説明

成分分析装置

【課題】可撓性容器の厚さを調節することにともない同容器の内圧が大きくなりすぎることを抑制することのできる成分分析装置を提供する。
【解決手段】この成分分析装置1は、測定対象としての袋状容器60の厚さを調節する調節装置30を備えている。バッグ固定盤31の固定測定面32は、袋状容器60の裏面60Bの下外周部63Aに接触している。測定可動盤35の可動測定面36は、袋状容器60の表面60Aの下外周部63Aに接触している。固定測定面32および可動測定面36は、袋状容器60との接触により同容器60の下外周部63Aの外周部厚さを調節する。測定部20は、固定測定面32に設けられる発光口34から可動測定面36に向けて近赤外光を照射する機能と、この近赤外光を可動測定面36に設けられる受光口38において受光する機能とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象としての可撓性容器の厚さを調節する調節装置と、近赤外光を照射する機能および照射した近赤外光を受光する機能を有する測定部とを備える成分分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記成分分析装置として、例えば特許文献1の装置が知られている。
この成分分析装置には、可撓性容器の中央部分を圧縮して同部分の厚さを調整する調節装置が設けられている。同分析装置を用いた内容物の分析は、次の手順で行なわれる。
【0003】
まず、調節装置により可撓性容器を挟み込んだ状態を保持する。次に、可撓性容器の中央部分の厚さが測定距離となるまで同部分を調節装置により圧縮し、中央部分の厚さが測定距離に設定された状態を保持する。次に、調節装置の発光部から可撓性容器に向けて近赤外光を照射する。そして、調節装置の受光部により受光した近赤外光に基づいて可撓性容器の内容物を分析する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−210973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、可撓性容器を測定対象とした測定を行なうときには、容器の保護の観点から可撓性容器の内圧が大きくなりすぎないように可撓性容器を取り扱うことが望まれる。
一方、特許文献1の成分分析装置においては、可撓性容器の中央部分を圧縮して同容器の厚さを調整するため、この厚さを調整する測定動作に起因して可撓性容器の内圧が大きくなりすぎるおそれがある。すなわち、内容物が封入された可撓性容器においては、中央部分の厚さが可撓性容器の他の部分の厚さよりも大きいため、中央部分を調節装置による圧縮前の厚さから測定距離まで圧縮するための量も大きくなる。このため、圧縮量が大きくなることにともない可撓性容器の内圧が過度に大きくなることが考えられる。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、可撓性容器の厚さを調節することにともない同容器の内圧が大きくなりすぎることを抑制することのできる成分分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための手段を以下に示す。
・本発明の成分分析装置は、測定対象としての可撓性容器の厚さを調節する調節装置と、近赤外光を照射する機能および照射した近赤外光を受光する機能を有する測定部とを備える成分分析装置において、前記可撓性容器の中央部分に対して縁よりの部分を前記可撓性容器の外側部分として、この外側部分の厚さを調節するための第1調節部および第2調節部が前記調節装置に設けられていること、前記第1調節部の第1測定面が前記可撓性容器の第1面の外側部分に接触し、かつ前記第2調節部の第2測定面が前記可撓性容器の第2面の外側部分に接触することにより、前記可撓性容器の外側部分の厚さが調節されること、ならびに、前記第1測定面から前記第2測定面に向けて近赤外光を照射する機能と、この近赤外光を前記第2測定面において受光する機能とが前記測定部に設けられていることを特徴としている。
【0008】
・この成分分析装置においては、前記第2測定面から前記第1測定面に向けて近赤外光を照射する機能と、この近赤外光を前記第1測定面において反射する機能と、前記第1測定面において反射された近赤外光を前記第2測定面において受光する機能とが前記測定部に設けられていること、ならびに、前記測定部の動作モードとして、前記第1測定面から前記第2測定面に向けて近赤外光を照射する第1照射モード、および前記第2測定面から前記第1測定面に向けて近赤外光を照射する第2照射モードが用意されていることが好ましい。
【0009】
・この成分分析装置においては、前記第1測定面から前記第2測定面に向けて照射された近赤外光を前記第2測定面において反射する機能と、前記第2測定面において反射された近赤外光を前記第1測定面において受光する機能とが前記測定部に設けられていること、ならびに、前記測定部の動作モードとして、前記第1測定面から前記第2測定面に向けて照射された近赤外光を受光する第1受光モード、および前記第2測定面において反射された近赤外光を前記第1測定面において受光する第2受光モードが用意されていることが好ましい。
【0010】
・本発明の成分分析装置は、測定対象としての可撓性容器の厚さを調節する調節装置と、近赤外光を照射する機能および照射した近赤外光を受光する機能を有する測定部とを備える成分分析装置において、前記可撓性容器の中央部分に対して縁よりの部分を前記可撓性容器の外側部分として、この外側部分の厚さを調節するための第1調節部および第2調節部が前記調節装置に設けられていること、前記第1調節部の第1測定面が前記可撓性容器の第1面の外側部分に接触し、かつ前記第2調節部の第2測定面が前記可撓性容器の第2面の外側部分に接触することにより、前記可撓性容器の外側部分の厚さが調節されること、ならびに、前記第1測定面から前記第2測定面に向けて近赤外光を照射する機能と、この近赤外光を前記第2測定面において反射する機能と、前記第2測定面において反射された近赤外光を前記第1測定面において受光する機能とが前記測定部に設けられていることを特徴としている。
【0011】
・この成分分析装置においては、次の(A)および(B)の条件、すなわち「(A)前記第1測定面の面積が前記可撓性容器の第1面の面積の半分以下の大きさである。」および「(B)前記第2測定面の面積が前記可撓性容器の第2面の面積の半分以下の大きさである。」の少なくとも一方が満たされることが好ましい。
【0012】
・この成分分析装置においては、前記第1測定面と前記第2測定面との間隔を測定距離として、この測定距離を変更する距離調節装置が前記調節装置に設けられていることが好ましい。
【0013】
・この成分分析装置においては、前記可撓性容器の内容物を分析するために設定される前記測定距離を分析測定距離とし、前記第1測定面および前記第2測定面に対応する前記可撓性容器の外側部分について、この外側部分内の内容物の少なくとも一部が前記可撓性容器内の別の部分に押し出された状態を内容物排出状態とし、前記可撓性容器の外側部分が前記内容物排出状態のときの前記測定距離を参照測定距離として、前記分析測定距離のときに受光した近赤外光と、前記参照測定距離のときに受光した近赤外光とに基づいて、前記可撓性容器の内容物を分析することが好ましい。
【0014】
・この成分分析装置においては、次の(A)および(B)の条件、すなわち「(A)前記測定部により照射される近赤外光の波長が1300nmから2500nmまでの範囲に含まれる。」および「(B)前記第1測定面と前記第2測定面との間隔を測定距離とし、前記可撓性容器の内容物を分析するために設定される前記測定距離を分析測定距離として、この分析測定距離が0.5mmから3mmまでの範囲に含まれる。」の少なくとも一方が満たされることが好ましい。
【0015】
・この成分分析装置においては、前記第1測定面および前記第2測定面に対応する前記可撓性容器の外側部分に向けて内容物を移動させるための容器圧縮装置が設けられていることが好ましい。
【0016】
・この成分分析装置においては、前記容器圧縮装置により前記可撓性容器に付与される力の大きさが50gから2kgまでの範囲に含まれることが好ましい。
・この成分分析装置においては、前記容器圧縮装置においての前記可撓性容器との接触面について、その大きさを変更するための機構が設けられていることが好ましい。
【0017】
・この成分分析装置においては、前記調節装置においての前記可撓性容器との接触面について、その大きさを変更するための機構が設けられていることが好ましい。
・この成分分析装置においては、前記測定部が受光した近赤外光に基づいて前記可撓性容器の内容物に異常がある旨判定したとき、その旨を報知することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、可撓性容器の厚さを調節することにともない同容器の内圧が大きくなりすぎることを抑制することのできる成分分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態の成分分析装置について、その全体構成を模式的に示す部分断面図。
【図2】同実施形態に用いられる袋状容器について、(a)は正面構造を示す正面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面構造を示す断面図。
【図3】同実施形態の成分分析装置について、その一部の断面構造を示す断面図。
【図4】同実施形態の成分分析装置について、その一部の断面構造を示す断面図。
【図5】同実施形態の成分分析装置について、その実施例Aにより得られた対象試料のグルコース濃度を示すテーブル。
【図6】同実施例について、実験により得られた吸光度スペクトルを示すグラフ。
【図7】同実施例について、実験により得られたグルコース濃度の予測値と実測値との関係を示すグラフ。
【図8】本発明の第2実施形態の成分分析装置について、その実施例Bにより得られた対象試料の吸光度スペクトルを示すグラフ。
【図9】同実施形態の成分分析装置について、その実施例Bにより得られたグルコース濃度の予測値と実測値との関係を示すグラフ。
【図10】本発明の第3実施形態の成分分析装置について、その全体構成を模式的に示す部分断面図。
【図11】同実施形態の成分分析装置について、その一部の断面構造を示す断面図。
【図12】同実施形態の成分分析装置について、その一部の断面構造を示す断面図。
【図13】本発明の第4実施形態の成分分析装置について、その全体構成を模式的に示す部分断面図。
【図14】同実施形態の成分分析装置について、光ファイバーの端面の正面構造を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1〜図7を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
本実施形態では、透明のポリオレフィン製の袋状容器に封入された血漿について、そのグルコース濃度を測定する成分分析装置として本発明を具体化した一例を示している。
【0021】
図1に示されるように、成分分析装置1は、近赤外光を照射する機能および近赤外光を受光する機能を備える測定部20と、測定対象としての袋状容器60の厚さを調節する調節装置30とを備えている。また、各種の制御を行う制御部11と、測定結果を表示する表示部12と、測定のためにユーザにより操作される操作部13とを備えている。
【0022】
制御部11は、操作部13の操作に基づいて各種の制御を実行する。その一例として以下のものが挙げられる。
・調節装置30のアクチュエーター42を駆動して測定距離を調節する制御。
・測定部20のシャッター26の開放状態および閉鎖状態を変更する制御。
・測定部20が受光した近赤外光に基づいてグルコース濃度を算出する制御。
【0023】
図2を参照して、袋状容器60の構成について説明する。
袋状容器60は、長方形状かつ同一の大きさの2枚のポリオレフィン製シートを互いに融着したものとして構成されている。ポリオレフィン製シートとしては、近赤外光を透過するものが用いられている。
【0024】
袋状容器60には、2枚のポリオレフィン製シートの縁が互いに融着された密着部61と、密着部61に取り囲まれた袋部62とが設けられている。袋部62においては、2枚のポリオレフィン製シート同士が融着されていないため、内容物70を封入するための空間としての内部空間65が形成されている。
【0025】
袋状容器60の一辺には、内容物70を内部空間65に入れるための開口部が設けられている。この開口部は、内部空間65に内容物が入れられた後に閉じられる。これにより、袋状容器60内に内容物70が封入された状態が得られる。
【0026】
ポリオレフィン製シートの一方において、内部空間65に面する内面とは反対側の面を外面としたとき、この外面が袋状容器60の表面60Aを構成している。また、ポリオレフィン製シートの他方において、内部空間65に面する内面とは反対側の面を外面としたとき、この外面が袋状容器60の裏面60Bを構成している。なお、裏面60Bは「可撓性容器の第1面」に相当し、表面60Aは「可撓性容器の第2面」に相当する。
【0027】
測定対象としての袋状容器60の内部空間65には、血漿および空気を含む内容物70が封入されている。袋状容器60に封入される血漿の体積は、内部空間65の最大容積の少なくとも半分以上の大きさとなる。また、内容物70に含まれる空気の量は、血漿の量に対して十分に小さい。
【0028】
ここで、袋部62を袋状容器60の長手方向において次のように区分する。
(A)袋部62と密着部61との境界から袋部62の全長の3分の1までの部分を外周部63とする。
(B)一方の外周部63と他方の外周部63との間の部分を中央部64とする。
(C)外周部63の一方、すなわち内容物70の測定時において上方に配置される外周部63を上外周部63Bとする。
(D)外周部63の他方、すなわち内容物70の測定時において下方に配置される外周部63を下外周部63Aとする。なお、この下外周部63Aは「可撓性容器の外側部分」に相当する。
【0029】
また、袋状容器60の厚さについての次のように定義する。
(A)袋状容器60の表面60Aから裏面60Bまでの厚さを「厚さH」とする。
(B)袋状容器60の下外周部63Aの厚さHを「外周部厚さHA」とする。
(C)袋状容器60の中央部64の厚さHを「中央部厚さHC」とする。
(D)袋状容器60の密着部61の厚さHを「密着部厚さHX」とする。
【0030】
中央部厚さHCは、袋状容器60の内部空間65に十分な量の内容物70が封入されている状態において、外周部厚さHAよりも大きくなる。密着部厚さHXは、ポリオレフィン製シートの2枚分の厚さと一致する。
【0031】
図1を参照して、成分分析装置1の構造について説明する。
調節装置30は、袋状容器60の裏面60Bに接触して袋状容器60を支持するバッグ固定盤31と、袋状容器60の表面60Aに接触して袋状容器60に圧力を付与する測定可動盤35と、測定可動盤35を移動させるための距離調節装置40とを備えている。
【0032】
バッグ固定盤31および測定可動盤35は、それぞれの測定面が互いに対向するように設けられている。すなわち、バッグ固定盤31の測定面(以下、「固定測定面32」)と測定可動盤35の測定面(以下、「可動測定面36」)とは互いに対向している。具体的には、以下の各条件の全部が満たされるようにバッグ固定盤31および測定可動盤35が設けられている。
(A)固定測定面32と可動測定面36とが互いに平行する。
(B)各測定面32,36が水平面に対して傾斜する。
(C)可動測定面36が固定測定面32の下方の部分と対向する。
【0033】
各測定面32,36の面積は次のように設定されている。
(A)固定測定面32の面積は、袋部62の表面60Aの面積よりも大きい。
(B)可動測定面36の面積は、表面60Aの面積の30%の大きさを有する。
【0034】
バッグ固定盤31には、ハロゲン光源21から発生した光を通過させる固定測定孔33が形成されている。固定測定面32に形成された固定測定孔33の開口部(以下、「発光口34」)は、袋状容器60に近赤外光を照射する部分に相当する。この発光口34は、固定測定面32において、バッグ固定盤31に配置された袋状容器60の下外周部63Aと対応する位置に形成されている。
【0035】
測定可動盤35には、近赤外光を分光部22に案内する可動測定孔37が形成されている。可動測定面36に形成された可動測定孔37の開口部(以下、「受光口38」)は、袋状容器60を通過した近赤外光を受光する部分に相当する。この受光口38は、可動測定面36において、バッグ固定盤31に配置された袋状容器60の下外周部63Aと対応する位置に形成されている。
【0036】
調節装置30においては、上記のように、発光口34および受光口38がそれぞれ袋状容器60の下外周部63Aと対応するように形成されている。このため、バッグ固定盤31に袋状容器60が配置された状態においては、発光口34と受光口38とが同容器60の下外周部63Aを介して互いに対向する。
【0037】
距離調節装置40は、測定可動盤35を案内するためのレール41と、レール41上において測定可動盤35を移動させるためのアクチュエーター42とを備えている。測定可動盤35がアクチュエーター42により駆動されることにより、可動測定面36が固定測定面32に近づく方向または固定測定面32から離れる方向に移動する。
【0038】
なお、バッグ固定盤31は「第1調節部」に相当する。また、固定測定面32は「第1測定面」に相当する。また、測定可動盤35は「第2調節部」に相当する。また、可動測定面36は「第2測定面」に相当する。
【0039】
測定部20は、近赤外光を発生させるハロゲン光源21と、袋状容器60を通過した近赤外光を分光する分光部22と、分光部22において分光された近赤外光に基づいて受光信号を生成する受光素子23とを備えている。またこの他に、ハロゲン光源21から発光口34に向かう光を遮光することができるシャッター26を備えている。
【0040】
固定測定面32に設けられる発光口34、および可動測定面36に設けられる受光口38は、測定部20の一部を構成している。すなわち測定部20は、ハロゲン光源21、分光部22、受光素子23、発光口34、および受光口38を含む装置として構成されている。
【0041】
ハロゲン光源21から発生する近赤外光には、1300nmから2500nmまでの波長の光が含まれる。内容物70の分析のための演算に用いる光の波長の範囲は、測定対象および目的に応じて1300nmから2500nmまでの範囲から任意の範囲を選択することができる。
【0042】
図1を参照して、測定部20の動作について説明する。
ハロゲン光源21は、操作部13の電源ボタンが押されたことに基づいて近赤外光を発光する。シャッター26は、この状態において、操作部13の測定開始ボタンが押されたことに基づいて開放される。シャッター26が開放されているとき、ハロゲン光源21から発生した近赤外光は、発光口34、袋状容器60の下外周部63A、および受光口38を通過して分光部22に到達する。分光部22は、入力された近赤外光を分光した受光素子23に出力する。受光素子23は、分光部22から入力された分光に応じた信号(以下、「受光信号SA」)を制御部11に送信する。
【0043】
図3および図4を参照して、調節装置30の動作について説明する。
アクチュエーター42は、制御部11から送信される指令信号に基づいて、測定可動盤35を固定測定面32に対して移動させる。これにより、固定測定面32から可動測定面36までの距離(以下、「測定距離LD」)が変更される。
【0044】
制御部11には、袋状容器60の測定に用いるための測定距離LDとして、3つの測定距離、すなわち準備測定距離LDP、分析測定距離LDS、および参照測定距離LDRが予め設定されている。
【0045】
(A)準備測定距離LDPは、測定準備のための測定距離LDとして設定されている。具体的には、可動測定面36が固定測定面32から最も離れているときの測定距離LDが準備測定距離LDPとして設定されている。この準備測定距離LDPは、袋状容器60の中央部厚さHCよりも大きい。
【0046】
(B)分析測定距離LDSは、分析のための測定距離LDとして設定されている。具体的には、血漿中のグルコース濃度の測定に適した測定距離LDが分析測定距離LDSとして設定されている。分析測定距離LDSとしては、0.5mmから3mmまでの範囲において、測定用の近赤外光の波長の範囲に適した複数の距離が用意されている。そして、内容物70の測定時には複数の分析測定距離LDSのなかから測定に適したものが選択される。
【0047】
(C)参照測定距離LDRは、バックグラウンド測定のための測定距離LDとして設定されている。具体的には、密着部厚さHXの距離が参照測定距離LDRとして設定されている。なお、袋状容器60の外周部厚さHAが参照測定距離LDRと等しい距離になるまで下外周部63Aが圧縮されたとき、下外周部63Aと対応する内部空間65の内容物70のほとんどが中央部64および上外周部63Bに排出された状態となる。
【0048】
調節装置30は、制御部11からの指令信号に基づいて次のように動作する。
(A)測定距離LDを分析測定距離LDSまたは参照測定距離LDRから準備測定距離LDPに変更する旨の指令信号を制御部11から受信したとき、測定可動盤35をバッグ固定盤31から遠ざける方向に移動させる。
【0049】
(B)測定距離LDを準備測定距離LDPから分析測定距離LDSまたは参照測定距離LDRに変更する旨の指令信号を制御部11から受信したとき、測定可動盤35をバッグ固定盤31に近づける方向に移動させる。
【0050】
(C)測定距離LDを分析測定距離LDSから参照測定距離LDRに変更する旨の指令信号を制御部11から受信したとき、測定可動盤35をバッグ固定盤31から近づける方向に移動させる。
【0051】
(D)測定距離LDを参照測定距離LDRから分析測定距離LDSに変更する旨の指令信号を制御部11から受信したとき、測定可動盤35をバッグ固定盤31から遠ざける方向に移動させる。
【0052】
測定距離LDの変更により袋状容器60は次のように圧縮される。
すなわち、バッグ固定盤31に袋状容器60が置かれた状態において、下外周部63Aの外周部厚さHAが測定距離LDよりも小さいとき、下外周部63Aの表面60Aと可動測定面36との間に隙間が形成される。そして、測定距離LDが外周部厚さHAよりも小さい距離に変更されるとき、外周部厚さHAが測定距離LDとなるまで下外周部63Aが圧縮される。
【0053】
例えば、図3に示されるように、測定距離LDが参照測定距離LDRに変更されるとき、外周部厚さHAが参照測定距離LDRとなるまで下外周部63Aが圧縮される。また、図4に示されるように、測定距離LDが分析測定距離LDSに変更されるとき、外周部厚さHAが分析測定距離LDSとなるまで下外周部63Aが圧縮される。
【0054】
図1を参照して、制御部11により実行される測定動作について説明する。
測定動作の準備作業として、ユーザにより操作部13の電源ボタンが操作されることにより、電源がオフからオンに変更される。また、ユーザによりバッグ固定盤31の固定測定面32に袋状容器60が配置される。
【0055】
制御部11は、操作部13の測定開始ボタンが操作されたことに基づいてハロゲン光源21を点灯し、点灯から所定時間が経過した後、すなわちハロゲン光源21の点灯状態が安定した後に以下の測定動作を開始する。
【0056】
測定動作は、以下の順に行われる。
(動作1)測定距離LDを準備測定距離LDPから参照測定距離LDRに変更する。
(動作2)シャッター26を開放する。
(動作3)受光信号SAを参照受光信号SARとして記憶する。
(動作4)測定距離LDを参照測定距離LDRから分析測定距離LDSに変更する。
(動作5)受光信号SAを分析受光信号SASとして記憶する。
(動作6)シャッター26を閉鎖する。
(動作7)測定距離LDを分析測定距離LDSから準備測定距離LDPに変更する。
【0057】
制御部11は、上記の(動作3)および(動作5)により得られた参照受光信号SARおよび分析受光信号SASに基づいて、血漿中のグルコース濃度を定量する。具体的には、次の順にグルコース濃度を定量するための演算を行なう。
(A)波長毎の参照受光信号SARおよび分析受光信号SASの光強度を算出する。
(B)参照受光信号SARの光強度を分析受光信号SASの光強度により除する。
(C)上記(B)の演算により得られた値の常用対数を吸光度として算出する。
(D)波長毎に得られる吸光度を用いて吸光度スペクトルを生成する。
(E)生成した吸光度スペクトルに基づいてグルコース濃度を演算する。
【0058】
上記の演算手順においては、参照受光信号SARの光強度を用いて吸光度を算出するため、吸光度スペクトルに対する袋状容器60の影響が低減される。これにより、測定対象とする袋状容器60毎に吸光特性が異なる場合において、測定結果として得られるグルコース濃度のばらつきが大きくなることが抑制される。
【0059】
なお、測定対象とする袋状容器60が複数ある場合には、(動作1)〜(動作7)およびグルコース濃度を定量するための演算が袋状容器60ごとに繰り返される。そして、全ての袋状容器60の測定動作が終了した後、ユーザにより操作部13の電源ボタンが操作されることにより電源がオンからオフに変更される。これにより、ハロゲン光源21が消灯する。
【0060】
(実施例A)
図5〜図7を参照して、実施例Aについて説明する。
この実施例の測定に用いた各種の条件を以下に示す。
【0061】
(条件A)袋状容器60として、長辺の長さが「7cm」、短辺の長さが「3cm」、および厚さが「0.2mm」のポリオレフィン製シートにより形成された袋状容器60を用いる。この袋状容器60には、約2mlの内容物70を封入することができる。
【0062】
(条件B)測定可動盤35として、可動測定面36の面積が「6cm」、袋状容器60の長手方向と対応する可動測定面36の辺の長さが「2cm」、および袋状容器60の短辺と対応する可動測定面36の辺の長さが「3cm」のものを用いる。
【0063】
(条件C)内容物70として、グルコース濃度が「52〜380mg/dl」の範囲に含まれる6種類の哺乳類由来の血漿試料を用いる。また、6種類の血漿試料においては、グルコース濃度を互いに異なるものにする。図5には、各血漿試料を専用の測定容器を用いて分光光度計により測定したグルコース濃度の実測値が示されている。
【0064】
(条件D)分析測定距離LDSを「1.5mm」に設定する。参照測定距離LDRを「0.4mm」に設定する。吸光度スペクトルの演算には、「1300nm」から「2300nm」までの範囲の波長を用いる。
【0065】
(条件E)参照受光信号SARおよび分析受光信号SASに基づいてグルコース濃度を定量する。グルコース濃度の定量方法としては、クロスバリデーション手法による多変量解析手法(PLS回帰分析)を用いる。
【0066】
図6および図7を参照して、実施例Aの測定結果について説明する。
この実施例では、1つの試料について3回の測定を実施することにより合計18回の測定を行ない、その測定結果を図6および図7に示されるグラフとしてまとめた。
【0067】
図6は、測定により得られた吸光度スペクトルのうちの代表的なものを示している。なお、実際の測定結果としては18本の吸光度スペクトルが得られているが、各吸光度スペクトルがグラフ上において互いに接近した領域にプロットされるため、ここでは代表的な吸光度スペクトル以外については図示を割愛している。
【0068】
同一の試料から得られた3本の吸光度スペクトルについて、それぞれの吸光度スペクトルの相関性は、別の試料から得られた吸光度スペクトルとの相関性よりも高いことが確認された。すなわち、6つの試料のうちの1つの試料の測定結果として得られた3本の吸光度スペクトルの相互の相関性は、同3本の吸光度スペクトルと他の5つの試料の測定結果として得られた15本の吸光度スペクトルとの相関性よりも高い。
【0069】
また、6つの試料から得られた18本の吸光度スペクトルにより、グルコース濃度が高くなるにつれて吸光度が高くなる濃度依存的な吸光度の変化が確認された。この濃度依存的な吸光度の変化は、測定に用いられた波長の全範囲(1300nm〜2300nm)にわたり現れている。
【0070】
図7は、本実施例において用いた各試料と同じ試料について、本実施例の方法とは異なる方法により分析したグルコース濃度の値(実測値)と、本実施例の測定結果として得られたグルコース濃度の値(予測値)との関係を示している。
【0071】
同一の試料から得られたグルコース濃度の予測値は、互いに近い値を示すとともにばらつきが小さいことが確認された。なお、グルコース濃度の定量に用いる検量式は、PLSファクターが「7」のときに最適化された。また、回帰係数としては「0.96」が、また標準誤差(SEP)としては「38.3mg/dl」が得られた。
【0072】
(実施形態の効果)
本実施形態の成分分析装置1によれば以下の効果が得られる。
(1)成分分析装置1には、袋状容器60の下外周部63Aを圧縮する固定測定面32および可動測定面36が設けられている。この構成によれば、袋状容器60の中央部64を圧縮して内容物70を分析する場合と比較して、袋状容器60の厚さHを調節することにともない同容器60の内圧が大きくなりすぎることを抑制することができる。
【0073】
(2)内容物70として血漿等が封入される袋状容器60においては、内容物70の識別のために同容器60の中央部64にラベルが貼り付けられた状態で用いられることもある。また、こうしたラベルとしては、一般には近赤外光を透過しにくいものが用いられる。このため、袋状容器60の中央部64に近赤外光して内容物70の分析を行なう方法においては、ラベルの有無によりグルコース濃度の測定精度が大きく変化する。
【0074】
本実施形態の成分分析装置1においては、袋状容器60の下外周部63Aに近赤外光を照射するため、中央部64にラベルが貼り付けられている袋状容器60についても内容物70のグルコース濃度を適切に測定することができる。
【0075】
(3)成分分析装置1においては、可動測定面36の面積の大きさを袋状容器60の表面60Aの面積の30%に設定している。すなわち、可動測定面36と表面60Aとの接触面積を表面60Aの面積の30%以下に設定している。この構成によれば、可動測定面36と表面60Aとの接触面積が30%よりも大きい場合と比較して、内容物70の測定時に袋状容器60にかかる圧力を小さくすることができる。また、アクチュエーター42を駆動するために必要となるエネルギーが小さくなる。
【0076】
(4)成分分析装置1においては、測定距離LDを変更する調節装置30が設けられている。この構成によれば、内容物70の分析に用いる近赤外光の波長、分析対象とする成分の種類、内容物70の種類、および袋状容器60の種類等に応じて、適切な測定距離LDを設定することができる。
【0077】
ここで、測定可動盤35をバッグ固定盤31に対して移動させることができない成分分析装置を「比較分析装置」として、この装置との対比に基づいて本実施形態の成分分析装置1により得られる効果について説明する。なお、比較分析装置には、上記の点を除いては成分分析装置1と同じ構成が採用されているものとする。
【0078】
比較分析装置においては、厚さHが測定距離LDよりも大きい袋状容器60を測定可動盤35とバッグ固定盤31との間に配置する場合、袋状容器60を圧縮させながら測定可動盤35とバッグ固定盤31との間に押し込む必要がある。
【0079】
本実施形態の成分分析装置1においては、測定距離LDを変更する調節装置30が設けられているため、袋状容器60を測定可動盤35とバッグ固定盤31との間に配置するにあたり、測定距離LDを予め袋状容器60の厚さHよりも大きくしておくことができる。このため、比較分析装置とは異なり、厚さHの大きい袋状容器60を測定対象とする場合においても同容器60を容易に測定可動盤35とバッグ固定盤31との間に配置することができる。
【0080】
(5)成分分析装置1においては、分析測定距離LDSのときの分析受光信号SAS、および参照測定距離LDRのときの参照受光信号SARに基づいて内容物70のグルコース濃度を分析している。この構成によれば、複数の袋状容器60を測定対象とする場合において袋状容器60毎に吸光度スペクトルが異なるとき、各袋状容器60の測定結果が大きくばらつくことを抑制することができる。
【0081】
(6)成分分析装置1においては、測定部20により照射される近赤外光の波長が「1300nm」から「2500nm」までの範囲に設定される。また、分析測定距離LDSが「0.5mm」から「3mm」までの範囲に設定される。そして、このように波長および測定距離LDの条件を組み合わせることにより、内容物70のグルコース濃度を適切に測定することができることが実施例Aにより確認された。すなわち、成分分析装置1によれば内容物70のグルコース濃度の測定精度が向上する。
【0082】
(7)袋状容器60に封入された内容物70の量が少ないときには、袋状容器60の外周部厚さHAが分析測定距離LDSよりも小さくなることがある。この状態で内容物70の測定を実施したときには、容器60の表面60Aと受光口38との間、または裏面60Bと発光口34との間に形成される空隙の影響により、グルコース濃度の測定精度が低下するおそれがある。
【0083】
成分分析装置1においては、バッグ固定盤31の固定測定面32が水平面に対して傾斜して設けられている。また、袋状容器60の下外周部63Aに対して近赤外光を照射するように測定部20が構成されている。
【0084】
この構成によれば、内容物70の分析のために袋状容器60がバッグ固定盤31に配置されたとき、内容物70が重力により下外周部63Aに移動するため、袋状容器60の外周部厚さHAがより大きくなる。これにより、容器60の表面60Aと受光口38との間、または裏面60Bと発光口34との間に空隙が形成されにくくなるため、同空隙に起因した測定精度の低下が抑制される。また、内部空間65に空気が含まれている場合には、袋状容器60がバッグ固定盤31に配置されたときに空気が上外周部63Bに移動するため、測定結果に対する内部空間65の空気の影響を小さくすることができる。
【0085】
(8)成分分析装置1においては、ハロゲン光源21から発生する近赤外光に基づいて内容物70の分析を行なう。この構成によれば、紫外光、放射線、または試薬等を用いて内容物70を分析する構成と比較して、測定動作に起因して内容物70の状態が変化する度合いを小さくなる。
【0086】
(9)血漿において細菌が増殖したとき、血漿中のグルコース濃度が著しく減少する。本実施形態の成分分析装置1においては、袋状容器60の内容物70のグルコース濃度を検出することで袋状容器60の内容物70の細菌汚染の有無を検出することができる。
【0087】
(第2実施形態)
図1、図8、および図9を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
第1実施形態の成分分析装置1では、固定測定面32と可動測定面36との間に袋状容器60が配置された状態かつ、測定距離LDが参照測定距離LDRに設定された状態において、そのときに得られる受光信号SAをグルコース濃度の演算に用いている。
【0088】
これに対して本実施形態の成分分析装置1では、固定測定面32と可動測定面36との間に袋状容器60が配置されていない状態、かつ測定距離LDが分析測定距離LDSに設定された状態において、そのときに得られる受光信号SA(以下、「無試料受光信号SAN」)をグルコース濃度の演算に用いる。
【0089】
以下、この変更された部分についての詳細を示す。なお、その他の点については第1実施形態と同様の構成が採用されているため、同実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその説明の一部または全部を適宜省略する。
【0090】
図1を参照して、制御部11により実行される準備動作および測定動作について説明する。制御部11は、測定動作として、参照測定動作と試料測定動作とを連続して行なう。なお、参照測定動作が完了した後においては、ユーザにより固定測定面32に袋状容器60が配置される。
【0091】
参照測定動作は、以下の順に行われる。
(動作11)測定距離LDを準備測定距離LDPから分析測定距離LDSに設定する。
(動作12)シャッター26を開放する。
(動作13)受光信号SAを無試料受光信号SANとして記憶する。
(動作14)測定距離LDを分析測定距離LDSから準備測定距離LDPに設定する。
【0092】
試料測定動作は、以下の順に行われる。
(動作21)測定距離LDを準備測定距離LDPから分析測定距離LDSに設定する。
(動作22)受光信号SAを分析受光信号SASとして記憶する。
(動作23)シャッター26を閉鎖する。
(動作24)測定距離LDを分析測定距離LDSから準備測定距離LDPに設定する。
【0093】
制御部11は、上記の(動作13)および(動作22)により得られた無試料受光信号SANおよび分析受光信号SASに基づいて、血漿中のグルコース濃度を定量する。具体的には、次の順にグルコース濃度を定量するための演算を行なう。
(A)波長毎の無試料受光信号SANおよび分析受光信号SASの光強度を算出する。
(B)無試料受光信号SANの光強度を分析受光信号SASの光強度により除する。
(C)上記(B)の演算により得られた値の常用対数を吸光度として算出する。
(D)波長毎に得られる吸光度を用いて吸光度スペクトルを生成する。
(E)生成した吸光度スペクトルに基づいてグルコース濃度を演算する。
【0094】
なお、測定対象とする袋状容器60が複数ある場合には、(動作11)〜(動作14)、(動作21)〜(動作24)、およびグルコース濃度を定量するための演算が袋状容器60ごとに繰り返される。そして、全ての袋状容器60の測定動作が終了した後、ユーザにより操作部13の電源ボタンが操作されることにより電源がオンからオフに変更される。これにより、ハロゲン光源21が消灯する。
【0095】
(実施例B)
図8および図9を参照して、実施例Bについて説明する。
本実施例においては、実施例Aの(条件D)が以下の(条件F)に変更されている。また、実施例Aの(条件E)が以下の(条件G)に変更されている。なお、実施例Aの(条件A)〜(条件C)については同じ内容のものが用いられている。
【0096】
(条件F)分析測定距離LDSを「1.5mm」に設定する。無試料測定距離LDNを「1.5mm」に設定する。吸光度スペクトルの演算には、「1300nm」から「2300nm」までの範囲の波長を用いる。
【0097】
(条件G)参照受光信号SARおよび無試料受光信号SANに基づいてグルコース濃度を定量する。定量方法としては、クロスバリデーション手法による多変量解析手法(PLS回帰分析)を用いる。
【0098】
図8および図9を参照して、実施例Bの測定結果について説明する。
この実施例では、1つの試料について3回の測定を実施することにより合計18回の測定を行ない、その測定結果を図8および図9に示されるグラフとしてまとめた。
【0099】
図8は、測定により得られた吸光度スペクトルのうちの代表的なものを示している。なお、実際の測定結果としては18本の吸光度スペクトルが得られているが、各吸光度スペクトルがグラフ上において互いに接近した領域にプロットされるため、ここでは代表的な吸光度スペクトル以外については図示を割愛している。
【0100】
同一の試料から得られた3本の吸光度スペクトルについて、実施例Aと同様の傾向が確認された。また、6つの試料から得られた18本の吸光度スペクトルにより、実施例Aと同様に濃度依存的な吸光度の変化が確認された。
【0101】
図9は、本実施例において用いた各試料と同じ試料について、本実施例の方法とは異なる方法により分析したグルコース濃度の値(実測値)と、本実施例の測定結果として得られたグルコース濃度の値(予測値)との関係を示している。
【0102】
同一の試料から得られたグルコース濃度の予測値は、互いに近い値を示すとともにばらつきが小さいことが確認された。なお、グルコース濃度の定量に用いる検量式は、PLSファクターが「7」の場合に最適化された。また、回帰係数としては「0.60」が、また標準誤差(SEP)としては「80.0mg/dl」が得られた。
【0103】
(実施形態の効果)
本実施形態の成分分析装置1によれば、第1実施形態の(1)〜(4)および(6)〜(9)の効果に加えて以下の効果が得られる。
【0104】
(10)成分分析装置1においては、分析受光信号SASおよび無試料受光信号SANに基づいて袋状容器60の内容物70のグルコース濃度を分析している。この構成によれば、分析受光信号SASのみに基づいてグルコース濃度を定量する場合と比較して、定量の精度を向上する。
【0105】
(第3実施形態)
図10〜図12を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態の成分分析装置1は、第1実施形態の成分分析装置1に次の装置を追加したものとして構成されている。すなわち、本実施形態の成分分析装置1には、袋状容器60の中央部64から下外周部63Aに内容物70を移動させる容器圧縮装置50が設けられている。
【0106】
以下、この変更された部分についての詳細を示す。なお、その他の点については第1実施形態と同様の構成が採用されているため、同実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその説明の一部または全部を適宜省略する。
【0107】
図10を参照して、容器圧縮装置50について説明する。
容器圧縮装置50は、袋状容器60の中央部64を圧縮する圧縮可動盤51と、圧縮可動盤51を案内するためのレール53と、レール53上において圧縮可動盤51を移動させるためのアクチュエーター54とを備えている。圧縮可動盤51は、袋状容器60に付与する力が50gから2kgまでの範囲となるように駆動される。
【0108】
圧縮可動盤51には、バッグ固定盤31の固定測定面32と対向する平面(以下、「圧縮面52」)が設けられている。圧縮面52の面積は、袋部62の表面60Aの面積の30%に設定されている。
【0109】
バッグ固定盤31および圧縮可動盤51は、固定測定面32と圧縮面52とが互いに平行するように配置されている。これにより、袋状容器60が固定測定面32と圧縮面52との間に配置されたとき、固定測定面32が裏面60Bと対向し、圧縮面52が表面60Aと対向する。
【0110】
圧縮可動盤51がアクチュエーター54により駆動されることにより、圧縮面52が固定測定面32に近づく方向または固定測定面32から離れる方向に移動する。これにより、固定測定面32から圧縮面52までの距離(以下、「圧縮調節距離LP」)が変更される。
【0111】
制御部11には、袋状容器60の測定に用いるための測定距離LD(準備測定距離LDP、分析測定距離LDS、および参照測定距離LDR)に加えて、圧縮調節距離LPとして測定時調節距離LPSが予め設定されている。
【0112】
測定時調節距離LPSは、袋状容器60の中央部64を圧縮するための距離として設定されている。具体的には、分析測定距離LDSよりも小さい値が設定されている。また、容器圧縮装置50により圧縮される前の袋状容器60の中央部厚さHCよりも小さい値が設定される。このため、圧縮調節距離LPが測定時調節距離LPSに設定されることにより、中央部厚さHCが測定時調節距離LPSとなるまで袋状容器60の中央部64が圧縮される。
【0113】
図10〜図12を参照して、制御部11により実行される測定動作について説明する。
測定動作の準備作業として、ユーザにより操作部13の電源ボタンが操作されることにより、電源がオフからオンに変更される。また、ユーザによりバッグ固定盤31の固定測定面32に袋状容器60が配置される。
【0114】
制御部11は、操作部13の測定開始ボタンが操作されたことに基づいてハロゲン光源21を点灯し、点灯から所定時間が経過した後、すなわちハロゲン光源21の点灯状態が安定した後に以下の測定動作を開始する。
【0115】
測定動作は、以下の順に行われる。
(動作31)測定距離LDを準備測定距離LDPから参照測定距離LDRに変更する。
(動作32)シャッター26を開放する。
(動作33)受光信号SAを参照受光信号SARとして記憶する。
(動作34)測定距離LDを参照測定距離LDRから分析測定距離LDSに設定する。
(動作35)圧縮調節距離LPを測定時調節距離LPSに設定する。
(動作36)受光信号SAを分析受光信号SASとして記憶する。
(動作37)シャッター26を閉鎖する。
(動作38)測定距離LDを分析測定距離LDSから準備測定距離LDPに変更する。
【0116】
(実施形態の効果)
本実施形態の成分分析装置1によれば、第1実施形態の(1)〜(9)の効果に加えて以下の(11)の効果が得られる。
【0117】
(11)成分分析装置1においては、袋状容器60の中央部64の内容物70を下外周部63Aに移動させるための容器圧縮装置50が設けられている。この構成によれば、内容物70の測定にあたり容器圧縮装置50により中央部64を圧縮することにより、下外周部63Aの厚さHを大きくすることができる。このため、袋状容器60の表面60Aと受光口38との間、または裏面60Bと発光口34との間に空隙が形成されることを抑制することができる。
【0118】
(第4実施形態)
図13および図14を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。
本実施形態の成分分析装置1は、袋状容器60に封入された血漿または全血のグルコース濃度を測定する装置として構成されている。また、第3実施形態の成分分析装置1に次の機能を追加したものとして構成されている。すなわち、本実施形態の測定部20は、固定測定面32から可動測定面36に向けて近赤外光を照射する機能に加えて、可動測定面36から固定測定面32に向けて近赤外光を照射する機能を有している。
【0119】
以下、この変更された部分についての詳細を示す。なお、その他の点については第3実施形態と同様の構成が採用されているため、同実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその説明の一部または全部を適宜省略する。なお、本実施形態において固定測定面32は「第2測定面」に相当する。また、可動測定面36は「第1測定面」に相当する。また、袋状容器60の表面60Aは「第1面」に相当する。また、裏面60Bは「第2面」に相当する。
【0120】
図13に示されるように、測定部20は、近赤外光を反射する反射部24と、ハロゲン光源21から発生した近赤外光を伝播させる3つの光ファイバー25A,25B,25Cとを備えている。またこの他に、ハロゲン光源21から光ファイバー25Bに向かう光を遮光することができる第1シャッター26Aと、ハロゲン光源21から光ファイバー25Cに向かう光を遮光することができる第2シャッター26Bとを備えている。
【0121】
測定部20は、固定測定面32に設けられる第1発光口34A、および可動測定面36に設けられる第2発光口34B、固定測定面32に設けられる受光口38Aを含む装置として構成されている。
【0122】
光ファイバー25Aは、受光口38Aに到達した近赤外光を分光部22に伝播する。光ファイバー25Bは、ハロゲン光源21から発生した近赤外光を第1発光口34Aに伝播する。光ファイバー25Cは、ハロゲン光源21から発生した近赤外光を第2発光口34Bに伝播する。
【0123】
光ファイバー25A〜25Cとしては、例えば、クラッド径が「0.2mm」、コア径が「0.175mm」、開口数が「0.2」の石英製の光ファイバーを用いることができる。
【0124】
光ファイバー25Aおよび光ファイバー25Bは、受光口38A側および第1発光口34A側の端部において束ねられているとともに、他方の端部において分岐する2分岐光ファイバーバンドルとして形成されている。
【0125】
バッグ固定盤31の固定測定孔33には、光ファイバー25Aおよび光ファイバー25Bの集合部分25Xが埋め込まれている。集合部分25Xの端面は、固定測定面32と同一の面上に設けられている。
【0126】
図14に示されるように、固定測定面32においては、1つの光ファイバー25Aの周囲に複数の光ファイバー25Bが同心円上に配置されている。光ファイバー25Aと1つの光ファイバー25Bとの距離(以下、「ファイバー間距離LF」)は、「0.65mm」に設定されている。
【0127】
固定測定面32上に位置する光ファイバー25Aの端部(以下、「受光口38A」)は、袋状容器60を透過した近赤外光および袋状容器60から反射した近赤外光を受光する部分に相当する。また、固定測定面32上に位置する光ファイバー25Bの端部(以下、「第1発光口34A」)は、袋状容器60の裏面60Bに近赤外光を照射する部分に相当する。
【0128】
図13に示されるように、測定可動盤35の可動測定孔37には、光ファイバー25Cの端部25Yが埋め込まれている。端部25Yの端面は、可動測定面36と同一の面上に設けられている。可動測定面36上に位置する光ファイバー25Cの端部(以下、「第2発光口34B」)は、袋状容器60の表面60Aに近赤外光を照射する部分に相当する。可動測定面36において第2発光口34Bの周囲には、第1発光口34Aから照射された近赤外光を反射する板状の反射部24が設けられている。
【0129】
成分分析装置1には、測定部20の動作モードとして、透過光を用いて測定する「透過光モード」と、反射光を用いて測定する「反射光モード」とが設けられている。操作部13には、試料の種類が血漿および全血のいずれであるかを入力するための操作部が設けられている。なお、透過光モードは「第2照射モード」に相当し、反射光モードは「第1照射モード」に相当する。
【0130】
制御部11は、操作部13に入力された試料の種類が血漿の場合、動作モードとして透過光モードを選択する。一方、操作部13に入力された試料の種類が全血の場合、動作モードとして反射光モードを選択する。そして、それぞれのモードにおいて第1シャッター26Aおよび第2シャッター26Bが次のように制御される。
【0131】
透過光モードにおいては、上記の(動作2)において、第1シャッター26Aが閉鎖されるとともに第2シャッター26Bが開放される。これにより、ハロゲン光源21から発生した光は、光ファイバー25Cを介して第2発光口34Bから受光口38Aに向けて照射される。
【0132】
反射光モードにおいては、上記の(動作2)において、第1シャッター26Aが開放されるとともに第2シャッター26Bが閉鎖される。これにより、ハロゲン光源21から発生した光は、光ファイバー25Bを介して第1発光口34Aから袋状容器60の反射部24に向けて照射される。
【0133】
制御部11によるグルコース濃度の定量方法について説明する。
哺乳類由来の全血を測定対象として反射光モードを選択した場合、反射部24に到達した近赤外光の後方散乱光の大半が受光口38Aに到達しない。このため、第1実施形態のグルコース濃度の定量方法を用いた場合、(動作3)により得られる分析受光信号SASは、袋状容器60の裏面60Bと対応するポリオレフィン製シート1枚のみを通過した光の測定結果に相当するものとなる。
【0134】
そこで、本実施形態の成分分析装置1においては、第1実施形態のグルコース濃度の定量方法に代えて、以下のグルコース濃度の定量方法を用いることにより、哺乳類由来の全血を測定対象とした場合のグルコース濃度の定量精度が低下することを抑制している。
【0135】
制御部11は、上記の(動作3)および(動作5)により得られた参照受光信号SARおよび分析受光信号SASに基づいて、血漿中のグルコース濃度を定量する。具体的には、次の順にグルコース濃度を定量するための演算を行なう。
(A)波長毎の参照受光信号SARおよび分析受光信号SASの光強度を算出する。
(B)参照受光信号SARの光強度を2分の1にしたものを新たな光強度とする。
(C)参照受光信号SARの光強度を分析受光信号SASの光強度により除する。
(D)上記(C)の演算により得られた値の常用対数を吸光度として算出する。
(E)波長毎に得られる吸光度を用いて吸光度スペクトルを生成する。
(F)生成した吸光度スペクトルに基づいてグルコース濃度を演算する。
【0136】
(実施形態の効果)
本実施形態の成分分析装置によれば、第1実施形態の(1)〜(8)および第3実施形態の(10)の効果に加えて以下の効果が得られる。
【0137】
(11)成分分析装置1においては、測定部20の動作モードとして、反射光モードおよび透過光モードが用意されている。この構成によれば、透過光または反射光のいずれを用いて分析を行なうかを内容物70に応じて選択することができる。例えば、血漿のように透過光での測定に適した内容物70に対しては透過光モードを選択し、全血のように反射光での測定に適した内容物70に対しては反射光モードを選択することができる。
【0138】
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施態様は上記各実施形態に限られるものではなく、例えば以下に示すように変更することもできる。また以下の各変形例は、上記各実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0139】
・上記第4実施形態では、固定測定面32に第1発光口34Aおよび受光口38Aを設け、可動測定面36に第2発光口34Bおよび反射部24を設けたが、これらの関係を反対にすることもできる。すなわち、固定測定面32に第2発光口34Bおよび反射部24を設け、可動測定面36に第1発光口34Aおよび受光口38Aを設けることもできる。なお、この構成において、固定測定面32は「第1測定面」に相当し、可動測定面36は「第2測定面」に相当する。また、袋状容器60の表面60Aは「第2面」に相当し、裏面60Bは「第1面」に相当する。
【0140】
・上記第4実施形態において、第1発光口34A、第2発光口34B、および受光口38Aの形成態様を以下の(A)〜(E)の条件の全てを満たすように変更することもできる。
(A)第2発光口34Bを省略する。
(B)可動測定面36に第2受光口を設ける。
(C)受光口38Aを遮光する第1受光シャッターを設ける。
(D)第2受光口を遮光する第2受光シャッターを設ける。
(E)透過光モードおよび反射光モードの内容を以下のように変更する。
【0141】
制御部11は、透過光モードが選択されたとき、第1受光シャッターを閉鎖するとともに第2受光シャッターを開放する。一方、反射光モードが選択されたとき、第1受光シャッターを開放するとともに第2受光シャッターを閉鎖する。なお、この構成において、透過光モードは「第1受光モード」に相当し、反射光モードは「第2受光モード」に相当する。また、固定測定面32は「第1測定面」に相当し、可動測定面36は「第2測定面」に相当する。また、袋状容器60の表面60Aは「第2面」に相当し、裏面60Bは「第1面」に相当する。
【0142】
・上記の変形例において、固定測定面32に第2受光口および反射部24を設け、可動測定面36に第1発光口34Aおよび第1受光口を設けることもできる。なお、この構成において、固定測定面32は「第2測定面」に相当し、可動測定面36は「第1測定面」に相当する。また、袋状容器60の表面60Aは「第1面」に相当し、裏面60Bは「第2面」に相当する。
【0143】
・上記第3および第4実施形態において、容器圧縮装置50の圧縮可動盤51として互いに圧縮面52の面積が異なる複数の圧縮可動盤51を用意し、レール53に取り付ける圧縮可動盤51を取り替えることもできる。この構成によれば、袋状容器60の形状および内容物70の量に応じて圧縮面52の面積を変更することができる。
【0144】
・上記第3および第4実施形態では、容器圧縮装置50においてアクチュエーター54により圧縮可動盤51を移動させる構成を採用しているが、アクチュエーター54に代えてまたは加えて、手動により圧縮可動盤51を移動させるための機構を設けることもできる。この機構の一例としては、例えば、ねじおよびハンドルにより構成されるものが挙げられる。
【0145】
・上記第3および第4実施形態では、圧縮可動盤51により袋状容器60を圧縮する構成を採用しているが、圧縮可動盤51に代えて、手動により錘を袋状容器60に載せることにより同容器60を圧縮する構成に変更することもできる。
【0146】
・上記第3および第4実施形態において、可動測定面36に圧力センサを設けるとともに、同センサの出力に基づいて(動作35)行なうこともできる。この場合、圧力センサの出力に基づいて、可動測定面36と袋状容器60の表面60Aとが接触していることが確認されたときには、(動作35)を省略する。
【0147】
・上記の変形例において、(動作35)を行なう場合には、圧力センサの出力に基づいて測定時調節距離LPSを変更することもできる。
・上記第1〜3実施形態では、内容物70の分析に透過光を用いているが、反射光を用いることもできる。すなわち、固定測定面32および可動測定面36の一方に受光口38および発光口34を設けるとともに、固定測定面32および可動測定面36の他方に反射部を設ける。そして、第4実施形態の反射光モードに準じた態様でグルコース濃度を定量する。
【0148】
・上記各実施形態では、固定測定面32が水平面に対して傾斜するようにバッグ固定盤31を設けたが、固定測定面32が水平面に対して平行するようにバッグ固定盤31を設けることもできる。また、固定測定面32の傾斜角度を変更するための機構をバッグ固定盤31に追加することもできる。
【0149】
・上記各実施形態では、可動測定面36が水平面に対して傾斜するように測定可動盤35を設けたが、可動測定面36が水平面に対して平行するように測定可動盤35を設けることもできる。また、可動測定面36の傾斜角度を変更するための機構を測定可動盤35に追加することもできる。
【0150】
・上記各実施形態では、固定測定面32の面積を袋状容器60の裏面60Bの面積と同じ大きさに設定しているが、固定測定面32の面積を裏面60Bの面積よりも小さくすることもできる。また、固定測定面32の面積を裏面60Bの面積よりも大きくすることもできる。また、固定測定面32の面積が裏面60Bの面積の50%以下の場合には、可動測定面36を表面60Aの面積の50%よりも大きくすることもできる。
【0151】
・上記各実施形態では、可動測定面36の面積を袋状容器60の表面60Aの面積の30%に設定しているが、可動測定面36の面積を袋状容器60の表面60Aの面積の30%よりも大きくかつ50%以下のいずれかの面積に変更することもできる。また、可動測定面36の面積を袋状容器60の表面60Aの面積の0%よりも大きくかつ30%未満のいずれかの面積に変更することもできる。
【0152】
・上記各実施形態において、調節装置30の測定可動盤35として互いに可動測定面36の面積が異なる複数の測定可動盤35を用意し、レール41に取り付ける測定可動盤35を取り替えることもできる。この構成によれば、袋状容器60の形状および内容物70の量に応じて可動測定面36の面積を変更することができる。
【0153】
・上記各実施形態では、固定測定面32および可動測定面36を平面としているが、固定測定面32および可動測定面36の少なくとも一方を湾曲面とすることもできる。
・上記各実施形態では、固定測定面32と可動測定面36とが互いに平行するようにバッグ固定盤31および測定可動盤35を設けているが、固定測定面32が可動測定面36に対して傾斜するようにバッグ固定盤31および測定可動盤35を設けることもできる。
【0154】
・上記各実施形態において、袋状容器60内の空気を下外周部63Aから中央部64側に移動させるための装置として、超音波振動を袋状容器60の下外周部63Aに付与する空気除去装置を設けることもできる。この構成によれば、袋状容器60の下外周部63Aに超音波振動が付与されたとき、下外周部63Aの内周面に付着している気泡が中央部64側に移動する。
【0155】
・上記各実施形態では、距離調節装置40においてアクチュエーター42により測定可動盤35を移動させる構成を採用しているが、アクチュエーター42に代えてまたは加えて、手動により測定可動盤35を移動させるための機構を設けることもできる。この機構の一例としては、例えばねじおよびハンドルにより構成されるものが挙げられる。
【0156】
・上記各実施形態では、ポリオレフィン製シートにより形成された袋状容器60を測定対象としているが、測定対象とする袋状容器60の材料はこれに限られない。例えば、袋状容器60の材料をポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、またはフッ素樹脂に変更することもできる。すなわち、近赤外光を透過する材料により形成された袋状容器であれば、いずれの容器についても測定対象とすることができる。
【0157】
・上記各実施形態では、2枚のポリオレフィン製シートを融着して形成された袋状容器60を測定対象としているが、1枚のシートを折り曲げて3辺を融着させることにより形成された袋状容器を測定対象とすることもできる。
【0158】
・上記各実施形態では、長方形状の袋状容器60を測定対象としているが、袋状容器60の形状はこれに限られない。例えば、楕円形状、または長方形状以外の多角形状、または円筒形状の袋状容器を測定対象とすることもできる。また、ペットボトルを測定対象とすることもできる。
【0159】
・上記各実施形態では、分析測定距離LDSを0.5mmから3mmまでの範囲で設定するとともに、1300nmから2500nmまでの範囲の近赤外光に基づいて内容物70を分析しているが、これら条件を次のように変更することもできる。すなわち、分析測定距離LDSを1cmから5cmまでの範囲で設定するとともに、800nmから1300nmまでの範囲の近赤外光に基づいて内容物70の分析を行うこともできる。
【0160】
・上記各実施形態では、袋状容器60毎に参照受光信号SARまたは無試料受光信号SANを測定しているが、参照受光信号SARまたは無試料受光信号SANの測定を省略することもできる。このとき、予め記憶された所定の参照受光信号SARまたは無試料受光信号SANを用いてグルコース濃度を定量することもできる。
【0161】
・上記第1〜3実施形態、および上記第4実施形態の透過光モードにおいては、内容物70として血漿が封入された袋状容器60を測定対象としているが、内容物70はこれに限られない。例えば、清涼飲料水、点滴剤、血液製剤、または尿が封入された袋状容器60を測定対象とすることもできる。また、分析対象とする成分を蛋白質濃度または脂質濃度等に変更することもできる。
【0162】
・上記第4実施形態の反射光モードにおいては、内容物70として全血が封入された袋状容器60を測定対象としているが、内容物70はこれに限られない。例えば、静注用脂肪乳剤であるイントラリピッド、赤血球製剤のような液状の医薬品、または牛乳のような飲料等が封入された袋状容器60を測定対象とすることもできる。要するに、強い散乱体が封入された袋状容器60であれば、いずれの袋状容器60についても測定対象とすることができる。また、分析対象とする成分を蛋白質濃度または脂質濃度等に変更することもできる。
【0163】
・上記各実施形態では、袋状容器60に封入された血漿または全血のグルコース濃度を定量分析しているが、袋状容器60に封入された内容物を定性分析することもできる。例えば、血漿等の血液由来の溶液における細菌汚染の有無、溶液が爆発性であるか否か、溶液中に爆発物原料が含まれるか否か、または溶液中に不正薬物が含有されているか否か等の定性分析を行うことができる。
【0164】
・上記各実施形態では、袋状容器60の血漿中または全血中のグルコース濃度を表示部12に表示しているが、これに代えてまたは加えて、以下の機能を設けることもできる。すなわち、グルコース濃度が所定濃度よりも低いことにより細菌が増殖していると推定されるとき、その旨を表示部12により報知することもできる。また、表示部12への表示に代えてまたは加えて音声により報知することもできる。
【0165】
・上記各実施形態では、血漿または全血のような液体を含む内容物70を袋状容器60に封入しているが、液体、ゲル状の固体、粉末、および気体のうちの少なくとも1つを含む内容物を袋状容器60に封入することもできる。
【0166】
・上記各実施形態では、血漿または全血のグルコース濃度を定量分析しているが、すなわち医療分野に適用される成分分析装置1として本発明を実施しているが、食品分野およびセキュリティー分野等における様々な分野の成分分析装置に対して本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0167】
1…成分分析装置、20…測定部、30…調節装置、31…バッグ固定盤(第1調節部)、32…固定測定面(第1測定面)、35…測定可動盤(第2調節部)、36…可動測定面(第2測定面)、40…距離調節装置、50…容器圧縮装置、60…袋状容器(可撓性容器)、60A…表面(第1面、第2面)、60B…裏面(第1面、第2面)、63A…下外周部(端部)、70…内容物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象としての可撓性容器の厚さを調節する調節装置と、近赤外光を照射する機能および照射した近赤外光を受光する機能を有する測定部とを備える成分分析装置において、
前記可撓性容器の中央部分に対して縁よりの部分を前記可撓性容器の外側部分として、この外側部分の厚さを調節するための第1調節部および第2調節部が前記調節装置に設けられていること、
前記第1調節部の第1測定面が前記可撓性容器の第1面の外側部分に接触し、かつ前記第2調節部の第2測定面が前記可撓性容器の第2面の外側部分に接触することにより、前記可撓性容器の外側部分の厚さが調節されること、
ならびに、前記第1測定面から前記第2測定面に向けて近赤外光を照射する機能と、この近赤外光を前記第2測定面において受光する機能とが前記測定部に設けられていること
を特徴とする成分分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成分分析装置において、
前記第2測定面から前記第1測定面に向けて近赤外光を照射する機能と、この近赤外光を前記第1測定面において反射する機能と、前記第1測定面において反射された近赤外光を前記第2測定面において受光する機能とが前記測定部に設けられていること、
ならびに、前記測定部の動作モードとして、前記第1測定面から前記第2測定面に向けて近赤外光を照射する第1照射モード、および前記第2測定面から前記第1測定面に向けて近赤外光を照射する第2照射モードが用意されていること
を特徴とする成分分析装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の成分分析装置において、
前記第1測定面から前記第2測定面に向けて照射された近赤外光を前記第2測定面において反射する機能と、前記第2測定面において反射された近赤外光を前記第1測定面において受光する機能とが前記測定部に設けられていること、
ならびに、前記測定部の動作モードとして、前記第1測定面から前記第2測定面に向けて照射された近赤外光を受光する第1受光モード、および前記第2測定面において反射された近赤外光を前記第1測定面において受光する第2受光モードが用意されていること
を特徴とする成分分析装置。
【請求項4】
測定対象としての可撓性容器の厚さを調節する調節装置と、近赤外光を照射する機能および照射した近赤外光を受光する機能を有する測定部とを備える成分分析装置において、
前記可撓性容器の中央部分に対して縁よりの部分を前記可撓性容器の外側部分として、この外側部分の厚さを調節するための第1調節部および第2調節部が前記調節装置に設けられていること、
前記第1調節部の第1測定面が前記可撓性容器の第1面の外側部分に接触し、かつ前記第2調節部の第2測定面が前記可撓性容器の第2面の外側部分に接触することにより、前記可撓性容器の外側部分の厚さが調節されること、
ならびに、前記第1測定面から前記第2測定面に向けて近赤外光を照射する機能と、この近赤外光を前記第2測定面において反射する機能と、前記第2測定面において反射された近赤外光を前記第1測定面において受光する機能とが前記測定部に設けられていること
を特徴とする成分分析装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の成分分析装置において、
以下の(A)および(B)の条件の少なくとも一方が満たされること
(A)前記第1測定面の面積が前記可撓性容器の第1面の面積の半分以下の大きさである
(B)前記第2測定面の面積が前記可撓性容器の第2面の面積の半分以下の大きさである
を特徴とする成分分析装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の成分分析装置において、
前記第1測定面と前記第2測定面との間隔を測定距離として、この測定距離を変更する距離調節装置が前記調節装置に設けられていること
を特徴とする成分分析装置。
【請求項7】
請求項6に記載の成分分析装置において、
前記可撓性容器の内容物を分析するために設定される前記測定距離を分析測定距離とし、前記第1測定面および前記第2測定面に対応する前記可撓性容器の外側部分について、この外側部分内の内容物の少なくとも一部が前記可撓性容器内の別の部分に押し出された状態を内容物排出状態とし、前記可撓性容器の外側部分が前記内容物排出状態のときの前記測定距離を参照測定距離として、
前記分析測定距離のときに受光した近赤外光と、前記参照測定距離のときに受光した近赤外光とに基づいて、前記可撓性容器の内容物を分析すること
を特徴とする成分分析装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の成分分析装置において、
以下の(A)および(B)の条件が満たされること
(A)前記測定部により照射される近赤外光の波長が1300nmから2500nmまでの範囲に含まれる
(B)前記第1測定面と前記第2測定面との間隔を測定距離とし、前記可撓性容器の内容物を分析するために設定される前記測定距離を分析測定距離として、この分析測定距離が0.5mmから3mmまでの範囲に含まれる
を特徴とする成分分析装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の成分分析装置において、
前記第1測定面および前記第2測定面に対応する前記可撓性容器の外側部分に向けて内容物を移動させるための容器圧縮装置が設けられていること
を特徴とする成分分析装置。
【請求項10】
請求項9に記載の成分分析装置において、
前記容器圧縮装置により前記可撓性容器に付与される力の大きさが50gから2kgまでの範囲に含まれること
を特徴とする成分分析装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の成分分析装置において、
前記容器圧縮装置においての前記可撓性容器との接触面について、その大きさを変更するための機構が設けられていること
を特徴とする成分分析装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の成分分析装置において、
前記調節装置においての前記可撓性容器との接触面について、その大きさを変更するための機構が設けられていること
を特徴とする成分分析装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の成分分析装置において、
前記測定部が受光した近赤外光に基づいて前記可撓性容器の内容物に異常がある旨判定したとき、その旨を報知すること
を特徴とする成分分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−189386(P2012−189386A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51792(P2011−51792)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】