説明

成分測定装置

【課題】組立調整が比較的容易で、測定対象における所望の測定位置の測定データを的確に取り込むことができる成分測定装置を実現すること。
【解決手段】レーザー光を出射するレーザーと、前記レーザーから出射されたレーザー光を平行光に整形することなく集光して測定対象の内部組織に照射する対物レンズと、前記測定対象の内部組織により反射され前記対物レンズにより屈折された反射光を光路変換するハーフミラーと、前記ハーフミラーにより光路変換された反射光が通過するピンホールと、前記ピンホールを通過した反射光を受光する受光素子と、前記受光素子から出力されるデータに基づいて前記測定対象の成分の測定を行うデータ解析部、とで構成されたことを特徴とする成分測定装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成分測定装置に関し、詳しくは、レーザー光で成分の濃度などを測定する成分測定装置の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、たとえば血液中の血糖値などの成分の濃度などを測定する場合には、注射器で人体から血液を採取したり、指先や耳たぶを穿刺したりして、血液を実際に採取して血液中のグルコース濃度をすることが多い。
【0003】
一般に、血糖値は、食事の前後や運動後などの測定条件によって大きく変化することから、正確な血糖値データを得るためには頻繁に測定しなければならないが、その都度採血して直接分析する従来の方法は、被験者に与える苦痛も大きいという問題がある。
【0004】
そこで、出願人は、このように生体を侵襲して血液を採取せずに、生体にレーザー光を照射してその生体からの反射光を検出し、レーザー光が生体により吸収された度合(吸光度)に基づいて目的の成分(たとえば血液中のグルコース)の濃度などを測定する共焦点光学系を用いた生体成分測定装置を出願している(特許文献1参照)。
【0005】
図10は、特許文献1に記載されている生体成分測定装置の構成図である。
図10において、レーザーダイオード1から出力されるレーザー光は、コリメートレンズ2で平行光に整形され、コリメートレンズ2の光軸に対してほぼ45°の傾斜を有する状態で配置されたハーフミラー3に入射される。なお、レーザーダイオード1としては、たとえばグルコースの吸収が比較的大きい1600nm〜1700nmの波長領域のレーザー光を出力できる可変波長レーザーを用いる。
【0006】
ハーフミラー3を透過した平行光は、対物レンズ4により集光されて生体LBの内部組織に照射される。生体LBの内部組織で反射されたレーザー光は、再び対物レンズ4に入射されて平行光に整形され、ハーフミラー3に入射されてほぼ90°の方向に反射するように光路変換される。
【0007】
ハーフミラー3で光路変換されて反射されたレーザー光は、レンズ5により集光されてピンホール6に入射される。ピンホール6を通過したレーザー光は、受光素子7に入射されて電気信号に変換される。
【0008】
受光素子7は、受光したレーザー光の光量に応じて強さや大きさが増減する電気信号に変換し、A/D変換器8に入力する。A/D変換器8は、受光素子7から入力される電気信号をデジタルデータに変換し、データ解析部9に入力する。
【0009】
データ解析部9は、波長の異なる2波長以上の各レーザー光が生体LBに照射されたときに受光素子7から変換出力される複数の電気信号に基づいて生体LBの成分の定量解析を行う。
【0010】
具体的には、血糖値すなわち血液内のグルコース濃度の定量を行う場合、データ解析部9にはあらかじめ測定された血液内のグルコース濃度とレーザー光の吸光度との検量線が記憶されていて、データ解析部9は、この検量線に基づいて生体LBの血液内のグルコース濃度の定量を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−301944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、このような従来の生体成分測定装置は、レーザーダイオード1から出力されるレーザー光をコリメートレンズ2で平行光に整形してからハーフミラー3に入射し、ハーフミラー3を透過したレーザー光を対物レンズ4により集光して生体LBの内部組織に照射するように構成されているので、光学部品間の光軸合わせなど、組立調整にかなりの作業工数がかかってしまうという問題がある。
【0013】
本発明は、これらの問題点を解決するものであり、その目的は、組立調整が比較的容易で、測定対象における所望の測定位置の測定データを的確に取り込むことができる成分測定装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
レーザー光を出射するレーザーと、
前記レーザーから出射されたレーザー光を平行光に整形することなく集光して測定対象の内部組織に照射する対物レンズと、
前記測定対象の内部組織により反射され前記対物レンズにより屈折された反射光を光路変換するハーフミラーと、
前記ハーフミラーにより光路変換された反射光が通過するピンホールと、
前記ピンホールを通過した反射光を受光する受光素子と、
前記受光素子から出力されるデータに基づいて前記測定対象の成分の測定を行うデータ解析部、
とで構成されたことを特徴とする成分測定装置である。
【0015】
請求項2は、請求項1記載の成分測定装置において、
前記レーザーは、波長可変光源であることを特徴とする。
【0016】
請求項3は、請求項1または請求項2記載の成分測定装置において、
前記レーザーと対物レンズとピンホールと受光素子は、共焦点光学系を構成することを特徴とする。
【0017】
請求項4は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の成分測定装置において、
前記共焦点光学系と前記測定対象とを相対的に3次元的に移動させる移動駆動機構を設けたことを特徴とする。
【0018】
請求項5は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の成分測定装置において、
前記測定対象の成分は、血液内のグルコースであり、
前記データ解析部は、前記受光素子から出力されるデータに基づいて前記測定対象の内部組織中の前記グルコースによる吸光度を測定して前記グルコースの濃度の定量を行い、血糖値を測定することを特徴とする。
【0019】
請求項6は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の成分測定装置において、
前記レーザーから出射されるレーザー光の光束を拡大する手段を設けたことを特徴とする。
【0020】
請求項7は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の成分測定装置において、
前記レーザーの出力光を測定対象表面に照射する光ファイバと、
この光ファイバの照射に基づく測定対象の表面における反射光を検出する第2の受光素子と、
この第2の受光素子の検出信号に基づき前記レーザーの出力光強度を所定の値に維持するように駆動するレーザー駆動回路、
を設けたことを特徴とする。
【0021】
請求項8は、請求項7記載の成分測定装置において、
前記データ解析部は、前記第2の受光素子の検出信号でピンホールを通過した反射光を受光する前記受光素子の検出信号を除算して規格化したデータに基づいて前記測定対象の成分の測定を行うことを特徴とする。
【0022】
請求項9は、請求項7に記載の成分測定装置において、
前記レーザーとしてその出力光をモニタする第3の受光素子が内蔵されたものを用い、
前記レーザー駆動回路は、前記第2の受光素子および第3の受光素子の検出信号の少なくともいずれかに基づき、前記レーザーの出力光強度を所定の値に維持するように駆動することを特徴とする。
【0023】
請求項10は、請求項7に記載の成分測定装置において、
前記レーザーとしてその出力光をモニタする第3の受光素子が内蔵されたものを用い、
前記データ解析部は、前記第2の受光素子および第3の受光素子の検出信号の少なくともいずれかでピンホールを通過した反射光を受光する前記受光素子の検出信号を除算して規格化したデータに基づき、前記測定対象の成分の測定を行うことを特徴とする。
【0024】
請求項11は、請求項7記載の成分測定装置において、
前記レーザーとしてその出力光をモニタする第3の受光素子が内蔵されたものを用い、
前記データ解析部は、
前記第2の受光素子の検出信号でピンホールを通過した反射光を受光する前記受光素子の検出信号を除算した第1の規格化信号と、前記第3の受光素子の検出信号でピンホールを通過した反射光を受光する前記受光素子の検出信号を除算した第2の規格化信号を線形結合したデータに基づき、前記測定対象の成分の測定を行うことを特徴とする。
【0025】
請求項12は、請求項1から請求項11のいずれかに記載の成分測定装置において、
前記ハーフミラーで反射された反射光を検出する第4の受光素子を設け、
前記レーザー駆動回路は、前記第2の受光素子と第3の受光素子および第4の受光素子の検出信号の少なくともいずれかに基づき、前記レーザーの出力光強度を所定の値に維持するように駆動することを特徴とする。
【0026】
請求項13は、請求項12に記載の成分測定装置において、
前記データ解析部は、前記第2の受光素子と第3の受光素子および第4の受光素子の検出信号の少なくともいずれかでピンホールを通過した反射光を受光する前記受光素子の検出信号を除算して規格化したデータに基づき、前記測定対象の成分の測定を行うことを特徴とする。
【0027】
請求項14は、請求項12に記載の成分測定装置において、
前記データ解析部は、前記第2の受光素子と第3の受光素子および第4の受光素子の検出信号のそれぞれでピンホールを通過した反射光を受光する前記受光素子の検出信号を除算した規格化信号を線形結合したデータに基づき、前記測定対象の成分の測定を行うことを特徴とする。
【0028】
このように構成することにより、組立調整が比較的容易で、測定対象における所望の測定位置の測定データを的確に取り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す構成図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す構成図である。
【図4】本発明の他の実施例を示す構成図である。
【図5】本発明の他の実施例を示す構成図である。
【図6】本発明の他の実施例を示す構成図である。
【図7】本発明の他の実施例を示す構成図である。
【図8】本発明の他の実施例を示す構成図である。
【図9】本発明の他の実施例を示す構成図である。
【図10】従来の生体成分測定装置の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示す構成図であり、図10と共通する部分には同一の符号を付けている。図1の装置と図10の装置の相違点は、レーザーの出力光を平行光に整形することなく対物レンズで集光して測定対象としての生体の内部組織に照射していることにある。
【0031】
図1において、レーザーダイオード1から出力されるレーザー光は、レーザーダイオード1の光軸に対してほぼ45°の傾斜を有する状態で配置されたハーフミラー3に入射される。なお、レーザーダイオード1としては、たとえばグルコースの吸収が比較的大きい1500nm〜1700nmの波長領域のレーザー光を出力できる可変波長レーザーを用いる。1個のレーザーダイオードで1500nm〜1700nmの波長領域のレーザー光を出力できない場合には、複数のレーザーダイオードを組み合わせて用いればよい。ハーフミラー3を透過したレーザー光は、対物レンズ4で集光されて生体LBの内部組織に照射される。これらレーザーダイオード1とハーフミラー3と対物レンズ4は、生体LBの内部組織を照射する照射系を構成するものであり、これらの光軸が生体LBと正対するように配置されている。
【0032】
生体LBの内部組織で反射されたレーザー光は、再び対物レンズ4を介してハーフミラー3に入射され、ほぼ90°の方向に反射するように光路変換される。ハーフミラー3で反射されて光路変換されたレーザー光は、レンズを介することなく直接ピンホール6に入射される。ピンホール6を通過したレーザー光は、受光素子7に入射されて電気信号に変換される。
【0033】
受光素子7は、受光したレーザー光の光量に応じて強さや大きさが増減する電気信号に変換し、A/D変換器8に入力する。A/D変換器8は、受光素子7から入力される電気信号をデジタルデータに変換し、データ解析部9に入力する。これらピンホール6と受光素子7は受光系を構成するものであり、その光軸が照射系の光軸と直交する方向に配置されている。なお、これらレーザーダイオード1と対物レンズ4とピンホール6と受光素子7は、共焦点光学系を構成している。
【0034】
データ解析部9は、波長の異なる2波長以上の各レーザー光が生体LBに照射されたときに受光素子7から変換出力される複数の電気信号に基づいて生体LBの成分の定量解析を行う。
【0035】
このように構成することにより、図6の装置におけるレンズ2と5が不要になり、図6に比べて光学部品間の光軸合わせなど、組立調整を簡略化できる。
【0036】
また、レーザーダイオード1から出力されるレーザー光を平行光に整形することなく対物レンズ4で集光して生体内における測定位置に照射するので、生体LB内における所望の測定位置の測定データを的確に取り込むことができる。
【0037】
図2は、本発明の他の実施例を示す構成図である。図2の実施例は、レーザーダイオード1から出力されるレーザー光の光束を、平凸レンズ10で拡大したものである。これにより、図1よりも光路長を短くでき、光路長を短くできる分だけ小型化が図れる。
【0038】
図3も、本発明の他の実施例を示す構成図である。図3の実施例は、生体LBと正対するようにピンホール6と受光素子7よりなる受光系を配置し、この受光系の光軸と直交する方向にレーザーダイオード1を配置したものである。これにより、図1と同様な成分測定が行える。
【0039】
なお、図3の構成においても、図2と同様な平凸レンズ10を、レーザーダイオード1の前面および受光素子7側のピンホール6とハーフミラー3との間に設けることによりレーザー光の光束を拡大できて光路長を短くでき、装置の小型化が図れる。
【0040】
図4も、本発明の他の実施例を示す構成図である。図4の実施例では、対物レンズ4は光軸Aの方向に沿って移動可能に構成されている。これにより、生体LB内での結像位置を深さ方向に移動させることができる。
【0041】
なお、対物レンズ4の移動に合わせて、ピンホール6を光軸Bの方向に沿って移動させ、受光素子7を光軸Cの方向に沿って移動させるようにしてもよい。
【0042】
また、図4の構成において、これら照射系と受光系で構成される成分測定装置と生体LBを、相対的にX軸およびY軸方向に移動させる機構を組み込むことにより、生体LB内の3次元情報を得ることができる。
【0043】
また、図4の実施例では対物レンズ4を光軸Aの方向に沿って移動可能に構成しているが、対物レンズ4は固定としてレーザーダイオード1を光軸Dの方向に沿って移動可能とし、ピンホール6と受光素子7をレーザーダイオード1の移動と同期してそれぞれの光軸方向B、Cに移動させるようにしてもよい。
【0044】
図5も、本発明の他の実施例を示す構成図である。図5の実施例では、図2のように構成された成分測定装置をユニットとして構成し、これら複数n個のユニットをアレイ化して一体化したものである。各測定ユニットをアレイ構造にすることにより、それぞれ異なる波長で生体LB内の異なる焦点位置の信号を一括で取得できる。なお、各受光素子7の出力信号はマルチプレクサ11を介して共通のA/D変換器8に入力されてデジタルデータに変換されるが、より高速処理が必要な場合には受光素子それぞれに専用のA/D変換器を設けてもよい。
【0045】
上記各実施例において、レーザーダイオード1から測定対象に照射される光強度を所定の値に維持するように、レーザーダイオード1を自動出力制御ループで駆動することにより、安定した測定が行える。
【0046】
図6は、このような構成を前述図1の実施例に適用した例を示す構成図である。図6の実施例では、レーザーダイオード1の出力光の一部を光ファイバ12を介して測定対象である生体LBの表面に照射させてその反射光を第2の受光素子13で検出し、この第2の受光素子13の出力信号をレーザーダイオード駆動回路14に与えてレーザーダイオード1の出力光強度を所定の値に維持するように駆動する。
【0047】
これにより、レーザーダイオード1の温度変化および空間強度変動に起因する出力光強度変化を抑制でき、安定した成分測定結果が得られる。
【0048】
また、第2の受光素子13の出力信号をA/D変換器15を介してデータ解析部9に加え、第1の受光素子7の出力信号を第2の受光素子13の出力信号で除算して規格化することにより、レーザーダイオード1の出力変動分や測定対象LBの表面反射による変動分を補償できる。
【0049】
図7は、図6のレーザーダイオード1として、その出力光をモニタする図示しない第3の受光素子が内蔵されたものを用いた実施例を示す構成図である。第3の受光素子の出力信号もレーザーダイオード駆動回路14に入力され、レーザーダイオード1の出力光強度を所定の値に維持するように駆動する。
【0050】
また、第3の受光素子の出力信号もA/D変換器16を介してデータ解析部9に入力され、第1の受光素子7の出力信号を第3の受光素子の出力信号で除算して規格化する。これにより、データ解析部9は、2つの規格化信号を線形結合して多変量解析により結合係数を求め、これらの値に基づきレーザーダイオード1の出力変動分や測定対象LBの表面反射による変動分を高精度に補償する。
【0051】
図8は、図7の実施例に、さらにハーフミラー3で反射された反射光を検出する第4の受光素子17と、この第4の受光素子17の出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換器18を追加したものである。第4の受光素子17は、レーザーダイオード1の出力光の空間変動分を検出する。第4の受光素子17の出力信号もレーザーダイオード駆動回路14に入力され、レーザーダイオード1の出力光強度を所定の値に維持するように駆動する。
【0052】
また、第4の受光素子17の出力信号もA/D変換器18を介してデータ解析部9に入力され、第1の受光素子7の出力信号を第4の受光素子17の出力信号で除算して規格化する。これにより、データ解析部9は、3つの規格化信号を線形結合して多変量解析により結合係数を求め、これらの値に基づきレーザーダイオード1の出力変動分と空間変動分および測定対象LBの表面反射による変動分をさらに精度よく補償する。
【0053】
図9は図8の実施例から、光ファイバ12と第2の受光素子13およびA/D変換器15からなる信号系統を省いたものである。図9の構成によれば、レーザーダイオード駆動回路14は、第3の受光素子と第4の受光素子17の出力信号に基づいてレーザーダイオード1の出力光強度を所定の値に維持するように駆動する。そしてデータ解析部9は、第1の受光素子7の出力信号を第3の受光素子の出力信号で除算した規格化信号と第1の受光素子7の出力信号を第4の受光素子17の出力信号で除算した規格化信号に基づき、レーザーダイオード1の出力変動分および空間変動分を精度よく補償する。
【0054】
なお、図8および図9の実施例ではレーザーダイオード1としてその出力光をモニタする第3の受光素子が内蔵されたものを用いているが、装置に求められる補償精度に応じて、図6のように第3の受光素子が内蔵されていないものを用いてもよい。
【0055】
これら図6〜図9の構成は、図1に示す実施例にのみ適用できるものではなく、図2〜図5に示す実施例にも適用できるものである。
【0056】
上記各実施例では、対物レンズ4として固定焦点レンズを用いる例を示したが、可変焦点レンズを用いてもよい。可変焦点レンズとしては、たとえばレンズ状に形成された空間に液晶が封入され、印加電圧を調整して見かけ上の液晶の屈折率を変化させるように構成された液晶レンズを用いることができる。液晶レンズによれば、同じレンズ形状でありながら、構成材料の屈折率が変化することにより、焦点距離が変化することになる。
【0057】
このような可変焦点レンズを対物レンズ4として用いることにより、対物レンズ4の位置を光軸方向に移動させずに可変焦点レンズに対する印加電圧を調整することで、生体LBの組織内における深さ方向の測定位置を任意に設定でき、レンズ移動機構が簡略化できる。
【0058】
上記各実施例では、光源として可変波長レーザーを用いる例を説明したが、測定成分が特定されている場合には、単波長レーザーであってもよい。
【0059】
上記各実施例では、人体の血液中の血糖値を測定する例について説明したが、血糖値以外の血液成分や組織液成分の定量測定にも有効である。
【0060】
また、測定対象は人体に限るものではなく、動物や植物などの内部物質の定量測定にも有効である。
【0061】
また、測定対象は生体に限るものではなく、農産物、水産物、食品、有機材料などの構造、組成の非破壊検査、化学物質の定量測定にも有効である。
【0062】
以上説明したように、本発明によれば、組立調整が比較的容易で、測定対象における所望の測定位置の測定データを的確に取り込むことができる成分測定装置を実現することができ、人体の血液中の血糖値をはじめとする各種の成分測定に好適である。
【符号の説明】
【0063】
1 レーザーダイオード
3 ハーフミラー
4 対物レンズ
6 ピンホール
7、13、17 受光素子
8、15、16、18 A/D変換器
9 データ解析部
10 平凸レンズ
11 マルチプレクサ
12 光ファイバ
14 レーザーダイオード駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を出射するレーザーと、
前記レーザーから出射されたレーザー光を平行光に整形することなく集光して測定対象の内部組織に照射する対物レンズと、
前記測定対象の内部組織により反射され前記対物レンズにより屈折された反射光を光路変換するハーフミラーと、
前記ハーフミラーにより光路変換された反射光が通過するピンホールと、
前記ピンホールを通過した反射光を受光する受光素子と、
前記受光素子から出力されるデータに基づいて前記測定対象の成分の測定を行うデータ解析部、
とで構成されたことを特徴とする成分測定装置。
【請求項2】
前記レーザーは、波長可変光源であることを特徴とする請求項1記載の成分測定装置。
【請求項3】
前記レーザーと対物レンズとピンホールと受光素子は、共焦点光学系を構成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の成分測定装置。
【請求項4】
前記共焦点光学系と前記測定対象とを相対的に3次元的に移動させる移動駆動機構を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の成分測定装置。
【請求項5】
前記測定対象の成分は、血液内のグルコースであり、
前記データ解析部は、前記受光素子から出力されるデータに基づいて前記測定対象の内部組織中の前記グルコースによる吸光度を測定して前記グルコースの濃度の定量を行い、血糖値を測定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の成分測定装置。
【請求項6】
前記レーザーから出射されるレーザー光の光束を拡大する手段を設けたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の成分測定装置。
【請求項7】
前記レーザーの出力光を測定対象表面に照射する光ファイバと、
この光ファイバの照射に基づく測定対象の表面における反射光を検出する第2の受光素子と、
この第2の受光素子の検出信号に基づき前記レーザーの出力光強度を所定の値に維持するように駆動するレーザー駆動回路、
を設けたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の成分測定装置。
【請求項8】
前記データ解析部は、前記第2の受光素子の検出信号でピンホールを通過した反射光を受光する前記受光素子の検出信号を除算して規格化したデータに基づいて前記測定対象の成分の測定を行うことを特徴とする請求項7記載の成分測定装置。
【請求項9】
前記レーザーとしてその出力光をモニタする第3の受光素子が内蔵されたものを用い、
前記レーザー駆動回路は、前記第2の受光素子および第3の受光素子の検出信号の少なくともいずれかに基づき、前記レーザーの出力光強度を所定の値に維持するように駆動することを特徴とする請求項7記載の成分測定装置。
【請求項10】
前記レーザーとしてその出力光をモニタする第3の受光素子が内蔵されたものを用い、
前記データ解析部は、前記第2の受光素子および第3の受光素子の検出信号の少なくともいずれかでピンホールを通過した反射光を受光する前記受光素子の検出信号を除算して規格化したデータに基づき、前記測定対象の成分の測定を行うことを特徴とする請求項7に記載の成分測定装置。
【請求項11】
前記レーザーとしてその出力光をモニタする第3の受光素子が内蔵されたものを用い、
前記データ解析部は、
前記第2の受光素子の検出信号でピンホールを通過した反射光を受光する前記受光素子の検出信号を除算した第1の規格化信号と、前記第3の受光素子の検出信号でピンホールを通過した反射光を受光する前記受光素子の検出信号を除算した第2の規格化信号を線形結合したデータに基づき、前記測定対象の成分の測定を行うことを特徴とする請求項7に記載の成分測定装置。
【請求項12】
前記ハーフミラーで反射された反射光を検出する第4の受光素子を設け、
前記レーザー駆動回路は、前記第2の受光素子と第3の受光素子および第4の受光素子の検出信号の少なくともいずれかに基づき、前記レーザーの出力光強度を所定の値に維持するように駆動することを特徴とする請求項1から請求項11のいずれかに記載の成分測定装置。
【請求項13】
前記データ解析部は、
前記第2の受光素子と第3の受光素子および第4の受光素子の検出信号の少なくともいずれかでピンホールを通過した反射光を受光する前記受光素子の検出信号を除算して規格化したデータに基づき、前記測定対象の成分の測定を行うことを特徴とする請求項12に記載の成分測定装置。
【請求項14】
前記データ解析部は、
前記第2の受光素子と第3の受光素子および第4の受光素子の検出信号のそれぞれでピンホールを通過した反射光を受光する前記受光素子の検出信号を除算した規格化信号を線形結合したデータに基づき、前記測定対象の成分の測定を行うことを特徴とする請求項12に記載の成分測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−230662(P2010−230662A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47716(P2010−47716)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】