説明

成形情報記憶装置

【課題】成形品の異常に対する原因追究を行いやすくする。
【解決手段】成形機10での成形条件を入力する成形条件入力手段41と、成形機10で成形された成形品を測定する測定機30による測定結果を入力する測定結果入力手段42と、成形時の時期情報を入力する時期情報入力手段43と、成形条件と時期情報とを関連付けて記憶し、かつ測定結果と時期情報とを関連付けて記憶する記憶手段44、45とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機の成形条件などを記憶する成形情報記憶装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、成形機によって成形された製品の不良(異常)が判明した時点において、その成形条件データを過去に遡って迅速に調査可能な成形条件データの記録表示方法を開示している。
しかし、同じ成形条件で成形したとしても、成形品の寸法には多少のばらつきが生じる場合もある。したがって、成形条件データから、製品の異常の原因がわかりにくい場合がある。
【特許文献1】特開2002−52590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、成形品の異常に対する原因追究を行いやすい成形情報記憶装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の一実施形態を示す図面に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、成形機(10)での成形条件を入力する成形条件入力手段(41)と、前記成形機(10)で成形された成形品を測定する測定機(30)による測定結果を入力する測定結果入力手段(42)と、前記成形品の成形時の時期情報を入力する時期情報入力手段(43)と、前記成形条件と前記時期情報とを関連付けて記憶し、かつ、前記測定結果と前記時期情報とを関連付けて記憶する記憶手段(44、45)とを備えたことを特徴とする成形情報記憶装置である。
請求項2の発明は、請求項1に記載の成形情報記憶装置において、前記成形機(10)は複数あり(10−1,10−2,・・・,10−n)、前記時期情報は、前記成形機(10)の識別情報を含むことを特徴とする成形情報記憶装置である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の成形情報記憶装置において、前記成形機(10)で成形された前記成形品(70)を前記測定機(30)に搬送する搬送体(60)と、前記搬送体(60)に設けられ、前記時期情報が書き込まれた情報記憶部(50)とを有し、前記時期情報入力手段(43)は、前記情報記憶部(50)より前記時期情報を入力することを特徴とする成形情報記憶装置である。
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載の成形情報記憶装置において、前記成形機で成形された前記成形品は、前記時期情報が書き込まれた情報記憶部を有し、前記時期情報入力手段は、前記情報記憶部より前記時期情報を入力することを特徴とする成形情報記憶装置である。
なお、符号を付して説明した構成は適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、成形品の異常に対する原因追究を行いやすい成形情報記憶装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態をあげて、さらに詳しく説明する。
(第1実施形態)
【0007】
図1は、第1実施形態の成形情報記憶システムを示す図であり、図2及び図3は、各種データの内容及び各種データの表示例を示す図である。
第1実施形態の成形情報記憶システム100は、射出成形機10と、モニターリングシステム20と、三次元座標測定機30と、成形情報記憶装置40などとを備える。
【0008】
射出成形機10は、ペレット状の樹脂を加熱シリンダ内に供給して溶融させ、この樹脂を射出手段によって金型のキャビティ内に射出し、さらに加圧することで樹脂の成形を行い、成形品としてのプラスチック部品を製造する装置である。
また、射出成形機10は複数あり、各射出成形機10−1,10−2,・・・,10−nには、識別情報としての成形機番号が付され、それぞれモニターリングシステム20に接続されており、モニターリングシステム20に対して、成形品の成形時の時期情報Aを含む成形条件B(モニター情報)を出力する。なお、時期情報Aには、射出成形機10の成形機番号が含まれている。
【0009】
モニターリングシステム20は、射出成形機10からモニター情報を取得し、そのモニター情報に基づいて、現在の成形条件などを表示するシステムである。具体的な表示内容は、図2(a)に示すように、現在の日時、射出成形機10ごとの成形条件(圧力、温度、ショット数)などである。
【0010】
三次元座標測定機30は、互いに直交する3軸方向にそれぞれ移動するX,Y及びZ軸方向移動部材と、各移動部材のいずれかに着脱可能に装着される測定プローブと、各移動部材を駆動する駆動装置とを備え、成形品と測定プローブとを三次元的に相対移動させて成形品の測定を行う装置であり、時期情報Aを入力するキーボードなどの入力手段を備える。
また、三次元座標測定機30は、成形情報記憶装置40に対して、測定結果Cと時期情報Aとを出力する。実際には、図2(b)に示すように、時期情報Aとしての成形機番号及び成形日時、測定結果Cとしての測定値をまとめた1つのデータとして出力する。
【0011】
成形情報記憶装置40は、成形条件入力部41と、測定結果入力部42と、時期情報入力部43と、成形条件データベース44と、測定結果データベース45とを備える。
成形条件入力部41は、射出成形機10での成形条件を入力する手段であり、モニターリングシステム20から送信されてきた時期情報Aを含む成形条件Bが入力される。
測定結果入力部42は、射出成形機10で成形された成形品を測定する三次元座標測定機30による測定結果を入力する手段であり、三次元座標測定機30から送信されてきた測定結果Cが入力される。
時期情報入力部43は、成形品の成形時の時期情報を入力する手段であり、三次元座標測定機30から送信されてきた時期情報A(成形機番号を含む)が入力される。
測定結果入力部42及び時期情報入力部43は、測定結果Cと時期情報Aとを関連付けて測定結果データベース45に送信する。
【0012】
成形条件データベース44は、成形条件を記憶するデータベースであり、定期的に(30分毎、1時間毎など)又は測定時間に合わせて(9時、12時、15時、18時など)、モニターリングシステム20から送信されてきた時期情報A及び成形条件Bを記憶する。記憶するデータは、図2(c)に示すように、成形年月日、成形時刻、成形条件(成形機番号、圧力、温度、ショット数)などであり、時期情報Aと成形条件Bとが関連付けて記憶されている。
【0013】
測定結果データベース45は、測定結果を記憶するデータベースであり、三次元座標測定機30から送信されてきた測定結果Cと時期情報Aとを関連付けて記憶する。
また、測定結果データベース45は、時期情報入力部43から送信されてきた時期情報Aを用いて、その時期情報Aに合致する成形条件Bを成形機条件データベース44から取り出し、図3に示すようなデータベースを作成する。このデータベースでは、時期情報Aと成形条件Bとが関連付けて記憶され、かつ、時期情報Aと測定結果Cとが関連付けて記憶され、両者に共通する時期情報Aによって、成形条件Bと測定結果Cとが関連付けて記憶されている。
【0014】
次に、本実施形態の成形情報記憶システム100の制御の流れについて説明する。
まず、射出成形機10を稼動させる。
そうすると、モニター情報が、射出成形機10からモニターリングシステム20に送信され、モニターリングシステム20は、モニター情報を取得し、時期情報A及び成形条件Bなどを表示する。
時期情報A及び成形条件Bは、定期的に又は測定時間に合わせて、成形条件データベース44に送信されて記憶される。
【0015】
一方、射出成形機10では、成形品が大量に生産されるので、作業員は、その中からサンプル品を選択し、サンプル品の成形時の時期情報(例えば、○○年○○月○○日○○時)と成形機番号(例えば、1号機)とを記入したシートをそのサンプル品に貼り付けて、三次元座標測定機30まで持って行く。
そして、作業員は、そのシートを見ながら、キーボードなどの入力手段を用いて三次元座標測定機30に時期情報A(成形機番号を含む)を入力し、三次元座標測定機30に成形品の測定を開始させる。
測定が終わると、三次元座標測定機30は、測定結果データベース45に、測定結果C及び時期情報Aを送信する。
測定結果データベース45は、上述したように、測定結果Cと時期情報Aとを関連付けて記憶し、時期情報Aを用いて、成形条件データベース44から成形条件Bを取り出し、図3に示すようなデータベースを作成する。なお、この表は、必要に応じて、ディスプレイなどに表示したり、プリントアウトしたりするとよい。
【0016】
ここで、射出成形機により製造されるプラスチック部品について説明する。
射出成形機により製造されるプラスチック部品は、その利便性から大量に生産され、品質維持のための寸法測定も定期的に行われている。
このようなプラスチック部品は、複数の同一形状の金型によって、かつ、複数の射出成形機を用いて成形されている。そして、それぞれのプラスチック部品について三次元座標測定機で寸法を測定し、その測定結果を保存している。
もし、測定結果に異常があれば、その原因をつきとめなければならず、対策として射出成形機の成形条件の変更や成形の一時中断などの対策を講じる必要があるため、測定結果の管理は非常に重要な業務である。
【0017】
しかし、射出成形機により製造されたプラスチック部品の測定結果の管理は、単に測定された寸法管理だけでは足りず、そのプラスチック部品を成形した時の成形条件が重要となる。測定結果に異常がある場合、その成形条件がどのような値を示しているかによって、次の行動の取り方が異なってくるからである。
また、過去に振り返って測定結果のデータ整理をする場合、その測定結果を得たときの成形条件のデータ整理も必要となる。これは、測定結果が同じであるということが、成形条件が同じであるとは限らないからである。
【0018】
そこで、本実施形態では、複数ある射出成形機10の時期情報Aと成形条件Bとを記憶し、三次元座標測定機30での測定時に時期情報Aを入力することよって、測定結果Cと成形条件Bとを関連付けて記憶している。
これにより、成形品の測定結果Cに成形時の成形条件Bを付加することができ、射出成形機10により製造された成形品の品質管理をするにあたり、測定結果Cに異常が出た場合、測定結果Cだけでなく、その成形条件Bを鑑みた上での異常に対する原因追究が行え、速やかな対応を取ることができる。
また、射出成形機10の成形機番号も含めてデータベース化しているので、射出成形機10ごとの原因追究も行うことができる。
(第2実施形態)
【0019】
図4は、第2実施形態の成形情報記憶システムを示す図である。なお、前述した第1実施形態と同様な機能を果たす部分は、重複する説明や図面を適宜省略する。
第2実施形態の成形情報記憶システム100−2は、ICタグ50を利用したシステムである。
ICタグ50は、時期情報や成形機番号を書き込むためのものであり、搬送体60に取り付けられている。
搬送体60は、射出成形機10で成形された成形品70を三次元座標測定機30に搬送するものであって、例えば、トレーや袋などである。
【0020】
そして、成形後には、射出成形機10に備え付けられたリーダライタ(R/W)80Aが、時期情報や成形機番号をICタグ50に書き込む。
作業員は、搬送体60に成形品70を載せ、射出成形機10から三次元座標測定機30に搬送体60を運ぶ。
測定時には、三次元座標測定機30に備え付けられたリーダライタ80Bが、ICタグ50から時期情報や成形機番号を読み取り、読み取った時期情報や成形機番号は、成形情報記憶装置40の時期情報入力部43に入力される。なお、その後の処理は、第1実施形態と同様である。
【0021】
このように、第2実施形態によれば、ICタグ50に時期情報や成形機番号を記憶させているので、作業員は、時期情報や成形機番号を入力する手間を省くことができる。
【0022】
(変形形態)
上述した実施形態は、以下の変形も可能である。
(1)成形機は、射出成形機10の例で説明したが、例えば、プレス成形機などであってもよい。
(2)測定機は、三次元座標測定機30の例で説明したが、例えば、工業顕微鏡、非接触式三次元測定機などであってもよい。
(3)射出成形機10で製造するものは、プラスチック部品の例で説明したが、金属製品などであってもよい。
(4)第2実施形態では、ICタグ50は、搬送体60に取り付ける例で説明したが、成形品70に直接取り付けてもよい。この場合は、成形時にICタグ50を埋め込んでもよく、成形品70にICタグ50を貼り付けてもよい。
なお、上述した実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は、以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態の成形情報記憶システムを示す図である。
【図2】各種データの内容及び各種データの表示例を示す図である。
【図3】各種データの内容及び各種データの表示例を示す図である。
【図4】第2実施形態の成形情報記憶システムを示す図である。
【符号の説明】
【0024】
10:射出成形機、30:三次元座標測定機、40:成形情報記憶装置、41:成形条件入力部、42:測定結果入力部、43:時期情報入力部、44:成形条件データベース、45:測定結果データベース、50:ICタグ、60:搬送体、70:成形品、100,100−2:成形情報記憶システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形機での成形条件を入力する成形条件入力手段と、
前記成形機で成形された成形品を測定する測定機による測定結果を入力する測定結果入力手段と、
前記成形品の成形時の時期情報を入力する時期情報入力手段と、
前記成形条件と前記時期情報とを関連付けて記憶し、かつ、前記測定結果と前記時期情報とを関連付けて記憶する記憶手段と
を備えたことを特徴とする成形情報記憶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成形情報記憶装置において、
前記成形機は複数あり、前記時期情報は、前記成形機の識別情報を含むこと
を特徴とする成形情報記憶装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の成形情報記憶装置において、
前記成形機で成形された前記成形品を前記測定機に搬送する搬送体と、
前記搬送体に設けられ、前記時期情報が書き込まれた情報記憶部とを有し、
前記時期情報入力手段は、前記情報記憶部より前記時期情報を入力すること
を特徴とする成形情報記憶装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の成形情報記憶装置において、
前記成形機で成形された前記成形品は、前記時期情報が書き込まれた情報記憶部を有し、
前記時期情報入力手段は、前記情報記憶部より前記時期情報を入力すること
を特徴とする成形情報記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−36917(P2008−36917A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212724(P2006−212724)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】