説明

成形天井におけるハーネス保持構造

【課題】ハーネスをモジュール化した成形天井におけるハーネスの保持構造であって、従来の接着テープやハーネスクリップを廃止してコストダウンを図るとともに、ハーネスの布設作業を簡素化する。
【解決手段】成形天井20として、パネル側基材21と表皮側基材22の二層の基材21,22の積層体を使用し、成形天井20の成形時、パネル側基材21に半球状、あるいは半円筒状の膨出部40,90を一体化し、これら膨出部40,90に切れ目加工を施し、切れ目41,91にハーネス30を押し込むか、あるいは入口部42,92、出口部43,93を通じて膨出部40,90にハーネス30を挿入し、膨出部40,90内にハーネス30を収容保持することで、成形天井20自体にハーネス保持機能を付与し、コストダウンを図るとともに、ハーネス30の布設作業性を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形天井におけるハーネス保持構造に係り、特に、ハーネスをモジュール化した成形天井において、接着テープやクリップ等の別部品を使用することなく、成形天井の裏面にハーネスを確実に保持でき、しかも、ハーネスの布設作業も簡単に行なえる成形天井におけるハーネス保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図18に示すように、ルーフパネル1の室内面側には、断熱性能、吸音性能を備えた成形天井2が内装されており、特に最近では、ルームランプ等のルーフ側に装備される電子機器に電流を供給するハーネス3は、ルーフパネル1側に装着されるのではなく、成形天井2に保持することで、モジュール化を進めた成形天井2が多用される傾向にある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
そして、成形天井2にハーネス3を保持する構造としては、図19に示すように、成形天井2を成形した後、次工程でハーネス3を布設し、接着テープ4を8〜12箇所に貼付し、多くの固定ポイントでハーネス3を保持しているのが実情である。また、このハーネス3の布設作業には、成形天井2の裏面に位置決め用のマーキングが施されている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−207628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来、成形天井2にハーネス3をモジュール化する場合、成形天井2のマーキングポイントに基づき、ハーネス3を所定パターン形状に沿って位置決めした後、8〜12箇所のように多数の固定ポイントで接着テープ4により接着固定する必要がある。また、図示はしないが、接着テープ4に代えて、ハーネス3を保持するためのハーネスクリップ等を成形天井2の裏面に固着することも提案されている。
【0006】
従って、従来のハーネス3のモジュール化構造においては、ハーネス3を保持するための接着テープ4やクリップ等の別部材を必要とし、固定ポイントが多数あるため、取付備品点数が嵩み、コストアップを招来するという問題点がある。更に、備品点数が嵩むことに加えて、ハーネス3の布設作業においても、成形天井2におけるマーキングポイントが判別しづらく、所定パターンに布設するのが面倒であり、かつ多くの固定ポイントで接着テープ4を貼付しなければならず、接着テープ4の貼付工数が嵩み、生産性を低下させる大きな要因となっている。
【0007】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ルーフ側の電子機器に通電するためのハーネスをモジュール化した成形天井において、ハーネスを固定するための部材を必要とすることなく、しかも、ハーネスの布設作業も簡単に行なえることから、生産性を高め、かつコストダウンを招来できる成形天井におけるハーネス保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、ルーフパネルの室内面側に装着される成形天井の裏面にハーネスを保持する成形天井におけるハーネス保持構造において、前記成形天井は、パネル側基材と表皮側基材とからなる二層の基材を備え、パネル側基材にハーネスを保持するハーネスホルダ部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
ここで、成形天井は、所要形状に成形された基材と、その表面に貼着される表皮とから構成され、基材は形状を保持する形状保持機能と、ルーフパネルに対する取付剛性を備えることが必要であることから、樹脂板、複合樹脂板、発泡樹脂板を所要形状に成形した成形体が通常使用される。特に、本発明では、基材として、パネル側基材と表皮側基材の二層の基材が使用されており、表皮としては、織布、不織布、あるいは合成樹脂シート等が使用される。
【0010】
従って、本発明によれば、二層構造の基材の成形時、パネル側基材にハーネスを保持するハーネス保持部が一体成形されているため、従来のように、接着テープやクリップ等の別物を必要とすることなく、ハーネスを簡単に保持することができる。
【0011】
そして、本発明における好ましい実施の態様においては、前記ハーネスホルダ部は、2枚の樹脂原反シートを成形上下型で一体成形する際、成形上型から真空吸引力を作用させ、パネル側基材の所定箇所に膨出部を形成し、この膨出部にハーネスの布線方向に沿う切れ目をカット処理し、この切れ目にハーネスを押し込むことによりハーネスを保持することを特徴とする。
【0012】
ここで、ハーネスホルダ部を構成する膨出部と膨出部に設けられる切れ目について説明する。まず、2枚の樹脂原反シートを加熱軟化処理後、型開き状態にある成形上下型内にセットする。尚、表皮の原反シートは、表面側の樹脂原反シートに予めラミネートされている。そして、まず成形上下型のそれぞれに真空吸引力が作用し、2枚の樹脂原反シートが成形上下型の型面形状に沿って真空成形され、膨出部を備えたパネル側基材が製品面形状に成形され、成形上型に保持される。一方、表皮側基材についても、表皮と積層した状態で所要形状に成形され、成形下型に保持される。その後、成形上下型を型締めすることにより、パネル側基材と表皮側基材とが一体化される。尚、パネル側基材が成形上型の型面形状に沿って真空成形される時、成形上型の型面に凹設された凹部によりパネル側に向けて膨出する膨出部が一体成形される。
【0013】
この膨出部としては、ハーネスの布線方向に沿って膨出部を断続的に設定するか、あるいはハーネスの布線方向に沿って長手方向に延びる膨出部を条設するようにしても良い。断続的に形成する膨出部としては、半球状、円筒状、円錐状等、任意の形状を選択できる。また、条設タイプの膨出部としては、略半円筒状、角柱状等の形状のものを使用することができる。また、膨出部に切れ目を形成するには、手作業等で膨出部を2分割、条設タイプの膨出部では長手方向に沿って2分割するように切れ目を開設すれば良い。
【0014】
従って、この実施の態様によれば、成形天井における基材の成形時にパネル側基材に膨出部を一体成形し、かつこの膨出部に切れ目を開設するという簡単な作業でハーネスホルダ部を形成することができ、従来必要とした多数の接着テープやハーネスクリップ等の取付備品を必要としない。更に、ハーネスをハーネスホルダ部に取り付けるには、膨出部の切れ目に沿ってハーネスを押し込むだけで簡単にハーネスを保持することができ、また、従来のように、判別しづらいマーキングを基にハーネスを布設する作業に比べ、ハーネスの布設パターンも目視確認し易く、簡単かつ迅速にハーネスの布設作業を完了させることができる。
【0015】
次いで、本発明の好ましい実施の態様においては、前記ハーネスホルダ部は、2枚の樹脂原反シートを成形上下型で一体成形する際、成形上型から真空吸引力を作用させ、パネル側基材の所定箇所に膨出部を形成し、上記膨出部に、ハーネスの布線方向とほぼ直交する方向にそれぞれ入口部と出口部を形成し、膨出部の入口部からハーネスを挿入し、出口部からハーネスを引き出すことで、膨出部内にハーネスの一部を保持することを特徴とする。
【0016】
この実施の態様におけるハーネスホルダ部は、二層の基材のうち、パネル側の基材に膨出部を形成するとともに、この膨出部に加工する切れ目は、ハーネスの布線方向とほぼ直交する方向に沿ってハーネスの入口部と出口部にそれぞれ対応して開設されている。
【0017】
従って、この実施の態様によれば、ハーネスホルダ部を形成するには、基材の成形と同時に膨出部を形成し、膨出部にそれぞれハーネスの布設方向とほぼ直交する方向に沿ってハーネス入口部とハーネス出口部をそれぞれカット処理するだけで済み、多くの接着テープやハーネスクリップ等の別物の取付備品を必要とすることがない。また、ハーネスホルダ部にハーネスを保持する作業は、入口部側の切れ目からハーネスを挿入した後、出口部側の切れ目をから外部にハーネスを引き出し、膨出部内にハーネスの一部を収容するようにしたから、膨出部の入口部側の切れ目と出口部側の切れ目でそれぞれハーネスを保持し、その他の部位においては、ハーネスは膨出部内に収容保持されることになる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明した通り、本発明に係る成形天井におけるハーネス保持構造は、成形天井の成形時に基材の裏面にハーネスホルダ部を一体成形するという構成であるため、従来のように、多くの接着テープやハーネスクリップを接着固定する必要がなく、コストダウン並びに生産性を高めることができるという効果を有する。
【0019】
更に、本発明に係る成形天井におけるハーネス保持構造は、成形天井の基材を二層構造とし、パネル側基材に膨出部を形成し、この膨出部にハーネスの布設方向に沿う切れ目を開設し、この切れ目内にハーネスを押し込むか、あるいは膨出部内に収容できるように、ハーネス布設方向とほぼ直交する方向に沿って入口部、出口部をそれぞれ開設することで、膨出部内にハーネスを通すことが可能となり、ハーネスを膨出部内に保持することができる。従って、従来のように、判別しづらいマーキングに沿ってハーネスを布設する作業に比べ、膨出部に沿ってハーネスを布設すれば良いため、簡単かつ迅速にハーネスを成形天井裏面に布設することができ、生産性を高めることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る成形天井におけるハーネス保持構造の実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1乃至図11は、本発明の第1実施例を示すもので、図1乃至図3において、車両のルーフパネル10の室内側に装着される成形天井20は、図示しないクリップ等の固着手段により、ルーフパネル10に取り付けられるが、この成形天井20の裏面には、車体のルーフ側に配設されるルームランプや、各種スイッチ類等の電子機器に電流を供給するハーネス30が布設されており、本発明では、このハーネス30を成形天井20の裏面に簡単にモジュール化できるハーネス30の保持構造を提供することを特徴としている。
【0022】
この第1実施例では、ハーネス30を保持するハーネスホルダ部Hとして、成形天井20の裏面にハーネス30の布設方向に沿って断続的に半球状の膨出部40が形成され、この膨出部40がハーネスホルダ部Hとして機能している。尚、この実施例では、膨出部として、略半球状に形成したが、円筒状、円錐状等、膨出部40の形状を適宜変更しても良い。
【0023】
具体的に説明すると、成形天井20は、ルーフパネル10の外形状に略即した形状にトリム加工されているが、この成形天井20において、製品外観に影響を与えることなく、裏面側に突出する膨出部40を形成するために、図3に示すように、この実施例における成形天井20は、二層の基材21,22(パネル側基材21と表皮側基材22とする)と表皮23の三層から構成されている。
【0024】
更に詳しくは、パネル側基材21と表皮側基材22は、本実施例では同一素材を使用しており、双方の基材21,22は、後述する成形工程において真空成形する必要があることから、非通気性素材を使用している。例えば、ガラス繊維や各種フィラーを混入した熱可塑性樹脂板や、独立気泡タイプの発泡樹脂シート等の使用が可能であり、本実施例では、ガラス繊維を混入したポリプロピレン(PP)樹脂板を使用している。一方、表皮23は、織布、不織布等、手触り感の優れた布製表皮が好ましく、図示はしないが、ホットメルトフィルム等を介して表皮側基材22に熱ラミ等により予め一体化されている。
【0025】
そして、パネル側基材21には、図1,図2に示すように、7箇所に半球状の膨出部40が断続的に形成されており、この膨出部40には、ハーネス30の布設方向に沿う切れ目41がカット処理されている。この実施例では、膨出部40の切れ目41内にハーネス30を押し込むことにより、ハーネス30は複数の膨出部40により保持されることになる。
【0026】
従って、上述した通り、成形天井20の裏面に形成した膨出部40に切れ目41をカット処理し、この切れ目41内にハーネス30を押し込むことで、ハーネス30を簡単に組み付けることができ、ハーネス30の布設作業が簡単に行なえるとともに、従来必要とした数多くの接着テープや、コストの高いハーネスクリップ等を不要とするため、取付備品点数を削減することでコストダウンを招来することができる。
【0027】
次いで、上述した膨出部40におけるハーネスホルダ部Hの形成工程について、図4乃至図9に基づいて説明する。まず、図4は成形天井20を成形するための成形金型50の概略構成を示すもので、成形金型50は、成形上型60と、成形下型70とから構成されており、各成形上下型60,70は、昇降シリンダ61,71の駆動により所定ストローク上下動可能である。更に、成形上型60の型面には、図1,図2に示す膨出部40を形成するための半球状の凹部62が形成されており、かつ成形上型60には、真空吸引機構部63が設けられている。すなわち、成形上型60の型面の全体に亘り、複数の真空吸引孔が開設され、そして、成形上型60内の真空室は、真空吸引管を通じて真空吸引ポンプに接続している。
【0028】
このように、成形上型60には、成形天井20に膨出部40を膨出形成するための半球状の凹部62が形成され、成形上型60の型面全面に亘り真空吸引力を負荷できるように真空吸引機構部63が付設されている。
【0029】
一方、成形下型70については、成形天井20の製品面形状を形成するために、下型70の型面形状は製品形状と合致するややなだらかな湾曲形状で基本的にフラット面形状をなしているが、サンバイザ、あるいはアシストグリップ等を格納する凹部が設定されている。そして、この成形下型70についても、特に、サンバイザやアシストグリップ等の格納凹部を形成するために、成形上型60とは別個の真空吸引機構部72が設けられている。すなわち、成形下型70の型面のほぼ全面に亘り複数の真空吸引孔が開設され、その背面に真空室が設置され、この真空室は真空吸引管を通じて真空吸引ポンプと接続されている。
【0030】
上述した構成の成形金型50を使用して、図1乃至図3に示す成形天井20を成形するには、成形金型50における成形上下型60,70が型開き状態にある時、パネル側基材21、表皮側基材22、表皮23のそれぞれの原反シートS1,S2,S3を加熱軟化処理後、成形金型50内に投入する。この時、表皮側基材22と表皮23の各原反シートS2,S3は、予めフレームラミにより一体化しておくのが良い。また、各原反シートS1,S2,S3の周縁はクランプ装置64,73により保持された状態で成形金型50内に挿入される。
【0031】
そして、各素材の投入後、図5に示すように、クランプ装置64を上昇させることで、成形上型60の型面に原反シートS1を密接させた後、更に、成形上型60の真空吸引機構部63を作動させ、成形上型60の型面形状に沿ってパネル側基材21を所要形状に真空成形する。この時、パネル側基材21には、成形上型60の凹部62に対応した膨出部40が一体成形されている。
【0032】
同様に、クランプ装置73を下降させることで、成形下型70の型面に原反シートS2,S3を密接させた後、更に、成形下型70の真空吸引機構部72を作動させ、成形下型70の型面形状に沿って表皮側基材22と表皮23とを所要形状に真空成形する。この時、表皮23を一体化した表皮側基材22には、サンバイザ格納凹部や、アシストグリップ格納凹部等が精度良く一体成形されている。
【0033】
次いで、図6に示すように、成形上下型60,70の昇降シリンダ61,71が駆動して、成形上下型60,70が型締めされる。この時、パネル側基材21は、真空吸引力により、成形上型60の型面に保持されているとともに、表皮23と一体化している表皮側基材22もまた真空吸引力により成形下型70の型面に保持されており、この型締めにより、パネル側基材21と表皮側基材22とが強固に一体化されて成形天井20が所要形状に成形される。従って、二層の基材21,22を使用することで、製品面形状をフラット状に維持しつつ、図7に示すように、成形天井20の裏面側に位置するパネル側基材21には略半球状の膨出部40が7箇所に断続的に突設形成されることになる。
【0034】
そして、図8に示すように、パネル側基材21に形成された膨出部40に対して、ハーネス30の布設方向Pに沿って延び、各膨出部40を2分割できるように、切れ目41をカット刃80によりカット処理し、図9に示すように、膨出部40の切れ目41内にハーネス30を押し込んでいくことにより、簡単にハーネス30を成形天井20の裏面に保持させることができる。
【0035】
従って、判別しづらいマーキングポイントを基にハーネスを位置決めし、多くの接着テープを介して貼付するという面倒な作業を廃止でき、目視判別し易い膨出部40の切れ目41に沿ってハーネス30を押し込んでいくだけの簡単な作業で布設することができ、簡単かつ迅速にハーネス30を組み付けることができる。
【0036】
次に、図10,図11は、本発明の第1実施例の変形例を示すもので、ハーネスホルダ部Hとして、半球状の膨出部40に代えて、ハーネス30の布設方向に沿って延びる半円筒状の膨出部90が設けられている。この膨出部90は、成形天井20の後部側から前方に向けて車両の長手方向に沿って延び、更に、ほぼ中央から車両の幅方向に沿って反対側縁に向けて延びるように設定されている。
【0037】
そして、半円筒状の膨出部90についても、膨出部90の長手方向に沿って2分割できるように切れ目91がカット処理されており、この切れ目91に沿ってハーネス30を押し込むことで、図11に示すように、従来の取付備品を廃止でき、かつ簡単かつ廉価にハーネス30を布設することができるという上述実施例と同様の効果がある。尚、半円筒状の膨出部90の形状については、角筒状等、任意の形状に設定して良い。
【実施例2】
【0038】
図12乃至図17は、本発明の第2実施例を示すもので、図12,図13に示すように、この第2実施例においても、成形天井20は、パネル側基材21、表皮側基材22、表皮23の三層積層体から構成されているとともに、パネル側基材21にハーネス30を保持するハーネスホルダ部Hが設けられている。
【0039】
そして、この第2実施例においても、パネル側基材21にパネル側に向く半球状の膨出部40を突設形成して、この膨出部40を利用することは第1実施例と同一であるが、この第2実施例においては、ハーネス30の入口部42と出口部43がそれぞれハーネス30の布設方向と略直交する方向に各半球状の膨出部40に形成されており、断続的な半球状の膨出部40により、所定パターンに布設されるハーネス30を確実に保持することができる。この第2実施例においても、膨出部40の形状は、半球状に限定されない。
【0040】
そして、第1実施例同様、成形天井20を成形する際、成形上下型60,70に設けた真空吸引機構部63,72を作動させ、各基材21,22を所要形状に成形するとともに、パネル側基材21に半球状の膨出部40を所定箇所に一体化し、成形後、図14に示すように、パネル側基材21の裏面の7箇所に膨出形成された膨出部40にそれぞれハーネス30の布設方向P1,P2に対して略直交する方向C1,C2にそれぞれ入口部42と出口部43のカット処理を行なう。次いで、図15に示すように、ハーネス30を布設する際、ハーネス30の挿入端を入口部42から膨出部40内に差し入れ、更に、出口部43から外部に引き出すことで、ハーネス30を膨出部40内部に通すことができ、図12,図13に示すように、ハーネス30の保持を行なう。
【0041】
従って、このハーネス30の保持構造によっても、従来必要とした接着テープや、ハーネスクリップ等の取付備品を必要とせず、成形天井20におけるパネル側基材21の成形時に一体化する膨出部40をハーネスホルダ部Hとして利用できるため、取付備品点数を削減できるとともに、接着テープの貼付作業やクリップの固着作業も廃止でき、ハーネス30の組付作業性を高めることができ、かつ従来の目視しづらいマーキングポイントに沿ってハーネス30の布設作業を行なうのに比べ、断続する膨出部40毎にハーネス30を通していく作業で済み、布設作業が簡単かつ確実に行なえるという利点がある。
【0042】
更に、図16,図17は、第2実施例の変形例を示すもので、ハーネスホルダ部Hとして、半球状の膨出部40に代えて、車両の前後方向、及び幅方向にそれぞれ延びる半円筒状の膨出部90が2箇所に形成され、かつ各膨出部90には、それぞれハーネス30の布設方向に沿う両端にそれぞれ入口部92、出口部93がカット処理されている。そして、この変形例においても、ハーネス30の布設作業は、半円筒状の膨出部90の入口部92からハーネス30を差し込み、ハーネス30を反対側の出口部93から外部に引き出し、この半円筒状の膨出部90をトンネル部として内部にハーネス30を収容保持するという構成である。
【0043】
従って、従来の接着テープやハーネスクリップを廃止でき、取付備品の削減や接着テープやクリップの取付作業も廃止でき、廉価に実施できるとともに、特に、ハーネス30のほとんどの部位が半円筒状の膨出部90内に収容保護されているため、露出部分が少なく、保護効果が高いという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0044】
実施例1、実施例2では、パネル側基材21の成形時に半球状の膨出部40、あるいは半円筒状の膨出部90を一体成形して、これら膨出部40,90をハーネスホルダ部Hとして使用したが、膨出部40,90の形状としては、半球状、半円筒状にこだわることなく、任意形状を採用することができる。また、成形天井20における基材21,22の素材としては、真空成形が可能な非通気性素材であれば良く、実施例1、実施例2では、複合ポリプロピレン樹脂シートを使用したが、コスト、物性、成形性を考慮して、適宜素材を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る成形天井におけるハーネス保持構造の第1実施例を示す全体図である。
【図2】図1に示す成形天井をパネル側からみた正面図である。
【図3】図2中III −III 線断面図である。
【図4】図2に示す成形天井の成形方法における素材のセット工程を示す説明図である。
【図5】図2に示す成形天井の成形方法における素材の真空成形工程を示す説明図である。
【図6】図2に示す成形天井の成形方法における基材の圧着一体化工程を示す説明図である。
【図7】図6に示す基材の圧着一体化工程により成形された成形天井を示す斜視図である。
【図8】図7に示す成形天井における膨出部に切れ目をカット処理する工程を示す説明図である。
【図9】図8に示すカット処理工程により形成された切れ目にハーネスを押し込む工程を示す説明図である。
【図10】本発明に係る成形天井におけるハーネス保持構造の第1実施例の変形例を示すもので、半円筒状の膨出部を形成した成形天井をパネル側からみた斜視図である。
【図11】図10中XI−XI線断面図である。
【図12】本発明に係る成形天井におけるハーネス保持構造の第2実施例を示すパネル側からみた成形天井の斜視図である。
【図13】図12中XIII−XIII線断面図である。
【図14】図12に示す成形天井における膨出部に切れ目をカット処理する工程を示す説明図である。
【図15】図12に示す成形天井の膨出部にハーネスを挿通させる作業を示す説明図である。
【図16】図12に示すハーネス保持構造の変形例を示すパネル側からみた成形天井の斜視図である。
【図17】図16に示す成形天井における膨出部に切れ目をカット処理する工程を示す説明図である。
【図18】従来のモジュール化した成形天井をパネルに取り付ける状態を示す説明図である。
【図19】従来の成形天井にハーネスを保持する構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
10 ルーフパネル
20 成形天井
21 パネル側基材
22 表皮側基材
23 表皮
30 ハーネス
40 膨出部(半球状)
41 切れ目
42 入口部
43 出口部
50 成形金型
60 成形上型
61 昇降シリンダ
62 半球状凹部
63 真空吸引機構部
64 クランプ装置
70 成形下型
71 昇降シリンダ
72 真空吸引機構部
73 クランプ装置
80 カット刃
90 膨出部(半円筒状)
91 切れ目
92 入口部
93 出口部
H ハーネスホルダ部
S1 パネル側基材の原反シート
S2 表皮側基材の原反シート
S3 表皮の原反シート
P(P1,P2) ハーネスの布設方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフパネル(10)の室内面側に装着される成形天井(20)の裏面にハーネス(30)を保持する成形天井におけるハーネス保持構造において、
前記成形天井(20)は、パネル側基材(21)と表皮側基材(22)とからなる二層の基材(21,22)を備え、パネル側基材(21)にハーネス(30)を保持するハーネスホルダ部(H)が形成されていることを特徴とする成形天井におけるハーネス保持構造。
【請求項2】
前記ハーネスホルダ部(H)は、2枚の樹脂原反シート(S1,S2)を成形上下型(60,70)で一体成形する際、成形上型(60)から真空吸引力を作用させ、パネル側基材(21)の所定箇所に膨出部(40,90)を形成し、この膨出部(40,90)にハーネス(30)の布線方向に沿う切れ目(41,91)をカット処理し、この切れ目(41,91)にハーネス(30)を押し込むことによりハーネス(30)を保持することを特徴とする請求項1に記載の成形天井におけるハーネス保持構造。
【請求項3】
前記ハーネスホルダ部(H)は、2枚の樹脂原反シート(S1,S2)を成形上下型(60,70)で一体成形する際、成形上型(60)から真空吸引力を作用させ、パネル側基材(21)の所定箇所に膨出部(40,90)を形成し、上記膨出部(40,90)に、ハーネス(30)の布線方向とほぼ直交する方向にそれぞれ入口部(42,92)と出口部(43,93)を形成し、膨出部(40,90)の入口部(42,92)からハーネス(30)を挿入し、出口部(43,93)からハーネス(30)を引き出すことで、膨出部(40,90)内にハーネス(30)の一部を保持することを特徴とする請求項1に記載の成形天井におけるハーネス保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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