説明

慢性便秘を治療するためのメトホルミン方法と製剤

本発明は、慢性便秘を治療するための方法及び製剤に関する。該方法及び製剤は、非限定的に、慢性便秘を治療するためにメトホルミンの有効濃度をデリバリーするための方法及び製剤を包含し、さらに、メトホルミンの放出を制御するための少なくとも1種類の製薬的に受容される成分を含み、これらの方法及び製剤では、投与後に、メトホルミンの放出は、メトホルミンの全身吸収を達成する胃腸部位から遠位で行なわれる。本発明はさらに、他の疾患及び状態、例えば過敏性腸症候群に付随する、一つの症状としての便秘の治療にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願No.60/662,920(Mar.18, 2005出願)の優先権を主張する。
本発明は、慢性便秘を治療するための方法と製剤に関する。該方法と製剤は、非限定的に、治療のためのメトホルミンの有効濃度をデリバリーする方法と製剤を包含する。該方法と製剤はさらに、メトホルミンの放出を制御するための少なくとも1種類の製薬的に受容される成分を含み、投与後に、メトホルミンの放出は、胃腸管における少なくとも一つのメトホルミン取り込み部位から遠位である。本発明はさらに、例えば過敏性腸症候群(IBS)のような、他の疾患及び状態に付随する症状としての便秘の治療にも関する。
【0002】
便秘は、人口の30%までに生じる。この症状は、合衆国においては通院の1.2%の原因であり、プライマリ・ケア医師によって最も頻繁に治療される。便秘は女性に起こることが多く、加齢と共に増加する。D.A. Drossman, The Functional Gastrointestinal Disorders and the Rome III Process, 45 Gut II1-II5 (Suppl. II 1999)。非白人や社会経済的地位が低い人々が慢性便秘を訴える傾向が大きい。重度な便秘を有する小児のほぼ1/3が思春期を越えても症状に苦しみ続ける。便秘は、頑固で、困難な、稀である又は不完全に思われる便通として存在する、一群の機能障害を含む。便秘は一般に3方法:(1)下降する頻度順序で、しぶり腹(strain)、秘結便通若しくは兎糞、無意味な便意(“排便したいが出来ない”)、たまにしかない便通、不完全な便通の症状;(2)第95百分位数外の排便パラメーター(parameters of defecation outside the 95th percentile)、例えば、週3回未満の排便、35g未満/日の一日糞便量若しくは時間の25%を超えるいきみ(straining greater than 25% of the time);又は(3)例えば放射線不透過性マーカーによって測定した、長時間の全腸移送若しくは結腸移送のような生理的指標;によって定義されている。D.A. Drossman, The Functional Gastrointestinal Disorders and the Rome III Process, 45 Gut II1-II5 (Suppl. II 1999)。
【0003】
Brooks Cash & William D. Chey, Update on the Management of Chronic Constipation: What Differentiates Chronic Constipation From IBS With Constipation, Medscape, athttp://www.medscape.com/viewprogram/3375_pnt (August 26, 2004) に記載されているように、多様な状態及び医薬品を慢性便秘に関連付けることができ、例えば、原発性又は特発性便秘は大まかに、緩慢移送便秘(即ち、結腸活動力欠如)と協調運動障害排便(即ち、アニスムス、出口閉塞、骨盤底機能不全、骨盤底協調運動障害、排便機能障害)に分けることができる。緩慢移送便秘を有する患者における生理的異常は、異常な食後結腸運動機能、自律神経性機能障害及び結腸クロム親和性細胞数とカハール間質細胞数の減少を包含しうる。協調運動障害排便は、腹部筋肉組織、肛門直腸及び骨盤底筋肉組織が協調作用することができないことの結果として起こりうる。一つの例は、恥骨直腸筋の協調運動障害であり、この場合には、恥骨直腸筋スリング(sling)が、いきみによって、弛緩することができない又は逆説的には収縮する。このことは、糞便の正常な通過に先行して生ずるべきである肛門直腸角の直線化を妨害する。例えば、大きな直腸瘤、直腸重積及び閉塞性S状結腸重積のような構造的異常も、便秘の原因になりうる。
【0004】
さらに、慢性便秘患者と過敏性腸症候群−便秘(IBS−C)患者又は便秘−顕著なIBS患者との間にかなりの重複が存在しうる。IBSは、腹部不快感若しくは腹痛、鼓腸及び排便障害によって特徴付けることができる。この排便障害は、便秘(IBS−C)、下痢(IBS−D)又は混合/交互腸習慣(IBS−M)の形態をとる可能性があり、これらの三つの亜類型が大体同等に分配される。
【0005】
慢性便秘は、薬物療法、内分泌障害及び神経障害の結果でもありうる。例えば、アヘン剤、向精神薬、抗痙攣薬、抗コリン作用薬、ドーパミン作動薬、カルシウムチャンネル遮断薬、胆汁酸結合剤、非ステロイド系抗炎症薬、及びサプルメント(即ち、カルシウム及び鉄)のような医薬品は、慢性便秘の発現を先導しうる。例えば糖尿病、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症及び褐色細胞腫のような内分泌障害も、同様に、慢性便秘の発現を誘発しうる。さらに、慢性便秘は、全身性(例えば、糖尿病性神経障害、パーキンソン病及びシャイ−ドレーガー症候群)及び外傷性(例えば、脊髄損傷)の両方の神経障害によって起こりうる。したがって、本明細書で用いる“便秘”なる用語は、慢性便秘、機能性便秘、慢性機能性便秘、IBS−C、及び/又はその他(非慢性)の便秘状態として一般に同定される状態を包含する。
【0006】
慢性便秘の治療法
慢性便秘の医学的管理は、例えば食事及び運動における生活様式改変、増量剤(bulking agents)(例えば、オオバコ、ふすま、メチルセルロース及びポリカルボフィルカルシウム)
の使用、並びに浸透剤(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ラクツロース、ソルビトール、マグネシウム及びリン酸塩)、刺激剤(例えば、センナに基づく及びビサコジルに基づくもの)、並びに5−ヒドロキシトリプタミン4(セロトニン、5−HT)受容体作用薬(例えば、テガセロッド)を含めた緩下剤の投与を含む。
【0007】
増量剤
食物繊維補充は、胃腸管移送を改良して、大きくて軟らかい糞便を生じることによって、便秘している対象に有利であると考えられる。食物繊維補充は、例えば、繊維富化食物の摂取を高めることによって又は商業的に入手可能な繊維サプルメントを与えることによって達成することができる。慢性便秘患者は、糞便の量及び移送を同様に増強させるために、健康な被験者よりも多量の繊維を必要とする可能性がある。重度な結腸不活発性便秘若しくは立証された協調運動障害便秘を有する患者は、繊維によって改善する傾向が少ない可能性がある。
【0008】
増量剤は、オオバコ、小麦ふすま、ポリカルボフィルカルシウム及びメチルセルロースを包含しうる。慢性便秘患者における、3種類の、オオバコのプラセボ対照付き試験は、10g/日から24g/日までの範囲内の用量での排便回数及び粘稠度の改善を実証した。L.J. Cheskin et al., Mechanisms of Constipation in Older Persons and Effects of Fiber Compared with Placebo, 43 J. American Geriatric Society 666-69 (1995); G.C. Fenn et al., A General Practice Study of the Efficacy of Regulanin FunctionalConstipation, 40 British J. Clinical Practice 192-97 (1986); 及びW. Ashraf et al., Effects of Psyllium Therapy on Stool Characteristics, Colon Transit and Anorectoal Function in Chronic Idiopathic Constipation, 9 Aliment Pharmacology & Therapeutics 639-47 (1995)。
【0009】
便秘の治療薬としてのふすまの人気にも拘わらず、無作為化試験は、慢性便秘患者における排便回数又は粘稠度の改善を示していない。慢性便秘患者においてポリカルボフィルカルシウム及びメチルセルロースを試験したプラセボ対照付き試験は存在しない。これらの作用剤をオオバコに対して比較した小規模試験では、データは、排便回数又は粘稠度の変化におけるこれらの作用剤間の差異を実証することができない。R. Mamtani et al., A Calcium Salt of an Insoluble Synthetic Bulking Laxative in Elderlty Bedridden Nursing Home Residents, 8 J. American College Nutrition 554-56 (1989);及び J.W. Hamilton et al., Clinical Evaluation of Methylcellulose as a Bulk Laxative, 33 Dig. Dis. Sci. 993-98 (1988)。
【0010】
便利さ、味の良さ及び用量依存性副作用(例えば、膨張、鼓腸及び膨満)に関係する問題は、繊維サプルメントの使用に関する使用説明書によって、患者コンプライアンスを限定する。オオバコを摂取する患者では、アナフィラキシーの稀な症例が報告されている。
【0011】
便柔軟剤と緩下剤
便柔軟剤は、例えば、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム及びスルホコハク酸ジオクチルカルシウムを包含しうる。これらの作用剤は便秘患者のために一般に望ましいが、これらの効力を支持する証拠は殆どない。慢性便秘患者における便柔軟剤を評価した4種類の無作為化対照付き試験のうち、3週間期間の一つのみが、プラセボと比較して排便回数の改良を見出している。A.M. Fain et al., Treatment of Constipation in Geriatric and Chronically Ill Patients: A Comparison, 71 South Med. J. 677-80 (1978)。他の試験では、排便回数の改良において、オオバコがスルホコハク酸ジオクチルナトリウムよりも優れていることが発見された。 J.W. McRorie et al.., Psyllium is Superior to Docusate Sodium for Treatment of Chronic Constipation, 12 Aliment Pharmacology & Therapeutic 491-97 (1998)。
【0012】
緩下剤は大まかに二つのカテゴリー:浸透性緩下剤と刺激性緩下剤に分けることができる。経口浸透性緩下剤の例は、吸収され難い糖と、例えばラクツロース及びソルビトールのような、糖誘導体を包含する。これらの作用剤は、糞便の量と水分含量を高めることができ、その際に、蠕動を刺激することができる。二つの試験が、ラクツロースが排便回数と糞便粘稠度の改良においてプラセボよりも効果的でありうると実証している。J.F. Sannders, Lactulose Syrup Assessed in a Double-Blind Study of Elderly Constipated Patients, 26 J. American Geriatric Society 236-39 (1978); A. Wesselius-De Casparis et al., Treatment of Chronic Constipation with Lactulose Syrup: Results of a Double-Blind Study, 9 Gut 84-86 (1968)。残念ながら、浸透性緩下剤は時には、腹部痙攣及び鼓腸の発現を付随する可能性がある。
【0013】
浸透性緩下剤の他の例は、腸への水の正味流入を誘発することによって下剤効果を生じるリン酸マグネシウム又はリン酸ナトリウムを含む、不完全に吸収される塩を包含する。意外なことには、これらの作用剤の効力を慢性便秘患者において評価する無作為化プラセボ対照付き試験は存在していない。例えば腎臓病を有する人々又は中年すぎの人々におけるように、これらの作用剤によって高マグネシウム血症及び高リン酸塩血症が生じる可能性がある。
【0014】
浸透性緩下剤のさらに他の例はポリエチレングリコール(PEG)であり、これは、偶発的便秘を有する患者の治療のために最近入手可能になったものである。便秘患者における幾つかの無作為化プラセボ対照付き試験は、17g/日から35g/日までの範囲内の用量でのPEGによる排便回数及び糞便粘稠度の有意な改良を実証している。R.I. Andorsky and F. Goldner, Colonic Lavage Solution (Polyethylene Glycol Electrolyte Lavage Solution) as a Treatment for Chronic Constipation:A Double-Blind, Placebo-Controlled Study, 85 American J. Gastroenterol. 261-65 (1990); M.V. Cleveland et al., New Polyethylene Glycol Laxative for Treatment of Constipation in Adults: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study, 94 South Med. J. 478-81 (2001); E. Corazziari et al., Small Volume Isomotic Polyethylene Glycol Electrolyte Balanced Solution (PMF-100) in Treatment of Chronic Nonorganic Constipation, 41 Dig. Dis. Sci. 1636-42 (1996); and E. Corazziari et al., Long Term Efficacy, Safety, and Tolerability of Low Daily Doses of Isosmotic Polyethylene Glycol Electrolyte Balanced Solution (PMF-100) in the Treatment of Functional Chronic Constipation, 46 Gut 522-26 (2000)。しかし、PEGは、慢性便秘の治療への使用に関して現在は認可されていない。
【0015】
第2カテゴリー、刺激性緩下剤における緩下剤は通常、ビサコディル、ピコ硫酸ナトリウム又はアントラキノン誘導体(例えば、カスカラサグラダ及びセンナ)を含む。これらの作用剤は、腸の分泌及び運動性に対する効果を有する。慢性便秘患者における刺激性緩下剤の効力を評価する無作為化プラセボ対照付き試験は存在しない。一つの比較試験は、“刺激性 (irritant)” 緩下剤が便秘患者におけるラクツロースほど効果的でないことを示唆している。P. Connolly et al., Comparison of “Duphalac” and “Irritant” Laxatives During and After Treatment of Chronic Constipation: A Preliminary Study, 2 Current Medical Research Opinions 620-25 (1974)。アントラキノン緩下剤は、結腸メラノーシス、結腸上皮細胞アポトーシス及びマクロファージ中へのリポフスチン沈着の結果として起こる可逆過程を誘発することができる。
【0016】
付加的治療
テガセロッド、3−(5−メトキシ−1H−インドル−3−イルメチレン)−N−ペンチルカルバジミドアミド水素マレイン酸塩は、蠕動逆流並びに塩化物分泌を刺激し、内臓感覚に影響を及ぼしうる5−HT(セロトニン)作用薬である。幾つかの無作為化プラセボ対照付き試験は、6mg1日2回の投与量でのテガセロッドが、IBS−C女性患者における全体的症状及び個々の症状を効果的に改良することを実証している。W.D. Chevy, Tegraserod and Other Sterotonergic Agents: What is the Evidence?, 3 Review Gastroenterol Disorders S35-S40 (2003); S.A. Muller-Lissner et al., Tegaserod, a 5-HT4 Receptor Partial Agonist, Relieves Symptoms of Irritable Bowel Syndrome in Patients with Abdominal Pain, Bloating and Constipation, 15 Aliment Pharmacology & Therapeutics 1655-66 (2001)。しかし、同様な利益が、男性IBS患者においても実証されている。
【0017】
2004年8月に、米国食品医薬品局は、テガセロッドの追加適応症を認可し、65歳未満の患者における慢性特発性便秘の治療への使用を許可した。しかし、テガセロッドは、虚血性結腸炎に関連した特定の予防措置を含めて、慎重に用いなければならない。
【0018】
上記を考慮すると、現在の療法に付随する多くの副作用及び制限の少なくとも一つを回避する、慢性便秘の効果的で、耐容性の良好な治療を提供することができる製薬的方法及び製剤の必要性が当該技術分野には依然として存在する。本発明の開示は、先行技術における問題の少なくとも一つを解決して、慢性便秘の治療のための該方法及び製剤を提供する。
【0019】
本発明は、メトホルミン塩酸塩、即ち、ジメチルビグアニドに関する。メトホルミンは、非インシュリン依存性糖尿病(NIDDM)の管理における経口高血糖防止剤として慣習的に用いられるビグアニドである。C.J. Dunn and D.H. Peters, Metformin: A Review of Its Pharmacological Properties and Therapeutic Use in Non-Insulin-Dependent Diabetes Mellitus, 49 Drugs 721-49 (1998)。本明細書で用いる限り、“メトホルミン”なる用語は、メトホルミンとその任意の製薬的に受容される塩、例えば、メトホルミン塩酸塩を意味する。
【0020】
メトホルミンは、主として、該ホルモンの分泌に影響を及ぼすことなく、インシュリンに対する肝臓及び末梢組織感受性を改良することによって、血糖レベルを低下させることができる。メトホルミンは、現在認可されている、ビグアニド・クラスの唯一のメンバーである。該ビグアニド・クラスの他のメンバー、例えばフェンホルミン及びブホルミンは、一部は、乳酸アシドーシスの許容し難く高い発生率のために、臨床的使用にもはや利用することはできない。
【0021】
乳酸アシドーシスは、ミトコンドリアの損傷によって惹起される乳酸塩の蓄積である。他のビグアニドと同様に、メトホルミンも、高レベルのメトホルミンを有する対象及び/又は心臓、肺、肝臓及び/若しくは腎臓機能に欠陥のある対象において生ずる傾向が大きい可能性がある副作用を有すると考えられる。
【0022】
メトホルミンはNIDDMの治療に単独療法として又は、例えばある一定のスルホニル尿素(例えば、グリピジド及びグリブリド)及びチアゾリジンジオン(例えば、ロシグリタゾン)のような、糖尿病の他の治療薬との併用療法として用いることができる。
【0023】
経口投与後に、メトホルミンは絶対バイオアベイラビリティ、即ち、非静脈内投与後の全身循環における、50%〜60%の範囲内のメトホルミン利用率を有することができる。腎クリアランスは、クレアチニンクリアランスの約3.5倍大きく、このことは、尿細管分泌がメトホルミン排泄の主要な経路であることを実証する。2003 Physicians’ Desk Reference 1079。血漿排泄半減値は、4.0時間〜8.7時間の範囲であるが、腎損傷患者では延長する可能性があり、クレアチニンクリアランスと相関関係がある、id。
【0024】
メトホルミンの慣習的製剤の投与は、食事と共に又は食後に分割用量で0.5g/日〜1g/日の範囲内の投与量で開始することができる。投与量は、必要に応じて、例えば、2.5g/日(5x500mg錠剤)又は2.55g(3x850mg錠剤)の最大値まで徐々に増量することができるが、合衆国以外の国では3g/日までの1日量が用いられる、id。
【0025】
主として胃腸管(GI)由来の急性可逆的副作用(acute,reversible,adverse effects)が、患者の20%までに生じる。例えば、メトホルミンで治療された患者は、他の経口血糖降下剤によって治療された患者(6%)よりも顕著に高い下痢罹患率(20%)を有する。P. Bytzer et al., Oral Hypoglycaemic Drugs and Gastrointestinal Symptoms in Diabetes Mellitus, 15 Aliment Pharmacology & Therapeutics 137-142 (2001); さらに P. Dandonna et al., Diarrhea and Metformin in a Diabetic Clinic, 6 Diabetes Care 472-474 (1983)も参照のこと。GI副作用を最小にする試みには、メトホルミンを食物と共に投与すること及び投与量を減ずることが包含される。C.J. Dunn and D.H. Peters, Metformin: A review of Its Pharmacological Properties and Therapeutic Use in Non-Insulin-Dependent Diabetes Mellitus, 49 Drugs 721-749 (1998)。
【0026】
しかし、メトホルミンがこれらのGI作用を惹起する機構は完全には理解されていない。研究者らによると、メトホルミンはGI運動性に作用するか又は吸収を弱める可能性がある。P. Dandonna et al., Diarrhea and Metformin in a Diabetic Clinic, 6 Diabetes Care 472-474 (1983)。メトホルミンは化学的には5−HT受容体作用薬に似ているので、研究者らは、該薬物のGI副作用が5−HT受容体の活性化による可能性があることを示唆している。しかし、最近の研究に基づくと、これは事実と異なる。Irene S. Hoffmann et al., Ondansetron and Metformin-Induced Gastrointestinal Side Effects, 10 American J Ther. 447-451 (2003)。
【0027】
メトホルミンの延長放出形(extended release forms)が、1日1回投与のために開発されている。例えば、GLUCOPHAGE(登録商標)XR(500mg錠剤と750mg錠剤)と一般形(generic forms)が、オレンジ・ブックに示されるように、合衆国で及び世界中で販売されている。米国特許No.6,475,521及びNo.6,660,300は、抗糖尿病性メトホルミンHCl塩、即ち、GLUCOPHAGE(登録商標)XRの二段階放出に関する。
【0028】
延長放出形に関連した一つの利点は、例えば下痢のような、GI副作用の発生率の減少である。例えば、認可ラベルでの即時放出メトホルミン(GLUCOPHAGE(登録商標))の臨床試験における下痢の発生率は、プラセボの11.7%に対して53.2%であり、中断6%であった。2003 Physicians’ Desk Reference 1079-85。これとは対照的に、延長放出ラベルの臨床試験での該発生率は、プラセボの2.6%に対して9.6%であった。id参照。遡及的患者チャート検討報告書では、即時放出メトホルミンからメトホルミンXRに切り替えた患者は、該延長放出メトホルミンの同等投与量に対して僅かなGI副作用を経験したに過ぎなかった。 Lawrence Blonde et al., Gastrointestinal Tolerability of Extended-Release Metformin Tablets Compared to Immediate-Release Metformin Tablets: Results of a Retrospective Cohort Study, 20 Current Medical Research and Opinions 565-572 (2004)。
【0029】
メトホルミンは生理的pHにおいてプロトン化され、そしてイオン化されると、腸上皮によって吸着され易い。その上、メトホルミンの経口バイオアベイラビリティは40%〜60%の範囲であり、投与量の増加につれて低下する、即ち、血漿薬物濃度と効果の大きさとの間に直接の関係は存在しない。このことは、飽和可能な吸収過程及び/又は、透過性/移送時間によって制限される吸収を示唆する。これらの特有の薬物動態学的及び薬力学的性質にも拘わらず、メトホルミンの延長放出形のバイオアベイラビリティは、即時放出形に比べて有意に低くはなかった。David Stepensky et al., Preclinical Evaluation of Pharmacokinetic-Pharmacodynamic Rationale for Oral CR Metformin Formulation, 71 J Controlled Release 107-115 (2001)。このように、GLUCOPHAGE(登録商標)XRは、7時間の遅延最大血漿濃度(Tmax)と低い平均最大血漿濃度(Cmax)を示すにも拘わらず、暴露の程度、即ち、血漿濃度−時間曲線下面積(AUC)において同等であった。2003 Physicians’ Desk Reference 1080-81。他の研究では、メトホルミンの3種類の異なる延長放出形をGLUCOPHAGE(登録商標)に比較したところ、これらの延長放出形はAUCのごく小さい低下を示した(延長放出形の6.24、7.07及び6.43に対してGLUCOPHAGE(登録商標)7.91)。 P.J. Pentikainen, Bioavailability of Metformin, Comparison of Solution, Rapidly Dissolving Tablet, and Three Sustained Release Products, 24 Int’l J Clinical Pharmacology Ther. Toxicology 213-220 (1986)。
【0030】
米国特許出願公開No.2004/0161461は、NMIDDの治療に用いられた、制御放出メトホルミン製剤の他の例を記載している。この製剤は、コア中の高い薬物負荷と、不溶性であるが浸透性であり、2時間内に60%までの薬物を放出する典型的な制御放出プロファイルをもたらす律速性コーティングとを有する延長放出メトホルミン錠剤を対象としている。さらに、例えば、米国特許No.6,495,162は、膜中の少なくとも一つの通路と吸収エンハンサーを有する半透膜コーティングを含む浸透制御放出メトホルミン錠剤を記載している。この錠剤製剤は、食物と共に摂取したときに全身暴露(即ち、バイオアベイラビリティ)を減じずに、食事と共に投与されるように設計されていた。
【0031】
さらに他のメトホルミン製剤が米国特許出願公開No.2004/0096499に記載されており、この出願公開は、メトホルミンと、例えばアカルボースを含めた、種々な低用量抗糖尿病薬との一定の複合投与形を述べている、そして米国特許No.6,451,808は、メトホルミンと、例えば嘔吐を含めたGI副作用を抑制するための5−HT拮抗薬との複合製剤を述べている。
【0032】
メトホルミンは、全身暴露を延長させ及び/又は可能なGI副作用を減じる、種々な他の方法及び製剤にも提案されている、例えば、米国特許No.6,790,459は、即時放出形と同等なバイオアベイラビリティ(AUC)を生じる、メトホルミンの1日1回制御放出形によって糖尿病を治療する方法を述べている;国際特許出願WO00/28989は、調節放出チアゾリジンジオン・インシュリン感作物質と他の抗糖尿病薬(メトホルミン)とを含む糖尿病治療用組成物を述べている;米国特許出願公開No.2004/00175424は、放出を延長させる、メトホルミンのマイクロカプセル投与形を述べているが、遅延放出投与形は考慮していない;米国特許出願公開No.2004/0022849は、連続的に作用する二つの制御放出機構に基づく、メトホルミンの経口投与形を述べている;そして米国特許No.6,022,562は、小腸に保持され、それによって該薬物の実質的な、延長された吸収と全身暴露を達成する小型のマイクロカプセルを含む投与形を述べている。全ての既知メトホルミン製剤は、長時間の全身暴露と延長された吸収を可能にする、即ち、これらはGI管に保持されて(胃保持型)、全身吸収を高める。
【0033】
胃保持型製剤は、当該技術分野で知られており、例えば、米国特許No.5,007,780、No.5,972,389及びNo.5,582,837は、胃保持を助成する疎水性水膨潤性ポリマー中に分散した複数の固体粒子を述べている。米国特許No.5,651,985とNo.6,306,439は、ラクタム基を含むポリマーと、カルボキシル基を含むポリマーとの強度の混合によって胃保持型投与形を製造し、それによって該投与形に顕著な、予想外の膨潤性を与える方法を述べている。米国特許No.6,261,601は、マトリックスの膨張に寄与するガス発生成分を組み込む投与形を述べている。そして、米国特許No.6,685,962は、複合単位が長時間にわたって胃から排出されないように、膜に取り付けられている薬物マトリックス中に分解性ポリマーと非分解性ポリマーの両方を組み込む胃保持型投与形を述べている。
【0034】
米国特許No.6,723,340、No.6,682,759、No.6,635,280、No.6,488,962及び米国特許出願公開No.2003/0104062のような、さらなる参考文献は、例えば胃及び上部小腸における放出を延長させる、種々な胃保持型投与形中へのメトホルミンの組み込みを開示している。
【0035】
本発明の開示によると、慢性便秘及び/又は、例えばIBSのような、他の疾患及び/若しくは状態に関連した症状としての便秘を治療するための新規な方法と製剤を提供する。本発明の製剤は、糖尿病の治療に利用される吸収部位の外側にメトホルミンを放出する、例えば、胃での吸収を回避する、そしてさらには、例えば、上部小腸での吸収を回避する。本発明のこれらの及び他の実施態様は、慢性便秘の治療を必要とする対象の慢性便秘を治療する方法及び製剤であって、メトホルミン又はその製薬的に受容される塩の有効量と、メトホルミンの放出を制御するための少なくとも1種類の製薬的に受容される成分を含む投与製剤を対象に投与することを含み、投与後に、該投与製剤がメトホルミンを全身吸収のための胃腸部位から遠位に放出する方法及び製剤を提供する。
【0036】
慢性便秘は、非限定的に、生活様式習慣、例えば低い食物繊維と運動不足、末梢及び全身神経系の疾患、解剖学的胃腸閉塞性病変、内分泌障害、代謝障害、筋ジストロフィー、ある種の薬物の使用を包含する状態によって惹起されうる、及び/又は上記状態のいずれかの症状でありうる。慢性便秘は、メトホルミン又はその製薬的に受容される塩の調節放出製剤の投与によって治療することができる。
【0037】
少なくとも一つの実施態様では、本発明はさらに、慢性便秘の治療及び/又は、便秘の治療を必要とする対象における、他の疾患及び/又は状態、例えばIBSに関連した症状としての便秘の治療の方法にも関する。これらの方法は、メトホルミン又はその製薬的に受容される塩の有効量と、メトホルミンの放出を制御するための少なくとも一つの製薬的に受容される成分を含む投与製剤であって、投与後に、例えば胃でのメトホルミンの放出を回避して、全身吸収のための胃腸部位から遠位にメトホルミンを放出する投与製剤を対象に投与することを含む。
【0038】
本発明の少なくとも一つの実施態様では、制御放出のための少なくとも一つの製薬的に受容される成分を含むことができる製薬的投与製剤中にメトホルミンが存在する。制御放出は、例えば、胃を回避して、該薬物の全身吸収のための胃腸管(GI)部位から遠位でのメトホルミン放出を可能にする。
【0039】
全ての実施態様において、該メトホルミンは実質的に純粋なメトホルミン又はその製薬的に受容される塩を含むことができる。メトホルミン又はその製薬的に受容される塩は、少なくとも1種類の付加的な製薬的に活性な化合物と組み合わせて投与することができる。幾つかの実施態様では、該少なくとも1種類の付加的な製薬的に活性な化合物は、便秘を緩和することができる。
【0040】
上記の一般的記載と下記の詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的であり、特許請求する本発明を制限するものではないことを、理解すべきである。
本発明は、メトホルミンを含む製剤と、それらの使用方法に関する。何らかの特定の理論に縛られることを望む訳ではないが、メトホルミン又はその製薬的に受容される塩の治療有効量の存在が、慢性便秘及び/又は他の疾患及び/若しくは状態に関連した便秘の症状の発生率を低下させると考えられる。メトホルミンを調節放出投与形で投与する場合には、メトホルミンが慢性便秘の発生率を低下させると考えられる。本発明の開示の方法及び製剤によると、慢性便秘に苦しむ及び/又は疾患及び/若しくは状態の症状として便秘を示す対象は、メトホルミンの放出が糖尿病の治療に利用される吸収部位の外側で生じる、例えば、胃を回避し、さらに上部小腸を回避するように、メトホルミンの調節放出及び/又は遅延放出製剤の投与によって便秘の発生率を低下させることができることが、判明している。
【0041】
本発明をさらに説明するために、下記用語と定義を提供する。
本明細書で用いる限り、“調節放出”製剤若しくは投与形なるフレーズは、即時放出以外の製剤からの薬物の望ましい放出を達成する製薬的製剤を包含する。例えば、調節放出製剤は、対象において活性化合物の治療有効量の放出を制限する及び/又は放出部位を制御することができる。さらに、調節放出製剤は、活性化合物の放出を特定の期間遅延させるように設計することもできる。このような化合物は、本明細書では“遅延放出”化合物と呼ばれる。調節放出製剤は、遅延製剤の性質を示すことができる。
【0042】
本明細書で用いる限り、“持続放出”製剤若しくは投与形なるフレーズは、活性剤、即ち薬物をある時間にわたって徐々に放出して、効果の持続を可能にすることができる製剤を意味する。
【0043】
本明細書で用いる限り、“メトホルミン”なる用語は、メトホルミンとその任意の製薬的に受容される塩を包含する。
本明細書で用いる限り、“製薬的に受容される成分”なるフレーズは、製薬的製剤中の他の成分、例えば有効成分と相容性であり、受容される量で投与されたときに対象にとって有害でない構成要素を包含する。挙げることができる製薬的に受容される成分は、非限定的に、例えば、キャリヤー、充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、溶解抑制剤(solution-retarding agent)、吸収促進剤、湿潤剤、吸収剤、滑沢剤、安定剤、着色剤、緩衝剤、分散剤、保存剤、有機酸、水溶性及び水不溶性ポリマー、腸溶剤及び非腸溶剤(enteric and non-enteric agent)、並びにコーティングを包含する。
【0044】
本明細書で用いる限り、“製薬的に受容される塩”なるフレーズは、患者によって生理的に許容される塩を包含する。このような塩は、無機酸若しくは塩基から及び/又は有機酸若しくは塩基から製造することができる。これらの酸及び塩基の例は、当業者に周知である。
【0045】
本明細書で用いる限り、“治療有効量”なるフレーズは、単独及び/又は付加的な薬物と組み合わせて慢性便秘及び/又は便秘関連症状の予防、治療及び/又は管理に利益を与えるメトホルミン(若しくはその製薬的に受容される塩)の量を意味する。
【0046】
本発明はさらに、慢性便秘及び/又は、他の疾患及び/又は状態に付随する便秘関連症状の予防、治療及び/又は管理方法を包含する。幾つかの実施態様では、メトホルミン若しくはその製薬的に受容される塩の投与は、メトホルミンの慣習的製剤、即ち、糖尿病(非インシュリン依存性糖尿病)の治療用製剤の投与に付随した全身作用、例えば、少なくとも一つの副作用、例えば乳酸アシドーシスの危険性を低減する。便秘を治療するためにメトホルミンを投与する場合に、望ましくない副作用であると考えられる低血糖症を全身吸収が生じる可能性があることを、当業者は理解するであろう。
【0047】
ある一定の実施態様では、本発明のメトホルミン方法及び製剤は、調節放出形、例えば、放出部位を制御する製剤から選択される投与製剤を用いて投与することができる。これらの製剤は、メトホルミンが通常全身的に吸収される胃腸部位から遠位に、例えば、胃中での、即ち、糖尿病を治療するためにメトホルミンを投与する場合の主要な吸収部位でのメトホルミン放出を回避して、メトホルミンを放出する。例えば、幾つかの実施態様では、胃及び/又はGI管上部での放出を回避するように、調節放出投与形を設計する、即ち、該製剤は胃保持型及び/又は上部小腸保持型ではない。種々な実施態様では、本発明は、胃及び上部小腸によって画定される領域においてメトホルミン若しくはその製薬的に受容される塩を放出しない方法及び製剤を提供する。
【0048】
幾つかの実施態様では、メトホルミンの投与製剤は、このような治療を必要とする対象に投与することができる。ある一定の実施態様では、メトホルミン製剤を絶食状態の対象に投与することができる。
【0049】
本発明の投与製剤は、症状として便秘を示す状態又は疾患の治療及び/又は予防のために適する可能性がある。このような疾患及び/又は状態は、非限定的に、IBSと、典型的に慣用的な増量剤及び緩下剤によって治療及び/又は予防される疾患及び状態を包含する。
【0050】
本発明による投与製剤の投与経路には、全身薬物吸収の部位に遠位であるGI管内の部位に、薬物を放出するように設計された調節放出及び/又は遅延放出製剤を投与するために用いることができる、経口投与と任意の他の経路がある。
【0051】
経口投与のためには、メトホルミンを液体投与形に製剤化することができる。適当な製剤は、エマルジョン、ミクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシル剤を包含する。これらの製剤は、任意に、当該技術分野で通常用いられる希釈剤、例えば水又は溶媒、非限定的に、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、オイル、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル及びこれらの混合物を包含する可溶化剤及び乳化剤を包含する。さらに、液体製剤は、任意に、アジュバント、例えば湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味剤、フレーバー剤(flavoring agents)、着色剤、芳香剤及び保存剤を包含する。適当な懸濁化剤は、非限定的に、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにこれらの混合物を包含する。液体製剤はそのままデリバリーすることができるか、又は硬質若しくは軟質カプセル入りで供給されることができる。
【0052】
軟質ゼラチン・カプセル
本発明の製剤は、軟質ゼラチン・カプセル中に充填することができる液体として製造することができる。例えば、該液体は、メトホルミンを含有する、溶液、懸濁液、エマルジョン、ミクロエマルジョン、沈殿(precipitate)又は任意の他の好ましい液体媒質を包含することができる。該液体は、放出時のメトホルミンの溶解性を改良するように設計することができる、又は放出時の薬物を含むエマルジョン若しくは分散化相を形成するように設計することができる。このような手法の例は、当該技術分野で周知である。軟質ゼラチンは、薬物の放出を遅延させるための機能的コーティングで必要に応じて被覆することができる。
【0053】
本発明の組成物は、活性剤の放出を調節する他の投与形に製剤化することもできる。本発明によって用いることができる、適当な調節放出製剤の例は、非限定的に、マトリックス系、浸透圧ポンプ、及び膜制御投与形(membrane-controlled dosage forms)を包含する。これらの製剤は、メトホルミン又はその製薬的に受容される塩を含むことができる。適当な、製薬的に受容される塩は上記で考察してある。これらの種類の各投与形については、以下で簡単に説明する。このような投与形のより詳細な考察は、例えば、The Handbook of Pharmaceutical Controlled Release Technology, D. L. Wise (ed.), Marcel Dekker, Inc., New York (2000);及びさらに、Treatise on Controlled Drug Delivery: Fundamentals, Optimization, and Applications, A. Kydonieus (ed.), Marcel Dekker, Inc., New York, (1992)に見出すことができ、これらの各々の関連する内容は、このために本明細書に援用される。
【0054】
マトリックスに基づく投与形
幾つかの実施態様では、本発明の調節放出及び/又は遅延放出製剤は、マトリックスに基づく投与形として提供する。本発明によるマトリックス製剤は、親水性(例えば、水溶性)ポリマー及び/又は疎水性(例えば、水不溶性)ポリマーを含むことができる。本発明のマトリックス製剤は、腸溶性(例えば、pH依存性溶解性を示す)又は非腸溶性(例えば、pH非依存性溶解性を示す)であることができる機能的コーティング付きで製造することができる。
【0055】
本発明のマトリックス製剤は、例えば直接圧縮成形又は湿式造粒を用いて製造することができる。例えば、米国特許No.6,495,162は、薬物の初期バーストと緩慢な放出を生じる持続放出ポリマー物質を組み込むメトホルミン錠剤の新規な圧縮成形製造方法を述べている。次に、上述したような機能的コーティングを本発明によって塗布することができる。さらに、機能的コーティングを塗布する前に、マトリックス錠剤コア上にバリヤー若しくはシーラント・コートを塗布することができる。該バリヤー若しくはシーラント・コートは、有効成分を、該有効成分を相互作用する可能性がある機能的コーティングから分離する目的を果たすことができる、又は該バリヤー若しくはシーラント・コートは、水分を有効成分と接触することから防止することができる。バリヤー及びシーラントの詳細は以下に記載する。
【0056】
本発明によるマトリックスに基づく投与形では、メトホルミンと少なくとも一つの製薬的に受容される成分を、少なくとも1種類の水溶性ポリマーと少なくとも1種類の水不溶性ポリマーを典型的に含むポリマー・マトリックス内に分散させる。投与形から拡散及び/又は侵食によって、薬物を放出することができる。このようなマトリックス系はWise と Kydonieusの上記文献によって詳述されている。
【0057】
適当な水溶性ポリマーは、非限定的に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリエチレングリコール、及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0058】
適当な水不溶性ポリマーは、非限定的に、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルローストリアセテート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリ(エチレン)、低密度ポリ(エチレン)、高密度ポリ(エチレン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルイソブチルエーテル)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(塩化ビニル)又はポリウレタン、及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0059】
適当な、製薬的に受容される賦形剤は、非限定的に、キャリヤー、例えばクエン酸ナトリウム及びリン酸二カルシウム;充填剤若しくは増量剤、例えばステアレート、シリカ、石膏、澱粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、タルク及びケイ酸;結合剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及びアラビアゴム;保湿剤、例えばグリセロール;崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ澱粉とタピオカ澱粉、アルギン酸、ある一定のシリケート、EXPLOTABTM、クロスポビドン及び炭酸ナトリウム;溶解抑制剤、例えばパラフィン;吸収促進剤、例えば第4級アンモニウム化合物;湿潤剤、例えばセチルアルコール及びグリセロール・モノステアレート;吸収剤、例えばカオリン及びベントナイト粘土;滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール及びラウリル硫酸ナトリウム;安定剤、例えばフマル酸;着色剤;緩衝剤;分散剤;保存剤;有機酸;並びに有機塩基を包含する。上記賦形剤は、例としてのみ挙げたものであり、可能な選択の全てを包含する意味ではない。さらに、多くの賦形剤は二つ以上の役割若しくは機能(more than one role or function)を有することができる、又は二つ以上のグループに分類されることができる;分類は記述的であるにすぎず、例示した賦形剤の任意の使用を限定することを意図するものではない。
【0060】
幾つかの実施態様では、マトリックスに基づく投与形は、メトホルミン;例えば澱粉、ラクトース若しくは微結晶セルロース(AVICELTM)のような充填剤;例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース若しくはポリビニルピロリドンのような結合剤/制御放出ポリマー;例えばステアリン酸マグネシウム若しくはステアリン酸のような滑沢剤;例えばラウリル硫酸ナトリウム若しくはポリソルベートのような界面活性剤;及び例えばコロイド状二酸化ケイ素(AEROSILTM)若しくはタルクのようなグライダント(glidant)を含むことができる。ある一定の実施態様では、例えばEXPLOTABTM、クロスポビドン又は澱粉のような崩壊剤も含まれる。
【0061】
本発明によって開示する製剤中のポリマーの量及び種類と、水溶性ポリマーの水不溶性ポリマーに対する比率は、以下で説明するように、メトホルミンの望ましい放出プロファイルを得るように一般に選択される。例えば、水溶性ポリマーの量に対して水不溶性ポリマーの量を高めることによって、薬物の放出を遅延させる又は緩慢にすることができる。これは、一部には、ポリマー・マトリックスの不透過性の増強によるものであり、場合によっては、GI管を通る移送中の侵食速度の低下によるものである。
【0062】
浸透圧ポンプ投与形
種々な実施態様において、本発明の開示の調節放出製剤は、浸透圧ポンプ投与形として提供される。浸透圧ポンプ投与形では、メトホルミンと任意に少なくとも1種類の浸透性賦形剤を含むコアを、少なくとも一つのオリフィスを有する選択的透過性膜で被覆することができる。選択的透過性膜は、一般に、水に対して透過性であるが、薬物に対しては不透過性である。体液が該系に接触すると、水が該選択的透過性膜を透過して、薬物と任意の浸透性賦形剤を含有するコアに入る。投与形内の浸透圧は上昇して、該選択的透過性膜を横切る浸透圧を等しくしようとして、薬物がオリフィス(単数又は複数)を通して放出される。
【0063】
より複雑なポンプでは、該投与形はコア中に少なくとも二つの内部区画を含むことができる。第1区画は薬物を含むことができ、第2区画は、水性流体と接触すると膨潤する、少なくとも1種類のポリマーを含むことができる。摂取後に、このポリマーは膨潤して、薬物を含む区画に入り、該薬物が占める容積を減少させ、それによって、制御速度での調節された期間にわたるデバイスからの薬物デリバリー又は特定の環境のpHに基づいたデリバリー(base delivery on the pH of the particular environment)を最適化することを可能にする。
【0064】
浸透圧ポンプは当該技術分野で周知である。例えば、米国特許No.4,088,864、No.4,200,098及びNo.5,573,776(これらの各々は、このために本明細書に援用される)は、浸透圧ポンプとそれらの製造方法を述べている。本発明によって有用な浸透圧ポンプは、浸透的活性薬物の錠剤、又は浸透的活性剤と組み合わせた浸透的不活性薬物の錠剤を圧縮成形し、次に該錠剤を、外部水性流体に対して透過性であるが薬物及び/又は浸透剤に対して不透過性である選択的透過性膜によって被覆することによって形成することができる。
【0065】
少なくとも一つのデリバリー・オリフィスを、該選択的透過性膜壁を通して掘削することができる。或いは、浸出性の孔形成物質を該壁に組み込むことによって、該壁に少なくとも一つのオリフィスを形成することができる。作用中に、外部水性流体が該選択的透過性膜を通して吸収されて、薬物と接触して、該薬物の溶液又は懸濁液を形成する。次に、新たな流体が該選択的透過性膜を通して吸収されると、該薬物溶液若しくは懸濁液が該オリフィスを通って排出される。このことは、該デバイスからの調節された速度での長時間にわたる薬物デリバリー又は特定の環境のpHに基づくデリバリーを最適化することを可能にする。
【0066】
該選択的透過性膜のための典型的な物質は、浸透膜及び逆浸透膜に有用であると当該技術分野で知られた選択的透過性ポリマー、例えば、セルロースアシレート(cellulose acylate)、セルロースジアシレート(cellulose diacylate)、セルローストリアシレート(cellulose triacylate)、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、寒天アセテート、アミローストリアセテート、βグルカンアセテート、アセトアルデヒド・ジメチルアセテート、セルロースアセテート・エチルカルバメート、ポリアミド、ポリウレタン、スルホン化ポリスチレン、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテート・メチルカルバメート、セルロースアセテートスクシネート、セルロースアセテート・ジメチルアミノアセテート、セルロースアセテート・エチルカルバメート、セルロースアセテート・クロルアセテート、セルロースジパルミテート、セルロースジオクタノエート、セルロースジカプリレート、セルロースジペンタネート、セルロースアセテートバレレート、セルロースアセテートスクシネート、セルロースプロピオネートスクシネート、メチルセルロース、セルロースアセテートp−トルエンスルホネート、セルロースアセテートブチレート、軽度に架橋したポリスチレン誘導体、架橋ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド)及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0067】
該ポンプに使用可能である浸透剤は、典型的に、投与後にデバイスに入る流体に溶解性であって、外部流体に対して選択的透過性膜壁を横切る浸透圧勾配を生じる。適当な浸透剤は、非限定的に、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、d−マンニトール、尿素、ソルビトール、イノシトール、ラフィノース、スクロース、グルコース、例えばセルロースポリマーのような親水性ポリマー及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0068】
上記で考察したように、浸透圧ポンプ投与形は、膨潤性ポリマーを含む第2区画を含むことができる。適当な膨潤性ポリマーは、該ポリマーを平衡状態になるまで膨潤又は膨張させる水及び/又は水性生物学的流体と典型的に相互作用する。有用なポリマーは、水中及び/又は水性生物学的流体中で膨潤する能力を有し、該投与形内の静水圧を高めるように、それらのポリマー構造内に吸収した流体のかなりの部分を保持する。該ポリマーは、非常に高度に膨潤又は膨張することができ、例えば、2倍〜50倍の体積増大を示すことができる。該ポリマーは非架橋性である(be non-cross-linked)ことも、架橋性であることも可能である。幾つかの実施態様では、膨潤性ポリマーは親水性ポリマーである。適当なポリマーは、非限定的に、約30,000〜約5,000,000の分子量を有するポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート);カッパ−カラゲナン;約10,000〜約360,000の分子量を有するポリビニルピロリドン;アニオン及びカチオン・ヒドロゲル;ポリ電解質複合体;低量のアセテートを有し、グリオキサール、ホルムアルデヒド若しくはグルタルアルデヒドによって架橋し、約200〜約30,000の重合度を有するポリ(ビニルアルコール);メチルセルロースと架橋寒天とカルボキシメチルセルロースを含む混合物;微粉状無水マレイン酸と、スチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン又はイソブチレンとの分散系を形成することによって得られる、水不溶性で水膨潤性のコポリマー;N−ビニルラクタムの水膨潤性ポリマー;及び/又は上記のいずれかの混合物を包含する。
【0069】
本明細書で用いる“オリフィス”なる用語は、投与形から薬物を放出するために適した手段及び方法を包含する。該表現は、選択的透過性膜に機械的手段によって開けられている開口又はオリフィスを包含する。或いは、選択的透過性膜中に、例えばゼラチンプラグのような、侵食性要素を組み込むことによって、オリフィスを形成することもできる。このような場合には、侵食性要素の侵食が選択的透過性膜中に、薬物が通過することができる孔を形成する。このような“通路”製剤は、例えば米国特許No.3,845,770及びNo.3,916,899に記載されており、これらの特許の関連する内容は、このために、本明細書に援用される。
【0070】
本発明によって有用な浸透圧ポンプは、当該技術分野で知られた手法で製造することができる。例えば、薬物とその他の成分を一緒に磨砕して、所望の寸法(例えば、第1区画に対応する)を有する固体にプレス成形することができる。次に、膨潤性ポリマーを成形して、薬物と接触させて配置し、両方を選択的透過剤(selectively permeable agent)によって囲むことができる。必要な場合には、薬物成分とポリマー成分とを一緒にプレス成形してから、選択的透過膜を付着させることができる。選択的透過膜は任意の適当な手段によって、例えば、成形、吹き付け又は浸漬によって付着させることができる。
【0071】
膜制御投与形
本発明の調節放出製剤は、膜制御製剤として提供することも可能である。本発明の膜制御製剤は、モノリシック型(例えば、錠剤)又は複合単位型(例えば、ペレット)であることができる迅速放出コアを作製し、該コアを膜で被覆することによって製造することができる。次に、該膜制御コアをさらに、機能的コーティングによって被覆することができる。膜制御コアと機能的コーティングとの間に、バリヤー又はシーラントを加えることができる。該バリヤー又はシーラントは、迅速放出コアと膜コーティングとの間に、代替的に又は付加的に施用することができる。膜制御投与形の詳細は、以下に記載する。
【0072】
ある一定の実施態様では、メトホルミンを多粒子状膜制御製剤中で供給することができる。約0.4〜約1.1mm又は約0.85〜約1.00mmの範囲内の平均直径を有するノンパラレル・シードに該薬物を塗布することによって、メトホルミンを活性コアに形成することができる。メトホルミンを付加的賦形剤と共に又は付加的賦形剤なしで、不活性コア上に施用することができ、溶液又は懸濁液から流動床コーター(例えば、Wursterコーティング)又はパンコーティング系を用いて吹き付けることができる。或いは、メトホルミンをコア上に結合させるために結合剤を用いて、メトホルミンを不活性コア上に粉末として施用することができる。コアを適当な可塑剤(以下で説明)と必要に応じて、任意の他の加工助剤と共に押出成形することによって、活性コアを形成することもできる。
【0073】
種々な実施態様において、本発明の調節放出製剤は、薬物含有コアに膜コーティングとして塗布される、少なくとも1種類のポリマー物質を含む。適当な水溶性ポリマーは、非限定的に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリエチレングリコール、及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0074】
適当な水不溶性ポリマーは、非限定的に、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルローストリアセテート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、及びポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリ(エチレン)、低密度ポリ(エチレン)、高密度ポリ(エチレン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルイソブチルエーテル)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(塩化ビニル)又はポリウレタン、及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0075】
EUDRAGIT(登録商標)ポリマー(Rohm Pharmaから入手可能)は、アクリレート及び/又はメタクリレートに基づくポリマー・ラッカー物質である。有効成分と水に対して自由に透過性である、適当なポリマーは、EUDRAGIT(登録商標)RLである。有効成分と水に対して弱透過性である、他の適当なポリマーは、EUDRAGIT(登録商標)RSである。有効成分と水に対して弱透過性であり、pH依存性透過性を示す、他の適当なポリマーは、非限定的に、EUDRAGIT(登録商標)L、EUDRAGIT(登録商標)S及びEUDRAGIT(登録商標)Eを包含する。
【0076】
EUDRAGIT(登録商標)RL及びRSは、第4級アンモニウム基の低い含量を有する、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルのコポリマーを含むアクリル樹脂である。該アンモニウム基は塩として存在して、該ラッカーフィルムの透過性をもたらす。EUDRAGIT(登録商標)RL及びRSは、それぞれ、pHに関係なく、自由に透過性(RL)及び弱透過性(RS)である。これらのポリマーは水中及び消化液中でpH非依存的に膨潤する。膨潤した状態で、該ポリマーは水及び溶解した活性化合物に対して透過性である。
【0077】
EUDRAGIT(登録商標)Lは、メタクリル酸とメタクリル酸メチルエステルから合成されたアニオンポリマーである。これは、酸及び純粋な水中に不溶性である。これは、中性〜弱アルカリ性状態では溶解性になる。EUDRAGIT(登録商標)Lの透過性は、pH依存性である。pH5.0を超えると、該ポリマーはますます透過性になる。
【0078】
膜制御投与形を含む、種々な実施態様では、ポリマー物質は、メタクリル酸コポリマー、アミノメタクリレート・コポリマー又はこれらの混合物を含むことができる。例えばEUDRAGIT(登録商標)S及びEUDRAGIT(登録商標)L(Rohm Pharma)は、本発明の制御放出製剤に用いるために特に適する。これらのポリマーは、胃耐性の、腸溶性ポリマーである。これらのポリマーのポリマーフィルムは、純粋な水及び希薄な酸中に不溶性である。これらのフィルムは、それらのカルボン酸含量に依存して、高いpHにおいて溶解する。EUDRAGIT(登録商標)S及びEUDRAGIT(登録商標)Lは、ポリマー・コーティング中に単独の成分として又は任意の比率で組み合わせて用いることができる。これらのポリマーの組み合わせを用いることによって、該ポリマー物質は、EUDRAGIT(登録商標)L及びEUDRAGIT(登録商標)Sが別々に溶解性であるpH値間のpHにおいて溶解性を示すことができる。
【0079】
膜コーティングは、大きい割合(即ち、総ポリマー含量の50%より大)の少なくとも1種類の製薬的に受容される水溶性ポリマーと、任意に、小さい割合(即ち、総ポリマー含量の50%未満)の少なくとも1種類の製薬的に受容される水不溶性ポリマーを含むポリマー物質を含むことができる。或いは、該膜コーティングは、大きい割合(即ち、総ポリマー含量の50%より大)の少なくとも1種類の製薬的に受容される水不溶性ポリマーと、任意に、小さい割合(即ち、総ポリマー含量の50%未満)の少なくとも1種類の製薬的に受容される水溶性ポリマーを含むポリマー物質を含むことができる。
【0080】
例えばEUDRAGIT(登録商標)RS及びEUDRAGIT(登録商標)RL(Rohm Pharma)のようなアンモニオメタクリレート・コポリマーは、本発明の開示の調節放出製剤に用いるために適する。これらのポリマーは、純粋な水、希薄な酸、バッファー溶液又は消化液中で全生理的pH範囲にわたって不溶性である。これらのポリマーは、pHに関係なく、水及び消化液中で膨潤する。膨潤した状態で、次に、これらのポリマーは、水と溶解した活性剤に対して透過性である。該ポリマーの透過性は、該ポリマー中のエチルアクリレート(EA)基、メチルメタクリレート(MMA)基及びトリメチルアンモニオエチルメタクリレート・クロリド(TAMCl)基の比率に依存する。1:2:0.2のEA:MMA:TAMCl比率を有するポリマー(EUDRAGIT(登録商標)RL)は、1:2:0.1の比率を有するポリマー(EUDRAGIT(登録商標)RS)よりも大きく透過性である。EUDRAGIT(登録商標)RLのポリマーは、高い透過性の不溶性ポリマーである。EUDRAGIT(登録商標)RSのポリマーは、低い透過性の不溶性ポリマーである。
【0081】
アミノメタクリレート・コポリマーは、任意の望ましい比率で組み合わせることができ、薬物放出速度を調節するように、該比率を調整することができる。例えば、90:10のEUDRAGIT(登録商標)RS:EUDRAGIT(登録商標)RLの比率を用いることができる。或いは、EUDRAGIT(登録商標)RS:EUDRAGIT(登録商標)RLの比率は、約100:0〜約80:20、又は約100:0〜約90:10、又は中間の任意の比率であることができる。このような製剤において、弱透過性ポリマーEUDRAGIT(登録商標)RSが一般に、ポリマー物質の大部分を占めると考えられる。
【0082】
薬物放出を望ましく遅延させるために、ポリマー物質内でアミノメタクリレート・コポリマーをメタクリル酸コポリマーと組み合わせることができる。約99:1〜約20:80の範囲内のアンモニオメタクリレート・コポリマー(例えば、EUDRAGIT(登録商標)RS)のメタクリル酸コポリマーに対する比率を用いることができる。該2種類のポリマーを組み合わせて、同じポリマー物質にすることもできる、又はコアに塗布される別々のコートとして供給することもできる。
【0083】
上記EUDRAGIT(登録商標)ポリマーの他に、幾つかの他のこのようなコポリマーを用いて、薬物放出を制御することができる。これらには、メタクリレートエステル・コポリマー(例えば、EUDRAGIT(登録商標)NE 30D)が包含される。EUDRAGIT(登録商標)ポリマーに関するさらなる情報は、“Chemistry and Application Properties of Polymethacrylate Coating Systems,” in Aqueous Polymeric Coatings for Pharmaceutical Dosage Forms, ed. James McGinity, Marcel Dekker Inc., New York, pg 109-114に見出すことができる。
【0084】
上記EUDRAGIT(登録商標)ポリマーの他に、他の腸溶性又はpH依存性ポリマーを用いることができる。このようなポリマーは、フタレート基、ブチレート基、スクシネート基、及び/又はメリテート基(mellitate group)を含むことができる。このようなポリマーは、非限定的に、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートスクシネート、セルロース水素フタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、澱粉アセテートフタレート、アミロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、及びポリビニルブチレートフタレートを包含する。
【0085】
コーティング膜は、さらに、ポリマー物質の透過性を高めるために、少なくとも1種類の溶解性賦形剤を含むことができる。該溶解性賦形剤は、適当に、溶解性ポリマー、界面活性剤、アルカリ金属塩、有機酸、糖、及び糖アルコールから選択される。このような溶解性賦形剤は、非限定的に、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びポリソルベートのような界面活性剤、例えば酢酸、アジピン酸、クエン酸、フマル酸、グルタル酸、リンゴ酸、コハク酸及び酒石酸のような有機酸、例えばデキストロース、フルクトース、グルコース、ラクトース及びスクロースのような糖、例えばラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール及びキシリトールのような糖アルコール、キサンタンガム、デキストリン、並びにマルトデキストリンを包含する。幾つかの実施態様では、ポリビニルピロリドン、マンニトール及び/又はポリエチレングリコールを溶解性賦形剤として、用いることができる。該溶解性賦形剤(単数又は複数)は、ポリマーの総乾燥重量に基づいて、約1〜約10重量%の量で用いることができる。
【0086】
幾つかの実施態様では、ポリマー物質は、胃腸液中にも不溶性である少なくとも1種類の水不溶性ポリマーと、少なくとも1種類の水溶性孔形成化合物を含むことができる。例えば、水不溶性ポリマーは、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート及び/又はポリビニルアルコールのターポリマーを含むことができる。適当な水溶性孔形成化合物は、非限定的に、サッカロース、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ポリビニルピロリドン、及び/又はポリエチレングリコールを包含する。孔形成化合物(単数又は複数)は、水不溶性ポリマーの全体にわたって均一に又はランダムに分布することができる。典型的に、孔形成化合物(単数又は複数)は、水不溶性ポリマーのそれぞれ約1〜約10部に対して約1部〜約35部を占める。
【0087】
このような投与形が溶解媒質(例えば、腸液)に接触すると、該ポリマー物質内の孔形成化合物(単数又は複数)が溶解して、孔構造を生じ、それを通って薬物が拡散する。このような製剤は、米国特許No.4,557,925により詳細に記載されており、この特許の関連部分はこのために本明細書に援用される。この孔のある膜を、本明細書に記載するように、腸溶性コーティングで被覆して、胃での放出を抑制することもできる。
【0088】
ある一定の実施態様では、このような孔形成性調節放出投与形は、メトホルミン;例えば澱粉、ラクトース若しくは微結晶セルロース(AVICELTM)のような充填剤;例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース若しくはポリビニルピロリドンのような結合剤/制御放出ポリマー;例えばEXPLOTABTM、クロスポビドン若しくは澱粉のような崩壊剤;例えばステアリン酸マグネシウム若しくはステアリン酸のような滑沢剤;例えばラウリル硫酸ナトリウム若しくはポリソルベートのような界面活性剤;及び例えばコロイド状二酸化ケイ素(AEROSILTM)若しくはタルクのようなグライダントを含む。
【0089】
該ポリマー物質は、さらに、少なくとも1種類の補助剤、例えば充填剤、可塑剤及び/又は消泡剤を含むことができる。代表的な充填剤は、タルク、ヒュームド・シリカ、グリセリルモノステアレート、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、カオリン、コロイド状シリカ、石膏、微粉状シリカ及び三ケイ酸マグネシウムを包含する。充填剤の使用量は、該ポリマーの総乾燥重量に基づいて、約2〜約300重量%又は約20〜約100重量%の範囲であることができる。種々な実施態様では、タルクが充填剤である。
【0090】
コーティング膜及び機能的コーティングは、該ポリマーの加工(processing)を改良する物質を含むこともできる。このような物質は、一般に、可塑剤と呼ばれ、例えば、アジペート、アゼレート、ベンゾエート、シトレート、イソエブケート(isoebucates)、フタレート、セバケート、ステアレート及びグリコールを包含する。代表的な可塑剤は、アセチル化モノグリセリド、ブチルフタリルブチルグリコレート、ジブチルタルトレート、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチンシトレート、トリアセチン、トリプロピノイン、ジアセチン、ジブチルフタレート、アセチルモノグリセリド、ポリエチレングリコール、ひまし油、トリエチルシトレート、多価アルコール、アセテートエステル、グリセロールトリアセテート、アセチルトリエチルシトレート、ジベンジルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジオクチルアゼレート、エポキシ化タレート(epoxidised tallate)、トリイソオクチルトリメリテート、ジエチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−i−オクチルフタレート、ジ−i−デシルフタレート、ジ−n−ウンデシルフタレート、ジ−n−トリデシルフタレート、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジブチルセバケート、グリセリルモノカプリレート、及びグリセリルモノカプレートを包含する。1実施態様では、可塑剤はジブチルセバケートである。ポリマー物質中の可塑剤の使用量は、乾燥ポリマーの重量に基づいて、約10〜約50%の範囲であることができ、例えば、約10%、20%、30%、40%又は50%であることができる。
【0091】
消泡剤も含めることができる。幾つかの実施態様では、消泡剤はシメチコンである。消泡剤の使用量は、最終の製剤の約0%〜約0.5%を占めることができる。
膜制御製剤中のポリマー使用量は、薬物のデリバリー量、薬物デリバリーの速度と位置、薬物放出の時間遅延、及び製剤中の多粒子のサイズを含めた、望ましい薬物デリバリー特性を得るように調整することができる。ポリマーの施用量は、コアに約10%〜約100%重量増加を与えることができる。ある一定の実施態様では、該ポリマー物質からの重量増加は約25%〜約70%の範囲である。
【0092】
ポリマー膜は、ポリマーの他に、例えば充填剤、可塑剤、安定剤又は他の賦形剤及び加工助剤のような成分を含むことができる。膜の付加的成分の1例は、安定剤として作用しうる炭酸水素ナトリウムである。
【0093】
コポリマー、充填剤、可塑剤、及び任意の賦形剤と加工助剤を含めた、ポリマー物質の全ての固体成分の組み合わせは、コアに約10%〜約450%の重量増加を与えることができる。種々な実施態様において、該重量増加は約30%〜約160%である。
【0094】
該ポリマー物質は、任意の既知方法によって、例えば、流動床コーター(例えば、Wursterコーティング)又はパンコーティング系を用いて吹き付けることによって、塗布することができる。ポリマー物質の塗布後に、被覆されたコアを乾燥又は硬化させることができる。硬化(curing)は、多粒子が、安定な放出速度を与えるために充分な時間、制御された温度に維持されることを意味する。硬化は、例えば、オーブン又は流動床ドライヤー内で行なうことができる。硬化は、関連ポリマーのガラス転移温度を超えることができる、室温を超える任意の温度で行なうことができる。
【0095】
該ポリマー・コーティングにシーラント又はバリヤーを施用することも可能である。代替的に又は付加的に、該ポリマー物質を塗布する前に、コアにシーラント又はバリヤー層を塗布することもできる。シーラント又はバリヤー層は一般にメトホルミンの放出を調節することを意図するものではないが、それがどのように処方されているかに依存して、メトホルミンの放出の調節を意図する可能性がある。適当なシーラント又はバリヤーは、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、及びキサンタンガムのような、透過性又は溶解性作用剤である。例えば、外側シーラント又はバリヤーは、製剤全体の耐水性を改良するために用いることができる。例えば、コアとコーティングとの間のシーラント/バリヤーを用いて、pH依存性又はpH非依存性の溶解特性を示す可能性がある外部ポリマー・コーティングからコア中身を保護することができる。さらに、両方の効果、即ち、耐水性とコア保護が望ましい場合が存在しうる、この場合には、シーラント/バリヤーをコアとポリマー膜コーティングとの間に施用して、次に該ポリマー膜コーティングの外側に施用することができる。
【0096】
シーラント又はバリヤー層の加工性を改良するために、他の作用剤を加えることも可能である。このような作用剤は、タルク、コロイド状シリカ、ポリビニルアルコール、二酸化チタン、微粉状シリカ、ヒュームドシリカ、グリセロール・モノステアレート、三ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム又はこれらの混合物を包含する。シーラント又はバリヤー層は、溶液(例えば、水溶液)又は懸濁液から、任意の既知手段、例えば流動床コーター(例えば、Wursterコーティング)又はパンコーティング系を用いて施用することができる。適当なシーラント又はバリヤーは、例えば、OPADRY(登録商標)、WHITE Y-1-7000(登録商標)及びOPADRY(登録商標)OY/B/28920 WHITE(登録商標)を包含し、これらの各々はColorcon Limited,Englandから入手可能である。
【0097】
本発明は、さらに、キャプレット、カプセル剤、投与前に懸濁させるための粒子、サッシェ又は錠剤の形態で、上記で定義した多粒子状メトホルミンを含む経口投与形を提供する。該投与形は、例えば球状、立方体状、卵状又は長円形状のような、薬物の経口投与に適した、任意の形状であることができる。
【0098】
種々な製薬的投与形、律速性ポリマー及び製造方法を用いることができるが、本発明のある一定の実施態様では、メトホルミン製剤は、EUDRAGIT(登録商標)L及びSグレードから選択される、腸溶性コーティイングをそれぞれ有する、短い長さの、即ち、10mm未満の錠剤若しくは複数の錠剤でありうる。このような錠剤は、水性条件への暴露時にあまり膨潤しないで、5.5未満のpH環境及び6.5を超えるpH環境でメトホルミンの放出を抑制する、したがって、吸収帯(absorption window)、即ち、胃及び上部小腸の範囲内での放出を防止することになる。
【0099】
さらにモノリシック投与形及び/又は複合単位投与形の形をとることができる、非限定的に、マトリックスに基づく制御形、浸透圧ポンプに基づく制御形、軟質ゼラチンカプセル及び/又は膜制御形を含めた上記実施態様の全ては、機能的コーティングを有することができる。このようなコーティングは、薬物の放出を所定時間遅らせるという目的を果たすことができる。例えば、このようなコーティングは、投与形が胃酸又は消化液によって溶解されずに胃を通過するのを許すことができる。したがって、このようなコーティングは、例えば、GI管からのメトホルミン全身吸収の部位に遠位である部位のような、消化管の所望の位置に達したときに、溶解する又は侵食されることができる。
【0100】
このような機能的コーティングは、pH依存性又はpH非依存性の溶解プロファイルを示すことができる。pH非依存性プロファイルを有する機能的コーティングは、所定期間後に侵食される又は溶解することができ、該期間は該コーティングの厚さ及び組成に関係する可能性がある。他方では、pH依存性プロファイルを有する機能的コーティングは、胃の酸性pH中にある間はそれらの完全性を維持することができるが、より大きく塩基性である上部腸に入ると直ちに侵食される又は溶解する可能性がある。
【0101】
したがって、マトリックスに基づく製剤、浸透圧ポンプに基づく製剤、又は膜制御製剤を、薬物の放出を遅らせる機能的コーティングでさらに被覆することができる。例えば、膜制御製剤は、上部腸に達するまで膜制御製剤の露出を遅らせる腸溶性コーティングによって被覆することができる。酸性の胃を出て、より大きく塩基性の腸に入ると、該腸溶性コーティングは溶解する。その時に、膜制御製剤は胃腸液に暴露されて、次に、本発明の開示によって、長時間にわたってメトホルミンを放出する。例えばこれらのような機能的コーティングの例は、当業者に周知である。
【0102】
幾つかの実施態様では、メトホルミン製剤は最初に薬物の放出を遅延させることができる。遅延後に、該製剤は迅速に薬物を放出することができる。
投与量
治療効果を生じるために必要な投与量が、治療される個人と状態の重症度に依存して変化しうることを、当業者は理解するであろう。例えば、個々の患者の年齢、体重及び病歴が、療法の治療効果に影響を与える可能性がある。有能な医師はこれらの要因を考慮して、過度の実験なしに、投与量が所望の治療成果を確実に達成するように投与計画を調整することができる。臨床医及び/又は治療医が、個々の患者の反応に関連して、如何にして及び何時療法を中断、調節及び/又は終了するかを知るであろうことも、注目される。
【0103】
幾つかの実施態様では、本発明の方法及び製剤は、対象に投与したときに、即時放出製剤の相対的バイオアベイラビリティよりも低い、例えば75%未満、さらに例えば50%未満のような、調節放出及び/又は遅延放出製剤の相対的バイオアベイラビリティを示す。
【0104】
一般に、本発明製剤中のメトホルミンの総1日投与量は、約50mg〜約3gの範囲内、又は中間の任意の整数若しくは端数量(any whole number or fractional amount) であるであることができる。さらに、本発明製剤中のメトホルミンの1日投与量は、単回投与量と分割投与量から選択することができる。例えば、単回投与量は、メトホルミンの約50、60、70、80、90、100、110、120、125、130、140、150、160、170、200、300、400、500、600、700、800若しくは900mg、1、2若しくは3gを含むように製剤化することができる。1実施態様では、単回投与量は約500mgのメトホルミンを含む。
【0105】
本発明の経口製剤は、それらの溶解プロファイルによって特徴付けることができる。当業者は、このような溶解プロファイルの測定に用いる手法を熟知している。米国薬局方に示された標準方法論(この方法論は関連部分において本明細書に援用される)を用いることができる。例えば、該溶解プロファイルは、米国薬局方I型装置(バスケット)又は米国薬局方II型装置(パドル)のいずれかで測定することができる。
【0106】
放出プロファイル
本発明の幾つかの実施態様は、調節放出/遅延放出プロファイルを有する製剤を用いる、方法及び製剤に関する。
【0107】
例えば、本発明は、pH5以下のpH媒質中で、さらに例えばpH6.5以下のpH媒質中では少なくとも2時間、無視できるほどの放出、即ち、10%未満の放出を示す調節放出/遅延放出プロファイルを提示する製剤とそれらの使用方法を包含する。メトホルミン放出プロファイルの最適化は、放出がGI管の十二指腸から遠位の部位で起こりうるような、やり方でメトホルミンの放出を遅延させることを可能にする。さらに例えば、メトホルミンの放出をGI管の空腸から遠位の部位で生じさせることも可能である。さらになお他の例では、メトホルミンの放出は、GI管の回腸から遠位の部位で起こりうる。
【0108】
上記の任意の製薬的製剤は、さらに、メトホルミン以外の少なくとも1種類の付加的な製薬的活性剤を含むことができる。このような化合物は、メトホルミンで治療される同じ状態を治療するために、又は異なる状態を治療するために提供することができる。このような薬物は、非限定的に、アカルボース、充填剤、緩下剤、テガセロッド及びこれらの混合物を包含する。当業者は、付加的な活性剤、即ち、付加的な有効成分を該製薬的製剤中に組み込む手法の例に熟知している。例えば、ある一定の実施態様では、複合製剤は、メトホルミンとその製薬的に受容される塩、少なくとも1種類の製薬的に受容される成分、及び少なくとも1種類の付加的な製薬的活性化合物、例えばアカルボースを含むことができる。幾つかの実施態様では、アカルボースを即時放出及び/又は調節放出製剤として含めることができ、例えば、メトホルミンとの一定の組み合わせで投与することができる。
【0109】
或いは、このような付加的な製薬的活性剤は別々の製剤中で供給して、メトホルミン組成物と一緒に患者に共投与することができる。このような別々の製剤は、メトホルミン投与の前、後又はメトホルミン投与と同時に投与することができる。
【0110】
実施例において又はその他で指定する場合以外に、明細書及び特許請求の範囲で用いられる成分の量、反応条件等を表現する全ての数値は、全ての場合に“約(about)”なる用語によって修飾されるものと理解すべきである。したがって、そうでないと指定しない限りは、本明細書と特許請求の範囲に記載する数値パラメーターは、本発明によって得られるべき所望の特性に依存して、変化しうる近似値である。最低限でも、そして特許請求の範囲の、同等物の原則の適用を限定しようとする試みとしてではなく、各数値パラメーターは、有効数字の数(the number of significant digits)及び通常の丸めアプローチを考慮して、解釈すべきである。
【0111】
本開示の幅広い範囲を示す数値範囲及びパラメーターが近似値であるにも拘わらず、特定の実施例に示される数値は当該技術分野で慣習的である程度に精確に報告されるものである。しかし、如何なる数値も、それらのそれぞれの試験測定に見出される標準偏差に必然的に起因する、ある種の誤差を本質的に含有する。
【0112】
下記実施例を参照することによって、本発明をさらに説明する。物質と方法の両方に対する修正が、本開示の目的及び範囲から逸脱せずになされうることは、当業者に明らかであろう。
【実施例】
【0113】
実施例1:被覆されない即時放出メトホルミン錠剤製剤
【0114】
【表1】

【0115】
製造方法
適当な秤を用いて、成分を秤量する。
適当なミキサーに、メトホルミン、Avicelの50%及びラクトースの50%を入れる。
【0116】
均質になるまで、約15分間混合する。
混合を続けて、顆粒化液体(granulating fluid)(ナトリウム/PVP溶液)を加える。
【0117】
適当な顆粒化終点に達するまで混合する。適当な顆粒を得るために、さらにIPAを加えることができる。
例えば1.0%未満の水分及び例えば0.5%未満のIPAの許容レベルに達するまで、該顆粒を乾燥させる。
【0118】
乾燥した顆粒を、適当なサイズのスクリーン(例えば、100〜500ミクロン)を装備した、適当な粉砕装置に通す。
該顆粒をブレンダーに入れて、コロイド状二酸化ケイ素(グライダント)、澱粉グリコール酸ナトリウム(崩壊剤)及び残りのラクトース(希釈剤)とAvicel(結合剤、希釈剤)を加える。
【0119】
約15分間混合する。
ステアリン酸マグネシウム(滑沢剤)を加えて、さらに5分間混合する。
適当な製錠機を用いて、製剤を卵状錠剤に圧縮成形する。
【0120】
或いは、メトホルミンをIPA(又は代替溶媒)中に溶解して、PVPを該乾燥ブレンドに混入してから、造粒する。
実施例2:遅延放出メトホルミン製剤
実施例1の即時放出錠剤製剤を機能的コートによって被覆することができる。2種類のコーティングの例を以下に記載する:
コーティング1
【0121】
【表2】

【0122】
製造方法
錠剤を適当なコーティング機に入れる。
該錠剤上にポリマー・コーティングを吹き付ける。
【0123】
必要量のポリマー・コーティング溶液が塗布されたならば、該錠剤をコーティング機内で乾燥させる。
コーティング2
【0124】
【表3】

【0125】
製造方法
精製水をイソプロピルアルコールに加えて、約10分間混合する。
ジブチルセバケートを加えて、約10分間撹拌する。
【0126】
タルクを加えて、約15分間混合を続ける。
最後に、Eudragit Sを加えて、均質になるまで、例えば約30分間混合する。
流動コーティング装置及び上記方法を用いて、該即時放出錠剤上に直接吹き付ける。
【0127】
実施例3:in vitro放出試験結果
コーティング1に基づく、実施例2の遅延放出錠剤は、37℃の媒質流体900ml中、50〜100rpmでUSP I型又はII型装置において試験したときに、下記溶解プロフィルを示す:
媒質0.01N HCl中での2時間後:薬物の<10%が放出される;
その後、pH6.8媒質中での1時間後:薬物の>50%が放出される;
続いて、pH6.8媒質中での2時間後:薬物の>75%が放出される。
【0128】
上記コーティング2に基づく、実施例2の遅延放出錠剤は、37℃の媒質流体900ml中、50〜100rpmでUSP I型又はII型装置において試験したときに、溶解プロフィルを示す:
媒質0.01N HCl中での2時間後:薬物の<10%が放出される;
その後、pH6.8媒質中での1時間後:薬物の>10%が放出される;
pH6.8媒質中での2時間後:薬物の>20%が放出される;
pH6.8媒質中での4時間後:薬物の>40%が放出される;
そして、pH6.8媒質中での8時間後:薬物の>75%が放出される。
【0129】
実施例4:メトホルミン錠剤製剤の調節放出
種々のレベルのMethocel Premiumを用いた、メトホルミンの被覆されない調節放出製剤(湿式造粒方法)。
【0130】
マトリックス錠剤製剤
被覆されないマトリックス錠剤製剤と加工の詳細は、以下に記載する:
【0131】
【表4】

【0132】
適当な秤を用いて、成分を秤量する。
適当なミキサーに、メトホルミン、Avicelの50%及びラクトースの50%を入れる。
均質になるまで、約15分間混合する。
【0133】
混合を続けて、顆粒化液体(ナトリウム/PVP溶液)を加える。
適当な顆粒化終点に達するまで混合する。適当な顆粒を得るために、さらにIPAを加えることができる。
【0134】
例えば1.0%未満の水分及び例えば0.5%未満のIPAの許容レベルに達するまで、該顆粒を乾燥させる。
乾燥した顆粒を、適当なサイズのスクリーン(例えば、100〜500ミクロン)を装備した、適当な粉砕装置に通す。
【0135】
該顆粒をブレンダーに入れて、コロイド状二酸化ケイ素(グライダント)、及び残りのラクトース(希釈剤)とAvicel(結合剤、希釈剤)を加える。
約15分間混合する。
【0136】
ステアリン酸マグネシウム(滑沢剤)を加えて、さらに5分間混合する。
適当な製錠機を用いて、製剤を卵状錠剤(目標重量約1000mg)に圧縮成形する。
或いは、メトホルミンをIPA(又は代替溶媒)中に溶解して、PVPを該乾燥ブレンドに混入してから、造粒する。
【0137】
実施例5:in vitro試験結果
上記調節放出錠剤製剤(D、E及びF)は、実施例2に記載したような遅延放出機能的コーティングで被覆することができる。
【0138】
コーティング1に基づく、実施例4の調節放出錠剤は、37℃の媒質流体900ml中、50〜100rpmでUSP I型又はII型装置において試験したときに、溶解プロフィルを示す:
媒質0.01N HCl中での2時間後:薬物の<10%が放出される;
その後、pH6.8媒質中での1時間後:薬物の>20%が放出される;
pH6.8媒質中での2時間後:薬物の>30%が放出される;
pH6.8媒質中での4時間後:薬物の>50%が放出される;
そして、pH6.8媒質中での8時間後:薬物の>75%が放出される。
【0139】
コーティング2に基づく、実施例4の調節放出錠剤は、37℃の媒質流体900ml中、50〜100rpmでUSP I型又はII型装置において試験したときに、溶解プロフィルを示す:
媒質0.01N HCl中での2時間後:薬物の<10%が放出される;
その後、pH6.8媒質中での1時間後:薬物の>10%が放出される;
pH6.8媒質中での2時間後:薬物の>20%が放出される;
pH6.8媒質中での4時間後:薬物の>30%が放出される;
pH6.8媒質中での6時間後:薬物の>40%が放出される;
そして、pH6.8媒質中での8時間後:薬物の>60%が放出される。
【0140】
実施例6:薬物動態研究
商業的な基準製品(GLUCOPHAGE(登録商標))と4メトホルミン製剤との相対的バイオアベイラビリティ(同一薬物の同じ又は異なる投与形を同じ又は異なる経路で投与する場合にAUCsを比較することによって得られるバイオアベイラビリティ)を比較し、評価するために、一晩絶食した健康な被験者15人における投与後4時間の、単回投与、5通りのクロスオーバー研究(single-dose, five-way crossover study)を設計する。これらの製剤は次の通りである:
(a)GLUCOPHAGE(登録商標)500mg
(b)遅延開始500mg(A、B又はC)
(c)遅延開始調節放出(D)500mg
(d)遅延開始調節放出(E)500mg
(e)遅延開始調節放出(F)500mg
健康な被験者15人には、5試験期間の一つで無作為化クロスオーバー式に投与する。投与直前及び各投与後に規則的な間隔をおいて、48時間までの期間にわたって、静脈血サンプルを採取する。メトホルミンの血漿濃度を、標準方法を用いて測定する。個別の血漿濃度曲線を構成して、Tmax(最大濃度における時間)、Cmax(最大測定濃度)及びAUC(血漿濃度対時間曲線下の面積)を含めた、個別、平均及び相対的薬物動態パラメーターを推定する。下記結果が得られる:
(b)のAUCとCmax:(a)AUCとCmaxの<75%
(c)のAUCとCmax:(a)AUCとCmaxの<75%
(d)のAUCとCmax:(a)AUCとCmaxの<60%
(e)のAUCとCmax:(a)AUCとCmaxの<50%
実施例7:臨床試験
Rome II規準(修正)、即ち、それまでの3箇月のうち少なくとも3週間に下記症状:
i.排便の>25%において排便いきみ;
ii.排便の>25%において塊状又は硬質糞便;
iii.排便の>25%において不完全排便の感覚;
iv.排便の>25%において肛門直腸の閉塞/遮断感覚;
v.排便の>25%を促進するための手技(例えば、指による排便、直腸床のサポート);及び/又は
vi.1週間につき<3回の排便
の二つ以上を示すことを用いて定義された、機能的便秘患者60〜120人において投与した製剤の効力を評価するために、無作為化、投与量増量、プラセボ対照付き試験を設計する。
【0141】
さらに、軟便は存在せず、IBSの診断のためには充分な基準がない。さらに、これらの患者は、便秘を惹起しうる内科的疾患の兆候を有さない。試験の無作為化段階に入るときに、患者は症候性である、即ち、8〜14日目のならし期間に、少なくとも8日間(連続的である必要はない)に、患者は排便の>25%において塊状又は硬質の糞便を有する。
【0142】
患者を3グループ:
(a)遅延開始メトホルミン;
(b)遅延開始、調節放出メトホルミン;及び
(c)プラセボ
の一つに無作為に割り当てる。
【0143】
最初の効力終点は、患者の全体的印象に基づく。メトホルミンを摂取した患者は、試験の投与量増量段階中に、日誌に基づくと、少なくとも50%の時間で、次の質問:“治療後の現在、良くなったと感じますか”に“はい”と答える。
【0144】
第2効力終点は、排便中のいきみ、糞便粘稠度(Bristol Stool Scale)、排便の完全性、肛門直腸閉塞/遮断の感覚、排便を促進するための手技の使用、排便回数、及び救済薬剤、即ち、緩下剤の使用においてプラセボと比較した、基準(baseline)からの変化を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性便秘の治療を必要とする対象の慢性便秘の治療方法であって、治療有効量のメトホルミン若しくはその製薬的に受容される塩と、メトホルミンの放出を制御するための少なくとも1種類の製薬的に受容される成分を含む投与製剤を該対象に投与することを含み、該投与製剤が、投与後に、メトホルミンが吸収される胃腸部位から遠位にメトホルミンを放出するものである方法。
【請求項2】
慢性便秘が過敏性腸症候群の症状である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
メトホルミンが対象に経口投与される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
投与製剤を絶食状態の対象に投与する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
該少なくとも1種類の製薬的に受容される成分が非腸溶性ポリマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
該少なくとも1種類の製薬的に受容される成分が腸溶性ポリマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
投与製剤が、遅延放出及び/又は調節放出製剤である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
調節及び/又は遅延放出溶解プロファイルが、約5以下のpHを有する媒質中で少なくとも2時間、無視できるほどの放出を示すにすぎない、請求項7記載の方法。
【請求項9】
調節及び/又は遅延放出溶解プロファイルが、約6.5以下のpHを有する媒質中で少なくとも2時間、無視できるほどの放出を示すにすぎない、請求項7記載の方法。
【請求項10】
該投与製剤が胃腸管の十二指腸から遠位にメトホルミンを放出する、請求項7記載の方法。
【請求項11】
該投与製剤が胃腸管の空腸から遠位にメトホルミンを放出する、請求項7記載の方法。
【請求項12】
該投与製剤が胃腸管の回腸から遠位にメトホルミンを放出する、請求項7記載の方法。
【請求項13】
該投与製剤が、対象の胃を通過した後に、メトホルミンを放出する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
該投与製剤が、即時放出投与製剤に比べて、投与量の75%未満のメトホルミン相対的バイオアベイラビリティを生じる、請求項1記載の方法。
【請求項15】
該投与製剤が、即時放出投与製剤に比べて、投与量の50%未満のメトホルミン相対的バイオアベイラビリティを生じる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
該投与製剤が少なくとも1種類の付加的な製薬的活性化合物をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
該少なくとも1種類の付加的な製薬的活性化合物が便秘を緩和することができる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
該少なくとも1種類の付加的な製薬的活性化合物がアカルボースである、請求項16記載の方法。
【請求項19】
アカルボースが即時放出及び調節放出から選択された形態である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
該投与製剤が錠剤形である、請求項1記載の方法。
【請求項21】
該投与製剤が約50mg〜約3gの範囲内の1日量を供給する、請求項1記載の方法。
【請求項22】
該1日量が単回投与量及び分割投与量から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
メトホルミン又はその製薬的に受容される塩の慣用的製剤の投与に付随する少なくとも1種類の副作用を最小にしながら、慢性便秘が治療される、請求項1記載の方法。
【請求項24】
メトホルミン又はその製薬的に受容される塩の治療有効量と、メトホルミンの放出を制御するための少なくとも1種類の製薬的に受容される成分を含む投与製剤であって、メトホルミンが吸収される胃腸部位から遠位にメトホルミンを放出する製剤。
【請求項25】
該少なくとも1種類の製薬的に受容される成分が非腸溶性ポリマーを含む、請求項24記載の製剤。
【請求項26】
該少なくとも1種類の製薬的に受容される成分が腸溶性ポリマーを含む、請求項24記載の製剤。
【請求項27】
該投与製剤が遅延放出及び/又は調節放出製剤である、請求項24記載の方法。
【請求項28】
該調節放出及び/又は遅延放出製剤が約6.5以下のpHを有する媒質中で少なくとも2時間、メトホルミンの無視できるほどの放出を示すにすぎない、請求項27記載の方法。
【請求項29】
該調節放出及び/又は遅延放出製剤が約5以下のpHを有する媒質中で少なくとも2時間、メトホルミンの無視できるほどの放出を示すにすぎない、請求項27記載の方法。
【請求項30】
該投与製剤が胃腸管の十二指腸から遠位にメトホルミンを放出する、請求項27記載の製剤。
【請求項31】
該投与製剤が胃腸管の空腸から遠位にメトホルミンを放出する、請求項27記載の製剤。
【請求項32】
該投与製剤が胃腸管の回腸から遠位にメトホルミンを放出する、請求項27記載の製剤。
【請求項33】
該投与製剤が、対象の胃を通過した後に、メトホルミンを放出する、請求項24記載の製剤。
【請求項34】
該投与製剤が、即時放出投与製剤に比べて、投与量の75%未満のメトホルミンの相対的バイオアベイラビリティを生じる、請求項24記載の製剤。
【請求項35】
該投与製剤が、即時放出投与製剤に比べて、投与量の50%未満のメトホルミンの相対的バイオアベイラビリティを生じる、請求項34記載の製剤。
【請求項36】
該投与製剤が少なくとも1種類の付加的な製薬的活性化合物をさらに含む、請求項24記載の製剤。
【請求項37】
該少なくとも1種類の付加的な製薬的活性化合物が便秘を緩和することができる、請求項36記載の製剤。
【請求項38】
該少なくとも1種類の付加的な製薬的活性化合物がアカルボースである、請求項36記載の製剤。
【請求項39】
アカルボースが即時放出及び調節放出から選択された形態である、請求項38記載の製剤。
【請求項40】
該投与製剤が錠剤形である、請求項24記載の製剤。
【請求項41】
該投与製剤が約50mg〜約3gの範囲内の1日量を供給する、請求項24記載の製剤。
【請求項42】
該1日量が単回投与量及び分割投与量から選択される、請求項41記載の製剤。
【請求項43】
メトホルミン又はその製薬的に受容される塩の治療有効量と、メトホルミンの放出を制御するための少なくとも1種類の製薬的に受容される成分を含む調節放出製薬的錠剤であって、約6.5以下のpHを有する媒質中で、約2時間後に、メトホルミンの約10%未満が放出される溶解プロファイルを示す調節放出錠剤。
【請求項44】
メトホルミン又はその製薬的に受容される塩の治療有効量と、メトホルミンの放出を制御するための少なくとも1種類の製薬的に受容される成分を含む調節放出製薬的錠剤であって、約5以下のpHを有する媒質中で、約2時間後に、メトホルミンの約10%未満が放出される溶解プロファイルを示す調節放出錠剤。

【公表番号】特表2008−533127(P2008−533127A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501452(P2008−501452)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際出願番号】PCT/IB2006/002233
【国際公開番号】WO2007/007189
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(506377248)エイジーアイ・セラピューティクス・リサーチ・リミテッド (8)
【Fターム(参考)】