の温度T3に繰返し昇温すると消去温度に加熱しても消去できない消去不良が発生したりする場合がある。これは、前記顕色剤が熱分解を起こし、凝集あるいは結晶化しにくくなってロイコ染料と分離しにくくなるためと思われる。繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えるためには、前記熱可逆記録媒体を加熱する際に図7Aの前記溶融温度T1と前記温度T3の差を小さくすることにより、繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えられる。
【0085】
(画像処理方法)
本発明の画像処理方法は、画像記録工程及び画像消去工程の少なくともいずれかを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程を含む。
前記画像処理方法においては、画像の記録及び消去の両方を行う態様、画像の記録のみを行う態様、画像の消去のみを行う態様のいずれをも含む。
【0086】
<画像記録工程及び画像消去工程>
本発明の前記画像処理方法における画像記録工程は、前記感熱記録媒体に対し、加熱することにより、前記感熱記録媒体に画像を記録する工程である。感熱記録媒体を加熱する方法としては、サーマルヘッド、レーザ光照射等の従来既知の加熱方法を挙げられるが、物流ラインを想定した場合、感熱記録媒体にレーザ光を照射して加熱する方法が非接触の状態で画像の形成を行うことができるため特に好ましい。
前記感熱記録媒体としては、画像記録及び画像消去を繰り返して使用可能な熱可逆記録媒体であることが好ましい。
【0087】
本発明の前記画像処理方法における前記画像消去工程は、前記感熱記録媒体に対し、加熱することにより感熱記録媒体に記録された画像を消去する工程であり、熱源としてレーザ光を用いてもよく、レーザ光以外の熱源を用いてもよい。熱源の中でも、レーザ光を照射して加熱する場合、一本のレーザ光を走査して所定の面積全体に照射するのに時間を要することから、短時間で消去する場合には、サーマルヘッド、赤外線ランプ、ヒートローラー、ホットスタンプ、ドライヤーなどを用いて加熱することにより消去するのが好ましい。また、物流ラインに用いる搬送用容器として発砲スチロール箱に前記感熱記録媒体を装備させた場合、該発泡スチロール箱自体が加熱されると溶融してしまうため、レーザ光を照射して前記感熱記録媒体のみを局所的に加熱することにより消去するのが好ましい。
前記感熱記録媒体としては、画像記録及び画像消去を繰り返して使用可能な熱可逆記録媒体であることが好ましい。
前記熱可逆記録媒体に対し、前記レーザ光を照射して加熱することにより、前記熱可逆記録媒体に非接触の状態で画像の記録を行うことができる。
本発明の画像処理方法においては、通常、前記熱可逆記録媒体の再使用時に初めて画像の更新(前記画像消去工程)を行い、その後、前記画像記録工程により画像の記録を行うが、画像の記録及び消去の順序はこれに限られるものではなく、前記画像記録工程により画像を記録した後、前記画像消去工程により画像を消去してもよい。
【0088】
前記レーザ光には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、YAGレーザ、ファイバーレーザ、半導体レーザ(LD)などの通常用いられるレーザが挙げられる。中でも装置の小型化、更には低価格化が可能であるという利点から、物流ラインを想定した場合、半導体レーザ光が特に好ましい。
【0089】
前記画像形成工程において照射されるレーザ光の出力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1W以上が好ましく、3W以上がより好ましく、5W以上が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、1W未満であると、画像形成に時間がかかり、画像形成時間を短くしようとすると出力が不足して高濃度の画像が得られない。また、前記レーザ光の出力の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200W以下が好ましく、150W以下がより好ましく、100W以下が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、200Wを超えると、レーザ装置の大型化を招くことがある。
前記画像形成工程において照射されるレーザ光の走査速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300mm/s以上が好ましく、500mm/s以上がより好ましく、700mm/s以上が更に好ましい。前記走査速度が、300mm/s未満であると、画像形成に時間がかかる。また、前記レーザ光の走査速度の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15,000mm/s以下が好ましく、10,000mm/s以下がより好ましく、8,000mm/s以下が更に好ましい。前記走査速度が、15,000mm/sを超えると、均一な画像が形成し難くなる。
前記画像形成工程において照射されるレーザ光のスポット径としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.02mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上が更に好ましい。また、前記レーザ光のスポット径の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3.0mm以下が好ましく、2.5mm以下がより好ましく、2.0mm以下が更に好ましい。前記スポット径が小さいと、画像の線幅が細くなり、コントラストが小さくなって視認性が低下する。また、スポット径が大きくなると、画像の線幅が太くなり、隣接する線が重なり、小さな文字の画像形成が不可能となる。
【0090】
また、前記記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより画像を消去する画像消去工程において照射される前記レーザ光の出力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5W以上が好ましく、7W以上がより好ましく、10W以上が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、5W未満であると、画像消去に時間がかかり、画像消去時間を短くしようとすると出力が不足して画像の消去不良が発生する。また、前記レーザ光の出力の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200W以下が好ましく、150W以下がより好ましく、100W以下が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、200Wを超えると、レーザ装置の大型化を招く。
前記記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより画像を消去する画像消去工程において照射されるレーザ光の走査速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100mm/s以上が好ましく、200mm/s以上がより好ましく、300mm/s以上が更に好ましい。前記走査速度が、100mm/s未満であると、画像消去に時間がかかる。また、前記レーザ光の走査速度の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20,000mm/s以下が好ましく、15,000mm/s以下がより好ましく、10,000mm/s以下が更に好ましい。前記走査速度が、20,000mm/sを超えると、均一な画像消去がし難くなることがある。
前記記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより画像を消去する画像消去工程において照射されるレーザ光のスポット径としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、2.0mm以上が更に好ましい。
また、前記レーザ光のスポット径の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、14.0mm以下が好ましく、10.0mm以下がより好ましく、7.0mm以下が更に好ましい。
前記スポット径が小さいと、画像消去に時間がかかる。また、スポット径が大きくなると、出力が不足して画像の消去不良が発生する。
【0091】
<画像処理装置>
本発明で用いられる画像処理装置は、画像処理手段を少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段を有してなる。
【0092】
−画像処理手段−
画像記録工程及び/又は画像消去工程における画像処理手段としては、サーマルヘッド、レーザ光出射手段などが挙げられる。これらの中でも、レーザ光出射手段が特に好ましい。
前記レーザ光出射手段としては、熱可逆記録媒体に含有されている光熱変換材料の最大吸収ピーク近傍に最大波長を有するレーザ光であればよく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばYAGレーザ、ファイバーレーザ、半導体レーザ(LD)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。ここでレーザ光の波長は単波長であることが特に好ましい。
前記YAGレーザ、前記ファイバーレーザ、及び前記半導体レーザから出射されるレーザ光の波長は、可視〜近赤外領域(数百μm〜1.2μm)であり、波長が短いため高精細画像の形成が可能であるという利点がある。また、前記YAGレーザ、及び前記ファイバーレーザは高出力であるため、画像処理速度の高速化を量ることができるという利点がある。前記半導体レーザはレーザ自体が小さいため、装置の小型化、更には低価格化が可能であるという利点がある。これより物流ラインを想定した場合、半導体レーザ光が特に好ましい。
また前記レーザ光出射手段から出射されるレーザ光の波長としては、目的に応じて適宜選択することができ、記録媒体中に含有させる各種樹脂の吸収が少ない600nm〜1,200nmが好ましく、700nm〜1,100nmがより好ましい。600nmより小さい波長にするとレーザ光照射により、記録媒体の劣化が起こりやすくなるという問題がある。1,200nmより大きい波長にすると熱可逆記録媒体中に含まれる各種樹脂にレーザ光が吸収されてしまうため、高出力な半導体レーザが必要となり装置が大型化するという問題がある。
【0093】
前記画像処理装置は、前記レーザ光出射手段を少なくとも有している以外、その基本構成としては、通常レーザマーカーと呼ばれるものと同様であり、発振器ユニット、電源制御ユニット、及びプログラムユニットを少なくとも備えている。
【0094】
ここで、図8に、本発明で用いられる画像処理装置の一例についてレーザ照射ユニットを中心に示す。図8に示す画像処理装置は、レーザ光源として、LIMO社製ファイバー結合半導体レーザ(LIMO25F100−DL808−EX362)を用いており、発振波長808nmで、ファイバー径が100μmで、最大25Wまで出力可能である。ファイバーからレーザ光が出射され、その直後にコリメータで平行光にしており、平行光路中に、光照射強度分布調整手段として、マスク又は非球面レンズを組み込み、レーザ光の進行方向直交断面における光強度分布を変化するように調整することもできる。
発振器ユニットは、レーザ発振器1、ビームエキスパンダ2、スキャンニングユニット5などで構成されている。
前記スキャンニングユニット5は、ガルバノメータ(不図示)と、該ガルバノメータに取り付けられたミラー4Aとで構成されている。そして、前記レーザ発振器1から出力されたレーザ光を、前記ガルバノメータ(不図示)に取り付けられたX軸方向とY軸方向との2枚のミラー4Aで高速回転走査することにより、記録媒体7上に、画像の形成又は消去を行うようになっている。
前記電源制御ユニットは、レーザ媒質を励起する光源の駆動電源、ガルバノメータの駆動電源、ペルチェ素子などの冷却用電源、画像処理装置全体の制御を司る制御部などで構成されている。
前記プログラムユニットは、タッチパネル入力やキーボード入力により、画像の記録又は消去のために、レーザ光の強さ、レーザ走査の速度等の条件入力や、記録する文字等の作製及び編集を行うユニットである。
なお、前記レーザ照射ユニット、即ち、画像記録/消去用ヘッド部分は、画像処理装置に搭載されているが、該画像処理装置には、このほか、前記熱可逆記録媒体の搬送部及びその制御部、モニタ部(タッチパネル)等を有している。
【0095】
本発明の画像処理方法は、ダンボール、プラスチックコンテナ等の容器に貼付したラベル等の記録媒体に対して、非接触式にて、高速で繰返し記録及び消去可能で、しかも長時間光に曝されても画像濃度の低下や地肌の着色がなく、十分な消去性を有する熱可逆記録媒体を用いるため、物流・配送システムに特に好適に使用可能である。この場合、例えば、ベルトコンベアに載せた前記ダンボールやプラスチックコンテナを移動させながら、前記ラベルに画像を形成及び消去することができ、ラインの停止が不要な点で、出荷時間の短縮を図ることができる。また、前記ラベルが貼付されたダンボールやプラスチックコンテナは、該ラベルを剥がすことなく、そのままの状態で再利用し、再度、画像の消去及び形成を行うことができる。
【実施例】
【0096】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例においては、感熱記録媒体の好適な一例として熱可逆記録媒体を作製し、評価を行ったが、熱可逆記録媒体を用いて画像記録及び画像消去を繰り返さず1回だけ画像記録を行う場合には、感熱記録媒体についての評価を行った実施例に該当する。
下記実施例及び比較例における酸素透過度は、酸素透過度測定装置(OX−TRAN100、MOCON社製)を用いて、25℃、80%RHで測定した。
【0097】
(実施例1)
<熱可逆記録媒体の作製>
−支持体−
支持体として、厚み125μmの白ポリエステルフィルム(帝人デュポン株式会社製、テトロンフィルムU2L98W)を用いた。
【0098】
−熱可逆記録層−
下記構造式(1)で表される可逆性顕色剤5質量部、下記構造式(2)及び(3)で表される2種類の消色促進剤をそれぞれ0.5質量部ずつ、アクリルポリオール50質量%溶液(水酸基価=200mgKOH/g)10質量部、及びメチルエチルケトン80質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmになるまで粉砕分散した。
〔可逆性顕色剤〕
<構造式(1)>
【化3】

〔消色促進剤〕
<構造式(2)>
【化4】

<構造式(3)>
1735CONHC1837
【0099】
次に、前記可逆性顕色剤を粉砕分散させた分散液に、前記ロイコ染料として2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン1質量部、フタロシアニン系光熱変換材料(株式会社日本触媒製、IR−14)0.025質量部、及びイソシアネート化合物(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)5質量部を加え、よく撹拌させて熱可逆記録層用塗布液を調製した。
次に、得られた熱可逆記録層用塗布液を、前記支持体上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間加熱及び乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み10μmの熱可逆記録層を形成した。
【0100】
−紫外線吸収層−
紫外線吸収ポリマーの40質量%溶液(株式会社日本触媒製、UV−G302)10質量部、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)1.0質量部、及びメチルエチルケトン12質量部を加え、よく攪拌して紫外線吸収層用塗布液を調製した。
次に、前記熱可逆記録層が形成された支持体上に、前記紫外線吸収層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、60℃にて24時間加熱し、厚み10μmの紫外線吸収層を形成した。
【0101】
−第1の酸素遮断層−
厚み12μmのシリカ蒸着PETフィルム(三菱樹脂株式会社製、テックバリアHX、25℃で80%RHにおける酸素透過度0.05ml/(m・24hr・atm))の上にウレタン系接着剤(東洋モートン株式会社製、TM−567)5質量部、イソシアネート化合物(東洋モートン株式会社製、CAT−RT−37)0.5質量部、及び酢酸エチル5質量部からなる接着層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、80℃にて1分間加熱及び乾燥した後、前記熱可逆記録層及び前記紫外線吸収層が形成された支持体上に貼合せ、50℃にて24時間加熱し、第1の酸素遮断層を形成した。
【0102】
−バック層−
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)7.5質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)2.5質量部、針状導電性酸化チタン(石原産業株式会社製、FT−3000、長軸=5.15μm、短軸=0.27μm、構成:アンチモンドープ酸化スズ被覆の酸化チタン)2.5質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール13質量部を加え、ボールミルにてよく攪拌してバック層用塗布液を調製した。
次に、前記支持体の前記熱可逆記録層が形成されていない側の面上に、前記バック層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、厚み4μmのバック層を形成した。以上により、実施例1の熱可逆記録媒体を作製した。
【0103】
(実施例2)
<熱可逆記録媒体の作製>
実施例1の支持体上に、実施例1の熱可逆記録層からフタロシアニン系光熱変換材料を除き、厚みを4μmにした以外は、実施例1と同様にして、第2の熱可逆記録層を形成した。
次に、第2の熱可逆記録層が形成された支持体上に、下記光熱変換層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、60℃にて2時間加熱し、厚み2μmの光熱変換層を形成した。
−光熱変換層用塗布液の調製−
アクリルポリオール樹脂50質量%溶液(三菱レーヨン株式会社製、LR327)6質量部、フタロシアニン系光熱変換材料(株式会社日本触媒製、IR−14)を0.038質量部、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)2.4質量部、及びメチルエチルケトン14質量部を加え、よく攪拌して光熱変換層用塗布液を調製した。
【0104】
次に、前記光熱変換層上に実施例1の熱可逆記録層からフタロシアニン系光熱変換材料を除き、厚みを6μmに変えた以外は、実施例1と同様にして、第1の熱可逆記録層を形成した。
続いて、第1の熱可逆記録層上に、実施例1の紫外線吸収層、第1の酸素遮断層、及びバック層を実施例1と同様にして形成した。以上により、実施例2の熱可逆記録媒体を作製した。
【0105】
(実施例3)
−熱可逆記録媒体の作製−
実施例1の支持体と熱可逆記録層の間に、実施例1の第1の酸素遮断層と同様にして、第2の酸素遮断層を設けた以外は、実施例1と同様にして、熱可逆記録媒体を作製した。
【0106】
(実施例4)
−熱可逆記録媒体の作製−
実施例2の支持体と第2の熱可逆記録層の間に、実施例2の第1の酸素遮断層と同様にして第2の酸素遮断層を設けた以外は、実施例2と同様にして、熱可逆記録媒体を作製した。
【0107】
(実施例5)
−熱可逆記録媒体の作製−
実施例4の第1及び第2の酸素遮断層を、厚み12μmのアルミナ蒸着PETフィルム(東レフィルム加工株式会社製、バリアロックスVM−1011 SG−CX、25℃で80%RHにおける酸素透過度0.3ml/(m・24hr・atm))に代えた以外は、実施例4と同様にして、熱可逆記録媒体を作製した。
【0108】
(実施例6)
−熱可逆記録媒体の作製−
実施例4の第1及び第2の酸素遮断層を、厚み12μmのシリカ蒸着PETフィルム(三菱樹脂株式会社製、テックバリアL、25℃で80%RHにおける酸素透過度0.5ml/(m・24hr・atm))に代えた以外は、実施例4と同様にして、熱可逆記録媒体を作製した。
【0109】
(実施例7)
−熱可逆記録媒体の作製−
実施例4の第1及び第2の酸素遮断層を、厚み12μmのシリカ蒸着PETフィルム(三菱樹脂株式会社製、テックバリアHX、25℃で80%RHにおける酸素透過度0.05ml/(m・24hr・atm))をウレタン系接着剤(東洋モートン株式会社製、TM−567)5質量部、イソシアネート化合物(東洋モートン株式会社製、CAT−RT−37)0.5質量部、及び酢酸エチル5質量部からなる接着層を介して3枚貼りあわせたものに代えた以外は、実施例4と同様にして、熱可逆記録媒体を作製した。
【0110】
(実施例8)
−熱可逆記録媒体の作製−
実施例4の第1及び第2の酸素遮断層を、厚み12μmのシリカ蒸着PETフィルム(三菱樹脂株式会社製、テックバリアHX、25℃で80%RHにおける酸素透過度0.05ml/(m・24hr・atm))をウレタン系接着剤(東洋モートン株式会社製、TM−567)5質量部、イソシアネート化合物(東洋モートン株式会社製、CAT−RT−37)0.5質量部、及び酢酸エチル5質量部からなる接着層を介して5枚貼りあわせたものに代えた以外は、実施例4と同様にして、熱可逆記録媒体を作製した。
【0111】
(実施例9)
−熱可逆記録媒体の作製−
実施例4の第2の酸素遮断層及び第2の熱可逆記録層が形成された支持体上に、下記中間層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、60℃にて24時間加熱し、厚み1.5μmの第2の中間層を形成した。
−中間層用塗布液の調製−
アクリルポリオール樹脂50質量%溶液(三菱レーヨン株式会社製、LR327)6質量部、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)2.4質量部、及びメチルエチルケトン14質量部を加え、よく攪拌して中間層用塗布液を調製した。
【0112】
次に、第2の中間層上に、実施例4と同じ光熱変換層を実施例4と同様にして形成し、該光熱変換層上に前記中間層用塗布液を用いて、第1の中間層を同様に形成した。
続いて、実施例4の第1の熱可逆記録層、紫外線吸収層、第1の酸素遮断層、及びバック層を実施例4と同様にして形成し、熱可逆記録媒体を作製した。
【0113】
(比較例1)
−熱可逆記録媒体の作製−
実施例1において、前記紫外線吸収層上に第1の酸素遮断層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、熱可逆記録媒体を作製した。
【0114】
(比較例2)
−熱可逆記録媒体の作製−
実施例2において、前記紫外線吸収層上に第1の酸素遮断層を設けなかった以外は、実施例2と同様にして、熱可逆記録媒体を作製した。
【0115】
(比較例3)
−熱可逆記録媒体の作製−
実施例1の第1の酸素遮断層を、厚み15μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム(エチレン含有率32mol%、25℃で80%RHにおける酸素透過度1.5ml/(m・24hr・atm))に代えた以外は、実施例1と同様にして、熱可逆記録媒体を作製した。
【0116】
(比較例4)
−熱可逆記録媒体の作製−
実施例4の第1及び第2の酸素遮断層を、厚み12μmのアルミナ蒸着PETフィルム(東レフィルム加工株式会社製、バリアロックスVM−1011HG、25℃で80%RHにおける酸素透過度1.5ml/(m・24hr・atm))に代えた以外は、実施例4と同様にして、熱可逆記録媒体を作製した。
【0117】
(比較例5)
−熱可逆記録媒体の作製−
実施例4の第1及び第2の酸素遮断層を、厚み25μmの透明PETフィルム(東レ株式会社製、ルミラー25−T60、25℃で80%RHにおける酸素透過度50ml/(m・24hr・atm))に代えた以外は、実施例4と同様にして、熱可逆記録媒体を作製した。
【0118】
(比較例6)
−熱可逆記録媒体の作製−
実施例3の熱可逆記録層からイソシアネート化合物を除いた以外は、実施例3と同様にして、熱可逆記録媒体を作製した。
【0119】
(比較例7)
−熱可逆記録媒体の作製−
実施例4の光熱変換層からイソシアネート化合物を除いた以外は、実施例4と同様にして、熱可逆記録媒体を作製した。
【0120】
<レーザ記録評価>
図8に示すような半導体レーザ光源として、LIMO社製半導体レーザLIMO25−F100−DL808(中心波長:808nm)を備えた半導体レーザ装置を用い、実施例及び比較例で作製した熱可逆記録媒体に照射距離152mm、線速1000mm/sとなるように調整して、0.3mmの間隔で直線状にレーザ光を走査してベタ画像を記録した。この時、レーザ出力は実施例1〜6及び比較例1〜7では13W、実施例7〜9では15Wとした。
【0121】
レーザでの画像消去は、前記半導体レーザ装置を用い、照射距離200mm、線速500mm/s、スポット径3.0mmとなるように調整して、0.5mmの間隔で直線状にレーザ光を走査して画像を消去した。この時、レーザ出力は実施例1〜6及び比較例1〜7では16W、実施例7〜9では18Wとした。
【0122】
<耐光性評価1>
実施例1〜9及び比較例1〜7の熱可逆記録媒体について、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、U−4100)により、まず初期状態において、波長808nmの吸光度を測定した。結果を表1に示す。
続いて、セリック株式会社製人工太陽光照射装置を用いて、30℃で80%RH、130klxの条件で72時間光照射を行った後、同様に分光光度計により波長808nmの吸光度を測定し、それぞれ初期状態の吸光度と比較した。結果を表1に示す。
【0123】
<光照射後の画像濃度の低下量>
実施例1〜9及び比較例1〜7の熱可逆記録媒体に対し、前記レーザ記録条件にて画像を記録し、X−Rite938(X−Rite社製)にて初期の画像濃度を測定した。その後、画像記録後の熱可逆記録媒体に対し前記人工太陽光照射装置を用いて、30℃で80%RH、130klxの条件で72時間光照射を行い、画像部の画像濃度をX−Rite938(X−Rite社製)にて測定し、下記数式1から光照射後の画像濃度の低下量を求めた。結果を表1に示す。
<数式1>
画像濃度の低下量=初期の画像濃度−光照射後の画像濃度
【0124】
<光照射後の消え残り濃度>
次に、実施例1〜9及び比較例1〜7の熱可逆記録媒体に対し、前記レーザ記録条件にて画像を記録した後、前記人工太陽光照射装置を用いて、30℃で80%RH、130klxの条件で72時間光照射を行い、次に、画像部及び地肌部を東洋精機社製熱傾斜試験器で1kgf/cm、2秒間加熱したときの消去濃度及び地肌濃度をX−Rite938(X−Rite社製)にて測定し、下記数式2から消え残り濃度を求めた。結果を表1に示す。
<数式2>
消え残り濃度=消色濃度−地肌濃度
【0125】
<繰返し耐久性評価>
実施例1〜9及び比較例1〜7の熱可逆記録媒体を用いて、上記レーザ記録条件及びレーザ消去条件にて画像記録及び消去を500回繰返した後、熱可逆記録媒体表面を目視評価した。評価は、気泡による外観不良がない場合に○、気泡による外観不良が発生した場合に×とした。結果を表1に示す。
【0126】
<耐光性評価2>
実施例4及び実施例9の熱可逆記録媒体を用いて、上記レーザ記録条件及びレーザ消去条件にて記録と消去を100回繰り返した後、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、U−4100)により、まず消去状態において、波長808nmの吸光度を測定した。結果を表2に示す。
続いて、セリック株式会社製人工太陽光照射装置を用いて、30℃で80%RH、130klxの条件で72時間光照射を行った後、同様に分光光度計により波長808nmの吸光度を測定した。結果を表2に示す。
【0127】
【表1】

【0128】
【表2】

【0129】
表1の結果から、実施例1〜9は、熱可逆記録層の両側に25℃で80%RHにおける酸素透過度が0.5ml/(m・24hr・atm)以下の酸素遮断層が設け、かつ光熱変換材料を含有する層を構成する樹脂が架橋状態にあるので、耐光性評価後においてもロイコ染料が光劣化することなく十分な消去性を有し、かつ繰返し記録及び消去を行っても熱可逆記録媒体表面の外観に変化がなく、十分な繰返し耐久性を有している。
また、実施例1及び実施例3では、熱可逆記録層中に光熱変換材料を含むためにロイコ染料との相互作用で耐光性評価後には光熱変換材料の吸収が低下するが、実施例2及び実施例4〜8では光熱変換層を設け、光熱変換材料とロイコ染料との混合を抑えているために、耐光性評価後においても光熱変換材料の吸収はほとんど変化しなかった。
これに対し、比較例1〜5においては、酸素の遮断が不十分であるために、耐光性評価後では消去性が不十分であり、消え残りが発生している。また、比較例6〜7では酸素が十分に遮断されているために耐光性評価後においても十分な消去性を有するが、光熱変換材料を含有する層を構成する樹脂が架橋状態にないため、繰返し記録及び消去を行うと気泡が発生し、熱可逆記録媒体表面の外観不良が発生する。
また、表2の結果から、実施例4では、記録と消去を100回繰り返した後では、光熱変換材料とロイコ染料が混合してしまい、耐光性評価後において光熱変換材料の吸光度が低下してしまう。これに対し、実施例9では、中間層を設けることにより、繰返し加熱による光熱変換材料とロイコ染料との混合を抑えることができ、記録と消去を100回繰り返した後の耐光性評価後においても光熱変換材料の吸光度にほとんど変化がなかった。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の感熱記録媒体は、長時間光に曝されても十分な消去性を有し、かつ記録及び消去を繰返しても感熱記録媒体表面の外観を損なうことがないので、前記感熱記録媒体をダンボールやプラスチックコンテナ等の容器に貼付し、非接触式にて、高コントラストの画像を高速で繰返し記録成及び消去可能で、長時間光に曝された場合でもロイコ染料や光熱変換材料の光劣化を抑制することができ、物流・配送システムに特に好適に使用可能である。
【符号の説明】
【0131】
1 ファイバー
2 ビームコリメータ
3 ミラー
4A ミラー
5 スキャニングユニット
6 fθレンズ
7 熱可逆記録媒体
10 半導体レーザ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0132】
【特許文献1】特開2004−265247号公報
【特許文献2】特許第3998193号公報
【特許文献3】特開2000−136022号公報
【特許文献4】特開平5−8537号公報
【特許文献5】特開平11−151856号公報
【特許文献6】特開平7−205547号公報
【特許文献7】特開平9−175024号公報
【特許文献8】特開2004−160806号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体の一の面上に、特定波長の光を吸収して熱に変換する光熱変換材料を含有する層を少なくとも有する感熱記録媒体において、
前記光熱変換材料を含有する層を構成する樹脂が架橋状態にあり、
前記光熱変換材料を含有する層における支持体を有する側と反対側の面上に、25℃で80%RHにおける酸素透過度が0.5ml/(m・24hr・atm)以下である酸素遮断層を有することを特徴とする感熱記録媒体。
【請求項2】
感熱記録媒体が、熱可逆記録媒体である請求項1に記載の感熱記録媒体。
【請求項3】
光熱変換材料を含有する層が熱可逆記録層であり、該熱可逆記録層がロイコ染料及び可逆性顕色剤を含有し、熱により色調が可逆的に変化する請求項2に記載の感熱記録媒体。
【請求項4】
光熱変換材料を含有する層が光熱変換層であり、該光熱変換層と、ロイコ染料及び可逆性顕色剤を含有し、熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録層が積層されている請求項2に記載の感熱記録媒体。
【請求項5】
光熱変換材料を含有する層が光熱変換層であり、該光熱変換層の両面に熱可逆記録層を有する請求項4に記載の感熱記録媒体。
【請求項6】
光熱変換材料を含有する層が光熱変換層であり、該光熱変換層と熱可逆記録層の間に中間層を有する請求項4に記載の感熱記録媒体。
【請求項7】
更に酸素遮断層を、支持体と熱可逆記録層の間、及び支持体の熱可逆記録層を有する側と反対側の面上の少なくともいずれかに有する請求項3から6のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項8】
酸素遮断層の25℃で80%RHにおける酸素透過度が0.1ml/(m・24hr・atm)以下である請求項1から7のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項9】
酸素遮断層の25℃で80%RHにおける酸素透過度が0.05ml/(m・24hr・atm)以下である請求項1から8のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項10】
酸素遮断層が、無機蒸着フィルムである請求項1から9のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項11】
無機蒸着フィルムが、シリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムである請求項10に記載の感熱記録媒体。
【請求項12】
無機蒸着フィルムが、2層以上の積層体からなる請求項10から11のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項13】
熱可逆記録層における支持体を有する側と反対側の面上に紫外線吸収層を有する請求項3から12のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項14】
紫外線吸収層が、紫外線吸収構造を持つポリマーを含有する請求項13に記載の感熱記録媒体。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載の感熱記録媒体に対しレーザ光を照射して加熱することにより該感熱記録媒体に画像を記録する画像記録工程、及び、前記感熱記録媒体に対しレーザ光を照射して加熱することにより該感熱記録媒体に記録された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項16】
感熱記録媒体が、熱可逆記録媒体である請求項15に記載の画像処理方法。
【請求項17】
照射するレーザ光の波長が600nm〜1,200nmである請求項15から16のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項18】
照射するレーザ光がYAGレーザ光、ファイバーレーザ光、及び半導体レーザ光の少なくともいずれかである請求項15から17のいずれかに記載の画像処理方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6】
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【図7A】
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【図8】
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【図7B】
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【公開番号】特開2010−195035(P2010−195035A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11943(P2010−11943)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】