説明

感熱記録材料及びその製造方法

【課題】 液カブリを発生させずに面状故障が改善した感熱記録材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 支持体上に、感熱記録層を有する感熱記録材料であって、全アミノ酸1000残基当たりのヒドロキシプロリン残基数が60以上85以下であるゼラチンを、支持体上の感熱記録層を有する面に含有することを特徴とする感熱記録材料、及び、少なくとも、支持体上に、前記ゼラチンを含有する塗布液を塗布して層を形成する工程を有することを特徴とする感熱記録材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録材料及びその製造方法に関し、詳しくは熱感度及び画像の保存安定性が良好で、医療用画像の記録に特に好適な感熱記録材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱記録材料は、(1)現像が不要である、(2)支持体が紙の場合、材質が普通紙に近い、(3)取扱いが容易である、(4)発色濃度が高い、(5)記録装置が簡便で信頼性が高く安価である、(6)記録時の騒音が少ない、(7)メンテナンスが不要である、等の利点があることから、近年様々な分野で利用されており、例えばファクシミリやプリンターの分野、POS等のラベル分野のほか、医療用画像等の分野に用途が拡大している。
【0003】
また、感熱記録材料は、保護層、ガス遮断層、下塗り層、紫外線フィルター層、光反射防止層等も適宜設けられる。これらの層を支持体に設けるには、支持体上に順次各層を形成する方法の他、総ての層を一遍に押出しダイ方式等により高速重層塗布する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特に、前記押出しダイ方式等により高速重層塗布する方法としては、面状故障の発生に対して、ゼラチンを含有する中間層用塗布液を含む各層を形成するための塗布液それぞれを高速同時重層塗布し、ゼラチンのセット性を利用することにより面状故障の発生を改善する方法が提案されている(例えば、特許文献2及び3参照。)。しかし該高速同時重層塗布は、塗布液の送液時にはゼラチンをセットさせないために、液、及び配管・押出しダイ等塗布ヘッドを保温する必要があり、35℃以下での塗布液の塗布は困難であり、35℃を超える温度で塗布液を塗布すると、発色層を形成する塗布液に液カブリが発生してしまい、障壁となっていた。
【0005】
一方、液カブリの発生の抑制として、送液する各液の温度をその液の特性に合わせる、及び、塗布ヘッドの温度をそれぞれの塗布液ごとに可変(ゼラチンを含有する塗布液の液温は高めに、発色層を形成するための塗布液は低めに)にする方法が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、温度差をつけると泡故障となるため更なる改善が望まれていた。
【0006】
以上のように、液カブリを発生させずに面状故障の発生を改善する技術は、未だ確立されていないのが実状である。
【特許文献1】特開平4−97886号公報
【特許文献2】特開2003−94826号公報
【特許文献3】特開2004−276462号公報
【特許文献4】特開2002−331263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、液カブリを発生させずに面状故障が改善した感熱記録材料及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、低温送液でゲル化せず、乾燥冷却時にはセット性を発揮するゼラチンを用いることにより、前期課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
<1> 支持体上に、感熱記録層を有する感熱記録材料であって、全アミノ酸1000残基当たりのヒドロキシプロリン残基数が60以上85以下であるゼラチンを、支持体上の感熱記録層を有する面に含有することを特徴とする感熱記録材料である。
【0009】
<2> 支持体上に中間層を更に有し、該中間層が前記ゼラチンを含有することを特徴とする<1>に記載の感熱記録材料である。
<3> 前記ゼラチンを、前記支持体上の感熱記録層を有する面に塗設されている全構成物の1質量%以上40質量%以下の比率で含有することを特徴とする<1>又は<2>に記載の感熱記録材料である。
【0010】
<4> 少なくとも、支持体上に、全アミノ酸1000残基当たりのヒドロキシプロリン残基数が60以上85以下であるゼラチンを含有する塗布液を塗布して層を形成する工程を有することを特徴とする感熱記録材料の製造方法である。
<5> 前記層を形成する工程が、前記ゼラチンを含有する塗布液を含む複数の塗布液を押出しダイ方式により同時重層塗布して、複数の層を形成する工程であることを特徴とする<4>に記載の感熱記録材料の製造方法である。
【0011】
<6> 前記押出しダイ方式による同時重層塗布が、押出しダイを20℃以上35℃以下の温度に保温し、かつ、前記ゼラチンを含有する塗布液を、前記押出しダイとの温度差が10℃以下となる温度で保温した状態で行うことを特徴とする<4>又は<5>に記載の感熱記録材料の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液カブリを発生させずに面状故障が改善した感熱記録材料及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の感熱記録材料は、支持体上に、感熱記録層を有する感熱記録材料であって、全アミノ酸1000残基当たりのヒドロキシプロリン残基数が60以上85以下であるゼラチン(以下、「本発明に係るゼラチン」という場合がある。)を含有することを特徴とする。以下、本発明の感熱記録材料について詳細に説明し、該説明を通じて本発明の感熱記録材料の製造方法の詳細をも述べることとする。
【0014】
本発明の感熱記録材料は、実質的に透明な高分子支持体上に少なくとも一層の感熱記録層を有してなり、更に必要に応じ、中間層や保護層等の他の層を設けて構成することができる。本発明の感熱記録材料は、更に、中間層を有し、該中間層が本発明に係るゼラチンを含有することが好ましい。
【0015】
[ゼラチン]
先ず、ゼラチンについて説明する。
ゼラチンは、コラーゲンを物理化学的処理により変性させ、可溶化状態にしたものである。該コラーゲンは繊維タンパク質と呼ばれ、それぞれ約10万の分子量(アミノ酸1000残基)を持つ棒状のポリペプチド鎖が3本集まった螺旋構造の基本ユニットから構成され、生体内ではこれら基本ユニットが規則的に集合し、分子間結合によって水に不溶性の長い繊維を形成している。
【0016】
コラーゲンのアミノ酸配列は、3残基ごとにグリシン(G)が存在し、全体の3分の1を占めている。コラーゲンの一般式は(G−X−Y)nで表されるが、X,Yの位置にイミノ酸であるプロリン(Pro)とヒドロキシプロリン(Hyp)とが多く現れる。ここでnは1以上の整数を表す。本発明に係るゼラチンは、Hyp残基を全アミノ酸1000残基当たり60以上85以下含有しているが、このコラーゲンの全アミノ酸1000残基当たりのHyp残基数が、本発明に係るゼラチンの全アミノ酸1000残基当たりのHyp残基数(以下、「本発明に係るHyp残基数」という場合がある。)となる。尚、本発明において、全アミノ酸1000残基当たりのHyp残基数は、B.A.Bidlimgmeyer,S.A.Cohen and T.L.Tarvin,J.Chromat.,336,93(1984)を参考に、プレカラムPhenylisothiocyanate(PITC)誘導法により測定したものである。
【0017】
以下に各動物から得られるコラーゲンの全アミノ酸1000残基当たりのHyp残基数の一例を示す。尚、全アミノ酸1000残基当たりのHyp含有数を( )に示す。
サケ(54.3)、コイ(75.9)、鶏(108.3)、ダチョウ(104.6)、ねずみ(87.4)、豚(93.6)、牛(95.1)、タラ(59)、サメ(67)、チカ鯛(83)
前記各動物の内、本発明に係るゼラチンの原料となる動物は、コイ、サメ、チカ鯛となる。
【0018】
前記一例から哺乳類、鳥類から得られるコラーゲンはHyp残基数が多く、魚類から得られるコラーゲンはHyp残基数が少なく、また、該魚類の中でも寒冷な条件で生息する魚類から得られるコラーゲンはHyp残基数がより少ないことがわかる。本発明に係るゼラチンとしては、比較的温暖な条件で生息する魚類から得られるコラーゲンから得られるゼラチンが挙げられる。
【0019】
本発明に係るゼラチンは、全アミノ酸1000残基当たりのヒドロキシプロリン残基数が60以上85以下であることにより、適切なセット性を得ることができる。つまり通常のゼラチンではゲル化させないためには35℃より高温にする必要がある。このことより通常のゼラチンを含有する塗布液を送液するためには、該塗布液、配管・押出しダイ等を35℃より高温にする必要があった。この結果発色層を形成する塗布液に液カブリが発生していた。一方、本発明に係るゼラチンを含有する塗布液は35℃以下でもゲル化せず送液が可能となり、乾燥工程の前に25℃以下に冷却することでセット性を発揮し、乾燥風によるムラ等を抑制することができる。この結果、発色層を形成する塗布液に液カブリを発生させずに、面状故障の発生を改善することができる。尚、これらゼラチンについては、日本写真学会誌2004年67巻4号:379−385「ゼラチンの原料と製造およびその特性:鈴木啓仁」に詳しく記述されている。
【0020】
本発明に係るHyp残基数は、既述のように60以上85以下であることを必須とし、75以上85以下であることがより好ましい。本発明に係るHyp残基数が85を超えると、35℃以下での送液温度でゲル化が生じ送液不能となってしまい、60未満であると、セット性が顕著に低下し、乾燥風の影響を受けムラが発生し塗布面上が悪化してしまう。
【0021】
本発明の感熱記録材料は、本発明に係るゼラチンを、前記支持体上の感熱記録層を有する面に塗設されている全構成物の1質量%以上の比率で含有していることで、風ムラ抑制等面状故障の改善効果を得ることができ好ましい。なおかつ、40質量%より含有比率が大きいと全構成物に対する染料前駆体や顕色剤等、発色に寄与する構成物の割合が低くなり、効率的な発色特性を得られないことがあるため、40質量%以下の比率で含有していることが好ましい。つまり1質量%以上40質量%以下の比率で含有していることが好ましく、3質量%以上20質量%以下の比率で含有していることがより好ましく、4質量%以上15質量%以下の比率で含有していることが更に好ましく、これにより液カブリを発生させずに面状故障が改善するという本発明の効果がより顕著になる。
【0022】
[感熱記録層]
本発明に係る感熱記録層は、少なくとも発色成分を含有してなり、更に必要に応じて、その他の成分を含有してなる。
【0023】
(発色成分)
前記感熱記録層は、未処理時には実質的に無色であり、加熱により呈色する性質を有するものであれば、いかなる組成のものでも使用することができる。
このような感熱記録層としては、実質的に無色の発色成分Aと、該発色成分Aと反応して発色する実質的に無色の発色成分Bとを含有する、いわゆる二成分型感熱記録層が挙げられるが、発色成分A又は発色成分Bは、マイクロカプセルに内包される、又は高分子中に含有させ複合微粒子化されることが好ましい。この二成分型感熱記録層を構成する二成分の組合せとしては、下記(a)〜(m)のようなものが挙げられる。
【0024】
(a)電子供与性染料前駆体と、電子受容性化合物との組合せ。
(b)光分解性ジアゾ化合物と、カプラーとの組合せ。
(c)ベヘン酸銀、ステアリン酸銀等の有機金属塩と、プロトカテキン酸、スピロインダン、ハイドロキノン等の還元剤との組合せ。
(d)ステアリン酸第二鉄、ミリスチン酸第二鉄等の長鎖脂肪族塩と、没食子酸、サリチル酸アンモニウム等のフェノール類との組合せ。
(e)酢酸、ステアリン酸、パルミチン酸等のニッケル、コバルト、鉛、銅、鉄、水銀、銀等との塩等の有機酸重金属塩と、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、硫化カリウム等のアルカリ土類金属硫化物との組合せ、又は、前記有機酸重金属塩と、s−ジフェニルカルバジド、ジフェニルカルバゾン等の有機キレート剤との組合せ。
(f)硫化銀、硫化鉛、硫化水銀、硫化ナトリウム等の(重)金属硫酸塩と、Na−テトラチオネート、チオ硫酸ソーダ、チオ尿素等の硫黄化合物との組合せ。
(g)ステアリン酸第二鉄等の脂肪族第二鉄塩と、3,4−ジヒドロキシテトラフェニルメタン等の芳香族ポリヒドロキシ化合物との組合せ。
(h)シュウ酸銀、シュウ酸水銀等の有機貴金属塩と、ポリヒドロキシアルコール、グリセリン、グリコール等の有機ポリヒドロキシ化合物との組合せ。
(i)ペラルゴン酸第二鉄、ラウリン酸第二鉄等の脂肪族第二鉄塩と、チオセシルカルバミドやイソチオセシルカルバミド誘導体との組合せ。
(j)カプロン酸鉛、ペラルゴン酸鉛、ベヘン酸鉛等の有機酸鉛塩と、エチレンチオ尿素、N−ドデシルチオ尿素等のチオ尿素誘導体との組合せ。
(k)ステアリン酸第二鉄、ステアリン酸銅等の高級脂肪酸重金属塩と、ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛との組合せ。
(l)レゾルシンとニトロソ化合物との組合せのようなオキサジン染料を形成する物。
(m)ホルマザン化合物と還元剤及び/又は金属塩との組合せ。
が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、本発明の感熱記録材料においては、(a)電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物との組合せ、(b)光分解性ジアゾ化合物とカプラーとの組合せ、又は(c)有機金属塩と還元剤との組合せを用いることが好ましく、上記(a)又は(b)の組合せを用いることがより好ましく、特に上記(a)の組合せを用いることが好ましい。
【0026】
また、本発明の感熱記録材料は、(拡散透過率/全光透過率)×100(%)から算出されるヘイズ値を下げるように感熱記録層を構成することにより、透明性に優れた画像を得ることができる。このヘイズ値は材料の透明性を表す指数で、一般には、ヘイズメーターを使用して全光透過量、拡散透過光量、平行透過光量から算出される。
【0027】
本発明において、上記ヘイズ値を下げる方法としては、例えば、感熱記録層に含まれる前記発色成分A、Bの両成分の50%体積平均粒径を1.0μm以下、好ましくは、0.6μm以下とし、かつバインダーを感熱記録層の全固形分の30〜60質量%の範囲で含有させる方法、前記発色成分A、Bのいずれか一方をマイクロカプセル化し、他方を塗布乾燥後に実質的に連続層を構成するような、例えば、乳化物のようなもの(乳化分散物など)として使用する方法等が挙げられる。また、感熱記録層に使用する成分の屈折率をなるべく一定の値に近づける方法も有効である。
尚、前記50%体積平均粒径とは、レーザ回折粒度分布測定装置LA700((株)堀場製作所製)により測定した、顔料中の50%体積に相当する顔料粒子の平均粒径(以下、単に「平均粒径」という。)をいう。以下同様とする。
【0028】
次に、前記感熱記録層に好ましく使用される、前記組成の組合せ(a)について、以下に詳細に説明する。
−(a)電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物との組合せ−
本発明において好ましく使用される電子供与性染料前駆体は、実質的に無色のものであれば特に限定されるものではないが、エレクトロンを供与して、或いは、酸等のプロトンを受容して発色する性質を有するものであり、特に、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部分骨格を有しており、電子受容性化合物と接触した場合に、これらの部分骨格が開環若しくは開裂する無色の化合物であることが好ましい。
【0029】
前記電子供与性染料前駆体としては、例えば、トリフェニルメタンフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、フルオレン系化合物、ピリジン系化合物、ピラジン系化合物等が挙げられる。
【0030】
前記フタリド類の具体例としては、米国再発行特許第23,024号明細書、米国特許第3,491,111号明細書、同第3,491,112号明細書、同第3,491,116号明細書、同第3,509,174号明細書等に記載された化合物が挙げられる。
前記フルオラン類の具体例としては、米国特許第3,624,107号明細書、同第3,627,787号明細書、同第3,641,011号明細書、同第3,462,828号明細書、同第3,681,390号明細書、同第3,920,510号明細書、同第3,959,571号明細書等に記載された化合物が挙げられる。
前記スピロピラン類の具体例としては、米国特許第3,971,808号明細書等に記載された化合物が挙げられる。
前記ピリジン系及びピラジン系化合物類としては、米国特許第3,775,424号明細書、同第3,853,869号明細書、同第4,246,318号明細書等に記載された化合物が挙げられる。
前記フルオレン系化合物の具体例としては、特願昭61−240989号公報等に記載された化合物が挙げられる。
これらの中でも、特に、黒発色の2−アリールアミノ−3−〔H、ハロゲン、アルキル又はアルコキシ−6−置換アミノフルオラン〕が好ましく挙げられる。
【0031】
具体的には、例えば、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−シクロヘキシル−N−メチルアミノフルオラン、2−p−クロロアニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジオクチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−イソアミルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−ドデシルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メトキシ−6−ジブチルアミノフルオラン、2−o−クロロアニリノ−6−ジブチルアミノフルオラン、2−p−クロロアニリノ−3−エチル−6−N−エチル−N−イソアミルアミノフルオラン、2−o−クロロアニリノ−6−p−ブチルアニリノフルオラン、2−アニリノ−3−ペンタデシル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−エチル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−o−トルイジノ−3−メチル−6−ジイソプロピルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−イソブチル−N−エチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−N−エチル−N−イソアミルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−メチル−N−γ−エトキシプロピルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−γ−エトキシプロピルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−γ−プロポキシプロピルアミノフルオラン等が挙げられる。
【0032】
前記電子供与性染料前駆体と作用する電子受容性化合物としては、フェノール化合物、有機酸若しくはその金属塩、オキシ安息香酸エステル等の酸性物質が挙げられ、例えば、特開昭61−291183号公報等に記載されている化合物が挙げられる。
具体的には、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン(一般名:ビスフェノールA)、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクロロフェニル)プロパン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−メチル−ペンタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−エチル−ヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,4−ビス(p−ヒドロキシフェニルクミル)ベンゼン、1,3−ビス(p−ヒドロキシフェニルクミル)ベンゼン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジルエステル等のビスフェノール類;
【0033】
3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、3,5−ジ−ターシャリーブチルサリチル酸、3−α−α−ジメチルベンジルサリチル酸、4−(β−p−メトキシフェノキシエトキシ)サリチル酸等のサリチル酸誘導体;
【0034】
又は、その多価金属塩(特に、亜鉛、アルミニウムが好ましい);p−ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、p−ヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシルエステル、β−レゾルシン酸−(2−フェノキシエチル)エステル等のオキシ安息香酸エステル類;p−フェニルフェノール、3,5−ジフェニルフェノール、クミルフェノール、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシ−ジフェニルスルフォン、4−ヒドロキシ−4’−フェノキシ−ジフェニルスルフォン等のフェノール類が挙げられる。
中でも、良好な発色特性を得る観点からビスフェノール類が特に好ましい。
また、上記の電子受容性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
感熱記録材料の充分な透明性を確保するためには、前記感熱記録層に(a)電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物との組合せ、又は(b)光分解性ジアゾ化合物とカプラーとの組合せを用いることが好ましい。また、本発明では、前記発色成分Aと発色成分Bのいずれか一方を、マイクロカプセル化して使用することが好ましく、前記電子供与性染料前駆体、又は光分解性ジアゾ化合物をマイクロカプセル化して使用することがより好ましく、前記電子供与性染料前駆体をマイクロカプセル化して使用することが更に好ましい。
【0036】
−マイクロカプセルの製造方法−
マイクロカプセルの製造には、界面重合法や内部重合法、外部重合法等があり、いずれの方法も採用することができる。
既述のように、本発明の感熱記録材料は、電子供与性染料前駆体をマイクロカプセルに内包することが好ましい態様の一つであり、特に界面重合法、すなわちカプセルの芯となる電子供与性染料前駆体を疎水性の有機溶媒に溶解又は分散させて調製した油相を、水溶性高分子を溶解した水相中に投入し、ホモジナイザー等の攪拌手段により乳化分散した後、加温することにより油相/水相界面で高分子形成反応を起こさせ、高分子物質からなるマイクロカプセル壁を形成する方法を採用することが好ましい。
【0037】
前記高分子物質を形成するリアクタントは、油滴内部及び/又は油滴外部に添加される。高分子物質の具体例としては、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、スチレンメタクリレート共重合体、スチレン−アクリレート共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートが好ましく、特にポリウレタンとポリウレアが好ましい。
【0038】
例えば、ポリウレアをカプセル壁材として用いる場合には、ジイソシアナート、トリイソシアナート、テトライソシアナート、ポリイソシアナートプレポリマー等のポリイソシアナートと、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ジエチレントリアミン等のポリアミン(最も好ましくはテトラエチレンペンタアミン、ジエチレントリアミン)、2以上のアミノ基を有するプレポリマー、ピペラジン若しくはその誘導体又はポリオール等と、を水相中で界面重合法により反応させることによって、容易にマイクロカプセル壁を形成することができる。
【0039】
また、例えば、ポリウレアとポリアミドとからなる複合壁、あるいはポリウレタンとポリアミドとからなる複合壁は、例えば、ポリイソシアナート及びそれと反応してカプセル壁を形成する第2物質(例えば、酸クロライド又はポリアミン、ポリオール)を水溶性高分子水溶液(水相)又はカプセル化すべき油性媒体(油相)中に混合し、これらを乳化分散した後、加温することで作製することができる。このポリウレアとポリアミドからなる複合壁の製造方法の詳細については、例えば、特開昭58−66948号公報に記載されている。
【0040】
前記ポリイソシアナートとしては、3官能以上のイソシアナート基を有する化合物が好ましいが、2官能のイソシアナートを併用してもよい。具体的には、キシレンジイソシアナート及びその水添物、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート及びその水添物、イソホロンジイソシアナート等のジイソシアナートを主原料とし、これらの2量体あるいは3量体(ビューレット又はイソシアヌレート)のほか、トリメチロールプロパン等のポリオールとキシリレンジイソシアナート等の2官能イソシアナートとのアダクト体として多官能としたもの、トリメチロールプロパン等のポリオールとキシリレンジイソシアナート等の2官能イソシアナートとのアダクト体にポリエチレンオキシド等の活性水素を有するポリエーテル等の高分子量化合物を導入した化合物、ベンゼンイソシアナートのホルマリン縮合物等が挙げられる。特開昭62−212190号公報、特開平4−26189号公報、特開平5−317694号公報、特開平10−114153号公報等に記載の化合物が好ましい。
【0041】
前記ポリイソシアナートは、マイクロカプセルの平均粒径が0.3〜12μmで、カプセル壁の厚みが0.01〜0.3μmとなるように添加されることが好ましい。分散粒子径は、0.2〜10μm程度が一般的である。
【0042】
ポリイソシアナートと反応してマイクロカプセル壁を構成する成分の一つとして水相中及び/又は油相中に添加するポリオール又は/及びポリアミンの具体例としては、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ソルビトール、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。ポリオールを添加した場合には、ポリウレタン壁が形成される。上記した反応において、反応温度を高く保ち、あるいは適当な重合触媒を添加することが反応速度を速める点で好ましい。
前記ポリイソシアナート、ポリオール、反応触媒、あるいは壁剤の一部を形成させるためのポリアミン等については、例えば、岩田敬治編「ポリウレタンハンドブック」(日刊工業新聞社、1987)に詳述されている。
【0043】
また、上記マイクロカプセル壁には、必要に応じて金属含有染料、ニグロシン等の荷電調節剤、あるいは、その他任意の添加物質を加えることができる。これらの添加剤は壁形成時又は任意の時点でカプセルの壁に含有させることができる。また、必要に応じてカプセル壁表面の帯電性を調節するために、ビニルモノマー等のモノマーをグラフト重合させてもよい。
【0044】
更に、マイクロカプセル壁をより低温な状況下でも物質透過性に優れ、発色性に富む壁質とすることも可能であり、この場合には壁材として用いるポリマーに適合する可塑剤を併用することが好適である。可塑剤は、その融点が50℃以上のものが好ましく、更には120℃以下のものがより好ましい。このうち、常温下で固体状のものを好適に選択して用いることができる。例えば、壁材がポリウレアやポリウレタンからなる場合、ヒドロキシ化合物、カルバミン酸エステル化合物、芳香族アルコキシ化合物、有機スルホンアミド化合物、脂肪族アミド化合物、アリールアミド化合物等が好適に用いられる。
【0045】
油相の調製に際し、電子供与性染料前駆体を溶解し、マイクロカプセルの芯を形成するときに用いられる疎水性の有機溶媒としては、溶解性が高くカプセル化反応後にカプセル内に残存しない沸点50〜150℃の低沸点有機溶媒が画像保存性を考慮すると好ましい。このような低沸点有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤、メチレンクロライド等が好適に挙げられ、酢酸エチルが最も好ましい。
溶質となる電子供与性染料前駆体の溶解性が劣る場合や、電子供与性染料前駆体の極性が高くマイクロカプセル壁と良好に分離できない場合は、比較的高沸点の疎水性オイルを併用することができる。該疎水性オイルは、カプセル化反応後にもカプセル内に残存するため、画像保存性等の悪化などの弊害をもたらす場合があるが、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類、安息香酸イソペンチル等の安息香酸エステル類、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、ホウ酸トリブチル等のホウ酸エステル類は好適に使用することができ、特にリン酸トリクレジルは乳化安定性、画像保存性などが比較的良好であるため好ましい。
【0046】
一方、水相は、保護コロイドとして水溶性高分子を溶解した水溶液とし、これに上記した油相を投入後、ホモジナイザー等の手段により乳化分散を行なうが、前記水溶性高分子は、分散を均一にかつ容易にすると共に、乳化分散した水溶液を安定化させる分散媒として作用する。既述の本発明に係るゼラチンも保護コロイドとして用いることができるが、好ましい保護コロイドとして、ポリビニルアルコール(PVA)が挙げられ、特に末端疎水化した変性PVAは乳化時やカプセル化反応時の凝集や沈降を抑制することができる。このとき、更に均一に乳化分散し安定化させるためには、油相あるいは水相の少なくとも一方に界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、周知の乳化用界面活性剤を使用することができ、界面活性剤を使用する場合の添加量は、油相(質量)に対して0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。
【0047】
水相に含有させる界面活性剤は、アニオン性又はノニオン性の界面活性剤の中から、前記保護コロイドと作用して沈殿や凝集を起こさないものを好適に選択して使用することができる。界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルキル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム塩、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)、アセチレングリコール誘導体等が好適に挙げられる。
【0048】
乳化は、上記の各種成分を含有する油相と保護コロイド及び界面活性剤を含有する水相とを、高速撹拌や超音波分散等の通常の微粒子乳化に用いられる攪拌手段、例えば、ホモジナイザー、マントンゴーリー、超音波分散機、ディゾルバー、ケディーミル等、公知の乳化装置を用いて容易に行なうことができる。該乳化後は、カプセル壁形成反応を促進させるために、乳化物を30〜70℃に加温することが好ましい。また、反応中はカプセル同士の凝集を防止するために、加水してカプセル同士の衝突確率を下げたり、充分な攪拌を行なうことが好ましい。
【0049】
また、反応中に改めて凝集防止用の分散物を添加してもよい。重合反応の進行に伴なって炭酸ガスの発生が観測され、その発生の終息をもってカプセル壁形成反応の終点とみなすことができる。通常、数時間反応させることにより、目的のマイクロカプセルを得ることができる。
【0050】
−複合微粒子(高分子)への含有方法−
本発明の感熱記録材料においては、既述のように、電子供与性染料前駆体を高分子中に含ませて複合微粒子として含有する形態も好ましい態様の一つである。電子供与性染料前駆体を高分子中に含ませる方法としては、有機溶剤を用いずに、重合成分の多価イソシアネート化合物を溶媒とし、その中に電子供与性染料前駆体を溶解させるようにすること以外、前記マイクロカプセルの製造方法と同様の方法によって、電子供与性染料前駆体を含む高分子となる複合微粒子を作製(複合微粒子化)することができる。
【0051】
複合微粒子については、例えば特開平9−263057号公報等に記載された詳細を参照できる。なお、この複合微粒子の態様は、溶質の溶解度が制限され、必要以上に複合微粒子の塗布量が多くなったり、電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物(顕色剤)との隔離を完全に行なうことが難しく、地肌着色や画像保存性の悪化を伴ないやすいことから、本発明においてはマイクロカプセルに内包させる態様がより好適である。
【0052】
−乳化/固体分散物−
次に、高分子中に無色もしくは淡色の電子供与性染料前駆体を含む複合微粒子、又は無色もしくは淡色の電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルと共に含有する顕色剤の使用形態、すなわち顕色剤分散液(乳化分散液、固体分散液)の詳細について説明する。
【0053】
電子供与性染料前駆体を芯物質としてマイクロカプセル化した場合、あるいは高分子中に含ませて複合粒子化した場合には、電子受容性化合物は、予め水に難溶性又は不溶性の有機溶剤に溶解し、この溶解液(油相)を界面活性剤及び/又は水溶性高分子を保護コロイドとして含有する高分子水溶液(水相)と混合してホモジナイザー等を用いて乳化分散した乳化分散物として、好適に用いることができる。この場合、必要に応じて、低沸点溶剤を溶解助剤として用いることもできる。
【0054】
乳化分散のほか、前記電子受容性化合物は、固体分散物として用いる態様も好適である。具体的には、電子受容性化合物を水に難溶性又は不溶性の有機溶剤や溶解助剤に溶解せずに、直接界面活性剤及び/又は水溶性高分子を保護コロイドとして含む高分子水溶液中に加えてダイノミル等により固体分散して微粒化した固体分散物として、好適に用いることができる。
【0055】
乳化分散及び固体分散の際に用いる水溶性高分子としては、公知のアニオン性高分子、ノニオン性高分子、両性高分子の中から適宜選択することができ、乳化しようとする温度における水に対する溶解度が5%以上の水溶性高分子が好ましく、その具体例としては、ポリビニルアルコール又はその変成物、ポリアクリル酸アミド又はその誘導体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース,メチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビヤゴム、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコール及びその変性物、ゼラチン及びその変性物、セルロース誘導体等が特に好ましい。既述の本発明に係るゼラチンも保護コロイドとして好適に用いることができる。
【0056】
また、乳化分散において、油相の水相に対する混合比(油相質量/水相質量)は、0.02〜0.6が好ましく、0.1〜0.4がより好ましい。該混合比が0.02〜0.6の範囲内であると、適度の粘度に保持でき、製造適性に優れ、塗布液安定性に優れる。
【0057】
本発明に係る感熱記録層には、上記した発色成分以外に、目的等に合わせて、例えば、公知の熱可融性物質、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの他の成分を適宜選択して含有することができる。
【0058】
前記熱可融性物質は、熱応答性の向上を図る目的で感熱記録層に含有させることができる。該熱可融性物質としては、芳香族エーテル、チオエーテル、エステル、脂肪族アミド、ウレイド等が挙げられる。これらの例は、特開昭58−57989号、同58−87094号、同61−58789号、同62−109681号、同62−132674号、同63−151478号、同63−235961号、特開平2−184489号、同2−215585号の各公報等に記載されている。
【0059】
前記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤等が好適に挙げられる。これらの例は、特開昭47−10537号、同58−111942号、同58−212844号、同59−19945号、同59−46646号、同59−109055号、同63−53544号、特公昭36−10466号、同42−26187号、同48−30492号、同48−31255号、同48−41572号、同48−54965号、同50−10726号の各公報、米国特許2,719,086号、同3,707,375号、同3,754,919号、同4,220,711号の各明細書等に記載されている。
【0060】
前記酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アニリン系酸化防止剤、キノリン系酸化防止剤等が好適に挙げられる。これらの例は、特開昭59−155090号、同60−107383号、同60−107384号、同61−137770号、同61−139481号、同61−160287号の各公報等に記載されている。
【0061】
これら他の成分の量としては、0.05〜1.0g/m2程度が好ましく、0.1〜0.4g/m2がより好ましい。なお、他の成分は、既述のマイクロカプセルや高分子中に添加してもよいし、マイクロカプセルや高分子の外部に添加するようにしてもよい。
【0062】
(感熱記録層用塗布液)
感熱記録層用塗布液は、例えば、上記のように調製したマイクロカプセル液と乳化分散物とを混合することにより、調製することができる。ここで、前記マイクロカプセル液の調製の際に保護コロイドとして用いた水溶性高分子、並びに前記乳化分散物の調製の際に保護コロイドとして用いた水溶性高分子は、前記感熱記録層におけるバインダーとして機能する。また、これら保護コロイドとは別にバインダーを添加、混合して、感熱記録層用塗布液を調製してもよい。特に既述の本発明に係わるゼラチンは保護コロイドとして使用するだけではなく、上記のように添加することで、より好適に本発明の効果を発揮することができる。
【0063】
その他、添加されるバインダーとしては、水溶性のものが一般的であり、ポリビニルアルコ−ル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エピクロルヒドリン変性ポリアミド、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレインサリチル酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アミド、メチロール変性ポリアクリルアミド、デンプン誘導体、カゼイン、ゼラチン等が挙げられる。
また、これらのバインダーに耐水性を付与する目的で耐水化剤を加えたり、疎水性ポリマーのエマルジョン、具体的には、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリル樹脂エマルジョン等を添加することもできる。
【0064】
感熱記録層用塗布液を支持体上に塗布する際、水系又は有機溶剤系の塗布液に用いる公知の塗布手段が用いられるが、この場合、感熱記録層用塗布液を安全かつ均一に塗布するとともに、塗膜の強度を保持するため、本発明の感熱記録材料においては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉類、ゼラチン、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリスチレン又はその共重合体、ポリエステル又はその共重合体、ポリエチレン又はその共重合体、エポキシ樹脂、アクリレート系樹脂又はその共重合体、メタアクリレート系樹脂又はその共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等を使用することができる。
【0065】
(他の成分)
以下に、感熱記録層に用いることのできる他の成分について述べる。
他の成分としては、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、公知の熱可融性物質、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0066】
熱可融性物質は、熱応答性の向上を図る目的で感熱記録層に含有させることができる。
熱可融性物質としては、芳香族エーテル、チオエーテル、エステル、脂肪族アミド、ウレイド等が挙げられる。これらの例は、特開昭58−57989号、同58−87094号、同61−58789号、同62−109681号、同62−132674号、同63−151478号、同63−235961号、特開平2−184489号、同2−215585号の各公報等に記載されている。
【0067】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤等が好適に挙げられる。これらの例は、特開昭47−10537号、同58−111942号、同58−212844号、同59−19945号、同59−46646号、同59−109055号、同63−53544号、特公昭36−10466号、同42−26187号、同48−30492号、同48−31255号、同48−41572号、同48−54965号、同50−10726号の各公報、米国特許2,719,086号、同3,707,375号、同3,754,919号、同4,220,711号の各明細書等に記載されている。
【0068】
酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アニリン系酸化防止剤、キノリン系酸化防止剤等が好適に挙げられる。これらの例は、特開昭59−155090号、同60−107383号、同60−107384号、同61−137770号、同61−139481号、同61−160287号の各公報等に記載されている。
【0069】
前記他の成分の塗布量としては、0.05〜1.0g/m2程度が好ましく、0.1〜0.4g/m2がより好ましい。なお、前記他の成分は、前記マイクロカプセル内に添加してもよいし、前記マイクロカプセル外に添加してもよい。
【0070】
感熱記録層は、サーマルヘッドの僅かな熱伝導の差異等から生ずる濃度ムラ等を抑え高画質な画像を得るため、飽和透過濃度(DT-max)を得るのに必要なエネルギー量幅、即ち、ダイナミックレンジが広い感熱記録層であることが好ましい。本発明の感熱記録材料は上記のような感熱記録層を有し、70〜130mJ/mm2の範囲の熱エネルギー量で、透過濃度DT-max3.0を得ることができる特性を有する感熱記録層であることが好ましい。
【0071】
感熱記録層は、塗布、乾燥後の乾燥塗布量が1〜25g/m2になるように塗布されること、及び該層の厚みが1〜25μmになるように塗布されることが好ましい。感熱記録層は、2層以上積層して用いることも可能である。この場合、全感熱記録層の塗布、乾燥後の乾燥塗布量が1〜25g/m2であることが好ましい。
【0072】
[他の層]
本発明の感熱記録材料には、上記の感熱記録層以外に、実質的に透明な高分子支持体の上に、中間層を有していることが好ましく、更に他の層としてバックコート層や保護層、下塗り層、紫外線フィルター層等を設けることができる。
【0073】
−中間層−
中間層はバインダーを用いて構成され、感熱記録層上に形成されることが好ましい。中間層は層の混合防止や画像保存性に対して有害なガス(酸素等)を遮断する目的で設けられる。前記バインダーには特に制限はなく、系に応じてポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体等を適宜選択できるが、既述の本発明に係るゼラチンであることが好ましい。ゼラチンは高温で水溶液が流動性を有しているが、低温にすると流動性を失いゲル化する性質(セット性)に優れるため、支持体上に複数の層を形成するための塗布液を塗布、乾燥して層を設ける場合、複数の層を順次塗布乾燥する方法、押出しダイ方式等で一度に重層塗布する方法のいずれにおいても、隣接する層が相互に混合するのを有効に防止でき、得られる感熱記録材料の面状が良好になり、高品位な画像形成が可能な感熱記録材料を得ることができる。そのため、細部まで明瞭な高画質画像を形成する必要のある医療診断用記録材料に構成するのに好適である。更に高い風速で乾燥しても面状が悪化しないので、製造効率を向上させることができる。
【0074】
本発明に係るゼラチンとしては、中間層のバインダーとして用いる場合、無修飾(未処理)ゼラチンあるいは修飾(処理)ゼラチンが使用できる。修飾ゼラチンとしては、石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、フタル化処理ゼラチン、脱イオン処理ゼラチン、酵素処理低分子量ゼラチン等が挙げられ、特に石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチンが好適に用いることができる。また、塗布性付与のため、種々の界面活性剤を添加してもよい。またガスバリアー性をより高めるために雲母等の無機微粒子を前記バインダーに対し2〜20質量%、より好ましくは5〜10質量%添加してもよい。
【0075】
−バックコート層−
本発明の感熱記録材料は、高分子支持体の感熱記録層が設けられない側にバックコート層が設けられた形態が好ましい。バックコート層は、マット剤及び水溶性高分子を用いて好適に構成することができる。
前記マット剤は、搬送性付与及び光反射防止の目的で添加され、マット剤を添加することによって、入射光角20°で測定した光沢度を50%以下とすることが好ましく、30%以下にすることがより好ましい。
【0076】
前記マット剤としては、大麦、小麦、コーン、米、豆類等より得られる澱粉等の微粒子の他、セルロースファイバー、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素ホルマリン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート樹脂、塩化ビニル又は酢酸ビニル等の共重合体樹脂、ポリオレフィン等の合成高分子の微粒子、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、スメクタイト粘度、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛等の無機物の微粒子等が挙げられる。マット剤の平均粒径は、0.5〜20μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましく、また、マット材は一種単独で用いる以外に二種以上を併用してもよい。
【0077】
前記水溶性高分子としては、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体等を用いることができ、ゼラチンが特に好ましい。
【0078】
また、感熱記録材料の透明性を良好なものとする点で、屈折率が1.4〜1.8の範囲にあることが好ましい。バックコート層には、色相改良の観点から、各種染料(例えば、C.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Blue 64、C.I.Pigment Blue 15:6)を用いることができる。また、硬膜剤を用いてもよく、該硬膜剤の例としては、T.H.James著「THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCES 4th EDITION」(77頁〜87頁)に記載のビニルスルフォン系化合物が好ましい。
【0079】
−保護層−
保護層は、通常は感熱記録層上に、その他の層として中間層を感熱記録層上に設ける場合には、該中間層上に形成される。この保護層は通常、保護層用塗布液を塗布し乾燥して形成されるもので、該保護層用塗布液は広い記録エネルギー領域に亙り、良好なヘッドマッチング性を保持するために、少なくとも顔料を含有し、更に潤滑剤や水溶性樹脂及び架橋剤等を含むことができる。
【0080】
本発明の保護層に用いる上記顔料は、サーマルヘッドによる記録を好適なものとする為、即ち、スティッキングや異音等の発生を抑止する目的で用いられるもので、有機顔料及び無機顔料等の中から適宜に選択して使用する。
【0081】
上記顔料としては、その平均粒径、詳しくはレーザー回折法で測定した50%体積平均粒径(堀場製作所(株)製のレーザー回折粒度分布測定装置「LA700」により測定した、顔料中の50%体積に相当する顔料粒子の平均粒径を指す。以下、これを単に「平均粒径」と言うことがある。)が、0.10〜5μmであるものが好ましく、特にサーマルヘッドにより記録する際、サーマルヘッドと感熱記録材料の間におけるスティッキングや異音等の発生を防止する観点から、該50%体積平均粒径が0.20〜0.50μmの範囲にあるものがより好ましい。この50%体積平均粒径が0.10〜5.0μmの範囲にあると、サーマルヘッドに対する摩擦の低減効果が大きく、その結果、印画時にサーマルヘッドと感熱記録材料の保護層とが接着ないし粘着する、所謂、スティッキング現象を効果的に防止することができる。
【0082】
本発明に係る保護層に用いる顔料としては、特に限定されるものではなく、公知の有機及び無機の顔料を挙げることができるが、中でも、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、水酸化アルミニウム、非晶質シリカ、酸化亜鉛等の無機顔料、及び尿素ホルマリン樹脂、エポキシ樹脂等の有機顔料が好ましい。特に、カオリン、水酸化アルミニウム、非晶質シリカがより好ましい。これらの顔料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また上記顔料において、高級脂肪酸や高級脂肪酸の金属塩、又は高級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種により表面被覆された顔料を、特に好適に使用することができる。上記高級脂肪酸としてはステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸等が挙げられる。
【0083】
これらの顔料は、例えば、ヘキサメタリン酸ソーダ、部分又は完全鹸化のポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、及び各種界面活性剤等の分散助剤、好ましくは部分又は完全鹸化のポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体アンモニウム塩の存在下で、ディゾルバーやサンドミル、ボールミル等の公知分散機を用いて、前記の好ましい平均粒径にまで分散して使用されることが好ましい。即ち、顔料の50%体積平均粒径が0.1〜5.0μmの範囲の粒径になるまで微分散してから使用されることが好ましい。
【0084】
本発明の保護層には、印画トルクを軽減しヘッドマッチング性を改善する為に、上述の顔料と共に、液体及び固体状態の潤滑剤を含有する形態が好ましい。特に、汚れや滓(カス)の発生及び付着を防ぎながら且つ表面強度を向上させる観点より、上記保護層としては、(A)液体ないし融点が40℃未満の潤滑剤と(B)融点が40℃以上の潤滑剤を含有することが好ましい。
【0085】
本発明の保護層には、透明性を良好なものとする観点から、バインダーとして親水性構造単位(水酸基など)を有するポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、シリカ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ゼラチン、変性ゼラチン、澱粉、変性澱粉等の水溶性樹脂を用いることが好ましい。
【0086】
更に、本発明の保護層には、表面強度を上げる為に、上記の水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を併用して含有させることが好ましい。
該架橋剤としては、ホウ素化合物が好適に使用され、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩、二硼酸塩、メタ硼酸塩、四硼酸塩、五硼酸塩等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましい。
【0087】
上記以外の水溶性樹脂の架橋剤としては、例えば、アルデヒド系化合物、ケトン系化合物、活性ハロゲン化合物、活性ビニル化合物、N−メチロール化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、アジリジン系化合物、カルボジイミド系化合物、エチレンイミノ系化合物、ハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物、ジオキサン系化合物、金属含有化合物、ポリアミン化合物、ヒドラジド化合物、等が挙げられる。
上記の中でも、下記構造式[001]で表わされるジアルデヒド誘導体;
【0088】
【化1】

【0089】
及び、ホルムアルデヒド、グリオキザール、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドスターチ、植物ガムのジアルデヒド誘導体等のアルデヒド系化合物、及びエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、スピログリコールジグリシジルエーテル、フェノール樹脂のポリグリシジルエーテル等のエポキシ化合物が好ましい。
上記の架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いることもできる。また、保護層における上記架橋剤の使用量は、水溶性樹脂に対して1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
【0090】
本発明において、感熱記録層又は中間層上に均一に保護層を形成させるために、保護層形成用塗布液に界面活性剤を添加することが好ましい。該界面活性剤としては、スルホコハク酸系のアルカリ金属塩、フッ素含有界面活性剤等が好ましく、具体的には、ジ−(2−エチルヘキシル)スルフォコハク酸、ジ−(n−ヘキシル)スルフォコハク酸等のナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩、アセチレングリコール誘導体、パーフルオロアルキル硫酸ナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩、パーフルオロアルキルベタイン化合物等が挙げられる。
【0091】
更に上記保護層には、感熱記録材料の帯電防止の目的で、金属酸化物微粒子、無機電解質、及び高分子電解質等を添加してもよい。また、上記保護層は単層構造であってもよいし、2層以上の積層構造であってもよい。
上記保護層の乾燥塗布量は0.2〜7g/m2が好ましく、1〜4g/m2がより好ましい。
【0092】
−下塗り層−
本発明の感熱記録材料には、高分子支持体から感熱記録層が剥がれることを防止する目的で、感熱記録層やバックコート層等の塗布前に、高分子支持体上に下塗り層を設けることができる。下塗り層は、アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、SBR、水性ポリエステル等を用いて構成することができ、層厚は0.05〜0.5μmが好ましい。
【0093】
下塗り層上に感熱記録層を塗布する際、感熱記録層形成用の塗布液に含まれる水分で下塗り層が膨潤し、感熱記録層に記録された画像が悪化することがあるので、下塗り層にはグルタルアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のジアルデヒド類及びホウ酸等の硬膜剤を用いて硬化させることが好ましい。これらの硬膜剤の添加量は、下塗り素材の質量に応じて0.2〜3.0質量%の範囲で、所望の硬化度に合わせて適宜に添加することができる。
【0094】
−光遮断層−
上記した層以外に更に、画像の光褪色及び地肌カブリを防止する目的で、光遮断層を設けてもよい。光遮断層は、結合剤中に紫外線吸収剤を均一に分散させたものであり、均一に分散された紫外線吸収剤による紫外光の吸収により、地肌変色や、画像部の変色又は褪色を防止できる。光遮断層の作成方法及び用いる化合物等については、特開平4−197778号公報の記載のほか、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等の紫外線吸収剤を利用できる。
【0095】
[支持体]
本発明の感熱記録材料は、支持体として、実質的に透明な高分子支持体(以下、「透明支持体」ともいう。)を用いて構成される。実質的に透明性を具えるので、特に医療分野における医療用画像など、画像を観る際に光透過させる用途において、非発色部に高度の透光性を付与することができる。
【0096】
実質的に透明であるとは、光が通過して通過方向が視認可能な状態をいい、にごりが少なく、透き通っていて光の透過をほとんど損なわない状態が望ましい。
【0097】
透明支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、三酢酸セルロースフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルム等の合成高分子フィルムが挙げられ、これらを単独で、あるいは複数貼り合わせて使用することができる。
【0098】
特に医療用途の場合、透明支持体は青色染料(例えば、特開平8−240877号公報の実施例に記載の染料−1)で着色されていてもよいし、無着色でもよい。透明支持体には、ゼラチンや水溶性ポリエステル等の下塗りが施されることが好ましい。下塗り層に関しては例えば、特開昭51−11420号公報、同51−123139号公報、同52−65422号公報に記載のものが利用できる。
【0099】
本発明に係る透明支持体の厚みとしては、100μm以上が望ましく、150〜200μmがより好ましく、特には100μm以上のポリエチレンテレフタレートで構成されている態様が好ましい。
【0100】
また、透明支持体を構成する前記合成高分子フィルムは、任意の色相に着色されていてもよい。合成高分子フィルムを着色する方法としては、樹脂フィルムを成形する前に樹脂に染料を混練してフィルムを成形する方法、染料を適当な溶剤に溶かした塗布液を調製し、これを無色透明な樹脂フィルム上に公知の塗布方法、例えば、グラビアコート法、ローラーコート法、ワイヤーコート法等により塗布する方法等が挙げられる。中でも、青色染料を混練したポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂をフィルムに成形し、これに耐熱処理、延伸処理、帯電防止処理を施したものが好ましい。
【0101】
特に、透明性を有する本発明の感熱記録材料を、医療用途においてシャーカステン上で透明支持体側から観察した場合、透明なままの非発色部を透過するシャーカステン光により幻惑が生じ見づらい画像になることがある。これを避けるため、透明支持体として、JIS−Z8701記載の方法により規定された色度座標上の、A(x=0.2805,y=0.3005)、B(x=0.2820,y=0.2970)、C(x=0.2885,y=0.3015)、D(x=0.2870,y=0.3040)の4点で形成される四角形の領域内に青く着色された合成高分子フィルムを用いることが特に好ましい。
【0102】
[感熱記録材料の製造方法]
以下、本発明の感熱記録材料の製造方法について説明する。
本発明の感熱記録材料を構成する各層は、前述した感熱記録層、中間層、保護層、等を含む複数の層を形成するための塗布液を調製し、該塗布液を支持体上に、順次あるいは同時に重層塗布し、乾燥することにより形成されもので、少なくとも、支持体上に、既述の本発明に係るゼラチンを含有する塗布液を塗布して層を形成する工程を有することを特徴とする
【0103】
ここで使用される支持体は、本発明の感熱記録材料に使用される既に説明した支持体を用いることができる。また、感熱記録層塗布液、中間層用塗布液、保護護層用塗布液、等の各層形成用の塗布液についても、前術した各層の説明において記載したものを用いることができる。
【0104】
本発明の感熱記録材料の製造方法では、支持体上に、下塗り層、感熱記録層、中間層、保護層等を順次形成するために、既述の本発明に係るゼラチンを含有する塗布液を含む複数の塗布液をブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等の公知の塗布方法が用いてもよいが、前記層を形成する工程が、前記ゼラチンを含有する塗布液を含む複数の塗布液を押出しダイ方式により同時重層塗布して、複数の層を形成する工程であることが好ましい。
【0105】
これら塗布法として、さらに具体的には、エクストルージョンコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、ナイフコーティング、フローコーティング、又は米国特許第2,681,294号明細書に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを含む種々のコーティング操作が用いられ、Stephen F. Kistler、Petert M. Schweizer 著“LIQUID FILM COATING”(CHAPMAN & HALL 社刊、1997年)399頁から536頁に記載のエクストルージョンコーティング又はスライドコーティングが好ましく用いられ、特に好ましくはスライドコーティングが用いられる。スライドコーティングに使用されるスライドコーターの形状の例は、同書427頁のFigure 11b.1 にある。また、所望により、同書399頁から536頁に記載の方法、米国特許第2,761,791号明細書及び英国特許第837,095号明細書に記載の方法により2層又はそれ以上の層を同時に被覆することができる。
【0106】
本発明の感熱記録材料の製造方法は、前記ゼラチンを含有する塗布液を含む複数の塗布液を押出しダイ方式により同時重層塗布することが好ましいが、特に既述の本発明に係るゼラチンを用いるため、押出しダイを20℃以上35℃以下の温度に保温し、かつ、前記ゼラチンを含有する塗布液を、前記押出しダイとの温度差が10℃以下となる温度で保温した状態で行うことが、液カブリを発生させずに面状故障が改善した感熱記録材料が得られるという効果がより顕著になる点でより好ましい。
【0107】
前記押出しダイの温度は25℃以上30℃以下であることが好ましい。また、前記塗布液と押出しダイとの温度差は5℃以下であることが好ましい。
【0108】
本発明の感熱記録材料を用いて記録を行なう場合、サーマルヘッドを用いて行なうことができ、このサーマルヘッドには、感熱記録材料と接触する最上層の炭素比率が90%以上になるように、既知の製膜装置を用いて、グレーズ層上に発熱抵抗体と電極とを具備した加熱素子に保護層を設けたものが好適である。この保護層は2層以上に構成されてもよいが、少なくとも最上層は炭素比率が90%以上であることが好ましい。
【実施例】
【0109】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【0110】
(実施例1)
<中間層用塗布液の調製>
チカダイ鱗を脱灰後、石灰処理して得られたゼラチン1.0kgに、水14.7kgを加え60℃で加熱溶解し、ジ−2−エチルヘキシルスルフォコハク酸Na塩(ニッサンラピゾールB90、日本油脂(株)製)の5%溶解液(水/メタノール=1/1体積混合溶媒)を13.7g、増粘剤であるポリ(p−ビニルベンゼンスルフォン酸Na)(分子量約40万)の3%水溶液を中間層用塗布液の粘度が35℃で100mPa・sとなるように添加し調整することで目的の中間層用塗布液を得た。ここで、粘度とはB型粘度計(商品名:B型粘度計BL式、東京計器製、60rpm)で測定したものを示す。
【0111】
<保護層用塗布液の調製>
1)保護層用顔料分散液の調製
水900gに、顔料としてステアリン酸で表面処理を施した水酸化アルミニウム(ハイジライトH42S、昭和電工(株)製)280gを加え、3時間攪拌した後、これに分散助剤(ポイズ532A、花王(株)製)8.5g、10%ポリビニルアルコール水溶液(PVA105、(株)クラレ製)300g、及び化合物「CH3(CH27CH=CH(CH27−CON(CH3)−CH2CH2SO3Na」の2%水溶液75gを加え、サンドミルで平均粒径0.33μmに分散し、更にこれに水を加えて濃度18%に調整された保護層用顔料分散液を調製した。
【0112】
前記平均粒径は、顔料を分散剤共存下で分散し、分散直後の顔料分散物に水を加えて0.5%になるように希釈した被検液を40℃の温水中に投入し、光透過率を72±1%に調整した後、30秒間かけて超音波処理を行ない、レーザー回折粒度分布測定装置(LA700、(株)堀場製作所製)を用いて測定した、全顔料の50%体積に相当する顔料粒子の平均粒径をさす。以下、平均粒径は全て同様の方法により測定した平均粒径を表す。
【0113】
2)保護層用潤滑剤分散液の調製
水280gに、潤滑剤としてグリセリントリ−12−ヒドロキシステアラート(K3ワックス500、川研ファインケミカル(株)製)110gを加え、3時間攪拌した後、これに分散助剤(ポイズ532A、花王(株)製)3g、10%ポリビニルアルコール水溶液(MP103、(株)クラレ製)340g、及び化合物「CH3(CH27CH=CH(CH27−CON(CH3)−CH2CH2SO3Na」の2%水溶液34gを加えてサンドミルで平均粒径0.26μmに分散し、更にこれに水を加えて18%に調整して保護層用潤滑剤分散液を調製した。このとき、潤滑剤として用いたグリセリントリ−12−ヒドロキシステアラートの濃度は13.6%である。
【0114】
3)保護層用塗布液の調製
ポリビニルアルコール(PVA−124C、(株)クラレ製)5%水溶液430g、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムの72%水溶液5g、アセチレングリコール系界面活性剤(サーフィノール104、日信化学(株)製)の50%液5.5g、「サーフロンS131S」(旭ガラス(株)製)10g、融点35℃のポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩(プライサーフA217E、第一工業製薬(株)製)2g、上記より得た18%の保護層用顔料分散液245g、上記より得た18%の保護層用潤滑剤分散液10g、20.5%ステアリン酸亜鉛分散物(F115、中京油脂(株)製)1g、18%ステアリン酸分散物(セロゾール920、中京油脂(株)製)31g、35%シリコーンオイル水分散液(BY22−840、東レ・ダウコーニング(株)製)41.5g、スチレンマレイン酸共重合体アンモニウム塩5%水溶液(ポリマロン385、荒川化学(株)製)110g、コロイダルシリカ(スノーテックス、日産化学(株)製)の20%水溶液53g、4%硼酸水溶液70g、2%酢酸水溶液30g、及び前記構造式[001]で表されるジアルデヒド誘導体(硬膜剤)の50%水溶液22gを混合した。この混合液に更に水を加え、濃度12%に調整された保護層用塗布液を調製した。
【0115】
<感熱記録層用塗布液の調製>
以下に示す手順にしたがって、電子供与性染料前駆体を芯物質として内包するマイクロカプセル液並びに、電子受容性化合物(顕色剤)の固体分散液及び乳化分散液を各々調製した。
【0116】
1)電子供与性染料内包マイクロカプセル液Aの調製
電子供与性染料前駆体として、下記構造式[201]で表される化合物63.7g、下記構造式[202]で表される化合物21g、下記構造式[203]で表される化合物10.8g、下記構造式[204]で表される化合物5.8g、下記構造式[205]で表される化合物2.2g、下記構造式[206]で表される化合物2.7g、及び下記構造式[207]で表される化合物2.6gを酢酸エチル110gに添加し、70℃に加熱し溶解させた後、45℃まで冷却した。その後、これにカプセル壁材(タケネートD140N、武田薬品工業(株)製)70gを加えて混合した。
【0117】
この混合液を5.9%のポリビニルアルコール水溶液(MP−103、(株)クラレ製)300gの水相中に加えた後、エースホモジナイザー(日本精機(株)製)を用いて回転数15000r.p.m.にて乳化分散を行なった。得られた乳化液に水275g及びテトラエチレンペンタミン6.5gを添加した後、温度60℃で4時間かけてカプセル化反応を行ない、最後に水を加えて濃度25%に調整し、平均粒径0.8μmの電子供与性染料内包マイクロカプセル液Aを調製した。
【0118】
2)電子供与性染料内包マイクロカプセル液Bの調製
電子供与性染料前駆体として、下記構造式[201]で表される化合物54.5g、下記構造式[202]で表される化合物14.8g、下記構造式[203]で表される化合物10.5g、下記構造式[204]で表される化合物6.4g、下記構造式[205]で表される化合物3.4g、下記構造式[206]で表される化合物0.5g、及び下記構造式[207]で表される化合物2.1gを酢酸エチル110gに添加し、70℃に加熱し溶解させた後、温度45℃まで冷却した。その後、これにカプセル壁材(タケネートD127N、武田薬品工業(株)製)65.5gを加えて混合した
【0119】
この混合液を5.9%のポリビニルアルコール水溶液(MP−103、(株)クラレ製)275gの水相中に加えた後、エースホモジナイザー(日本精機(株)製)を用いて回転数15000r.p.m.にて乳化分散を行なった。得られた乳化液に水275g及びテトラエチレンペンタミン5.70gを添加した後、温度60℃で4時間かけてカプセル化反応を行ない、最後に水を加えて濃度28%に調整し、平均粒径0.3μmの電子供与性染料内包マイクロカプセル液Bを調製した。
【0120】
【化2】

【0121】
【化3】

【0122】
3)顕色剤乳化分散液の調製
顕色剤として、下記構造式[302]で表される化合物22.0g、下記構造式[303]で表される化合物8.0g、下記構造式[304]で表される化合物2.6g、下記構造式[305]で表される化合物2.6g、及び下記構造式[306]で表される化合物0.5gと、紫外線吸収剤として下記構造式[301]で表される化合物4.0gとを、トリクレジルフォスフェート1.0g及びマレイン酸ジエチル0.5gと共に、酢酸エチル16.5gに添加し、70℃に加熱して溶解した。
【0123】
この混合液を、水67g、ポリビニルアルコール8%水溶液(PVA−217C、(株)クラレ製)55g、ポリビニルアルコール15%水溶液(PVA−205C、(株)クラレ製)19g、下記構造式[401]で表される化合物の2%水溶液11g、及び下記構造式[402]で表される化合物の2%水溶液11gを混合した水相中に加えた後、エースホモジナイザー(日本精機(株)製)を用いて回転数10000r.p.m.にて平均粒径0.7μmになるように乳化分散し、顕色剤乳化分散液を調製した。
【0124】
【化4】

【0125】
【化5】

【0126】
4)感熱記録層用塗布液Aの調製
前記電子供与性染料内包マイクロカプセル液A(固形分濃度23%)24g、前記電子供与性染料内包マイクロカプセル液B(固形分濃度24%)55g、前記顕色剤乳化分散液(固形分濃度22%)94.5g、前記構造式[001]で表されるジアルデヒド誘導体の50%水溶液1.3g、コロイダルシリカ(スノーテックスO、日産化学(株)製)3.6g、及び水6.7gを混合して、感熱記録層用塗布液Aを調製した。
【0127】
5)感熱記録層用塗布液Bの調製
前記電子供与性染料内包マイクロカプセル液A(固形分濃度23%)12.5g、前記電子供与性染料内包マイクロカプセル液B(固形分濃度24%)14.5g、前記顕色剤乳化分散液(固形分濃度22%)94.5g、前記構造式[403]で表される化合物の50%水溶液1.2g、コロイダルシリカ(スノーテックスO、日産化学(株)製)4.5g、及び水14.5gを混合して、感熱記録層用塗布液Bを調製した。
【0128】
<バックコート層用塗布液Aの調製>
石灰処理ゼラチンを1kg、平均粒子径5.7μmの球形PMMA粒子12%とゼラチン4.5%を含有する分散物180g、及び下記構造式[501]〜[505]で表される化合物を下記含有率で含有する紫外線吸収剤の乳化物〔この乳化物1kg当たりの紫外線吸収剤含有量は、構造式[501]で表される化合物14.9g、構造式[502]で表される化合物12.7g、構造式[503]で表される化合物14.9g、構造式[504]で表される化合物21.1g、及び構造式[505]で表される化合物44.5gである。〕1028gと、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン0.98gと、ポリ(p−ビニルベンゼンスルフォン酸ナトリウム)[分子量:約40万]16.4gと、下記構造式[506]で表される化合物3.79gと、ポリエチルアクリレートの20%ラテックス液1448mlと、N,N−エチレン−ビス(ビニルスルフォニルアセトアミド)52.2gと、1,3−ビス(ビニルスルフォニルアセトアミド)プロパン17.4gとを、水を加えて全量が21.03リットルになるように混合し、バックコート層用塗布液Aを調製した。
【0129】
【化6】

【0130】
<バックコート層用塗布液Bの調製>
石灰処理ゼラチンを1kg、平均粒子径0.7μmの球形PMMA粒子15%とゼラチン7%を含有する分散物1015g、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン2.09g、p−tert−オクチルフェノキシポリオキシエチレン−エチレンスルフォン酸ナトリウム9.53g、ポリアクリル酸ナトリウム[分子量:約10万]57.9g、ポリ(p−ビニルベンゼンスルフォン酸ナトリウム)[分子量:約40万]22.9g、N−プロピル−N−ポリオキシエチレン−パーフルオロオクタンスルフォン酸アミドブチルスルフォン酸ナトリウム0.37g、ヘキサデシルオキシ−ノニル(エチレンオキシ)−エタノール8.97g、1N苛性ソーダ28.1g、M,M−エチレン−ビス(ビニルスルフォニルアセトアミド)18.0g、及び1,3−(ビニルスルフォニルアセトアミド)プロパン6.0gを、水を加えて全量が26.59リットルとなるように混合し、バックコート層用塗布液Bを調製した。
【0131】
<感熱記録材料の作製>
1)バックコート層の形成
JIS−Z8701に記載の方法により規定された色度座標で、X=0.2850、Y=0.2995に青色染色された透明のポリエチレンテレフタレート(PET)支持体[厚み175μm]を用意し、このPET支持体に近い側から順に、上記のバックコート層用塗布液Aとバックコート層用塗布液Bとを、各々の塗布量が51.4mL/m2、14.7mL/m2となるようにスライドビード法により同時重層塗布し、乾燥させた。
【0132】
前記塗布及び乾燥の条件は、以下の通りである。すなわち、塗布スピードを160m/分とし、コーティングダイ先端と支持体との間隔を0.10〜0.30mmとし、減圧室の圧力を大気圧に対して200〜900Pa低い設定とした。なお、PET支持体は、塗布前にイオン風にて除電した。引き続いて設けられたチリングゾーンにおいて、乾球温度10〜20℃の風で塗布液を冷却した後、無接触で搬送し、つるまき式無接触型乾燥装置を用いて乾球温度23〜45℃、湿球温度15〜21℃の乾燥風で乾燥させた。
【0133】
2)感熱記録層の形成
バックコート層が塗設されたPET支持体のバックコート層塗設側と逆側(バックコート層が塗設されていない側)に、PET支持体側から順に、上記より得た感熱記録層用塗布液A、感熱記録層用塗布液B、中間層用塗布液、保護層用塗布液を、各々塗布量が41.3ml/m2、22.5ml/m2、24.7ml/m2、27.5ml/m2となるようにスライドビード法により同時重層塗布して乾燥させ、PET支持体上に該PET支持体側から第1感熱記録層/第2感熱記録層/中間層/保護層の積層構造に構成された本発明の感熱記録材料(1)を作製した。
【0134】
上記スライドビード法による同時重層塗布において、各層の塗布液は30℃に調整し、 更に送液配管、塗布ヘッドもジャケットに一定温度に保温された水を通すことでそれぞれ30℃に調整した。また、乾燥条件は以下の通りとした。すなわち、塗布スピードを160m/分とし、コーティングダイ先端と支持体との間隔を0.10〜0.30mmとし、減圧室の圧力を大気圧に対して200〜1000Pa低い設定とした。なお、PET支持体は、塗布前にイオン風にて除電した。また、初期乾燥ゾーンにおいて、温度45℃〜55℃、露点0〜5℃の風にて乾燥させた後、無接触で搬送し、つるまき式無接触型乾燥装置を用いて、乾球温度30〜45℃、湿球温度17〜23℃の乾燥風で乾燥し、乾燥後さらに25℃、湿度40〜60%に調湿した。
【0135】
(実施例2)
実施例1の<中間層用塗布液の調製>において、チカダイ鱗をマグロ鱗に変えた以外は実施例1と同様にして、発明の感熱記録材料(2)を作製した。
【0136】
(実施例3)
実施例1の感熱記録層の形成において、各層の塗布液の温度を35℃に変更し、更に送液配管、塗布ヘッドの温度を35℃に変更した以外は実施例1と同様にして、発明の感熱記録材料(3)を作製した。
【0137】
(実施例4)
実施例1の感熱記録層の形成において、送液配管、塗布液の温度を35℃に変更した以外は実施例1と同様にして、発明の感熱記録材料(4)を作製した。
【0138】
(比較例1)
実施例1の<中間層用塗布液の調製>において、チカダイ鱗を牛骨に変えた以外は実施例1と同様にして、比較の感熱記録材料(5)を作製した。以外は同様に作製した。
【0139】
(比較例2)
実施例1の<中間層用塗布液の調製>において、チカダイ鱗を豚皮に変え、石灰処理を酸処理に変更した以外は実施例1と同様にして、比較の感熱記録材料(6)を作製した。
【0140】
(比較例3)
実施例1の<中間層用塗布液の調製>において、チカダイ鱗をタラ鱗に変えた以外は実施例1と同様にして、比較の感熱記録材料(7)を作製した。
【0141】
(比較例4)
比較例1のスライドビード法による同時重層塗布において、各層の塗布液、送液配管、塗布ヘッドの温度を40℃に変更したこと以外は比較例1と同様にして、比較の感熱記録材料(8)を作製した。
【0142】
(評価)
上記より得た本発明の感熱記録材料(1)〜(4)、並びに比較の感熱記録材料(5)〜(8)について、下記の測定、評価を行なった。測定評価の結果を下記表1に示す。
【0143】
<Hyp残基数の測定>
中間層用塗布液の調製に用いたゼラチンのHyp残基数を、B.A.Bidlimgmeyer,S.A.Cohen and T.L.Tarvin,J.Chromat.,336,93(1984)を参考に、プレカラムPhenylisothiocyanate(PITC)誘導法により測定した。
【0144】
<中間層用塗布液の粘度測定>
感熱記録材料を作製するために調製した中間層用塗布液の30℃で6時間保温したときの粘度を、B型粘度計(商品名:B型粘度計BL式、東京計器製、60rpm)を用いて測定した。尚、高速同時重層塗布の連続製造適性を有するには、中間層用塗布液の30℃で6時間保温したときの粘度が1000mPa・s以下であることが必要である。
【0145】
<面状評価>
サーマルヘッド(商品名:KGT260−12MPH8、京セラ(株)製)を用いて、ヘッド圧を10kg/cm2にして、光学透過濃度が1.2になるようにエネルギーを調整して、B4サイズの均一エネルギーを印加したサンプルを作製しシャーカステン上でムラ等について下記基準で目視評価した。
○:読影上問題なし。
△:若干のムラあるが読影上問題なし。
×:強いムラおよび異物の発生により読影上問題あり。
−:サンプル作製不能。
【0146】
<液カブリ>
得られた感熱記録材料の未印画部の光学透過濃度を、透過濃度計(マクベスTD904:マクベス社製)を用いてビジュアルフィルターモードにて測定することにより、液カブリを評価した。未印画部の光学透過濃度が0.25以下である場合を良好とした。未印画部の光学透過濃度が0.25を超えると、読影上問題となる。
【0147】
【表1】

【0148】
表1より、実施例1〜4で得られた感熱記録材料は、良好な面状を有し、液カブリのない高感度感熱記録材料であることがわかる。これは30℃以上の温度での送液において顕著な増粘挙動を示さないためと考えられる。
一方、比較例1及び2で得られた感熱記録材料は、面状に著しい影響もしくは塗布不能という結果となったことがわかる。これは送液時に中間層用塗布液のゼラチンが増粘・ゲル化したためと考えられる。また、比較例1で得られた感熱記録材料では塗布ヘッドよりゼラチンのゲル化起因の異物が多数観測され、比較例2で得られた感熱記録材料では塗布ヘッド内でゼラチンがセットし、送液不能となり塗布物を得ることができなかった。
【0149】
また、比較例3で得られた感熱記録材料は、読影上問題が発生するレベルであることがわかる。これは中間層用塗布液のゼラチンのHyp残基数が少なく、増粘挙動は示さないが、乾燥風等の影響を受けたためと考えられる。
更に、比較例4で得られた感熱記録材料は、液カブリが発生した。これは送液温度を40)に変更したことにより、液カブリが発生したためと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、感熱記録層を有する感熱記録材料であって、
全アミノ酸1000残基当たりのヒドロキシプロリン残基数が60以上85以下であるゼラチンを、支持体上の感熱記録層を有する面に含有することを特徴とする感熱記録材料。
【請求項2】
支持体上に中間層を更に有し、該中間層が前記ゼラチンを含有することを特徴とする請求項1に記載の感熱記録材料。
【請求項3】
前記ゼラチンを、前記支持体上の感熱記録層を有する面に塗設されている全構成物の1質量%以上40質量%以下の比率で含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の感熱記録材料。
【請求項4】
少なくとも、支持体上に、全アミノ酸1000残基当たりのヒドロキシプロリン残基数が60以上85以下であるゼラチンを含有する塗布液を塗布して層を形成する工程を有することを特徴とする感熱記録材料の製造方法。
【請求項5】
前記層を形成する工程が、前記ゼラチンを含有する塗布液を含む複数の塗布液を押出しダイ方式により同時重層塗布して、複数の層を形成する工程であることを特徴とする請求項4に記載の感熱記録材料の製造方法。
【請求項6】
前記押出しダイ方式による同時重層塗布が、押出しダイを20℃以上35℃以下の温度に保温し、かつ、前記ゼラチンを含有する塗布液を、前記押出しダイとの温度差が10℃以下となる温度で保温した状態で行うことを特徴とする請求項4又は5に記載の感熱記録材料の製造方法。

【公開番号】特開2007−38496(P2007−38496A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224468(P2005−224468)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】