説明

成形品

【課題】指紋汚れ等の汚れを確実に目立たなくする。
【解決手段】表面3aに周期的に形成された凹凸4の凹部4a底面に外装面5が、凸部4b頂面に外装保護面6がそれぞれ形成されている。凸部4bの高さは41μm〜100μmであり、凸部4bの形成ピッチは、0.8mm〜1.4mmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂、金属、ガラス等からなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂、金属、ガラス等からなる成形品においては、使用中に成形品表面に附着する汚れが美観上の問題となる。そのような汚れの中で除去しにくい汚れの一つとして油性汚れがある。油性汚れには種々のものがあるが、その中でも使用者の皮脂成分を多く含む指紋等の汚れ(以下、指紋汚れと称す)は、指先を用いた通常使用において成形品表面に附着しやすいうえに、昨今各種成形品において多用されている光沢のある色(ピアノブラック等)を有する表面形状において顕著に目立つ。そのため、指紋汚れの対策を講じることが要望されている。
【0003】
指紋汚れの対策として、従来から、特許文献1に開示されている技術がある。この技術では、
・成形品の表面に凹凸パターンを形成する、
・凹凸パターンは、光沢面と、当該光沢面より突出し当該光沢面に単位面積当たり所定の割合で均等に点在する非光沢面とを備える、
・非光沢面の突出高さを5〜40μmとする、
ことで、使用者の指先が接触する部位を、指紋汚れが目立ちにくい非光沢面に限定させて指紋汚れを目立ちにくくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−134271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、非光沢面の突出高さを5〜40μmと規定しているだけであるため、使用者の指先が成形品表面に接触することを確実に防止することができず、使用者の指先が使用中に光沢面に接してしまって、指紋汚れが生じることがある。
【0006】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、成形品において、使用者の皮脂成分を多く含む指紋等の汚れを目立たなくすることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の成形品は、
表面に凹凸が周期的に形成されており、
前記凹凸の凹部底面に外装面が、前記凹凸の凸部頂面に外装保護面がそれぞれ形成されており、
前記凸部の高さは41μm〜100μmであり、
前記凸部の形成ピッチは、0.8mm〜1.4mmである。
【0008】
本発明では凸部頂面に外装保護面を設けているため、成形品使用者の指先はこの外装保護面に選択的に接するようになる。その結果、凹部底面の外装面に指先が触れることがなくなって外装面に指紋汚れ等が附着しにくくなる。
【0009】
このようにして外装面保護を行う本発明においては、成形品使用者の指先が外装面に触れることを確実に防止することが重要となる。本発明では、そのために上述した数値限定を行っている。
【0010】
本発明において上記数値限定を行った理由を説明する。以下、指先による外装面への接触を阻止可能な凸部の最大高さ寸法を、凸部最大高さ寸法という。凸部最大高さ寸法と凸部の形成ピッチとは一対一に対応し、一方が設定されればそれに伴い他方も決まる。
【0011】
本発明の凸部最大高さ寸法の上限値は、成形品の美観上、凹凸が視認困難となる凸部高さの最大値として規定され、凸部最大高さ寸法がその上限値である100μmを上回ると、外部から凹凸がはっきりと視認されてしまい、美観上問題となる。このようにして凸部最大高さ寸法の上限値が規定されることで、これに伴って凸部の形成ピッチの上限値が規定される。すなわち、凸部最大高さ寸法の上限値が100μmと規定されることで、凸部の形成ピッチの上限値が1.4mmと規定される。
【0012】
また、凸部の形成ピッチの下限値は、外装面が外部からはっきりと視認可能となる形成ピッチの最小値として規定され、凸部の形成ピッチがその下限値である0.8mmを下回ると、外装面が外装面として視認困難となってこれも美観上問題となる。このようにして凸部の形成ピッチの下限値が設定されることで、これに伴って凸部最大高さ寸法の下限値が規定される。すなわち、凸部の形成ピッチの下限値が0.8mmと規定されることで、凸部最大高さ寸法の下限値が41μmと規定される。
【0013】
以上のようにして、凸部の高さと凸部の形成ピッチとを規定することで、本発明では、成形品の美観を損なうことなく確実に外装面の保護(指紋汚れ附着防止)を行うことができる。
【0014】
なお、本発明における凹凸の周期性とは、次のものをいう。すなわち、凹と凸が交互に連続しかつ凸部の間隔(ピッチ)が一定である状態を、本発明では凹凸が周期的にある、と規定する。なお、凹凸は成形品の表面全面にあるのが最も好ましいが、表面の一部にあってもよい。
【0015】
また、前記凸部の高さは、60μm〜100μmであるのがさらに好ましく、そうすれば、成形品使用者の指先が外装面に触れることをさらに確実に防止することができる。
【0016】
本発明には、前記外装面は光沢面である、という態様がある。光沢面は、皮脂を含む指紋汚れが附着すると、非常に目立つという特徴がある。そのため、外装面が光沢面である成形品において本発明を実施すれば非常に有効となる。
【0017】
本発明には、前記外装保護面は非光沢面である、という態様がある。外装保護面は、外装面を指紋汚れ等から保護する点では有効であるが、外装保護面自体に指紋汚れ等が附着するとそれも美観上問題となる可能性がある。非光沢面は指紋汚れが附着しにくいうえに附着しても目立たないという特徴がある。そのため、外装保護面を非光沢面とすることで、本発明の効果(指紋汚れ等の対策)がさらに高まる。
【0018】
本発明には、前記外装保護面は、凸状に湾曲している、という態様がある。上述したように外装保護面は、外装面を指紋汚れ等から保護する点では有効であるが、外装保護面自体に指紋汚れ等が附着するとそれも美観上問題となる可能性がある。この態様では、外装保護面を表面の外側に向けて湾曲させることで、外装保護面に使用者の指先が接触する面積を減少させた。これにより外装保護面に対する指紋汚れ等の附着を防止することも可能となる。
【0019】
本発明には、前記外装面は、凹状に湾曲している、という態様がある。これにより、指先が外装面にさらに接触しにくくなって、本発明の効果(指紋汚れ等の対策)がさらに高まる。
【0020】
本発明には、前記表面には、成形品操作に伴う面方向に沿った使用者の指先移動に異方性が存在し、
前記凸部は、前記面方向に沿いかつ前記指先移動が最も多い方向に略直交する方向に延びる条形状を有している、
という態様がある。条形状の凸部を備えた凹凸では、指先が凸部の長手方向に沿って移動すると凹部内に指先が入り込みやすくなり、その結果、外装面に指紋汚れ等が附着しやすくなる。反対に指先が凸部の長手方向と略直交する方向に沿って移動すると凹部内に指先が入り込みにくくなり、その結果、外装面に指紋汚れ等が附着しにくくなる。本発明が発明の対象とする成形品には、表面に、成形品操作に伴う面方向に沿った使用者の指先移動に異方性が存在するものがある。このようなものとして、家電品等の筐体がある。このような筐体では、使用者が一方向から成形品を扱う可能性が高いために、上述した表面での異方性が存在する。そのため、この態様は上述した成形体において非常に有効となる。
【0021】
本発明には、前記表面はシボ面である、という態様がある。ここでいうシボ面とは、前記表面に形成する微少凹凸形状を示す。この微少凹凸形状は、本発明で形成する上記凹凸とは大きさが大きく異なるものであって、上記凹凸に比して極端に小さいものをいう。本態様では、シボ面を有する表面に、シボ面に比して大きな凹凸を形成することになるので、結果として表面に損傷が付きにくくなる。なお、損傷の発生箇所を最小限にするためには、外装保護面を凸状に湾曲させるのが最も好ましい。そうすれば、損傷の発生箇所は凸状に湾曲した外装保護面の頂部のみにさらに限定されることになる。
【0022】
本発明には、前記外装面はシボ面である、という態様がある。ここでいうシボ面は、上述したものと同じである。本態様では、凹凸の凸部(外装保護面)によって外装面が保護されるため、指紋等と同様、外装面に損傷が付くことはほとんどなくなる。なお、損傷の発生箇所を最小限にするためには、外装保護面を凸状に湾曲させるのが最も好ましい。そうすれば、損傷の発生箇所は凸状に湾曲した外装保護面の頂部のみにさらに限定されることになる。
【0023】
なお、本発明における成形品とは、樹脂成形品、金属成形品、ガラス成形品等を含む概念であって、具体的には、樹脂インジェクション成形品、ガラスインジェクション成形品、樹脂押し出し成形品、金属等のプレス成形品、金属ダイキャスト、エッチング等によって無垢材の表面を物理的に加工したものを含んでいる。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明によれば、成形品において、使用者の皮脂成分を多く含む指紋等の汚れを確実に目立たなくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態であるパネル筐体を有する薄型テレビジョン表示装置の構成を示す正面図である。
【図2】実施の形態のパネル筐体の表面形状を示す要部拡大平面図である。
【図3】(a)は、図2のa−a線断面図であり、(b)は、図2のb−b線断面図である。
【図4】実施の形態のパネル筐体の表面形状と指先とを示す要部拡大平面図である
【図5】抽出被験者が接触圧の平均値でもって、テスト片に指先接触した際における凸部最大高さ寸法の変化を各形成ピッチにわたって示すグラフである。
【図6】本発明の第1の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図7】本発明の第2の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図8】本発明の第3の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図9】本発明の第4の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図10】本発明の第5の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図11】(a)は本発明の一実施形態である底面側パネル筐体を有するリモートコントローラ装置の構成を示す正面図であり、(b)はその側面図である。
【図12】(a)は本発明の一実施形態である底面側パネル筐体を有するコードレス電話機の構成を示す正面図であり、(b)はその側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の成形品とであるパネル筐体3を備えた薄型テレビジョン表示装置1の平面図であり、図2はパネル筐体3の表面の部分拡大平面図であり、図3(a)は図2のaーa線に沿ったパネル筐体3の要部拡大断面図であり、図3(b)は図2のbーb線に沿ったパネル筐体3の要部拡大断面図である。
【0027】
図1に示すように薄型テレビジョン表示装置1は、プラズマ表示装置等からなる表示装置本体2を備え、この表示装置本体2をパネル筐体3に収納して構成される。
【0028】
パネル筐体3は、樹脂成形品からなり、その表面3aには、図2、図3(a)、図3(b)に示すように、全面にわたって周期的に凹凸4が形成されている。凹凸4は、凹部4aと凸部4bとが周期的に組み合わされて構成されており、凸部4bは、幅寸法Wと長さ寸法Lとを備える凸条4cが、表面3aの面方向の一つである第1の方向αに沿って断続的に延びる形状を有している。凸条4cは、表面3aの面方向において第1の方向αと直交する第2の方向βに沿って多数列にわたって配列されている。このような形状を有する凸部4bにおける形成ピッチは、凸条4cの延出方向(第1の方向α)に沿った形成ピッチP1と、凸条4cの配列方向(第2の方向β)に沿った形成ピッチP2とがある。凸部4bは、第1、第2の形成ピッチP1、P2で、表面3aの面方向に沿って分散配置されている。
【0029】
凹部4aの底面と凸部4bの頂面とはそれぞれ平坦面となっており、凹部4aの底面に外装面5が、凸部4bの頂面に外装保護面6がそれぞれ形成されている。以下、凸部4bの高さ寸法を高さ寸法hという。
【0030】
外装面5は、ピアノブラック等の光沢面から構成されており、外装保護面6は、光沢面より光沢度が低い艶消し等の非光沢面から構成されている。なお、外装保護面6には、シボ加工(微細な凹凸加工)を施してもよい。光沢度はJIS等で規定される測定方法で容易に測定可能であり、ここではその詳細の説明を省略する。
【0031】
このような構造を備えた凹凸4は、樹脂成型用金型の内面構造を加工することで容易にパネル筐体3に形成することができる。さらに凸部4bの高さ寸法hは100μmに設定されており、凸部4bの形成ピッチP1、P2は、0.8mm〜1.4mmに設定されており、幅寸法Wは、0.2mmに設定されており、長さ寸法Lは、2.5mmに設定されている。
【0032】
以上の構成を備えたパネル筐体3では、凸部4bの頂面に外装保護面6を設けているため、薄型テレビジョン表示装置1の使用者の指先は優先的に外装保護面6に接するようになる。その結果、図4に示すように、使用者の指先Fが凹部4a底面の外装面5に触れることがなくなって外装面5に指紋汚れが附着しにくくなる。なお、凹凸4は、本来指先Fに対して十分に微少であって図示が困難であるため、図4において凹凸4は強調して描いている。したがって、図4における凹凸4のアスペクト比は、実際の凹凸4におけるアスペクト比とは異なる。
【0033】
このようにして外装面保護を行うパネル筐体3では、使用者の指先Fが外装面5に触れることを確実に防止することが重要となる。本実施の形態では、そのために上述した数値限定を行っている。これにより、パネル筐体3の美観を損ねることなく、凹部4a底面の外装面5に指先が触れることを無くして外装面5における指紋汚れの附着を確実に防止している。
【0034】
本発明において上記数値限定を行った理由を測定データに基づいて説明する。薄型テレビジョン表示装置1の通常操作を想定した接触を感圧試験器(図示省略)に対して複数の被験者で実施してもらい、これにより、接触した指先Fを通じて感圧試験器に負荷される接触加圧力(以下、単に接触圧という)のバラツキを測定した。その結果、接触圧のバラツキは40〜300gであって、最大接触圧が300gであることが判明した。
【0035】
次に、複数の被験者の中から指先Fの柔軟性が最も高い被験者(以下、抽出被験者という)を選び出した。抽出被験者の選出は以下のようにして実施した。すなわち、平面上に任意の大きさの窪みを形成したうえで、各被験者に一定の接触圧でもって指先Fを前記窪みに押し付けて貰い、その際における窪み上面から窪み内部に突出する指先肉部の突出量を測定し、測定値が最大となる被験者を抽出被験者と認定した。
【0036】
上述したようにして最大接触圧と抽出被験者とを選定することで、外装面5に指紋汚れが附着する可能性が最も高い状態を、以下のように想定した。すなわち、抽出被験者が最大接触圧(300g)でもってパネル筐体3に接触する状態を、外装面5に指紋汚れが附着する可能性が最も高い状態である、と想定した。
【0037】
次に、凹凸4の形状が相違するパネル筐体3のテスト片11、12、…1nを各種作製した。これらテスト片A1〜Anでは、高さ寸法hと形成ピッチP1、P2とがそれぞれ順次変更されている。そのうえて抽出被験者に、最大接触圧(300g)でもって、テスト片A1〜Anに接触してもらい、その際に、凹部4aの底面(外装面5)に指先が接触するか否かを観察したうえで、その観察結果を数式化した。その式を次の(1)式に示す。
Y = 28.7 × X1.2 × sin4.3(X−1) + 57.8 …(1)
(1)式は、以下のことを数式化している。すなわち、抽出被験者が最大接触圧(300g)でもって、テスト片A1〜Anに指先接触した際に各形成ピッチP1、P2における凸部最大高さ寸法hmaxの変化を数式化したものが(1)式であって、Xは形成ピッチP1、P2を、Yは凸部最大高さ寸法hmaxをそれぞれ示す。ここでいう凸部最大高さ寸法hmaxとは、使用者の指先Fによる外装面5への接触を阻止可能な凸部高さ寸法hの最大値のことをいう。
【0038】
次に、凸部高さ寸法hの上限値と形成ピッチP1、P2の下限値とを、以下のようにして設定した。なお、ここでいう凸部高さ寸法hの上限値とは、上述した凸部最大高さ寸法hmaxとは異なる次の条件に基づいて設定されるもう一つの閾値のことである。すなわち、外装面5を美観上好ましく視認するうえで、凸部4bは本来的に不要なものであって、凸部4bはなるべく目立たなくするのが好ましい。この点から見ると、凸部高さ寸法hが100μmを上回ると、通常の視力を有する使用者が凸部4bを視認してしまい、美観上問題となる。このような観点に基づいて、凸部高さ寸法hの上限値は100μmであると判断した。
【0039】
一方、形成ピッチP1、P2が0.8mmを下回ると、凸部4bの間隔が極端に狭まる結果、パネル筐体3の上方からみて、凹部底面(外装面5)が凸部4bによって隠れてしまって通常の視力を有する使用者が外装面5を視認しにくくなり、これも美観上問題となる。このような観点に基づいて、形成ピッチP1、P2の下限値は0.8mmであると判断した。
【0040】
なお、参考までに、テスト片A1〜Anに指先接触した際の各形成ピッチP1、P2における凸部最大高さ寸法hmaxの変化を観察した結果を図5のグラフに示す。ただし、図5は、抽出被験者が接触圧の平均値でもってテスト片A1〜Anに指先接触した際のデータであって、上述した最大接触圧でもってテスト片A1〜Anに指先接触した際のデータではない。図5における横軸は、形成ピッチP1、P2(mm)であり、縦軸は、凸部4bの高さ寸法h(凹部4aの深さ寸法:μm)である。
【0041】
以上説明した判断理由に基づいて、凸部高さ寸法hの上限値を100μmに設定し、形成ピッチP1、P2の下限値を0.8mmに設定した。このようにして設定した凸部高さ寸法hの上限値と形成ピッチP1、P2の下限値とを、上述した(1)式(凸部最大高さ寸法hmaxの変化)に代入すると、凸部高さ寸法hの上限値(100μm)を満たす形成ピッチP1、P2は、1.4mmとなり、形成ピッチP1、P2の下限値(0.8mm)を満たす凸部最大高さ寸法hは41μmとなる。
【0042】
以上のことから、凸部4bの高さ寸法hは、41μm〜100μmに設定され(41μm≦h≦100μm)、凸部4bの形成ピッチP1、P2は0.8mm〜1.4mmに設定される(0.8mm≦P1、P2≦1.4mm)。なお、凸部4bの高さ寸法hは、60μm〜100μmに設定されるのがさらに好ましい。そうすれば、成形品使用者の指先が外装面に触れることをさらに確実に防止することができる。
【0043】
以上のようにして、凸部4bの高さ寸法hと形成ピッチP1、P2とを規定することで、本実施の形態では、パネル筐体3の美観を損なうことなく確実に外装面5の保護(指紋汚れ附着防止)を行うことができる。
【0044】
なお、上述した実施の形態では、凸部4bの頂面(外装保護面)6は、平坦面になっていたが、図6に示すように、凸状に湾曲した凸部頂面(外装保護面)6’を備えてもよい。そうすれば、凸部頂面(外装保護面)6’に接触する指先面積が減少して、凸部頂面(外装保護面)6’に指紋汚れ等がさらに附着しにくくなる。その結果、パネル筐体3全体として、指紋汚れの附着がさらに減少して美観上好ましい。
【0045】
さらには、上述した実施の形態では、凹部4aの底面(外装面5)は、平坦面になっていたが、図7に示すように、凹状に湾曲する凹部底面(外装面)5’を備えてもよい。そうすれば、外装面5’に指先がさらに接触しにくくなって、外装面5’における指紋汚れ等の附着がさらに減少して、美観上さらに好ましい。
【0046】
さらには、図8に示すように、上述した凸部頂面(外装保護面)6’と凹部底面(外装面)5’との両方を備えてもよい。そうすれば、図6、図7に示す変形例の効果を両方とも享受することが可能となる。
【0047】
さらには、本発明には次のような変形例がある。薄型テレビジョン表示装置1では、パネル筐体3の表面3aの面方向に沿った使用者の指先移動に、異方性が存在する。具体的には、設置場所において垂直配置される薄型テレビジョン表示装置1では、使用者が装置1を操作する際に表面3aで生じる指先移動は、垂直方向に沿ったものが大半を占め、水平方向に沿ったものは極端に少ない。指先移動にこのような異方性が存在するパネル筐体3では、図2に示す第1の方向αを水平方向にし、第2の方向βを垂直方向にする。これにより、さらに指紋汚れの附着を防止することができる。以下、説明する。
【0048】
条形状の凸部4bを備えた凹凸4では、指先が凸部4bの条長手方向(第1の方向α)に沿って移動すると、指先が連続的に凹部4aに入り込むことになる結果、外装面5に指紋汚れ等が附着しやすくなる。反対に指先が凸部4bの長手方向(第1の方向α)と略直交する方向(第2の方向β)に沿って移動すると、指先が断続的に凹部4aに入り込むことになる結果、外装面5に指紋汚れ等が附着しにくくなる。
【0049】
指先移動に上述した異方性を有するパネル筐体3では、第1の方向αを水平方向にし、第2の方向βを垂直方向にすることで、使用者の指先がさらに外装面5に接触しにくくなって、指紋汚れの附着防止効果が高まる。
【0050】
次に、シボ面からなる表面30aを有するパネル筐体30において本発明を実施した変形例を図9を参照して説明する。ここでいうシボ面は、表面30aに形成する微少凹凸形状10を有する表面形状をいう。微少凹凸形状10は、凹凸4とは大きさが大きく異なるものであって、凹凸4に比して極端に小さいものをいう。具体的には、微少凹凸形状10における凸部の高さは1μm〜59μmであり、凸部の形成ピッチは、1μm〜59μmである。このようなシボ面を表面30aに設けることで、表面30aには特有の美観(視覚/触覚的なザラザラ感)が付与される。シボ面はこのような特有の美観を表面に付与するものであるが、反面、物理的損傷11、特にアスペクト比が極端に大きい物理的損傷(長さに比して幅が極端に小さい鋭利な傷等)がその表面に付いてしまうと、その傷11は非常に目立つという特徴がある。本変形例では、シボ面を有する表面30aに、シボ面に比して大きな凹凸4が形成されることになる。そのため、損傷11が表面30aに付きにくくなる。その理由は、次の通りである。
【0051】
本変形例において、損傷11が生じる程度の衝撃が表面30aに加わったとしても、損傷11は凹凸4の凸部4b頂面付近にだけ生じ、それ以外の部位(凹部4a底面の外装面50等)には生じなくなる。つまり、損傷11は、表面30aのごく一部である凸部4bの頂面にだけ限定して生じることになる。このような理由により、本変形例では、損傷11が表面30aに付きにくくなる。さらには、表面30aに損傷11が生じたとしても、その損傷11は、表面30aのごく一部である凸部4bの頂面(外装保護面60)にだけ存在することになって目立たなくなる。なお、損傷11の発生箇所を最小限にするためには、図6に示すように、凸状に湾曲してなる外装保護面6’を設けるのが最も好ましい。そうすれば、損傷11は凸状に湾曲した外装保護面6’の頂部のみに生じることになってさらに目立たなくなる。なお、微少凹凸形状10における凸部の高さは20〜40μmとするのが最も好ましく、そうすれば、上述した効果が最も良好な状態で得られる。
【0052】
次に、シボ面からなる外装面50を有するパネル筐体30において本発明を実施した変形例を図10を参照して説明する。ここでいうシボ面は、前述したものと同じものである。シボ面を外装面50に設けることで、外装面50には、前述したような特有の美観(視覚/触覚的なザラザラ感)が付与されるものの、物理的損傷11(特にアスペクト比が極端に大きい損傷)は非常に目立ってしまう。本変形例では、凹凸4の凸部4b(外装保護面60)によって外装面50を保護するために、損傷11が外装面50にほとんど付かなくなる。すなわち、損傷11が生じる程度の衝撃が表面30aに加わったとしても、損傷11は凹凸4の凸部4b頂面付近(外装保護面60)にだけ生じ、外装面50にまで損傷11が至ることがなくなる。つまり、損傷11は、表面30aのごく一部である凸部4b頂面(外装保護面60)にだけ限定して生じることになる。このような理由により、本変形例では、シボ面からなる外装面50に損傷11がほとんど付かなくなる。さらには、外装保護面60に損傷11が生じたとしても、その損傷11は、表面のごく一部である外装保護面60にだけ存在することになって目立たなくなる。なお、損傷11の発生箇所を最小限にするためには、図6に示すように、凸状に湾曲してなる外装保護面6’を設けるのが最も好ましい。そうすれば、損傷11は凸状に湾曲した外装保護面6’の頂部のみに生じることになってさらに目立たなくなる。
【0053】
なお、上述した実施の形態では、樹脂成形品の一つであるパネル筐体3において本発明を実施した。本発明の実施対象はこのような樹脂成形品に限られるものではなく、この他、ガラス成形品や金属成形品においても同様に実施することができる。また、外装面5は光沢面に限るものではなく、通常のパネル筐体3の表面形状であればどのようなものであってもよい。さらに、外装保護面6が非光沢面に限定されるものでないこともいうまでもない。
【0054】
上述した実施の形態では、本発明を薄型テレビジョン表示装置1のパネル筐体3において実施していたが、この他、図11(a)、(b)に示す各種家電品のリモートコントローラ装置10の底面側パネル筐体31や、図12(a)、(b)に示すコードレス電話機20における底面側パネル筐体21においても同様に本発明は実施可能である。また、図2に示す凹凸4のパターン形状は、本発明の実施の形態の一例であって、本発明はこのような形状の凹凸4に限定されないのはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、家電品、住宅設備、車両、船舶等において外装体として用いられる物品であって、特に指紋がつきやすい外装面形状(光沢面等)を有する物品において有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 薄型テレビジョン表示装置
2 表示装置本体
3 パネル筐体
30 パネル筐体
3a 表面
30a表面
4 凹凸
4a 凹部
4b 凸部
5 外装面
50 外装面
6 外装保護面
6’ 外装保護面
60 外装保護面
10 微少凹凸形状
11 損傷
h 凸部高さ寸法
max 凸部最大高さ寸法
α 第1の方向
β 第2の方向
P1 形成ピッチ(第1の方向α)
P2 形成ピッチ(第2の方向β)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸が周期的に形成されており、
前記凹凸の凹部底面に外装面が、前記凹凸の凸部頂面に外装保護面がそれぞれ形成されており、
前記凸部の高さは41μm〜100μmであり、
前記凸部の形成ピッチは、0.8mm〜1.4mmである、
ことを特徴とする成形品。
【請求項2】
前記凸部の高さは、60μm〜100μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の成形品。
【請求項3】
前記外装面は光沢面である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の成形品。
【請求項4】
前記外装保護面は非光沢面である、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の成形品。
【請求項5】
前記外装保護面は、凸状に湾曲している、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の成形品。
【請求項6】
前記外装面は、凹状に湾曲している、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の成形品。
【請求項7】
前記表面には、成形品操作に伴う面方向に沿った使用者の指先移動に異方性が存在し、
前記凸部は、前記面方向に沿いかつ前記指先移動が最も多い方向に略直交する方向に延びる条形状を有している、
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の成形品。
【請求項8】
前記表面はシボ面である、
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の成形品。
【請求項9】
前記外装面はシボ面である、
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−178158(P2011−178158A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5721(P2011−5721)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】