説明

成形材料、成形品、床材及び成形品の製造方法

【課題】本発明が解決しようとする課題は、従来の成形品よりも優れた柔軟性と、優れた耐熱水性とを両立し、かつ、優れたハンドリング性をも有する成形材料、成形品、床材及び成形品の製造方法に関するものである。
【解決手段】本発明は、熱硬化性樹脂(a1)及び重合性不飽和単量体(a2)からなる−40℃〜40℃のガラス転移温度を有する硬化物を形成可能な熱硬化性樹脂組成物(A)と、シランカップリング剤によって表面処理の施された充填材(B)と、強化繊維(C)と、アクリル樹脂粉末を含む増粘剤(D)とを特定の割合で含有する成形材料ならびにそれを成形して得られる成形品及び床材に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば床材や壁材等の建築内装部材等に使用可能な成形品及びその製造に使用する成形材料に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチックは、従来から優れた耐蝕性、耐煮沸性を有し、軽量で、高強度及び高剛性を備えた複雑な形状の成形品の製造に使用できることから、例えば浴槽等の浴室部材、パネルタンク等の工業部材あるいは船艇等の用途に幅広く使用されている。
【0003】
前記従来の繊維強化プラスチックに使用する樹脂としては、一般に、約80℃〜125℃程度のガラス転移温度を備えた硬化物を形成しうるものを使用する場合が多く、かかる硬化物は、剛直で硬いため、例えば浴室等の床材等に用いた場合に、硬い印象(風合い)を与える場合があった。
【0004】
一方、前記樹脂としては、近年、比較的柔軟な風合いを備えた硬化物を形成可能なものが報告されており、例えばウレタンアクリレート、エポキシアクリレート及び共重合性単量体を特定の重量比で含有する軟質樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、前記軟質樹脂組成物を用いて得られた繊維強化プラスチックは、比較的良好な柔軟性や耐熱水性を有するものの、未だ十分でない場合があった。
【0006】
また、成形材料としては、成形時に固体形状で表面のベタツキ等がないものが、成形材料の取り扱いを容易にするうえで求められている。
【0007】
しかし、前記軟質樹脂組成物は、固体形状を維持できない場合や、表面のベタツキ等があるため、成形加工の際に取り扱いにくく、ハンドリング性の点で十分でない場合があった。
【0008】
このように、良好な柔軟性とともに、優れた耐熱水性を両立し、かつ、常温下では固体で取り扱いしやすく、加熱によって容易に溶融し様々な形状の成形品の製造に使用可能なハンドリング性をも有する成形材料は、未だ見出されていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−199639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、従来の成形品よりも優れた柔軟性と、優れた耐熱水性とを両立し、かつ、優れたハンドリング性をも有する成形材料、成形品、床材及び成形品の製造方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討した結果、ガラス転移の比較的低い硬化物を形成可能な熱硬化性樹脂(A)をベースに、特定の充填材(B)と強化繊維(C)と特定の増粘剤(D)とを所定量組み合わせ使用した成形材料であれば、本発明の課題を解決できることを見出した。
【0012】
即ち、本発明は、熱硬化性樹脂(a1)及び重合性不飽和単量体(a2)からなる−40℃〜40℃のガラス転移温度を有する硬化物を形成可能な熱硬化性樹脂組成物(A)と、シランカップリング剤によって表面処理の施された充填材(B)と、強化繊維(C)と、アクリル樹脂粉末を含む増粘剤(D)とを含有する成形材料であって、前記充填材(B)が前記熱硬化性樹脂組成物(A)の全量に対して15質量%〜160質量%含まれ、前記強化繊維(C)が前記熱硬化性樹脂組成物(A)の全量に対して5質量%〜90質量%含まれ、かつ、前記増粘剤(D)が前記熱硬化性樹脂組成物(A)の全量に対して10質量%〜60質量%含まれるものであることを特徴とする成形材料ならびにそれを成形して得られる成形品及び床材に関するものである。
【0013】
また、本発明は、前記成形材料を、100〜160℃の範囲でプレス成形法によって成形する成形品の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の成形材料であれば、従来の成形品よりも優れた柔軟性と、優れた耐熱水性とを両立し、かつ、優れたハンドリング性をも有することから、複雑な形状を備えた成形品を製造できることから、例えば床材や壁材等の建築材料をはじめとする様々な用途に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の成形材料は、熱硬化性樹脂(a1)及び重合性不飽和単量体(a2)からなる−40℃〜40℃のガラス転移温度を有する硬化物を形成可能な熱硬化性樹脂組成物(A)と、シランカップリング剤によって表面処理の施された充填材(B)と、強化繊維(C)と、アクリル樹脂粉末を含む増粘剤(D)と、必要に応じてその他の添加剤を含有する成形材料であって、前記充填材(B)が前記熱硬化性樹脂組成物(A)の全量に対して15質量%〜160質量%含まれ、前記強化繊維(C)が前記熱硬化性樹脂組成物(A)の全量に対して5質量%〜90質量%含まれ、かつ、前記増粘剤(D)が前記熱硬化性樹脂組成物(A)の全量に対して10質量%〜60質量%含まれるものであることを特徴とするものである。
【0016】
本発明では、前記熱硬化性樹脂組成物(A)と前記充填材(B)と前記強化繊維(C)と前記増粘剤(D)とを、前記特定の使用割合で組み合わせ使用することが重要である。
【0017】
具体的には、前記充填材(B)は、本発明で使用する熱硬化性樹脂組成物(A)の全量に対して15質量%〜160質量%使用し、前記強化繊維(C)は前記熱硬化性樹脂組成物(A)の全量に対して5質量%〜90質量%使用し、かつ、前記増粘剤(D)は前記熱硬化性樹脂組成物(A)の全量に対して10質量%〜60質量%使用することが重要である。
【0018】
ここで、前記(B)〜(D)の何れか1つの使用割合を前記範囲外とした成形材料では、前記強化繊維(C)と熱硬化性樹脂組成物(A)等との混合を十分に行えず、外観不良、耐熱水性の悪化等を引き起こす場合がある。また、前記成形材料では、柔軟な風合いを備えた成形品を得ることができず、また、ハンドリング性が著しく低下するため、成形品の製造効率を低下させる場合がある。
一方、前記熱硬化性樹脂組成物(A)の代わりに、従来の約80℃〜100℃程度のガラス転移温度を備えた硬化物を形成しうる熱硬化性樹脂組成物を使用した場合には、前記充填材(B)等を前記所定の割合で使用せずとも、繊維強化プラスチック等の成形品を製造することはできる。しかし、かかる成形品は硬く剛直であるため、例えば床材等に使用した場合に柔軟な風合いが損なわれる場合がある。
したがって、前記熱硬化性樹脂組成物(A)をベースとして、柔軟な風合いと耐熱水性とを両立した成形品を得るためには、前記充填材(B)と前記強化繊維(C)と前記増粘剤(D)とを前記割合で組み合わせ使用することが必須である。
【0019】
はじめに、前記熱硬化性樹脂組成物(A)について説明する。
前記熱硬化性樹脂組成物(A)としては、熱硬化性樹脂(a1)及び重合性不飽和単量体(a2)からなるもののうち、−40℃〜40℃のガラス転移温度を有する硬化物を形成可能なものを使用することができる。前記ガラス転移温度は、熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の温度である。
前記熱硬化性樹脂組成物(A)としては、前記熱硬化性樹脂(a1)として前記範囲のガラス転移温度を有する硬化物を形成可能な1種の熱硬化性樹脂を単独で使用しても、2種以上の熱硬化性樹脂を組み合わせ使用してもよい。
また、前記熱硬化性樹脂組成物(A)は、前記−40℃〜40℃の範囲外のガラス転移温度を有する硬化物を形成しうる熱硬化性樹脂を2種以上組み合わせ、かつ前記重合性不飽和単量体(a2)を使用することによって、前記−40℃〜40℃のガラス転移温度を有する硬化物を形成可能となった混合物をも含むものである。
具体例を挙げて説明すると、−45℃のガラス転移温度を有する硬化物を形成しうる不飽和ポリエステル樹脂1と、80℃のガラス転移温度を有する硬化物を形成しうる不飽和ポリエステル樹脂2とを組み合わせ使用した樹脂混合物と、重合性不飽和単量体(a2)との混合物のうち、その硬化物のガラス転移温度が−20℃となりうる割合で配合された熱硬化性樹脂混合物は、本願発明特定事項である熱硬化性樹脂組成物(A)に包含される。
【0020】
前記のように比較的低温のガラス転移温度を有する硬化物を形成可能な熱硬化性樹脂組成物を使用することによって、得られる成形品に柔軟な風合いを付与することが可能となる。
【0021】
ここで、前記熱硬化性樹脂組成物(A)の代わりに、前記ガラス転移温度が−45℃の熱硬化性樹脂組成物を使用して得た成形材料では、十分な耐熱水性を備えた成形品を得ることができない場合がある。また、前記ガラス転移温度が45℃の熱硬化性樹脂組成物を使用して得た成形材料では、柔軟な風合いを備えた成形品を得ることができない場合がある。なお、前記熱硬化性樹脂組成物(A)のガラス転移温度は、前記熱硬化性樹脂組成物(A)100重量部に6質量%ナフテン酸コバルト0.5重量部及び55質量%メチルエチルケトンパーオキサイド1重量部を加え撹拌し、室温で15時間放置して硬化させた後、120度で2時間アフターキュアーして得られた硬化物を、DMA法により昇温速度5℃/分、周波数1ヘルツの条件で測定した値である。実施例においても同様である。
【0022】
前記熱硬化性樹脂(a1)としては、例えば不飽和ポリエステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂等を単独または2以上組み合わせて使用することができる。
【0023】
なかでも、柔軟性、耐(熱)水性、硬化性に優れた硬化物を得る観点から、不飽和ポリエステル樹脂及びウレタンアクリレート樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有する熱硬化性樹脂を使用することが好ましい。
【0024】
また、柔軟性と耐熱水性をより一層向上する観点から、前記不飽和ポリエステル樹脂とウレタンアクリレート樹脂とを組み合わせ使用することが好ましく、具体的には、[不飽和ポリエステル樹脂/ウレタンアクリレート樹脂]の質量割合が90/10〜20/80の範囲で使用することが好ましい。
【0025】
前記不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸とを、従来知られる方法で反応させて得られたものを使用することができる。前記不飽和ポリエステル樹脂は、例えばスチレン等のビニル単量体や(メタ)アクリル単量体等の重合性不飽和単量体(a2)に予め溶解されていても良い。
【0026】
前記多価アルコール及び多価カルボン酸としては、従来から知られるものを使用することができる。具体的には前記多価アルコールとしては、例えばエチレングリコールやプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等を使用することができる。また、前記多価カルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸等を使用することができる。
【0027】
前記不飽和ポリエステル樹脂としては、より一層柔軟な風合いを備えた成形品を得る観点から、一般に軟質不飽和ポリエステル樹脂といわれるものを使用することが好ましく、具体的には、ジエチレングリコールや1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸等とを反応させて得られたものを使用することが好ましい。
【0028】
また、前記ウレタンアクリレート樹脂は、分子末端または側鎖に(メタ)アクリロイル基を有し、かつ分子中にウレタン結合を有するものであって、例えば水酸基及び重合性不飽和二重結合含有化合物と、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させることによって製造することができる。前記ウレタンアクリレート樹脂は、例えば(メタ)アクリル単量体等の共重合性単量体に予め溶解したものであってもよい。
【0029】
前記水酸基及び重合性不飽和二重結合含有化合物としては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0030】
前記ポリオールとしては、例えばネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のグリコール類とアジピン酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の脱水縮合反応から得られる飽和ポリエステルポリオールまたは、エチレンオキシドあるいはプロピレンオキシドの開環反応から得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール類または、カプロラクトンの開環反応から得られるポリカプリロラクトン等を使用することができる。
【0031】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば芳香族及び/または脂肪族ポリイソシアネート化合物が用いられ、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタニジソシアネート、水添ジフェニルメタニジソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等を使用することができる。
【0032】
前記熱硬化性樹脂(a1)は、前記重合性不飽和単量体(a2)に予め溶解されていても良い
【0033】
前記重合性不飽和単量体(a2)としては、例えばスチレン等のビニル単量体や、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2エチルヘキシル等の(メタ)アクリル単量体を使用することができる。なかでもメタアクリル酸ブチルやスチレンを使用することが、得られる成形品の柔軟性、耐水性、耐熱水性を向上するうえで好ましい。
【0034】
前記重合性不飽和単量体(a2)は、本発明で使用する熱硬化性樹脂組成物(A)の全量に対して30質量%〜65質量%の範囲で使用することが好ましく、40質量%〜55質量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0035】
次に、本発明で使用する充填材(B)について説明する。
本発明で使用する充填材(B)としては、従来知られた充填材の表面がシランカップリング剤によって表面処理の施されたものを使用することが重要である。ここで、前記表面処理の施されていない水酸化アルミニウム等の充填材を使用しても、耐熱水性等の向上効果が得られない場合がある。
【0036】
前記充填材(B)としては、具体的には、水酸化アルミニウムや炭酸カルシウム等の充填材の表面を、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤で表面処理されたものを使用することが好ましい。
【0037】
また、本発明では、前記充填材(B)を本発明の熱硬化性樹脂組成物(A)の全量に対して15質量%〜160質量%の範囲で使用することが重要である。ここで、前記充填材(B)の量が15重量%未満である場合には、成形材料のハンドリング性が著しく低下し、複雑な成形品を製造することが困難となる場合があり、一方、160質量%を越えると、得られる成形品の柔軟な風合いが損なわれる場合がある。
【0038】
したがって、前記充填材(B)としては、本発明の熱硬化性樹脂組成物(A)の全量に対して15質量%〜160質量%の範囲で使用することが好ましく、20質量%〜140質量%の範囲で使用することが、優れた柔軟性と耐熱性とを両立した成形品を得るうえでより好ましい。
【0039】
次に、本発明で使用する強化繊維(C)について説明する。
前記強化繊維(C)としては、例えばガラス繊維や炭素繊維、有機繊維であるポリエステル、ビニロン、ナイロン、ポリ乳酸、天然繊維であるジュート、麻、竹、ケナフ等を使用することができる。なかでも、耐(温)水性、経済性などの理由から、ガラス繊維を使用することが好ましい。
【0040】
また、本発明では、前記強化繊維(C)を本発明の熱硬化性樹脂組成物(A)の全量に対して5質量%〜90質量%の範囲で使用することが重要である。ここで、前記強化繊維(C)の量が5重量%未満である場合には、得られる成形品の強度低下を引き起こす場合があり、一方、90質量%を越えると、得られる成形品の柔軟な風合いが損なわれる場合がある。
【0041】
したがって、前記強化繊維(C)としては、本発明の熱硬化性樹脂組成物(A)の全量に対して5質量%〜90質量%の範囲で使用することが好ましく、8質量%〜75質量%の範囲で使用することが、優れた柔軟性と耐熱性とを両立した成形品を得るうえでより好ましい。
【0042】
次に、本発明で使用する増粘剤(D)について説明する。
前記増粘剤(D)としては、例えば従来知られるアクリル樹脂粉末を使用することができる。
前記アクリル樹脂粉末としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の(メタ)アクリル単量体を重合して得られるものを使用することができ、なかでも(メタ)アクリル酸メチルを重合して得られるアクリル樹脂粉末を使用することが好ましい。
【0043】
本発明では、前記増粘剤(D)を本発明で使用する熱硬化性樹脂組成物(A)の全量に対して10質量%〜60質量%の範囲で使用することが重要である。ここで、前記増粘剤(D)の量が10重量%未満である場合には、成形材料のハンドリング性が著しく低下し、複雑な成形品を製造することが困難となる場合があり、一方、60質量%を越えると、得られる硬化物の外観不良、耐熱水性の低下を引き起こす場合がある。
【0044】
したがって、前記増粘剤(D)は、本発明で使用する熱硬化性樹脂組成物(A)の全量に対して10質量%〜60質量%の範囲で使用することが好ましく、20質量%〜55質量%の範囲で使用することが、優れた柔軟性と耐熱水性とを両立した成形品を得るうえでより好ましい。
【0045】
また、本発明の成形材料は、前記熱硬化性樹脂組成物(A)と前記充填材(B)と前記強化繊維(C)と前記増粘剤(D)の他に、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。
【0046】
また、前記その他の成分としては、親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂(E)やポリオキシエチレンモノステアレート等を含む親水化剤を使用することができる。なかでも親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂(E)を使用することが、得られる成形品に長期的に継続する親水性効果を付与するうえで好ましい。
【0047】
前記親水化剤として使用可能な親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂(E)は、前記熱硬化性樹脂(A)の概念に含まれうるものも使用することができる。したがって、前記熱硬化性樹脂(A)の概念に含まれうる親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂(E)を使用する場合には、前記不飽和ポリエステル樹脂(E)を含む熱硬化性樹脂と重合性不飽和単量体とを含む熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られた硬化物のガラス転移温度が、−40℃〜40℃の範囲となるよう調整することが必要である。
【0048】
前記親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂(E)としては、前記熱硬化性樹脂組成物(A)の形成する硬化物のガラス転移温度が−40℃〜40℃となる範囲で使用することが好ましく、具体的には、本発明の熱硬化性樹脂組成物(A)の全量に対して1.0質量%〜15.0質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0049】
また、前記その他の成分としては、例えば重合禁止剤、硬化剤、着色剤、難燃剤、離型剤、紫外線吸収剤、熱可塑性樹脂等の各種添加剤を使用することができる。
【0050】
前記重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール,t−ブチルハイドロキノン、トルハイドロキノン,p−ベンゾキノン、ナフトキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、ナフテン酸銅、塩化銅等を使用できる。
【0051】
また、前記硬化剤は、例えば、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ケトンパーオキサイド系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系化合物等からなる熱硬化剤や、紫外線硬化剤、電子線硬化剤から選択される一種類以上のものを使用できる。
【0052】
また、前記着色剤としては、例えばチタンホワイト、カーボンブラック等の無機顔料類やフタロシアニンブルー、キナクリドンレッド等の有機顔料を使用することができる。
【0053】
また、前記難燃剤としては、例えば塩化パラフィン類、リン酸エステル類、三酸化アンチモン、臭素系難燃剤が挙げられる。
【0054】
また、前記内部離型剤としては、例えばステアリン酸などの高級脂肪酸、ステアリン亜鉛などの高級脂肪酸塩、アルキルリン酸エステル、あるいは界面活性剤とコポリマーの混合物などを使用することができる。
【0055】
また、前記熱可塑性樹脂は、破壊靱性を向上するうえで使用してもよく、例えばポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、スチレン−共役ジエンブロック共重合体スチレン−水添共役ジエンブロック共重合体等を使用することができる。
【0056】
本発明の成形材料は、前記熱硬化性樹脂組成物(A)と前記充填材(B)と前記強化繊維(C)と前記増粘剤(D)と、必要に応じて前記親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂(E)等のその他の成分とを、混合、攪拌、含浸することによってことによって製造することができる。
【0057】
前記方法で得られた本発明の成形材料は、例えばプレス成形法や射出成形法、連続成形法によって所望の形状に成形することができ、プレス成形法を採用することが大型で複雑な形状の成形品を得やすいため好ましい。前記プレス成形は、100〜160℃の温度条件で行うことが好ましい。
【0058】
以上のように、本発明の成形材料を用いて得られた成形品は、柔軟性や耐熱水性に優れることから、例えば床材や壁材等の建築部材の表面層に使用することができる。なかでも、手や足等が触れた際に、柔軟な風合いの求められる浴室の床材や壁材に好適に使用することが好適である。
【0059】
また、前記した親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂(E)を使用することによって、易、乾燥性効果を備えた成形品を得ることができ、かかる成形品は、とりわけ、易清掃性効果の求められる浴室の床材や壁材に好適に使用することができる。
【0060】
本発明の成形品を壁材や床材、それらの表面層に使用する場合、前記成形品の表面にはエンボス模様などが設けられていても良い。
また、前記成形品を壁材や床材、それらの表面層に使用する場合、前記成形品の厚みは、0.5〜5.0mmの範囲であることが好ましい。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明する。
【0062】
〔実施例1〕
熱硬化性樹脂組成物(A)として、サンドーマPS−600[ディーエイチ・マテリアル株式会社製の不飽和ポリエステル樹脂とスチレンとの混合物、固形分56.5質量%、硬化物のガラス転移温度;−34.7℃]90質量部及びVDP−800[ディーエイチ・マテリアル株式会社製のウレタンアクリレート樹脂とスチレンとの混合物、固形分69.0質量%、硬化物のガラス転移温度;36.3℃]10質量部と、親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂及びスチレンの混合物(固形分64.0質量%)13質量部と、n−ブチルメタクリレート6質量部の混合物を使用した。該混合物を硬化して得られる硬化物のガラス転移温度は−3.3℃であった。
【0063】
前記混合物と、BYK−P9080[ビック・ケミージャパン株式会社製の内部離型剤]を1.3質量部、BYK−9076[ビック・ケミージャパン株式会社製の分離防止剤] を0.4質量部、PCN0F309S−W[東京インク株式会社製のシートモールディングコンパウンド用着色剤]を15質量部、カヤカルボンAIC−75 [化薬アクゾ株式会社製硬化剤] 1.1質量部、パラベンゾキノン(PBQ)0.05質量部と混合、撹拌し、CW−308B〔住友化学株式会社製のシランカップリング剤によって表面処理の施された水酸化アルミニウム 平均粒子径8μm〕160質量部と混合することによってコンパウンドを得た。得られたコンパウンドと、ゼフィアックF−320[ガンツ化成株式会社製のアクリル樹脂粉末からなる増粘剤]47質量部とを混合した後、ガラス繊維10質量部を含浸し、45℃で24時間加温することによって成形材料1を得た。
【0064】
〔実施例2〕
熱硬化性樹脂組成物(A)として、サンドーマPS−600[ディーエイチ・マテリアル株式会社製の不飽和ポリエステル樹脂とスチレンとの混合物、固形分56.5質量%、硬化物のガラス転移温度;−34.7℃]80質量部及びVDP−800[ディーエイチ・マテリアル株式会社製のウレタンアクリレート樹脂とスチレンとの混合物、固形分69.0質量%、硬化物のガラス転移温度;36.3℃]20質量部と、親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂及びスチレンの混合物(固形分64.0質量%)1.3質量部と、n−ブチルメタクリレート10質量部の混合物を使用した。該混合物を硬化して得られる硬化物のガラス転移温度は−27.3℃であった。
【0065】
前記混合物と、BYK−P9080[ビック・ケミージャパン株式会社製の内部離型剤]を1.3質量部、BYK−9076[ビック・ケミージャパン株式会社製の分離防止剤]を0.4質量部、PCN0F309S−W[東京インク株式会社製のシートモールディングコンパウンド用着色剤]を15質量部、カヤカルボンAIC−75 [化薬アクゾ株式会社製硬化剤] 2.2質量部、パラベンゾキノン(PBQ)0.1質量部と混合、撹拌し、BF−013STM[日本軽金属株式会社製のシランカップリング剤によって表面処理の施された水酸化アルミニウム、平均粒子径1μm]50質量部と混合することによってコンパウンドを得た。得られたコンパウンドと、ゼフィアックF−320[ガンツ化成株式会社製のメタクリル酸メチルの重合体粉末の増粘剤]25質量部とを混合した後、ガラス繊維75質量部と含浸し、45℃で24時間加温することによって成形材料2を得た。
【0066】
〔実施例3〕
熱硬化性樹脂組成物(A)として、サンドーマPS−600[ディーエイチ・マテリアル株式会社製の不飽和ポリエステル樹脂とスチレンとの混合物、固形分56.5質量%、硬化物のガラス転移温度;−34.7℃]70質量部及びVDP−800[ディーエイチ・マテリアル株式会社製のウレタンアクリレート樹脂とスチレンとの混合物、固形分69.0質量%、硬化物のガラス転移温度;36.3℃]30質量部と、親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂及びスチレンの混合物(固形分64.0質量%)4質量部と、n−ブチルメタクリレート19質量部の混合物を使用した。該混合物を硬化して得られる硬化物のガラス転移温度は−22.3℃であった。
【0067】
前記混合物と、BYK−P9080[ビック・ケミージャパン株式会社製の内部離型剤]を1.3質量部、BYK−9076[ビック・ケミージャパン株式会社製の分離防止剤]を0.4質量部、PCN0F309S−W[東京インク株式会社製のシートモールディングコンパウンド用着色剤]を15質量部、カヤカルボンAIC−75 [化薬アクゾ株式会社製硬化剤] 1.1質量部、パラベンゾキノン(PBQ)0.05質量部と混合、撹拌し、BF−013STM[日本軽金属株式会社製のシランカップリング剤によって表面処理の施された水酸化アルミニウム、平均粒子径1μm]95質量部と混合することによってコンパウンドを得た。得られたコンパウンドと、ゼフィアックF−320[ガンツ化成株式会社製のメタクリル酸メチルの重合体粉末の増粘剤]38質量部とを混合した後、ガラス繊維60質量部と含浸し、45℃で24時間加温することによって成形材料3を得た。
【0068】
〔実施例4〕
熱硬化性樹脂組成物(A)として、サンドーマPS−600[ディーエイチ・マテリアル株式会社製の不飽和ポリエステル樹脂とスチレンとの混合物、固形分56.5質量%、硬化物のガラス転移温度;−34.7℃]50質量部及びVDP−800[ディーエイチ・マテリアル株式会社製のウレタンアクリレート樹脂とスチレンとの混合物、固形分69.0質量%、硬化物のガラス転移温度;36.3℃]50質量部と、親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂及びスチレンの混合物(固形分64.0質量%)4質量部と、n−ブチルメタクリレート15質量部の混合物を使用した。該混合物を硬化して得られる硬化物のガラス転移温度は−4.2℃であった。
【0069】
前記混合物と、BYK−P9080[ビック・ケミージャパン株式会社製の内部離型剤]を1.3質量部、BYK−9076[ビック・ケミージャパン株式会社製の分離防止剤]を0.4質量部、PCN0F309S−W[東京インク株式会社製のシートモールディングコンパウンド用着色剤]を15質量部、カヤカルボンAIC−75 [化薬アクゾ株式会社製硬化剤] 2.2質量部、パラベンゾキノン(PBQ)0.1質量部と混合、撹拌し、BF−013STM[日本軽金属株式会社製のシランカップリング剤によって表面処理の施された水酸化アルミニウム、平均粒子径1μm]95質量部と混合することによってコンパウンドを得た。得られたコンパウンドと、ゼフィアックF−320[ガンツ化成株式会社製のメタクリル酸メチルの重合体粉末の増粘剤]45質量部とを混合した後、ガラス繊維60質量部と含浸し、45℃で24時間加温することによって成形材料4を得た。
【0070】
〔実施例5〕
熱硬化性樹脂組成物(A)として、サンドーマPS−600[ディーエイチ・マテリアル株式会社製の不飽和ポリエステル樹脂とスチレンとの混合物、固形分56.5質量%、硬化物のガラス転移温度;−34.7℃]30質量部及びVDP−800[ディーエイチ・マテリアル株式会社製のウレタンアクリレート樹脂とスチレンとの混合物、固形分69.0質量%、硬化物のガラス転移温度;36.3℃]70質量部と、親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂及びスチレンの混合物(固形分64.0質量%)6質量部と、n−ブチルメタクリレート22質量部の混合物を使用した。該混合物を硬化して得られる硬化物のガラス転移温度は8.0℃であった。
【0071】
前記混合物と、BYK−P9080[ビック・ケミージャパン株式会社製の内部離型剤]を1.3質量部、BYK−9076[ビック・ケミージャパン株式会社製の分離防止剤]を0.4質量部、PCN0F309S−W[東京インク株式会社製のシートモールディングコンパウンド用着色剤]を15質量部、カヤカルボンAIC−75 [化薬アクゾ株式会社製硬化剤] 1.1質量部、パラベンゾキノン(PBQ)0.05質量部と混合、撹拌し、CW−308B〔住友化学株式会社製のシランカップリング剤によって表面処理の施された水酸化アルミニウム 平均粒子径8μm〕130質量部と混合することによってコンパウンドを得た。得られたコンパウンドと、ゼフィアックF−320[ガンツ化成株式会社製のメタクリル酸メチルの重合体粉末の増粘剤]35質量部とを混合した後、ガラス繊維30質量部と含浸し、45℃で24時間加温することによって成形材料5を得た。
【0072】
〔実施例6〕
熱硬化性樹脂組成物(A)として、サンドーマPS−600[ディーエイチ・マテリアル株式会社製の不飽和ポリエステル樹脂とスチレンとの混合物、固形分56.5質量%、硬化物のガラス転移温度;−34.7℃]20質量部及びVDP−800[ディーエイチ・マテリアル株式会社製のウレタンアクリレート樹脂とスチレンとの混合物、固形分69.0質量%、硬化物のガラス転移温度;36.3℃]80質量部と、親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂及びスチレンの混合物(固形分64.0質量%)10質量部と、n−ブチルメタクリレート25質量部の混合物を使用した。該混合物を硬化して得られる硬化物のガラス転移温度は19.6℃であった。
【0073】
前記混合物と、BYK−P9080[ビック・ケミージャパン株式会社製の内部離型剤]を1.3質量部、BYK−9076[ビック・ケミージャパン株式会社製の分離防止剤]を0.4質量部、PCN0F309S−W[東京インク株式会社製のシートモールディングコンパウンド用着色剤]を15質量部、カヤカルボンAIC−75 [化薬アクゾ株式会社製硬化剤] 1.1質量部、パラベンゾキノン(PBQ)0.05質量部と混合、撹拌し、BF−013STM[日本軽金属株式会社製のシランカップリング剤によって表面処理の施された水酸化アルミニウム、平均粒子径1μm]30質量部と混合することによってコンパウンドを得た。得られたコンパウンドと、ゼフィアックF−320[ガンツ化成株式会社製のメタクリル酸メチルの重合体粉末の増粘剤]60質量部とを混合した後、ガラス繊維90質量部と含浸し、45℃で24時間加温することによって成形材料6を得た。
【0074】
〔比較例1〕
サンドーマPS−281[ディーエイチ・マテリアル株式会社製の不飽和ポリエステル樹脂とスチレンとの混合物、固形分60質量%、硬化物のガラス転移温度110℃]100質量部と、親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂及びスチレンの混合物(固形分64.0質量%)4質量部と、n−ブチルメタクリレート15質量部の混合物を使用した。該混合物を硬化して得られる硬化物のガラス転移温度は105.0℃であった。
【0075】
前記混合物と、BYK−P9080[ビック・ケミージャパン株式会社製の内部離型剤]を1.3質量部、BYK−9076[ビック・ケミージャパン株式会社製の分離防止剤]を0.4質量部、PCN0F309S−W[東京インク株式会社製のシートモールディングコンパウンド用着色剤]を15質量部、カヤカルボンAIC−75 [化薬アクゾ株式会社製硬化剤] 2.0質量部、パラベンゾキノン(PBQ)0.05質量部と混合、撹拌し、BF−013STM[日本軽金属株式会社製のシランカップリング剤によって表面処理の施された水酸化アルミニウム、平均粒子径1μm]100質量部と混合することによってコンパウンドを得た。得られたコンパウンドと、ゼフィアックF−320[ガンツ化成株式会社製のメタクリル酸メチルの重合体粉末の増粘剤]45質量部とを混合した後、ガラス繊維60質量部と含浸し、45℃で24時間加温することによって比較用成形材料1を得た。
【0076】
〔比較例2〕
熱硬化性樹脂組成物(A)として、サンドーマPS−600[ディーエイチ・マテリアル株式会社製の不飽和ポリエステル樹脂とスチレンとの混合物、固形分56.5質量%、硬化物のガラス転移温度;−34.7℃]50質量部及びVDP−800[ディーエイチ・マテリアル株式会社製のウレタンアクリレート樹脂とスチレンとの混合物、固形分69.0質量%、硬化物のガラス転移温度;36.3℃]50質量部と、n−ブチルメタクリレート15質量部の混合物を使用した。該混合物を硬化して得られる硬化物のガラス転移温度は−14.2℃であった。
【0077】
前記混合物と、BYK−P9080[ビック・ケミージャパン株式会社製の内部離型剤]を1.3質量部、BYK−9076[ビック・ケミージャパン株式会社製の分離防止剤]を0.4質量部、PCN0F309S−W[東京インク株式会社製のシートモールディングコンパウンド用着色剤]を15質量部、カヤカルボンAIC−75 [化薬アクゾ株式会社製硬化剤] 2.2質量部、パラベンゾキノン(PBQ)0.05質量部と混合、撹拌し、B−103[日本軽金属株式会社製の、シランカップリング剤によって表面処理の施されていない、未処理の水酸化アルミニウム、平均粒子径8μm]95質量部と混合することによってコンパウンドを得た。得られたコンパウンドと、ゼフィアックF−320[ガンツ化成株式会社製のメタクリル酸メチルの重合体粉末の増粘剤]45質量部とを混合した後、ガラス繊維60質量部と含浸し、45℃で24時間加温することによって比較用成形材料2を得た。
【0078】
〔比較例3〕
熱硬化性樹脂組成物(A)として、サンドーマPS−600[ディーエイチ・マテリアル株式会社製の不飽和ポリエステル樹脂とスチレンとの混合物、固形分56.5質量%、硬化物のガラス転移温度;−34.7℃]50質量部及びVDP−800[ディーエイチ・マテリアル株式会社製のウレタンアクリレート樹脂とスチレンとの混合物、固形分69.0質量%、硬化物のガラス転移温度;36.3℃]50質量部と、親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂及びスチレンの混合物(固形分64.0質量%)4質量部と、n−ブチルメタクリレート15質量部の混合物を使用した。該混合物を硬化して得られる硬化物のガラス転移温度は−4.2℃であった。
【0079】
前記混合物と、BYK−P9080[ビック・ケミージャパン株式会社製の内部離型剤]を1.3質量部、BYK−9076[ビック・ケミージャパン株式会社製の分離防止剤]を0.4質量部、PCN0F309S−W[東京インク株式会社製のシートモールディングコンパウンド用着色剤]を15質量部、カヤカルボンAIC−75 [化薬アクゾ株式会社製硬化剤] 2.2部、パラベンゾキノン(PBQ)0.1質量部と混合、撹拌し、BF−013STM[日本軽金属株式会社製のシランカップリング剤によって表面処理の施された水酸化アルミニウム、平均粒子径1μm]10質量部と混合することによってコンパウンドを得た。得られたコンパウンドと、ゼフィアックF−320[ガンツ化成株式会社製のメタクリル酸メチルの重合体粉末の増粘剤]45質量部とを混合した後、ガラス繊維60質量部と含浸し、45℃で24時間加温することによって比較用成形材料3を得た。
【0080】
〔比較例4〕
熱硬化性樹脂組成物(A)として、サンドーマPS−600[ディーエイチ・マテリアル株式会社製の不飽和ポリエステル樹脂とスチレンとの混合物、固形分56.5質量%、硬化物のガラス転移温度;−34.7℃]50質量部及びVDP−800[ディーエイチ・マテリアル株式会社製のウレタンアクリレート樹脂とスチレンとの混合物、固形分69.0質量%、硬化物のガラス転移温度;36.3℃]50質量部と、親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂及びスチレンの混合物(固形分64.0質量%)4質量部と、n−ブチルメタクリレート15質量部の混合物を使用した。該混合物を硬化して得られる硬化物のガラス転移温度は−4.2℃であった。
【0081】
前記混合物と、BYK−P9080[ビック・ケミージャパン株式会社製の内部離型剤]を1.3質量部、BYK−9076[ビック・ケミージャパン株式会社製の分離防止剤]を0.4質量部、PCN0F309S−W[東京インク株式会社製のシートモールディングコンパウンド用着色剤]を15質量部、カヤカルボンAIC−75 [化薬アクゾ株式会社製硬化剤] 2.2部、パラベンゾキノン(PBQ)0.1質量部と混合、撹拌し、BF−013STM[日本軽金属株式会社製のシランカップリング剤によって表面処理の施された水酸化アルミニウム、平均粒子径1μm]200質量部と混合することによってコンパウンドを得た。得られたコンパウンドと、ゼフィアックF−320[ガンツ化成株式会社製のメタクリル酸メチルの重合体粉末の増粘剤]45質量部とを混合した後、ガラス繊維60質量部と含浸し、45℃で24時間加温することによって比較用成形材料4を得た。
【0082】
〔比較例5〕
熱硬化性樹脂組成物(A)として、サンドーマPS−600[ディーエイチ・マテリアル株式会社製の不飽和ポリエステル樹脂とスチレンとの混合物、固形分56.5質量%、硬化物のガラス転移温度;−34.7℃]50質量部及びVDP−800[ディーエイチ・マテリアル株式会社製のウレタンアクリレート樹脂とスチレンとの混合物、固形分69.0質量%、硬化物のガラス転移温度;36.3℃]50質量部と、親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂及びスチレンの混合物(固形分64.0質量%)4質量部と、n−ブチルメタクリレート15質量部の混合物を使用した。該混合物を硬化して得られる硬化物のガラス転移温度は−4.2℃であった。
【0083】
前記混合物と、BYK−P9080[ビック・ケミージャパン株式会社製の内部離型剤]を1.3質量部、BYK−9076[ビック・ケミージャパン株式会社製の分離防止剤]を0.4質量部、PCN0F309S−W[東京インク株式会社製のシートモールディングコンパウンド用着色剤]を15質量部、カヤカルボンAIC−75 [化薬アクゾ株式会社製硬化剤] 2.2部、パラベンゾキノン(PBQ)0.1質量部と混合、撹拌し、BF−013STM[日本軽金属株式会社製のシランカップリング剤によって表面処理の施された水酸化アルミニウム、平均粒子径1μm]95質量部と混合することによってコンパウンドを得た。得られたコンパウンドと、ゼフィアックF−320[ガンツ化成株式会社製のメタクリル酸メチルの重合体粉末の増粘剤]45質量部とを混合した後、ガラス繊維3質量部と含浸し、45℃で24時間加温することによって比較用成形材料5を得た。
【0084】
〔比較例6〕
熱硬化性樹脂組成物(A)として、サンドーマPS−600[ディーエイチ・マテリアル株式会社製の不飽和ポリエステル樹脂とスチレンとの混合物、固形分56.5質量%、硬化物のガラス転移温度;−34.7℃]50質量部及びVDP−800[ディーエイチ・マテリアル株式会社製のウレタンアクリレート樹脂とスチレンとの混合物、固形分69.0質量%、硬化物のガラス転移温度;36.3℃]50質量部と、親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂及びスチレンの混合物(固形分64.0質量%)4質量部と、n−ブチルメタクリレート15質量部の混合物を使用した。該混合物を硬化して得られる硬化物のガラス転移温度は−4.2℃であった。
【0085】
前記混合物と、BYK−P9080[ビック・ケミージャパン株式会社製の内部離型剤]を1.3質量部、BYK−9076[ビック・ケミージャパン株式会社製の分離防止剤]を0.4質量部、PCN0F309S−W[東京インク株式会社製のシートモールディングコンパウンド用着色剤]を15質量部、カヤカルボンAIC−75 [化薬アクゾ株式会社製硬化剤] 2.2部、パラベンゾキノン(PBQ)0.1質量部と混合、撹拌し、BF−013STM[日本軽金属株式会社製のシランカップリング剤によって表面処理の施された水酸化アルミニウム、平均粒子径1μm]95質量部と混合することによってコンパウンドを得た。得られたコンパウンドと、ゼフィアックF−320[ガンツ化成株式会社製のメタクリル酸メチルの重合体粉末の増粘剤]45質量部とを混合した後、ガラス繊維120質量部と含浸し、45℃で24時間加温することによって比較用成形材料6を得た。
【0086】
〔比較例7〕
熱硬化性樹脂組成物(A)として、サンドーマPS−600[ディーエイチ・マテリアル株式会社製の不飽和ポリエステル樹脂とスチレンとの混合物、固形分56.5質量%、硬化物のガラス転移温度;−34.7℃]50質量部及びVDP−800[ディーエイチ・マテリアル株式会社製のウレタンアクリレート樹脂とスチレンとの混合物、固形分69.0質量%、硬化物のガラス転移温度;36.3℃]50質量部と、親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂及びスチレンの混合物(固形分64.0質量%)4質量部と、n−ブチルメタクリレート15質量部の混合物を使用した。該混合物を硬化して得られる硬化物のガラス転移温度は−4.2℃であった。
【0087】
前記混合物と、BYK−P9080[ビック・ケミージャパン株式会社製の内部離型剤]を1.3質量部、BYK−9076[ビック・ケミージャパン株式会社製の分離防止剤]を0.4質量部、PCN0F309S−W[東京インク株式会社製のシートモールディングコンパウンド用着色剤]を15質量部、カヤカルボンAIC−75 [化薬アクゾ株式会社製硬化剤] 2.2部、パラベンゾキノン(PBQ)0.1質量部と混合、撹拌し、BF−013STM[日本軽金属株式会社製のシランカップリング剤によって表面処理の施された水酸化アルミニウム、平均粒子径1μm]95質量部と混合することによってコンパウンドを得た。得られたコンパウンドと、ゼフィアックF−320[ガンツ化成株式会社製のメタクリル酸メチルの重合体粉末の増粘剤]10質量部とを混合した後、ガラス繊維60質量部と含浸し、45℃で24時間加温することによって比較用成形材料7を得た。
【0088】
〔比較例8〕
熱硬化性樹脂組成物(A)として、サンドーマPS−600[ディーエイチ・マテリアル株式会社製の不飽和ポリエステル樹脂とスチレンとの混合物、固形分56.5質量%、硬化物のガラス転移温度;−34.7℃]50質量部及びVDP−800[ディーエイチ・マテリアル株式会社製のウレタンアクリレート樹脂とスチレンとの混合物、固形分69.0質量%、硬化物のガラス転移温度;36.3℃]50質量部と、親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂及びスチレンの混合物(固形分64.0質量%)4質量部と、n−ブチルメタクリレート15質量部の混合物を使用した。該混合物を硬化して得られる硬化物のガラス転移温度は−4.2℃であった。
【0089】
前記混合物と、BYK−P9080[ビック・ケミージャパン株式会社製の内部離型剤]を1.3質量部、BYK−9076[ビック・ケミージャパン株式会社製の分離防止剤]を0.4質量部、PCN0F309S−W[東京インク株式会社製のシートモールディングコンパウンド用着色剤]を15質量部、カヤカルボンAIC−75 [化薬アクゾ株式会社製硬化剤] 2.2部、パラベンゾキノン(PBQ)0.1質量部と混合、撹拌し、BF−013STM[日本軽金属株式会社製のシランカップリング剤によって表面処理の施された水酸化アルミニウム、平均粒子径1μm]95質量部と混合することによってコンパウンドを得た。得られたコンパウンドと、ゼフィアックF−320[ガンツ化成株式会社製のメタクリル酸メチルの重合体粉末の増粘剤]90質量部とを混合した後、ガラス繊維60質量部と含浸し、45℃で24時間加温することによって比較用成形材料8を得た。
【0090】
〔比較例9〕
熱硬化性樹脂組成物(A)として、サンドーマPS−600[ディーエイチ・マテリアル株式会社製の不飽和ポリエステル樹脂とスチレンとの混合物、固形分56.5質量%、硬化物のガラス転移温度;−34.7℃]50質量部及びVDP−800[ディーエイチ・マテリアル株式会社製のウレタンアクリレート樹脂とスチレンとの混合物、固形分69.0質量%、硬化物のガラス転移温度;36.3℃]50質量部と、親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂及びスチレンの混合物(固形分64.0質量%)4質量部と、n−ブチルメタクリレート15質量部の混合物を使用した。該混合物を硬化して得られる硬化物のガラス転移温度は−4.2℃であった。
【0091】
前記混合物と、BYK−P9080[ビック・ケミージャパン株式会社製の内部離型剤]を1.3質量部、BYK−9076[ビック・ケミージャパン株式会社製の分離防止剤]を0.4質量部、PCN0F309S−W[東京インク株式会社製のシートモールディングコンパウンド用着色剤]を15質量部、カヤカルボンAIC−75 [化薬アクゾ株式会社製硬化剤] 2.2質量部、パラベンゾキノン(PBQ)0.1質量部と混合、撹拌し、BF−013STM[日本軽金属株式会社製のシランカップリング剤によって表面処理の施された水酸化アルミニウム、平均粒子径1μm]95質量部と混合することによってコンパウンドを得た。得られたコンパウンドと、酸化マグネシウム3質量部とを混合した後、ガラス繊維60質量部と含浸し、45℃で24時間加温することによって比較用成形材料9を得た。
【0092】
〔硬化物の製造法〕
前記実施例及び比較例で得た成形材料を寸法縦300mm×横300mmの金型を使用し、金型温度上型150℃、下型140℃、圧力100トン、硬化時間6分でプレス方法し硬化させることで、縦300mm×横300mm×厚み2mmの平板形状の硬化物を得た。
【0093】
〔成形性の評価方法〕
前記方法では平板形状の硬化物を製造することができなかったもの、または、硬化物を製造することはできたものの著しい外観不良の生じたものは「×」と評価した。一方、前記方法によって、縦300mm×横300mm×厚み2mmの平板形状の硬化物を製造できたものを「○」と評価した。
【0094】
〔ハンドリング性の評価方法〕
前記実施例及び比較例で得た成形材料を45℃の条件で24時間加温した後に、表面のべたつき等が著しく取り扱いが難しかったものを「×」、固体形状を維持でき、表面のベタツキ等が殆どなかったものを「○」とした。
【0095】
〔柔軟性(引張り弾性率)の評価方法〕
上記プレス成形法で得られた硬化物を、JIS K 6911に基づき引張試験片を作成し、株式会社島津製作所製オートグラフ AG−I 20KNをもちいて、速度1mm/分で測定をおこない引張り弾性率を求めた。
なお、成形性が不十分であるため硬化物を形成することができなかった場合は、評価を行わず、表中には「−」を記した。
【0096】
〔柔軟性(屈曲性)の評価方法〕
前記方法で得た縦300mm×横300mm×厚み2mmの平板形状の硬化物に、手によって力を加え、屈曲した。前記平板形状の硬化物が90°となるまで屈曲できたものを「○」と評価し、90°となる前にひび割れや完全に割れたもの、または手の力では前記硬化物を90°となるまで屈曲できなかったものを「×」と評価した。なお、成形性が不十分であるため硬化物を形成することができなかった場合は、評価を行わず、表中には「−」を記した。
【0097】
〔耐熱水性の評価方法〕
前記で得た硬化物を80℃の熱水中に300時間浸漬した。浸漬後、硬化物の表面に膨れの発生の有無を目視で観察した。
硬化物の表面に膨れが発生したものを×、膨れが見られず浸漬前と外観上変わりがないものを○と評価した。
なお、成形性が不十分であるため硬化物を形成することができなかった場合は、評価を行わず、表中には「−」を記した。
【0098】
〔乾燥性の評価方法〕
前記で得た硬化物を水平面に対して15°傾けた状態で固定した。前記硬化物の表面に、1リットルの水をかけた後、該硬化物の表面に水滴が付着していなかったものを○、水滴が付着した状態で残っていたものを×と評価した。
なお、成形性が不十分であるため硬化物を形成することができなかった場合は、評価を行わず、表中には「−」を記した。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂(a1)及び重合性不飽和単量体(a2)からなる−40℃〜40℃のガラス転移温度を有する硬化物を形成可能な熱硬化性樹脂組成物(A)と、シランカップリング剤によって表面処理の施された充填材(B)と、強化繊維(C)と、アクリル樹脂粉末を含む増粘剤(D)とを含有する成形材料であって、前記充填材(B)が前記熱硬化性樹脂組成物(A)の全量に対して15質量%〜160質量%含まれ、前記強化繊維(C)が前記熱硬化性樹脂組成物(A)の全量に対して5質量%〜90質量%含まれ、かつ、前記増粘剤(D)が前記熱硬化性樹脂組成物(A)の全量に対して10質量%〜60質量%含まれるものであることを特徴とする成形材料。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂(a1)が、不飽和ポリエステル樹脂及びウレタンアクリレート樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含むものである、請求項1に記載の成形材料。
【請求項3】
前記充填材(B)が、水酸化アルミニウム及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる1種以上をシランカップリング剤によって表面処理したものである、請求項1に記載の成形材料。
【請求項4】
前記強化繊維(C)がガラス繊維である、請求項1に記載の成形材料。
【請求項5】
前記増粘剤(D)が、メタクリル酸メチルを重合して得られるアクリル樹脂粉末である、請求項1に記載の成形材料。
【請求項6】
前記重合性不飽和単量体(a2)が(メタ)アクリル単量体またはスチレンである、請求項1に記載の成形材料。
【請求項7】
前記重合性不飽和単量体(a2)の含有量が、前記成形材料の全量に対して6〜25質量%である、請求項6に記載の成形材料。
【請求項8】
更に、親水化剤を含有する成形材料であって、前記親水化剤が親水性能を有する不飽和ポリエステル樹脂(E)を含有するものである、請求項1に記載の成形材料。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の成形材料を成形して得られる成形品。
【請求項10】
請求項9記載の成形品からなる床材。
【請求項11】
引張り弾性率が1000〜5000MPaの範囲である、請求項9記載の成形品。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の成形材料を、100〜160℃の範囲でプレス成形法によって成形する成形品の製造方法。

【公開番号】特開2012−97221(P2012−97221A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247438(P2010−247438)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(596005920)DIC化工株式会社 (14)
【Fターム(参考)】