説明

懸濁された粒状物を含む酸性化されたタンパク質飲料、および、それらの製造方法

酸性化されたタンパク質飲料における、カルボキシメチルセルロース(セルロースガム)と組み合わせたジェランガムの使用を説明する。また、セルロースガムとジェランガムとの組み合わせを含む酸性化されたタンパク質飲料、および、これらの飲料の製造方法も説明する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
酸性化されたタンパク質飲料には、一般的に、4種の親水コロイド、すなわちペクチン、セルロースガム、大豆繊維またはアルギン酸プロピレングリコール(PGA)のうち少なくとも1種が含まれている。このような主としてタンパク質粒状物の安定化に関する目的のためにそれらを使用することを説明した出版物が多数ある。上述の親水コロイドは酸性環境におけるタンパク質の変性を防ぐため、酸性化されたタンパク質飲料は選択的に上述の親水コロイドの安定剤としての使用を伴う。上述の親水コロイドが存在しないと、過剰なタンパク質凝集が繰り返し起こり、それにより沈殿または凝固が生じ、感覚刺激面での特性が損なわれる。
【0002】
上述の親水コロイドは、ミセル状態になったタンパク質の大きさを有効に最小化するため、これらのタイプの飲料においてタンパク質に対する作用の安定化を提供する。それにより、ストークスの法則の原理に従ってタンパク質懸濁の安定性の改善がもたらされる。粒状物が小さければ小さいほど、懸濁はより有効になる。従って、大きい、および/または、重い粒状物は、それほど有効に懸濁することができない。結果として、大きい、または、重い粒状物を含む酸性化されたタンパク質飲料は、高度な擬似塑性と適切な弾性率を示す強化された粘度特性を必要とする。
【0003】
食品産業において、特に大豆および乳飲料の加工において、果肉、繊維、カルシウムまたはその他の栄養価を高めるための無機質のような粒状物の懸濁が長い間求められてきた。これらの飲料のなかでも、特に酸性タイプのものが問題を有する。親水コロイドの多くが、より高度な懸濁性を示す粘度特性を生じさせると予想され、そのためにタンパク質を安定化する親水コロイドのタンパク質保護効果を増大させるが、期待される流動学的な強化を生じさせずに、このような保護効果に本質的に負の作用をもたらす傾向がある。例によって従来の懸濁化剤、例えばセルロースガム、グアール、キサンタンガム、さらには澱粉でさえも試みられてきたが、常に、消費者にとって好ましくない悪い食感、および、ざらざらしたような、または、凝集を起こしたような外観になる。
【0004】
ジェランガムは、レオロジー改質剤として世界的な人気を得ている。これらは液体に改善された降伏応力を付与するために、極めて有効な懸濁化剤として知られている。静止状態で、ジェランガムは高粘性を有するが、かき乱したり、または、撹拌したりすると、この高い粘度は散逸し、偽塑性の挙動を示す。この偽塑性の挙動によって、過度な食感として示される感知できるほどの高すぎる粘度を付与することなく粒状物を懸濁させる。これは、それらの二重の性質、すなわち偽塑性(ずり減粘)、および、懸濁性の性質のために、「流動ゲル」と称されることが多い。また、その他の親水コロイド、例えば寒天、アルギン酸塩、カラギーナン、および、低メトキシペクチンも、この流動ゲルの挙動を示す。ジェランガムは優れた懸濁性を付与するが、典型的には、酸性環境で単独で安定剤として用いられる場合にタンパク質凝集を促進するため、酸性化されたタンパク質飲料において商業的に用いられてこなかった。
【0005】
飲料産業においては、これらに限定されないが、懸濁された粒状物を含む酸性の乳または大豆飲料などの酸性のタンパク質飲料を提供することが望ましい。本発明は、ジェランガムをセルロースガムと組み合わせて使用するすることを対象とする。より具体的には、本発明は、ジェランガムによって提供される流動ゲルの挙動、それと共に、セルロースガムによって提供されるタンパク質および粒状物の懸濁の同時の安定化を利用した酸性化されたタンパク質飲料を対象とする。
【発明の開示】
【0006】
発明の簡単な要約
酸性化されたタンパク質飲料は、それらの美味しい味、便利さ、および、健康によい栄養分を含むイメージから、人間の食品の選択肢として主要な発展中の分野の代表である。これらの飲料の新しい技術革新は、果汁の果肉および嚢、切断した果実片、ゼリーの小片、穀類の粒状物、野菜由来の繊維状物質、食物繊維、不溶性の無機質などを包含させること等の新規の特徴を追加するために系を拡張する開発を必要とする。本発明より以前は、酸性化されたタンパク質飲料の安定化において、わずか数時間もの短時間でも、または、滅菌タイプの製品の長い貯蔵寿命中でも、大きい、および/または、高濃度の粒状物の懸濁を維持することは実用的ではなかった。酸性化されたタンパク質飲料を安定化する現行技術は、保護コロイドの使用に依存しており、このような保護コロイドを使用することによって、ミセル状の、または、類似の高度に微粉化したタンパク質粒状物を凝集または合体が起こらないように維持することができ、これは、粒状物が、ストークスの法則に従って懸濁されるのに十分な程度に小さい状態を保つような吸着メカニズムによるものと考えるのが一般的である。保護コロイドのうちタンパク質に吸着されていない部分は、小さい、もしくは大きい粒状物、または、さらにはより大きいタンパク質粒状物を懸濁させるのに必要な構造を提供する能力が低い。タンパク質またはタンパク質群のタイプおよび品質に応じて有効なタンパク質の保護を制御するある種の原理があり、この原理は、イオン性およびpH環境、上記作用を提供するのに用いられる多糖類の固有の特徴、および、適用されるプロセス条件に関連する。実際に、(明らかに)過剰な、または、不適切な電荷の立体配置を示すある種の多糖類は、タンパク質の合体を激化させ、さらに酸性化されたタンパク質飲料において一般的に認められているそれらの機能を果たすための既知の保護性の親水コロイドの能力を損なうことが何度も示されている。
【0007】
構造形成性のコロイド状に分散した多糖類は、架橋による懸濁のメカニズム(これはしばしば、「流動ゲル」または「不連続性の(interrupted)ゲル」と称される)を形成することが知られており、このようなメカニズムは、強い擬似塑性および降伏点を示し、さらに、感知される粘度に驚くほど少ない作用しか与えずに、キサンタンガムのような非構造形成性の多糖類を用いるよりもかなり大きい粒状物を懸濁できる強力な能力を有することが実証されている。流動ゲルの技術は、中性pHの大豆および牛乳飲料、および、タンパク質を含まない飲料(例えば、果実飲料)においては、数種のコロイドおよびそれらの組み合わせを用いることによって十分に確立されている。
【0008】
一般的には、従来の酸性化されたタンパク質飲料の製造方法によれば、その他の多糖類が不適切な電荷および/または静電ポテンシャルを有するために、タンパク質のミセルに吸着する保護コロイドの能力を妨害する可能性があると考えられている。実際にこれらは、凝集を予防するというよりむしろ、凝集を促進することが一般的である。
【0009】
典型的には、ジェランガムは、アニオン性の性質を有しており、酸性環境で用いられる場合にタンパク質凝集を促進するが、セルロースガム、ペクチン、大豆繊維およびアルギン酸プロピレングリコールは、同様にアニオン性であり、タンパク質のミセルの凝集を過剰に促進することなく酸性飲料での使用が成功している。低いアニオン性か、ほぼ中性の電荷を有するガム類(例えばグアール、および、ローカストビーンガム)と、ジェランガムとの組み合わせ、または、従来、より高度なアニオン性を有するガム類、例えばキサンタンガムと、ジェランガムとの組み合わせは、酸性化されたタンパク質飲料での使用には不適切であった。このような当業界における過去の観察に基づけば、2種のアニオン性親水コロイドが、酸性飲料における粒状物の懸濁に有用であると予想されることは、予想外と言えるだろう。さらに、高アシルまたは低アシル型ジェランガムはいずれも、直接酸性化した、または、発酵させた酸性化された乳飲料のいずれかにおける懸濁助剤として、単独でも、または、他の親水コロイドと組み合わせても高い価値を有していたことは予想外であった。
【0010】
酸性化されたタンパク質飲料の非限定的な例として、乳製品および大豆ベースの酸性化されたタンパク質飲料があるが、これらににおけるジェランガムの使用は、酸性化されたタンパク質飲料の生産中にセルロースガムの保護コロイド活性を妨害しないこと、および、この組み合わせは、便利な一段階の操作で活性化することができることが実証された。その結果として、ジェランガムの高度な懸濁性を有する架橋された分子ネットワークが飲料中全体に分配されて、大きい粒状物を懸濁するかなり強い能力を提供することができる。
【0011】
構造形成性の多糖類と保護コロイドとの混合物が導入されると、保護コロイドは水和されているが、多糖類は分散されているが水和していない形態のままになるか、または、可溶化されて架橋が可能な状態になり、それによりそれらが架橋され得るようになり、従って、いずれも同様に、乳タンパク質分と組み合わされる前に単に分散されただけのような状態となり機能しない。あるいは、多糖類は、分散液として、または、架橋された流動ゲルの形態で別個に添加してもよいし、保護コロイドは、別個の溶液として添加してもよい。主として加熱、均質化およびpH調整による従来の保護コロイドのタンパク質吸着を促進する工程が完了したら、酸性化されたタンパク質飲料は、ジェランガムを水和する加熱条件に晒される。保護コロイドの最大限の活性、および、流動ゲルの生産は、冷却および剪断中に起こると考えられる。酸性化されたタンパク質飲料が動的な乱流によって冷却される条件に晒されると、ジェランガムが構造化したネットワークまたは流動ゲルを形成し、それによって、動的な冷却条件およびその特定の濃度によって決定される降伏点を有する高い擬似塑性のために懸濁が改善される。完成して包装された酸性化されたタンパク質飲料の加熱前または加熱後のどちらに大きい粒状物が導入されても、酸性化されたタンパク質飲料は、適用された条件の滅菌状態に応じて、劇的に改善された懸濁性および高い有用性を示すと予想される。
【0012】
最終的な長期保存用の包装中で、または、最低限でも滅菌貯蔵系中で粒状物の懸濁を達成するために、均質化後に、ただし超高温処理の前に、酸性化されたタンパク質飲料に直接、粒状物(非限定的な例の1つは、オレンジ果肉である)を導入することが、特に望ましい。
【0013】
特定のグレードおよび濃度のセルロースガムとジェランガムとの組み合わせで安定化された酸性化されたタンパク質飲料は、ホエー分離に対する耐性、および、低タンパク質の酸性化されたタンパク質飲料中での堆積に関して肯定的な結果を示した。それと同様にして、この系は、オレンジ果肉の有効な懸濁の実証において有意な効果を示したことから、大規模と小規模のいずれの場合においても粒状物を包含させることに用いることができる。このセルロースガム/ジェランガム系は、標準的なセルロースガムベースの長い貯蔵寿命の超高温処理済み酸性化されたタンパク質飲料に適用でき、最低限でも冷蔵の日持ちのしない製品に適用できる。これらのセルロースガム/ジェランガムの組み合わせは、滅菌した酸性化されたタンパク質飲料系、および、低温殺菌した酸性化されたタンパク質飲料系の両方において用途を有する。
【0014】
追加の物質を存在させなくても、粒状物が懸濁された安定な酸性化された乳飲料が達成された。本明細書において、単一のガム類の代わりにセルロースガムとジェランガムとの組み合わせを用いて酸性化された乳飲料中にオレンジ果肉を懸濁することを説明する。本明細書において説明される1つの方法は、保護コロイドを水和するための熱処理を必要とし、その他のより簡単な系は、保護コロイドの低温での水和のみを必要とするものである。
【0015】
0%より大きく5%までのタンパク質、約0.2%〜約1.0%のセルロースガムを含む酸性化された乳飲料中でタンパク質変性またはホエー分離が少ない安定な酸性化された乳飲料は、約0.01〜約0.05%のジェランガムレベルに依存せずに、十分な果肉の懸濁を提供する。酸性化された乳飲料中にオレンジ果肉を短時間懸濁するためには、少なくとも約0.02%のジェランガムが必要である。オレンジ果肉を長時間懸濁するためには、少なくとも約0.025%のジェランガム、より好ましくは約0.03%のジェランガム、最も好ましくは約10.05%のジェランガムが必要である。
【0016】
低温での水和系、および、加熱された水和系の両方において、セルロースガムは、酸性化された乳飲料用の安定剤/懸濁剤としてジェランガムと共に十分に機能し得ることがわかっている。場合によっては、低温での水和系を用いたある特定の状況において、セルロースガムが好ましい可能性がある。
【0017】
本発明は、酸性化されたタンパク質飲料中でタンパク質を安定化し、粒状物を懸濁するための、セルロースガムと組み合わせたジェランガムの使用を対象とする。
【0018】
また本発明は、セルロースガムと組み合わせてジェランガムを含む酸性化されたタンパク質飲料も対象とする。
【0019】
本発明はさらに、食感を犠牲にすることなく粒状物(非限定的な例の1つは、オレンジ果肉である)が懸濁された、セルロースガムと組み合わせてジェランガムを含む酸性化されたタンパク質飲料を対象する。
【0020】
本発明はさらに、セルロースガム、および、ジェランガムを含む酸性化されたタンパク質飲料の製造方法を対象とする。
【0021】
前述の要約、加えて以下の本発明の好ましい実施態様の詳細な説明は、表1〜20と共に読めばよりよく理解できるものと思われる。しかし当然ながら、本発明は、示された正確な配置および手段に限定されないこととする。
発明の詳細な説明
【実施例】
【0022】
酸性化された乳飲料中へのオレンジ果肉の懸濁を達成するために、2種の初発の系を試験した(下記の実施例1を参照)。系1は、ナトリウムセルロースガムと共にブレンドされた高アシル型ジェランガムであり、系2は、高メトキシペクチンであり、これらを超高温滅菌した酸性化された乳飲料中で比較した。その結果は、意外なことに、ジェランガムは、他の親水コロイドを含む酸性化された乳飲料に直接用いられる懸濁助剤として高い価値を有していたことを実証した。
実施例1
【0023】
pH4.0で1%タンパク質を含む酸性化された乳飲料中での果肉およびタンパク質の懸濁を評価するために、サンプルを製造した。高アシル型ジェランガムとセルロースガムとで安定化したブレンド、および、高アシル型ジェランガムと高メトキシペクチンとで安定化したブレンドで比較を行った。
【表1】

【0024】
サンプルの製造方法は以下の通りである:
1.脱脂した乳固形分の粉末を50℃の脱イオン水に高速ミキサーを用いて分散させて20%のスキムミルク溶液を作製し、これを周囲温度に冷却した。
2.ペクチンまたはセルロースガム粉末を75℃の脱イオン水に分散させ、シルバーソン(Silverson(R))ミキサーを用いて撹拌して、各親水コロイドの2%溶液を作製した。周囲温度に冷却した。
3.無脂肪ドライミルク(NFDM)溶液、糖、および、ジェランガム、および、ペクチンまたはセルロースガム溶液を組み合わせ、シルバーソン(R)ミキサーを用いて撹拌した。
4.オレンジ果汁濃縮液を添加し、20%クエン酸溶液を用いて撹拌しながらpHを4.0に調節した。
5.この飲料を70℃の予熱温度で処理し、2600psi(一段階)で均質化し、最終的に121℃で3.0秒間熱処理した。
6.8〜250mLのポリエチレンテレフタラート(PETG)ボトルに25〜27℃で無菌的に充填した。(注釈:その酸性化された乳飲料中での懸濁性を評価するために、4個のボトルに、10gの追加のオレンジ果肉を含ませた)。
【0025】
全てのサンプルを5℃で保存した。1週間後、保存したサンプルを5℃および25℃で評価した(室温のサンプルは、冷蔵条件から取り出して、室温で3日保持した後に観察した)。タンパク質およびオレンジ果肉の安定性について、目視での観察を両方の温度で行った。これらの観察は、表2に記載した通りである。6および60rpmの両方で遠心して1分後に、LVブルックフィールド(R)粘度計(スピンドル1)を用いて、5℃および25℃で上記飲料(オレンジ果肉を含まない)の粘度を測定した。pH値も、25℃で報告した。表3を参照。
【表2】

【表3】

【0026】
この特定の工程によれば、高アシル型ジェランガムを様々な使用レベルで組み合わせた様々な使用レベルの高メトキシペクチンは、オレンジ果肉の懸濁において有効ではなく、さらに飲料の安定性も十分ではなかった。
【0027】
高アシル型ジェランガムを組み合わせてセルロースガムを用いた酸性化された乳飲料の2種の組み合わせは、改善されたオレンジ果肉の安定性および懸濁を示した。セルロースガムをある程度の粘度になるまで飲料に添加してペクチンベースの系と比較したが、これは、室温では5℃と比較してそれほど有意ではなかった。サンプル5(5/12)中の0.35%セルロースガム濃度の粘度は、サンプル6(5/12)中の0.40%濃度よりも高かったが、これらのジェランガムと組み合わせた場合のセルロースガム濃度はいずれも、飲料中で安定した果肉およびタンパク質をもたらした。
実施例2
【0028】
様々なセルロースガムの水和方法を用いたセルロースガム、および、高アシル型ジェランガムを用いて安定化された酸性化された乳飲料中の果肉およびタンパク質の安定性を決定するために、さらに、最適なセルロースガムの高アシル型ジェランガムに対する比率を評価するためにサンプルを製造した。
【表4】

【表5】

【0029】
方法Aは、実施例1に記載のプロセスと同じである。
【0030】
方法Bは、以下に記載した通りである。
1.脱脂した乳固形分の粉末と乾燥セルロースガムとを50℃の脱イオン水に高速ミキサーを用いて分散させ、20%のスキムミルク−セルロースガム溶液を作製した。周囲温度に冷却した。
2.NFDMおよびセルロースガムの溶液と、糖およびジェランガムを組み合わせ、シルバーソン(R)ミキサーを用いて撹拌した。
3.オレンジ果汁濃縮液を添加し、20%クエン酸溶液を用いて撹拌しながらpHを4.0に調節した。
4.この飲料を70℃の予熱温度で処理し、2600psi(一段階)で均質化し、最終的に121℃で3.0秒間熱処理した。
5.8〜250mLのPETGボトルに25〜27℃で無菌的に充填した。(注釈:その酸性化された乳飲料中での懸濁性を評価するために、4個のボトルに、10gの追加のオレンジ果肉を含ませた)。
【0031】
タンパク質およびオレンジ果肉の懸濁性能を比較するために、様々なセルロースガムの高アシル型ジェランガムに対する比率を用いて酸性化された乳飲料を製造した。これらの飲料は、pH4.0で1.0%のタンパク質が提供されるように配合された。表4および5を参照。
【0032】
2種の異なる方法を用いて、飲料にセルロースガムを包含させた。ペクチンに関する製造方法(方法A)と同様にして、別個のセルロースガムの熱い溶液を製造した。第二の方法は、50℃の無脂肪ドライミルク粉末溶液に乾燥セルロースガムを直接添加し、この系を水和させることを含む(方法B)。いずれの方法においても、ガムを入れる段階で天然のジェランガムを水和する試みは行われなかった。
【0033】
充填した後、全ての飲料を5℃で保存した。1週間後、完成した飲料を5℃および25℃で観察した(周囲温度のサンプルは、冷蔵条件から取り出して、室温で3日保持した後に観察した)。表6および7を参照。
【0034】
方法Aのバッチについて、バッチ5および5aは優れた安定性を示したが、バッチ6は、ある程度のわずかな沈降を有し、これは、高アシル型ジェランガム濃度が不十分なために起こった可能性がある。表6を参照。また方法Bにおいても、バッチ7〜9は優れた安定性を示しており、これは、いずれの方法もセルロースガムを水和するのに十分であり、どちらも酸性化された乳飲料の安定化に用いることができることを示唆している。
【0035】
バッチ10〜15の粘度はバッチ5〜9よりも有意に低く、さらに安定ではなかった。表6、7、8および9を参照。バッチ10〜15における高アシル型ジェランガムの使用レベルは、これらのサンプルにとって低すぎると考えられ、高アシル型ジェランガムのレベルは少なくとも0.03%であると予想される。
【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

実施例3
【0036】
0.03%の高アシル型ジェランガムと組み合わせた0.40%高メトキシペクチンを用いた安定化と比較して、酸性化された乳飲料(1.5%タンパク質)の安定性を実証するために、0.03%の高アシル型ジェランガムと組み合わせたセルロースガムの様々な比率を用いてサンプルを製造した。
【表10】

【0037】
この方法は、脱脂した乳固形分の粉末を25℃の脱イオン水に分散させ、20%のスキムミルク溶液を作製することを含む。脱脂した乳固形分の粉末、および、水を高速ミキサーを用いて50℃で5分間混合し、続いて周囲温度に冷却した。ペクチンまたはセルロースガム粉末を、50℃の脱イオン水に高速ミキサーを用いて分散し、2%溶液を作製した。次に、ペクチンまたはセルロースガムを5分間混合し、そのまま冷却させた。このペクチンまたはセルロースガム溶液を、スキムミルク溶液に添加し、2〜3分撹拌し、合わせた溶液の温度が約25℃であることを確認し、果汁を添加した。糖および高アシル型ジェランガムを乾式混合し、その後合わせた溶液を添加した。オレンジ果汁濃縮液を撹拌しながら添加し、pHを50%(w/v)クエン酸溶液を用いて撹拌しながら4.0に調節した。次にこの飲料を、70℃の予熱温度で処理し、2600psi(第一段階において2100、第二段階において500)で均質化し、最終的に121℃で4秒間加熱し、続いて周囲温度に冷却した。これらの飲料をポリエチレンテレフタラートのコポリエステル製のナルゲン(Nalgene(R))ボトルに30℃で無菌的に充填し、サンプルを室温で保存した。
【0038】
室温で貯蔵してから4日後に、サンプルを外観および口当たりに関して評価した。高メトキシペクチンのコントロールは、高アシル型ジェランガムの存在下でも容器の底に堆積が出現したが、明らかな堆積にもかかわらず極めて滑らかな食感であった。0.25%セルロースガムベースの飲料に関して、明らかな堆積はみられなかったが、食感は不快なほどざらざらしており、これから、酸性化工程中にタンパク質を被覆するセルロースガムの量が不十分であったことが示された。セルロースガム濃度を0.32%に増加させたところ、サンプルは継続的に安定した懸濁および優れた食感を示した。0.40%セルロースガム、および、0.03%の高アシル型ジェランガムを用いた場合、サンプルは十分に安定であり、かつ滑らかであった。
【0039】
粘度および弾性率の測定を20℃で行い、これらの条件下での安定剤の性能を試験した。表11を参照。ペクチンで安定化されたサンプルは、0.01ダイン/cmの極めて低い弾性率値を示したが、これは、この安定剤の系で観察されたように明らかな劣った懸濁性を説明している。一方、セルロースガムで安定化されたサンプルは、それよりかなり高い弾性率値を有しており、改善された安定剤の系(0.32%および0.4%セルロースガム、さらに0.03%の高アシル型ジェランガムを含む)は1.0ダイン/cmに近い値を有していた。セルロースガム/高アシル型ジェランガム系における高弾性率は、十分なタンパク質の懸濁を提供する。また、セルロースガム/高アシル型ジェランガムで安定化されたサンプルも、高メトキシペクチン/高アシル型ジェランガムで安定化されたサンプルよりもわずかに高い粘度値を有していたが、これらの値は15cPを超えなかった。
【表11】

実施例4
【0040】
セルロースガム/高アシル型ジェランガムで安定化された酸性化された乳飲料(1.5%タンパク質)の安定性に対する充填温度の作用を決定した。
【表12】

【表13】

【0041】
この方法は、脱脂した乳固形分の粉末を25℃の脱イオン水に分散させて、20%のスキムミルク溶液を作製することを含む。高速ミキサーを用いて、50℃の温度を5分間保持し、続いて周囲温度に冷却した。高速ミキサーを用いてセルロースガム粉末を50℃の脱イオン水に分散し、2%溶液を作製し、5分間混合し、冷却させ、セルロースガム溶液をスキムミルク溶液に添加し、約2〜3分間撹拌した。合わせた溶液の温度が約25℃であることを確認し、果汁を添加した。続いてこの合わせた溶液に、乾式混合した糖および高アシル型ジェランガムを添加した。オレンジ果汁濃縮液を撹拌しながら添加し、pHを50%(w/v)クエン酸溶液を用いて撹拌しながら4.0に調節した。これらの飲料を70℃の予熱温度で処理し、2600psi(第一段階において2100、第二段階において500)で均質化し、最終的に121℃で加熱した。次にこの飲料を、ポリエチレンテレフタラートのコポリエステル製のナルゲン(R)ボトルに30℃で無菌的に充填するか、または、ガラスボトルに85℃で2分間で高温充填した。これらのサンプルを室温で4日間保存し、評価した。
【0042】
4日後の目視検査によれば、どちらのサンプルも、優れた安定性を実証したことが示された。表14を参照。周囲温度で充填されたサンプル、および、高温充填されたサンプルはいずれも、口当たりが滑らかであった。2種のサンプルを比較した弾性率のデータから、高い弾性率値であれば、タンパク質を懸濁状態で維持することができるが、高温充填されたサンプルの弾性率は、周囲温度で充填されたサンプルよりも高いことが実証された。加えて、高温充填されたサンプルの粘度は、周囲温度で充填されたサンプルよりも高かった。これらのデータから、いずれの充填温度も、セルロースガム/高アシル型ジェランガムで安定化された酸性化された乳飲料の充填に適していることが示唆された。
【表14】

実施例5
【表15】

【0043】
この方法は、脱脂した乳固形分の粉末を25℃の脱イオン水に分散させて、20%スキムミルク溶液を作製することを含む。高速ミキサーを用いて、この溶液を50℃の温度に加熱し、これを5分間保持し、続いてその温度を周囲温度に冷却した。セルロースガム粉末を高速ミキサーを用いて50℃の脱イオン水に分散し、2%溶液を作製し、5分間混合し、冷却させた。セルロースガムのスラリーを、スキムミルク溶液に添加し、2〜3分撹拌した。合わせた溶液の温度が約25℃であることを確認し、果汁を添加した。この合わせた溶液に、乾式混合した糖および高アシル型ジェランガムを添加した。オレンジ果汁濃縮液を撹拌しながら添加し、pHを、それぞれのpH(3.5、3.8、4.0、4.2または4.4)に50%(w/v)クエン酸溶液を用いて撹拌しながら調節した。これらの飲料を70℃の予熱温度で処理し、2600psi(第一段階において2100、第二段階において500)で均質化し、最終的に121℃で4秒間加熱し、続いて冷却した。これらの飲料をポリエチレンテレフタラートのコポリエステル製のナルゲン(R)ボトルに30℃で無菌的に充填した。これらのサンプルを室温で4日間保存し、評価した。
【0044】
4日後、pH3.5で処理されたサンプルは、飲料中全体に大きい粒状物が懸濁された状態であった。これらの飲料は、口当たりの評価において極めてざらざらしたと評価された。pHが高くなると、タンパク質粒状物はかなり小さくなり、pH3.8およびそれより高いpHで飲料に滑らかな口当たりが得られた。表16を参照。
【0045】
弾性率のデータから、pH3.8およびそれより高いpHでのサンプルは安定していたことが示された。pHを3.8から4.4に増加させると、粘度が増加した。これらのサンプルは、目に見える堆積を出現させることなく十分に安定しており、これは、セルロースガム/高アシル型ジェランガムで安定化された酸性化された乳飲料の有効なpH範囲は、3.8〜4.4であったことを示唆している。表16を参照。
【表16】

実施例6
【0046】
この方法は、脱脂した乳固形分の粉末または大豆タンパク質分離物を25℃の脱イオン水に分散させ、20%のスキムミルク溶液、または、5%の大豆タンパク質分離を含む溶液を作製したことを含む。高速ミキサーを用いて、これらのスキムミルク溶液または大豆タンパク質分離物を含む溶液を、それぞれ50℃または70℃に加熱し、それぞれ50℃または70℃のいずれかで5分間保持し、続いて周囲温度に冷却した。高速ミキサーを用いてセルロースガム粉末を50℃の脱イオン水に分散し、2%溶液を作製し、5分間混合し、冷却させた。セルロースガム溶液をスキムミルク溶液に添加し、2〜3分撹拌した。合わせた溶液の温度が約25℃であることを確認し、果汁を添加した。この合わせた溶液に、乾式混合した糖および高アシル型ジェランガムを添加した。オレンジ果汁濃縮液を撹拌しながら添加し、pHを50%(w/v)クエン酸溶液を用いて撹拌しながら4.0に調節した。これらの飲料を70℃の予熱温度で処理し、2600psi(第一段階において2100、第二段階において500)で均質化し、最終的に121℃で4秒間加熱し、続いて周囲温度に冷却した。これらの飲料を、ポリエチレンテレフタラートのコポリエステル製のナルゲン(R)ボトルに30℃で無菌的に充填し、これらのサンプルを室温で4日間保存し、評価した。表17を参照。
【表17】

【0047】
試みられた全ての試験において滑らかな口当たりが観察され、優れた安定性を示した。表18を参照。これから、用いられたセルロースガムの濃度は、加工中のタンパク質を安定化するのに十分であったことが示された。これは、得られた弾性率値に一致する。乳タンパク質から大豆タンパク質の系に切り換えたところ、粘度が増加した。
【表18】

実施例7
【0048】
0.5%、1.0%、2.0%および3.0%のタンパク質濃度を用いた場合、タンパク質含量の変化が、0.40%セルロースガム、および、0.03%高アシル型ジェランガムで安定化された酸性化された乳飲料の安定性をどのようにしてもたらすかを決定するために、サンプルを製造した。この方法は、脱脂した乳固形分の粉末、または、大豆タンパク質分離物を25℃の脱イオン水に分散させ、20%のスキムミルク溶液、または、5%の大豆タンパク質分離物を含む溶液を作製したことを含む。高速ミキサーを用いて、スキムミルク溶液または大豆タンパク質分離物を含む溶液を、それぞれ50℃または70℃に加熱し、それぞれ50℃または70℃のいずれかで5分間保持し、続いて周囲温度に冷却した。セルロースガム粉末を高速ミキサーを用いて50℃の脱イオン水に分散し、2%溶液を作製し、5分間混合し、冷却させた。セルロースガム溶液をスキムミルク溶液に添加し、2〜3分撹拌した。合わせた溶液の温度が約25℃であることを確認し、果汁を添加した。この合わせた溶液に、乾式混合した糖および高アシル型ジェランガムを添加した。オレンジ果汁濃縮液を撹拌しながら添加し、pHを50%(w/v)クエン酸溶液を用いて撹拌しながら4.0に調節した。これらの飲料を70℃の予熱温度で処理し、2600psi(第一段階において2100、第二段階において500)で均質化し、最終的に121℃で4秒間加熱し、続いて周囲温度に冷却した、これらの飲料を、ポリエチレンテレフタラートのコポリエステル製のナルゲン(R)ボトルに30℃で無菌的に充填し、これらのサンプルを室温で4日間保存し、評価した。表19および20を参照。
【表19】

【0049】
サンプルを試験したところ、0.5%タンパク質のサンプルは、高タンパク質濃度のサンプルよりもわずかに感知される食感を有していた。1.0%および2.0%タンパク質のサンプルは滑らかな口当たりであったが、3.0%タンパク質はざらざらした口当たりであった。これらのデータから、0.5%タンパク質のサンプルにおいて、このタンパク質含量を安定化させるにはより少ないセルロースガムしか必要ではないと予想されるが、3.0%タンパク質のサンプルは、このようなタンパク質含量を安定化させるにはより多くのセルロースガムを必要とすると予想されることが示唆された。全てのサンプルは、堆積を出現させることなく十分に安定しており、これは、1.0ダイン/cmより大きい弾性率値に一致していた。粘度値は、1.0%および2.0%タンパク質のサンプルにおいて最も低かった。
【表20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースガム、および、ジェランガムを含む、酸性化されたタンパク質飲料。
【請求項2】
前記セルロースガムが、約0.20%〜約1.0%で存在し、前記ジェランガムが、約0.01〜約0.05%で存在する、請求項1に記載の、酸性化されたタンパク質飲料。
【請求項3】
前記セルロースガムが、約0.25%で存在する、請求項2に記載の、酸性化されたタンパク質飲料。
【請求項4】
前記セルロースガムが、約0.32%で存在する、請求項3に記載の、酸性化されたタンパク質飲料。
【請求項5】
前記セルロースガムが、約0.40%で存在する、請求項3に記載の、酸性化されたタンパク質飲料。
【請求項6】
前記ジェランガムが、約0.03%で存在する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の、酸性化されたタンパク質飲料。
【請求項7】
粒状物をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の、酸性化されたタンパク質飲料。
【請求項8】
前記粒状物が、オレンジ果肉である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の、酸性化されたタンパク質飲料。
【請求項9】
前記飲料が、酸性の乳飲料である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の、酸性化されたタンパク質飲料。
【請求項10】
前記飲料が、酸性の大豆飲料である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の、酸性化されたタンパク質飲料。
【請求項11】
タンパク質濃度が、約0.05%〜約5.0%である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の、酸性化されたタンパク質飲料。
【請求項12】
前記飲料が、少なくとも1週間、室温で安定である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の、酸性化されたタンパク質飲料。
【請求項13】
前記飲料が、少なくとも4ヶ月、5℃で安定である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の、酸性化されたタンパク質飲料。
【請求項14】
約0.10ダイン/cmより大きい弾性率値を有する、請求項1に記載の酸性化されたタンパク質飲料。
【請求項15】
前記弾性率が、約1.0ダイン/cmより大きい、請求項14に記載の、酸性化されたタンパク質飲料。
【請求項16】
タンパク質、セルロースガムおよびジェランガムを組み合わせる工程;
粒状物を添加する工程;
pHを調節する工程;および、
適切な熱処理をする工程、
を含む、酸性化されたタンパク質飲料の製造方法。
【請求項17】
タンパク質のベースを水に分散させ、約50℃で混合する工程;
水にセルロースガム粉末を分散させ、約50℃で混合することによって、セルロースガム溶液を製造する工程;
タンパク質の分散液、および、セルロースガム溶液を、周囲温度に冷却する工程;
タンパク質の分散液、および、セルロースガム溶液を、組み合わせる工程;
ジェランガムと糖とを乾式混合し、続いてこのジェランガムと糖とのブレンドを、タンパク質/セルロースガム溶液に添加する工程;
この組み合わせに粒状物液を添加し、pHを約4.0に調節する工程;
最終的なタンパク質、セルロースガム、ジェランガム/糖および粒状物の組み合わせを、約70℃に加熱し、均質化し、約121℃に加熱することによって処理する工程;および、
ほぼ周囲温度に冷却する工程、
を含む、酸性化されたタンパク質飲料の製造方法。
【請求項18】
前記タンパク質のベースが、乳である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記乳が、還元乳溶液である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記タンパク質のベースが、豆乳溶液である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記豆乳溶液が、5%の大豆タンパク質分離物を含む溶液である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記粒状物の溶液が、オレンジ果汁である、請求項17〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記粒状物の溶液を前記組み合わせに添加した後、pHが3.5に調節される、請求項17〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記pHが、3.8に調節される、請求項17〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記pHが、4.2に調節される、請求項17〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記pHが、4.4に調節される、請求項17〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記pHが、50%w/vクエン酸溶液を用いて調節される、請求項17〜26のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−540832(P2009−540832A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516632(P2009−516632)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/070844
【国際公開番号】WO2007/149719
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(506128352)シーピー・ケルコ・ユーエス・インコーポレーテッド (18)
【Fターム(参考)】