成分分析装置、成分分析システム、および成分分析方法
【課題】成分分析以外の他の機能を有する成分分析装置における成分分析の精度を向上させる。
【解決手段】成分分析装置100は、複数の成分分析用のモデルの各々を命令に対応付けて記憶するためのメモリ102と、命令を受け付けるための操作デバイス103と、命令に応じて対象物の状態を変化させるための変化デバイス106と、対象物に光を照射することによって、当該対象物からの反射光または透過光に関するデータを取得するための測定デバイス104と、メモリから命令に対応するモデルを読み出し、当該モデルを利用することによって、取得されたデータに基づいて対象物の成分を分析するためのプロセッサ110とを含む。
【解決手段】成分分析装置100は、複数の成分分析用のモデルの各々を命令に対応付けて記憶するためのメモリ102と、命令を受け付けるための操作デバイス103と、命令に応じて対象物の状態を変化させるための変化デバイス106と、対象物に光を照射することによって、当該対象物からの反射光または透過光に関するデータを取得するための測定デバイス104と、メモリから命令に対応するモデルを読み出し、当該モデルを利用することによって、取得されたデータに基づいて対象物の成分を分析するためのプロセッサ110とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の成分をより正確に分析するための成分分析装置および成分分析方法に関し、特に対象物に作用する他の機能を有する成分分析装置、成分分析システム、および成分分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電化製品には、ユーザの手間や負担を軽減する目的で自動運転コースや全自動運転モードなどの機能が搭載されている。例えば、洗濯機であればウールを洗うために最適な全自動コースが用意されているし、エアコンや空気清浄機であればユーザの好みで選べる自動運転モードが用意されている。
【0003】
調理機には、ユーザがいちいち加熱出力を指定して最適な加熱時間を試行錯誤する手間を省いて便宜を図るために、あらかじめ多数の調理メニューや調理モードが記憶されている。ユーザが、ボタンやハンドル操作などを介して、調理メニューや調理モードを選択することによって、調理機は、その食品に最適な調理シーケンスを実行する。
【0004】
具体的には、電子レンジであれば、ユーザが牛乳か冷凍食品かなど食品に応じたキーを選べば、記憶されている調理シーケンスに従って自動的に温度や時間が調節されて加熱される。また、オーブンレンジや加熱水蒸気調理部であれば、予めメニューブックや調理コースが用意されており、所望の料理に応じた食材とその分量などをユーザが用意して装置に記憶されたメニューや調理モードを選択することで自動あるいは半自動で調理が行われる。
【0005】
一方、ユーザは電化製品による効果や、生活や健康に関わる状況を知りたいという欲求がある。例えば洗濯機であれば汚れが落ちたかどうか、空調であれば空気が清浄になったか、調理部であれば調理する食品の成分や栄養量などを知りたいという要求がある。
【0006】
そうした要求に応えるための成分分析装置が知られている。成分分析においては、分析対象物に光を照射することによって透過光あるいは反射光の光スペクトルを取得し、多変量解析などの計算手法を用いて分析対象物の成分を分析する方法が知られている。
【0007】
一般に物質は特定の波長の光を吸収する。物質によって吸収される光の波長およびその吸光度は、当該物質に含まれる成分やその濃度に相関がある。吸光度は、透過光や反射光の光スペクトルから求めることができる。そのため、光スペクトルを測定し、その光スペクトルから波長毎の吸光度すなわち吸光度スペクトルを求め、測定対象の成分の種類や濃度に対する吸光度スペクトルの変化を分析することによって、測定対象の成分やその濃度についての情報を取得することができる。
【0008】
たとえば、予め特定の成分を含むことがわかっている特定の対象物の吸光度スペクトルと、当該対象物に含まれる成分の種類と濃度と成分量との関係式を導出したり、吸光度スペクトルについてのパターン認識を行ったりすることによって、将来の成分分析処理のためのスペクトルのモデル(以下、モデルデータという。)を予め作成しておく。そして、当該関係式やパターン認識を利用することによって、未知の分析対象物から得られる光スペクトルを分析すれば、当該分析対象物に含まれる成分の種類、当該成分の濃度、当該成分の量などを算出することができる(定量分析)。あるいは、分析対象物の特性を識別したり、分析対象物に含まれる成分の種類を分類したりすることができる(定性分析)。
【0009】
より詳細には、定量分析であれば、モデルデータとして、吸光度スペクトルと成分の濃度との関係式(検量線と呼ばれる。)を予め導出しておく。定性分析であれば、モデルデータとして、吸光度スペクトルのパターンと分析対象物の特性との関係を示すパターン(キャリブレーションモデルと呼ばれる)を予め作成しておく。言い換えれば、検量線やキャリブレーションモデルは、特定の物質の特性や特定の成分の存在や当該成分の濃度と、吸光度との関係を数学的に表したものともいえる。
【0010】
こうした手法は、分析対象物を非破壊で成分分析できるため、従来から広く一般的に用いられている。
【0011】
たとえば、農業の分野では、特開2001−133401号公報(特許文献1)に、光学的測定装置が開示されている。特開2001−133401号公報(特許文献1)によると、受光器は、その光軸がコンベアの長手方向と直交するように配設してあり、投光器は、その光軸が受光器の光軸とコンベアの幅方向の略中央で交わり、投光器の光軸と受光器の光軸とがなす角の角度は15°以上20°以下になるように配置してある。コンベアの両側には、側壁がコンベアに沿って立設してあり、側壁の投光器及び受光器に対向する部分、及び側壁の光源及びフォトセンサに対向する部分には、光ビームを通過させるべく、所要直径の開口が設けてある。受光器側の側壁の、投光器からの光が照射され得る部分であって前述した開口を除く部分には低光反射板が取り付けてある。
【0012】
また、食品産業では、特開2005−292128号公報(特許文献2)に、物体のカロリー測定方法及び物体のカロリー測定装置が開示されている。特開2005−292128号公報(特許文献2)によると、装置は、被検対象の物体が載置されるテーブルを有した物体保持部と、テーブル上に載置された被検対象の物体に近赤外領域の光を照射する光源部と、この物体からの反射光あるいは透過光を受光する受光部と、受光部が受光した光の吸光度に基づいて物体のカロリーを算出する制御部とを備える。制御部が、予め、カロリー既知のサンプル物体に照射されるとともにサンプル物体から反射あるいは透過された近赤外線の吸光度における二次微分スペクトルの重回帰分析により算出された回帰式と、受光部が受光した光の吸光度とから物体のカロリーを演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−133401号公報
【特許文献2】特開2005−292128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような成分分析の精度は検量線やキャリブレーションモデルの精度に依存する。検量線やキャリブレーションモデルは、環境、測定条件、分析対象物の種類によって大きく左右される。分析に必要とされる精度も、分析対象物によって異なる。そのため、分析対象物の、種類、環境、測定条件に最適な検量線やキャリブレーションモデルを用いて、当該分析対象物の成分を分析することが好ましい。つまり、成分分析装置は、分析対象物の種類、環境、測定条件に適した計算モデルデータを用いて、分析対象物の成分の分析を行なうことが好ましい。
【0015】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的の1つは、成分分析以外の他の機能を有する成分分析装置における成分分析の精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明のある局面に従うと、成分分析装置が提供される。成分分析装置は、複数の成分分析用のモデルの各々を命令に対応付けて記憶するためのメモリと、命令を受け付けるための操作デバイスと、命令に応じて対象物の状態を変化させるための変化デバイスと、対象物に光を照射することによって、当該対象物からの反射光または透過光に関するデータを取得するための測定デバイスと、メモリから命令に対応するモデルを読み出し、当該モデルを利用することによって、取得されたデータに基づいて対象物の成分を分析するためのプロセッサとを備える。
【0017】
好ましくは、成分分析装置は、対象物の周辺の環境を検出するためのセンサをさらに備える。メモリは、モデルを環境に対応付けて格納する。プロセッサは、メモリから命令と環境とに対応するモデルを読み出す。
【0018】
好ましくは、センサは、温度を検出する。
好ましくは、センサは、湿度を検出する。
【0019】
好ましくは、成分分析装置は、調理機である。対象物は、調理機で調理される食品である。
【0020】
好ましくは、測定デバイスは、食品に焦げ目をつけるためのハロゲンランプを含む。測定デバイスは、ハロゲンランプからの光を利用して、反射光のスペクトルを取得する。
【0021】
好ましくは、成分分析装置は、成分分析装置で行うことができる調理を紹介するためのディスプレイをさらに備える。メモリは、成分分析装置で行うことができる調理毎に食品の配置を記憶する。プロセッサは、調理の選択を受け付けると、メモリを参照して、ディスプレイに、選択された調理に対応する食品の配置を表示させ、食品の配置に基づいて測定デバイスが光を照射する範囲を決定する。
【0022】
好ましくは、成分分析装置は、空調機である。対象物は、空調機によって調整される空気である。
【0023】
好ましくは、成分分析装置は、空気清浄機である。対象物は、空気清浄機によって清浄化処理される空気である。
【0024】
好ましくは、成分分析装置は、洗濯機である。対象物は、洗濯機によって洗濯される衣類である。
【0025】
好ましくは、成分分析装置は、浄水器である。対象物は、浄水器によって浄水および整水のいずれかの処理がされる水である。
【0026】
好ましくは、成分分析装置は、日付および時刻の少なくともいずれかを取得するための時計をさらに備える。
【0027】
好ましくは、メモリは、モデルを日付および時刻の少なくともいずれかに対応付けて格納する。プロセッサは、メモリから命令と日付および時刻の少なくともいずれかとに対応するモデルを読み出す。
【0028】
この発明の別の局面に従うと、上記の成分分析装置と、成分分析装置で行うことができる調理毎に食品の配置を表示するための書籍とを備える成分分析システムが提供される。メモリは、成分分析装置で行うことができる調理毎に食品の配置を記憶する。プロセッサは、調理の選択を受け付けると、選択された調理に対応する食品の配置に基づいて測定デバイスが光を照射する範囲を決定する。
【0029】
この発明の別の局面に従うと、複数の成分分析用のモデルの各々を命令に対応付けて記憶するためのメモリと操作デバイスと変化デバイスと測定デバイスとプロセッサとを含む成分分析装置における成分分析方法が提供される。成分分析方法は、プロセッサが、操作デバイスを介して命令を受け付けるステップと、プロセッサが、命令に応じて、変化デバイスに対象物の状態を変化させるステップと、プロセッサが、測定デバイスに、対象物に光を照射することによって、当該対象物からの反射光または透過光に関するデータを取得させるステップと、プロセッサが、メモリから命令に対応するモデルを読み出すステップと、プロセッサが、当該モデルを参照しながら、取得されたデータに基づいて対象物の成分を分析するステップとを備える。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明によって、成分分析以外の他の機能を有する成分分析装置における成分分析の精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態1に係る成分分析装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る成分分析装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】調理情報データベースのデータ構造を示すイメージ図である。
【図4】分析情報データベースのデータ構造を示すイメージ図である。
【図5】ディスプレイに表示される成分分析装置内における食品の配置を示すイメージ図である。
【図6】実施の形態1に係る成分分析装置のCPUが実行する成分分析処理を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態2に係る成分分析装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図8】実施の形態2に係る成分分析装置の機能構成を示すブロック図である。
【図9】実施の形態2に係る成分分析装置のCPUが実行する成分分析処理を示すフローチャートである。
【図10】実施の形態3に係る成分分析装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図11】実施の形態3に係る成分分析装置の機能構成を示すブロック図である。
【図12】実施の形態3に係る成分分析装置のCPUが実行する成分分析処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0033】
[実施の形態1]
<成分分析装置のハードウェア構成>
まずは、成分分析装置100のハードウェア構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る成分分析装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0034】
図1を参照して、本実施の形態に係る成分分析装置100は、相互に内部バスで接続された、ディスプレイ101と、メモリ102と、操作部103と、測定部104と、環境センサ105と、調理部106と、CPU(Central Process Unit)110と、を含む。
【0035】
成分分析装置100は、多変量解析や判別分析、パターン認識など成分分析に必要な計算モデルを予め記憶する。成分分析装置100は、食品などの分析対象物に光を照射することによって反射光あるいは透過光のスペクトルを取得する。成分分析装置100は、計算モデルのデータと今回取得されたスペクトルとに基づいて分析対象物の成分を分析する。以下、本実施の形態に係る成分分析装置100について、より詳細に説明する。
【0036】
ディスプレイ101は、CPU110からの信号に応じて、オーブン、グリルなどの調理モードや、グラタン、焼き魚、ローストチキンセット、シフォンケーキなどの調理メニュー、調理の進行状況、画像やテキストなどを表示する。また、ディスプレイ101はCPU110からの信号に応じて、分析結果や測定日時などの情報、調理や分析の残り時間や終了の告知といったお知らせも表示する。
【0037】
操作部103は、スイッチやタブレットやハンドルやタッチパネルなど、ユーザから各種の命令を受け付けられるように構成されている。たとえば、操作部103は、ユーザがオーブン、グリルなどの調理モードやハンバーグ、グラタンなどの調理メニュー、調理温度や時間を選択するためのものであり、またユーザから分析機能に関する命令を受け付けて、それらの情報をCPU110に入力する。
【0038】
また、操作部103は、ユーザが選択した調理モード、調理メニューや成分分析、測定を実行させるための操作部分と、ユーザが変更可能な条件、たとえば分量、加熱温度、食材の種類、分析機能のオプションなどを設定するための操作部分を含む。
【0039】
測定部104は、分析対象物に光を照射して、分析対象物からの反射光あるいは透過光を受ける。測定部104は、反射光あるいは透過光の波長毎の強度を示すデータをCPU110に入力する。すなわち、測定部104は、あるいは測定部104とCPU110とは、分析対象物に対応する光スペクトルを取得する。
【0040】
センサ105は、たとえば温度センサや湿度センサであり、分析対象である食品の温度などの状態を検知したり、成分分析装置100の庫内の湿度などの状態を検知したりする。
【0041】
調理部106は、たとえば、食品を加熱あるいは冷却して調理する。たとえば、調理部106は、マイクロウェイブ発振機、蒸気加熱ヒーター、熱風発生器、赤外線発生装置、冷却器、冷気発生器などによって実現される。なお、調理部106は、食品などの分析対象物に物理的または化学的に作用するための、他の装置であってもよい。
【0042】
メモリ102は、分析に用いるプログラムをロードする領域やプログラムが処理を行なう際に使用する作業領域などを備えている。メモリ102は、CPU110によって実行される制御プログラムの他に、調理シーケンスなどの調理情報データや、測定条件などの分析情報のデータ、分析に使用される計算モデルのデータなどを記憶している。メモリ102は、最適な計算モデルが検索されて所望の分析結果が得られるまでの、その時点での候補である計算モデルや演算や分析結果を、ユーザの入力内容と共に一時的に記憶しておく領域を備えている。
【0043】
メモリ102は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SDRAM(Synchronous DRAM)、DDR−SDRAM(Double Data Rate SDRAM)、RDRAM(Rambus Dynamic Random Access Memory(登録商標))、Direct−RDRAM(Direct Rambus Dynamic Random Access Memory(登録商標))、フラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)、マスクROMやPROM(Programmable Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable PROM)、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)などによって実現される。
【0044】
CPU110は、成分分析装置100の各部を制御して、各種の処理を実行する。CPU110は、メモリ102に記憶されているプログラムを実行することによって、各種の演算を行なう。このプログラムは、成分分析を行なうためのプログラム、各部の制御プログラム、サブルーチン、計算モデルの精度管理プログラム、通信処理用のプログラム、分析結果の精度があらかじめ設定された基準を満足しているか判断するためのプログラム、それらの判断基準の設定等が含まれる。
【0045】
CPU110は、メモリ102に記憶されているデータや、測定部104からの取得データに基づいて、分析対象物の成分を分析する。CPU110は、分析処理を実行して、分析経過や結果を一時的にメモリ102に記憶したり、また分析結果やそのときの条件や用いられた計算モデルなどをメモリ102に記憶したりする。
【0046】
このようにして、CPU110は、測定部104を用いて分析対象物の反射光のスペクトルを取得することによって、当該スペクトルから分析対象物の成分の種類や成分の濃度などを分析することができる。
【0047】
以下、このような機能を実現するための、成分分析装置100の具体的な構成について詳述する。
【0048】
<成分分析装置100の機能構成>
次に、成分分析装置100の機能構成について説明する。図2は、本実施の形態に係る成分分析装置100の機能構成を示すブロック図である。
【0049】
図2を参照して、本実施の形態に係る成分分析装置100は、モード読出部111、調理制御部112、モデル決定部113、モデル読出部114、分析処理部115を、その機能として含む。
【0050】
なお、モード読出部111、調理制御部112、モデル決定部113、モデル読出部114、分析処理部115は、CPU110がメモリ102に記憶されているプログラムを実行することによって実現されるモジュールであっても良いし、マイクロコントローラまたはハードウェア回路であってもよい。
【0051】
そして、上述したように、成分分析装置100は、ディスプレイ101、メモリ102、操作部103、測定部104、センサ105、調理部106も含む。
【0052】
モード読出部111は、操作部103を介して、ユーザから調理命令を受け付ける。モード読出部111は、調理命令に基づいて、メモリ102から調理処理手順を読み出す。より詳細には、モード読出部111は、メモリ102に格納されている、図3に示すような調理情報データベース1021を参照して、調理処理手順を取得する。
【0053】
ここで、調理情報データベース1021は、操作部103を介してユーザが選択することが可能な複数の調理モードや調理メニューを特定するためのIDに対応付けて、それぞれの調理モードや調理メニューを実行するために必要とされる、調理シーケンス、加熱装置の駆動条件、メニューに必要な材料とその分量、メニューによっては食品の並べ方などを格納している。
【0054】
調理制御部112は、調理部106を制御することによって、ユーザからの調理命令に対応する調理を実行する。たとえば、調理部106は、マイクロウェイブを発振して、食品を温める。
【0055】
モデル決定部113は、調理命令に基づいて、メモリ102から今回の成分分析に適したモデル(モデルID)を決定する。より詳細には、モデル決定部113は、図4に示すような分析情報データベース1022を参照して、成分分析に必要なモデルを決定する。
【0056】
分析情報データベース1022は、ユーザが選択したり変更したりすることが可能な複数の調理モードや調理メニューと、さらに細かい設定条件(たとえば、食品の温度、庫内の温度や湿度、食品の位置、または季節のような情報)に対応付けて、それらの調理モードや調理メニューと設定条件とに適した計算モデルを特定するためのモデルIDを格納している。
【0057】
より詳細には、図4の斜線が引かれた部分の条件は、図3における調理メニューや調理コースの条件と同じである。つまり、図4の斜線が引かれた部分の条件は、モデル決定部113が、識別IDのみで特定することができる。一方、図4の具体的な数字や名前が入っている部分は、ユーザがその調理メニューや調理コースの条件の一部を変更した場合の条件(CPU110が変更命令を受け付けた場合)や、調理後の測定の際の温度などのように、図3だけに基づいて特定できない変数を示す。本実施の形態においては、予め、ある程度の変更パターンが予測されている。そして、図4に示すように、それぞれの調理メニューや調理コースに対する計算モデルが用意され、当該計算モデルのそれぞれにIDが対応付けられている。
【0058】
なお、一般的に、調理部106は、ユーザが調理モードや調理メニューの一部の加熱温度・時間・材料などといった調理条件を変更して設定する機能が組み込まれてユーザの所望の制御ができるようになっている。分析情報データベース1022は、変更された調理条件に応じて変化するデータも記憶している。
【0059】
そして、本実施の形態においては、モデル決定部113は、調理モードや調理メニューと、さらに細かい設定条件に適した計算モデル(モデルID)を選択する。
【0060】
なお、本実施の形態においては、モデル決定部113は、環境センサ105から、成分分析装置100内の、または分析対象物の周囲の、温度や湿度や明るさなどを取得する。すなわち、モデル決定部113は、環境センサからのデータも上記の設定条件として利用してもよい。モデル決定部113は、調理命令、設定条件、環境センサからのデータに基づいて、分析対象物に適したモデルを決定する。
【0061】
モデル読出部114は、メモリ102から今回の成分分析に適したモデルを読み出す。より詳細には、モデル読出部114は、メモリ102の計算モデルデータベース1023から決定されたモデルIDに対応するモデルを表わすデータを読み出す。
【0062】
計算モデルデータベース1023は、モデルIDに対応付けて、成分の定量分析や定性分析に使用する計算モデル、例えば多変量解析であれば検量線やキャリブレーションモデル、回帰分析であれば回帰式、定性分析であれば分類基準、パターン認識であればパターンモデルなどの(これらを総称して計算モデルデータとする)、分析段階の演算に使用する計算モデルを記憶している。
【0063】
分析処理部115は、測定部104を制御することによって、分析対象物の成分を分析する。より詳細には、分析処理部115は、測定部104に分析対象物に可視光線や紫外線や赤外線やその他の電磁波を照射させる。そして、分析処理部115は、測定部104を用いて、分析対象物の透過光あるいは反射光を取得する。分析処理部115は、透過光あるいは反射光のスペクトルと、メモリ102から読み出したモデルとに基づいて、分析対象物に含まれる成分を分析する。
【0064】
換言すれば、測定部104は、分析処理部115の制御下で、光源で発生した光を分析対象物に照射する。測定部104は、分析対象物からの透過光あるいは反射光を図示しない分光器や受光素子で検出する。測定部104は、検出した光スペクトルを検出信号として分析処理部115へ送信する。
【0065】
分析処理部115は、測定部104からの検出信号を吸光度スペクトルに変換する。分析処理部115は、分析情報データベース1022から抽出された分析情報データを参照して、計算モデルデータベース1023から抽出された計算モデルデータと測定部104で得られた吸光度スペクトルを用いて演算を実行することで、分析対象物に含まれる成分の定性分析や定量分析を行なう。
【0066】
分析処理部115は、分析結果を出力する。たとえば、分析処理部115は、分析結果をディスプレイ101に表示させる。あるいは、分析処理部115は、分析結果をメモリ102に記憶する。あるいは、分析処理部115は、分析結果を成分分析装置100に着脱可能な記録媒体に格納する。あるいは、分析処理部115は、分析結果を外部の機器に送信する。
【0067】
また、CPU110は、ユーザが選択する調理メニューや調理モード、成分分析装置100が得た分析結果や、図示しない時計機能によって得られる現在時間や測定日時を表示してもよい。CPU110は、エラー表示などの成分分析装置100の状態、その他ユーザへのお知らせなどを示すテキストあるいは画像をディスプレイ101に表示させてもよい。
【0068】
本実施の形態においては、調理メニューや調理方法に依存する分析対象物の状態や光スペクトルの測定条件や分析における条件や、それらの条件に対応する計算モデルのデータベースを予め作成しておき、ユーザが調理モードや調理メニューを選択したときにそれらの情報を抽出して分析に用いることができる。
【0069】
具体的には、ユーザが調理メニューや調理モードを選択すると、CPU110は、その実行に伴う調理時間や食品の配置、材料と分量、加熱温度や加熱時間などの調理情報を調理情報データベース1021から抽出する。CPU110は、これらの情報をディスプレイ101に表示させてもよい。たとえば、CPU110は、図5に示すような、成分分析装置100内への食品の配置をディスプレイ101に表示させることができる。
【0070】
CPU110は、調理情報データベース1021からの条件に従って調理した分析対象物を分析するときの温度や湿度といった条件を分析情報データベース1022から抽出してもよい。CPU110は、分析情報データベース1022からの条件を参照して、計算モデルデータベース1023から今回の調理に最適な計算モデルを迅速に検索することができる。また、CPU110は、計算モデルを成分分析の演算に利用されるパラメーターとして用いることによって、分析を精度よく行なうこともできる。
【0071】
<分析処理>
次に、本実施の形態に係る成分分析装置100における処理手順について説明する。図6は、本実施の形態に係る成分分析装置100のCPU110が実行する成分分析処理を示すフローチャートである。
【0072】
図6を参照して、ユーザが所望の調理モードまたは調理メニューを操作部103から選択する。このとき、ユーザが所望の調理条件(分量や時間など)を変更して入力することもできる。換言すれば、CPU110は、操作部103を介して、ユーザから調理命令を受け付ける(ステップS102)。
【0073】
CPU110は、調理モードまたは調理メニューが選択されると、入力内容に従って調理を開始する。ユーザが命令を入力し終え、調理開始の指示信号をCPU110が受信すると(ステップS104でYESの場合)、CPU110は処理をステップS106に進める。
【0074】
ステップS106では、CPU110は、成分分析プログラムを起動する。ただし、成分分析プログラムは、ステップS102よりも前から起動されるものであってもよい。CPU110は、成分分析プログラムに従って、ステップS102で選択された調理モードあるいは調理メニューに基づき、調理情報データベース1021から、その所定の調理モードや調理メニューに対応する調理情報データを検索し、読み出すよう指示を出す。(ステップS106)
調理情報データには、材料や分量、調理メニューの名称、調理方法、調理シーケンス、調理時間、食材の位置情報、加熱容器の種類、図示しない時計機能から判明する日付や日時などの情報が含まれる。
【0075】
調理情報データは、たとえば図3に示すように、調理情報データベース1021に含まれる識別ID毎の調理情報である。
【0076】
なお、食材の位置情報とは、たとえば図5に示すように、ローストチキンと野菜とジャガイモのセットメニューであれば成分分析装置100に付属したメニューブックなどに並べ方が指定されているので、その指定から食材がどこに位置しているかを前もって知ることができ、これを情報として利用するものである。
【0077】
これにより、測定部104を用いて光スペクトルを取得するときに、不必要な箇所までまんべんなく光を照射するための電力や時間を省くことができる。また、どの位置に照射した光のスペクトルが主にどの食材の成分を反映しているかを把握することができるので、スペクトルを用いた成分分析を正確に行なうことができる。
【0078】
CPU110は、ステップS108で取得した調理情報データおよびユーザがステップS102で入力した内容に基づいて、分析情報データベース1022から、その内容で調理した分析対象物を測定するときの温度や湿度、分量や材料、さらに時期といった条件や、計算モデルとの対応などが含まれた分析情報データを読み出す(ステップS108)。
【0079】
ここでは、分析情報データは、図4を参照して、調理モードあるいは調理メニューを実行した後の測定の際の食品の温度や分量、分析の際の条件、またユーザが調理条件を変更した場合に応じて変化する変数(例えば調理メニューでは2人分となっているのを4人分に変更した場合に応じて変化する分量や加熱時間など)や、また自動調理メニューに対応する計算モデルのIDなどが図4のようにデータテーブルとして分析情報データベース1022に格納されている。
【0080】
CPU110は、抽出した分析情報データを分析処理部115へ送信する(ステップS110)。
【0081】
CPU110は、ステップS110で抽出した分析情報データに基づいて計算モデルデータベース1023から計算モデルデータを検索して抽出する(ステップS112)。
【0082】
ここでは、調理情報データベース1021と、分析情報データベース1022と、計算モデルデータベース1023に記憶されている情報は、図3、図4のように、IDを介して、互いに紐付けられている。調理情報データベース1021のデータには、調理メニューや調理モードなどの種類に識別IDが割り振られる。分析情報データベース1022のデータには、識別IDを含む条件ごとに対応した計算モデルに対するIDが割り振られる。計算モデルデータベース1023に記憶されている計算モデルは、IDによって識別・分類されていてもよい。このように、各データの関連付けを行っておけば、検索の補助となるので、検索時間の短縮や分析処理の軽減が可能となる。
【0083】
この際、図3や図4に示すように、ユーザが成分分析装置100が予め備える調理メニューや調理モードをそのまま選択した場合のみならず、材料や分量や時間など一部の条件を変えて調理する場合などのそれぞれのバリエーションに対応したデータも記憶させておけば、CPU110は、変えられた条件に応じて最適な計算モデルデータを検索することができる。
【0084】
CPU110は、抽出した計算モデルデータを分析処理部115へ送信する(ステップS114)。
【0085】
CPU110は、抽出した計算モデルデータと分析情報データとを関連付けてメモリ102に一時保存する(ステップS116)。
【0086】
調理が終了すると、調理部106は、CPU110に対して調理終了の指示信号を送信する。調理終了の指示信号をCPU110が受信すると(ステップS118でYESの場合)、CPU110は処理をステップS120に進める。
【0087】
調理終了の指示信号を受信したCPU110は、センサ105に温度や湿度、蒸気圧などの庫内状態を検知させる(ステップS120)。
【0088】
CPU110は、ステップS120で得た検知結果を元に、庫内が測定部104によって分析対象の光スペクトルを測定することが可能な状態であるかを判断する(ステップS122)。
【0089】
このとき、庫内が測定可能な状態である場合(ステップS122においてYESの場合)、CPU110は、ディスプレイ101に、調理が終了したことと、続いて測定を実行することとを告知させる(ステップS126)。
【0090】
庫内が測定不可能な状態である場合(ステップS122においてNOである場合)、CPU110は、庫内の状態を図示しない手段で調整するか庫内の状態が落ち着くまで待機するなどして、庫内が測定可能になるまで待機する(ステップS124)。
【0091】
通常、加熱調理部は空気流の調整システムを有する。成分分析装置100は、例えば、排気口を通じて加熱庫内の余剰気体を外部に排出するなどして庫内の状態を安定させることが一般的である。CPU110は、こうしたシステムを利用することによって、庫内が測定可能になるのを待ってもよい。CPU110は、再度ステップS120からの処理を繰り返す。
【0092】
ステップS128では、CPU110が測定部104に測定を開始させる。CPU110は、測定部104からの測定結果に基づいて、成分分析を開始する(ステップS128)。
【0093】
CPU110は、測定部104から分析対象物のスペクトルを取得する。CPU110は、必要に応じて、分析情報データとステップS120で得た庫内状態とを参照しながら、今回取得したスペクトルと計算モデルデータとに基づいて、測定した食品(分析対象物)の成分に関して、定量分析または定性分析を行なう。
【0094】
このとき、計算モデルデータは分析で用いる優先度の高い候補として参照される。もし、計算モデルデータによって所望の分析結果が得られず、分析プログラムによって他の計算モデルが検索された場合は、その最終的に用いた最適な計算モデルをメモリ102に記憶する。
【0095】
分析プログラムに従った所望の分析結果が得られると、CPU110は、分析結果と分析終了の告知とをディスプレイ101に表示させる(ステップS130)。
【0096】
CPU110は、最終的に、使用した計算モデルデータと、使用した分析情報データと、ユーザの入力情報と、今回得られた分析結果とを関連付けて、メモリ102に記憶させる(ステップS132)。CPU110は、成分分析処理を終了する。
【0097】
以上説明したように、成分分析装置100は、食品の成分分析において、季節や気候、食品の種類、ユーザの環境などに計算モデルが大きく影響される食品に対しても、ユーザが選択した調理モードや自動調理メニューの情報を分析処理に利用し、計算モデルの検索や選択に反映することで、簡便、迅速に精度よく分析を行なうことができる。
【0098】
<応用例>
上述したように、成分分析装置100の一例としては、オーブンレンジや電子レンジなどが考えられる。そして、成分分析の対象としては、分析対象である食品の糖分、脂質、カロリー、水分、雑菌、腐敗など、すなわち食品に含まれる成分や品質に関わる特性が考えられる。
【0099】
そして、分析や演算に用いられるデータは、食品名、分量、材料、調理シーケンス、成分分析の対象となった成分の種類、成分の濃度、成分の量、分析対象物の特性、温度、湿度、オーブンレンジで調理した履歴や、使用頻度、を含み得る。
【0100】
<本実施の形態のまとめ>
以上説明したように、本実施の形態によれば、食品を調理する機能と食品に含まれる成分を分析する機能とを備えた成分分析装置100において、ユーザが操作部103によって調理モードや調理メニューを選択したときに知ることができる情報を分析に反映させる。
【0101】
たとえば調理メニューからは食品の種類や分量や配置などを予め知ることができ、調理モードからは調理終了後の食品の温度などを予め知ることができるので、これらの情報を元に最適な計算モデルを迅速に検索したり、分析条件として用いて正確な分析処理を行ったりすることができる。
【0102】
また、分析を実行するときにユーザが分析対象を指定したり、分析条件を入力したりするという手間を省くことができる。
【0103】
通常、成分分析においては、試料の定量を予測したり、定性を識別したりする際の演算や分析には、分析対象物の種類や状態、環境や分析する際の測定条件が大きく影響する。そのため、計算モデルは分析する食材の種類や温度、あるいは大きさや季節ごとなどの条件に応じて用意する必要がある。たとえばリンゴならリンゴの、メロンならメロンの検量線やキャリブレーションモデルなどが用いられる。
【0104】
さらに、分析時の温度や湿度や周囲の明るさや振動状態などの条件や、調理部であればどういう調理シーケンスを用いたかといった測定条件や分析対象物の状態も考慮して最適な計算モデルを選択して演算・識別することで、精度よく分析される。特に近赤外の光を試料に照射して得られるスペクトルは、温度と湿度に大きく影響されるために、温度と湿度を計算モデル選択に反映させることは正確な分析のために有効である。
【0105】
ところが汎用の成分分析装置であって分析対象物が多岐に渡ると計算モデルのデータベースは膨大となり、分析対象物に適した計算モデルの検索や絞込みや選択の処理が煩雑になり、また最適な計算モデルを選びそこなうことで分析の精度が落ちる可能性もある。
【0106】
そこで、本実施の形態では、調理機能と成分分析機能が組み合わさったことで連携して情報をやりとりできる機能を備え、具体的には、ユーザが調理モードや調理メニューを選ぶとそれらに対応した調理情報と、その実行に伴って生じる分析の条件や測定の状態を自動的に分析処理に反映させることで、先例では得られなかった、最適な計算モデルの選択を速くかつ正確に、また分析をより精度よくできるという効果が発揮される。
【0107】
さらに、従来のようにユーザが分析するものの種類を自分で手動で入力するなどの手間がかかることなく、あたかも装置が自動的に分析対象物の種類を判別しているような印象をユーザに与えることができる。
【0108】
さらに、場合によっては装置に付属しているメニューブックなどに掲載された調理メニューには、その装置での調理に適した調理温度や量や材料、食材の切り方や大きさなどが詳しく指定されていてユーザがそれを実行することがわかっている。よってユーザが選んだ調理メニューの情報を分析に反映させることで、装置のセンサだけでは正確に把握しきれない情報を知ることができたり、調理前に測定条件のいくつかを知るあるいは予測することができたりする。
【0109】
特に、近赤外分光法などの光を用いた成分分析ではこうした種類や重量や大きさといった条件によって、スペクトルや計算モデルが大きく左右されるために、これら調理条件を反映すれば、より精密な成分の定量分析や定性分析を行なうことができる。
【0110】
また、自動調理メニューによっては肉や野菜や魚をセットで調理するものもある。そこで、メニューブックなどに、調理メニュー毎に、調理手順や、図5のように各食材の種類や大きさや鉄板への並べ方などを掲載する。あるいは、CPU110が、メモリ102を参照して、調理メニュー毎に、調理手順と、図5のように各食材の種類や大きさや鉄板への並べ方などを表示する。これらの場合には、メモリ102が、調理メニュー毎に、測定部104による測定方法(測定範囲)や、どの位置に何の食材があるかなどを予め記憶しておく。そして、CPU110が、調理メニューの選択を受け付けると、測定部104に、選択された調理メニューに対応する測定方法(測定範囲)で測定を行わせる。
【0111】
従来の成分分析装置では、どの位置や範囲にどの食材があるかがわからないのでまんべんなく光を照射できるように光源を縦横に動す必要があった。またスペクトルに様々な食材の情報が混在して分析が困難になることを避けるために、やむをえずユーザーが手で食材ごとに分けて別々に測定するといった手間が必要であった。しかし、図5のようにこうした位置情報が判明していれば、光源の移動も必要なだけで済むのでより手間も電力も時間も短縮でき、また場所によって食材を識別して測定できるのでユーザーが手で食材を分ける手間が要らずまとめて測定できる。
【0112】
また、本実施の形態における各データベースは自動調理メニューだけでなくユーザが調理条件を変更した場合に応じて変わる変数の情報も記憶しているので、自動調理メニュー機能に任せる場合だけでなくユーザの所望の調理を実行した場合にも対応できる。ユーザが所望する成分分析のための演算を迅速に行なうことができる場合には、自動調理メニューのみに対応する計算モデルのみが予め用意した場合、ユーザが用いると思われるほぼ全ての食材に応じた膨大な計算モデルや情報データをメーカーが作成する場合に比べて労力を低減でき、調理部に関するコストを低減でき、最適な情報や計算モデルを抽出する処理も低減できるという利点があるが、ユーザが細かな調理条件を変更する場合の成分分析に調理情報を反映できない。
【0113】
また、本実施の形態では、時計機能によって得られる日時の情報を分析に反映することで、季節による食品の成分の変化や、時間帯による温度や湿度などの条件の変化も分析に考慮することができるので正確な結果を得ることができ、またユーザの使用履歴を記憶装置に記憶するときに日時の情報も併せて記憶できるため、行動履歴の情報として利用するのに有益である。
【0114】
なお、本実施の形態では分析過程をメモリ102に一時保存して最終的な結果をメモリ102に記憶するなどして各種情報を適宜記憶しているが、成分分析のための演算を精度よく行なえるのであれば必ずしもそれぞれの情報を記憶装置に記憶せずとも良い。しかし、分析過程において最適な計算モデルを絞り込む作業で試行を繰り返す際には、経過を一時保存しておけばより正確に処理を行なうことができ、またユーザの使用形態とその分析において得られた結果を蓄積しておけば、分析やメンテナンスに利用することができ、望ましい。
【0115】
また、本実施の形態においては、図3、図4に示されるようなリレーショナルデータベースとして識別ナンバーやIDで関連付けて各データベースに情報を格納しているが、この構成に限るものではなく、成分分析のための演算を精度よく行なえるのであれば、必ずしも図3や図4のとおりのデータテーブルでなくともよい。しかし、計算モデルの検索を迅速に行なうためには、各情報が整理されて分類され、関連付けられていることが望ましい。
【0116】
また、本実施の形態では、センサ105によって成分分析装置100や分析対象物の温度や湿度を検知しているが、必ずしも検知部を設けずともユーザの入力内容を反映して成分分析を行なうことができる。しかし、光スペクトルは測定条件に影響されるために、測定前に検知装置によって測定環境のチェックを行って安定した環境で測定を行なえるか確かめておくことが望ましい。
【0117】
なお、本実施の形態では、図11に示すように、CPU110が複数の機能ブロックを実現する構成としているが、このような構成に限るものではなく、成分分析のための演算を精度よく行なえるのであれば、複数の機能ブロックが1つの機能ブロックにまとめられてもよいし、1つの機能ブロックが複数の機能ブロックに分割されてもよい。
【0118】
また、本実施の形態においては、出力デバイスをディスプレイ101によって実現しているが、これに限るものではなく、外部メディアに情報を記録するための外部記憶装置であってもよいし、プリンタであってもよい。
【0119】
また、本実施の形態においては、調理情報や分析情報や計算モデルを記憶したデータベースを成分分析装置100内に格納してこれらの情報を分析に利用しているが、これに限るものではなく、外部のデータベースや外部の管理サーバに格納された情報を分析に利用したり、情報をやりとりしたりしても良い。この場合、ネットワークに接続するための要素が必要とはなるが、成分分析装置100が管理サーバに格納されている最新の情報を利用できたり、管理サーバがネットワークを介して成分分析装置100をメンテナンスすることによって成分分析装置100の分析精度を維持したりすることができる。
【0120】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について説明する。上述の実施の形態1に係る成分分析装置100は、成分分析専用の光源、換言すれば測定部104専用の光源からの光を用いて、分析対象物の成分を分析するものであった。
【0121】
一方、本実施の形態に係る成分分析装置100Bは、焼き魚など焦げ目を付けるためのハロゲンランプ107を有する。換言すれば、成分分析装置100Bは、ハロゲンランプからの光を用いて、分析対象物の成分を分析するものである。一般に、ハロゲンランプ107は可視光から赤外など広い波長の光を発生することができるので、光スペクトルによって分析対象の成分分析を行なうための照射光源として用いることができる。
【0122】
以下では、実施の形態1に係る成分分析装置100と同様の構成については、説明を繰り返さない。
【0123】
図7は、本実施の形態に係る成分分析装置100Bのハードウェア構成を示すブロック図である。図7に示すように、本実施の形態に係る成分分析装置100Bは、ハロゲンランプ107を有する点において、実施の形態1の成分分析装置100と異なる。また、本実施の形態に係る測定部104Bは、ハロゲンランプからの光の分析対象物での反射光のスペクトルを取得する点において、実施の形態1の測定部104と異なる。
【0124】
図8は、本実施の形態に係る成分分析装置100Bの機能構成を示すブロック図である。図8に示すように、本実施の形態に係る調理制御部112Bが、食品に焦げ目をつけるために、調理部106とともに、または調理部106の動作の後に、ハロゲンランプ107を制御する点において、実施の形態1の調理制御部112Bと異なる。
【0125】
<分析処理>
次に、本実施の形態に係る成分分析装置100Bにおける処理手順について説明する。図9は、本実施の形態に係る成分分析装置100BのCPU110が実行する成分分析処理を示すフローチャートである。
【0126】
図9を参照して、ユーザが調理過程で焦げ目をつける調理モードまたは調理メニューを操作部103から選択する。すなわち、CPU110が、調理命令を受け付ける(ステップS202)。その後、CPU110は、入力内容に従って調理を開始する。焦げ目をつける調理モードまたは調理メニューには、例えば焼き魚や焼き鳥などが挙げられ、焦げ目をつけるための光源にはハロゲンランプ107が挙げられる。
【0127】
ユーザが調理命令を入力し終える。調理開始の指示信号をCPU110が受信すると(ステップS204でYESの場合)、CPU110は、処理をステップS206へと進める。
【0128】
ステップS206では、CPU110は、成分分析プログラムを起動する。ただし、成分分析プログラムは、ステップS202よりも前から起動されるものであってもよい。そのプログラムに従って、CPU110は、ステップS202で選択された調理モードあるいは調理メニューに基づき、調理情報データベース1021から、その所定の調理モードや調理メニューに対応する食材や温度やメニュー内容などが含まれる調理情報データを検索し、読み出す(ステップS206)。
【0129】
このとき、調理情報データは焦げ目を付ける為のハロゲンランプ107の動作情報や、ハロゲンランプ107の加熱ワット、加熱時間、加熱温度などを含む。
【0130】
ステップS206で取得された調理情報データは、ユーザがステップS202で入力した内容と共にメモリ102に一旦記憶される。
【0131】
CPU110は、ステップS206で取得した調理情報データ、および、ユーザがステップS202で入力した内容に基づいて、分析情報データベース1022からそのメニューの分析情報データを読み出す(ステップS208)。
【0132】
CPU110は、抽出した分析情報データを分析処理部115へと送信する(ステップS210)。
【0133】
CPU110は、ステップS210で抽出した分析情報データに基づいて、計算モデルデータベース1023から計算モデルデータを検索する(ステップS212)。
【0134】
CPU110は、最適な計算モデルデータを絞り込む際に、ステップS210で取得したパラメーターを参照する。
【0135】
CPU110は、抽出した計算モデルデータを分析処理部115へと送信する(ステップS214)。
【0136】
CPU110は、抽出した計算モデルデータと分析情報データとを関連付けてメモリ102に一時保存する(ステップS216)。
【0137】
焦げ目を付ける過程を含む調理処理が終了すると、調理部106は、CPU110に対して調理終了の指示信号を送信する。CPU110は、調理終了の指示信号を受信すると(ステップS218においてYESである場合)、センサ105に温度や湿度、蒸気圧などの庫内状態を検知させる(ステップS220)。すなわち、センサ105は、CPU110に検知結果を送信する。
【0138】
CPU110は、庫内が測定部104によって分析対象の光スペクトルを測定可能な状態であるかを判断する(ステップS222)。庫内が測定可能である場合(ステップS222においてYESである場合)、CPU110は、ステップS226に進む。
【0139】
庫内が測定不可能である場合(ステップS222においてNOである場合)、CPU110は、庫内の状態を図示しない手段で調整するか状態が落ち着くまで待機する(ステップS224)。CPU110は、ステップS220からの処理を繰り返す。
【0140】
ステップS226において、CPU110は、センサ105に、焦げ目をつけるために用いたハロゲンランプ107の状態、たとえば温度や発光強度などを検知させる(ステップS226)。
【0141】
CPU110は、ステップS226で得た検知結果に基づいて、ハロゲンランプ107を分析対象の光スペクトルを得るための照射光源として用いることが可能な状態であるかを判断する(ステップS228)。
【0142】
ステップS228において、ハロゲンランプを測定に用いることが可能である場合(ステップS228においてYESである場合)、CPU110は、ディスプレイ101を介して、調理が終了したこと、続いて測定を行なうことを告知する(ステップS232)。
【0143】
測定が不可能な状態である場合(ステップS228においてNOである場合)、図示しない手段でハロゲンランプ107の電力などを調整するか状態が温度が落ち着くまで待機する(ステップS230)。すなわち、CPU110は、ランプの状態が測定に用いることが可能になるまで、ステップS226からの処理を繰り返す。
【0144】
CPU110は、測定部104に測定を開始させ、分析を開始する(ステップS234)。
【0145】
CPU110は、測定部104から分析対象物のスペクトルを取得する。さらに、分析処理部115としても機能するCPU110は、分析情報データと、ステップS220およびステップS226で得た庫内状態とランプの状態といった条件を必要に応じて参照しながら、今回取得したスペクトルと計算モデルデータとを元に演算することによって、測定した食品の成分の定量や定性を分析する。
【0146】
以降の処理については、本実施の形態に関する説明と実施の形態1に関する説明とから明らかであるため、ここでは説明を繰り返さない。
【0147】
<本実施の形態のまとめ>
以上説明したように、実施の形態2では、焦げ目をつける過程を含む調理モードあるいは調理メニューをユーザが選択した場合に、ハロゲンランプ107を分析対象の光スペクトル取得のための照射光源として利用する。そのため、調理におけるランプの状態の情報を予めデータベースに格納しておいて分析に反映させたり、調理後のハロゲンランプの状況を検知してそのまま光源として使える状態か確認して分析に使用したりするものである。
【0148】
光スペクトルは光源の状態に大きく影響されるため、調理後のハロゲンランプの状態に対してどのような光スペクトルが得られるかデータがあれば分析結果がより正確になる。さらに、ハロゲンランプが測定に使用可能であるか検知を行って調整しているため、より安定した光スペクトルが得られる。
【0149】
また、ハロゲンランプを焦げ目などの補助熱源および照射光源として兼用しているので、装置がコンパクトになり、電力や値段の節約にもなる。
【0150】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について説明する。上述の実施の形態1に係る成分分析装置100は、食品などを調理するための装置であった。
【0151】
一方、本実施の形態に係る成分分析装置100Cは、食品以外の分析対象物の成分を分析するための装置である。
【0152】
たとえば、本実施の形態に係る成分分析装置100Cとしては、空調機が挙げられる。成分分析の対象物は、無線あるいは有線で空調機と接続された測定デバイスによって測定される箇所、たとえば空調機周辺の空気や特定の保管ケース内や倉庫、部屋などの、空調機によって調整される空気である。この場合には、本実施の形態に係る成分分析装置100Cは、実施の形態1に係る調理部106の代わりに、たとえば運転部108としてのヒートポンプ、セントラルヒーティング、冷却器、暖房機構、換気機構、加湿機構、除湿機構などを有する。
【0153】
たとえば、本実施の形態に係る成分分析装置100Cとしては、空気清浄機が挙げられる。成分分析の対象物は、無線あるいは有線で空気清浄機と接続された測定デバイスによって測定される箇所、たとえば空気清浄機の周辺の空気や特定の保管ケース内や倉庫、部屋などの、空気清浄機によって清浄化処理される空気である。本実施の形態に係る成分分析装置100Cは、実施の形態1に係る調理部106の代わりに、たとえば運転部108としてのエアフィルタやイオン発生機、加湿機構、除湿機構などを有する。
【0154】
たとえば、本実施の形態に係る成分分析装置100Cとしては、洗濯機が挙げられる。成分分析の対象物は、洗濯される衣類である。この場合には、本実施の形態に係る成分分析装置100Cは、実施の形態1に係る調理部106の代わりに、運転部108としての洗濯ドラムや乾燥器を有する。
【0155】
たとえば、本実施の形態に係る成分分析装置100Cとしては、浄水器が挙げられる。成分分析の対象物は、ろ過や殺菌といった浄水や電解といった整水などの処理が施される水道水などである。この場合には、本実施の形態に係る成分分析装置100Cは、実施の形態1に係る調理部106の代わりに、たとえば運転部108としてのろ過フィルタや紫外線発生器、ミネラル成分付加機構、電気分解機構などを有する。
【0156】
以下では、実施の形態1に係る成分分析装置100と同様の構成については、説明を繰り返さない。
【0157】
<成分分析装置のハードウェア構成と機能構成>
図10は、本実施の形態に係る成分分析装置100Cのハードウェア構成を示すブロック図である。図11は、本実施の形態に係る成分分析装置100Cの機能構成を示すブロック図である。
【0158】
図10および図11に示すように、本実施の形態に係る成分分析装置100Cは、運転部108を有する点において、実施の形態1の成分分析装置100と異なる。また、本実施の形態に係る測定部104Cは、食品以外の空気や衣類や水からの透過光や反射光のスペクトルを取得する点において、実施の形態1の測定部104と異なる。
【0159】
本実施の形態に係るディスプレイ101は、CPU110からの信号に応じて、運転モードや自動運転コースの内容や進行状況、画像やテキストなどを表示する。また、ディスプレイ101はCPU110からの信号に応じて、分析結果や測定日時などの情報、動作や分析の残り時間や終了の告知といったお知らせも表示する。
【0160】
操作部103は、スイッチやタブレットやハンドルやタッチパネルなど、ユーザから各種の命令を受け付けられるように構成されている。たとえば、操作部103は、運転モードや自動運転コースとその内容を選択するためのものであり、またユーザから分析機能に関する命令を受け付けて、それらの情報をCPU110に入力する。
【0161】
また、操作部103は、ユーザが選択した運転モードや自動運転コースや成分分析、測定を実行させるための操作部分と、ユーザが変更可能な運転条件や、分析機能のオプションなどを設定するための操作部分を含む。
【0162】
測定部104Cは、分析対象物に光を照射して、分析対象物からの反射光あるいは透過光を受ける。測定部104Cは、反射光あるいは透過光の波長毎の強度を示すデータをCPU110に入力する。すなわち、測定部104Cは、あるいは測定部104CとCPU110とは、分析対象物に対応する光スペクトルを取得する。
【0163】
メモリ102は、調理情報データベース1021の変わりに、運転情報データベース1021Cを格納する。運転情報データベース1021Cは、操作部103によってユーザが選択することが可能な運転モードや自動運転コースのそれぞれを実行するために必要とされる、運転シーケンスや運転条件などを記憶している。
【0164】
分析情報データベース1022Cは、ユーザが選択したり変更したりすることが可能な複数の運転モードや運転コースと、分析対象物の温度や湿度、装置内の温度や湿度、季節、環境センサ105から得られる測定環境といった、分析の条件やパラメーターに対応付けて、それらの運転モードや運転メニューと分析の条件やパラメーターとに適した計算モデルを特定するためのモデルIDを格納している。
【0165】
なお、一般に自動あるいは半自動の運転モードや運転コースにはユーザが一部の運転条件を変更して設定する機能が組み込まれてユーザの所望の制御ができるようになっているが、分析情報データベース1022は変更された運転条件に応じて変化するデータも記憶している。
【0166】
計算モデルデータベース1023Cは、モデルIDに対応付けて、成分の定量分析や定性分析に使用する計算モデル、例えば多変量解析であれば検量線やキャリブレーションモデル、回帰分析であれば回帰式、定性分析であれば分類基準、パターン認識であればパターンモデルなど(これらを総称して計算モデルデータとする。)、分析段階の演算に使用する計算モデルを記憶している。
【0167】
モード読出部111は、操作部103を介して、ユーザから運転指令を受け付ける。モード読出部111は、運転指令に基づいて、メモリ102から運転処理手順を読み出す。より詳細には、モード読出部111は、メモリ102に格納されている運転情報データベース1021Cを参照して、運転処理手順を取得する。
【0168】
ここで、運転情報データベース1021Cは、操作部103を介して、ユーザが選択することが可能な複数の運転モードや運転メニューのそれぞれを実行するために必要とされる、運転シーケンス、モータの駆動条件などを格納している。
【0169】
運転制御部112Cは、運転部108を制御することによって、ユーザからの運転指令に対応する運転を実行する。たとえば、運転制御部112Cは、運転部108としてのヒートポンプを動作させることによって、空気を暖めたり冷やしたりする。運転制御部112Cは、運転部108としてのファンやイオン発生器を動作させることによって、空気を浄化する。運転制御部112Cは、運転部108としての洗濯ドラムを動作させることによって、衣類を洗濯・脱水・乾燥させる。運転制御部112Cは、運転部108としての濾過フィルタを機能させることによって、浄水する。
【0170】
モデル決定部113は、運転指令に基づいて、メモリ102から今回の成分分析に適したモデル(モデルID)を決定する。
【0171】
分析情報データベース1022Cは、ユーザが選択したり変更したりすることが可能な複数の運転モードや運転メニューのそれぞれの条件での運転中や運転後の分析段階における分析対象物や成分分析装置100Cの状態、たとえば、室内の空気の温度や湿度、洗濯ドラム内の空気の温度や湿度、浄水機内の水の温度、また季節といった、分析の条件やパラメーターとして参照する情報を記憶している。
【0172】
なお、一般的に、運転部108にはユーザが運転モードや運転メニューの一部の温度・時間・材質などといった運転条件を変更して設定する機能が組み込まれてユーザの所望の制御ができるようになっているが、分析情報データベース1022Cは変更された運転条件に応じて変化するデータも記憶している。
【0173】
そして、本実施の形態においては、モデル決定部113は、運転対象(分析対象)に含まれている可能性が高い成分に関するモデルを選択したり、運転後の温度や湿度に適したモデルを選択したりする。
【0174】
なお、本実施の形態においては、モデル決定部113は、環境センサ105から、成分分析装置100内の、または分析対象物の周囲の、温度や湿度や明るさなどを取得する。モデル決定部113は、環境センサからのデータと、運転指令とに基づいて、成分分析に適したモデルを決定する。
【0175】
モデル読出部114は、メモリ102から今回の成分分析に適したモデルを読み出す。より詳細には、モデル読出部114は、メモリ102の計算モデルデータベース1023Cから決定されたモデルIDに対応するモデルを表わすデータを読み出す。
【0176】
計算モデルデータベース1023Cは、成分の定量分析や定性分析に使用する計算モデル、例えば多変量解析であれば検量線やキャリブレーションモデル、回帰分析であれば回帰式、定性分析であれば分類基準、パターン認識であればパターンモデルなどの(これらを総称して計算モデルデータとする)、分析段階の演算に使用する計算モデルを記憶している。
【0177】
分析処理部115は、測定部104Cを制御することによって、分析対象物の成分を分析する。より詳細には、分析処理部115は、測定部104Cに分析対象物に可視光線や紫外線や赤外線やその他の電磁波を照射させる。そして、分析処理部115は、測定部104Cを用いて、分析対象物の透過光あるいは反射光を取得する。分析処理部115は、透過光あるいは反射光のスペクトルと、メモリ102から読み出したモデルとに基づいて、分析対象物に含まれる成分を分析する。
【0178】
換言すれば、測定部104Cは、分析処理部115の制御下で、光源で発生した光を分析対象物に照射する。測定部104Cは、分析対象物からの透過光あるいは反射光を図示しない分光器や受光素子で検出する。測定部104Cは、検出した光スペクトルを検出信号として分析処理部115へ送信する。
【0179】
分析処理部115は、測定部104Cからの検出信号を吸光度スペクトルに変換する。分析処理部115は、分析情報データベース1022から抽出された分析情報データを参照して、計算モデルデータベース1023から抽出された計算モデルデータと測定部104Cで得られた吸光度スペクトルを用いて演算を実行することで、分析対象物に含まれる成分の定性分析や定量分析を行なう。
【0180】
分析処理部115は、分析結果を出力する。たとえば、分析処理部115は、分析結果をディスプレイ101に表示させる。あるいは、分析処理部115は、分析結果をメモリ102に記憶する。あるいは、分析処理部115は、分析結果を成分分析装置100に着脱可能な記録媒体に格納する。あるいは、分析処理部115は、分析結果を外部の機器に送信する。
【0181】
CPU110は、ユーサーが選択する運転モードや運転コース、装置が得た分析結果や、図示しない時計機能によって得られる現在時間や測定日時、またエラー表示など、成分分析装置100Cの状態、その他のユーザへのお知らせなどを示すテキストあるいは画像をディスプレイ101に表示させる。
【0182】
本実施の形態においては、運転モードや運転コースに依存する分析対象物の状態や光スペクトルの測定条件や分析条件や、それらの条件に対応する計算モデルなどのデータベースを予め作成しておき、ユーザが運転モードや運転コースを選択したときにそれらの情報を抽出して分析に用いることができる。
【0183】
具体的には、ユーザが運転モードや運転コースを選択すると、その実行に伴う運転時間や温度、湿度、分量、運転手順、シーケンス時間などの情報を運転情報データベースから抽出し、それらの条件で実行したときの、分析対象物を分析する時の温度や湿度といった条件を分析情報データベースから抽出することができ、その条件を参照して最適な計算モデルをデータベースから迅速に検索したり、分析の演算のパラメーターとして用いることで分析を精度よく行なうことができる。
【0184】
<分析処理>
次に、本実施の形態に係る成分分析装置100Cにおける処理手順について説明する。図12は、本実施の形態に係る成分分析装置100CのCPU110が実行する成分分析処理を示すフローチャートである。
【0185】
図12を参照して、ユーザが所望の運転モードまたは運転コースを操作部103から選択する。すなわち、CPU110は、操作部103を介してユーザから運転モードまたは運転コースを受け付ける。このとき、ユーザが所望の運転条件(分量や時間など)を変更して入力することもできる。
【0186】
運転モードあるいは運転コースが選択されると、CPU110は、入力内容に従って運転を開始する(ステップS302)。
【0187】
ユーザが運転命令を入力し終える。CPU110は、運転開始の指示信号を受信すると(ステップS304でYESの場合)、処理をステップS306に進める。
【0188】
ステップS306では、CPU110は成分分析プログラムを起動する。ただし、成分分析プログラムは、ステップS302よりも前から起動されるものであってもよい。そのプログラムに従って、CPU110は、ステップS302で選択された運転モードあるいは運転コースに基づき、運転情報データベース1021Cから、その所定の運転モードや運転コースに対応する運転情報データを検索し、読み出す(ステップS306)。
【0189】
運転情報データには、測定対象の種類や分量、運転時間や運転内容、温度や湿度、図示しない時計機能から判明する日付や日時などの情報が含まれる。
【0190】
CPU110は、ステップS306で取得した運転情報データおよびユーザがステップS302で入力した内容に基づいて、分析情報データベース1022Cから、その内容で運転した分析対象物を測定するときの温度や湿度や時間や分量といった条件や、計算モデルとの対応などが含まれた分析情報データを読み出す(ステップS308)。
【0191】
ここでは、分析情報データは、運転モードあるいは運転メニューを実行した後の測定の際の温度や分量、分析の際の条件、またユーザが運転条件を変更した場合に応じて変化する変数や、また運転コースに対応する計算モデルのIDなどがデータテーブルとして分析情報データベース1022Cに格納されている。
【0192】
CPU110は、抽出した分析情報データを分析処理部115へ送信する(ステップS310)。
【0193】
さらに、CPU110は、ステップS310で抽出した分析情報データに基づいて計算モデルデータベース1023Cから計算モデルデータを検索して抽出する(ステップS312)。
【0194】
ここでは、運転情報データベース1021Cと、分析情報データベース1022Cと、計算モデルデータベース1023Cとに記憶されている情報は、互いにID番号などによって紐付けられている。運転情報データベース1021Cのデータには、運転モードや運転コースなどの種類に識別IDが割り振られてもよい。分析情報データベース1022Cのデータには、識別IDを含む条件ごとに対応した計算モデルに対するIDが割り振られてもよい。計算モデルデータベース1023Cに記憶されている計算モデルは、IDによって識別・分類されていてもよい。こうして各データの関連付けを行っておけば、検索の補助となるので、検索時間の短縮や分析処理の軽減が可能となる。
【0195】
この際、ユーザが成分分析装置100Cが予め有する運転モードや運転コースをそのまま選択した場合のみならず、分量や時間など一部の条件を変えて運転する場合などのそれぞれのバリエーションに対応したデータも記憶させておけば、変えられた条件に応じて最適な計算モデルデータを検索することができる。
【0196】
CPU110は、抽出した計算モデルデータを分析処理部115へ送信する(ステップS314)。
【0197】
CPU110は、抽出した計算モデルデータと運転情報データとを関連付けてメモリ102に一時保存する(ステップS316)。
【0198】
所定の運転モードや運転コースの実行処理が終了すると、運転部108は、CPU110に対して運転終了の指示信号を送信する。
【0199】
運転終了の指示信号をCPU110が受信すると(ステップS318でYESの場合)、CPU110は処理をステップS320に進める。
【0200】
運転終了の指示信号を受信したCPU110は、環境センサ105に、装置内の状況、たとえば温度や湿度などを検知させる(ステップS320)。
【0201】
CPU110は、ステップS320で得た検知結果を元に、成分分析装置100Cが測定部104Cによって分析対象の光スペクトルを測定することが可能な状態であるかを判断する(ステップS322)。
【0202】
このとき、成分分析装置100Cが測定可能な状態である場合(ステップS322においてYESである場合)、CPU110は、ディスプレイ101に、運転が終了したこと、続いて測定に入ることを告知する(ステップS326)。
【0203】
成分分析装置100Cが測定不可能な状態である場合(ステップS322においてNOである場合)、成分分析装置100Cの状態を図示しない手段で調整するか状態が落ち着くまで待機する(ステップS324)。CPU110は、ステップS320からの処理を繰り返す。
【0204】
ステップS328では、CPU110は、測定部104Cに測定を開始させるとともに、分析を開始する(ステップS328)。
【0205】
CPU110は、測定部104Cを介して、分析対象物のスペクトルを取得する。CPU110は、必要に応じて分析情報データとステップS320で得た庫内状態とを参照しながら、今回取得したスペクトルと計算モデルデータとに基づいて、分析対象の成分の定量分析または定性分析を実行する。
【0206】
このとき、計算モデルデータは分析で用いる優先度の高い候補として参照される。もし計算モデルデータによって分析プログラムに従った所望の分析結果が得られなかった場合、そして別の計算モデルが最適であった場合、最終的に用いた最適な計算モデル(当該別の計算モデル)をメモリ102に記憶する。
【0207】
分析プログラムに従った所望の分析結果が得られると、CPU110は、分析結果と測定終了の告知をディスプレイ101に表示させる(ステップS330)。
【0208】
CPU110は、最終的にメモリ102に記憶していた計算モデルデータと分析情報データとユーザの入力情報と、今回得られた分析結果とを関連付けてメモリ102に記憶させ、処理を終了する(ステップS332)。
【0209】
以上説明したように、成分分析装置100Cは、ユーザが選択した運転モードや自動運転コースの情報を分析処理に利用し、計算モデルの検索や選択に反映することで、簡便、迅速に精度よく分析を行なうことができる。
【0210】
<応用例>
本実施の形態に係る成分分析装置100Cは、たとえば、冷蔵庫や、洗濯機や、浄水器や、空気清浄機、エアーコンディショナー、保存装置などによって実現される。そして、成分分析の対象としては水分、雑菌、汚れ、腐敗など、装置内の物体の状態や品質、装置の汚染状況、装置が置かれた環境の状態に関わる成分や品質に関わる特性が考えられる。
【0211】
<本実施の形態のまとめ>
以上説明したように、本実施の形態によれば、空気や薬品、水質や食品など様々な分析対象に含まれる成分を分析する機能と、それらの分析対象に洗濯や清浄や加工などの何らかの作用を加える機能とを備えた成分分析装置100Cにおいて、ユーザが操作部103によって運転モードや運転コースを選択したときに知ることができる情報を分析に反映させる。
【0212】
たとえば、洗濯機は、ユーザがウールモードや標準モードなどの自動運転コースを選んだり強弱の運転モードを選んだりすることによって、分析対象である洗濯物の素材や洗濯実行後の洗濯槽内部の水分の様子などを分析前におおまかに知ることができる。
【0213】
空気清浄機やエアコンは、風量の強弱や清浄モードなどの運転モードをユーザが選択することによって、分析対象である部屋内の温度や空気の状態をおおまかに知ることができる。また、空気清浄機やエアコンは、当該モードを分析のための情報として用いることができる。
【0214】
浄水器においては、しばらく電源をOFFにしておくタイマーや、節電モードや、家族の人数や、お湯と浄水の切り替え操作などの命令をユーザが選択することによって、分析対象である水の一日の使用量や、温度や、使用量が特に多い時間帯や、旅行などでしばらく使わなかった期間などの状態をおおまかに知ることができる。浄水器は、当該命令を分析のための情報として用いることができる。
【0215】
よって、これらの情報を元に最適な計算モデルを検索したり、分析条件として用いて分析処理を行ったりすることができる。
【0216】
また、分析を実行するときにユーザが分析対象を指定したり分析条件を入力したりするという手間を省くことができる。
【0217】
つまり、分析対象物に所望の作用をする機能と成分分析の機能とが組み合わさったことで連携して情報をやりとりできるという効果を利用している。
【0218】
通常、成分分析において試料の定量を予測したり定性を識別したりする際の演算や分析には、分析対象物の種類や状態、環境や分析する際の測定条件が大きく影響する。よって、計算モデルは分析する対象物の種類や温度、あるいは大きさや季節ごとなどの条件に応じて用意する必要がある。
【0219】
さらに、分析時の温度や湿度や季節、どういう運転シーケンスを用いたかといった測定条件や分析対象物の状態も考慮して最適な計算モデルを選択して演算・識別することで、精度よく分析される。
【0220】
ところが汎用の成分分析装置であって分析対象物が多岐に渡ると、計算モデルのデータベースは膨大となり、分析対象物に適した計算モデルの検索や絞込みや選択の処理が煩雑になり、また最適な計算モデルを選びそこなうことで分析の精度が落ちる可能性もある。
【0221】
そこで、本実施の形態では、測定対象物に作用する装置の機能と成分分析機能が組み合わさったことで連携して情報をやりとりできる機能を備え、具体的には、ユーザが運転モードや運転コースを選ぶと、それらに対応した運転情報と、その実行に伴って生じる分析の条件や測定の状態を自動的に分析処理に反映させることで、先例では得られなかった、最適な計算モデルの選択を速くかつ正確に、また分析をより精度よくできるという効果が発揮される。
【0222】
さらに、従来のようにユーザが分析するものの種類を自分で手動で入力するなどの手間がかかることなく、あたかも装置が自動的に分析対象物の種類を判別しているような印象をユーザに与えることができる。
【0223】
特に、近赤外分光法などの光を用いた成分分析ではこうした種類や重量や大きさといった条件によって、スペクトルや計算モデルが大きく左右されるために、これら運転条件を反映させて装置のセンサだけでは正確に把握しきれない情報を知ることができたり、測定条件のいくつかを知りあるいは予測することができれば、より精密な成分の定量分析や定性分析を行なうことができる。
【0224】
また、本実施の形態における各データベースは自動運転コースだけでなくユーザが運転条件を変更した場合に応じて変わる変数の情報も記憶しているので、自動運転コース機能に任せる場合だけでなくユーザの所望の運転を実行した場合にも対応できる。ユーザが所望する成分分析のための演算を迅速に行なえるのであれば、自動運転コースのみに対応する計算モデルのみが予め用意した場合、ユーザが用いると思われるほぼ全ての分析対象物とその条件に応じた膨大な計算モデルや情報データをメーカーが作成する場合に比べて労力を低減できたり、成分分析装置のコストを抑えられたり、最適な情報や計算モデルを抽出する処理も低減できたりするという利点があるが、ユーザが細かな運転条件を変更する場合の成分分析に運転情報を反映できない。
【0225】
また、本実施の形態では、時計機能によって得られる日時の情報を分析に反映することで、季節による成分の変化や、測定時の温度などの条件の変化も分析に考慮することができるので正確な結果を得ることができ、またユーザの使用履歴を記憶装置に記憶するときにも日時の情報によってデータが整理された形で記憶できる。この場合には、メモリ102が、日付および時刻の少なくともいずれかとモデルとを対応付けて記憶する。CPU110が、時計から取得した日付および時刻の少なくともいずれかに対応するモデルをメモリ102から読み出して、当該モデルに基づいて成分分析を行う。
【0226】
なお、本実施の形態では分析過程をメモリ102に一時保存して最終的な結果をメモリ102に記憶するなどして各種情報を適宜記憶しているが、成分分析のための演算を精度よく行なえるのであれば必ずしもそれぞれの情報を記憶装置に記憶せずとも良い。しかし、分析過程において最適な計算モデルを絞り込む作業で試行を繰り返す際には、経過を一時保存しておけばより正確に処理を行なうことができ、またユーザの使用形態とその分析において得られた結果を蓄積しておけば、分析やメンテナンスに利用することができ、望ましい。
【0227】
また、本実施の形態においては、リレーショナルデータベースとして識別ナンバーやIDで関連付けて各データベースに情報を格納しているが、この構成に限るものではなく、成分分析のための演算を精度よく行なえるのであれば、必ずしもこのとおりのデータテーブルに構成されていなくともよい。しかし、計算モデルの検索を迅速に行なうためには、各情報が整理されて分類され、関連付けられていることが望ましい。
【0228】
また、本実施の形態では、環境センサ105によって成分分析装置100Cや分析対象物の温度や湿度を検知しているが、必ずしも検知部を設けずともユーザの入力内容を反映して成分分析を行なうことができる。しかし、光スペクトルは測定条件に影響されるために、測定前に検知装置によって測定環境のチェックを行って安定した環境で測定を行なえるか確かめておくことが望ましい。
【0229】
なお、本実施の形態では、図11に示すように、CPU110が複数の機能ブロックを実現する構成としているが、このような構成に限るものではなく、成分分析のための演算を精度よく行なえるのであれば、複数の機能ブロックが1つの機能ブロックにまとめられてもよいし、1つの機能ブロックが複数の機能ブロックに分割されてもよい。
【0230】
また、本実施の形態においては、出力デバイスをディスプレイ101によって実現しているが、これに限るものではなく、外部メディアに情報を記録するための外部記憶装置であってもよいし、プリンタであってもよい。
【0231】
また、本実施の形態においては、運転情報や分析情報や計算モデルを記憶したデータベースを成分分析装置100C内に格納してこれらの情報を分析に利用しているが、これに限るものではなく、外部のデータベースや外部の管理サーバに格納された情報を分析に利用したり、情報をやりとりしたりしても良い。この場合、ネットワークに接続するための要素が必要とはなるが、成分分析装置100が管理サーバに格納されている最新の情報を利用できたり、管理サーバがネットワークを介して成分分析装置100をメンテナンスすることによって成分分析装置100の分析精度を維持したりすることができる。
【0232】
<実施の形態1〜3のまとめ>
換言すれば、成分分析の精度は計算モデルの精度に依存する。計算モデルは、環境、測定条件、分析対象物の種類によって大きく左右される。分析に必要とされる精度も、分析対象物によって異なる。そのため分析対象物の種類、環境、測定条件に最適な計算モデルを用いて、当該分析対象物の成分を分析することが好ましい。
【0233】
しかし、従来では電化製品に備わる調理・洗濯・洗浄などといった電化の様々な機能と成分分析の機能とが連携して分析対象物の種類、環境、測定条件といった情報をやりとりする装置はあまり用いられておらず、電化の機能を用いる際にユーザによって予め入力される情報は分析にはあまり反映されずに、装置の分析処理に時間がかかったり分析結果が正確でなかったり、ユーザの手間が増えるなどの問題があった。
【0234】
例えばオーブンレンジや電子レンジなどのメニューや調理モードごとの食材の種類や分量、切り方や調理方法や加熱処理・時間、それらの変動といった要因も計算モデルに影響し、そうした情報は調理の際にユーザが選択したメニューから得られることが多いが、従来ではそうした情報を分析処理のための情報として有効に活用してはいない。
【0235】
よって、測定したい食品に応じた計算モデルをデータベースから抽出することが煩雑で分析処理に負担がかかったり、最適な計算モデルに絞り込めず分析結果が正確でないために再現性がとれなかったりしていた。
【0236】
分析結果を正確にするための一般的な対策として従来ではユーザ自身が分析するものの種類を手動で指定して装置に入力したり、種類ごとにユーザが手で分けて順に計測したりする方法がとられているが、ユーザに手間を強いるという問題があった。
【0237】
また別の対策として、測定対象の種類や形状に左右されないようにまんべんなく光を照射するという方法では、計測に時間がかかってユーザに長い待ち時間を強いたり、複数の分析対象が混じると精度が落ちたりするという問題もあった。
【0238】
特に食品を調理する装置であれば、常に限られた食品のみを用いることは稀であり、いろいろな食材が混同して調理されることも珍しくないが、せっかく調理した料理を食材ごとに分けなければいけなかったり、料理が冷めてしまったりするという問題が生じる。
【0239】
本実施の形態に係る成分分析装置100,100B,100Cは、かかる課題を解決することが可能であって、成分分析処理をより迅速なものとしながら、またはユーザが手間をかけることなく、成分分析の精度を向上させることができる。
【0240】
<その他の実施の形態>
本発明は、システムまたは装置にプログラムを供給することによって達成される場合にも適用できることはいうまでもない。そして、本発明を達成するためのソフトウェアによって表されるプログラムを格納した外部メモリを、システムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が外部メモリに格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、本発明の効果を享受することが可能となる。
【0241】
この場合、外部メモリから読出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した外部メモリあるいは揮発メモリは本発明を構成することになる。
【0242】
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0243】
さらに、外部メモリから読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わる他の記録媒体に書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0244】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0245】
100,100B,100C 成分分析装置、101 ディスプレイ、102 メモリ、103 操作部、104,104B,104C 測定部、105 環境センサ、106 調理部、107 ハロゲンランプ、108 運転部、111 モード読出部、112 調理制御部、112B 調理制御部、112C 運転制御部、113 モデル決定部、114 モデル読出部、115 分析処理部、1021 調理情報データベース、1021C 運転情報データベース、1022 分析情報データベース、1022C 分析情報データベース、1023 計算モデルデータベース、1023C 計算モデルデータベース。
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の成分をより正確に分析するための成分分析装置および成分分析方法に関し、特に対象物に作用する他の機能を有する成分分析装置、成分分析システム、および成分分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電化製品には、ユーザの手間や負担を軽減する目的で自動運転コースや全自動運転モードなどの機能が搭載されている。例えば、洗濯機であればウールを洗うために最適な全自動コースが用意されているし、エアコンや空気清浄機であればユーザの好みで選べる自動運転モードが用意されている。
【0003】
調理機には、ユーザがいちいち加熱出力を指定して最適な加熱時間を試行錯誤する手間を省いて便宜を図るために、あらかじめ多数の調理メニューや調理モードが記憶されている。ユーザが、ボタンやハンドル操作などを介して、調理メニューや調理モードを選択することによって、調理機は、その食品に最適な調理シーケンスを実行する。
【0004】
具体的には、電子レンジであれば、ユーザが牛乳か冷凍食品かなど食品に応じたキーを選べば、記憶されている調理シーケンスに従って自動的に温度や時間が調節されて加熱される。また、オーブンレンジや加熱水蒸気調理部であれば、予めメニューブックや調理コースが用意されており、所望の料理に応じた食材とその分量などをユーザが用意して装置に記憶されたメニューや調理モードを選択することで自動あるいは半自動で調理が行われる。
【0005】
一方、ユーザは電化製品による効果や、生活や健康に関わる状況を知りたいという欲求がある。例えば洗濯機であれば汚れが落ちたかどうか、空調であれば空気が清浄になったか、調理部であれば調理する食品の成分や栄養量などを知りたいという要求がある。
【0006】
そうした要求に応えるための成分分析装置が知られている。成分分析においては、分析対象物に光を照射することによって透過光あるいは反射光の光スペクトルを取得し、多変量解析などの計算手法を用いて分析対象物の成分を分析する方法が知られている。
【0007】
一般に物質は特定の波長の光を吸収する。物質によって吸収される光の波長およびその吸光度は、当該物質に含まれる成分やその濃度に相関がある。吸光度は、透過光や反射光の光スペクトルから求めることができる。そのため、光スペクトルを測定し、その光スペクトルから波長毎の吸光度すなわち吸光度スペクトルを求め、測定対象の成分の種類や濃度に対する吸光度スペクトルの変化を分析することによって、測定対象の成分やその濃度についての情報を取得することができる。
【0008】
たとえば、予め特定の成分を含むことがわかっている特定の対象物の吸光度スペクトルと、当該対象物に含まれる成分の種類と濃度と成分量との関係式を導出したり、吸光度スペクトルについてのパターン認識を行ったりすることによって、将来の成分分析処理のためのスペクトルのモデル(以下、モデルデータという。)を予め作成しておく。そして、当該関係式やパターン認識を利用することによって、未知の分析対象物から得られる光スペクトルを分析すれば、当該分析対象物に含まれる成分の種類、当該成分の濃度、当該成分の量などを算出することができる(定量分析)。あるいは、分析対象物の特性を識別したり、分析対象物に含まれる成分の種類を分類したりすることができる(定性分析)。
【0009】
より詳細には、定量分析であれば、モデルデータとして、吸光度スペクトルと成分の濃度との関係式(検量線と呼ばれる。)を予め導出しておく。定性分析であれば、モデルデータとして、吸光度スペクトルのパターンと分析対象物の特性との関係を示すパターン(キャリブレーションモデルと呼ばれる)を予め作成しておく。言い換えれば、検量線やキャリブレーションモデルは、特定の物質の特性や特定の成分の存在や当該成分の濃度と、吸光度との関係を数学的に表したものともいえる。
【0010】
こうした手法は、分析対象物を非破壊で成分分析できるため、従来から広く一般的に用いられている。
【0011】
たとえば、農業の分野では、特開2001−133401号公報(特許文献1)に、光学的測定装置が開示されている。特開2001−133401号公報(特許文献1)によると、受光器は、その光軸がコンベアの長手方向と直交するように配設してあり、投光器は、その光軸が受光器の光軸とコンベアの幅方向の略中央で交わり、投光器の光軸と受光器の光軸とがなす角の角度は15°以上20°以下になるように配置してある。コンベアの両側には、側壁がコンベアに沿って立設してあり、側壁の投光器及び受光器に対向する部分、及び側壁の光源及びフォトセンサに対向する部分には、光ビームを通過させるべく、所要直径の開口が設けてある。受光器側の側壁の、投光器からの光が照射され得る部分であって前述した開口を除く部分には低光反射板が取り付けてある。
【0012】
また、食品産業では、特開2005−292128号公報(特許文献2)に、物体のカロリー測定方法及び物体のカロリー測定装置が開示されている。特開2005−292128号公報(特許文献2)によると、装置は、被検対象の物体が載置されるテーブルを有した物体保持部と、テーブル上に載置された被検対象の物体に近赤外領域の光を照射する光源部と、この物体からの反射光あるいは透過光を受光する受光部と、受光部が受光した光の吸光度に基づいて物体のカロリーを算出する制御部とを備える。制御部が、予め、カロリー既知のサンプル物体に照射されるとともにサンプル物体から反射あるいは透過された近赤外線の吸光度における二次微分スペクトルの重回帰分析により算出された回帰式と、受光部が受光した光の吸光度とから物体のカロリーを演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−133401号公報
【特許文献2】特開2005−292128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような成分分析の精度は検量線やキャリブレーションモデルの精度に依存する。検量線やキャリブレーションモデルは、環境、測定条件、分析対象物の種類によって大きく左右される。分析に必要とされる精度も、分析対象物によって異なる。そのため、分析対象物の、種類、環境、測定条件に最適な検量線やキャリブレーションモデルを用いて、当該分析対象物の成分を分析することが好ましい。つまり、成分分析装置は、分析対象物の種類、環境、測定条件に適した計算モデルデータを用いて、分析対象物の成分の分析を行なうことが好ましい。
【0015】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的の1つは、成分分析以外の他の機能を有する成分分析装置における成分分析の精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明のある局面に従うと、成分分析装置が提供される。成分分析装置は、複数の成分分析用のモデルの各々を命令に対応付けて記憶するためのメモリと、命令を受け付けるための操作デバイスと、命令に応じて対象物の状態を変化させるための変化デバイスと、対象物に光を照射することによって、当該対象物からの反射光または透過光に関するデータを取得するための測定デバイスと、メモリから命令に対応するモデルを読み出し、当該モデルを利用することによって、取得されたデータに基づいて対象物の成分を分析するためのプロセッサとを備える。
【0017】
好ましくは、成分分析装置は、対象物の周辺の環境を検出するためのセンサをさらに備える。メモリは、モデルを環境に対応付けて格納する。プロセッサは、メモリから命令と環境とに対応するモデルを読み出す。
【0018】
好ましくは、センサは、温度を検出する。
好ましくは、センサは、湿度を検出する。
【0019】
好ましくは、成分分析装置は、調理機である。対象物は、調理機で調理される食品である。
【0020】
好ましくは、測定デバイスは、食品に焦げ目をつけるためのハロゲンランプを含む。測定デバイスは、ハロゲンランプからの光を利用して、反射光のスペクトルを取得する。
【0021】
好ましくは、成分分析装置は、成分分析装置で行うことができる調理を紹介するためのディスプレイをさらに備える。メモリは、成分分析装置で行うことができる調理毎に食品の配置を記憶する。プロセッサは、調理の選択を受け付けると、メモリを参照して、ディスプレイに、選択された調理に対応する食品の配置を表示させ、食品の配置に基づいて測定デバイスが光を照射する範囲を決定する。
【0022】
好ましくは、成分分析装置は、空調機である。対象物は、空調機によって調整される空気である。
【0023】
好ましくは、成分分析装置は、空気清浄機である。対象物は、空気清浄機によって清浄化処理される空気である。
【0024】
好ましくは、成分分析装置は、洗濯機である。対象物は、洗濯機によって洗濯される衣類である。
【0025】
好ましくは、成分分析装置は、浄水器である。対象物は、浄水器によって浄水および整水のいずれかの処理がされる水である。
【0026】
好ましくは、成分分析装置は、日付および時刻の少なくともいずれかを取得するための時計をさらに備える。
【0027】
好ましくは、メモリは、モデルを日付および時刻の少なくともいずれかに対応付けて格納する。プロセッサは、メモリから命令と日付および時刻の少なくともいずれかとに対応するモデルを読み出す。
【0028】
この発明の別の局面に従うと、上記の成分分析装置と、成分分析装置で行うことができる調理毎に食品の配置を表示するための書籍とを備える成分分析システムが提供される。メモリは、成分分析装置で行うことができる調理毎に食品の配置を記憶する。プロセッサは、調理の選択を受け付けると、選択された調理に対応する食品の配置に基づいて測定デバイスが光を照射する範囲を決定する。
【0029】
この発明の別の局面に従うと、複数の成分分析用のモデルの各々を命令に対応付けて記憶するためのメモリと操作デバイスと変化デバイスと測定デバイスとプロセッサとを含む成分分析装置における成分分析方法が提供される。成分分析方法は、プロセッサが、操作デバイスを介して命令を受け付けるステップと、プロセッサが、命令に応じて、変化デバイスに対象物の状態を変化させるステップと、プロセッサが、測定デバイスに、対象物に光を照射することによって、当該対象物からの反射光または透過光に関するデータを取得させるステップと、プロセッサが、メモリから命令に対応するモデルを読み出すステップと、プロセッサが、当該モデルを参照しながら、取得されたデータに基づいて対象物の成分を分析するステップとを備える。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明によって、成分分析以外の他の機能を有する成分分析装置における成分分析の精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態1に係る成分分析装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る成分分析装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】調理情報データベースのデータ構造を示すイメージ図である。
【図4】分析情報データベースのデータ構造を示すイメージ図である。
【図5】ディスプレイに表示される成分分析装置内における食品の配置を示すイメージ図である。
【図6】実施の形態1に係る成分分析装置のCPUが実行する成分分析処理を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態2に係る成分分析装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図8】実施の形態2に係る成分分析装置の機能構成を示すブロック図である。
【図9】実施の形態2に係る成分分析装置のCPUが実行する成分分析処理を示すフローチャートである。
【図10】実施の形態3に係る成分分析装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図11】実施の形態3に係る成分分析装置の機能構成を示すブロック図である。
【図12】実施の形態3に係る成分分析装置のCPUが実行する成分分析処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0033】
[実施の形態1]
<成分分析装置のハードウェア構成>
まずは、成分分析装置100のハードウェア構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る成分分析装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0034】
図1を参照して、本実施の形態に係る成分分析装置100は、相互に内部バスで接続された、ディスプレイ101と、メモリ102と、操作部103と、測定部104と、環境センサ105と、調理部106と、CPU(Central Process Unit)110と、を含む。
【0035】
成分分析装置100は、多変量解析や判別分析、パターン認識など成分分析に必要な計算モデルを予め記憶する。成分分析装置100は、食品などの分析対象物に光を照射することによって反射光あるいは透過光のスペクトルを取得する。成分分析装置100は、計算モデルのデータと今回取得されたスペクトルとに基づいて分析対象物の成分を分析する。以下、本実施の形態に係る成分分析装置100について、より詳細に説明する。
【0036】
ディスプレイ101は、CPU110からの信号に応じて、オーブン、グリルなどの調理モードや、グラタン、焼き魚、ローストチキンセット、シフォンケーキなどの調理メニュー、調理の進行状況、画像やテキストなどを表示する。また、ディスプレイ101はCPU110からの信号に応じて、分析結果や測定日時などの情報、調理や分析の残り時間や終了の告知といったお知らせも表示する。
【0037】
操作部103は、スイッチやタブレットやハンドルやタッチパネルなど、ユーザから各種の命令を受け付けられるように構成されている。たとえば、操作部103は、ユーザがオーブン、グリルなどの調理モードやハンバーグ、グラタンなどの調理メニュー、調理温度や時間を選択するためのものであり、またユーザから分析機能に関する命令を受け付けて、それらの情報をCPU110に入力する。
【0038】
また、操作部103は、ユーザが選択した調理モード、調理メニューや成分分析、測定を実行させるための操作部分と、ユーザが変更可能な条件、たとえば分量、加熱温度、食材の種類、分析機能のオプションなどを設定するための操作部分を含む。
【0039】
測定部104は、分析対象物に光を照射して、分析対象物からの反射光あるいは透過光を受ける。測定部104は、反射光あるいは透過光の波長毎の強度を示すデータをCPU110に入力する。すなわち、測定部104は、あるいは測定部104とCPU110とは、分析対象物に対応する光スペクトルを取得する。
【0040】
センサ105は、たとえば温度センサや湿度センサであり、分析対象である食品の温度などの状態を検知したり、成分分析装置100の庫内の湿度などの状態を検知したりする。
【0041】
調理部106は、たとえば、食品を加熱あるいは冷却して調理する。たとえば、調理部106は、マイクロウェイブ発振機、蒸気加熱ヒーター、熱風発生器、赤外線発生装置、冷却器、冷気発生器などによって実現される。なお、調理部106は、食品などの分析対象物に物理的または化学的に作用するための、他の装置であってもよい。
【0042】
メモリ102は、分析に用いるプログラムをロードする領域やプログラムが処理を行なう際に使用する作業領域などを備えている。メモリ102は、CPU110によって実行される制御プログラムの他に、調理シーケンスなどの調理情報データや、測定条件などの分析情報のデータ、分析に使用される計算モデルのデータなどを記憶している。メモリ102は、最適な計算モデルが検索されて所望の分析結果が得られるまでの、その時点での候補である計算モデルや演算や分析結果を、ユーザの入力内容と共に一時的に記憶しておく領域を備えている。
【0043】
メモリ102は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SDRAM(Synchronous DRAM)、DDR−SDRAM(Double Data Rate SDRAM)、RDRAM(Rambus Dynamic Random Access Memory(登録商標))、Direct−RDRAM(Direct Rambus Dynamic Random Access Memory(登録商標))、フラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)、マスクROMやPROM(Programmable Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable PROM)、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)などによって実現される。
【0044】
CPU110は、成分分析装置100の各部を制御して、各種の処理を実行する。CPU110は、メモリ102に記憶されているプログラムを実行することによって、各種の演算を行なう。このプログラムは、成分分析を行なうためのプログラム、各部の制御プログラム、サブルーチン、計算モデルの精度管理プログラム、通信処理用のプログラム、分析結果の精度があらかじめ設定された基準を満足しているか判断するためのプログラム、それらの判断基準の設定等が含まれる。
【0045】
CPU110は、メモリ102に記憶されているデータや、測定部104からの取得データに基づいて、分析対象物の成分を分析する。CPU110は、分析処理を実行して、分析経過や結果を一時的にメモリ102に記憶したり、また分析結果やそのときの条件や用いられた計算モデルなどをメモリ102に記憶したりする。
【0046】
このようにして、CPU110は、測定部104を用いて分析対象物の反射光のスペクトルを取得することによって、当該スペクトルから分析対象物の成分の種類や成分の濃度などを分析することができる。
【0047】
以下、このような機能を実現するための、成分分析装置100の具体的な構成について詳述する。
【0048】
<成分分析装置100の機能構成>
次に、成分分析装置100の機能構成について説明する。図2は、本実施の形態に係る成分分析装置100の機能構成を示すブロック図である。
【0049】
図2を参照して、本実施の形態に係る成分分析装置100は、モード読出部111、調理制御部112、モデル決定部113、モデル読出部114、分析処理部115を、その機能として含む。
【0050】
なお、モード読出部111、調理制御部112、モデル決定部113、モデル読出部114、分析処理部115は、CPU110がメモリ102に記憶されているプログラムを実行することによって実現されるモジュールであっても良いし、マイクロコントローラまたはハードウェア回路であってもよい。
【0051】
そして、上述したように、成分分析装置100は、ディスプレイ101、メモリ102、操作部103、測定部104、センサ105、調理部106も含む。
【0052】
モード読出部111は、操作部103を介して、ユーザから調理命令を受け付ける。モード読出部111は、調理命令に基づいて、メモリ102から調理処理手順を読み出す。より詳細には、モード読出部111は、メモリ102に格納されている、図3に示すような調理情報データベース1021を参照して、調理処理手順を取得する。
【0053】
ここで、調理情報データベース1021は、操作部103を介してユーザが選択することが可能な複数の調理モードや調理メニューを特定するためのIDに対応付けて、それぞれの調理モードや調理メニューを実行するために必要とされる、調理シーケンス、加熱装置の駆動条件、メニューに必要な材料とその分量、メニューによっては食品の並べ方などを格納している。
【0054】
調理制御部112は、調理部106を制御することによって、ユーザからの調理命令に対応する調理を実行する。たとえば、調理部106は、マイクロウェイブを発振して、食品を温める。
【0055】
モデル決定部113は、調理命令に基づいて、メモリ102から今回の成分分析に適したモデル(モデルID)を決定する。より詳細には、モデル決定部113は、図4に示すような分析情報データベース1022を参照して、成分分析に必要なモデルを決定する。
【0056】
分析情報データベース1022は、ユーザが選択したり変更したりすることが可能な複数の調理モードや調理メニューと、さらに細かい設定条件(たとえば、食品の温度、庫内の温度や湿度、食品の位置、または季節のような情報)に対応付けて、それらの調理モードや調理メニューと設定条件とに適した計算モデルを特定するためのモデルIDを格納している。
【0057】
より詳細には、図4の斜線が引かれた部分の条件は、図3における調理メニューや調理コースの条件と同じである。つまり、図4の斜線が引かれた部分の条件は、モデル決定部113が、識別IDのみで特定することができる。一方、図4の具体的な数字や名前が入っている部分は、ユーザがその調理メニューや調理コースの条件の一部を変更した場合の条件(CPU110が変更命令を受け付けた場合)や、調理後の測定の際の温度などのように、図3だけに基づいて特定できない変数を示す。本実施の形態においては、予め、ある程度の変更パターンが予測されている。そして、図4に示すように、それぞれの調理メニューや調理コースに対する計算モデルが用意され、当該計算モデルのそれぞれにIDが対応付けられている。
【0058】
なお、一般的に、調理部106は、ユーザが調理モードや調理メニューの一部の加熱温度・時間・材料などといった調理条件を変更して設定する機能が組み込まれてユーザの所望の制御ができるようになっている。分析情報データベース1022は、変更された調理条件に応じて変化するデータも記憶している。
【0059】
そして、本実施の形態においては、モデル決定部113は、調理モードや調理メニューと、さらに細かい設定条件に適した計算モデル(モデルID)を選択する。
【0060】
なお、本実施の形態においては、モデル決定部113は、環境センサ105から、成分分析装置100内の、または分析対象物の周囲の、温度や湿度や明るさなどを取得する。すなわち、モデル決定部113は、環境センサからのデータも上記の設定条件として利用してもよい。モデル決定部113は、調理命令、設定条件、環境センサからのデータに基づいて、分析対象物に適したモデルを決定する。
【0061】
モデル読出部114は、メモリ102から今回の成分分析に適したモデルを読み出す。より詳細には、モデル読出部114は、メモリ102の計算モデルデータベース1023から決定されたモデルIDに対応するモデルを表わすデータを読み出す。
【0062】
計算モデルデータベース1023は、モデルIDに対応付けて、成分の定量分析や定性分析に使用する計算モデル、例えば多変量解析であれば検量線やキャリブレーションモデル、回帰分析であれば回帰式、定性分析であれば分類基準、パターン認識であればパターンモデルなどの(これらを総称して計算モデルデータとする)、分析段階の演算に使用する計算モデルを記憶している。
【0063】
分析処理部115は、測定部104を制御することによって、分析対象物の成分を分析する。より詳細には、分析処理部115は、測定部104に分析対象物に可視光線や紫外線や赤外線やその他の電磁波を照射させる。そして、分析処理部115は、測定部104を用いて、分析対象物の透過光あるいは反射光を取得する。分析処理部115は、透過光あるいは反射光のスペクトルと、メモリ102から読み出したモデルとに基づいて、分析対象物に含まれる成分を分析する。
【0064】
換言すれば、測定部104は、分析処理部115の制御下で、光源で発生した光を分析対象物に照射する。測定部104は、分析対象物からの透過光あるいは反射光を図示しない分光器や受光素子で検出する。測定部104は、検出した光スペクトルを検出信号として分析処理部115へ送信する。
【0065】
分析処理部115は、測定部104からの検出信号を吸光度スペクトルに変換する。分析処理部115は、分析情報データベース1022から抽出された分析情報データを参照して、計算モデルデータベース1023から抽出された計算モデルデータと測定部104で得られた吸光度スペクトルを用いて演算を実行することで、分析対象物に含まれる成分の定性分析や定量分析を行なう。
【0066】
分析処理部115は、分析結果を出力する。たとえば、分析処理部115は、分析結果をディスプレイ101に表示させる。あるいは、分析処理部115は、分析結果をメモリ102に記憶する。あるいは、分析処理部115は、分析結果を成分分析装置100に着脱可能な記録媒体に格納する。あるいは、分析処理部115は、分析結果を外部の機器に送信する。
【0067】
また、CPU110は、ユーザが選択する調理メニューや調理モード、成分分析装置100が得た分析結果や、図示しない時計機能によって得られる現在時間や測定日時を表示してもよい。CPU110は、エラー表示などの成分分析装置100の状態、その他ユーザへのお知らせなどを示すテキストあるいは画像をディスプレイ101に表示させてもよい。
【0068】
本実施の形態においては、調理メニューや調理方法に依存する分析対象物の状態や光スペクトルの測定条件や分析における条件や、それらの条件に対応する計算モデルのデータベースを予め作成しておき、ユーザが調理モードや調理メニューを選択したときにそれらの情報を抽出して分析に用いることができる。
【0069】
具体的には、ユーザが調理メニューや調理モードを選択すると、CPU110は、その実行に伴う調理時間や食品の配置、材料と分量、加熱温度や加熱時間などの調理情報を調理情報データベース1021から抽出する。CPU110は、これらの情報をディスプレイ101に表示させてもよい。たとえば、CPU110は、図5に示すような、成分分析装置100内への食品の配置をディスプレイ101に表示させることができる。
【0070】
CPU110は、調理情報データベース1021からの条件に従って調理した分析対象物を分析するときの温度や湿度といった条件を分析情報データベース1022から抽出してもよい。CPU110は、分析情報データベース1022からの条件を参照して、計算モデルデータベース1023から今回の調理に最適な計算モデルを迅速に検索することができる。また、CPU110は、計算モデルを成分分析の演算に利用されるパラメーターとして用いることによって、分析を精度よく行なうこともできる。
【0071】
<分析処理>
次に、本実施の形態に係る成分分析装置100における処理手順について説明する。図6は、本実施の形態に係る成分分析装置100のCPU110が実行する成分分析処理を示すフローチャートである。
【0072】
図6を参照して、ユーザが所望の調理モードまたは調理メニューを操作部103から選択する。このとき、ユーザが所望の調理条件(分量や時間など)を変更して入力することもできる。換言すれば、CPU110は、操作部103を介して、ユーザから調理命令を受け付ける(ステップS102)。
【0073】
CPU110は、調理モードまたは調理メニューが選択されると、入力内容に従って調理を開始する。ユーザが命令を入力し終え、調理開始の指示信号をCPU110が受信すると(ステップS104でYESの場合)、CPU110は処理をステップS106に進める。
【0074】
ステップS106では、CPU110は、成分分析プログラムを起動する。ただし、成分分析プログラムは、ステップS102よりも前から起動されるものであってもよい。CPU110は、成分分析プログラムに従って、ステップS102で選択された調理モードあるいは調理メニューに基づき、調理情報データベース1021から、その所定の調理モードや調理メニューに対応する調理情報データを検索し、読み出すよう指示を出す。(ステップS106)
調理情報データには、材料や分量、調理メニューの名称、調理方法、調理シーケンス、調理時間、食材の位置情報、加熱容器の種類、図示しない時計機能から判明する日付や日時などの情報が含まれる。
【0075】
調理情報データは、たとえば図3に示すように、調理情報データベース1021に含まれる識別ID毎の調理情報である。
【0076】
なお、食材の位置情報とは、たとえば図5に示すように、ローストチキンと野菜とジャガイモのセットメニューであれば成分分析装置100に付属したメニューブックなどに並べ方が指定されているので、その指定から食材がどこに位置しているかを前もって知ることができ、これを情報として利用するものである。
【0077】
これにより、測定部104を用いて光スペクトルを取得するときに、不必要な箇所までまんべんなく光を照射するための電力や時間を省くことができる。また、どの位置に照射した光のスペクトルが主にどの食材の成分を反映しているかを把握することができるので、スペクトルを用いた成分分析を正確に行なうことができる。
【0078】
CPU110は、ステップS108で取得した調理情報データおよびユーザがステップS102で入力した内容に基づいて、分析情報データベース1022から、その内容で調理した分析対象物を測定するときの温度や湿度、分量や材料、さらに時期といった条件や、計算モデルとの対応などが含まれた分析情報データを読み出す(ステップS108)。
【0079】
ここでは、分析情報データは、図4を参照して、調理モードあるいは調理メニューを実行した後の測定の際の食品の温度や分量、分析の際の条件、またユーザが調理条件を変更した場合に応じて変化する変数(例えば調理メニューでは2人分となっているのを4人分に変更した場合に応じて変化する分量や加熱時間など)や、また自動調理メニューに対応する計算モデルのIDなどが図4のようにデータテーブルとして分析情報データベース1022に格納されている。
【0080】
CPU110は、抽出した分析情報データを分析処理部115へ送信する(ステップS110)。
【0081】
CPU110は、ステップS110で抽出した分析情報データに基づいて計算モデルデータベース1023から計算モデルデータを検索して抽出する(ステップS112)。
【0082】
ここでは、調理情報データベース1021と、分析情報データベース1022と、計算モデルデータベース1023に記憶されている情報は、図3、図4のように、IDを介して、互いに紐付けられている。調理情報データベース1021のデータには、調理メニューや調理モードなどの種類に識別IDが割り振られる。分析情報データベース1022のデータには、識別IDを含む条件ごとに対応した計算モデルに対するIDが割り振られる。計算モデルデータベース1023に記憶されている計算モデルは、IDによって識別・分類されていてもよい。このように、各データの関連付けを行っておけば、検索の補助となるので、検索時間の短縮や分析処理の軽減が可能となる。
【0083】
この際、図3や図4に示すように、ユーザが成分分析装置100が予め備える調理メニューや調理モードをそのまま選択した場合のみならず、材料や分量や時間など一部の条件を変えて調理する場合などのそれぞれのバリエーションに対応したデータも記憶させておけば、CPU110は、変えられた条件に応じて最適な計算モデルデータを検索することができる。
【0084】
CPU110は、抽出した計算モデルデータを分析処理部115へ送信する(ステップS114)。
【0085】
CPU110は、抽出した計算モデルデータと分析情報データとを関連付けてメモリ102に一時保存する(ステップS116)。
【0086】
調理が終了すると、調理部106は、CPU110に対して調理終了の指示信号を送信する。調理終了の指示信号をCPU110が受信すると(ステップS118でYESの場合)、CPU110は処理をステップS120に進める。
【0087】
調理終了の指示信号を受信したCPU110は、センサ105に温度や湿度、蒸気圧などの庫内状態を検知させる(ステップS120)。
【0088】
CPU110は、ステップS120で得た検知結果を元に、庫内が測定部104によって分析対象の光スペクトルを測定することが可能な状態であるかを判断する(ステップS122)。
【0089】
このとき、庫内が測定可能な状態である場合(ステップS122においてYESの場合)、CPU110は、ディスプレイ101に、調理が終了したことと、続いて測定を実行することとを告知させる(ステップS126)。
【0090】
庫内が測定不可能な状態である場合(ステップS122においてNOである場合)、CPU110は、庫内の状態を図示しない手段で調整するか庫内の状態が落ち着くまで待機するなどして、庫内が測定可能になるまで待機する(ステップS124)。
【0091】
通常、加熱調理部は空気流の調整システムを有する。成分分析装置100は、例えば、排気口を通じて加熱庫内の余剰気体を外部に排出するなどして庫内の状態を安定させることが一般的である。CPU110は、こうしたシステムを利用することによって、庫内が測定可能になるのを待ってもよい。CPU110は、再度ステップS120からの処理を繰り返す。
【0092】
ステップS128では、CPU110が測定部104に測定を開始させる。CPU110は、測定部104からの測定結果に基づいて、成分分析を開始する(ステップS128)。
【0093】
CPU110は、測定部104から分析対象物のスペクトルを取得する。CPU110は、必要に応じて、分析情報データとステップS120で得た庫内状態とを参照しながら、今回取得したスペクトルと計算モデルデータとに基づいて、測定した食品(分析対象物)の成分に関して、定量分析または定性分析を行なう。
【0094】
このとき、計算モデルデータは分析で用いる優先度の高い候補として参照される。もし、計算モデルデータによって所望の分析結果が得られず、分析プログラムによって他の計算モデルが検索された場合は、その最終的に用いた最適な計算モデルをメモリ102に記憶する。
【0095】
分析プログラムに従った所望の分析結果が得られると、CPU110は、分析結果と分析終了の告知とをディスプレイ101に表示させる(ステップS130)。
【0096】
CPU110は、最終的に、使用した計算モデルデータと、使用した分析情報データと、ユーザの入力情報と、今回得られた分析結果とを関連付けて、メモリ102に記憶させる(ステップS132)。CPU110は、成分分析処理を終了する。
【0097】
以上説明したように、成分分析装置100は、食品の成分分析において、季節や気候、食品の種類、ユーザの環境などに計算モデルが大きく影響される食品に対しても、ユーザが選択した調理モードや自動調理メニューの情報を分析処理に利用し、計算モデルの検索や選択に反映することで、簡便、迅速に精度よく分析を行なうことができる。
【0098】
<応用例>
上述したように、成分分析装置100の一例としては、オーブンレンジや電子レンジなどが考えられる。そして、成分分析の対象としては、分析対象である食品の糖分、脂質、カロリー、水分、雑菌、腐敗など、すなわち食品に含まれる成分や品質に関わる特性が考えられる。
【0099】
そして、分析や演算に用いられるデータは、食品名、分量、材料、調理シーケンス、成分分析の対象となった成分の種類、成分の濃度、成分の量、分析対象物の特性、温度、湿度、オーブンレンジで調理した履歴や、使用頻度、を含み得る。
【0100】
<本実施の形態のまとめ>
以上説明したように、本実施の形態によれば、食品を調理する機能と食品に含まれる成分を分析する機能とを備えた成分分析装置100において、ユーザが操作部103によって調理モードや調理メニューを選択したときに知ることができる情報を分析に反映させる。
【0101】
たとえば調理メニューからは食品の種類や分量や配置などを予め知ることができ、調理モードからは調理終了後の食品の温度などを予め知ることができるので、これらの情報を元に最適な計算モデルを迅速に検索したり、分析条件として用いて正確な分析処理を行ったりすることができる。
【0102】
また、分析を実行するときにユーザが分析対象を指定したり、分析条件を入力したりするという手間を省くことができる。
【0103】
通常、成分分析においては、試料の定量を予測したり、定性を識別したりする際の演算や分析には、分析対象物の種類や状態、環境や分析する際の測定条件が大きく影響する。そのため、計算モデルは分析する食材の種類や温度、あるいは大きさや季節ごとなどの条件に応じて用意する必要がある。たとえばリンゴならリンゴの、メロンならメロンの検量線やキャリブレーションモデルなどが用いられる。
【0104】
さらに、分析時の温度や湿度や周囲の明るさや振動状態などの条件や、調理部であればどういう調理シーケンスを用いたかといった測定条件や分析対象物の状態も考慮して最適な計算モデルを選択して演算・識別することで、精度よく分析される。特に近赤外の光を試料に照射して得られるスペクトルは、温度と湿度に大きく影響されるために、温度と湿度を計算モデル選択に反映させることは正確な分析のために有効である。
【0105】
ところが汎用の成分分析装置であって分析対象物が多岐に渡ると計算モデルのデータベースは膨大となり、分析対象物に適した計算モデルの検索や絞込みや選択の処理が煩雑になり、また最適な計算モデルを選びそこなうことで分析の精度が落ちる可能性もある。
【0106】
そこで、本実施の形態では、調理機能と成分分析機能が組み合わさったことで連携して情報をやりとりできる機能を備え、具体的には、ユーザが調理モードや調理メニューを選ぶとそれらに対応した調理情報と、その実行に伴って生じる分析の条件や測定の状態を自動的に分析処理に反映させることで、先例では得られなかった、最適な計算モデルの選択を速くかつ正確に、また分析をより精度よくできるという効果が発揮される。
【0107】
さらに、従来のようにユーザが分析するものの種類を自分で手動で入力するなどの手間がかかることなく、あたかも装置が自動的に分析対象物の種類を判別しているような印象をユーザに与えることができる。
【0108】
さらに、場合によっては装置に付属しているメニューブックなどに掲載された調理メニューには、その装置での調理に適した調理温度や量や材料、食材の切り方や大きさなどが詳しく指定されていてユーザがそれを実行することがわかっている。よってユーザが選んだ調理メニューの情報を分析に反映させることで、装置のセンサだけでは正確に把握しきれない情報を知ることができたり、調理前に測定条件のいくつかを知るあるいは予測することができたりする。
【0109】
特に、近赤外分光法などの光を用いた成分分析ではこうした種類や重量や大きさといった条件によって、スペクトルや計算モデルが大きく左右されるために、これら調理条件を反映すれば、より精密な成分の定量分析や定性分析を行なうことができる。
【0110】
また、自動調理メニューによっては肉や野菜や魚をセットで調理するものもある。そこで、メニューブックなどに、調理メニュー毎に、調理手順や、図5のように各食材の種類や大きさや鉄板への並べ方などを掲載する。あるいは、CPU110が、メモリ102を参照して、調理メニュー毎に、調理手順と、図5のように各食材の種類や大きさや鉄板への並べ方などを表示する。これらの場合には、メモリ102が、調理メニュー毎に、測定部104による測定方法(測定範囲)や、どの位置に何の食材があるかなどを予め記憶しておく。そして、CPU110が、調理メニューの選択を受け付けると、測定部104に、選択された調理メニューに対応する測定方法(測定範囲)で測定を行わせる。
【0111】
従来の成分分析装置では、どの位置や範囲にどの食材があるかがわからないのでまんべんなく光を照射できるように光源を縦横に動す必要があった。またスペクトルに様々な食材の情報が混在して分析が困難になることを避けるために、やむをえずユーザーが手で食材ごとに分けて別々に測定するといった手間が必要であった。しかし、図5のようにこうした位置情報が判明していれば、光源の移動も必要なだけで済むのでより手間も電力も時間も短縮でき、また場所によって食材を識別して測定できるのでユーザーが手で食材を分ける手間が要らずまとめて測定できる。
【0112】
また、本実施の形態における各データベースは自動調理メニューだけでなくユーザが調理条件を変更した場合に応じて変わる変数の情報も記憶しているので、自動調理メニュー機能に任せる場合だけでなくユーザの所望の調理を実行した場合にも対応できる。ユーザが所望する成分分析のための演算を迅速に行なうことができる場合には、自動調理メニューのみに対応する計算モデルのみが予め用意した場合、ユーザが用いると思われるほぼ全ての食材に応じた膨大な計算モデルや情報データをメーカーが作成する場合に比べて労力を低減でき、調理部に関するコストを低減でき、最適な情報や計算モデルを抽出する処理も低減できるという利点があるが、ユーザが細かな調理条件を変更する場合の成分分析に調理情報を反映できない。
【0113】
また、本実施の形態では、時計機能によって得られる日時の情報を分析に反映することで、季節による食品の成分の変化や、時間帯による温度や湿度などの条件の変化も分析に考慮することができるので正確な結果を得ることができ、またユーザの使用履歴を記憶装置に記憶するときに日時の情報も併せて記憶できるため、行動履歴の情報として利用するのに有益である。
【0114】
なお、本実施の形態では分析過程をメモリ102に一時保存して最終的な結果をメモリ102に記憶するなどして各種情報を適宜記憶しているが、成分分析のための演算を精度よく行なえるのであれば必ずしもそれぞれの情報を記憶装置に記憶せずとも良い。しかし、分析過程において最適な計算モデルを絞り込む作業で試行を繰り返す際には、経過を一時保存しておけばより正確に処理を行なうことができ、またユーザの使用形態とその分析において得られた結果を蓄積しておけば、分析やメンテナンスに利用することができ、望ましい。
【0115】
また、本実施の形態においては、図3、図4に示されるようなリレーショナルデータベースとして識別ナンバーやIDで関連付けて各データベースに情報を格納しているが、この構成に限るものではなく、成分分析のための演算を精度よく行なえるのであれば、必ずしも図3や図4のとおりのデータテーブルでなくともよい。しかし、計算モデルの検索を迅速に行なうためには、各情報が整理されて分類され、関連付けられていることが望ましい。
【0116】
また、本実施の形態では、センサ105によって成分分析装置100や分析対象物の温度や湿度を検知しているが、必ずしも検知部を設けずともユーザの入力内容を反映して成分分析を行なうことができる。しかし、光スペクトルは測定条件に影響されるために、測定前に検知装置によって測定環境のチェックを行って安定した環境で測定を行なえるか確かめておくことが望ましい。
【0117】
なお、本実施の形態では、図11に示すように、CPU110が複数の機能ブロックを実現する構成としているが、このような構成に限るものではなく、成分分析のための演算を精度よく行なえるのであれば、複数の機能ブロックが1つの機能ブロックにまとめられてもよいし、1つの機能ブロックが複数の機能ブロックに分割されてもよい。
【0118】
また、本実施の形態においては、出力デバイスをディスプレイ101によって実現しているが、これに限るものではなく、外部メディアに情報を記録するための外部記憶装置であってもよいし、プリンタであってもよい。
【0119】
また、本実施の形態においては、調理情報や分析情報や計算モデルを記憶したデータベースを成分分析装置100内に格納してこれらの情報を分析に利用しているが、これに限るものではなく、外部のデータベースや外部の管理サーバに格納された情報を分析に利用したり、情報をやりとりしたりしても良い。この場合、ネットワークに接続するための要素が必要とはなるが、成分分析装置100が管理サーバに格納されている最新の情報を利用できたり、管理サーバがネットワークを介して成分分析装置100をメンテナンスすることによって成分分析装置100の分析精度を維持したりすることができる。
【0120】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について説明する。上述の実施の形態1に係る成分分析装置100は、成分分析専用の光源、換言すれば測定部104専用の光源からの光を用いて、分析対象物の成分を分析するものであった。
【0121】
一方、本実施の形態に係る成分分析装置100Bは、焼き魚など焦げ目を付けるためのハロゲンランプ107を有する。換言すれば、成分分析装置100Bは、ハロゲンランプからの光を用いて、分析対象物の成分を分析するものである。一般に、ハロゲンランプ107は可視光から赤外など広い波長の光を発生することができるので、光スペクトルによって分析対象の成分分析を行なうための照射光源として用いることができる。
【0122】
以下では、実施の形態1に係る成分分析装置100と同様の構成については、説明を繰り返さない。
【0123】
図7は、本実施の形態に係る成分分析装置100Bのハードウェア構成を示すブロック図である。図7に示すように、本実施の形態に係る成分分析装置100Bは、ハロゲンランプ107を有する点において、実施の形態1の成分分析装置100と異なる。また、本実施の形態に係る測定部104Bは、ハロゲンランプからの光の分析対象物での反射光のスペクトルを取得する点において、実施の形態1の測定部104と異なる。
【0124】
図8は、本実施の形態に係る成分分析装置100Bの機能構成を示すブロック図である。図8に示すように、本実施の形態に係る調理制御部112Bが、食品に焦げ目をつけるために、調理部106とともに、または調理部106の動作の後に、ハロゲンランプ107を制御する点において、実施の形態1の調理制御部112Bと異なる。
【0125】
<分析処理>
次に、本実施の形態に係る成分分析装置100Bにおける処理手順について説明する。図9は、本実施の形態に係る成分分析装置100BのCPU110が実行する成分分析処理を示すフローチャートである。
【0126】
図9を参照して、ユーザが調理過程で焦げ目をつける調理モードまたは調理メニューを操作部103から選択する。すなわち、CPU110が、調理命令を受け付ける(ステップS202)。その後、CPU110は、入力内容に従って調理を開始する。焦げ目をつける調理モードまたは調理メニューには、例えば焼き魚や焼き鳥などが挙げられ、焦げ目をつけるための光源にはハロゲンランプ107が挙げられる。
【0127】
ユーザが調理命令を入力し終える。調理開始の指示信号をCPU110が受信すると(ステップS204でYESの場合)、CPU110は、処理をステップS206へと進める。
【0128】
ステップS206では、CPU110は、成分分析プログラムを起動する。ただし、成分分析プログラムは、ステップS202よりも前から起動されるものであってもよい。そのプログラムに従って、CPU110は、ステップS202で選択された調理モードあるいは調理メニューに基づき、調理情報データベース1021から、その所定の調理モードや調理メニューに対応する食材や温度やメニュー内容などが含まれる調理情報データを検索し、読み出す(ステップS206)。
【0129】
このとき、調理情報データは焦げ目を付ける為のハロゲンランプ107の動作情報や、ハロゲンランプ107の加熱ワット、加熱時間、加熱温度などを含む。
【0130】
ステップS206で取得された調理情報データは、ユーザがステップS202で入力した内容と共にメモリ102に一旦記憶される。
【0131】
CPU110は、ステップS206で取得した調理情報データ、および、ユーザがステップS202で入力した内容に基づいて、分析情報データベース1022からそのメニューの分析情報データを読み出す(ステップS208)。
【0132】
CPU110は、抽出した分析情報データを分析処理部115へと送信する(ステップS210)。
【0133】
CPU110は、ステップS210で抽出した分析情報データに基づいて、計算モデルデータベース1023から計算モデルデータを検索する(ステップS212)。
【0134】
CPU110は、最適な計算モデルデータを絞り込む際に、ステップS210で取得したパラメーターを参照する。
【0135】
CPU110は、抽出した計算モデルデータを分析処理部115へと送信する(ステップS214)。
【0136】
CPU110は、抽出した計算モデルデータと分析情報データとを関連付けてメモリ102に一時保存する(ステップS216)。
【0137】
焦げ目を付ける過程を含む調理処理が終了すると、調理部106は、CPU110に対して調理終了の指示信号を送信する。CPU110は、調理終了の指示信号を受信すると(ステップS218においてYESである場合)、センサ105に温度や湿度、蒸気圧などの庫内状態を検知させる(ステップS220)。すなわち、センサ105は、CPU110に検知結果を送信する。
【0138】
CPU110は、庫内が測定部104によって分析対象の光スペクトルを測定可能な状態であるかを判断する(ステップS222)。庫内が測定可能である場合(ステップS222においてYESである場合)、CPU110は、ステップS226に進む。
【0139】
庫内が測定不可能である場合(ステップS222においてNOである場合)、CPU110は、庫内の状態を図示しない手段で調整するか状態が落ち着くまで待機する(ステップS224)。CPU110は、ステップS220からの処理を繰り返す。
【0140】
ステップS226において、CPU110は、センサ105に、焦げ目をつけるために用いたハロゲンランプ107の状態、たとえば温度や発光強度などを検知させる(ステップS226)。
【0141】
CPU110は、ステップS226で得た検知結果に基づいて、ハロゲンランプ107を分析対象の光スペクトルを得るための照射光源として用いることが可能な状態であるかを判断する(ステップS228)。
【0142】
ステップS228において、ハロゲンランプを測定に用いることが可能である場合(ステップS228においてYESである場合)、CPU110は、ディスプレイ101を介して、調理が終了したこと、続いて測定を行なうことを告知する(ステップS232)。
【0143】
測定が不可能な状態である場合(ステップS228においてNOである場合)、図示しない手段でハロゲンランプ107の電力などを調整するか状態が温度が落ち着くまで待機する(ステップS230)。すなわち、CPU110は、ランプの状態が測定に用いることが可能になるまで、ステップS226からの処理を繰り返す。
【0144】
CPU110は、測定部104に測定を開始させ、分析を開始する(ステップS234)。
【0145】
CPU110は、測定部104から分析対象物のスペクトルを取得する。さらに、分析処理部115としても機能するCPU110は、分析情報データと、ステップS220およびステップS226で得た庫内状態とランプの状態といった条件を必要に応じて参照しながら、今回取得したスペクトルと計算モデルデータとを元に演算することによって、測定した食品の成分の定量や定性を分析する。
【0146】
以降の処理については、本実施の形態に関する説明と実施の形態1に関する説明とから明らかであるため、ここでは説明を繰り返さない。
【0147】
<本実施の形態のまとめ>
以上説明したように、実施の形態2では、焦げ目をつける過程を含む調理モードあるいは調理メニューをユーザが選択した場合に、ハロゲンランプ107を分析対象の光スペクトル取得のための照射光源として利用する。そのため、調理におけるランプの状態の情報を予めデータベースに格納しておいて分析に反映させたり、調理後のハロゲンランプの状況を検知してそのまま光源として使える状態か確認して分析に使用したりするものである。
【0148】
光スペクトルは光源の状態に大きく影響されるため、調理後のハロゲンランプの状態に対してどのような光スペクトルが得られるかデータがあれば分析結果がより正確になる。さらに、ハロゲンランプが測定に使用可能であるか検知を行って調整しているため、より安定した光スペクトルが得られる。
【0149】
また、ハロゲンランプを焦げ目などの補助熱源および照射光源として兼用しているので、装置がコンパクトになり、電力や値段の節約にもなる。
【0150】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について説明する。上述の実施の形態1に係る成分分析装置100は、食品などを調理するための装置であった。
【0151】
一方、本実施の形態に係る成分分析装置100Cは、食品以外の分析対象物の成分を分析するための装置である。
【0152】
たとえば、本実施の形態に係る成分分析装置100Cとしては、空調機が挙げられる。成分分析の対象物は、無線あるいは有線で空調機と接続された測定デバイスによって測定される箇所、たとえば空調機周辺の空気や特定の保管ケース内や倉庫、部屋などの、空調機によって調整される空気である。この場合には、本実施の形態に係る成分分析装置100Cは、実施の形態1に係る調理部106の代わりに、たとえば運転部108としてのヒートポンプ、セントラルヒーティング、冷却器、暖房機構、換気機構、加湿機構、除湿機構などを有する。
【0153】
たとえば、本実施の形態に係る成分分析装置100Cとしては、空気清浄機が挙げられる。成分分析の対象物は、無線あるいは有線で空気清浄機と接続された測定デバイスによって測定される箇所、たとえば空気清浄機の周辺の空気や特定の保管ケース内や倉庫、部屋などの、空気清浄機によって清浄化処理される空気である。本実施の形態に係る成分分析装置100Cは、実施の形態1に係る調理部106の代わりに、たとえば運転部108としてのエアフィルタやイオン発生機、加湿機構、除湿機構などを有する。
【0154】
たとえば、本実施の形態に係る成分分析装置100Cとしては、洗濯機が挙げられる。成分分析の対象物は、洗濯される衣類である。この場合には、本実施の形態に係る成分分析装置100Cは、実施の形態1に係る調理部106の代わりに、運転部108としての洗濯ドラムや乾燥器を有する。
【0155】
たとえば、本実施の形態に係る成分分析装置100Cとしては、浄水器が挙げられる。成分分析の対象物は、ろ過や殺菌といった浄水や電解といった整水などの処理が施される水道水などである。この場合には、本実施の形態に係る成分分析装置100Cは、実施の形態1に係る調理部106の代わりに、たとえば運転部108としてのろ過フィルタや紫外線発生器、ミネラル成分付加機構、電気分解機構などを有する。
【0156】
以下では、実施の形態1に係る成分分析装置100と同様の構成については、説明を繰り返さない。
【0157】
<成分分析装置のハードウェア構成と機能構成>
図10は、本実施の形態に係る成分分析装置100Cのハードウェア構成を示すブロック図である。図11は、本実施の形態に係る成分分析装置100Cの機能構成を示すブロック図である。
【0158】
図10および図11に示すように、本実施の形態に係る成分分析装置100Cは、運転部108を有する点において、実施の形態1の成分分析装置100と異なる。また、本実施の形態に係る測定部104Cは、食品以外の空気や衣類や水からの透過光や反射光のスペクトルを取得する点において、実施の形態1の測定部104と異なる。
【0159】
本実施の形態に係るディスプレイ101は、CPU110からの信号に応じて、運転モードや自動運転コースの内容や進行状況、画像やテキストなどを表示する。また、ディスプレイ101はCPU110からの信号に応じて、分析結果や測定日時などの情報、動作や分析の残り時間や終了の告知といったお知らせも表示する。
【0160】
操作部103は、スイッチやタブレットやハンドルやタッチパネルなど、ユーザから各種の命令を受け付けられるように構成されている。たとえば、操作部103は、運転モードや自動運転コースとその内容を選択するためのものであり、またユーザから分析機能に関する命令を受け付けて、それらの情報をCPU110に入力する。
【0161】
また、操作部103は、ユーザが選択した運転モードや自動運転コースや成分分析、測定を実行させるための操作部分と、ユーザが変更可能な運転条件や、分析機能のオプションなどを設定するための操作部分を含む。
【0162】
測定部104Cは、分析対象物に光を照射して、分析対象物からの反射光あるいは透過光を受ける。測定部104Cは、反射光あるいは透過光の波長毎の強度を示すデータをCPU110に入力する。すなわち、測定部104Cは、あるいは測定部104CとCPU110とは、分析対象物に対応する光スペクトルを取得する。
【0163】
メモリ102は、調理情報データベース1021の変わりに、運転情報データベース1021Cを格納する。運転情報データベース1021Cは、操作部103によってユーザが選択することが可能な運転モードや自動運転コースのそれぞれを実行するために必要とされる、運転シーケンスや運転条件などを記憶している。
【0164】
分析情報データベース1022Cは、ユーザが選択したり変更したりすることが可能な複数の運転モードや運転コースと、分析対象物の温度や湿度、装置内の温度や湿度、季節、環境センサ105から得られる測定環境といった、分析の条件やパラメーターに対応付けて、それらの運転モードや運転メニューと分析の条件やパラメーターとに適した計算モデルを特定するためのモデルIDを格納している。
【0165】
なお、一般に自動あるいは半自動の運転モードや運転コースにはユーザが一部の運転条件を変更して設定する機能が組み込まれてユーザの所望の制御ができるようになっているが、分析情報データベース1022は変更された運転条件に応じて変化するデータも記憶している。
【0166】
計算モデルデータベース1023Cは、モデルIDに対応付けて、成分の定量分析や定性分析に使用する計算モデル、例えば多変量解析であれば検量線やキャリブレーションモデル、回帰分析であれば回帰式、定性分析であれば分類基準、パターン認識であればパターンモデルなど(これらを総称して計算モデルデータとする。)、分析段階の演算に使用する計算モデルを記憶している。
【0167】
モード読出部111は、操作部103を介して、ユーザから運転指令を受け付ける。モード読出部111は、運転指令に基づいて、メモリ102から運転処理手順を読み出す。より詳細には、モード読出部111は、メモリ102に格納されている運転情報データベース1021Cを参照して、運転処理手順を取得する。
【0168】
ここで、運転情報データベース1021Cは、操作部103を介して、ユーザが選択することが可能な複数の運転モードや運転メニューのそれぞれを実行するために必要とされる、運転シーケンス、モータの駆動条件などを格納している。
【0169】
運転制御部112Cは、運転部108を制御することによって、ユーザからの運転指令に対応する運転を実行する。たとえば、運転制御部112Cは、運転部108としてのヒートポンプを動作させることによって、空気を暖めたり冷やしたりする。運転制御部112Cは、運転部108としてのファンやイオン発生器を動作させることによって、空気を浄化する。運転制御部112Cは、運転部108としての洗濯ドラムを動作させることによって、衣類を洗濯・脱水・乾燥させる。運転制御部112Cは、運転部108としての濾過フィルタを機能させることによって、浄水する。
【0170】
モデル決定部113は、運転指令に基づいて、メモリ102から今回の成分分析に適したモデル(モデルID)を決定する。
【0171】
分析情報データベース1022Cは、ユーザが選択したり変更したりすることが可能な複数の運転モードや運転メニューのそれぞれの条件での運転中や運転後の分析段階における分析対象物や成分分析装置100Cの状態、たとえば、室内の空気の温度や湿度、洗濯ドラム内の空気の温度や湿度、浄水機内の水の温度、また季節といった、分析の条件やパラメーターとして参照する情報を記憶している。
【0172】
なお、一般的に、運転部108にはユーザが運転モードや運転メニューの一部の温度・時間・材質などといった運転条件を変更して設定する機能が組み込まれてユーザの所望の制御ができるようになっているが、分析情報データベース1022Cは変更された運転条件に応じて変化するデータも記憶している。
【0173】
そして、本実施の形態においては、モデル決定部113は、運転対象(分析対象)に含まれている可能性が高い成分に関するモデルを選択したり、運転後の温度や湿度に適したモデルを選択したりする。
【0174】
なお、本実施の形態においては、モデル決定部113は、環境センサ105から、成分分析装置100内の、または分析対象物の周囲の、温度や湿度や明るさなどを取得する。モデル決定部113は、環境センサからのデータと、運転指令とに基づいて、成分分析に適したモデルを決定する。
【0175】
モデル読出部114は、メモリ102から今回の成分分析に適したモデルを読み出す。より詳細には、モデル読出部114は、メモリ102の計算モデルデータベース1023Cから決定されたモデルIDに対応するモデルを表わすデータを読み出す。
【0176】
計算モデルデータベース1023Cは、成分の定量分析や定性分析に使用する計算モデル、例えば多変量解析であれば検量線やキャリブレーションモデル、回帰分析であれば回帰式、定性分析であれば分類基準、パターン認識であればパターンモデルなどの(これらを総称して計算モデルデータとする)、分析段階の演算に使用する計算モデルを記憶している。
【0177】
分析処理部115は、測定部104Cを制御することによって、分析対象物の成分を分析する。より詳細には、分析処理部115は、測定部104Cに分析対象物に可視光線や紫外線や赤外線やその他の電磁波を照射させる。そして、分析処理部115は、測定部104Cを用いて、分析対象物の透過光あるいは反射光を取得する。分析処理部115は、透過光あるいは反射光のスペクトルと、メモリ102から読み出したモデルとに基づいて、分析対象物に含まれる成分を分析する。
【0178】
換言すれば、測定部104Cは、分析処理部115の制御下で、光源で発生した光を分析対象物に照射する。測定部104Cは、分析対象物からの透過光あるいは反射光を図示しない分光器や受光素子で検出する。測定部104Cは、検出した光スペクトルを検出信号として分析処理部115へ送信する。
【0179】
分析処理部115は、測定部104Cからの検出信号を吸光度スペクトルに変換する。分析処理部115は、分析情報データベース1022から抽出された分析情報データを参照して、計算モデルデータベース1023から抽出された計算モデルデータと測定部104Cで得られた吸光度スペクトルを用いて演算を実行することで、分析対象物に含まれる成分の定性分析や定量分析を行なう。
【0180】
分析処理部115は、分析結果を出力する。たとえば、分析処理部115は、分析結果をディスプレイ101に表示させる。あるいは、分析処理部115は、分析結果をメモリ102に記憶する。あるいは、分析処理部115は、分析結果を成分分析装置100に着脱可能な記録媒体に格納する。あるいは、分析処理部115は、分析結果を外部の機器に送信する。
【0181】
CPU110は、ユーサーが選択する運転モードや運転コース、装置が得た分析結果や、図示しない時計機能によって得られる現在時間や測定日時、またエラー表示など、成分分析装置100Cの状態、その他のユーザへのお知らせなどを示すテキストあるいは画像をディスプレイ101に表示させる。
【0182】
本実施の形態においては、運転モードや運転コースに依存する分析対象物の状態や光スペクトルの測定条件や分析条件や、それらの条件に対応する計算モデルなどのデータベースを予め作成しておき、ユーザが運転モードや運転コースを選択したときにそれらの情報を抽出して分析に用いることができる。
【0183】
具体的には、ユーザが運転モードや運転コースを選択すると、その実行に伴う運転時間や温度、湿度、分量、運転手順、シーケンス時間などの情報を運転情報データベースから抽出し、それらの条件で実行したときの、分析対象物を分析する時の温度や湿度といった条件を分析情報データベースから抽出することができ、その条件を参照して最適な計算モデルをデータベースから迅速に検索したり、分析の演算のパラメーターとして用いることで分析を精度よく行なうことができる。
【0184】
<分析処理>
次に、本実施の形態に係る成分分析装置100Cにおける処理手順について説明する。図12は、本実施の形態に係る成分分析装置100CのCPU110が実行する成分分析処理を示すフローチャートである。
【0185】
図12を参照して、ユーザが所望の運転モードまたは運転コースを操作部103から選択する。すなわち、CPU110は、操作部103を介してユーザから運転モードまたは運転コースを受け付ける。このとき、ユーザが所望の運転条件(分量や時間など)を変更して入力することもできる。
【0186】
運転モードあるいは運転コースが選択されると、CPU110は、入力内容に従って運転を開始する(ステップS302)。
【0187】
ユーザが運転命令を入力し終える。CPU110は、運転開始の指示信号を受信すると(ステップS304でYESの場合)、処理をステップS306に進める。
【0188】
ステップS306では、CPU110は成分分析プログラムを起動する。ただし、成分分析プログラムは、ステップS302よりも前から起動されるものであってもよい。そのプログラムに従って、CPU110は、ステップS302で選択された運転モードあるいは運転コースに基づき、運転情報データベース1021Cから、その所定の運転モードや運転コースに対応する運転情報データを検索し、読み出す(ステップS306)。
【0189】
運転情報データには、測定対象の種類や分量、運転時間や運転内容、温度や湿度、図示しない時計機能から判明する日付や日時などの情報が含まれる。
【0190】
CPU110は、ステップS306で取得した運転情報データおよびユーザがステップS302で入力した内容に基づいて、分析情報データベース1022Cから、その内容で運転した分析対象物を測定するときの温度や湿度や時間や分量といった条件や、計算モデルとの対応などが含まれた分析情報データを読み出す(ステップS308)。
【0191】
ここでは、分析情報データは、運転モードあるいは運転メニューを実行した後の測定の際の温度や分量、分析の際の条件、またユーザが運転条件を変更した場合に応じて変化する変数や、また運転コースに対応する計算モデルのIDなどがデータテーブルとして分析情報データベース1022Cに格納されている。
【0192】
CPU110は、抽出した分析情報データを分析処理部115へ送信する(ステップS310)。
【0193】
さらに、CPU110は、ステップS310で抽出した分析情報データに基づいて計算モデルデータベース1023Cから計算モデルデータを検索して抽出する(ステップS312)。
【0194】
ここでは、運転情報データベース1021Cと、分析情報データベース1022Cと、計算モデルデータベース1023Cとに記憶されている情報は、互いにID番号などによって紐付けられている。運転情報データベース1021Cのデータには、運転モードや運転コースなどの種類に識別IDが割り振られてもよい。分析情報データベース1022Cのデータには、識別IDを含む条件ごとに対応した計算モデルに対するIDが割り振られてもよい。計算モデルデータベース1023Cに記憶されている計算モデルは、IDによって識別・分類されていてもよい。こうして各データの関連付けを行っておけば、検索の補助となるので、検索時間の短縮や分析処理の軽減が可能となる。
【0195】
この際、ユーザが成分分析装置100Cが予め有する運転モードや運転コースをそのまま選択した場合のみならず、分量や時間など一部の条件を変えて運転する場合などのそれぞれのバリエーションに対応したデータも記憶させておけば、変えられた条件に応じて最適な計算モデルデータを検索することができる。
【0196】
CPU110は、抽出した計算モデルデータを分析処理部115へ送信する(ステップS314)。
【0197】
CPU110は、抽出した計算モデルデータと運転情報データとを関連付けてメモリ102に一時保存する(ステップS316)。
【0198】
所定の運転モードや運転コースの実行処理が終了すると、運転部108は、CPU110に対して運転終了の指示信号を送信する。
【0199】
運転終了の指示信号をCPU110が受信すると(ステップS318でYESの場合)、CPU110は処理をステップS320に進める。
【0200】
運転終了の指示信号を受信したCPU110は、環境センサ105に、装置内の状況、たとえば温度や湿度などを検知させる(ステップS320)。
【0201】
CPU110は、ステップS320で得た検知結果を元に、成分分析装置100Cが測定部104Cによって分析対象の光スペクトルを測定することが可能な状態であるかを判断する(ステップS322)。
【0202】
このとき、成分分析装置100Cが測定可能な状態である場合(ステップS322においてYESである場合)、CPU110は、ディスプレイ101に、運転が終了したこと、続いて測定に入ることを告知する(ステップS326)。
【0203】
成分分析装置100Cが測定不可能な状態である場合(ステップS322においてNOである場合)、成分分析装置100Cの状態を図示しない手段で調整するか状態が落ち着くまで待機する(ステップS324)。CPU110は、ステップS320からの処理を繰り返す。
【0204】
ステップS328では、CPU110は、測定部104Cに測定を開始させるとともに、分析を開始する(ステップS328)。
【0205】
CPU110は、測定部104Cを介して、分析対象物のスペクトルを取得する。CPU110は、必要に応じて分析情報データとステップS320で得た庫内状態とを参照しながら、今回取得したスペクトルと計算モデルデータとに基づいて、分析対象の成分の定量分析または定性分析を実行する。
【0206】
このとき、計算モデルデータは分析で用いる優先度の高い候補として参照される。もし計算モデルデータによって分析プログラムに従った所望の分析結果が得られなかった場合、そして別の計算モデルが最適であった場合、最終的に用いた最適な計算モデル(当該別の計算モデル)をメモリ102に記憶する。
【0207】
分析プログラムに従った所望の分析結果が得られると、CPU110は、分析結果と測定終了の告知をディスプレイ101に表示させる(ステップS330)。
【0208】
CPU110は、最終的にメモリ102に記憶していた計算モデルデータと分析情報データとユーザの入力情報と、今回得られた分析結果とを関連付けてメモリ102に記憶させ、処理を終了する(ステップS332)。
【0209】
以上説明したように、成分分析装置100Cは、ユーザが選択した運転モードや自動運転コースの情報を分析処理に利用し、計算モデルの検索や選択に反映することで、簡便、迅速に精度よく分析を行なうことができる。
【0210】
<応用例>
本実施の形態に係る成分分析装置100Cは、たとえば、冷蔵庫や、洗濯機や、浄水器や、空気清浄機、エアーコンディショナー、保存装置などによって実現される。そして、成分分析の対象としては水分、雑菌、汚れ、腐敗など、装置内の物体の状態や品質、装置の汚染状況、装置が置かれた環境の状態に関わる成分や品質に関わる特性が考えられる。
【0211】
<本実施の形態のまとめ>
以上説明したように、本実施の形態によれば、空気や薬品、水質や食品など様々な分析対象に含まれる成分を分析する機能と、それらの分析対象に洗濯や清浄や加工などの何らかの作用を加える機能とを備えた成分分析装置100Cにおいて、ユーザが操作部103によって運転モードや運転コースを選択したときに知ることができる情報を分析に反映させる。
【0212】
たとえば、洗濯機は、ユーザがウールモードや標準モードなどの自動運転コースを選んだり強弱の運転モードを選んだりすることによって、分析対象である洗濯物の素材や洗濯実行後の洗濯槽内部の水分の様子などを分析前におおまかに知ることができる。
【0213】
空気清浄機やエアコンは、風量の強弱や清浄モードなどの運転モードをユーザが選択することによって、分析対象である部屋内の温度や空気の状態をおおまかに知ることができる。また、空気清浄機やエアコンは、当該モードを分析のための情報として用いることができる。
【0214】
浄水器においては、しばらく電源をOFFにしておくタイマーや、節電モードや、家族の人数や、お湯と浄水の切り替え操作などの命令をユーザが選択することによって、分析対象である水の一日の使用量や、温度や、使用量が特に多い時間帯や、旅行などでしばらく使わなかった期間などの状態をおおまかに知ることができる。浄水器は、当該命令を分析のための情報として用いることができる。
【0215】
よって、これらの情報を元に最適な計算モデルを検索したり、分析条件として用いて分析処理を行ったりすることができる。
【0216】
また、分析を実行するときにユーザが分析対象を指定したり分析条件を入力したりするという手間を省くことができる。
【0217】
つまり、分析対象物に所望の作用をする機能と成分分析の機能とが組み合わさったことで連携して情報をやりとりできるという効果を利用している。
【0218】
通常、成分分析において試料の定量を予測したり定性を識別したりする際の演算や分析には、分析対象物の種類や状態、環境や分析する際の測定条件が大きく影響する。よって、計算モデルは分析する対象物の種類や温度、あるいは大きさや季節ごとなどの条件に応じて用意する必要がある。
【0219】
さらに、分析時の温度や湿度や季節、どういう運転シーケンスを用いたかといった測定条件や分析対象物の状態も考慮して最適な計算モデルを選択して演算・識別することで、精度よく分析される。
【0220】
ところが汎用の成分分析装置であって分析対象物が多岐に渡ると、計算モデルのデータベースは膨大となり、分析対象物に適した計算モデルの検索や絞込みや選択の処理が煩雑になり、また最適な計算モデルを選びそこなうことで分析の精度が落ちる可能性もある。
【0221】
そこで、本実施の形態では、測定対象物に作用する装置の機能と成分分析機能が組み合わさったことで連携して情報をやりとりできる機能を備え、具体的には、ユーザが運転モードや運転コースを選ぶと、それらに対応した運転情報と、その実行に伴って生じる分析の条件や測定の状態を自動的に分析処理に反映させることで、先例では得られなかった、最適な計算モデルの選択を速くかつ正確に、また分析をより精度よくできるという効果が発揮される。
【0222】
さらに、従来のようにユーザが分析するものの種類を自分で手動で入力するなどの手間がかかることなく、あたかも装置が自動的に分析対象物の種類を判別しているような印象をユーザに与えることができる。
【0223】
特に、近赤外分光法などの光を用いた成分分析ではこうした種類や重量や大きさといった条件によって、スペクトルや計算モデルが大きく左右されるために、これら運転条件を反映させて装置のセンサだけでは正確に把握しきれない情報を知ることができたり、測定条件のいくつかを知りあるいは予測することができれば、より精密な成分の定量分析や定性分析を行なうことができる。
【0224】
また、本実施の形態における各データベースは自動運転コースだけでなくユーザが運転条件を変更した場合に応じて変わる変数の情報も記憶しているので、自動運転コース機能に任せる場合だけでなくユーザの所望の運転を実行した場合にも対応できる。ユーザが所望する成分分析のための演算を迅速に行なえるのであれば、自動運転コースのみに対応する計算モデルのみが予め用意した場合、ユーザが用いると思われるほぼ全ての分析対象物とその条件に応じた膨大な計算モデルや情報データをメーカーが作成する場合に比べて労力を低減できたり、成分分析装置のコストを抑えられたり、最適な情報や計算モデルを抽出する処理も低減できたりするという利点があるが、ユーザが細かな運転条件を変更する場合の成分分析に運転情報を反映できない。
【0225】
また、本実施の形態では、時計機能によって得られる日時の情報を分析に反映することで、季節による成分の変化や、測定時の温度などの条件の変化も分析に考慮することができるので正確な結果を得ることができ、またユーザの使用履歴を記憶装置に記憶するときにも日時の情報によってデータが整理された形で記憶できる。この場合には、メモリ102が、日付および時刻の少なくともいずれかとモデルとを対応付けて記憶する。CPU110が、時計から取得した日付および時刻の少なくともいずれかに対応するモデルをメモリ102から読み出して、当該モデルに基づいて成分分析を行う。
【0226】
なお、本実施の形態では分析過程をメモリ102に一時保存して最終的な結果をメモリ102に記憶するなどして各種情報を適宜記憶しているが、成分分析のための演算を精度よく行なえるのであれば必ずしもそれぞれの情報を記憶装置に記憶せずとも良い。しかし、分析過程において最適な計算モデルを絞り込む作業で試行を繰り返す際には、経過を一時保存しておけばより正確に処理を行なうことができ、またユーザの使用形態とその分析において得られた結果を蓄積しておけば、分析やメンテナンスに利用することができ、望ましい。
【0227】
また、本実施の形態においては、リレーショナルデータベースとして識別ナンバーやIDで関連付けて各データベースに情報を格納しているが、この構成に限るものではなく、成分分析のための演算を精度よく行なえるのであれば、必ずしもこのとおりのデータテーブルに構成されていなくともよい。しかし、計算モデルの検索を迅速に行なうためには、各情報が整理されて分類され、関連付けられていることが望ましい。
【0228】
また、本実施の形態では、環境センサ105によって成分分析装置100Cや分析対象物の温度や湿度を検知しているが、必ずしも検知部を設けずともユーザの入力内容を反映して成分分析を行なうことができる。しかし、光スペクトルは測定条件に影響されるために、測定前に検知装置によって測定環境のチェックを行って安定した環境で測定を行なえるか確かめておくことが望ましい。
【0229】
なお、本実施の形態では、図11に示すように、CPU110が複数の機能ブロックを実現する構成としているが、このような構成に限るものではなく、成分分析のための演算を精度よく行なえるのであれば、複数の機能ブロックが1つの機能ブロックにまとめられてもよいし、1つの機能ブロックが複数の機能ブロックに分割されてもよい。
【0230】
また、本実施の形態においては、出力デバイスをディスプレイ101によって実現しているが、これに限るものではなく、外部メディアに情報を記録するための外部記憶装置であってもよいし、プリンタであってもよい。
【0231】
また、本実施の形態においては、運転情報や分析情報や計算モデルを記憶したデータベースを成分分析装置100C内に格納してこれらの情報を分析に利用しているが、これに限るものではなく、外部のデータベースや外部の管理サーバに格納された情報を分析に利用したり、情報をやりとりしたりしても良い。この場合、ネットワークに接続するための要素が必要とはなるが、成分分析装置100が管理サーバに格納されている最新の情報を利用できたり、管理サーバがネットワークを介して成分分析装置100をメンテナンスすることによって成分分析装置100の分析精度を維持したりすることができる。
【0232】
<実施の形態1〜3のまとめ>
換言すれば、成分分析の精度は計算モデルの精度に依存する。計算モデルは、環境、測定条件、分析対象物の種類によって大きく左右される。分析に必要とされる精度も、分析対象物によって異なる。そのため分析対象物の種類、環境、測定条件に最適な計算モデルを用いて、当該分析対象物の成分を分析することが好ましい。
【0233】
しかし、従来では電化製品に備わる調理・洗濯・洗浄などといった電化の様々な機能と成分分析の機能とが連携して分析対象物の種類、環境、測定条件といった情報をやりとりする装置はあまり用いられておらず、電化の機能を用いる際にユーザによって予め入力される情報は分析にはあまり反映されずに、装置の分析処理に時間がかかったり分析結果が正確でなかったり、ユーザの手間が増えるなどの問題があった。
【0234】
例えばオーブンレンジや電子レンジなどのメニューや調理モードごとの食材の種類や分量、切り方や調理方法や加熱処理・時間、それらの変動といった要因も計算モデルに影響し、そうした情報は調理の際にユーザが選択したメニューから得られることが多いが、従来ではそうした情報を分析処理のための情報として有効に活用してはいない。
【0235】
よって、測定したい食品に応じた計算モデルをデータベースから抽出することが煩雑で分析処理に負担がかかったり、最適な計算モデルに絞り込めず分析結果が正確でないために再現性がとれなかったりしていた。
【0236】
分析結果を正確にするための一般的な対策として従来ではユーザ自身が分析するものの種類を手動で指定して装置に入力したり、種類ごとにユーザが手で分けて順に計測したりする方法がとられているが、ユーザに手間を強いるという問題があった。
【0237】
また別の対策として、測定対象の種類や形状に左右されないようにまんべんなく光を照射するという方法では、計測に時間がかかってユーザに長い待ち時間を強いたり、複数の分析対象が混じると精度が落ちたりするという問題もあった。
【0238】
特に食品を調理する装置であれば、常に限られた食品のみを用いることは稀であり、いろいろな食材が混同して調理されることも珍しくないが、せっかく調理した料理を食材ごとに分けなければいけなかったり、料理が冷めてしまったりするという問題が生じる。
【0239】
本実施の形態に係る成分分析装置100,100B,100Cは、かかる課題を解決することが可能であって、成分分析処理をより迅速なものとしながら、またはユーザが手間をかけることなく、成分分析の精度を向上させることができる。
【0240】
<その他の実施の形態>
本発明は、システムまたは装置にプログラムを供給することによって達成される場合にも適用できることはいうまでもない。そして、本発明を達成するためのソフトウェアによって表されるプログラムを格納した外部メモリを、システムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が外部メモリに格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、本発明の効果を享受することが可能となる。
【0241】
この場合、外部メモリから読出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した外部メモリあるいは揮発メモリは本発明を構成することになる。
【0242】
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0243】
さらに、外部メモリから読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わる他の記録媒体に書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0244】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0245】
100,100B,100C 成分分析装置、101 ディスプレイ、102 メモリ、103 操作部、104,104B,104C 測定部、105 環境センサ、106 調理部、107 ハロゲンランプ、108 運転部、111 モード読出部、112 調理制御部、112B 調理制御部、112C 運転制御部、113 モデル決定部、114 モデル読出部、115 分析処理部、1021 調理情報データベース、1021C 運転情報データベース、1022 分析情報データベース、1022C 分析情報データベース、1023 計算モデルデータベース、1023C 計算モデルデータベース。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の成分分析用のモデルの各々を命令に対応付けて記憶するためのメモリと、
前記命令を受け付けるための操作デバイスと、
前記命令に応じて対象物の状態を変化させるための変化デバイスと、
前記対象物に光を照射することによって、当該対象物からの反射光または透過光に関するデータを取得するための測定デバイスと、
前記メモリから前記命令に対応する前記モデルを読み出し、当該モデルを利用することによって、取得された前記データに基づいて前記対象物の成分を分析するためのプロセッサとを備える、成分分析装置。
【請求項2】
前記対象物の周辺の環境を検出するためのセンサをさらに備え、
前記メモリは、前記モデルを前記環境に対応付けて格納し、
前記プロセッサは、前記メモリから前記命令と前記環境とに対応する前記モデルを読み出す、請求項1に記載の成分分析装置。
【請求項3】
前記センサは、温度を検出する、請求項2に記載の成分分析装置。
【請求項4】
前記センサは、湿度を検出する、請求項2または3に記載の成分分析装置。
【請求項5】
前記成分分析装置は、調理機であって、
前記対象物は、前記調理機で調理される食品である、請求項1から4のいずれかに記載の成分分析装置。
【請求項6】
前記測定デバイスは、前記食品に焦げ目をつけるためのハロゲンランプを含み、
前記測定デバイスは、前記ハロゲンランプからの光を利用して、前記反射光のスペクトルを取得する、請求項5に記載の成分分析装置。
【請求項7】
前記成分分析装置で行うことができる調理を紹介するためのディスプレイをさらに備え、
前記メモリは、前記成分分析装置で行うことができる前記調理毎に食品の配置を記憶し、
前記プロセッサは、
前記調理の選択を受け付けると、前記メモリを参照して、前記ディスプレイに、選択された前記調理に対応する前記食品の配置を表示させ、
前記食品の配置に基づいて前記測定デバイスが光を照射する範囲を決定する、請求項5または6に記載の成分分析装置。
【請求項8】
前記成分分析装置は、空調機であって、
前記対象物は、前記空調機によって調整される空気である、請求項1から4のいずれかに記載の成分分析装置。
【請求項9】
前記成分分析装置は、空気清浄機であって、
前記対象物は、前記空気清浄機によって清浄化処理される空気である、請求項1から4のいずれかに記載の成分分析装置。
【請求項10】
前記成分分析装置は、洗濯機であって、
前記対象物は、前記洗濯機によって洗濯される衣類である、請求項1から4のいずれかに記載の成分分析装置。
【請求項11】
前記成分分析装置は、浄水器であって、
前記対象物は、前記浄水器によって浄水および整水のいずれかの処理がされる水である、請求項1から4のいずれかに記載の成分分析装置。
【請求項12】
日付および時刻の少なくともいずれかを取得するための時計をさらに備え、
前記メモリは、前記モデルを日付および時刻の少なくともいずれかに対応付けて格納し、
前記プロセッサは、前記メモリから前記命令と前記日付および時刻の少なくともいずれかとに対応する前記モデルを読み出す、請求項1から11のいずれかに記載の成分分析装置。
【請求項13】
請求項5または6に記載の成分分析装置と、前記成分分析装置で行うことができる調理毎に食品の配置を表示するための書籍とを備える成分分析システムであって、
前記メモリは、前記成分分析装置で行うことができる前記調理毎に前記食品の配置を記憶し、
前記プロセッサは、
前記調理の選択を受け付けると、選択された前記調理に対応する前記食品の配置に基づいて前記測定デバイスが光を照射する範囲を決定する、成分分析システム。
【請求項14】
複数の成分分析用のモデルの各々を命令に対応付けて記憶するためのメモリと操作デバイスと変化デバイスと測定デバイスとプロセッサとを含む成分分析装置における成分分析方法であって、
前記プロセッサが、前記操作デバイスを介して前記命令を受け付けるステップと、
前記プロセッサが、前記命令に応じて、前記変化デバイスに対象物の状態を変化させるステップと、
前記プロセッサが、前記測定デバイスに、前記対象物に光を照射することによって、当該対象物からの反射光または透過光に関するデータを取得させるステップと、
前記プロセッサが、前記メモリから前記命令に対応する前記モデルを読み出すステップと、
前記プロセッサが、当該モデルを参照しながら、取得された前記データに基づいて前記対象物の成分を分析するステップとを備える、成分分析方法。
【請求項1】
複数の成分分析用のモデルの各々を命令に対応付けて記憶するためのメモリと、
前記命令を受け付けるための操作デバイスと、
前記命令に応じて対象物の状態を変化させるための変化デバイスと、
前記対象物に光を照射することによって、当該対象物からの反射光または透過光に関するデータを取得するための測定デバイスと、
前記メモリから前記命令に対応する前記モデルを読み出し、当該モデルを利用することによって、取得された前記データに基づいて前記対象物の成分を分析するためのプロセッサとを備える、成分分析装置。
【請求項2】
前記対象物の周辺の環境を検出するためのセンサをさらに備え、
前記メモリは、前記モデルを前記環境に対応付けて格納し、
前記プロセッサは、前記メモリから前記命令と前記環境とに対応する前記モデルを読み出す、請求項1に記載の成分分析装置。
【請求項3】
前記センサは、温度を検出する、請求項2に記載の成分分析装置。
【請求項4】
前記センサは、湿度を検出する、請求項2または3に記載の成分分析装置。
【請求項5】
前記成分分析装置は、調理機であって、
前記対象物は、前記調理機で調理される食品である、請求項1から4のいずれかに記載の成分分析装置。
【請求項6】
前記測定デバイスは、前記食品に焦げ目をつけるためのハロゲンランプを含み、
前記測定デバイスは、前記ハロゲンランプからの光を利用して、前記反射光のスペクトルを取得する、請求項5に記載の成分分析装置。
【請求項7】
前記成分分析装置で行うことができる調理を紹介するためのディスプレイをさらに備え、
前記メモリは、前記成分分析装置で行うことができる前記調理毎に食品の配置を記憶し、
前記プロセッサは、
前記調理の選択を受け付けると、前記メモリを参照して、前記ディスプレイに、選択された前記調理に対応する前記食品の配置を表示させ、
前記食品の配置に基づいて前記測定デバイスが光を照射する範囲を決定する、請求項5または6に記載の成分分析装置。
【請求項8】
前記成分分析装置は、空調機であって、
前記対象物は、前記空調機によって調整される空気である、請求項1から4のいずれかに記載の成分分析装置。
【請求項9】
前記成分分析装置は、空気清浄機であって、
前記対象物は、前記空気清浄機によって清浄化処理される空気である、請求項1から4のいずれかに記載の成分分析装置。
【請求項10】
前記成分分析装置は、洗濯機であって、
前記対象物は、前記洗濯機によって洗濯される衣類である、請求項1から4のいずれかに記載の成分分析装置。
【請求項11】
前記成分分析装置は、浄水器であって、
前記対象物は、前記浄水器によって浄水および整水のいずれかの処理がされる水である、請求項1から4のいずれかに記載の成分分析装置。
【請求項12】
日付および時刻の少なくともいずれかを取得するための時計をさらに備え、
前記メモリは、前記モデルを日付および時刻の少なくともいずれかに対応付けて格納し、
前記プロセッサは、前記メモリから前記命令と前記日付および時刻の少なくともいずれかとに対応する前記モデルを読み出す、請求項1から11のいずれかに記載の成分分析装置。
【請求項13】
請求項5または6に記載の成分分析装置と、前記成分分析装置で行うことができる調理毎に食品の配置を表示するための書籍とを備える成分分析システムであって、
前記メモリは、前記成分分析装置で行うことができる前記調理毎に前記食品の配置を記憶し、
前記プロセッサは、
前記調理の選択を受け付けると、選択された前記調理に対応する前記食品の配置に基づいて前記測定デバイスが光を照射する範囲を決定する、成分分析システム。
【請求項14】
複数の成分分析用のモデルの各々を命令に対応付けて記憶するためのメモリと操作デバイスと変化デバイスと測定デバイスとプロセッサとを含む成分分析装置における成分分析方法であって、
前記プロセッサが、前記操作デバイスを介して前記命令を受け付けるステップと、
前記プロセッサが、前記命令に応じて、前記変化デバイスに対象物の状態を変化させるステップと、
前記プロセッサが、前記測定デバイスに、前記対象物に光を照射することによって、当該対象物からの反射光または透過光に関するデータを取得させるステップと、
前記プロセッサが、前記メモリから前記命令に対応する前記モデルを読み出すステップと、
前記プロセッサが、当該モデルを参照しながら、取得された前記データに基づいて前記対象物の成分を分析するステップとを備える、成分分析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−257218(P2011−257218A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130844(P2010−130844)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]