説明

成形体の成形方法及び装置

【課題】ストライプ状の凸条が蛇行したストライプ状の凸条を有したタイル等の成形体を成形することができる方法及び装置を提供する。
【解決手段】押出成形機1から凸条部11〜17を有した成形体10を押出成形する。各条部11〜17に対し回転体20の蛇行状の周回溝21〜27を押し付けて凸条11〜17を蛇行させる。各周回溝21〜27は、回転体20の外周面を周回しており、また複雑に蛇行して延在している。このため、各凸条11〜17が互いに非平行に、かつ複雑に蛇行し、自然石調の意匠性に富んだ外観を有したタイルを製造することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイル等の成形体の成形方法及び装置に係り、特に押出成形とその後の模様付加とを組み合わせた方法及び装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、ストライプ模様を有したタイルの成形に好適な方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ストライプ模様を有したタイルの成形方法として、押出成形と、その後の模様付加とを組み合わせた方法が特開昭62−33606号公報に記載されている。同号の方法は板面(タイル表側面)に凸条を有した押出成形体を押出成形した後、ローラーを凸条の頂面に押し付けて、模様を付加するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−33606
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の方法は、ローラーを凸条の頂面に押し付けて凸条の頂面に模様付けするものであり、凸条そのものは一直線状に延在している。
【0005】
本発明は、ストライプ状の凸条が蛇行したストライプ状の凸条を有したタイル等の成形体を成形することができる方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(請求項1)の成形体の成形方法は、押出成形機から押し出された成形体に対し回転体を押し付けて模様を付加する成形体の成形方法であって、成形体の板面に複数の凸条が形成されるように押出成形する成形体の成形方法において、少なくとも1つの凸条の上部の側面に回転体を押し付け、凸条の上部を蛇行形状に変形させることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の成形体の成形方法は、請求項1において、すべての凸条の上部を蛇行形状に変形させることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の成形体の成形方法は、請求項2において、各凸条の上部を非平行な蛇行形状に変形させることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4の成形体の成形方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記回転体は、外周面に周回溝を有しており、該周回溝は回転体の外周面の周方向に対して蛇行しており、該周回溝を前記凸条の上部に係合させることを特徴とするものである。
【0010】
本発明(請求項5)の成形体の成形装置は、板面に条部を有した成形体を押出成形する押出成形機と、該押出成形機から押し出された成形体に押し付けられる回転体とを有した成形体の成形装置において、該回転体は、押し出された成形体の少なくとも1つの凸条の側面に押し付けられて凸条の上部を蛇行形状に変形させることを特徴とするものである。
【0011】
請求項6の成形体の成形装置は、請求項5において、前記回転体は、外周面に周回溝を有しており、該周回溝は回転体の外周面の周方向に対して蛇行しており、該周回溝が前記凸条の上部に係合するように該回転体が設置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の成形体の成形方法及び装置によると、押出成形機から押し出された成形体の少なくとも1つの凸条の側面に回転体を押し付けて凸条の上部を蛇行形状に変形させることにより、意匠性に富んだ成形体が成形される。
【0013】
本発明では、成形体のすべての凸条の上部を蛇行形状とすることにより、意匠性がさらに良好となる。また、各凸条の上部を非平行に蛇行させることにより、自然石調の意匠感が得られる。
【0014】
本発明では、押出成形された成形体の凸条の上部に、蛇行した周回溝を有した回転体の該周回溝を係合させることにより、凸条の上部を効率よく蛇行状に変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係る成形体の成形方法及び装置を示す斜視図である。
【図2】回転体を省略した押出口付近の斜視図である。
【図3】成形体の平面図と端面図である。
【図4】凸条の変形状況を説明する回転体の正面図と凸条の蛇行形状の説明図である。
【図5】別の実施の形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0017】
この実施の形態に係る方法では、第2図の通り、押出成形機1内において原料坏土が十分に混練され、この坏土混練物よりなる可塑性原料が押出口2から連続的に押出成形され、上面に複数の平行な凸条11〜17を有した板状の成形体10が成形され、次いで第1図の通りローラ状回転体20の外周面の蛇行状の周回溝21〜27が該凸条11〜17の上部の側面に押し付けられ、各凸条11〜17が蛇行状に変形する。
【0018】
この実施の形態では、第2図の通り、成形体10の上面に7列の凸条11〜17が形成されるが、凸条の数はこれに限定されない。凸条は、上方ほど幅が小さくなる台形断面形状である。台形の基底部における幅を100%とした場合、台形の頂部における幅は10〜70%特に20〜50%程度が好適である。
【0019】
回転体20は、円筒形状であり、回転軸28が軸受(図示略)に対し回転自在に支持されている。回転体20は、軸心線方向を成形体10の押出方向と直交方向かつ水平方向としている。回転体20の外周面の周回溝21〜27は、回転体20の周方向に対して蛇行している。押出成形機1から押し出された成形体10の凸条11〜17の上部が周回溝21〜27に係合して溝側面に接触し、回転体20が成形体10に従動回転する。また、周回溝21〜27の溝の側面が凸条11〜17の上部側面を押し、凸条11〜17の上部が蛇行状に変形する。
【0020】
なお、凸条11〜17の高さを100%とした場合、基底から50%以上特に70%以上の上部に回転体20の溝側面を接触させるのが好ましい。
【0021】
第4図は、回転体の周回溝によって凸条が蛇行状に変形する原理を示すものであり、(a)図は成形体幅方向の縦断面図、(b)図は成形体の蛇行した凸条を示す平面図である。
【0022】
第4図(a)の通り、回転体50に周回溝51,52が設けられている。回転体50は回転軸53を回転中心として回転自在となっており、周回溝51,52が成形体60の凸条61,62の上部に係合し、接触している。周回溝51を含む平面と、回転体50の軸心と垂直な面との交差角度はθである。また、周回溝52を含む平面と回転体50の軸心と垂直な面との交差角度はθである。
【0023】
成形体60が第4図(a)の紙面と垂直方向に押し出されることにより、回転体50が従動回転し、(b)図の通り凸条61,62の上部が周期πD(π:円周率、D:回転体50の直径)のサインカーブ状に蛇行する。第4図(a)では、周回溝51,52が単に軸心と垂直な面に対し傾斜しているだけであるので、(b)図の通り、凸条61,62の上部はサインカーブ状となるが、第1図の回転体20のように周回溝21〜27が複雑に蛇行していると、凸条11〜17の上部はそれに倣って複雑に蛇行する。
【0024】
第1図のように、凸条11〜17を蛇行状に変形させた後、成形体10を所定長さに切断し、乾燥し、焼成する。これにより、第3図に示すタイル30が得られる。このタイル30は、前面(第3図(b)では上面)の凸条11〜17の上部が互いに非平行に複雑に蛇行しており、表面が自然に侵食された彫の深い自然石調のものであり、意匠性に優れる。このタイル30は、ブレード調タイルと称されることがある。なお、タイル30の好ましい寸法を例示すると次の通りである。ただし、次の寸法は一例であって、本発明はこれに限定されるものではない。タイルのサイズは以下の寸法の1.5倍又は整数倍であってもよい。
【0025】
長手方向(凸条11〜17の延在方向)のタイル寸法:100〜300mm
幅寸法(長手方向と直交方向の寸法):50〜200mm
凸条の高さ:10〜30mm
凸条の数:2〜10個
【0026】
上記実施の形態では、外周面に周回溝21〜27を有した回転体20の周回溝21〜27を凸条11〜17の上部側面に押し付けているが、本発明では、第5図のように回転軸方向を鉛直方向とした回転体70を成形体80の凸条81の上部側面に押し付けて凸条81を蛇行させるようにしてもよい。この回転体70は、軸71が軸受72に回転自在に保持されたものである。この軸受72が往復動装置73によって第5図の左右方向(成形体80の送り方向と直交する水平方向)に往復動される。この回転体70を凸条81の上部側面に押し付けることにより、凸条81が蛇行状に変形される。なお、図示はしないが、回転体70は凸条の両側にそれぞれ配置されている。往復動装置73は、梁部材74に取り付けられている。
【符号の説明】
【0027】
1 押出成形機
2 押出口
10,60,80 成形体
11〜17,31〜37,61,62,81 凸条
20,50,70 回転体
21〜27,51,52 周回溝
30 タイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形機から押し出された成形体に対し回転体を押し付けて模様を付加する成形体の成形方法であって、成形体の板面に複数の凸条が形成されるように押出成形する成形体の成形方法において、
少なくとも1つの凸条の上部の側面に回転体を押し付け、凸条の上部を蛇行形状に変形させることを特徴とする成形体の成形方法。
【請求項2】
請求項1において、すべての凸条の上部を蛇行形状に変形させることを特徴とする成形体の成形方法。
【請求項3】
請求項2において、各凸条の上部を非平行な蛇行形状に変形させることを特徴とする成形体の成形方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記回転体は、外周面に周回溝を有しており、該周回溝は回転体の外周面の周方向に対して蛇行しており、該周回溝を前記凸条の上部に係合させることを特徴とする成形体の成形方法。
【請求項5】
板面に条部を有した成形体を押出成形する押出成形機と、該押出成形機から押し出された成形体に押し付けられる回転体とを有した成形体の成形装置において、
該回転体は、押し出された成形体の少なくとも1つの凸条の側面に押し付けられて凸条の上部を蛇行形状に変形させることを特徴とする成形体の成形装置。
【請求項6】
請求項5において、前記回転体は、外周面に周回溝を有しており、該周回溝は回転体の外周面の周方向に対して蛇行しており、該周回溝が前記凸条の上部に係合するように該回転体が設置されていることを特徴とする成形体の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−144022(P2012−144022A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6081(P2011−6081)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】