説明

懸濁性入浴剤

【課題】この発明は人体に悪影響を与えず、雑菌の繁殖を抑制する、安価で安定性の高い懸濁性入浴剤を提供するものである。
【解決手段】この懸濁性入浴剤は、少なくともヒドロキシカルボン酸銀を含有することを特徴とする。このような懸濁性入浴剤であると、養分となるコロイド粒子と共に銀イオンを、雑菌が吸収し、雑菌の繁殖を積極的に抑制することができる。したがって、若干冷めた湯を翌日沸かして使用したり、入浴に適した温度を長期間維持したりしたとしても、衛生的に使用することができる。ヒドロキシカルボン酸として、乳酸、クエン酸、リンゴ酸などを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、懸濁性入浴剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、使用時に温泉気分を演出したり、スキンケア効果を付与したりする目的で、浴湯が懸濁状となるようにした入浴剤が使用されてきた。
しかしながら、入浴剤を入れたお湯は、入浴剤に入れた成分と風呂湯の温度が雑菌の繁殖に適しており、若干冷めた湯を翌日沸かして使用したり、入浴に適した温度を長期間維持したりするのは、非常に不衛生であるという問題があった。
【0003】
特に懸濁性入浴剤においては、懸濁しているコロイド成分が雑菌の栄養分となるという特段の事情が存在した。
このような問題を解決する為に抗菌作用を有する銀イオンを入浴剤中に溶解させる技術が考えられた。
【0004】
ところが、銀イオン溶出物として一般的に知られている、塩化銀やヨウ化銀は溶解度が小さく、入浴剤と共に風呂湯に溶かすことが困難であった。また、塩化銀やヨウ化銀は、塩素イオン及びヨウ素イオンが人体に悪影響を与えるという問題があった。銀イオン溶出物の中で溶解性の高いと知られている硝酸銀は、感光作用により経時で黒くなる問題があった。
このような問題を解決する為に、銀コロイドとして風呂湯に分散させる技術が考えられた。(例えば、特許文献1)
【0005】
しかしながら、銀コロイドは、使用時に銀として水中に分散され、銀イオンとして水中に分散させるには溶解度が小さく、風呂湯を抗菌するためには多量の銀コロイド溶液を添加しなければならず、コストがかかりすぎるという問題があった。銀ゼオライト等においても同様の問題があった。
【特許文献1】特開2004−161632
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は人体に悪影響を与えず、雑菌の繁殖を抑制する、安価で安定性の高い懸濁性入浴剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、この発明では次のような技術的手段を講じている。
【0008】
(請求項1記載の発明)
請求項1記載の懸濁性入浴剤は、少なくともヒドロキシカルボン酸銀を含有することを特徴とする。
銀イオンは溶解度が小さいことが技術的常識であるが、ヒドロキシカルボン酸銀は当業者の予想を上回る溶解度と製剤に対する安定性を示した。
【0009】
また、ヒドロキシカルボン酸類は生体内に広く分布する有機酸であり、塩化銀やヨウ化銀のように、人体に悪影響を与えるものではない。ヒドロキシカルボン酸とはヒドロキシ基を併せ持つカルボン酸の総称であり、ヒドロキシカルボン酸、オキシ酸、アルコール酸などと呼ばれる場合もある。使用されるヒドロキシカルボン酸として、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸等が挙げられる。
懸濁性入浴剤の状態としては、パウダー状、顆粒状、固形状、液状のいずれであっても良い。懸濁性入浴剤の添加成分として、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、溶剤、防腐剤、抗菌剤、酵素、エキス類、保湿剤、pH調整剤、キレート剤、香料、着色剤、乾燥剤等を懸濁性入浴剤の機能を損なわない範囲で配合することができる。
このような懸濁性入浴剤であると、養分となるコロイド粒子と共に銀イオンを、雑菌が吸収し、雑菌の繁殖を積極的に抑制することができる。
【0010】
(請求項2記載の発明)
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明に関し、前記ヒドロキシカルボン酸銀は水溶性銀化合物とヒドロキシカルボン酸又はその塩を混合することで作成されたものであることを特徴とする。
前記の方法でヒドロキシカルボン酸銀を作成することが好ましい。
【0011】
(請求項3記載の発明)
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明に関し、入浴剤総重量の0.03〜10.0wt%がヒドロキシカルボン酸銀であることを特徴とする。
ヒドロキシカルボン酸銀を使用することによって、銀コロイドの如く大量に使用する必要はなく、少量(入浴剤総重量の0.03〜10.0wt%)であっても、充分に効果を発揮する入浴剤となる。
【発明の効果】
【0012】
この懸濁性入浴剤は、人体に悪影響を与えず、雑菌の繁殖を抑制する入浴剤である。したがって、この入浴剤を用いた風呂湯は、雑菌の繁殖が遅く、長期間衛生的に使用することができるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、この懸濁性入浴剤を実施するための最良の形態として、実施例について詳しく説明する。
〔実施形態〕
【0014】
(1.懸濁性入浴剤について)
この懸濁性入浴剤は、ヒドロキシカルボン酸銀と懸濁成分とを組成物として含有する懸濁性入浴剤である。懸濁成分は湯中でコロイド状態となり、いわゆる「にごり湯」の入浴剤とすることができる。また、色素や顔料を配合することで浴湯に着色することができる。また、炭酸塩と有機酸を配合することにより、発泡性をもつ懸濁性入浴剤とすることもできる。
懸濁性入浴剤の状態としては、粉末状、液体状とすることができる。前記粉末状とは、パウダー状、顆粒状、錠剤のいずれであっても良い。
【0015】
懸濁性入浴剤には、ヒドロキシカルボン酸銀と懸濁成分以外に、無機塩、有機酸、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、溶剤、防腐剤、抗菌剤、酵素、エキス類、保湿剤、pH調整剤、キレート剤、香料、着色剤、乾燥剤等を入浴剤の機能を損なわない範囲で配合することができる。
【0016】
(2.懸濁成分について)
懸濁成分として、以下の3タイプを例示することができる。
1つ目のタイプは、酸化亜鉛、酸化チタンなどの無機顔料、ポリエチレン、スチレン共重合体などの高分子を懸濁化剤として用いたタイプ。
2つ目のタイプは、油性成分を乳化させた乳液タイプ
3つ目のタイプは、浴湯投入時に乳化させるソルブルオイルタイプ。
などが挙げられる。その他の懸濁成分を使用しても良い。
特に乳液タイプやソルブルオイルタイプの懸濁性入浴剤は雑菌の繁殖に適しているものであり、銀イオンの抗菌作用が大いに発揮される。
また、商品名CKW−5(癸巳化成株式会社製)、サイビノール(サイデン化学社製)など懸濁化剤が市販されている。このような原料を配合してお湯を懸濁化させることもできる。
【0017】
(3.ヒドロキシカルボン酸銀について)
以下にヒドロキシカルボン酸銀は、水溶性銀化合物とヒドロキシカルボン酸又はその塩を水溶液中で反応させ、生成されたものも使用することができる。
以下に、ヒドロキシカルボン酸と、水溶性銀化合物と、ヒドロキシカルボン酸銀の生成について述べる。
【0018】
(3−1.ヒドロキシカルボン酸について)
ヒドロキシカルボン酸は、ヒドロキシ基を併せ持つカルボン酸の総称であり、ヒドロキシカルボン酸、オキシ酸、アルコール酸などと呼ばれる場合もある。前記ヒドロキシカルボン酸は、生体内に広く分布する有機酸である。
ヒドロキシカルボン酸には脂肪族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸があり、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を使用することが好ましい。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸としてグリコール酸、ヒドロキシ酪酸、乳酸、りんご酸、クエン酸などが挙げられる。
【0019】
(3−2.水溶性銀化合物について)
水溶性銀化合物として、ハロゲン化銀及び強酸銀等が上げられる。
水溶性銀化合物として酢酸銀、硝酸銀、硫酸銀などを使用することができる。
本実施例においては、水溶性銀化合物として硝酸銀を用いた。
【0020】
(3−3.ヒドロキシカルボン酸銀の生成)
ヒドロキシカルボン酸銀はヒドロキシカルボン酸の銀塩である。
ヒドロキシカルボン酸銀は一般に市販されているものを使用することもでき、硝酸銀などの水溶性銀化合物とヒドロキシカルボン酸又はその塩を水溶液中で反応させ、生成されたものも使用することができる。
【0021】
(3−4.ヒドロキシカルボン酸銀の入浴剤中の含有量について)
ヒドロキシカルボン酸銀の配合量は、
(ヒドロキシカルボン酸銀重量)/(入浴剤の重量)=0.0003〜0.10
すなわち、粉末入浴剤のヒドロキシカルボン酸銀含有量が0.03〜10.0wt%とすることが好ましい。
【0022】
(4.上述の実施形態の効果について)
水溶性銀化合物とヒドロキシカルボン酸又はその塩を水溶液中で反応させることによって、生成されたヒドロキシカルボン酸銀は、当業者の予想を上回る溶解度と製剤に対する安定性を示した。また、ヒドロキシカルボン酸類は生体内に広く分布する有機酸であり、塩化銀やヨウ化銀や硝酸銀や硫酸銀のように、人体に悪影響を与えるものではない。
このことから、前述のヒドロキシカルボン酸銀は懸濁性入浴剤として使用することが可能なものであり、前述の入浴剤を用いた風呂湯は、雑菌の繁殖が遅く、長期間衛生的に使用することができるものとなる。特に、雑菌の繁殖が多いとされる懸濁性入浴剤には効果的である。
また、この懸濁性入浴剤は、硝酸銀のような感光作用を有する物質を使用していないので、黒くなるという経時変化を起こさないものである。
そして、黒くなるという変化を起こさないので、白濁性入浴剤などの薄い色を有する懸濁性入浴剤に用いた場合、大きな効果を奏するものである。
【実施例】
【0023】
上述の実施形態の効果を調べるため、上述の実施形態に基づき実施例1〜12の試料を作成し、従来技術として比較例1〜4の試料を作成し、安定性、溶解性、抗菌性に関する試験を行った。
前述の試験は、銀イオン溶出物の比較試験(実施例1〜6)(比較例1〜4)と、銀濃度の設定試験(実施例7〜12)との二種類条件について、以下に示す安定性試験、溶解性試験、抗菌性試験をおこなった。
【0024】
(1.試験方法・評価方法について)
先ずは、実施例1〜12、比較例1〜4の試料の全てついて行う、安定性試験、溶解性試験、抗菌性試験の試験方法及び評価方法について述べる。
【0025】
〔安定性試験〕
実施例1〜12、比較例1〜4の各試料をそれぞれガラス瓶に充てんして40℃の恒温室に1ヶ月間保管し、外観を確認した。安定性の判定は下記の基準で評価した。
○:変化なし、×:褐色に変化
【0026】
〔溶解性試験〕
ベビーバスに42℃のお湯を20L入れ、実施例1〜12、比較例1〜4の各試料をそれぞれ3g添加し、溶解させ、24時間室温で保管後、沈殿物の発生有無を目視で確認した。
溶解性の判定は下記の基準で評価した。
○:沈殿物なし、×:沈殿物が認められる
【0027】
〔抗菌性試験〕
実施例1〜12、比較例1〜4の各試料のそれぞれを水に溶かし、0.15%の入浴剤試料溶液を作成した。
108ppmの乾燥ブイヨン液体培地9mLに、作成した入浴剤試料溶液を1mL添加し、最終菌数が1.0×10〜10CFU/mLになるよう大腸菌(Escherichia coli,ATCC 8739)を接種し、31℃で24時間培養した。
培養後、それぞれの試料について10倍希釈系列を作成し、SCD寒天培地に1mLを接種し、31℃で48時間培養し生菌数を測定した。
コントロールとして試料未添加についても同様の操作を実施した。
【0028】
下式に従い抗菌活性値を求め、抗菌性は下記の基準で評価した。
〔式〕抗菌活性値=log(C/A)
C:培養24時間後のコントロールの生菌数
A:培養24時間後の実施例及び比較例の生菌数
○:抗菌活性値1以上、×:抗菌活性値1未満
上述の三種類の試験を、銀イオン溶出物の比較試験(実施例1〜6)と、銀濃度の設定試験(実施例7〜12)との二種類条件について行った。試料の設定と試験結果を以下に述べる。
【0029】
(2.銀イオン溶出物の比較試験)
この試験は、ヒドロキシカルボン酸銀が、水溶性銀化合物及び塩化銀及び銀ゼオライトよりも入浴剤として使用するのに適しているか否かを検証する試験である。
そこで銀イオン溶出物として、
ヒドロキシカルボン酸銀(粉末状) :実施例1〜3
ヒドロキシカルボン酸塩+水溶性銀化合物(緩衝反応後) :実施例4〜6
水溶性銀化合物(粉末状) :比較例1〜2
塩化銀、銀ゼオライト(粉末状) :比較例3〜4
を準備した。
【0030】
(2−1.各種試料の組成)
表1に示す配合成分に基づき、実施例1〜6の各種試料を作成した。
表2に示す配合成分に基づき、比較例1〜4の各種試料を作成した。
【0031】
【表1】

【0032】
(2−2ヒドロキシカルボン酸銀:実施例1〜3について)
実施例1〜3は懸濁入浴剤に関する試料である。
【0033】
(実施例1)
実施例1の懸濁性入浴剤は表1に示す通り、以下のような組成である。
炭酸水素ナトリウム : 77.85wt%
クエン酸銀 : 0.10wt%
無水硫酸マグネシウム : 15.00wt%
懸濁化剤(CWK−5): 6.00wt%
香料 : 1.00wt%
色素 : 0.05wt%
上述の組成それぞれを粉末化し、混合し、パウダー状の懸濁性入浴剤を得た。
製品では白濁性入浴剤とするのが好ましい。
【0034】
(実施例2)
実施例2の懸濁性入浴剤は表1に示す通り、以下のような組成である。
炭酸水素ナトリウム : 77.85wt%
乳酸銀 : 0.10wt%
無水硫酸マグネシウム : 15.00wt%
懸濁化剤(CWK−5): 6.00wt%
香料 : 1.00wt%
色素 : 0.05wt%
上述の組成それぞれを粉末化し、混合し、パウダー状の懸濁性入浴剤を得た。
製品では白濁性入浴剤とするのが好ましい。
【0035】
(実施例3)
実施例3の懸濁性入浴剤は表1に示す通り、以下のような組成である。
炭酸水素ナトリウム : 77.85wt%
リンゴ酸銀 : 0.10wt%
無水硫酸マグネシウム : 15.00wt%
懸濁化剤(CWK−5): 6.00wt%
香料 : 1.00wt%
色素 : 0.05wt%
上述の組成それぞれを粉末化し、混合し、パウダー状の懸濁性入浴剤を得た。
製品では白濁性入浴剤とするのが好ましい。
【0036】
(実施例1〜3の評価)
ヒドロキシカルボン酸銀として、クエン酸銀、乳酸銀、リンゴ酸銀の試験を行なった結果、安定性、抗菌性、溶解性の全ての条件を満たす、入浴剤とすることができた。
【0037】
(2−3.ヒドロキシカルボン酸+水溶性銀化合物(緩衝反応後):実施例4〜6について)
実施例4〜6はヒドロキシカルボン酸と水溶性銀化合物を緩衝反応させた入浴剤の試料である。
実施例4〜6は、ヒドロキシカルボン酸塩と水溶性銀化合物を精製水中で混合し、緩衝反応によって、ヒドロキシカルボン酸銀を含有する懸濁性入浴剤とし、硫酸ナトリウムと無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させたものである。水溶性銀化合物は人体への刺激が大きい為、
(ヒドロキシカルボン酸のモル数)>(水溶性銀化合物のモル数)
とすることが好ましい。
【0038】
(実施例4)
実施例4の懸濁性入浴剤は表1に示す通り、以下のような組成である。
炭酸水素ナトリウム : 75.19wt%
硝酸銀 : 0.10wt%
クエン酸ナトリウム : 0.16wt%
精製水 : 2.50wt%
無水硫酸マグネシウム : 15.00wt%
懸濁化剤(CWK−5): 6.00wt%
香料 : 1.00wt%
色素 : 0.05wt%
上述の組成それぞれを粉末化し、混合し、パウダー状の懸濁性入浴剤を得た。
製品では白濁性入浴剤とするのが好ましい。
【0039】
(実施例5)
実施例5の懸濁性入浴剤は表1に示す通り、以下のような組成である。
炭酸水素ナトリウム : 75.19wt%
硝酸銀 : 0.10wt%
乳酸ナトリウム : 0.16wt%
精製水 : 2.50wt%
無水硫酸マグネシウム : 15.00wt%
懸濁化剤(CWK−5): 6.00wt%
香料 : 1.00wt%
色素 : 0.05wt%
上述の組成それぞれを粉末化し、混合し、パウダー状の懸濁性入浴剤を得た。
製品では白濁性入浴剤とするのが好ましい。
【0040】
(実施例6)
実施例6の懸濁性入浴剤は表1に示す通り、以下のような組成である。
炭酸水素ナトリウム : 75.19wt%
硝酸銀 : 0.10wt%
リンゴ酸ナトリウム : 0.16wt%
精製水 : 2.50wt%
無水硫酸マグネシウム : 15.00wt%
懸濁化剤(CWK−5): 6.00wt%
香料 : 1.00wt%
色素 : 0.05wt%
上述の組成それぞれを粉末化し、混合し、パウダー状の懸濁性入浴剤を得た。
製品では白濁性入浴剤とするのが好ましい。
【0041】
(実施例4〜6の評価)
水溶性銀化合物にヒドロキシカルボン酸塩(クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩)を加えた入浴剤であったとしても、安定性、抗菌性、溶解性の全ての条件を満たす、懸濁性入浴剤とすることができた。
【0042】
【表2】

【0043】
(2−4.水溶性銀化合物:比較例1〜2について)
比較例1〜2は水溶性銀化合物を粉末化し、混合した懸濁性入浴剤の試料である。
水溶性銀化合物に使用する、硝酸銀及び硫酸銀は人体への刺激が大きく、使用すべきではないが、実施例1〜6記載の入浴剤の安定性、溶解性、抗菌性を検証する為に試料を作成し、実験した。
【0044】
(比較例1)
炭酸水素ナトリウム : 77.85wt%
硝酸銀 : 0.10wt%
無水硫酸マグネシウム : 15.00wt%
懸濁化剤(CWK−5): 6.00wt%
香料 : 1.00wt%
色素 : 0.05wt%
上述の組成それぞれを混合し、懸濁性入浴剤を得た。
【0045】
(比較例2)
炭酸水素ナトリウム : 77.85wt%
硫酸銀 : 0.10wt%
無水硫酸マグネシウム : 15.00wt%
懸濁化剤(CWK−5): 6.00wt%
香料 : 1.00wt%
色素 : 0.05wt%
上述の組成それぞれを混合し、懸濁性入浴剤を得た。
【0046】
(比較例1〜2の評価)
水溶性銀化合物(硝酸銀、硫酸銀)を用いた入浴剤は、溶解性が良く、抗菌作用も充分に発揮するものであったが、感光作用によって、入浴剤が変色する(安定性が悪い)という問題あった。
また、前述のように、人体の刺激が大きく使用できるものではない。
【0047】
(2−5.塩化銀(粉末状)、銀ゼオライト、:比較例3〜4)
比較例3〜4は塩化銀及び銀ゼオライトを粉末化し、混合した入浴剤の試料である。
前述のように、硝酸銀及び硫酸銀は人体への刺激が大きく、使用すべきではないことから、人体への刺激がほとんど無い銀ゼオライトの試料を作成し、実験した。人体への刺激を有する塩化銀も同様の結果を示した。
【0048】
(比較例3)
炭酸水素ナトリウム : 77.85wt%
塩化銀 : 0.10wt%
無水硫酸マグネシウム : 15.00wt%
懸濁化剤(CWK−5): 6.00wt%
香料 : 1.00wt%
色素 : 0.05wt%
上述の組成それぞれを混合し、懸濁性入浴剤を得た。
【0049】
(比較例4)
炭酸水素ナトリウム : 77.85wt%
銀ゼオライト : 0.10wt%
無水硫酸マグネシウム : 15.00wt%
懸濁化剤(CWK−5): 6.00wt%
香料 : 1.00wt%
色素 : 0.05wt%
上述の組成それぞれを混合し、懸濁性入浴剤を得た。
【0050】
(比較例3〜4の評価)
塩化銀、銀ゼオライトを用いた入浴剤は、安定性の高いものであった。しかしながら、溶解性が悪く湯中では溶けず、使い勝手が悪いものであった。
また、塩化銀、銀ゼオライトを用いた入浴剤は、溶けずに銀イオンを水中へ放出しないものであるから、抗菌性も低いものであった。
このような入浴剤であると、大量に銀が必要となり、使用者の経済的負担が非常に大きいものとなる。
【0051】
(3.銀イオン溶出物の総合評価)
上述の試験結果より、実施例1〜6記載のヒドロキシカルボン酸銀を含有する入浴剤は、安定性が高く、溶けやすく使い勝手が良いものである。
【0052】
(4.銀濃度の設定試験:実施例7〜12)
次に、どの程度ヒドロキシカルボン酸銀を風呂湯中に溶解させると、充分な抗菌作用が得られるかの試験を行なった。
【0053】
(4−1.各種試料の組成)
表3に示す配合成分に基づき、実施例7〜12の各種試料を作成した。
【0054】
【表3】

【0055】
以下に作成した、実施例7〜12の各種試料の重量配合比を示す。
【0056】
(実施例7)
実施例7の懸濁性入浴剤は表1に示す通り、以下のような組成である。
炭酸水素ナトリウム : 77.92wt%
クエン酸銀 : 0.03wt%
無水硫酸マグネシウム : 15.00wt%
懸濁化剤(CWK−5): 6.00wt%
香料 : 1.00wt%
色素 : 0.05wt%
上述の組成それぞれを粉末化し、混合し、パウダー状の懸濁性入浴剤を得た。
製品では白濁性入浴剤とするのが好ましい。
【0057】
(実施例8)
実施例8の懸濁性入浴剤は表1に示す通り、以下のような組成である。
炭酸水素ナトリウム : 77.85wt%
クエン酸銀 : 0.10wt%
無水硫酸マグネシウム : 15.00wt%
懸濁化剤(CWK−5): 6.00wt%
香料 : 1.00wt%
色素 : 0.05wt%
上述の組成それぞれを粉末化し、混合し、パウダー状の懸濁性入浴剤を得た。
製品では白濁性入浴剤とするのが好ましい。
【0058】
(実施例9)
実施例9の懸濁性入浴剤は表1に示す通り、以下のような組成である。
炭酸水素ナトリウム : 77.45wt%
クエン酸銀 : 0.05wt%
無水硫酸マグネシウム : 15.00wt%
懸濁化剤(CWK−5): 6.00wt%
香料 : 1.00wt%
色素 : 0.05wt%
上述の組成それぞれを粉末化し、混合し、パウダー状の懸濁性入浴剤を得た。
製品では白濁性入浴剤とするのが好ましい。
【0059】
(実施例10)
実施例10の懸濁性入浴剤は表1に示す通り、以下のような組成である。
炭酸水素ナトリウム : 76.95wt%
クエン酸銀 : 1.00wt%
無水硫酸マグネシウム : 15.00wt%
懸濁化剤(CWK−5): 6.00wt%
香料 : 1.00wt%
色素 : 0.05wt%
上述の組成それぞれを粉末化し、混合し、パウダー状の懸濁性入浴剤を得た。
製品では白濁性入浴剤とするのが好ましい。
【0060】
(実施例11)
実施例11の懸濁性入浴剤は表1に示す通り、以下のような組成である。
炭酸水素ナトリウム : 72.95wt%
クエン酸銀 : 5.00wt%
無水硫酸マグネシウム : 15.00wt%
懸濁化剤(CWK−5): 6.00wt%
香料 : 1.00wt%
色素 : 0.05wt%
上述の組成それぞれを粉末化し、混合し、パウダー状の懸濁性入浴剤を得た。
製品では白濁性入浴剤とするのが好ましい。
【0061】
(実施例12)
実施例12の懸濁性入浴剤は表1に示す通り、以下のような組成である。
炭酸水素ナトリウム : 67.95wt%
クエン酸銀 : 10.00wt%
無水硫酸マグネシウム : 15.00wt%
懸濁化剤(CWK−5): 6.00wt%
香料 : 1.00wt%
色素 : 0.05wt%
上述の組成それぞれを粉末化し、混合し、パウダー状の懸濁性入浴剤を得た。
製品では白濁性入浴剤とするのが好ましい。
【0062】
(4−2.ヒドロキシカルボン酸銀の濃度について)
上述の実施例7〜12のヒドロキシカルボン酸銀の配合量においては、安定性、溶解性、抗菌性において、良い結果が得られた。
【0063】
ヒドロキシカルボン酸銀が0.03wt%未満であると、銀イオンが少なくなり過ぎる恐れがあることから、入浴剤として好ましくなく、ヒドロキシカルボン酸銀が10.0wt%以上であると、高価な銀を使用し過ぎるので経済的でない。
これらのことから、入浴剤総重量の0.03〜10.0wt%がヒドロキシカルボン酸銀であることが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともヒドロキシカルボン酸銀を含有することを特徴とする懸濁性入浴剤。
【請求項2】
前記ヒドロキシカルボン酸銀は水溶性銀化合物とヒドロキシカルボン酸またはその塩を混合することで作成されたものであることを特徴とする請求項1記載の懸濁性入浴剤。
【請求項3】
入浴剤総重量の0.03〜10.0wt%がヒドロキシカルボン酸銀であることを特徴とする請求項1又は2に記載の懸濁性入浴剤。

【公開番号】特開2010−37265(P2010−37265A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201386(P2008−201386)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(592134114)丹平製薬株式会社 (4)
【Fターム(参考)】