説明

成形ボタン構造

【課題】キャビネットの撓みを無くし、スイッチ等の誤動作を防止することが可能な成形ボタン構造を提供することを目的とする。
【解決手段】キャビネット1に成形ボタン3,4を取付ける取付け用ボス7,8に,電気回路基板6に向かって延長された延長成形部9,10を含み、延長成形部9,10の少なくとも一部が電気回路基板6に接触し延長成形部9,10の長手方向に働く力を電気回路基板6が支える構成を有する。この構造により、キャビネット1に表面側から力が加わった場合の力を電気回路基板6が支えて、キャビネット1の撓みをなくすことが可能となるとともに、キャビネット1に取付けられた成形ボタン3,4が変形してスイッチ等の誤動作を防止することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ等のボタン操作部を備えた電子機器に使用される、樹脂製のキャビネットを備えた、成形ボタン構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のスイッチ等のボタン操作部を備えた電子機器において使用される樹脂製のキャビネットを備えた成形ボタン構造は、図6〜8に示すような構造を有していた。図6において(a)は従来の成形ボタン構造の斜視図であり、(b)は図(a)におけるVIb−VIb線の断面図である。図7は従来の成形ボタン構造における上キャビネットの底面図、図8は同上キャビネットの断面図である。
【0003】
電気回路基板101を内蔵し、上キャビネット102には電子機器等の操作用の成形ボタン103が設けられた製品104において、成形ボタン103は成形ボタン固定用ボス105と成形ボタン取付け用ボス106を取付けて、ビス107により両者を締付けて行なわれていた。このような構造においては、成形ボタン103の取付け用ボス106と電気回路基板101の間に隙間Rが発生していた。
【0004】
公知技術としての特許文献1および特許文献2は、基本的に上記構成を開示するものであり、さらなる改良として、ボタン本体自身にバネ構造を設けることによりボタン復帰を可能とした発明、さらにはボタンを復帰させる為に ボタン本体とスイッチの間に導電性金属板を設けた発明に関するものであるが、ボタンが組み込まれるキャビネット本体において、成形ボタン103の取付け用ボスと電気回路基板の間に隙間がある構造となっている。
【特許文献1】特開平4−14712公報
【特許文献2】特開2001−184978公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の成形ボタン構造においては、隙間Rがあるため、上キャビネット102に対して応力が加えられると、上キャビネット102の働く力を支えるものが無く、上キャビネット102に撓みが生じ、操作の意図なくして電気回路基板101に組み込まれているスイッチ等(図示せず)が上キャビネット102の撓みに起因して誤動作してしまうという課題があった。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みなされたものであり、上キャビネットに応力が加わっても上キャビネットの力を支えることが可能で、上キャビネットの撓みを無くし、スイッチ等の誤動作を防止することが可能な成形ボタン構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の成形ボタン構造は、キャビネットと、このキャビネットに内蔵された電気回路基板と、キャビネットに、取付け用ボスを介して取付けられた成形ボタンと、取付け用ボスに連続して、電気回路基板に向かって延長された延長成形部とを備える。この発明の特徴は、延長成形部の少なくとも一部が、電気回路基板に接触し、延長成形部の長手方向に働く力を前記電気回路基板が支える点にある。
【0008】
また、延長成形部が円筒形状となっている構造、延長成形部の先端に突起状部分が設けられ、この突起状部分が電気回路基板に挿入された構造、あるいは、延長成形部の先端に切欠き部が形成され、電気回路基板上の回路部品との接触回避を可能とした構造とすることができる。
【0009】
また、取付け用ボスのキャビネットに対向する面に凹形状部が設けられ、凹形状部はキャビネットの取付け用ボスに対向する面に設けられたリブ状成形部と係合する成形ボタンの位置決め手段を含む構造や、凹形状部の先端部が面取りされている構造、また、キャビネットの取付け用ボスに対向する面に位置決め突起が設けられ、取付け用ボスのキャビネットに対向する面に設けた挿入穴に位置決め突起が挿入された構造とすることも可能である。さらには、位置決め突起が取付け用ボスの挿入穴に挿入された状態で突起と取付け用ボスが溶着され固定された構成、さらには、取付け用ボスに設けられたビス締付け穴と、キャビネットに設けられた成形ボタン固定用ボスとを、ビスにより締付け固定して、キャビネットに成形ボタンが取付けられた構造とすることも可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、成形ボタンの取付け用ボスに電気回路基板に向かって延長された延長成形部を含み、延長成形部の少なくとも一部が電気回路基板に接触し延長成形部の長手方向に働く力を電気回路基板が支える構成を有するので、キャビネットに表面側から力が加わった場合の応力を電気回路基板が支えて、キャビネットの撓みをなくすことが可能となる。また、キャビネットに取付けられた成形ボタンなどが変形してスイッチ等の誤動作を防止することができるため、成形ボタン構造の信頼性の向上が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図5により説明する。図1(a)は本発明の実施の形態の成形ボタン構造の斜視図であり、(b)は同成形ボタン構造の(a)におけるIb−Ib線における断面図である。本発明の実施の形態における成形ボタン構造においては、上側のキャビネット1および下側のキャビネット2が、樹脂成形により形成されている。キャビネット1には、1キー用成形ボタン3と、2キー用成形ボタン4(以下まとめて「成形ボタン」と記す)が取付けられ、製品5が構成されている。そして、キャビネット1内には、電気回路基板6が保持されている。成形ボタン3,4をキャビネット1に取付けるための取付け用ボス7,8には、電気回路基板6に向かって延長された円筒形状の延長成形部9,10が設けられている。
【0012】
延長成形部9,10の先端9a,10aは、電気回路基板6に接触し延長成形部9,10の長手方向に働く力を電気回路基板6が支える構成となっている。このような構造においては、キャビネット1に表面(図1の上方)側から力が加わった場合も、この力を電気回路基板6が延長成形部9、10の先端9a,10aを介して支え、キャビネット1の撓みをなくすことが可能となる。また、キャビネット1に取付けられた成形ボタン等(図示せず)によりスイッチ等の誤動作を防止することが可能となる。また、延長成形部9、10の先端9a,10aには突起状部分11,12が設けられ、突起状部分11,12が電気回路基板6の穴13に挿入されている。このような構成により電気回路基板6は所定の位置に保持位置決めされる構造となっている。さらに、延長成形部9,10の先端9a,10aには、切欠き部14,15が形成され、延長成形部9,10が電気回路基板6上の回路部品16と接触することを回避可能としている。
【0013】
次に、キャビネット1と成形ボタン3,4との取付け関係について説明する。成形ボタン3,4のキャビネット1から露出する部分である成形ボタン本体17,18は、キャビネット1に設けられている成形ボタン挿入穴1a、1bに挿入され、同じくキャビネット1に設けられた成形ボタン固定用ボス19,20に取付け用ボス7,8が挿入され、成形ボタン3,4の取付け用ボス7,8のビス穴21,22をとおしてビス23,24により締付けて固定し、キャビネット1に成形ボタン3,4が取付けられる。
【0014】
次に、キャビネット1と成形ボタン3,4との位置決め関係について、図2および図3により説明する。図2の(a)は実施の形態の成形ボタン構造の拡大部分断面図、(b)は実施の形態の成形ボタン構造の変形例を示す拡大部分断面図である。図3はキャビネット1を上下に反転させた状態での断面図および拡大部分断面図である。キャビネット1と成形ボタン3,4との正確な位置決めを行なうために、取付け用ボス7,8のキャビネット1に対向する面には凹形状部25、26が設けられている。これらの凹形状部25,26は、キャビネット1の取付け用ボス7,8に対向する面に設けられたリブ状成形部27,28と係合する構成となっており、キャビネット1と成形ボタン3,4との位置決めが正確に行える構造となっている。さらに、凹形状部25,26の先端部は面取り29されており、これにより、凹形状部25,26へのリブ状成形部27,28の挿入作業をスムーズに行なうことができる。
【0015】
また、キャビネット1の取付け用ボス7,8に対向する面に位置決め突起32が設けられ、取付け用ボス7,8のキャビネット1に対向する面に設けた挿入穴33に位置決め突起32が挿入され、成形ボタン3,4の位置決めがなされる。
【0016】
図2(b)に示すように、位置決め突起32が取付け用ボス7の挿入穴33に挿入された状態で、さらに突起32の挿入穴33から飛び出した部分と取付け用ボス7が溶着され(溶着部分3,4)固定されている。このように構成することにより、ビス23を必要とすることなく、キャビネット1に成形ボタン3,4を取付けることが可能となる。
【0017】
なお、1キー用成形ボタン3の詳細を図4の(a)〜(e)に、2キー用成形ボタン4の詳細を図5の(a)〜(e)にそれぞれ示している。これらの図において付した参照番号はいずれも、図1〜図3において同一の参照番号を付して説明した各要素と同一のものであるため、その詳細の説明は省略する。
【0018】
今回開示された実施の形態はすべて例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、本発明はスイッチ等のボタン操作部を備えた電子機器において広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)本発明の実施の形態の成形ボタン構造の斜視図、(b)同成形ボタン構造の図(a)のIb−Ib線における断面図である。
【図2】(a)実施の形態の成形ボタン構造の拡大部分断面図、(b)同実施の形態の成形ボタン構造の変形例を示す拡大部分断面図である。
【図3】実施の形態のキャビネットの上部分を上下に反転させた状態での断面および拡大部分断面を示す図である。
【図4】(a)は本発明の実施の形態の1キー用成形ボタンの上面図、(b)は同成形ボタンの(a)のIVb―IVb線における断面図、(c)は同成形ボタンの背面図、(d)は同成形ボタンの左側面図、(e)は同成形ボタンの右側面図である。
【図5】(a)は本発明の実施の形態の2キー用成形ボタンの上面図、(b)は同成形ボタンの(a)のVb―Vb線における断面図、(c)は同成形ボタンの背面図、(d)は同成形ボタンの左側面図、(e)は同成形ボタンの右側面図である。
【図6】(a)は従来の成形ボタン構造の斜視図、(b)は(a)におけるVIb−VIb線の斜断面図である。
【図7】従来の成形ボタン構造におけるキャビネットの底面図である。
【図8】同キャビネットの上部分の断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 キャビネット、3,4 成形ボタン、6 電気回路基板、7,8 取付け用ボス、9,10 延長成形部、9a,10a 延長成形部の先端、11,12 突起状部分、13 穴、14,15 切欠き部、23,24 ビス、25,26 凹形状部、27,28 リブ状成形部、29 面取り、32 位置決め突起、33 挿入穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネットと、
前記キャビネットに内蔵された電気回路基板と、
前記キャビネットに、取付け用ボスを介して取付けられた成形ボタンと、
前記取付け用ボスに連続して、前記電気回路基板に向かって延長された延長成形部と
を備え、
前記延長成形部の少なくとも一部が、前記電気回路基板に接触し、前記延長成形部の長手方向に働く力を前記電気回路基板が支える、成形ボタン構造。
【請求項2】
前記延長成形部が円筒形状である、請求項1に記載の成形ボタン構造。
【請求項3】
前記延長成形部の先端に突起状部分が設けられ、前記突起状部分が前記電気回路基板に挿入されている、請求項1または2に記載の成形ボタン構造。
【請求項4】
前記延長成形部の先端に切欠き部が形成され、前記電気回路基板上の回路部品との接触回避を可能とした、請求項1から3のいずれかに記載の成形ボタン構造。
【請求項5】
前記取付け用ボスの前記キャビネットに対向する面に凹形状部が設けられ、前記凹形状部は前記キャビネットの前記取付け用ボスに対向する面に設けられたリブ状成形部と係合する、成形ボタンの位置決め手段を含む、請求項1から4のいずれかに記載の成形ボタン構造。
【請求項6】
前記凹形状部の先端部が面取りされている、請求項5に記載の成形ボタン構造。
【請求項7】
前記キャビネットの前記取付け用ボスに対向する面に位置決め突起が設けられ、前記取付け用ボスの前記キャビネットに対向する面に設けた挿入穴に前記位置決め突起が挿入された構成をさらに有する、請求項1から6のいずれかに記載の成形ボタン構造。
【請求項8】
前記位置決め突起が前記取付け用ボスの前記挿入穴に挿入された状態で、前記突起と前記取付け用ボスとが溶着されて固定されている、請求項7に記載の成形ボタン構造。
【請求項9】
前記取付け用ボスに設けられたビス締付け穴と、前記キャビネットに設けられた成形ボタン固定用ボスとを、ビスにより締付け固定して、前記キャビネットに前記成形ボタンが取付けられた、請求項1から8のいずれかに記載の成形ボタン構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−140813(P2009−140813A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317090(P2007−317090)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】