説明

成形機の射出装置

【課題】シリンダ装置と他の駆動装置とによって好適に射出を行うことができる成形機の射出装置を提供する。
【解決手段】制御装置15は、低速射出においては、ピストンロッド25に固定された継手27に対して出力部材71が前進方向へ当接した状態で、駆動装置11の駆動力のみによりプランジャ5を駆動し、高速射出においては、着脱部13による連結が解除された状態で、シリンダ装置7の駆動力のみによりプランジャ5を駆動し、また、ピストンロッド25を被駆動部に対して相対的に前進させ、プランジャ後退においては、着脱部13による連結がなされた状態で、駆動装置11の駆動力によりプランジャ5を後退させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機の射出装置に関する。成形機は、例えば、ダイカストマシンや射出成形機である。
【背景技術】
【0002】
成形材料を押し出すプランジャを液圧機器と他の駆動機器(例えば電動機)との組み合わせにより駆動する、いわゆるハイブリッド式の射出装置が知られている(例えば特許文献1)。また、シリンダ装置と、電動機により駆動されるボールねじ機構とを並列に配置して互いに接続したハイブリッド式の駆動機構が知られている(例えば特許文献2)。特許文献3では、ハイブリッド式の射出装置において、シリンダ装置とボールねじ機構とを並列に配置して互いに接続した駆動機構を用いている。そして、射出はボールねじ機構の駆動力により行われ、増圧・保圧はシリンダ装置により行われる。なお、増圧・保圧においては、ボールねじ機構の制御トルクがシリンダ装置の反力とならないようにボールねじ機構のトルク制御がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−84654号公報
【特許文献2】特開平07−137105号公報
【特許文献3】特開2006−887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献3に開示されている技術では種々の不都合が生じる。例えば、射出速度は、ボールねじ機構の限界速度により制限される。
【0005】
本発明の目的は、シリンダ装置と他の駆動装置とによって好適に射出を行うことができる成形機の射出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る成形機の射出装置は、キャビティに成形材料を押し出すプランジャと、前記プランジャと連結されたピストンロッドを有するシリンダ装置と、被駆動部を有し、当該被駆動部を前記ピストンロッドと平行な方向において駆動可能な駆動装置と、前記ピストンロッドと前記被駆動部との、少なくとも前記ピストンロッドの前記被駆動部に対する相対的な前進を規制する連結及び当該連結の解除が可能な着脱部と、前記シリンダ装置及び前記駆動装置を制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、低速射出においては、前記着脱部による前記ピストンロッドの前記被駆動部に対する相対的な後退の規制、及び、前記ピストンロッドに固定された部材に対する前記被駆動部の前進方向への当接の少なくとも一方がなされた状態で、前記駆動装置の駆動力及び前記シリンダ装置の駆動力のうち前記駆動装置の駆動力のみにより前記プランジャを駆動し、高速射出においては、前記着脱部による連結が解除された状態で、前記駆動装置の駆動力及び前記シリンダ装置の駆動力のうち前記シリンダ装置の駆動力のみにより前記プランジャを駆動し、また、前記ピストンロッドを前記被駆動部に対して相対的に前進させ、プランジャ後退においては、前記着脱部による連結がなされた状態で、前記駆動装置の駆動力により前記プランジャを後退させるように、前記シリンダ装置及び前記駆動装置を制御する。
【0007】
好適には、前記制御装置は、プランジャ後退において、前記駆動装置の駆動力及び前記シリンダ装置の駆動力のうち前記駆動装置の駆動力のみにより前記プランジャを後退させるように、前記シリンダ装置及び前記駆動装置を制御する。
【0008】
好適には、前記制御装置は、増圧の少なくとも開始時においては、前記着脱部による連結が解除された状態で、前記駆動装置の駆動力及び前記シリンダ装置の駆動力のうち前記シリンダ装置の駆動力のみにより前記プランジャを駆動し、増圧開始後から保圧終了までの間に、前記被駆動部が、前記着脱部によって前記ピストンロッドと連結可能な位置に到達するように、前記シリンダ装置及び前記駆動装置を制御する。
【0009】
好適には、前記制御装置は、製品押出追従において、前記駆動装置により前記プランジャを駆動し、その負荷が所定の設定値以上となる場合は、前記シリンダ装置を併用して前記プランジャを駆動し、前記設定値未満となる場合は、前記シリンダ装置を併用せずに前記プランジャを駆動するように前記シリンダ装置及び前記駆動装置を制御する。
【0010】
好適には、前記射出装置は、作動液を送出可能なポンプと、前記ポンプを駆動するポンプ用電動機と、前記シリンダ装置に作動液を供給可能なアキュムレータと、を更に有し、前記ポンプは、前記シリンダ装置及び前記アキュムレータのうち前記アキュムレータに対してのみ作動液を送出する。
【0011】
好適には、前記ポンプは、1周期の吐出量が不可変の定容量ポンプであり、前記ポンプ用電動機は、オープンループ制御される定速電動機である。
【0012】
好適には、前記射出装置は、作動液を冷却する空冷式のクーラを更に有する。
【0013】
好適には、前記駆動装置は、前記被駆動部から後退方向に前記ピストンロッドに平行に延びるガイドバーと、前記ガイドバーをその軸方向へ移動可能に案内するガイド部と、を有する。
【0014】
好適には、前記駆動装置は、回転式の射出用電動機と、前記射出用電動機の回転を並進運動に変換して前記被駆動部に伝達する伝達機構と、を有する。
【0015】
好適には、前記着脱部は、フックの係合部材への係合及び係合解除により前記ピストンロッドと前記被駆動部との連結及び当該連結の解除を行う。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シリンダ装置と他の駆動装置とによって好適に射出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るダイカストマシンの射出装置の要部の構成を示す模式図。
【図2】図1の射出装置の駆動装置の詳細を示す図。
【図3】図1の射出装置の動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係るダイカストマシンDC1の射出装置1の要部の構成を示す図である。
【0019】
射出装置1は、不図示の型締装置に保持された固定金型101及び移動金型103により形成されたキャビティ105に溶湯(溶融状態の金属材料)を射出・充填する装置である。
【0020】
射出装置1は、キャビティ105に連通するスリーブ3と、スリーブ3内において溶湯をキャビティ105へ押し出すプランジャ5と、プランジャ5を駆動するシリンダ装置7と、シリンダ装置7を作動液(例えば油)の供給により駆動するための液圧装置9と、プランジャ5を駆動する駆動装置11と、シリンダ装置7と駆動装置11との連結及びその解除を行う着脱部13と、これら各装置を制御する制御装置15を有している。
【0021】
以下、概ね上記の列挙順に詳細を説明する。
【0022】
スリーブ3は、例えば、固定金型101に挿通されるように設けられている。プランジャ5は、スリーブ3を摺動するプランジャチップ5aと、プランジャチップ5aに固定されたプランジャロッド5bとを有している。
【0023】
スリーブ3に形成された給湯口3aから溶湯がスリーブ3内に供給された状態で、プランジャチップ5aがスリーブ3内をキャビティ105に向かって摺動する(前進する)ことにより、溶湯はキャビティ105に射出、充填される。
【0024】
(液圧式駆動系の構成:シリンダ装置7、液圧装置9等)
シリンダ装置7は、例えば、単動式のシリンダ装置により構成されており、シリンダチューブ21と、シリンダチューブ21の内部を摺動可能なピストン23と、ピストン23に固定され、シリンダチューブ21から延び出るピストンロッド25とを有している。
【0025】
シリンダチューブ21は、例えば、内部の断面形状が円形の筒状体である。シリンダチューブ21の内部は、ピストン23により、ピストンロッド25が延び出る側のロッド側室21rと、その反対側のヘッド側室21hとに区画されている。ヘッド側室21hに作動液が供給されることにより、ピストン23は前進(プランジャ5側へ移動)可能である。
【0026】
シリンダ装置7は、プランジャ5に対して同軸に配置され、ピストンロッド25は、プランジャ5に継手27を介して連結され、シリンダチューブ21は、不図示の型締装置などに対して固定的に設けられている。従って、ピストン23のシリンダチューブ21に対する前進移動により、プランジャ5はスリーブ3内を前進する。
【0027】
なお、プランジャ5及びピストンロッド25は同軸に連結されているから、「プランジャ5に平行」と「ピストンロッド25に平行」とを特に区別せずに言及することがあり、また、「プランジャ5に連結」と「ピストンロッド25に連結」とを特に区別せずに言及することがあるものとする。
【0028】
液圧装置9は、作動液を貯留するタンク29と、タンク29の作動液を送出するポンプ31と、ポンプ31を駆動するポンプ用電動機33と、シリンダ装置7に作動液を供給するアキュムレータ35と、作動液を冷却するクーラ39とを有している。
【0029】
タンク29は、例えば、開放タンクであり、大気圧下で作動液を保持している。タンク29は、シリンダ装置7から排出される作動液を受け入れ、また、ポンプ31を介してアキュムレータ35に作動液を供給する。
【0030】
ポンプ31は、歯車ポンプやベーンポンプ等のロータの回転により作動液を吐出するロータリポンプであってもよいし、アキシャル型のプランジャポンプやラジアル式のプランジャポンプ等のピストンの往復により作動液を吐出するプランジャポンプであってもよい。
【0031】
ポンプ31は、例えば、ロータやピストンの1周期の運動における吐出量が固定された定容量ポンプによって構成されている。ただし、ポンプ31は、吐出量が可変とされた可変容量ポンプとされることも可能である。また、ポンプ31は、1方向に作動液を吐出できれば十分であるが、双方向(2方向)ポンプと構造が同一であってもよい。
【0032】
ポンプ用電動機33は、例えば、定速電動機として機能するように設けられている。すなわち、ポンプ用電動機33は、サーボ機構におけるサーボモータとしては設けられておらず、オープンループにおいて設けられている。ポンプ用電動機33は、好適には、三相誘導電動機によって構成されており、供給された交流電力の周波数に応じた回転数で回転する。ただし、ポンプ用電動機33は、サーボモータとして設けられてもよいし、同期電動機若しくは直流電動機により構成されてもよい。
【0033】
なお、後述する動作の説明において、ポンプ用電動機33が停止しているとき、ポンプ用電動機33は、トルクフリーの状態とされてもよいし、(サーボモータの場合は)一定位置に停止するように制御されてもよいし、ブレーキを含んで構成され、ブレーキが使用されてもよい。射出装置の具体的な構成及びポンプ用電動機33が停止される状況に応じて適切な停止方法が選択されてよい。
【0034】
アキュムレータ35は、重量式、ばね式、気体圧式(空気圧式含む)、シリンダ式、プラダ式などの適宜な形式のアキュムレータにより構成されてよい。例えば、アキュムレータ35は、気体圧式、シリンダ式又はプラダ式のアキュムレータであり、アキュムレータ35内に保持されている気体(例えば空気若しくは窒素)が圧縮されることにより蓄圧され、その蓄圧された圧力により作動液を供給する。
【0035】
クーラ39は、例えば、空冷式のクーラによって構成されており、作動液が循環する、大気に晒された管路を有している。クーラ39は、例えば、ポンプ用電動機33のロータの回転によって生じる、若しくは、当該ロータに固定されたファンの回転によって生じる気流に晒されている。
【0036】
なお、後述するように、本実施形態においては、タンク29の小型化、並びに、ポンプ31及びポンプ用電動機33の小容量化が図られることから、タンク29、ポンプ31及びポンプ用電動機33は、市販のユニット化されたものによって構成されることが可能である。また、この場合において、クーラ39もユニットに含まれていてよい。
【0037】
液圧装置9は、シリンダ装置7、タンク29、ポンプ31及びアキュムレータ35を互いに接続する複数の流路、及び、当該複数の流路における作動液の流れを制御する複数の弁を有している。複数の流路は、例えば、鋼管、可撓性のホース又は金属ブロックにより構成されている。液圧装置9は、具体的には、例えば、以下に述べる流路及び弁を有している。
【0038】
液圧装置9は、アキュムレータ35とヘッド側室21hとを接続する第1流路41と、ロッド側室21rとタンク29とを接続する第2流路43と、ロッド側室21rとヘッド側室21hとを接続する第3流路45とを有している。なお、第1流路41及び第3流路45は、ヘッド側室21h側の一部が互いに共用され、第2流路43及び第3流路45は、ロッド側室21r側の一部が互いに共用されている。ただし、これらは共用されていなくてもよい。
【0039】
射出装置1は、アキュムレータ35から第1流路41を介してヘッド側室21hへ作動液を供給してピストン23を前進させることが可能である。また、射出装置1は、ピストン23の前進に伴ってロッド側室21rから押し出される作動液を第2流路43を介してタンク29に排出することが可能である。換言すれば、射出装置1は、ロッド側室21rの圧抜きが可能である。また、射出装置1は、ピストン23の前進に伴ってロッド側室21rから押し出される作動液を第3流路45を介してヘッド側室21hに還流させることも可能である。すなわち、第3流路45はランアラウンド回路を構成している。
【0040】
液圧装置9は、ポンプ31の吐出口とアキュムレータ35とを接続する第4流路47を有している。なお、第4流路47のアキュムレータ35側の一部は第1流路41のアキュムレータ35側の一部と共用されている。ただし、これらは共用されていなくてもよい。射出装置1は、ポンプ31から第4流路47を介してアキュムレータ35に作動液を供給することにより、アキュムレータ35を蓄圧することが可能である。
【0041】
液圧装置9は、第2流路43及び第3流路45のロッド側室21r側の共用部分に設けられたサーボバルブ51を有している。サーボバルブ51は、入力された電圧に応じた開口度で開くことにより、流量を無段階で調整可能である。また、サーボバルブ51は、開口度に応じた信号を出力可能であり、その信号に基づいてフィードバック制御がなされることによりサーボ機構を構成する。サーボバルブ51は、例えば、圧力補償付の流量制御弁により構成されている。サーボバルブ51は、ロッド側室21rから排出される作動液の流量を制御してシリンダ装置7の動作(速度)を制御可能であり、いわゆるメータアウト回路を構成している。
【0042】
液圧装置9は、第1逆止弁VLA〜第4逆止弁VLDを有している。これらの少なくとも一つは、パイロット圧力が導入されて制御されるものである。パイロット圧力としては、例えば、不図示の液圧回路を介してアキュムレータ35の圧力が利用される。第1逆止弁VLA〜第4逆止弁VLDの配置及び機能は、具体的には以下のとおりである。
【0043】
第1逆止弁VLAは、第1流路41に設けられている。第1逆止弁VLAは、パイロット圧力が導入されていないときは、アキュムレータ35側からヘッド側室21h側への作動液の流れを禁止し、その反対方向の流れを許容する。また、第1逆止弁VLAは、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを許容する(開かれる)。
【0044】
第2逆止弁VLBは、第2流路43に設けられている。第2逆止弁VLBは、パイロット圧力が導入されていないときは、ロッド側室21r側からタンク29側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、第2逆止弁VLBは、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを禁止する(閉じられる)。
【0045】
第3逆止弁VLCは、第3流路45に設けられている。第3逆止弁VLCは、パイロット圧力が導入されていないときは、ロッド側室21r側からヘッド側室21h側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、第3逆止弁VLCは、閉じるパイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを禁止し(閉じられ)、開くパイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを許容する(開かれる)。
【0046】
第4逆止弁VLDは、第4流路47に設けられている。第4逆止弁VLDは、ポンプ31側からアキュムレータ35側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。
【0047】
上記の他、液圧装置9は、ポンプ31の作動液を中子用のシリンダ装置等の適宜な装置に送出するための流路及び制御弁を有していてもよい。
【0048】
(電動式駆動系の構成:駆動装置11、着脱部13等)
図2は、駆動装置11及び着脱部13の詳細を示す、一部に断面図を含む模式的な側面図である。なお、図2の紙面左側はプランジャの前進方向である。
【0049】
駆動装置11は、射出用電動機53と、射出用電動機53の駆動力をプランジャ5(ピストンロッド25)に伝達する伝達機構55と、伝達機構55等の傾きを抑制して動作を好適化するための案内機構57とを有している。また、駆動装置11は、伝達機構55、案内機構57、ピストンロッド25(厳密には継手27)及び着脱部13の間に介在する出力部材71を有し、伝達機構55の駆動力は、出力部材71を介してピストンロッド25に伝達される。
【0050】
射出用電動機53は、例えば、回転式の電動機であり、特に図示しないが、界磁及び電機子の一方を構成するステータと、界磁及び電機子の他方を構成し、ステータに対して回転可能なロータとを有している。なお、射出用電動機53は、直流モータでも交流モータでもよいし、誘導モータでも同期モータでもよい。射出用電動機53は、シリンダ装置7に対して並列に配置されている。すなわち、ロータの回転軸や出力軸53aはピストンロッド25に対して平行である。
【0051】
射出用電動機53は、例えば、サーボモータとして構成されており、射出用電動機53の回転を検出するエンコーダ59と、射出用電動機53に電力を供給するサーボドライバ61と共にサーボ機構を構成している。
【0052】
射出用電動機53は、ブレーキ付きの電動機であることが好ましい。例えば、特に図示しないが、射出用電動機53は、ロータと共にステータに対して回転するディスクと、ステータに対して回転不可能なディスクと、これら2枚のディスクを当接させるばね力を生じるばねと、ばね力に抗して2枚のディスクを離間させることが可能なアーマチュアとを有している。
【0053】
なお、後述する動作の説明において、射出用電動機53が停止しているとき、射出装置の具体的な構成及び射出用電動機53が停止される状況に応じて適切な停止方法が選択されてよいことは、ポンプ用電動機33と同様である。
【0054】
サーボドライバ61は、指示された位置制御及び/又は速度制御がなされるように射出用電動機53に電力を供給する。例えば、射出用電動機53が交流モータであれば、サーボドライバ61は、指示された速度に応じた周波数の電力を射出用電動機53に供給する。また、サーボドライバ61は、射出用電動機53の負荷(直接には例えば射出用電動機53に流れる電流)を検出し、出力することが可能である。
【0055】
伝達機構55は、射出用電動機53の回転を並進運動に変換してプランジャ5に伝達する。伝達機構55は、例えば、ねじ機構により構成され、射出用電動機53により回転駆動されるねじ軸63と、ねじ軸63に螺合されたナット65とを有している。
【0056】
ねじ軸63は、例えば、ピストンロッド25に平行に、射出用電動機53に対して同軸に配置され、射出用電動機53の出力軸53aとカップリングを介して連結されている。換言すれば、伝達機構55は、ピストンロッド25に対して並列に配置されている。また、ねじ軸63は、シリンダチューブ21等に対して回転可能に且つ軸方向に移動不可能に支持されている。ナット65は、後述するように案内機構57によりねじ軸63回りの回転が規制されている。
【0057】
そして、ねじ軸63が射出用電動機53により回転駆動されると、ねじ軸63に螺合したナット65は、ねじ軸63の軸方向に移動する。すなわち、ナット65は、ピストンロッド25に対して平行に駆動される。
【0058】
案内機構57は、ピストンロッド25に平行に配置されたガイドバー67と、ガイドバー67をその軸方向に案内するガイド部69とを有している。ガイドバー67は、例えば、断面円形の軸状部材であり、ガイド部69は、ガイドバー67が軸方向に摺動可能に挿入される孔部を有する部材である。
【0059】
ガイド部69は、特に図示しないが、シリンダ装置7のシリンダチューブ21を支持する部材に固定されることなどによりシリンダチューブ21に対して固定されている。ガイドバー67は、ガイド部69に挿入されることにより、シリンダチューブ21に対する、軸に直交する方向の移動及び軸の傾斜が規制されるとともに、軸方向への移動が許容されている。
【0060】
なお、ガイド部69は、ガイドバー67に対する摺動抵抗を低減しつつガイドバー67の傾斜を好適に抑制できるように、2以上の孔部がガイドバー67の軸方向において離間して設けられていることが好ましい。
【0061】
出力部材71は、例えば、ナット65とガイドバー67とを連結する連結部材72と、連結部材72とピストンロッド25(厳密には継手27)との間に介在する当接部材73とを有している。
【0062】
連結部材72は、例えば、ナット65の周囲を囲み、ナット65に固定された部分と、当該部分からナット65の径方向に延び出てガイドバー67の一端に固定された部分とを有している。ガイドバー67は、連結部材72からプランジャ5の後退方向(シリンダ装置7側)へ延びている。
【0063】
連結部材72によりナット65とガイドバー67とが連結されることにより、ナット65は、ねじ軸63に対する傾斜が規制されるとともに、ねじ軸63回りの回転が規制される。なお、このように案内機構57及び出力部材71は、ナット65の移動の規制に寄与するから、伝達機構55の一部と捉えられてもよい。
【0064】
当接部材73は、連結部材72(ナット65)に固定されているとともに、継手27に対してプランジャ5の前進方向へ当接可能となっている。例えば、当接部材73は、ピストンロッド25を囲む形状(好ましくは円環状)に構成されており、継手27のピストンロッド25側の端面に対して全周に亘って当接可能である。当接部材73は、連結部材72が直接に継手27に当接するよりも出力部材71と継手27との密着性が向上するように、連結部材72よりも継手27との反発係数が低い材料により構成されることが好ましい。
【0065】
射出用電動機53によって出力部材71が前進すると、当接部材73が継手27に対して当接する。従って、射出用電動機53によってプランジャ5を前進させることができる。また、ピストンロッド25を比較的高速に移動させることなどにより、プランジャ5を出力部材71に対して相対的に前進させることが可能である。当接部材73は、継手27に対して全周に亘って当接していることから、継手27を傾斜させるようなモーメントが生じることが抑制される。
【0066】
なお、案内機構57は、伝達機構55に対してシリンダ装置7とは反対側に位置することが好ましい。この場合、案内機構57が伝達機構55とシリンダ装置7との間に位置する場合等に比較して、ナット65をピストンロッド25(継手27及び当接部材73)に近づけてナット65とピストンロッド25との間で生じるナット65を傾斜させるモーメントを小さくすることができるとともに、ナット65に対するガイドバー67の距離を適宜に設定してナット65の傾斜を適宜に抑制できる。
【0067】
着脱部13は、例えば、フック74と、フック74を駆動するアクチュエータ75とを有している。
【0068】
フック74は、例えば、概ねL字状に形成されるとともに、一端が連結部材72によって回転可能に支持されている。そして、フック74は、継手27に形成された被係合部27aに対してプランジャ5の後退方向に係合可能な位置(「ON」の位置)と、当該係合が解除される位置(「OFF」の位置)との間で移動可能である。
【0069】
フック74がOFF(係合解除)されることにより、プランジャ5を出力部材71に対して相対的に前進させることが可能である。また、フック74がON(係合)されることにより、射出用電動機53によってプランジャ5を後退させることができる。
【0070】
アクチュエータ75は、例えば、往復動(別の観点では伸縮)を行うアクチュエータにより構成されている。アクチュエータ75は、例えば、リニアモータ、空圧シリンダ若しくは液圧シリンダである。アクチュエータ75は、一端側(例えば本体)が連結部材72に支持されるとともに、他端側(例えば可動部)がフック74に連結されている。そして、アクチュエータ75の往復動によって、フック74はON若しくはOFFされる。
【0071】
(制御系)
図1に戻って、制御装置15は、例えば、CPU77、ROMやRAM等のメモリ79、入力回路81、及び、出力回路83を含んで構成されている。CPU77は、メモリ79に記憶されたプログラムを実行し、入力回路81を介して入力される入力信号に基づいて、各部を制御するための制御信号を出力回路83を介して出力する。
【0072】
入力回路81に信号を入力するのは、例えば、ユーザの入力操作を受け付ける入力装置85、エンコーダ59(図2)、サーボドライバ61(図2)、ピストンロッド25の位置を検出する第1位置センサ89、ガイドバー67の位置を検出する第2位置センサ91(図2)、サーボバルブ51、ヘッド側室21hの圧力を検出するヘッド圧力センサ93、ロッド側室21rの圧力を検出するロッド圧力センサ95、及び、アキュムレータ35の圧力を検出するアキュムレータ圧力センサ97である。
【0073】
出力回路83が信号を出力するのは、例えば、ユーザに情報を表示する表示器87、サーボドライバ61、サーボバルブ51、及び、各種の弁へのパイロット圧力の導入を制御する不図示の液圧回路である。
【0074】
第1位置センサ89は、シリンダチューブ21に対するピストンロッド25の位置を検出するものであり、プランジャ5の位置を間接的に検出するものである。第1位置センサ89は、例えば、ピストンロッド25に固定され若しくは形成され、ピストンロッド25の軸方向に延びる不図示のスケール部とともにリニアエンコーダを構成している。なお、第1位置センサ89、又は、制御装置15は、検出した位置を微分することにより、速度を検出することが可能である。
【0075】
第2位置センサ91は、ガイド部69に対するガイドバー67の位置を検出するものであり、駆動装置11の被駆動部(ナット65や出力部材71)の位置を間接的に検出するものである。第2位置センサ91は、例えば、ガイドバー67に固定され若しくは形成され、ガイドバー67の軸方向に延びる不図示のスケール部とともにリニアエンコーダを構成している。なお、第2位置センサ91、又は、制御装置15は、検出した位置を微分することにより、速度を検出することが可能である。
【0076】
ヘッド圧力センサ93及びロッド圧力センサ95は、ヘッド側室21h及びロッド側室21rの圧力を検出することにより、プランジャ5が溶湯に加える圧力を間接的に検出するものである。また、アキュムレータ圧力センサ97は、アキュムレータ35の充填完了などの判定に利用される。
【0077】
(射出装置の動作)
図3は、射出装置1の動作を説明する図である。図3において、横軸は時間を示している。また、実線Lvは射出速度の変化を示し、実線Lpは射出圧力の変化を示している。実線Lv及びLpが描かれたグラフにおいて、縦軸は射出速度及び射出圧力の大きさを示している。また、当該グラフの下方においては、ピストン23、射出用電動機53、着脱部13、サーボバルブ51、ポンプ用電動機33及びアキュムレータ35の動作を示している。図3のさらに下方においては、射出用電動機53の負荷を示している。
【0078】
なお、サーボバルブ51の「ON/OFF」は、開口度が制御されている状態/開口度が制御されずに開かれている若しくは閉じられている状態を示している。また、アキュムレータ35の「充填」は、アキュムレータ35を充填可能な状態を示している(「充填」とされた範囲全体に亘って充填が行われている必要は無い)。
【0079】
射出装置1は、概観すると、低速射出、高速射出、及び、増圧(昇圧)を順に行う。すなわち、射出装置1は、射出の初期段階においては、溶湯の空気の巻き込みを防止するために比較的低速でプランジャ5を前進させ、次に、溶湯の凝固に遅れずに溶湯を充填するため等の観点から比較的高速でプランジャ5を前進させる。その後、射出装置1は、成形品のヒケをなくすために、プランジャ5の前進する方向の力によりキャビティ内の溶湯を増圧する。具体的には、以下のとおりである。
【0080】
(低速射出:t0〜t1)
低速射出の開始直前において、射出装置1は、図1及び図2に示す状態となっている。すなわち、ピストン23及びナット65は、後退限等の初期位置に位置している。この初期位置において、出力部材71の当接部材73は継手27に当接しており、また、着脱部13のフック74は継手27に係合可能である。ただし、必ずしも係合がなされている必要はなく、本実施形態では、係合は解除(OFF)されているものとする。また、射出用電動機53は停止している。ポンプ用電動機33は、アキュムレータ35の充填が完了しているのであれば停止されており、充填が完了していないのであれば駆動されている。サーボバルブ51及び第1逆止弁VLA〜第4逆止弁VLDは、アキュムレータ35からの作動液の放出が禁止されている限り適宜な状態とされてよいが、例えば、サーボバルブ51は閉じられ、第1逆止弁VLAはパイロット圧力が導入されずに自閉しており、第2逆止弁VLB及び第3逆止弁VLCは閉じるパイロット圧力が導入されている。
【0081】
固定金型101及び移動金型103の型締が終了し、溶湯がスリーブ3に供給されるなど、所定の低速射出開始条件が満たされると、制御装置15は、ナット65を前進させる方向にねじ軸63が回転するように射出用電動機53を駆動する。ナット65の駆動力は、連結部材72及び当接部材73を介して継手27に伝達され、プランジャ5及びピストンロッド25が前進する。すなわち、駆動装置11の駆動力によって低速射出が行われる。
【0082】
なお、図3では、着脱部13(フック74)がOFF(係合解除)された状態で低速射出が行われている場合を例示しているが、着脱部13はONされていてもよい。この場合、例えば、減速を含む多段制御を行ったときに、慣性力によってプランジャ5が出力部材71から離間して前進してしまうことを防止できる。
【0083】
低速射出の間、サーボバルブ51は例えば全開とされ、第3逆止弁VLCはパイロット圧力の導入が停止される。従って、ピストン23の前進に伴ってロッド側室21rから排出される作動液は、ピストン23の前進に伴って容積が拡大するヘッド側室21hに供給される。
【0084】
ロッド側室21rとヘッド側室21hとのピストン23の受圧面積の相違によるヘッド側室21hにおける作動液の不足分は、例えば、不図示の流路を介してタンク29から補給される。第2逆止弁VLBをパイロット圧力の導入によって開くことが可能なものにより構成し、第2流路43を介して補給を行ってもよい。
【0085】
プランジャ5の速度は、射出用電動機53の回転数の調整により制御される。具体的には、制御装置15は、第2位置センサ91(第1位置センサ89でもよい)により検出されるプランジャ5の速度に基づいて、射出用電動機53の回転数をフィードバック制御する。
【0086】
アキュムレータ35の充填は、アキュムレータ圧力センサ97の圧力が所定の充填完了圧力に到達したときに、ポンプ用電動機33が停止(OFF)されることにより終了する。ポンプ31の容量、ポンプ用電動機33の回転数及び/又は充填完了圧力等は、後述するアキュムレータ35の充填開始時点後、低速射出が終了するまでの適宜な時期において、アキュムレータ35の充填が完了するように適宜に設定されている。
【0087】
(高速射出:t1〜t2)
制御装置15は、第2位置センサ91(第1位置センサ89でもよい)の検出値に基づくプランジャ5の位置が所定の高速切換位置に到達すると、第1逆止弁VLAに開くパイロット圧力を導入するとともに、サーボバルブ51を適宜な開度に調整する。また、制御装置15は、低速射出から引き続き着脱部13をOFF(係合解除)とし、若しくは、低速射出においてONであった着脱部13をOFFとする。
【0088】
これにより、アキュムレータ35から第1逆止弁VLAを介してヘッド側室21hに作動液が供給され、ピストン23、ピストンロッド25及びプランジャ5は比較的高速で前進する。このとき、着脱部13の係合が解除されているから、プランジャ5等は、比較的低速で移動する出力部材71及びナット65を置き去りにして前進する。従って、駆動装置11は、プランジャ5等の前進を妨げる負荷とはならない。そして、スリーブ3の溶湯が高速でキャビティ105に射出される。
【0089】
なお、シリンダ装置7によってプランジャ5が駆動されることにより、駆動装置11の射出用電動機53の負荷は低速射出時よりも低下する。
【0090】
プランジャ5の速度は、サーボバルブ51の開口度の調整により制御される。なお、制御装置15は、第1位置センサ89により検出されるプランジャ5の速度に基づいて、サーボバルブ51の開口度をフィードバック制御してもよい。
【0091】
(減速射出:t2〜t3)
溶湯がキャビティ105にある程度充填されると、プランジャ5は、その充填された溶湯から反力を受けて減速され、その一方で、射出圧力は、急激に上昇していく。なお、各部の動作は、高速射出時と同様である。ただし、充填時の衝撃を緩和するために、プランジャ5が所定の減速位置に到達するなど所定の減速開始条件が満たされたときにサーボバルブ51の開口度を小さくするなど、適宜な減速制御がなされてもよい。
【0092】
(増圧:t3〜t4)
所定の増圧開始条件が満たされると、制御装置15は、第2逆止弁VLBへの閉じるパイロット圧力の導入を停止する。増圧開始条件は、例えば、ヘッド圧力センサ93及びロッド圧力センサ95により検出される射出圧力の検出値が所定の値に到達したこと、又は、第1位置センサ89により検出されるプランジャ5の検出位置が所定の位置に到達したことである。
【0093】
第2逆止弁VLBへの閉じるパイロット圧力の導入が停止されることにより、ロッド側室21rはタンク圧とされる。そして、ヘッド側室21hの圧力はアキュムレータ35の圧力と同等となるまで上昇し、射出圧力は終圧に到達する。また、射出速度は、キャビティ105に溶湯が完全に充填されることにより0となる。なお、第3逆止弁VLCは、ロッド側室21rがタンク圧とされることによって自閉するが、閉じるパイロット圧力が導入されてもよい。
【0094】
(保圧:t4〜t6)
制御装置15は、射出圧力が終圧となっている状態を維持する。この間に、溶湯は冷却されて凝固する。溶湯が凝固すると、制御装置15は、第1逆止弁VLAへの開くパイロット圧力の導入を停止し、第2逆止弁VLBに閉じるパイロット圧力を導入する。これにより、アキュムレータ35からヘッド側室21hへの液圧の供給及びロッド側室21rからタンク29への作動液の排出が停止され、保圧は終了する。
【0095】
なお、制御装置15は、適宜に溶湯が凝固したか否かを判定する。例えば、制御装置は、終圧が得られた時点等の所定の時点から所定の時間が経過したか否かにより、溶湯が凝固したか否か判定する。
【0096】
(被駆動部の到達:t5)
増圧が開始されてプランジャ5の速度が低下し、さらには、保圧が開始されてプランジャ5が停止することにより、駆動装置11によって低速射出から引き続き駆動されていた出力部材71は継手27に追いつく。換言すれば、着脱部13は、係合可能な状態となる。出力部材71が継手27に到達する時点は、好ましくは保圧完了前である。
【0097】
制御装置15は、第1位置センサ89及び第2位置センサ91の検出値に基づいて出力部材71の継手27への到達を検出すると、射出用電動機53を停止させる。
【0098】
なお、高速射出開始から出力部材71が継手27に到達するまでの出力部材71の速度は、低速射出時の速度と同等であってもよいし、異なっていてもよい。また、出力部材71がプランジャ5に衝撃を与えないように、適宜に減速制御が行われてもよい。
【0099】
(押出追従:t7〜t9)
保圧終了後、制御装置15は、不図示の型締装置に型開きを行わせるとともに、不図示の押出装置により固定金型101から成形品を押し出す。このとき、制御装置15は、射出用電動機53を出力部材71を前進させる方向に駆動して、プランジャ5によりビスケットを押し出す。
【0100】
なお、この際、作動液の流れは、例えば、低速射出時と同様とされてよい。すなわち、ロッド側室21rから排出される作動液は、第3流路45を介してヘッド側室21hに還流され、ヘッド側室21hにおける作動液の不足分は、タンク29から補給されてよい。
【0101】
制御装置15は、サーボドライバ61の検出する、射出用電動機53に流れる電流(負荷)が所定の設定値以上となる場合は、シリンダ装置7を併用してプランジャ5を前進させる。具体的には、例えば、第1逆止弁VLAにパイロット圧力を導入してアキュムレータ35からヘッド側室21hに作動液を供給する。なお、ロッド側室21rの作動液は、高速射出時と同様にヘッド側室21hに還流されてもよいし、増圧時と同様にタンク29に排出されてもよい。
【0102】
一方、制御装置15は、サーボドライバ61の検出する負荷が設定値未満となる場合は、シリンダ装置7を併用せずに、射出用電動機53のみによるプランジャ5の前進を行う。
【0103】
なお、試運転において設定値以上か否かの判定が行われ、その後の複数の成形サイクルに対して一律に併用するか否かが決定されてもよいし、成形サイクル毎に設定値以上か否かの判定が行われ、各成形サイクルにおいて設定値以上となった以後若しくは設定値以上となっている間において併用が行われてもよい。
【0104】
また、併用は、押出追従の全体に亘って行われてもよいし、負荷が大きくなる初期のみにおいて行われてもよい。なお、ここでいう押出追従の初期は、押出追従において、プランジャ5が前進を開始する時点を含み、プランジャ5の前進が停止する時点を含まない範囲であり、例えば、押出追従におけるプランジャ5のストロークのうち最初の1/5〜1/2の範囲に相当する期間である。
【0105】
なお、図3では、シリンダ装置7を併用している場合を例示するとともに、予めシリンダ装置7が併用されることが決定され、射出用電動機53の回転開始と同時にアキュムレータ35の放出が開始され、また、押出追従の初期(t7〜t8)のみにおいて併用が行われる場合を例示している。
【0106】
(プランジャ後退:t10〜t11)
制御装置15は、出力部材71が継手27に到達した以後(t5以後)からの適宜な時期、好適には、保圧終了後(t6後)、より好適には押出追従の開始時(t7)において、着脱部13をON(係合)状態とする。そして、制御装置15は、押出追従が完了すると、出力部材71を後退させる方向に射出用電動機53を駆動する。これにより、プランジャ5が後退する。
【0107】
なお、ピストン23の後退に伴ってヘッド側室21hから排出される作動液は、例えば、第3逆止弁VLCに開くパイロット圧力を導入するとともにサーボバルブ51を開くことによりロッド側室21rへ還流される。ロッド側室21rにおける作動液の余剰分は、例えば、第2逆止弁VLBへのパイロット圧力の導入を停止することによりタンク29へ排出される。ヘッド側室21hから排出される作動液は、アキュムレータ35の充填に供されることも可能である。
【0108】
(アキュムレータ充填:t9〜t11〜t1)
アキュムレータ35の充填は、アキュムレータ35の放出が行われる高速射出、増圧及び保圧、並びに、アキュムレータ35の放出が行われる可能性のある押出追従を除いて、適宜な時期に行われてよい。
【0109】
例えば、制御装置15は、押出追従が完了すると(t9)、ポンプ用電動機33の駆動を開始し、アキュムレータ35の充填を開始する。なお、第1逆止弁VLAは自閉する。また、アキュムレータ35の充填完了は、上述のように、低速射出終了までになされる。
【0110】
以上のとおり、本実施形態では、射出装置1は、プランジャ5と、シリンダ装置7と、駆動装置11と、着脱部13とを有する。プランジャ5は、キャビティ105に成形材料を押し出し可能である。シリンダ装置7は、プランジャ5と連結されたピストンロッド25を有する。駆動装置11は、被駆動部(ナット65及び出力部材71)を有し、ナット65等をピストンロッド25と平行な方向において駆動可能である。着脱部13は、ピストンロッド25とナット65等との、ピストンロッド25のナット65に対する相対的な前進を規制する連結及び当該連結の解除が可能である。制御装置15は、シリンダ装置7及び駆動装置11を制御する。
【0111】
具体的には、制御装置15は、低速射出においては、ピストンロッド25に固定された継手27に対して被駆動部(出力部材71等)が前進方向へ当接した状態で、駆動装置11の駆動力のみによりプランジャ5を駆動し、高速射出においては、着脱部13による連結が解除された状態で、シリンダ装置7の駆動力(シリンダ装置7に作動液が供給されることにより生じる駆動力)のみによりプランジャ5を駆動し、また、ピストンロッド25を被駆動部に対して相対的に前進させ、プランジャ後退においては、着脱部13による連結がなされた状態で、駆動装置11の駆動力によりプランジャ5を後退させる。
【0112】
従って、高速射出においては、プランジャ5の前進速度が駆動装置11の速度に制限されることがなく、好適に高速射出が行われる。また、低速射出及びプランジャ後退を駆動装置11によって行うことから、液圧源(ポンプ31及び/又はアキュムレータ35)によるシリンダ装置7への作動液の送出量を低減することができる。
【0113】
特に、プランジャ後退において、駆動装置11の駆動力のみによりプランジャ5を後退させる場合においては、液圧源によってシリンダ装置7へ作動液を送出する必要が無い。その結果、例えば、液圧源の負担をより一層低減することができ、また、プランジャ後退と同時にアキュムレータ35の充填を行って成形サイクルの短縮化を図ることも可能となる。
【0114】
制御装置15は、増圧の少なくとも開始時(本実施形態では増圧全体)においては、着脱部13による連結が解除された状態で、シリンダ装置7の駆動力のみによりプランジャ5を駆動し、増圧開始後から保圧終了までの間に(本実施形態では保圧中)、被駆動部(出力部材71等)が、着脱部13によってピストンロッド25と連結可能な位置に到達するように、シリンダ装置7及び駆動装置11を制御する。
【0115】
従って、保圧終了後、直ちに、全ストロークに亘って、駆動装置11の駆動力によるプランジャ後退を行うことができる。その結果、例えば、成形サイクルの短縮化を図ることができる。
【0116】
制御装置15は、製品押出追従において、駆動装置11によりプランジャ5を駆動し、その負荷が所定の設定値以上となる場合は、シリンダ装置7を併用してプランジャ5を駆動し、設定値未満となる場合は、シリンダ装置7を併用せずにプランジャ5を駆動するようにシリンダ装置7及び駆動装置11を制御する。
【0117】
従って、液圧源(ポンプ31及び/又はアキュムレータ35)からの作動液の送出を抑制しつつ、必要十分な押出力を得ることができる。
【0118】
射出装置1は、作動液を送出可能なポンプ31と、ポンプ31を駆動するポンプ用電動機33と、シリンダ装置7に作動液を供給可能なアキュムレータ35と、を更に有し、ポンプ31は、アキュムレータ35に対してのみ作動液を送出する。
【0119】
このように、ポンプ31をアキュムレータ35の充填専用とできるのは、上述のように、プランジャ後退等を駆動装置11によって行い、液圧源からシリンダ装置7への作動液の送出の必要性を低減したことによる。そして、ポンプ31がアキュムレータ35の充填専用とされることにより、ポンプ31及びポンプ用電動機33は小容量化が可能となり、また、タンク29も小容量化が可能となる。
【0120】
さらに、ポンプ31がアキュムレータ35の充填専用であることから、ポンプ31は、1周期の吐出量が不可変の定容量ポンプとされ、ポンプ用電動機33は、オープンループ制御される定速電動機とされることができる。その結果、安価な電動機及びポンプを用いることができる。
【0121】
さらに、液圧源からの作動液の送出量が少ないことから、液圧装置9の発熱量が少なく、安価な空冷式のクーラ39の採用が可能となる。
【0122】
駆動装置11は、被駆動部(出力部材71等)から後退方向にピストンロッド25に平行に延びるガイドバー67と、ガイドバー67をその軸方向へ移動可能に案内するガイド部69と、を有する。従って、ナット65等に不要なモーメントが加えられることが抑制され、駆動装置11は円滑に動作可能となる。また、ガイドバー67は、後方に延びてシリンダ装置7と並列になるので、射出装置1の小型化が容易になる。
【0123】
着脱部13は、フック74の係合部材(継手27)への係合及び係合解除によりピストンロッド25と被駆動部(出力部材71等)との連結及び当該連結の解除を行う。従って、確実に連結及び当該連結の解除を行うことができる。
【0124】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0125】
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、プラスチック射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、射出装置は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出であってもよい。作動液は、油に限定されず、例えば水でもよい。
【0126】
シリンダ装置は、単動式のものに限定されず、増圧式のものであってもよい。例えば、シリンダ装置は、小径部と大径部とを有するシリンダチューブと、ピストンロッドに固定され、小径部を摺動する射出ピストンと、その後方にて小径部と大径部とを摺動する増圧ピストンとを有するものであってもよい。
【0127】
液圧装置は、適宜に構成することができ、種々の流路の接続及び共用、並びに、種々の弁の配置は、適宜に変更可能である。作動液の流れを制御する弁としてパイロット式の逆止弁を多用したが、逆止弁に代えて、方向切換弁等の他の制御弁が用いられてもよい。ランアラウンド回路は設けられなくてもよいし、メータアウト回路に代えて若しくは追加してメータイン回路が構成されてもよい。
【0128】
駆動装置は、好適には電動機を含むものである。ただし、駆動装置は、必ずしも電動機を含むものに限定されず、駆動力を生じる種々の方式のものとされてよい。また、電動機は、回転式のものに限定されず、リニアモータであってもよい。なお、リニアモータの場合には、伝達機構を介さずに、リニアモータの駆動力が直接にピストンロッドに伝達されてもよい。電動機が回転式のものである場合において、電動機の回転を並進運動に変換する伝達機構はねじ機構に限定されず、例えば、ラック・ピニオン機構であってもよい。また、駆動装置は、電動機、ポンプ及びシリンダ装置がユニット化された電動シリンダ(ハイブリッドシリンダ)であってもよい。また、駆動装置は、2以上設けられてもよい。
【0129】
着脱部は、実施形態において例示したものに限定されない。例えば、着脱部は、電磁石の励磁及び消磁により連結及び当該連結の解除を行うものであってもよい。また、着脱部は、ばねによって付勢されて係合する係合部材を有し、高速切換によるピストンロッドと被駆動部との速度差により生じる比較的大きな力によって係合が解除され、プランジャ後退時のプランジャ速度により生じる比較的小さい力によっては係合が解除されないものであってもよい。なお、この場合、制御装置による着脱部自体の制御は不要である。
【0130】
着脱部は、実施形態に例示したように、ピストンロッドの被駆動部に対する相対的な前進のみを規制可能なものであってもよいし、電磁石のように、ピストンロッドの被駆動部に対する相対的な前進及び後退の双方を規制可能なものであってもよい。なお、着脱部が、ピストンロッドの被駆動部に対する相対的な前進及び後退の双方を規制可能なものである場合、当接部材を設けずに、着脱部による連結がなされた状態で駆動装置を駆動することにより低速射出を行うことも可能である。
【0131】
ピストンロッドの傾斜を抑制するための案内機構(ガイドバー等)は省略されてもよい。また、案内機構は、スライドテーブル等の他の機構により構成されてもよい。案内機構は、ねじ軸等の伝達機構よりもシリンダ装置側に配置されてもよいし、シリンダ装置に対してプランジャ側に配置されてもよい。
【0132】
各部材は、一体的に形成されてもよいし、複数の部材から構成されてもよい。例えば、ナット65、出力部材71及びガイドバー67は、これらの2つ以上が一体的に形成されてもよい。また、例えば、被駆動部が当接する、ピストンロッドに固定された部材は、継手とは別個の部材であってもよい。
【0133】
実施形態において例示したように、シリンダ装置の駆動力は、高速射出、増圧及び保圧(必要に応じて押出追従)のみに発揮され、駆動装置の駆動力は、低速射出、プランジャ後退及び押出追従のみに発揮されることが好ましい。ただし、シリンダ装置の駆動力及び駆動装置の駆動力は、適宜に種々の工程において利用されてよい。
【0134】
例えば、高速射出後、被駆動部がピストンロッドに追いついた後、駆動装置の駆動力も増圧及び/又は保圧に利用されてもよい。また、例えば、押出追従をシリンダ装置のみによって行ってもよい。また、例えば、プランジャ後退に、駆動装置だけでなく、シリンダ装置も用いてもよい(例えば、全ストロークに亘って併用したり、ストローク中の一部はシリンダ装置のみで、他は駆動装置のみで行う等。)。
【0135】
また、ポンプは、実施形態において例示したように、アキュムレータの充填専用とされることが好ましいが、シリンダ装置に駆動力を生じさせることに利用されたり、シリンダ装置における作動液の不足分の補給(例えば低速射出においてヘッド側室へ駆動力が生じない量で作動液を送出)に利用されたりしてもよい。
【符号の説明】
【0136】
1…射出装置、5…プランジャ、7…シリンダ装置、9…液圧装置、11…駆動装置、13…着脱部、25…ピストンロッド、65…ナット(被駆動部)、105…キャビティ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティに成形材料を押し出すプランジャと、
前記プランジャと連結されたピストンロッドを有するシリンダ装置と、
被駆動部を有し、当該被駆動部を前記ピストンロッドと平行な方向において駆動可能な駆動装置と、
前記ピストンロッドと前記被駆動部との、少なくとも前記ピストンロッドの前記被駆動部に対する相対的な前進を規制する連結及び当該連結の解除が可能な着脱部と、
前記シリンダ装置及び前記駆動装置を制御する制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、
低速射出においては、前記着脱部による前記ピストンロッドの前記被駆動部に対する相対的な後退の規制、及び、前記ピストンロッドに固定された部材に対する前記被駆動部の前進方向への当接の少なくとも一方がなされた状態で、前記駆動装置の駆動力及び前記シリンダ装置の駆動力のうち前記駆動装置の駆動力のみにより前記プランジャを駆動し、
高速射出においては、前記着脱部による連結が解除された状態で、前記駆動装置の駆動力及び前記シリンダ装置の駆動力のうち前記シリンダ装置の駆動力のみにより前記プランジャを駆動し、また、前記ピストンロッドを前記被駆動部に対して相対的に前進させ、
プランジャ後退においては、前記着脱部による連結がなされた状態で、前記駆動装置の駆動力により前記プランジャを後退させるように、
前記シリンダ装置及び前記駆動装置を制御する
成形機の射出装置。
【請求項2】
前記制御装置は、プランジャ後退において、前記駆動装置の駆動力及び前記シリンダ装置の駆動力のうち前記駆動装置の駆動力のみにより前記プランジャを後退させるように、前記シリンダ装置及び前記駆動装置を制御する
請求項1に記載の成形機の射出装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
増圧の少なくとも開始時においては、前記着脱部による連結が解除された状態で、前記駆動装置の駆動力及び前記シリンダ装置の駆動力のうち前記シリンダ装置の駆動力のみにより前記プランジャを駆動し、
増圧開始後から保圧終了までの間に、前記被駆動部が、前記着脱部によって前記ピストンロッドと連結可能な位置に到達するように、
前記シリンダ装置及び前記駆動装置を制御する
請求項1又は2に記載の成形機の射出装置。
【請求項4】
前記制御装置は、製品押出追従において、前記駆動装置により前記プランジャを駆動し、その負荷が所定の設定値以上となる場合は、前記シリンダ装置を併用して前記プランジャを駆動し、前記設定値未満となる場合は、前記シリンダ装置を併用せずに前記プランジャを駆動するように前記シリンダ装置及び前記駆動装置を制御する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形機の射出装置。
【請求項5】
作動液を送出可能なポンプと、
前記ポンプを駆動するポンプ用電動機と、
前記シリンダ装置に作動液を供給可能なアキュムレータと、
を更に有し、
前記ポンプは、前記シリンダ装置及び前記アキュムレータのうち前記アキュムレータに対してのみ作動液を送出する
請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形機の射出装置。
【請求項6】
前記ポンプは、1周期の吐出量が不可変の定容量ポンプであり、
前記ポンプ用電動機は、オープンループ制御される定速電動機である
請求項5に記載の成形機の射出装置。
【請求項7】
作動液を冷却する空冷式のクーラを更に有する
請求項5又は6に記載の成形機の射出装置。
【請求項8】
前記駆動装置は、
前記被駆動部から後退方向に前記ピストンロッドに平行に延びるガイドバーと、
前記ガイドバーをその軸方向へ移動可能に案内するガイド部と、を有する
請求項1〜7のいずれか1項に記載の成形機の射出装置。
【請求項9】
前記駆動装置は、
回転式の射出用電動機と、
前記射出用電動機の回転を並進運動に変換して前記被駆動部に伝達する伝達機構と、を有する
請求項1〜8のいずれか1項に記載の成形機の射出装置。
【請求項10】
前記着脱部は、フックの係合部材への係合及び係合解除により前記ピストンロッドと前記被駆動部との連結及び当該連結の解除を行う
請求項1〜9のいずれか1項に記載の成形機の射出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−75300(P2013−75300A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215320(P2011−215320)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【特許番号】特許第4960527号(P4960527)
【特許公報発行日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】